TidBITS: Apple News for the Rest of Us  TidBITS#631/20-May-02

Mac で最新の音楽 CD を聴こうとお思いならご注意あれ!Adam が Mac を詰らせてしまうこともある意図的に変造したオーディオディスクを流すことで、ミュージックレーベル各社が消費者をまるで犯罪者のように扱っていることに怒りをぶちまける。他に今週号では、Matt Neuburg が Layout Master をウェブマスター御用達ツールの一つとして付け加えるに値すると評している。更に、最新の Apple のラックマウントサーバ Xserve によだれを流し、スピードアップされた iBook、PopChar X、そしてNow Up-to-Date & Contact 4.2.1 のリリースについてお伝えする。

記事:

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MailBITS/20-May-02

TidBITS 27-May-02 号は休み -- 悪人に休息はないとはよく言われているが、この説教がそれ以外の私達にも当てはまりつつある。そこで、アメリカの Memorial Day 休暇にあわせて TidBITS も一週間の休みをとらせてもらう。この週は偶然ながら、Managing Editor の Jeff Carlson の誕生祝いと Mac Mania Geek Cruise と重なるため、私も色々と忙しい。船上での電子メール接続の良し悪しと空き時間次第で、TidBITS Talk での発言は少々の減少するかもしれない。だが、返事の遅延や出し忘れという恥ずかしい事態を避けさせてもらうためにも、緊急以外の私的メールは 6 月の第 2 週まで待ってもらえると助かる。TidBITS は 6 月 3 日号から発行を再開だ。[ACE] (倉石)

Apple が iBooks をスピードアップ -- Apple は今日、より速い CPU、512K チップ上 L2 キャッシュ、16 MB の RAM 搭載し AGP 2X 対応のより強力な ATI Mobility Radeon グラフィックスプロセッサ、より大容量のハードドライブ、新しいビデオ出力ポートなどを搭載した iBook を発表した。12.1 インチのスクリーンの iBook では 600 MHz か 700 MHz PowerPC G3 プロセッサーと 20、30、または 40 GB のハードドライブ搭載で購入できる。14.1 インチスクリーンのモデルは 700 MHz のプロセッサーと 30、または 40 GB のハードドライブを備えている。双方の iBook 共に CD-ROM ドライブと DVD-ROM/CD-RW Combo ドライブの選択肢と、必要とする RAM (128 MB か 256 MB から最高 640 MB まで) の選択肢がある。双方のモデル共に、二つのUSB ポート、FireWire ポート、AirPort 互換性、56 Kbps V.90 モデム、10/100Base-T Ethernet、そして内蔵マイクとスピーカという仕様に変更はない。値段は、12.1 インチスクリーンモデルが $1,200 から、14.1 インチモデルは $1,650 からとなっている。画期的な点はないが、これらの更新のおかげで非常に良いコンピュータが更に良くなった。[ACE] (倉石)

<http://www.apple.com/ibook/>

Now Up-to-Date & Contact 4.2.1 が Grab-’n-Go を付け加える -- Power On Software は人気あるカレンダーと住所録管理プログラムの Mac OS X 専用バージョンの Now Up-to-Date & Contact の無料アップデートバージョン 4.2.1 をリリースした。Now Up-to-Date & Contact 4.2.1 では Grab-'n-Go ユーティリティが復活し、Macintosh 出版で使用されているハイフンの数を増やすための健気な努力が認められる。 Grab-'n-Go を使用すると、コンテクストメニューをサポートしているアプリケーション中で (残念ながら、そのうちで私が普段使っているのは少ないが) テキストに Control クリックし、新しいアポ、作業、その他のタイプのイベントなどを Now Up-to-Date 内で作れる。QuickDay と QuickContact ユーティリティも改善され、ちゃんとしたメニューが備わり、Command ドラッグしてメニューバー中の新しい場所に移動できる。そして、Now Up-to-Date & Contact フォルダを Applications フォルダのすぐ下から他の場所へ移動できるようになった。無料のアップデートは 16 MB のダウンロードだ。以前のバージョンからのアップグレードは $50、 新規購入は $120 かかる。 [ACE] (倉石)

<http://www.poweronsoftware.com/products/nudc/>
<http://poweronsoftware.com/download/dlNUDC.asp>

はじけた、飛んだ PopChar X -- Gunther Blaschek の長寿ユーティリティである PopChar の熱烈なファンの我慢の褒美として、今週、Mac OS X バージョンがリリースされた。PopChar X はメニューバーの左上の隅に小さな "P" を表示するバックグランド専用アプリケーションだ。この "P" をクリックするとどのようなフォントでも文字、その ASCII 数値、そしてタイプするために押すキーの順番を表示するウィンドウが現れる。文字をクリックすれば使用中のアプリケーションに挿入する。

<http://www.macility.com/products/popcharx/>

多くの Mac OS X フォントは何百、何千という文字を含むのだが (TidBITS-625の“チェリーを2バイト - ユニコードと Mac OS X - その2”を参照)、残念なことに、ASCII 文字 - 基本的にはフォントの最初の 230 ほどの文字だけ - しか表示されない。 また、"P" の位置は変更できず、メニューバーの隅を使用する MaxMenus のような他のユーティリティとぶつかる可能性がある。Blaschek はこれらの短所は将来のバージョンで直す予定だと述べている。PopChar X は $30 で、これには Mac OS 7.1 以降用の PopChar Pro の新バージョンの無料ライセンスと 2 年分の無料アップグレードが含まれる。 [MAN] (倉石)

<http://db.tidbits.com/getbits.acgi?tbart=06780>(日本語)チェリーを2バイト - ユニコードと Mac OS X - その2
<http://www.proteron.com/maxmenus/>


Apple がラックマウントサーバ Xserve を発表

文 : Mark H. Anbinder <mha@tidbits.com>
訳 : 佐藤浩一 <koichis@anet.ne.jp>

Apple は先週、新しいラインナップであるラックマウントサーバを発表した。出荷は 2002 年 6 月だが、Apple Store では既にオンラインで注文が可能になっている。この 1U (高さがラック 1 ユニット分) Xserve サーバは、シングルあるいはデュアル構成の 1 GHz PowerPC G4 プロセッサ、最大 2 GB の DDR SDRAM メモリ、ホットプラグ可能な 4 基の ATA/100 ディスクドライブで最大480 GB の容量、Gigabit Ethernet ポート× 2 、FireWire ポート× 3、USBポート× 2、そして DB-9 シリアルポート一つを装備している。横幅 19 インチ、高さが 1.75 インチ (48.3 cm × 4.4 cm) のケースは、標準の 42U ラックに 42 ユニット入り、部品を交換したり追加するのに特別な器具は必要無い。ソフトウエアに関しては、Xserve には無制限クライアントライセンスの Mac OS X Server (単品なら普通 1,000 ドルはする) が付属しており、Apache ウェブサーバ、メールサーバ、QuickTime Streaming Server、WebObjects、MySQL、そして Mac OS、Windows、と Linux クライアント用のファイル及びプリントサーバが構成済みとなっている。多数の内部ハードウエアセンサを監視し、問題を管理者に報告するアプリケーションである Server Monitor もバンドルされている。

<http://www.apple.com/xserve/>

価格は、シングル 1 GHz G4 プロセッサ構成で 256 MB DDR メモリと 60 GB ドライブモジュール付きの 3,000 ドルから始まる。ミッドレンジのデュアルプロセッサ構成では、512 MB のメモリと 60 GB ドライブモジュールが付属し 4,000 ドルだ。フル装備のデュアルプロセッサ、2 GB メモリ、4 台の 120 GB ドライブモジュールでは 7,800 ドルになる。Xserve の発表と共に、最長 3 年間のあいだ、営業時間内であれば 4 時間以内の出張修理対応を行なうオンサイト修理と保証のオプションを再び提供し始めた。また、オプションの AppleCare Service Parts Kits で、停止することが許されないサーバのために予備部品を手元に置いておくことも可能である。

過去に Apple がエンタープライズサーバのマーケットに対して行なってきた冒険は、歴史的に見て短命だった。Mac OS ベースの Apple Workgroup Server、AIX (IBM 独自の Unix) Apple Network Server、そして結局発売されなかったPowerPC サーバ用 Novell Netware がすべてを物語っている。ここ数年、Apple は成長が見込めるサーバソフトウエア (例えば、古くは Rhapsody ベースの Mac OS X Server 1.x、そして最近では Darwin ベースの Mac OS X Server 10.x)への確実な歩み寄りを見せており、Xserve は発展的なハードウエアと強固なサーバソフトウエアの驚くような取り合わせを魅力的な価格で提供するだろう。低価格の Pentium ベースのハードウエアを購入したがる Unix ネットワーク管理者には価格が障害になるかもしれないが、業務で使用できる電源と管理機能を備え持つような頑強なサーバハードウエアを必要とするなら、Xserve に注目したい。とにかくこれには文句の付けようがない。TidBITS Talk の皆と同様、私たちも一台欲しいものだ。

<http://db.tidbits.com/getbits.acgi?tlkthrd=1655>


変造オーディオディスクが Mac の便秘を誘う

文: Adam C. Engst <ace@tidbits.com>
訳: Mark Nagata <nagata@kurims.kyoto-u.ac.jp>

Mac で音楽 CD を聴くのがお好き? それなら気を付けた方がいい。最近アメリカやヨーロッパ各国では、音楽業界のメジャーなミュージックレーベル各社が、意図的に変造したオーディオディスクを発売するようになっているのだ。このようなディスクは一見普通の業界標準 CD のように見え、しかも CD プレイヤーの機種によっては問題なしに再生できることもある。(Fat Chuck’s Corrupt CDs サイトや Campaign for Digital Rights サイトにあるリストを参照。)けれども、もしもあなたがうっかりとそのディスクのパッケージ外側に付いている“Will not play on PC/Mac”という警告ラベルを見落としてしまうと、(あるいは、そんな警告がどこにも付いていないこともありうるのだが)すると、おそらくあなたは仰天の、とてつもない不快な状況にはまり込んでしまうかもしれないのだ。

<http://fatchucks.com/z3.cd.html>
<http://uk.eurorights.org/issues/cd/bad/>

こうしたオーディオディスクは、コピー予防策(「コピープロテクト」と言うよりも、単なる「コピー予防策」と言う方が正確だろう)として、コンパクトディスク (Compact Disc) の規格仕様である Red Book フォーマットとは非互換となるように作られている。その意図は、このディスクが普通のオーディオCD プレイヤーでは再生できるけれどもコンピュータの CD ドライブでは再生できないようにしよう、というものだ。(これに関連する話題としては、TidBITS-618 の記事“著作権:儲けるのは誰だ?”も参照。)

<http://db.tidbits.com/getbits.acgi?tbart=06729>(日本語)著作権:儲けるのは誰だ?

再生できないという事実自体が既に不快なことだが、とてつもない不快な状況というのは、今挿入したそのディスクが CD ドライブに入り込んだままイジェクトできない、ということがありうるのだ。Apple も最近、この問題に関する Knowledge Base 記事をポストして、特に手動イジェクト機構を持たない最近の機種の Mac についてもいくつかの回避策を紹介してはいるのだが、 Campaign for Digital Rights サイトに届いた報告によれば、こうしたオーディオディスクが Mac をクラッシュさせた上、時には、再起動時にもまだディスクがドライブに入ったままならば、グレイのスクリーンのままマシンの起動が止まってしまうこともあるということだ。

<http://docs.info.apple.com/article.html?artnum=106882>
<http://uk.eurorights.org/issues/cd/docs/celdion.shtml>

もしもディスクがあなたの Mac から出てこなくなって、Apple の推薦する回避策のどれをやってもうまく行かないのならば、あなたにできることは Apple 認可の修理センターにあなたの Mac を持ち込んで修理スタッフにディスクを手で取り出してもらうことしかない。当初 Apple が Knowledge Base にポストした記事には、こうした修理の費用は保証の対象外だし AppleCare のサービスも受けられないという Apple のはっきりしたコメントが載っていた。身も蓋もないと言ってしまえばそれまでだが、この Apple の立場は確かに筋の通ったものではあっただろう。つまるところこの事件を引き起こした第一の責任者は変造オーディオディスクを製造・販売したミュージックレーベルの各社であり、それを CD ドライブに挿入してしまったユーザーに第二の責任が、そして、Apple には Mac の機種のいくつかに手動イジェクト用の穴を設けなかったというだけの、最小限の責任しか負わせることができないだろう。そうは言っても、Apple には高いレベルのモラルを期待されているという状況もあって、保証の対象外だとする Apple のこのコメントは、多くの人からの非難が加害者でもない Apple に寄せられるという事態を引き起こしてしまった。そこでこの Knowledge Base の記事には変更が加えられて、現在では保証に関するコメントは削除されている。(つまり、現時点では保証の対象かどうか、AppleCare のサービスが受けられるかどうかは未知数という状態だ。)変更前の記事が見たければ、先週号の Mac Observer の記事を見れば読むことができる。

<http://www.macobserver.com/article/2002/05/10.10.shtml>

本来、Mac をディーラーに持ち込んで取り出してもらわなければならくなったユーザーの支払った費用はミュージックレーベルの側が負担すべきものだろう。“Will not play on PC/Mac”(「PC や Mac では再生できません」)という警告と、「PC や Mac に挿入するとコンピュータが動作不能になるおそれがあります」というような警告とでは、大きな違いがあるというものだ。それだけでなくレコード販売店にも、そのようなディスクの販売棚のそばに目立つ警告の注意書きをはっきりと掲示すべき責任があると思う。もちろん、ユーザーがそのような変造ディスクを自分のコンピュータに挿入すべきでないのは当然だが、仮に警告が書いてあったとしてもそれを見落とすことがあるのは予測できることだ。(一見普通のディスクと同じに見えるもののケースの外側を注意して見る人なんて、そうそういないだろう?)それに、人によっては、「再生できません」とだけ書かれていれば、かえって好奇心を引かれて、挿入してみたらどうなるか、とやってみようとする気が起こることもあるだろう。ちょっとした好奇心のおかげで Mac が入院、なんてシャレにもならないではないか。

愚かなカルテル -- この問題に関しては、あまりにもイライラさせられることが多すぎて、私の気持ちとして何が最もイヤなのか決めかねるほどだ。まず挙げておきたいのは、音楽業界がカルテルを作って顧客を扱うやり方、顧客をあたかも盗っ人か海賊のように扱う、そのやり方だ。影響を受けるのはコンピュータのユーザーだけではない。普通の CD プレイヤーや DVD プレイヤー、自動車に車載の CD プレイヤーなどのうちにも、こうした変造オーディオディスクが問題を起こすような機種がたくさんあるということだ。顧客が第一、という信念を持っている会社が一方ではあるというのに、他方では音楽業界の会社たちが、顧客はみんな盗っ人と信じているのだ。

けれどもそれはただ、そういう会社がちょっと馬鹿げているというだけのことかもしれない。ひょっとしてもっと深刻な問題は、コピー予防策を実施すれば、それも世界のうちのほんの一部の地域だけで実施するだけで、ピア・ツー・ピアのファイル共有ネットワークの使用をちょっとでもくいとめることができると考える、その無知としかいえない傲慢さ、こちらの方が私の気に障るのかもしれない。新作映画「スパイダーマン」のサウンドトラックは、Campaign for Digital Rights サイトの一覧にあるとおり変造オーディオディスクなのだが、そこに含まれているトラックが既に数え切れないほど出回っていてダウンロードできるということは、ほんのちょっと検索しただけですぐにわかるではないか。オーディオディスクのコピーを作るには、たとえそれが手間のかかるアナログからデジタルへの変換ステップを要するものであっても、とにかくたった1人の人が作業をするだけで十分で、その曲はすぐにファイル共有ネットワークに登場してしまうのだ。さらに悪いことには、オーディオディスクに変造されたものがあると知れ渡れば、多くのコンピュータユーザーたちはきっと、ただわずらわしさを避けたいという気持ちだけから、ディスクを購入する気が自然と消え失せ、代わりに曲をダウンロードしようという方に傾いてしまうだろうとも考えられる。

それにまた、この変造ディスクは簡単に直せる、という事実もある。この変造ディスクの最外縁のトラックを黒のマーカーで塗りつぶすか、絶縁テープで覆うかすれば、ディスクがコンピュータの CD ドライブでも再生できるようになるのだ。言葉を替えて言えば、確かな指先と的確な道具さえあれば簡単にコピー防止テクノロジーが破られてしまうわけだ。おぉ、何とセキュアなこと!

<http://www.theregister.co.uk/content/54/25274.html>

さて、以上挙げてきたうちから一番イヤなことを選ぶとすれば、やはり顧客を犯罪者扱いすること、これにせざるを得ないだろう。コピー防止テクノロジーが破れない、破られはしないと信ずること、また、それを採用することで少しでも事態が向上すると思っていることは、いずれも傲慢かつ無知と言わざるを得ないが、それにもまして顧客を犯罪者扱いすることは、かえって顧客をそのような行為に走らせるきっかけとなるばかりではなく、コピー防止テクノロジーを施されていない CD までも巻き込んで、将来における売れ行きに悪影響を及ぼすことにもなるからだ。現に、この私は音楽業界のカルテルへの嫌悪感のあまり、音楽を買う情熱がはっきりと失せてしまった。ただし、独立のミュージシャンから直接音楽を買う場合だけは別だ。同じような感想は、他の人たちからも確かに聞いたことがある。

DMCA/EUCD と犯罪者 -- すぐ前の段落で私が「犯罪者」という表現を使ったのは、はっきりとした意図があってのことだった。合衆国のデジタルミレニアム著作権法(Digital Millennium Copyright Act、略して DMCA - 下記の“YMCA”パロディーは傑作)によれば、著作権保護テクノロジーを破ろうとする行為はその理由の如何を問わず刑事犯の扱いを受けるのだ。この DMCA に関する裁判の内容については多数の記録が残されている。その概要を知りたければ、Electronic Frontier Foundation が最近発表した、DMCA の制定以来3年間に残されてきた帰結について詳述したレポートを読んでみるとよい。The European Union Copyright Directive (EUCD) も同種のさまざまな規制をしており、やはり同じように抗議の声が揚がっている。

<http://whichwayup.org/writing/ymca/>
<http://www.usethesource.com/Parodies/01/08/04/1121207.shtml>
<http://www.eff.org/IP/DMCA/20020503_dmca_consequences.pdf>
<http://uk.eurorights.org/issues/eucd/>

一筋の光明と言えるかもしれないのは Rick Boucher 下院議員(民主党、Virginia 州)だ。Boucher 議員はこの DMCA の修正条項案を準備中で、この修正は正当な権利の行使の目的のためならばコピー防止テクノロジーを破っても合法としよう、というものだ。何も彼はコピーをすべて合法化しようとしているわけではない。その作品の著作権を侵害するような意図でコピーをすることは違法としておかなければならないからだ。音楽および映画業界のカルテル各社の底無しの財力を敵にまわして、この修正案が日の目をみるチャンスがどれだけあるのかはわからないが、少なくとも Boucher 議員のウェブサイトで彼が列記しているインターネットおよびテクノロジーについての発言を見る限りにおいて、彼の言うことには道理があり、議会で何かが起こるとすれば彼が一番の希望の光のように思える。

<http://www.house.gov/boucher/docs/fairuse.htm>
<http://www.house.gov/boucher/internet.htm>

Creative Commons 活動開始 -- もう1つの光明と言えるのが、最近活動を開始した Creative Commons プロジェクトだ。TidBITS-617 の記事“面白い概念を数個”を参照して頂きたい。Creative Commons とは、DMCA のために超厳格なものになってしまった著作権法によって自分の創作物が全面的に縛られてしまうのを好まず、それよりも自分の創作物が多くの人に共有されてもらいたいと望むようなライター、アーティスト、ミュージシャンやムービーメイカーたちがいるのだ、という概念の下に生まれた非営利団体だ。

<http://www.creativecommons.org/>
<http://db.tidbits.com/getbits.acgi?tbart=06720>(日本語)面白い概念を数個"

Creative Commons は、ウェブベースのアプリケーションを作って、コンテンツのクリエイターたちが自分の作品をパブリックドメインに置いたり、あるいは自分の作品に著作権を留保しながら利用者がそれをコピーして再利用することを許容できるような柔軟性のあるライセンスを発生させたりできるようにしたい、と計画している。さらに、クリエイターたちが自分の作品にメタデータによるラベルを添付して、その作品の使用条件を明示できるようにする方法も検討中だ。

この Creative Commons のやり方で私が一番気に入っているのは、ものの創作には聴衆を得たいという欲望が伴う、という面が強調されている点だ。文章を書く時の私は、何よりも皆に私の文章を読んでもらいたいと願うからこそ、それを書いているのだ。もちろん、私は書くことによって収入を得なければならないのだが、この 12 年間、私は TidBITS を無料に保ちながら何とかそれを続けてくることができた。私が TidBITS でしてきたことは、何も先端科学のようなものではない。もちろんこれは誰にでもあてはまるべきモデルというわけでも、ましてや誰にでも可能な方法というわけでもないだろうが、とにかく自分の創作作品を共有してもらうということと生計の糧を稼ぐということとが決して相反するものではない、ということだけは、確かに証言できる。巨大な業界が、どんなに議会に働きかけてそれは相反するものだと人々に信じこませようとしたとしても。Creative Commons の活動がうまく軌道に乗るかどうか、これから見守ってゆきたい。私自身は彼らの活動に大きな期待を寄せているし、また将来は私自身、彼らのサービスを利用してゆきたいと思う。

でも、おそらくこの Creative Commons プロジェクトで最も注目すべきところは、それが著作権をめぐる論争に対してビジネスの側から新しい独創性を注ぎ込んでいる点だろう。アーティストたちの努力にも負けないほどの独創性がビジネスモデルにつぎ込まれて、新時代のコピー防止テクノロジーが生まれるならば、それこそが誰にとっても望ましい解決の方向ではないだろうか。


Layout Master で要素を正しくポジショニング

文: Matt Neuburg <matt@tidbits.com>
訳: 細川秀治 <hosoka@ca2.so-net.ne.jp>

Western Civilisation の Layout Master 1.1 は、私が本当に好きな種類のソフトウェアだ。それはひとつのことをして、とても立派にやってくれる。先に出たコンパニオンプログラムの Style Master (TidBITS-501 にレビュー)でも、ひとつのことをやってくれるが、それはカスケーディングスタイルシート(CSS) の作成と編集だった。HTML を補うものとして CSS はあなたのウェブページで、表現形式の詳細を大幅に指示できるようになる。この 2 つのプログラムで扱う CSS の範囲については全く重複しているのだが、Layout Masterでは位置、背景、境界プロパティのみを扱い、Style Master では これら3 種のプロパティを含んだ 全ての CSS を扱う。そこで理屈の上では Style Master のみを使って CSS の作業をすることも可能だが、おそらくそうしないだろう。なぜなら Layout Master を使うと位置プロパティを直観的な唯一の方法、つまり視覚的な方法で作業できるのだ。

<http://www.westciv.com/layout_master/>
<http://www.westciv.com/style_master/>
<http://db.tidbits.com/getbits.acgi?tbart=05602>
日本語 Style Master で高精度 Web ページ

歴史的背景 -- あなたが CSS についてよく知っているなら、この節は読み飛ばしてもらってよい。この節の目的は、CSS が何であるのかを説明し、その歴史的背景を付け加え、CSS 使用の賛否両論をまとめることだ。

ウェブが出来た最初の頃、 HTML はとても小さな言語で、規則は無いに等しいものだった。この事実は 2 つの結末に導かれる。ひとつは、HTML が適していたのが最も基本的な構造のみを持ったウェブページだったことだ。こうしたページは、単に連続したテキスト段落で構成されており、所々まばらに画像が貼ってあるだけだ。ウェブの作者は、それらテキストのスタイルや位置を指示する能力をなんら持っていなかった。そのため、ウェブページを面白く見せようとか、まともに見えるようにするのさえ難しいことだった。むろん、ページがどのように表示されるかの見当を付けることはできるが、個々人のブラウザで各々異なった表示環境が設定されているため、理知的または審美的なデザインの試みも容易に挫かれてしまう。

もうひとつの結末は、ブラウザの開発者達がこの欠点をイノベーションで埋め合わせることだ。突き詰めると、彼らは自分達の工夫を一方的に導入することで、HTML の進化を単純に推し進めた。場合により、これらのイノベーションで良いものもあった。例えば Netscape による TABLE と FONT タグの発明で、あらゆるサイトで全てのウェブマスターは安堵のため息を漏らした。けれどもこれらのイノベーションは間違って実行された。その結果、異なったブラウザとプラットホーム (同じブラウザの異なったバージョンでさえ) の間でページがどのように描かれるであろうか決定することがほとんど予測不可能な状況に導いた。ウェブマスター達は悪態をつきながら、こんがらがった回避策を書き直して時間を浪費し、考えられるあらゆる条件で、ページが正しく表示されるかどうかテストを繰り返した。

このような状況の反動は、ゆっくりとしたものだが、しかし大規模な技術的および文化的努力が、ウェブを標準化に向けて推進し、正しく決められた規則(何が HTML を構成するか、HTML を読み込んだときブラウザは何をしなければならないか) を提供した。World Wide Web コンソーシアム (W3C) は、事実上の情報交換所の役割をはたし、標準を理論化したり、HTML の異なったバージョンおよび関連した言語での規則を明解化したり、自動バリデーションツール(ウェブマスターは自分の作ったページが正式な HTML かどうかはっきり知ることができる) を提供してきた。同様に重要なことだが、Mozilla などの新しいブラウザはこれらの標準に準拠することを明白に狙っている。もちろん、もしあなたがまだ古いブラウザを使っているなら、このような状況の利益を享受できないのだが、個人的に言えば私はこの機運は素晴らしいことだと思う。私はもはや、私のページをすべてのブラウザでテストすることに心労を煩わさない。それらのページを標準まで引き上げることについて、私は何年も論争を尽くしてきたが、今や “HTML 4.01 Transitional”として検証するだけだ。古いブラウザでそれらをうまく表示できないとしても、私はかまわない。そして多くのウェブ作者が私と同じように感じていると思う。

<http://archive.webstandards.org/>
<http://validator.w3.org/>
<http://www.mozilla.org/docs/web-developer/>

ここで、やっとカスケーディングスタイルシートのところまでたどり着いた。CSS 仕様は 2 段階で開発され公開されて、CSS1 および CSS2 と呼ばれている(CSS3 は現在開発中)。いつもながら、教育目的の部分は簡素化したいので、質問はご遠慮を...

<http://www.w3.org/Style/LieBos2e/history/>

CSS1 は主に文字と段落の書式に関するもので、フォント、サイズ、文字配置、インデント、段落マージンなどを規定している。CSS2は (若干のメディア指向および言語的イノベーションは別にして、ここで説明しないが) 主にウェブページのための「視覚的フォーマット化モデル」を洗練する。これはページから、ページの構成要素である、単語、画像、段落、沢山の段落全体、を分離し、そしてそれらの要素がページのどの位置に置かれるべきかを指示できることを意味する。このようなポジショニングは、これまでテーブルやフレームの領域に配置するか、あるいはポジショニング自体不可能であったが、今度から CSS で指定することができる。(テーブルとフレームは廃止されるわけではないが、もはやポジショニングの目的に使用されるべきではない)

ひとつの例として、W3C の CSS ホームページを見てみよう。もしあなたが最新のブラウザを使っているなら、ウィンドウの右上に透過で浮いたナビゲーションボックスが見えるだろう。このボックスはあなたがページをスクロールしても浮いたまま動かない。これはこの要素の「固定」ポジショニングによって実現されている。

<http://www.w3.org/Style/CSS/>

残念ながら、フルの CSS2 仕様を完全に実装しているブラウザはまだ無いし、そしてポジショニングはたいていのブラウザにおいて曖昧な領域のひとつで、実装されていたとしても、ただ部分的に、または多くのバグを抱えているようだ。しかしサポートは着実に改善されている。そこであなたのウェブページでCSS2 ポジショニングを採用する用意ができたとき、Layout Masterの出番が来るだろう。

どのように使うか -- Layout Masterはシンプルだ。付属しているチュートリアルの助けがあれば、このプログラム全体をあなたは 1 時間足らずで学ぶことができる。それは初歩的な描画プログラムとほぼ同じやり方で使用できる。空の文書が空のキャンバスとして現れる。New Positioned Element を選択すると長方形が表示されるので、ドラッグしてそれを置き直すか、あるいはそのコーナーか端のハンドルをドラッグしてそのサイズを変える。長方形はまた、一列に並べるかあるいはそれぞれ同じ間隔で配置することもできる。長方形をダブルクリックすると、フローティングパレットが表示される。そこであなたは、位置、背景、境界プロパティを値で編集することもできる。このパレットにはヘルプボタンがあり、プロパティの使い方を説明するテキストウインドウが表示される、プロパティによっては注意ボタンが付いており、特定のブラウザでそのプロパティがどのように実装されているか警告を表示する。別ウインドウで表示される要素エディタを使って、レイヤーの順番とすべての重要な格納階層の両方が指定でき、骨格を容易に想像できる最も自然で優雅なやり方だ。

舞台裏を明かせば、Layout Master 文書は事実、テキスト文書に過ぎない。実際、これは HTML であり(お望みなら XHTML 文書にもできる)、キャンバスの中にあるそれぞれの長方形は DIV タグを表している。それぞれのタグのスタイル情報はタグ自身の中にインラインで入れることもできるし、HEAD 領域のSTYLE タグにまとめることもできる。あるいは別ファイルのスタイルシート文書に入れてもよい。この文書は HTML であるため、そして Layout Master はHTML と CSS をどのように構文解析するか理解しているため、Layout Master はあなたが HTML 作成に使っている他のツールに統合することができる。空文書から始める代わりに、あなたは既存の HTML 文書からスタートすることができる。Layout Master はこの文書を開いて、安全にポジショニングの要素を追加できる。それからあなたはその文書を Layout Master から、Style Masterや BBEdit などの別のエディタに送りそこで作業する、作業を終えて保存し、再度 Layout Master に戻ると、あなたの変更は即座に反映されている。

あなたの文書を別のエディタに送って更に作業を続けることは、実際、あなたの文書コンテンツに何を加えてゆくか、あなたに期待されていることだ。結局のところ、DIVタグしか含んでいない HTML ドキュメントは、あなたのブラウザで空白として表示されるだろう。この空白は、あなたの文書で唯一のコンテンツである DIV タグのペア、に挟まれているものだ。そこで一般的な作業パターンとして考えられるのは、まずドキュメント要素の基本的なポジショニングを、Layout Master を使ってレイアウトする。次にBBEdit や他のテキストエディタを使って、幾つかの HTMLをこれらの要素の中に入れるやり方だ。そうは言うものの、Layout Master では、他のやり方でコンテンツを供給することもできる。例えば、テキストや画像ファイルを Layout Master 文書にドラッグして入れることも可能で、直ぐに、テキストや画像が新しいポジショニング済み要素として作られる。あなたはまた Layout Master の中で手作業でコンテンツを編集することもできる、しかし、それをするためのインタフェースは非常に単純なもので、マニュアルにもこれを使うのはほんの些細な手直し程度にとどめるように、との注意書きがある。

もちろん Layout Master で作成中の文書は、どのブラウザでもプレビューすることができる。Layout Master 自体もプレビューモードを内蔵しているが、どちらかと言うとお粗末でページがどのように見えるかをうまく表示しない。そもそも、あなたの仕事の結果はブラウザで見るべきであり、Layout Master それ自身は概念図的な視覚環境のようなものであるべきだ、それ以上のものであることを望むべきではない。

要するに、Layout Master の意図は、ポジショニングした要素がどうなっているか、それらの要素はお互いにどのような関係にあるかを示し、そして、それらを編集するための、理に適った頼もしく使いやすい環境を提供することだ。Layout Master はこれを立派にやってくれる。他の種類の編集や表示などの仕事は、他のプログラムに残しておけばよい。そして Layout Master はそれらの他のプログラムとうまく連携するので、それは完全に適切な選択だ。私が発端で言ったように、Layout Master はまさにひとつのことをして、それをとてもうまくやる。それゆえことさらに愛らしい。

結論 -- Layout Master は Mac OS X ネイティブではない、それは新しことが何もないことを心配する古いシステムのユーザに福音だろう。実際、Layout Master は Mac OS X の Classic 環境でさえ完全には動かない。特に、ヘルプテキストは文字化けして表示され、そして Mac OS X ネイティブのブラウザではプレビューすることができない (Layout Master は、Mac OS X bundle を理解できないので、これらのブラウザの存在を認識できない)。しかしながらこれは、我々が Layout Master に期待するものと比べると、それほど大きな問題ではない。Layout Master 文書は HTML で書かれており、どのようなブラウザからでも手作業で開くことができる。そして、Layout Master は文書を BBEdit に渡すことができるため、代わりに BBEditからブラウザを開いてプレビューできる。おそらくあなたは2つのプログラムを一緒に使っているだろうから、このような回避策はまったく自然なことと思われるだろう。

個人的にはLayout Master が好きなのだが、告白しておくことがある。私自身のウェブページで、ポジショニング要素を大々的に使用するのは、まだその時期ではないと私は思っている。世間で広く使われている Internet Explorer 5.1でそれがうまく表示できないのが最大の理由だ。そしてポジショニング要素は挙動に注意が必要で、それらを使い始めるには、ある程度の気の長い実験をしておかなければならないと思っている。そのようなことで、自分の慰めでもあるのだが、時期が来れば、Layout Master を取り出して、その有効なCSSを作成する能力や、他の HTML ツールやブラウザとの連携した使用により、私の実験はより容易になるだろうと思う。もしあなたがポジショニング要素の素晴らしい新世界について興味があり、そしてあなたのウェブページをレイアウトするのにテーブルの中にテーブルを入れ子にして使うやり方を止めるとあなたの生き方がどのようになるか、何か実地の経験をしたいと望むなら、私はあなたにLayout Master を試してみるようお勧めする。

Layout Master は50ドルだ。あるいは Style Master Proと合せて 80ドルで購入することも出来る。30日間無料で試用できるデモ版をオンラインからダウンロードでき、マニュアルとチュートリアルもオンラインで閲覧できる。Layout Master を使用するには、Mac OS 8 かそれ以降を搭載したPowerPC Macintoshと最低 4 MB (10 MB 推奨) の RAM空き容量が必要だ。

<http://www.westciv.com/layout_master/download/>


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Valid XHTML 1.0! , Let iCab smile , Another HTML-lint gateway 日本語版最終更新:2005年 12月 26日 月曜日, S. HOSOKAWA