TidBITS: Apple News for the Rest of Us  TidBITS#633/10-Jun-02

Mac OS X へと大ジャンプするのに二の足を踏んでいる?我々もそうであった。そこで Mac OS 9 からのアップグレードで多くの人に共通する問題の多くを解消できるアップグレードガイドをまとめてみた。さらに、Adam は第一回の MacMania Geek Cruise についてレポートする - 200人に近い Mac 狂と一緒にアラスカへのクルーズの旅とはどんな感じだろうと思いうかべて見たことのある人には必読である。ニュースの部では、Apple は eMac を一般市場向けにも売出したこと、そして Mac OS X 10.1.5 と Mailsmith 1.5.3 についてお伝えする。

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MailBITS/10-Jun-02

Mac OS X 10.1.5 リリースされる -- Apple は Mac OS X 10.1.5 をリリースした。これはアプリケーション、ネットワーク、それにサードパーティ周辺機器に対する段階的改良である。そのデジタルハブ構想にさらにスポークを追加する形で、Mac OS X 10.1.5 には Canon の新デジタルカメラ、Nikon の FireWire カメラ、さらに MO ドライブに加えて、SmartDisk, EZQuest, そして LaCie の外部ディスクレコーダに対するサポートを取りこんでいる。Mail と Sherlock は安定性に手が加えられ、そしてテキストに対する Quartz アンチエイリアス機能もそれをサポートするアプリケーション(例えば最近リリースされた Microsoft Office X Service Release 1)に対して使えるようになった。ネットワークに関しては、iDisk へのアクセスが改善され、ローカルとリモートのボリュームに対するファイル検索も改善、AFP (Apple Filing Protocol) 経由での Windows NT ファイルサーバに対するナビゲーションも良くなった。Mac OS X 10.1.5 は Software Update 経由で入手できるが、Mac OS X 10.1.3 や 10.1.4 のユーザーに対しては独立した 21.4 MB のダウンロードとしても入手できる;バージョン 10.1 から 10.1.2 に対しては別の 45.1 MB の Mac OS X Update Combo 10.1.5 が必要である。[JLC](カメ)

<http://www.apple.com/macosx/>
<http://db.tidbits.com/getbits.acgi?tbart=06839>
日本語 検証 Microsoft Office X のサービスリリース 1
<http://docs.info.apple.com/article.html?artnum=122010>
<http://docs.info.apple.com/article.html?artnum=122011>

Mailsmith 1.5.3 検索機能を強化 -- Bare Bones Software はその強力なメールクライアントである Mailsmith をバージョン 1.5.3 へとアップデートした。このバージョンの特長となる機能追加はメッセージに対する検索機能で、単にキーワードを含むメールを探し出すのではなく、検索条件にどれだけ近いかで検索できる機能である;検索結果は一番近いものを最初としたリストとして表示される。Mailsmith 1.5.3 はまた、ファイルをこのプログラムのアプリケーションアイコンにドラッグすることで添付書類付きの新規送信メールを生成できる。もちろん他の修正や改良がおりこまれている。Mailsmith 1.5.3 はバージョン 1.5 かそれ以降の所有者に対しては無償のアップデートであり、5 MB のダウンロードとなっている。[JLC](カメ)

<http://www.barebones.com/products/mailsmith.html>
<http://www.barebones.com/support/mailsmith/mailsmith-notes.html>
<http://www.barebones.com/support/updates.html>

eMacs を誰にでも -- びっくりする動きとして、Apple は一体型の eMac を欲しい人には誰にでも売ると発表した。これは教育市場向け専用として、低コストの CRT ベースのシステムを発表して一ヶ月経つかたたないかのうちの出来事である。(TidBITS-628Apple 教育用 eMac とより速い PowerBook を発表 参照。)この動きは、かさばる CRT ディスプレイを Apple の主力製品群に再び戻すことになる。それではあれだけ大騒ぎをしたフラットスクリーン iMac をもってすべて LCD に変えていくのだという路線変更はどうなったのか?この裏には一つの大きな理由がある:eMac の $1,100 の値札は 700 MHz PowerPC G4 をより多くの消費者の手の届く範囲に位置付けることになる。フラットスクリーン iMac の最低でも $1,400 という値札は、一部の消費者から手の届かない値段であると今でも非難の声が絶えていない。eMac の標準構成は 128 MB の RAM と 40 GB ハードディスク、それに CD-RW ドライブと 56K モデム(これは教育向けには標準装備でない)となっている。もちろん、eMac には 17インチ CRT ディスプレイ、内蔵 10/100Base-T Ethernet、2つの FireWire ポート、USB ポートが5つ、そして Nvidia GeForce2 MX グラフィックコントローラが付いている;AirPort カードもワイヤレスネットワーク用に追加できる。[GD](カメ)

<http://www.apple.com/emac/>
<http://db.tidbits.com/getbits.acgi?tbart=06803>(日本語)Apple 教育用 eMac とより速い PowerBook を発売"
<http://www.apple.com/imac/>


Mac な人たちと外洋クルーズ

文: Adam C. Engst <ace@tidbits.com>
訳: Mark Nagata <nagata@kurims.kyoto-u.ac.jp>

第1回 MacMania Geek Cruise の航海は無事終着港に到着し、帰宅してから数日間の私はこの本当に素晴しかった体験の余韻に包まれ通しだった。クルーズはカナダ・ブリティッシュコロンビア州のバンクーバー港から 2002年 5月 27日に出航し、太平洋に進路を向けてアラスカ沿いをぐっと北上してから、帰路はゆっくりと沿岸部をたどって Juneau、Skagway、Ketchikan などに寄港しつつ、7日後にバンクーバーに帰港するまでの航海だった。海上を進む日にはさまざまな会議やセッションが催され、上陸する日は各自の自由行動に任された。

参加メンバー -- この旅行で一番楽しかった事といえば、何といっても船上で、また船外で、大勢の Mac な人たちと会うことができたことだろう。クルーズの出航の前日には、TidBITS Talk の常連であって TidBITS の記事もいくつか投稿してくれた Derek Miller が、TidBITS Talk のメンバーたちやMacMania の講演者たちのためにバンクーバーの町でとても楽しい昼食会を企画してくれた。また、その数日後には、TidBITS の読者であって以前ツアーガイドの仕事をしていたこともある Peter Anderegg が、わざわざ午後一杯を割いて私たちに Juneau の観光案内をしてくれ、ツアーバスが決して訪れないような穴場に連れて行ってくれた。その中で我が息子の Tristan が一番気に入ったのは Last Chance Basin Mining Museum で、この金鉱博物館は古くてボロボロになった金鉱用機関車のコレクションで有名なのだ。(私たちがバンクーバーや Juneau で撮った写真を下記のページでどうぞご覧あれ。)夜には、Peterが Juneau Macintosh ユーザーグループのミーティングに私たちを案内してくれ、素晴しく美しい Auke Bay レクリエーションエリアの浜辺でバーベキューパーティーを皆で楽しんだ。オヒョウや鮭のバーベキューは美味、楽しい会話に気持ち良い風! David Pogue はうきうきと Mac OS X の素晴しさを語り、John de Lancie(スター・トレックの“Q”をはじめ数々の役で有名な俳優)も加わってスター・トレックのファンのために優美にポーズしてみせ、誰もが夢のようなひとときを楽しんだ。

<http://www.museumsusa.org/data/museums/AK/81576.htm>
<http://homepage.mac.com/adamengst/PhotoAlbum6.html>
<http://homepage.mac.com/adamengst/PhotoAlbum7.html>

船上での話に戻ると、期間中を通じての陽気な雰囲気とフレンドリーなムードは、比べるとすれば 16年間にもわたって歴史を積み上げ経験を重ねてきたMacHack の開発者カンフェレンスにすら勝るとも劣らないようなものだった。MacMania がスタートしてから1・2日も経たないうちに、人々の顔はすっかりなじみのあるものとなり、顔と名前も(皆が着けていたネームタグのおかげで)結び付き、ほとんどの人がすっかりリラックスできて、くつろいだ雰囲気になった。その第一の原因は、これは MacHack でも同じことなのだが、1つの共有スペースに皆が集まって PowerBook や iBook を持ち寄り、ワイヤレスのネットワークを共に利用してサテライトベースのインターネットアクセスも使うことができた、という事実かもしれない。このインターネットアクセスはかなり高価(1週間で $100)だったが、今回のような技術指向のカンフェレンスでは必須以外の何物でもない。参加者のうちでこれまでに MacHack 会場のミシガン州Dearborn の Holiday Inn Fairlane に行って Mac な人物たちで一杯のロビーの空気を経験したことのなかった人は皆、この共有スペースにただたむろして他の Mac ユーザーたちとおしゃべりしながら、同時にメールを読んだりウェブをブラウズしたり、今日撮った写真を整理したりすることもできる、というのがどんなに楽しいことかを、一様に驚きながら実感したのだった。

<http://www.machack.com/>

楽しみといえば、私と Tonya がことに心待ちにしていたのは、他の講演者たちのほとんどは私たち2人とも長年友達付き合いをさせてもらっているのだけれども、今回はさらに多くの人たちと新しく知り合いになることができ、さらにこれまで仕事の結果を通じてだけ長年名前を知ってきた人たちとも直接会えるのだ、ということだった。特に嬉しかったのはオレゴン州 Corvallis のMacintosh ユーザーグループの Phil Russell と会えたことで、ニュースレターの Mouse Droppings に載っている彼の“tips”コラムは私たちが長年楽しく読ませてもらってきたものだった。John de Lancie もとても楽しい人で、Macintosh のカンフェレンスというものがスター・トレックのコンベンションよりもストレスなしに過ごせるものだとわかるやいなや、彼もすっかり羽を伸ばして、楽しい会話ができるだけでなく子供好きな人でもあるということを、存分に私たちに披露してくれた。(ある夜など、私たち家族と彼とが偶然エレベーターに乗り合わせた時、彼はサッと Tristan を抱き上げて、Tristan をカジノ部屋を通って食堂までずっと「飛行機に変身」させてくれた。)

<http://homepage.mac.com/adamengst/PhotoAlbum9.html>

会議 -- カンフェレンス自体はおおむね予想された通りの内容だった。さまざまのトピックについての数多くのセッションが行なわれ、長年の間に誰にもお馴染みになった有名人の面々が講演者として名前を連ねた。私の印象では、これらのセッションの内容のレベルは他の同種のカンフェレンスのものとほぼ同程度だっただろうと思う。ただ、このカンフェレンスが他のものとまったく違っていたのは、セッション時間以外の時間でも講演者たちと(また、逆に私の立場から言えば聴衆たちと)直接接触する機会がたっぷりとあった、という点だった。

例えば、私が Macworld Expo で講演する場合は、講演自体の内容は MacManiaでのものと同レベルの内容なのだが、Macworld では講演後の質問セッションが終わるやいなや私は大急ぎで次の面会予約か次の講演会場かを目指して走り出さねばならないのだ。だから、聴衆にしてみれば一応質問への回答はもらえるけれどもそれっきり、それ以上深く突っ込んだ会話を続けるチャンスは無い。対照的に MacMania では、ほとんどの講演者たちと気楽に会話が続けられ、現に多くの人たちがこの機会を利用して突っ込んだ話を交わしていた。

クルーズ -- 当然のことながら、MacMania が他の Macintosh カンフェレンスと一線を画しているのはその会場設定、およそ 1,400 人乗りの Holland America の豪華客船 ms Volendam 号に乗ってのクルーズだったことだ。これはコンセプトとしては最高だ。誰でも一度はクルーズに乗ってみたいだろう。けれども現実はそう単純ではなかった。今回のクルーズについては私が6回講演するということで私と私の家族は無料で参加できたのだが、Tonya と私は自分持ちの休暇プランにこのようなクルーズを検討するのはちょっと気が進まない、という点で意見が一致した。

今回体験してみてわかった大きな問題は、クルーズラインの会社によってそれぞれ異なったグループの人々を対象としているということだ。Holland America の場合は主に 50 歳以上の人々を対象とし、そろそろ引退しようという年頃のゲストを念頭に置いているようだ。私たちのように 30 歳台半ばで小さな子供を連れていると、この船のやり方に違和感を覚えることもしばしばだった。子供向けのプログラムは5歳以下の子供には向かないものだったし、午後5時と6時の間にはルームサービス以外に食料を入手する方法が無かった。(ディナーは8時からだったので、いつも母親か子供のどちらかがこのくらいの時間になってお腹が空いてたまらなくなるのだ。)その上、ルームサービスのメニューには子供向けのものは一切無い、という具合だった。とは言っても決して Tristan のような子供が歓迎されていないという訳ではない。船のスタッフも他の人たちも、皆 Tristan にとても優しくしてくれた。ただ、船そのものが若いファミリー向けに出来ていない、というだけのことだ。

私個人の意見を言わせてもらえば、私にとっての最大の悩みはタバコだった。船の中の多くの場所で喫煙が許されており、その煙と、至る所に漂う芳香剤の香りとが相まって、私は常にイライラさせられた。それに、船中ランニング禁止の規定のため、ランニングにぴったりだと思える下部デッキの外周を走ることができず、トレーニングマシンの上で走らされる羽目になった。最初の1日は海が荒れて Tonya が寝込んでしまい、私も頭がフラフラしていたので、普通なら退屈なトレーニングマシンでのランニングも結構危険に満ちたものになった。食事は、これだけ大勢の人々に供するのはなかなか大変なことだとは思うが、まあありふれた内容だった。(ただ、量だけは好きなだけ注文できた。)

良かった点といえば、主にインドネシア人から成るこの船のクルーのサービスは素晴しかった。私たちの客室付の給仕にはきっと妖精の血が混じっていたに違いない。おもちゃで散らかった部屋を、1日に2回、まるで魔法をかけたようにきちんと掃除して整頓してくれた。Tristan は、毎晩ベッドに入る前に枕の上に魔法のようにチョコレートが現われることに目を丸くした。いつでもにこやかなウェイターたちのサービスも完璧で、料理を注文するやいなや食卓から不用な銀器は素早く消え失せ、必要な銀器はいつでもすぐに現われる、という具合だった。

寄港した港の印象は場所によってさまざまだった。Juneau では、Peter Anderegg のおかげで本当に素晴しい時を過ごすことができた。Skagway では、3時間の列車旅行ツアーに参加して White Pass & Yukon Railroad の旅を楽しみ、私たち2人は素晴しい風景を、現在列車に夢中の Tristan は初めて列車に乗るという経験を、それぞれ満喫することができた。けれども Skagway やKetchikan の町はどちらかと言えばただの観光地という感じで、(Skagway の人口は、ここに定期的に寄港するクルーズ客船2・3隻の乗客数を合わせた数より少ないくらいだ)安っぽいガラクタと高級な宝石店のチェーンとの取り合わせが奇妙な印象を与えた。(どちらの町でも Diamonds International の店と Little Switzerland 店が軒を並べているのがいかにも非現実的に見えた。)もちろんどの店も正直な商売をしているのだろうし、クルーズに参加する種類の人々の好みに合わせたものを的確に判断して売っているのだろうとは思うが、それでも私たちにはこのいかにも売らんかなのやり方は気に入らなかったし、ことにそれぞれの土地柄と全く無関係の品物を売っていることに違和感を感じざるを得なかった。

このクルーズで最高の景色を見られたのは、Glacier Bay をゆっくりと通り抜けて、山脈に挟まれたフィヨルドが2筋の氷河となってじりじりと海に流れ込む場所を間近に見た時だった。アラスカの山々は、岩でごつごつして雪に覆われているとはいえ、私たちがシアトルに住んでいたころ見慣れたカスケード山脈の眺めとそう変わる所は無かった。けれどもこの氷河というもののとにかく大きいこと、その雄大さには呆気にとられるばかりだった。幅数百メートルにもわたる(氷河はあまりにも大きくて長さの見当はつけにくい)Margerie 氷河の前では船は数時間も停泊して、乗客たちは皆一様に驚きの目を見張り、時々巨大な氷の塊が氷河から切り離れて下の雪解け水のような海水面に音を立てて崩れ落ちるたびに、おぉー! という叫び声を挙げるのだった。

<http://homepage.mac.com/adamengst/PhotoAlbum8.html>

そして今後は -- この第1回の MacMania Geek クルーズに参加しそびれた方は、2003年 6月 1日から 6月 8日までハワイで予定されている MacMania IIに予約を入れるのも良いかもしれない。これは第1回の MacMania とはちょっと違うものになるようだ。もちろん開催地がアラスカからハワイに変わるという違いがあるが、それだけではなく乗船するのが Norwegian Cruise Lines の船になる。これは Holland America とはまた違った乗客層を念頭に置いていることだろう。さらに、カンフェレンス自体も「ビジュアル・アート」と Mac 上の Perl とに特に重点を置いたものになるらしい。私は MacMania II には講演を頼まれなかった。(それに、ハワイまで飛ぶのはニューヨーク州の片田舎からはあまりにも長旅だ。)けれども、私以外の多くの講演者たちは MacMania II にも参加するようだ。

<http://www.geekcruises.com/home/mm2_home.html>

少なくとも私にとっての MacMania の意義は、いわば「目的地付きのカンフェレンス」、つまりすべての参加者が同じ場所に滞在し、講演以外の交流の場が重要になってくるようなものがもっとあっても良いのではないか、ということだ。その目的地そのものの選び方も大事だろう。また、家族全部で楽しめるような企画も必要だろう。けれどもその中で一番本質的な要件は、さりげなく皆が集まれて、そこで講演時間以外にインターネットアクセスが利用できるような公共の場所だ。この要件を満たすようなリゾート地はいろいろあるに違いないと思うし、これからもこのようなタイプのカンフェレンスが次々と登場してきてもおかしくないはずだと思う。ことに Macintosh コミュニティーのような、技術的側面と社交的側面とを兼ね備えているようなグループにはぴったりの可能性ではないだろうか。


Mac OS X 移行の落し穴を避けよう Part 1

文:Adam C. Engst <ace@tidbits.com>
訳:倉石毅雄 <takeo.kuraishi@attglobal.net>
訳:佐藤浩一 <koichis@anet.ne.jp>

Macintosh 界において Mac OS 9 から Mac OS X へのアップグレードを考えることほど、不安、嫌悪、そして恐怖を引き起こすものはなかった。コマンドライン入力を使用しなくてはいけないのか(そんなことはない)、ハードディスクのフォーマットと分割をしなおす必要があるのか(必要ではない)などの心配もある。それ以外にもソフトのアップグレードに何百ドルもかけなくてはいけないのか(アップグレードは役に立つかもしれないが、必ずしも必要とは限らない)、Mac OS X の噂高い短点が大きな障害となるのか(柔軟性がない場合だけ)などいった心配もある。そして避けようがない障害がある。古いハードウェアや業務遂行に必須だが Mac OS X に対応していないソフトや付属品などだ。

まず最初に Mac OS X へアップグレードできるかどうか判断しよう。もし比較的新しい PowerPC G3- もしくは G4-ベースの Mac を所有していないか、Mac OS X でどうしようにも作動しないソフトやハードに依存しているのであれば、アップグレードは不可能だ。同様に、新しいオペレーティングシステムをインストールして新しい環境に慣れるだけの時間の余裕が見つからないのであれば、アップグレードするべきではない。作業自体は難しくないのだが、正しくインストールを行うために時間をかけないと、後で時間を無駄にするだけになる。どちらにせよ、アップグレードできないからといって悩むことはない。Apple は個人的ないじめのために Mac OS X の技術的な必要条件を定めたわけではないし、あるプログラムや付属品が Mac OS X に対応していない理由は色々ある。簡単に言えば、自分の必要を満たすだけの Macintosh 設定があるのなら、それで満足しよう。避けようがなくなる時(つまり次に Mac を買う時)まで Mac OS X について心配することはない。

期待を調整 -- もし Mac OS X への移行の準備が出来ているのであれば、一番大事なことは過度の期待をしないことだ。Apple の宣伝を見ると Mac OS X は人生を変えるような印象を受けるかもしれない。そんなことは起こらない。それは単なるグラフィックユーザ環境を備えたコンピュータオペレーティングシステムに過ぎない。それ以外の何物でもない。

Macintosh ユーザの大半にとっては、Mac OS 9 で出来ないことが Mac OS X で出来るようになる訳でもない。Web をブラウズしたり、電子メールを読んだり、ワープロや表計算を行ったり、コンピュータの主要な使用目的はいずれのオペレーティングシステムでも同等に可能だ。正直なところ、つい最近までは、Mac OS X へのアップグレードはほとんどの Mac ユーザにとっては機能が減少する結果になっていた。幸運なことに、その状況は日々改善されつつある。さらに大事なことに、それに相応するものが Mac OS 9 にはないようなソフトが Mac OS X 上で現れつつある。

どのように Mac OS X が働くべきかを考え、正しく設定を行い、それがなければ Mac が使えないインターフェース拡張に必要なユーティリティをインストールしたりなど、ある程度の時間と労力をかけて考える必要がある。現実的には、私は Mac OS X の基本的なインストールにほぼ一日かけて、常にそれを起動しっぱなしにできるようになるまで、それから数日間少しづつ時間をかけて設定を調整した。幸運なことに、Mac OS X の設定を完了するまでの間、Mac OS 9 を起動するのも簡単なので、一度にアップグレードに大きな時間を割く必要はない。

もう一つ、システムのいじれる範囲とその知識が限られてくることを覚悟する必要がある。長く Mac を使っていたユーザは大抵の場合、自分なりのファイルの分類方法や使用手順を確立している。だが、これらは Mac OS X の制約的なディレクトリ構造や複数のユーザの想定にうまく当てはまることはあり得ない。これについての私の意見は、諦めろ、の一言に尽きる。複数の階層を持ったフォルダいくつかに対して腹を立てるより、人生にはもっとましなことがあるだろう。Apple はこの方向に私達を押してきている。まずシステムフォルダ、次にシステムフォルダ内の特別なフォルダ、次に Application や Documents フォルダなど。Mac OS X では自分の Mac なのに客扱いされているよう感じるのと同様、気に入らないかもしれない。だが、これらは Mac OS X の Unix の土台から来ている深い考慮の末の設計判断であり、少なくともいくつかは素直に受け入れるしかない。禅とでも思えば良い。

また、何年もかけて Macintosh の知識を蓄えた者としては、Mac OS X がどう働くのか理解できない状況は受け入れ難いかもしれない。私から助言させてもらえば、最初に Mac を使い始めた時にいかに楽しかったかを思い起こしてみるべきだ(少なくとも私は楽しかった)。Mac OS X の癖を覚えたり、新しい作業方法を開発するのは私としては非常に楽しかったし、何年もの経験のおかげで昔に較べてこれはかなり楽だった。

ハードウェア分析 -- 所有している Mac に Mac OS X を走らせるだけの十分な CPU 馬力があるならば、次の段階は、ハードウェアを分析してシステムが Mac OS X とうまく働くかを評価し、必要とあれば、働かせるために必要な作業の判断だ。

RAM は必要不可欠だ。つい最近ほどの安値ではないものの、未だに十分安いから大量に装備するべきだ。Apple が Mac OS X の最小条件として 128 MB を奨めているかもしれない。だがメモリ管理は Mac OS 9 とは全く違う方法で行われているため、RAM は(通常の使用であれば 512 MB くらいまで)多ければ多いほど良い。TidBITS スポンサーの dealram であなたの Mac の RAM の最近の値段をチェックしてみると良い

<http://dealram.com/src=tb>

ディスク容量に関しては Mac OS X 自体に 1 ギガバイト強、必要だ。作動可能な Mac であれば少なくとも数ギガバイトの容量のハードディスクを備えているが、もし 2 GB 空いていなければ、ある程度のスペースを空けるか、新しいハードディスクへのアップグレードを考えるべきだ。私はそうした。私は(そのとき購入可能なうちでは一番小さい) 10 GB のドライブを内蔵した Power Mac G4/450 を購入した。Mac OS X をインストールするときには満杯になりかかっていた 10 GB ドライブを約 $125 ほどの値段の 60 GB の Maxtor ハードドライブで置き換えた。(ここではインストール手順について述べるつもりはない。敢えて言えば、Accelerate Your Mac の情報が非常に役に立った。少々長々した説明だが。)

<http://www.xlr8yourmac.com/IDE.html>

プリンタ、デジカメ、外付けフロッピドライブ、SCSI カード、テープドライブなどは引っかかりやすい。古いという点以外には全く問題なく働く付属品の多くは Mac OS X と互換性がなく、おそらく将来もないだろう。どれが Mac OS X と互換性があってどれがないか、アップグレード前に判断することを勧める。その情報は製造元の Web サイトや技術サポートに電話して手に入るはずだ。もしその部品が Mac OS X と互換性がないのであれば、二つの選択肢がある。互換性があるモデルと取り換えて、互換性がない部品を誰かに譲るか売る。だが、もし取り換え費用が非常識なほど高いとか、同等な互換性がある部品がないというのであれば、それを使用する必要があるときには Mac OS 9 を起動すれば良い(Mac OS X の Classic 環境で働かないというのであればだが。もっとも、働かないことの方が多いかもしれない)。もちろん、付属品を使用するために Mac OS 9 を起動するのは理想的とは言い難いが、それが必要になるかもしれないという認識は期待の調整の大事な一部だ。

所有する部品の完全なリストを作成して、どれが互換性があるか、どれが新しいドライバを必要とするか、そしてどれが取り換えを必要とするかを書き留めることを勧める。新しいドライバを必要とするものは、ドライバをダウンロードするためのページの URL をメモしよう。

ソフトウエアは? -- ハードウエアの評価が終わったら、次はソフトウエアの番だ。経験からすると、ほとんどの Mac ユーザは自分で思っている以上の数のプログラムを使っている。Mac OS 9 で実際にどのプログラムを使っているかを知るには、次のようにすると良い。「アップルメニューオプション」コントロールパネルで、最近使った項目数のアプリケーション欄を最大の 99 にして、一週間程度いつも通り Mac を使うのだ。頃合いを見計らって、アップルメニューの「最近使ったアプリケーション」を開き、リスト表示にして名前の順に並び替え、メモを作成するためリストをワープロの文書にコピーする (全てのファイルを選択して Command+C を押し、その後文書に切り替えて Command+Vを押す)。

まず最初に、インストーラやもう二度と使わないアプリケーションをリストから取り除く。そして、残ったアプリケーションについては、メーカーのウェブサイトにアクセスしアップグレードが必要かどうか確認する。必要なら、リストにアップグレードの価格、ダウンロード用 URL、そして Classic モードで旧バージョンを一時的に使えるかどうかを書き込む。例えば、私はまだ Timbuktu Pro を Mac OS X 互換バージョンにアップグレードできていないが、何回か使用しなければいけなかった時にも充分 Classic で動作していた。

周辺機器と同様、どうしても必要なアプリケーションがアップグレードできずしかも Classic で動作しないなら、2 つの選択肢がある。使用するときに Mac OS 9 で起動するか、もしくは別のプログラムを探すかだ。これが良い方法だと言うつもりはない。ただ、慰めにならないかもしれないが、私が試したほとんどのアプリケーションは Classic で問題無く動作している。少数の例外、例えばいつも使っている QuarkXPress 4.1 は、Classic 互換だが使用するのは悲惨だ。(他のアプリケーションから Quark に切り替える時、最近発見したのだが、Command-Option-ピリオドを押して画面をリフレッシュしないといけない。マクロで実行するのが良いのだろう。さらに、Command-Tab でツールを切り替えるのに馴れているなら、代わりに Command-Control-Tab、あるいは良く使う 2 つのツール切り替えのショートカットである Shift-F8 を使わなければならない点に注意。) iPhoto 本の次版のために Adobe InDesign 2 に乗り換えることを真剣に考えているところだ。

インターフェースにも目を向けて -- これまでのステップで、たぶん見落としているソフトウエアがある。様々な方法で操作を簡単にするため見えないところで働いているユーティリティだ。コントロールパネルと機能拡張フォルダをチェックして、無いと困るユーティリティを前述のソフトウエアのリストに追加しておく。特に、Retrospect バックアップサーバも同時にアップグレードする必要がある Retrospect Client のような、隠れた関連性があるものにも注意を払うことが必要だ。Mac OS X では多数のアプリケーションでまだ存在しないものの、Palm 同期コンジット (Palm Desktop アプリケーションフォルダ内の Conduits フォルダにある) のようなシステムフォルダの外にあるものも忘れてはならない。

さらに、私が書いた Mac OS X ユーティリティの特集記事をもう一度読み返してサードパーティのユーティリティだけでなく Mac OS 9 の無くてはならない機能もどのようにすれば置き換えることができるか考えてみると良い。私の父は、Mac OS X の変更できない Apple メニューと Dock に面喰らっていたが、ASM と FruitMenu をインストールした後は、満足度が非常に高まった。

<http://db.tidbits.com/getbits.acgi?tbser=1218>
日本語 厳選 Mac OS X ユーティリティ Mac OS 9 の機能を取り戻す
日本語 厳選 Mac OS X ユーティリティ サードパーティ機能の復活
日本語 厳選 Mac OS X ユーティリティ コントロールをカスタム化
<http://asm.vercruesse.de/>
<http://www.unsanity.com/haxies.php>

ソフトウエアを集める -- ハードウエア、ソフトウエア、そしてインターフェイスの変更リストが完成したら、早速できるものすべてをダウンロードし、必要なら Microsoft Office X のようなプログラムを購入、そして必要なハードウエアを手に入れることをお奬めしたい。当然ながら、これらのことを Mac OS X をインストールする前に行なう必要は無いが、事前になら空いている時間に行なうことができ、Mac OS X を導入した後では余裕が無くなってしまう事態を防げる。ダウンロードしたものはまとめて格納しておき、インストールの時期がきたらすぐ探せるようにしておく。アップグレードの後、そのまま Mac OS X に完全に移行するかどうか確信が持てない時には、Classic で動作するアプリケーションのアップグレードの購入や Mac OS 9 でなら動作する周辺機器を買い換えるのを遅らせても一向に構わない。

もし、遅いモデムでインターネットに接続しているなら、これらのアップデートを事前にダウンロードすることは、Mac OS X をインストールしたあとのストレスを無くすだけでなく、必要になる様々な Mac OS X アップデートも入手できることになる。さもなければ、Software Update がインストールプロセスの一環として非常に大きいファイルをダウンロードするのを延々と待ち続けないといけない。そして、万が一再インストールしなければいけなくなった時でも、これらのインストーラをまたダウンロードしなくても済む。

第 2 部Mac OS X 移行の落し穴を避けよう Part 2ではさらに、ハードディスクの準備、実際にソフトウエアのインストール、そして Mac OS X での最初の一歩にお連れするための核心にせまる予定だ。


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