TidBITS: Apple News for the Rest of Us  TidBITS#635/24-Jun-02

スマートなハンドヘルドコンピュータからワイヤレスでどこからでも自分のメールや Web にアクセスしたい?我々もである。そこで、Jeff Carlson がなぜ新しい Palm i705 は少なくとも正しい方向へ向けての一つのステップであるかを説明する。Adam は第 17 回の MacHack 開発者カンフェレンスから戻ったばかりで Mac の世界の未来を覗いてみる。そして Matt Neuburg は強力なブックマークユーティリティである URL Manager Pro のレビューを手短に行う。

記事:

Copyright 2005 TidBITS: Reuse governed by Creative Commons license
<http://www.tidbits.com/terms/> Contact: editors@tidbits.com>


本号の TidBITS のスポンサーは:


MailBITS/24-Jun-02

TidBITS のサーバ不具合 -- 大急ぎのお知らせなのだが、ここ数日間、我々のメインの Web とメールのサーバに不具合が起っている。しかし未だ原因追求が出来ていないので、この状態はもうしばらく続くと思われる。結論を言えば、もし我々の Web サーバにたどり着けないとかメールが一時的にバウンスしてしまうとかがあっても、我々はその問題に気付いており対策をいろいろ試みているので、その度に我々に不具合の知らせをしてくださらないようにお願いしたい。[ACE](カメ)


TidBITS 御用達ツール:URL Manager Pro

文: Matt Neuburg <matt@tidbits.com>
訳: 亀岡孝仁 <takkameoka@earthlink.net>

Web を何年かやっていると、誰でも多くの、それもかなり多くの URL を将来必要だからと、自分の習慣と好みに応じて溜め込んでいるものである。これらの保存された URL は通常“ブックマーク″と呼ばれている。Adam が 1996年にブックマーク管理ソフトウェアとその技術についての三部作の記事を書いたが、私は当時はほとんどこれについて気にもかけなかった。というのも、私の好みのブラウザである Internet Explorer はこの仕事をそれなりにやってくれていたからである。“お気に入り”URL を選択するための階層化メニューもあり、それを整理するアウトラインインターフェースもあった。しかしながら、Mac OS X への移行と共にこの辺の事情は大きく変ってしまった。問題は、Mac OS 9 から Mac OS X へと自分の設定を段階的に移行していきたい、そして最悪戻さないといけない場合でもキチンと関係付けて保存しておきたいというところにあった。でももっと大事なことは、自分好みのブラウザはもう ひとつ ではないことであろう - この大胆な新世界にいては、私は興味の引かれるいくつかのブラウザ(Internet Explorer, Mozilla, OmniWeb、等々)を試さざるを得ないのである。そして突如として、私には別に独立したブラウザに依存しない URL キーパーが、集中リポジトリとして必要である事が明確にわかったのである。

<http://db.tidbits.com/getbits.acgi?tbser=1132>(日本語)本よりもたくさんのしおり、パート1
(日本語)本よりもたくさんのしおり、パート2
(日本語)本よりもたくさんのしおり、パート3

この切羽詰ったニーズの中で、私を危機から救ってくれたのが Alco Blom の URL Manager Pro であった。ここ数ヶ月の間、私はこれの開発バージョンをいくつか使ってきたが、ここに来てようやくバージョン 3.0 として最終版にたどり着いたので、推薦するのにちょうどいい機会であると思った。そして、本当に推薦するに値するのである。簡単にいえば、私が Mac OS X への切替えをするのにこれなしでは出来なかったであろうというユーティリティを5つあげるとすれば、URL Manager Pro は間違いなくその一つに入る。

<http://www.url-manager.com/version300.html>

庭を設計する -- 一つの URL Manager Pro ウィンドウが一つのブックマークファイルをあらわす;ファイルは1個に限定されるわけではないが、個人的には URL Manager Pro が開く時に開くファイル1個だけにしておくのがいいと思う。そのウィンドウはアウトラインされたフォルダ(カテゴリ)とその中の URL を表示する;これらはアウトラインとして考えられる範囲でどの様にでも再配置できる。個々の URL にノートをつけ加えたり、その他もろもろのオプションがある。URL をダブルクリックすることで自分のブラウザの中に開くことが出来る;または好きなブラウザの中にドラッグすることで開く事も出来る。しかしただ URL を開くだけなら何も URL Manager Pro のウィンドウの中でやらなければいけないわけではない;このブックマークファイルはプログラムの Dock メニューの中に階層的に表示されるようにも出来るし、そしてその上、Internet Explorer, Opera, そして iCab の場合は、そのブラウザ自身のメニューの中で通常の("共有")メニューとして表示される。(付属の "menulet" である Mondriaan は限られた範囲内で別に選定されている URL に URL Manager Pro が動いていない時でもアクセスさせてくれる。)

同様に、ブラウザ内からブックマークファイルへ URL を追加する方法はいろいろある。ブラウザからアドレスをブックマークファイルへドラッグする;ブラウザウィンドウが最前面にあるときに URL Manager Pro の Dock アイコンから Add Bookmark を選択する;もしブラウザが共有メニューを持っているならそこから Add Bookmark を選択する;さらに、ブラウザの中にはリンクを Control-クリックしてコンテクストメニューから Add Link to URL Manager Pro を選択できるものもある。

耕しがたい畝 -- URL Manager Pro の弱点は、いろいろなインターネットプログラムに対してその機能の実行の仕方がまちまちである事である。もちろん、主な原因はこれらのインターネットプログラム側にあり、例えばあるプログラムは共有メニューに対応し、あるものはしない、Apple イベントをサポートするもの、しないもの、等々いろいろである。確かに紛らわしいが、URL Manager Pro 自身も混乱の原因となっている。メニュー項目が何をするのかも一義でない。というのも、同じ言葉が、使われる場所によって異なった意味に使われているからである。例えば、共有メニューでの Add Bookmark は URL 情報をブックマークファイルに入れる前にそれに手を加えるかどうかを聞くダイアログを出してくる;Dock メニューでは Add Bookmark は聞いてこない;Add Bookmark は URL Manager Pro 自身のメニューでは空の URL を生成する;そして Mondriaan では Add Bookmark の項目はないのである。これについて言えば、Mondriaan はなぜそれほど違うのか - なぜ単純に URL Manager Pro そのものの menulet バージョンではいけないのか?Dock や共有メニューの他にもう一つのブックマークファイルに対するアクセス手段を提供するだけではないか?全般にメニュー項目の名前のような、機能にアクセスする詳細部分は再考の余地が大である。マニュアルも例外ではなく、ぼやけており、構成も貧弱で、そして必ずしも完結していない。

そうは言っても、URL Manager Pro は強力であり、驚きの一杯詰った、常にニーズを予測しているプログラムである;たいていのユーザーはその能力のほんの一部分しか必要としないであろう。ヒストリーリストとしてあなたのブラウジングの経緯を記録するよう設定できる。従って、前に追加し忘れた URL を後で再現する事もできる。一つの Web ページ或はメール内のすべてのリンクをインポートすることも出来る。リンクが正しいかのチェックもできる。この様にいくらでも挙げられる - その能力はあまりに多岐にわたっておりここにすべてを網羅できない。ご自分で試してみて欲しい。

URL Manager Pro は Mac OS 8 かそれ以上 (2.4 MB ダウンロード), そして Mac OS X (2.2 MB ダウンロード) 下でネイティブとして走る。値段はたったの $25 で、バージョン 2 からのアップグレードの場合は $11 である。$37 払えば URL Manager Pro と Alco Blom のもう一つのシェアウェアユーティリティである Web Confidential の両方に登録できる。Web Confidential は、私がユーザー ID とパスワード情報を保管し取りだすのに愛用しているものである(TidBITS-441 "Web Confidential: あらゆる秘密に安全を" 参照)。

<http://db.tidbits.com/getbits.acgi?tbart=05020>(日本語)Web Confidential:あらゆる秘密に安全を
<http://www.web-confidential.com/>


MacHack は Macintosh の未来を映す鏡

文:Adam C. Engst <ace@tidbits.com>
訳: Mark Nagata <nagata@kurims.kyoto-u.ac.jp>

第 17 回の MacHack 開発者カンフェレンスが先週ミシガン州 Dearborn で行なわれたのだが、今年のカンフェレンスは例年とはがらりと違ったものだった。まずキーノートは深夜0時から始まり、会場 (the Holiday Inn Fairlane) のロビーでは常時ワイヤレス(またはワイヤー結線での)Ethernet アクセスが可能で、そして参加者の顔触れといえばその年齢層は小学生から引退間近の年代まで広範囲にわたっていた。けれどもそうした表面上のことはともかく、プログラマーでない私のような参加者にとっての MacHack の重要性は、それが Macintosh 業界の今後の進路を指し示すものだ、という事実だろう。Macworld Expo が Macintosh の現在を映す鏡だとすれば、MacHack は Macintosh の未来を映す鏡なのだ。(そして、いくら過去の歴史をほじくり返すのが楽しいことだとはいっても、Macintosh の過去を映す鏡となるカンフェレンスなどは無い。Macintosh の世界が生き続ける限り、我々は前に進むしかないのだから。)

<http://www.machack.com/>

参加者たち -- 過去数回以上の MacHack に参加したことのある者にとっては、長年の常連参加者たちの多くが今回顔を見せなかったことに、初めはちょっとショックを受けざるを得なかった。超有名なプログラマーのあの人もいないし、そういえばあの彼も欠席? でも理由を聞いてみると、欠席した常連たちのほとんどはたまたま仕事上都合がつかなかっただけで、決して Mac への興味が失せたとか、他のプラットフォームに行ってしまったとかいうわけではないらしいということで、いちおう安心した。全体の参加者数は例年よりも少なかったが、これは今の経済状況から見れば仕方のないことだろう。ただ今回は初参加の人たちの数が非常に多く、そのおかげで参加総数は 270 名に達した。そういう初参加者たちの多くは Unix ユーザーで、これを見るだけでも、現在 Mac OS X が Mac ユーザー全体としてはそれほど大きなインパクトを与えるに至っていないにもかかわらず、数年後には Unix や Windows のユーザーが Mac に合流してくることによって Mac コミュニティーの多様性が一段と増すだろう、という実感がひしひしと湧いてきた。コンピューティングの世界においてより大きな地位を占めるようになるのかどうかはまだ定かではないが、少なくとも Mac OS X によって Apple の市場シェアが増加するチャンスが生まれたことだけは確かだろう。

Unix ユーザーの到来といえば、今回は2つのキーノートがあった。1つは O'Reilly and Associates の出版者 Tim O'Reilly で、もう1つは Slashdot の Rob Malda(通称 CmdrTaco で有名)によるものだった。Tim は最近 Mac ユーザーに転向したばかりで、これは Mac OS X のおかげと、それから Apple から彼に贈呈された Titanium PowerBook G4 のおかげでもあるのだそうだ。O'Reilly 社の読者層の中心はこれまで Unix ハッカーたちが中心だったが、彼らが Mac OS X に依存する度合が次第に増加するのに合わせ、O'Reilly 社もこれまで以上に Macintosh 関連の本を出版してゆくことになる。O'Reilly 社はまた 2002 年 9 月下旬に Mac OS X カンフェレンスも開催する。-- 私も講演する予定だ。

<http://www.oreilly.com/>
<http://slashdot.org/>
<http://conferences.oreillynet.com/macosx2002/>

未来に向けての明るい話題といえばもう1つ、多数の「若者」たちが参加していたことが挙げられる。小学生から大学生まで、いろいろな年代の若者たちがセッションに参加し、年長のプログラマーたちとネットワークを結び、Hack Contest にも参加していた。中には私よりも MacHack 参加回数の多いような子供たちもいたが、大多数は MacHack には初参加だった。そのことだけでも素晴しいことではないだろうか。業界のイベントで、子供たちが参加を奨励されているだけでなくて、ビジネス最先端の人たちとも同等の参加者として扱われているようなところが、他にあるだろうか? これこそ、未来への投資というものだろう。

もちろん、MacHack に参加するような若者たち、例えば Garrison Keillor の Lake Woebegon から来た子供たちも、Macintosh や Unix に相当の知識を持つ、平均以上のレベルの人々には違いない。ことに Best Hack Contest で2等を取り、REALbasic の講演もした 12 歳の Adam Atlas(Best Hack Contest については次週号で報告する予定)や、私と同郷の Ithaca 出身で、次回の MacHack の組織委員会のメンバーでもある 14 歳の Andy Furnas などを見ればそのことは明らかだろう。賢くて誰をも引き付ける、こうした子供たちは、彼ら自身の力で自分の未来を創り出していくことができる。願わくはそれが Macintosh の世界の中の仕事であって欲しいし、もしも MacHack がそのことに力を貸すことができるのなら、これほど素晴しいことはないではないか。

最後に、今回の MacHack で強く感じたことに触れておきたい。Macintosh の未来がどちらの方向に進むのかはわからないが、このコミュニティーは今後も重要であり続けるに違いない、という感覚が私の心を暖めてくれた。Macintosh はそれ自体としても様々な独自の特性を持っているのだが、それを支える人々の集まった、強い生き生きしたコミュニティーというものは、決して人為的に作り出せるようなものではない。この素晴しい Macintosh コミュニティーが消えてしまうことのないよう、心を合わせて行こうではないか。

ハードウェア -- 会場で見られたハードウェアも、少なくとも何らかの意味では我々の行く末を暗示するものと言えるだろう。Titanium PowerBook G4 と iBook は至る所に見られ、また PowerBook G3 やカラーの iBook もちらほらと見かけることができてかなりの数を成していた。当然ながら、このようなカンフェレンス会場にはデスクトップマシンよりもポータブルな機種を持参するのが普通だろう。(ただし、かの Jorg Brown は新型 iMac を持参して来ていて、hack コンテストのために特別の工夫を施していた。)けれども、プログラマーたちに聞いた話では、かなりの数の人たちが Titanium PowerBook G4 を自分のメインのマシンとして使っているということだった。さらに、Mac に転向した Unix ユーザーたちの何人もが、その転向の動機は Mac OS X 自体の魅力に加えて Apple 製のラップトップはなかなかクールだから、と言っていた。コンピューティングの世界はこれまでにないスピードでポータブル機種への指向を強めつつある。マシンの小ささとスクリーンの広さとの競合、という課題は常に残るのだが、それでもこのポータブルなコンピューティングの体験を進化させるようなアイデアに対しては何であれ常に目を向けておくべきなのは間違いないだろう。

AirPort (AirMac) カードはもはやほとんど常識、というレベルまで普及していた。ただし、MacHack ネットワークのセットアップを担当したボランティアたちは、ホテルのロビーのいくつものテーブルに Ethernet ハブを用意して、旧モデルの Titanium PowerBook G4 のユーザーにも不便がないように配慮していた。(旧モデルには AirPort の到達距離があまりにも短いという問題があった。最近のモデルではこれが少し改善されたらしい。)ワイヤレスのネットワークは、数年前に Apple が AirPort を導入して以来、急激な勢いで実現の度合を増やしつつある。トレードショウの会場、図書館、(そしてもちろん空港!)など、数多くの場所で使えるようになってきている。この調子で行けば、数年もすれば現在と状況が逆転して、ワイヤレスのインターネット接続が使えない場所のほうが珍しい、ということになるのではないだろうか。きっと飛行機の機内でも、スーパーマーケットの店内でも、ひょっとしたら町中の公園でも使えるようになるかもしれない。空の彼方まで限りなく、と言いたいところだが、残念ながら現実には、ワイヤレスネットワークに制限を加えようとする主な要素は、物理的および政治的なものが最も強い、というのが実態なのだ。(ワイヤレス関係の私の予言については、TidBITS-612の記事“2002 年の行く末を占う”を参照されたい。)

<http://db.tidbits.com/getbits.acgi?tbser=1210>(日本語)iBook: iMac to go
(日本語)Farallon 社 11 Mbps 無線 SkyLINE カード出荷
(日本語)AirPort 1.2 アップデート登場
(日本語)Macworld SF 2001 のトレンド:若い Mac はワイヤレスで行こう
(日本語)AirPort へ
(日本語)PPPoE のサポートが追加された AirPort 1.3
(日本語)他の AirPort へ飛ぶ
(日本語)ワイヤレスはガラス張り
(日本語)拙速ワイヤレスネットワークでてんやわんや
(日本語)Apple が AirMac をバージョンアップ
<http://db.tidbits.com/getbits.acgi?tbart=06688>(日本語)2002 年の行く末を占う

ソフトウェア -- ソフトウェアの側では、やはり Mac OS X は Apple の新型ラップトップ機と同様に圧倒的優勢を示していた。何人かの人々は依然として Mac OS 9 を使っていたし、一人の勇敢な人などは System 7.6 の走る PowerBook Duo 280c を持参してハックを披露した。(彼のハックは Chooser によるファイルサーバーの表示を改良してどのサーバーが AppleTalk でなく TCP/IP 上の AppleShare をサポートしているかが一目でわかるようにする、というものだった。)けれどもほとんどのソフトウェア開発者たちは、Apple からの「もはや Mac OS 9 のためのソフトウェアを開発しても何の意味もない」というあからさまな働きかけを、素直に受け入れているようだった。

ソフトウェア開発者たちにとっての Mac OS 9 の位置については、Apple の Mac OS 9 開発責任者であった Keith Stattenfield による、なかば冗談のセッションで、はっきりと鉄槌が振り下ろされた。「Mac OS 9 の未来」と題された彼のセッションは、ほとんどすべてのスライドがそれぞれ婉曲に「死んだ」という一語を告げていた。Keith は講演の最後に一言、断固として「Mac OS 9 はもう死んだ!」と叫び、すかさず聴衆席の片隅からわざとらしく心配そうな「本当に?」という声がかかると、会場全体が笑いの渦に包まれた。別の、もっと真面目な講演では、Keith はソフトウェア開発者たちに向かって Classic は確実に今後何年もの間生き続けるだろうし、Mac OS 9 のバグは間違いなく引き続き調べ挙げられて、Classic や QuickTime、その他のコンポーネント、さらには Mac OS 9 自身についても、もしもある程度以上重大な問題点が見つかれば改良バージョンが作られて行くだろう、と確約してくれた。それに、Apple は現に Classic の改良に向けて努力を続けている。私の希望としては、Connectix の Virtual PC が「現在の状況を記憶」してくれるのと同様に Classic も設定を記憶できるようにしてくれたら、と願っている。そうすれば、何度も Classic の終了・再起動を繰り返さなくても済むのに、と思う。

ここで一言付け加えておきたいのは、ほとんどの開発者たちが Mac OS X を使っており、このオペレーティングシステムの基本的なことについては不満はほとんど聞かれなかったのだけれども、Mac OS X の細部に関する個別の不満についてはたくさんの声があがっていた、ということだ。多くの場合、Apple はきっとその問題点についてすでに知っていて懸命にそれを修正しようと努力しているところなのだろう。Mac OS X というのは巨大なプロジェクトだ。たくさんの修正を施し、それをテストし、他のものとの統合を計っていくためには時間がかかる。けれどもあと数ヵ月後に登場する Mac OS X の次期メジャーリリース(コードネーム Jaguar)には、多岐にわたる改良が実現されているはずだ。

キーノート雑感 -- この記事の締めくくりとして、Tim O'Reilly が今回のキーノートでリストした「編集フィルター」をお伝えしておきたい。O'Reilly and Associates の編集者たちは、新しいテクノロジーを彼らの本で取り上げるかどうかを決定する際に、以下のチェックリストに照らし合わせるのだそうだ。O'Reilly 社の興味を引くためには、そのテクノロジーはこんな条件を満たしていなくてはならない:

また、そのテクノロジーが以下の条件も満たしていれば、なおのこと O'Reilly に好印象を与えることができる:

1990 年代初めごろのインターネットの隆盛に、これらの用件がすべて当てはまったのは言うまでもない。Tim はさらに続けて、彼の予感では、インターネットを単なるネットワークでなくて一つのプラットフォームだとみなす、その考え方こそが次の大きい波となるべきものだ、と述べた。(ウェブサービスを語る人々の脳裏には、すでにこのようなアイデアがあるに違いない。)それでは、Mac OS X をこの「編集フィルター」にかけてみるとどうなるだろうか。大筋ではこれらの条件を十分に満たしていると思う。ただし、現在のところでは Mac OS X を「破壊的」とまで言えるかどうかは疑問かもしれない。(少なくとも O'Reilly の使った意味の「破壊的」に関しては -- 実際に自分のコンピューティング環境が「破壊」されてしまった人が大勢いたことは確かなのだが)

この MacHack の考え方を論理的極限まで押し詰めれば、我々は皆いつの日か、友人たちや同僚たちがそれぞれにグループになって、各人ごとに Mac OS X ベースのごく小さな Mac を手に持ち、それらの Mac が今日物理的世界に存在しているのと同等の意味で新しいインターネットの世界に共に存在しながら、互いに協力して次々と未来を生み出す活動を続けて行くことだろう。空想科学物語みたいだって? まさにその通り! でも考えてみれば、それほど遠い昔でもない時代には、現在の世界の姿はまだ夢物語に過ぎなかったのだから。


Palm i705: 忍耐力も必要ワイヤレスインターネット

文: Jeff Carlson <jeffc@tidbits.com>
訳:倉石毅雄 <takeo.kuraishi@attglobal.net>
訳:佐藤浩一 <koichis@anet.ne.jp>

“未来に生きているのは最高だ”と私の友人がよく言っている。私はまさにこれをワイヤレスのハンドヘルドの Palm i705 を使用することによって体験することが出来た。i705 は Palm の格好は悪いが革新的だった Palm VII の後継者だ。今まで私の必携品だった Palm Vx より少し大きいだけだが、これを使用すればほとんどどこでもワイヤレスのインターネットアクセスが可能となる。妻が職場から出てくるのを車で待つ間に近所で上映している映画を調べたり、WiFi を備えた Starbucks を探すことなく電子メールをチェックすることが出来る。しかし、未来の生活の想像に登場した、例えばコンピュータで操縦される静かで無公害の飛行車など同様、i705 も現代の生活の現実に足をとらえられている。特にオンラインで働く際のスピードの(欠如の)面では。

<http://www.palm.com/products/palmi705/>

VII から i705 ヘ -- 全体としては、私は i705 の小ささに一番感心している。Palm VII はPalm III を改造して上にワイヤレス送受信器を内蔵するための延長部を付けたものだった。ワイアレスアクセスを起動するにはアンテナを持ち上げる必要があり、高さがさらに五インチ増す。i705 は Palm m500 より少し厚いだけだ。アンテナは上部のカーブした出っ張りとなった。Palm VII のようなフランケンシュタインの額ではなく、ちょっと上がった眉みたいだ

i705 はグレー階調のスクリーン、8 MB のメモリ、赤外線ポート、そして取り外し可能なメモリカードや Palm の Bluetooth Card などの付属機器用のSecure Digital/MultiMedia カードのスロットを備えている。内蔵された充電池は予想以上に長持ちする。一日中ワイヤレス送受信機を付けていたにも関わらず(これについては後ほど)電池の減りは微々たるもので、通常の使用でも電池の寿命に大きな影響はなかった(対照的に、私の Palm Vx は昔に較べて電池の寿命が短くなった)。Palm OS 4.1 で走るので、予定表、アドレス、To Do、Memo Pad、そして Note Pad などのオーガナイザソフト一式が付いてくる。

<http://www.palm.com/wireless/bluetooth/>

最近の Palm のハンドヘルドで新しくついてくるものとしては Clock がある。これはシルクスクリーン領域で時計のアイコンをタップすると起動される時間と日付表示だ。便利な機能だが、残念ながら起動方法が面倒だ。Palm m100 シリーズでは Clock はもっと良かった。電源が切ってあると、上へのスクロールボタンを押すと時間が表示される。i705 (そして m500 シリーズ)ではスタイラスを引っ張り出して小さな時計アイコンをタップするか、繊細な爪先さばきが必要だ。利点としては、Clock を使用して目覚ましがセットできるため、私の予定表が“起床”という日中の予定でゴタゴタすることはなくなるだろう。

シルクスクリーンされた電卓ボタンは星のアイコンに替わっている。これをタップするとどんなアプリケーションでも起動できるように設定できると理解するまでは、混乱するだろう。このボタンの設定を切りかえる機能はかなり前からあるが、活用している人は少なかっただろうと思う。そこで Palm はこの Favorite App ボタンを作った。(何に設定されているかを変更するには、環境設定へ行き、右上の角のポップアップメニューから Buttons を選択し、星のボタンアイコンの右手のポップアップメニューからアプリケーションを選ぶ。)

それ以外に変更されたのは右側のプラスチック製のアプリケーションボタン二つだ。前は To Do List と Memo Pad ボタンだったが、今は MyPalm と MultiMail アプリケーションを起動する。私は昔からの Palm ユーザなので、いつも To Do List や Memo Pad を見ようとしてこれらを押してしまうが、時間をかければ慣れるに違いないと思っている。短期的な解決策としては(これもまた環境設定アプリケーションを使用して)MyPalm ボタンを To Do List へ設定しなおしたが、MultiMail ボタンはそのままにしておいた。

ワイヤはなくても、ひもつき -- ワイヤレス機能を使用可能にせずに Palm i705 を使用するのはスポーツカーを車庫に置いておくようなものだ。しかし、オーガナイザの値段を考えるときにはサービス料をも考慮に入れるべきだ。Palm は Palm.Net サービスに二つの料金体系を設定している。

Associate Plan は月々 $20 かかり、一月あたり 100K までのデータ転送を含み、それ以上は一キロバイトあたり $0.20 ずつかかる。ワイヤレスアクセスが非常につつしましいというのでなければこのプランは馬鹿げている。ワイヤレスアクセスを故意に最大限まで使ったわけではないが、それでも一月で 441K も使用した。Associate Plan ではこれは毎月の料金 $20 に加えてさらに $68.32 かかるということになる。これは痛い。

Palm は Associate Plan を餌にしてもっと良い(しかしこれも安くはない) Executive Unlimited プランへユーザを導こうとしているのかもしれない。後者は毎月 $40 の一律料金で欲しいだけのキロバイトを落とせる。Palm は Annual Executive Unlimited プランをも提供しており、これは一年分のサービスを前払いすれば月あたり $35 かかる計算になる。

<http://www.palm.com/products/palmi705/wireless.html>

さらに Palm.Net が使用可能な地理条件も考える必要がある。もし米国の大都市圏に住んでいるのであればサービス圏内にいる可能性は高い(詳細は以下のリンクの Palm の地図で見て欲しい)。だが、携帯電話のサービスと同じように、Palm.Net は時によっては捕らえがたいものになる。ある日の午後のことだが、妻と二人で最近何年か行っていなかったレストランを見つけようと、車を駐車場に停めて Google 検索を行った。ところがつながらない。彼女の“ワイヤレスのアクセスがあるところまで運転してくれる?”という皮肉な質問に応えるために、接続が改善するまで彼女に Palm を持たせて私が運転し始めた。私は“前の方にアクセス道路が見える気がする”としか返事が出来なかった。一マイルほど走ったら信号が強くなり、レストランの住所を入手することが出来た。

<http://www.palm.com/cgi-bin/coveragemap.cgi>

Web Clipping -- 最初に Palm VII が発売された時、すべての料金プランはデータ量に比例していた。そこで、データ量を少なくするため、Palm は新しく Web Clipping という、必要な情報だけをダウンロードする方法を編み出した。コンピュータで閲覧されることを前提にしているウェブページ (グラフィックと広告で一杯だ) を読み込む代わりに、Web Clipping は Palm Query Applications (PQA) を使ってデータの受け渡しを行なう。実のところ、これらは小さなプログラムで、ある地域内での映画の上映時間を検索したり(Moviefone を使用)、最新ニュースの見出しリストを作成したり (CNN、ABC News、USA Today、そして PR Newswire より)、あるいはその他沢山の旬の情報など、特定の要求を実行するのに使用する。PQA は、基本的にある情報を得るためのウェブフォームなのだ。インターネットアクセスへの出発点とすべく、Palm は i705 でいくつもの PQA を一つの MyPalm アプリケーションに組み込んでいる。PQA はインターネットからもダウンロード可能だ。PalmGear には様々な種類の Palm ソフトへのリンクがあり、i705 のワイヤレス接続経由で他の PQA をダウンロード・インストールする PQA も作成している。

<http://www.palmgear.com/software/>

Palm が帯域をなるべく使用しないように努力しているにも関わらず、i705 は驚くほど遅い。MyPalm アプリケーションから内蔵の PQA を呼び出すのだが、メインスクリーンのトピックをクリックするだけで新しく接続しデータ転送が始まってしまう。内蔵のウェブフォームを呼び出しているだけなのに、どうしてこうなるのか見当が付かない。例えば、実際にテストしてみた結果では、ニュースリンクをタップしてから 4 つの PQA が表示されるまで 18 秒、CNN オプションをタップして CNN へのリンクがあるメインページが出てくるのに10 秒、最新の重大ニュースリンクをタップしてヘッドラインを表示するのに14 秒、そして最後にヘッドラインをタップして 2K バイトの記事が表示されるまで 25 秒かかる。たった一つのニュースを見るのに、ざっと一分かかってしまうわけだ。

MyPalm アプリケーションは、通常のウェブページにアクセスする簡単なブラウザも提供するが、これを使用するのはさらに苦痛だ。MyPalm がウェブページをダウンロードしているあいだは、他のアプリケーションに切り替えることができない。そのため、データの転送が終わるまでは、進行状況を示す丸いインジケータ (転送中は停止ボタンも兼ねる) が点滅するのをだまって見ているしかない。何度か、ウェブページを閲覧中に i705 とサーバとの接続が切れて、一部分だけのページになってしまったことがあった。驚くべきことに再読み込みボタンは無いので、一つ前のページに戻ってまた目的のリンクをタップするしかない。今度は問題無く読み込めることを願うだけだ。手入力した URL の場合は、そのアドレスはセーブされないのでもう一度入力する必要がある。

残念ながら、ウェブ閲覧には MyPalm 以外の選択肢が無いようだ。私の行なったテストでは、Handspring の Blazer など、ほかの Palm OS ブラウザではPalm.Net サービスで動作しなかった。

<http://www.handspring.com/software/blazer_overview.jhtml>

電子メール -- 同梱されている MultiMail アプリケーションは、Palm.Net の電子メールやその他の POP あるいは IMAP アカウントにアクセスするのに使え、はるかに便利だ。メール取得ボタンをタップすると、サーバ上にあるメッセージの全文を読むかあるいは件名だけにするかの選択ができる。大きいサイズのメールをスキップ (制限サイズの初期値は 50K に設定してあるが、これだけで 20 ドルかかる Palm.Net プランの半額分になってしまう)、未読のメールだけ読む、あるいは添付書類を無視するなどのオプションも選択できる。

標準で、メッセージはサーバに残す設定になっているので、後で Mac の電子メールプログラムで見たときも既読として残っている。ハンドヘルドでメッセージを消去する場合、サーバからも消してしまうことが可能だ。スパムなどは、こうしてしまえばもう一度見る必要がなくなる。

i705 はまた、いつ受信可能にするかを指定するオプションもあり、これは電子メールを自動でチェックするのに便利である。常時オンにするか、必要なときに手動でオンにするか、あるいは例えば午前 8 時から午後 6 時までのような時間の範囲を指定することもできる。my.palm.net ウェブサイトにあるフォームを使用すれば、Palm のサーバに毎日あるいは毎時アカウントをチェックし、ハンドヘルドに転送するよう指定するのも可能だ。新しいメールがあるときは、ハンドヘルドのアラームを鳴らしたり、振動させたり、インディケータライトを点滅させたり、あるいはこれら 3 つを組み合わせることができる。

<http://my.palm.net/>

フィルタにより、ダウンロードするメッセージを制御することも可能だが、それを作成するのは混乱してしまうしほとんどの場合効果的ではない。Mac の電子メールクライアントのほとんどが装備しているフィルタとは違い、無視したいメッセージ (スパムなど) を指定するフィルタは無い。逆に、受け取りたいメッセージを選択するだけなのだ。なので、Adam や Geoff からのメッセージだけを選択するフィルタは作成できるが、件名に“バイアグラ”とあるスパムメッセージをはじくようにはできない。それでも、私にはメールを出先でチェックできること自体が重要で、件名のリストから不要なものを一つ一つ取り除くのはさほど問題にはならなかった。

i705 が AOL Instant Messenger クライアントを装備していることも触れる価値があると思うが、正直言って、このマシンの性能でどれほどメッセージが“インスタント”になるか考えてしまい、結局テストしていない。

未来を掴むのは今 -- もしコンパクトなワイヤレスインターネット接続機器が必要なら、きびきび動作することさえ期待しなければ、オーガナイザにもなる Palm i705 は良いと思う。そして、ワイヤレス接続の利便性が Palm の内蔵ソフトウエアの不便さに勝るなら、この持ち運びできる小さな機器に満足することだろう。


tb_badge_trans-jp2

非営利、非商用の出版物およびウェブサイトは、フルクレジットを明記すれば記事を転載またはウェブページにリンクすることが できます。それ以外の場合はお問い合わせ下さい。記事が正確であることの保証はありませ ん。書名、製品名および会社名は、それぞれ該当する権利者の登録商標または権利です。TidBITS ISSN 1090-7017

Valid XHTML 1.0! , Let iCab smile , Another HTML-lint gateway 日本語版最終更新:2005年 12月 26日 月曜日, S. HOSOKAWA