Microsoft 反トラスト法訴訟についに最終裁定が下った。Adam が和解の内容を説明する。Derek Miller は一台の PowerBook と多くの Mac ソフトウェアを使って連日のカンファレンス用ニューズレターの発行を一人でこなした体験をお話しする。以前これは三人がかりの仕事だったのだ。ニュースとしては TidBITS が先月の Best of the Mac Web 調査で1位に輝き (やった!)、Stairways Software が Interarchy 6.0 をリリース、それから画面真っ黒の iMac を修理するための別の方法についてお知らせする。
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TidBITS がBest of Mac Web アンケートでナンバーワンに! --Low End Mac の Best of Mac Web アンケートで私たちのために投票してくれたみなさんどうもありがとう。総投票数では 6 位だったが、総合ランキングで私たちは MacSurfer と VersionTracker を退け 1 位となった。ちなみにこの他にトップ 5 に名を連ねたサイトは Mac OS X Hints とAs the Apple Turns だ。ともあれ、私は数よりも質を重視したい。なによりみなさんがどのサイトよりも高い割合で私たちに 最高
という評価を与えて下さったことを大変うれしく思う。もちろん、これからもさらに上を目指し今まで以上にがんばって私たちのランキングを維持していきた いと思っている。いつも応援してくださってどうもありがとう![ACE](蒲生)
<http://www.lowendmac.com/botmw/fall02/botmw.html>
<http://db.tidbits.com/getbits.acgi?tbart=06956>(日本語)TidBITS への投票を!
Interarchy 6.0 公開 -- Stairways Software は人気のファイル転送・ネットワークテストソフトウェアの最新版、Interarchy 6.0 を公開した。Interarchy 6.0 の新機能はセキュア FTP (SFTP) の Mac OS X 上でのサポート、複数のアクションを連続的に実行することができる queues 機能、後でファイル転送を実行することができる delayed transfers 機能、スケジュールに従って定期的に実行することができる repeating transfers 機能、新しいコラム表示と階層表示機能、ウェブサイトのリンクチェック機能、そしてブックマークと URL の管理機能だ。Interarchy 6.0 では新しいファイル転送エンジンが搭載されており、非常に大きなファイル (最大 9 エクサバイト、エクサは現段階でははなはだ理論上存在するにすぎない表記単位。訳注:1 エクサバイトは 1,000,000,000 ギガバイト)、長いファイル名のサポート (最大 255 文字)、そして長い URL (最長 2502 文字)のサポートを誇る。Interarchy のネットワークテスト機能が Mac OS Xでサポートされていなかったことを残念に思っている人にも Interarchy 6.0 は朗報だ。ネットワークテスト機能は Interarchy 6.0 で復活したばかりでなく、スケジュール実行したり、シーケンシャル実行するための queues に加えたり、連続実行させたりすることが可能になった。Mac OS 8.5 から Mac OS 9.2.2 で動作する上、Mac OS X 上でもネイティブ動作するこの Interarchy 6.0 の新規購入費用は45ドルだ。旧版の購入者のためにはディスカウントがあるほか、2002 年の 6 月 25 日以降に Interarchy を購入した人には無料アップグレードが提供されている。さらに2003 年の 2 月 3 日までは無料で試用する事が可能だ。ダウンロードサイズは 3.1 メガバイト、英語版、仏語版と日本語版がある。[ACE](蒲生)
ブラックアウトしてしまった iMac を直すために VGA モニタを使う -- TidBITS-653のJaguar のインストール前に必ずファームウェアのアップデートを!
の記事の中で Mac OS X 10.2 Jaguar をインストールしたばっかりに使用不能に陥ってしまった iMac を復活させるためにハードディスクを交換する大変骨の折れる方法を解説した。もし動かなくなってしまった iMac に VGA ビデオ出力ポートがあるならば外付けのVGAモニタをiMacに接続するのがおそらくもっと簡単な方法だ。外付けのモニタがiMacのディスプレイをミ ラーリングしてくれれば、iMacを解体したり……あるいはマザーボードの交換費用を支払うことなく、システムのファームウェアを直接アップデートする ことが可能だ。[GD](蒲生)
<http://db.tidbits.com/getbits.acgi?tbart=06973>
<http://db.tidbits.com/getbits.acgi?tlkthrd=1783>(日本語)Jaguar のインストール前に必ずファームウェアのアップデートを!
文: Adam C. Engst <ace@tidbits.com>
訳: Mark Nagata <nagata@kurims.kyoto-u.ac.jp>
訳: 倉石毅雄 <takeo.kuraishi@attglobal.net>
2002 年 11 月 1 日の金曜日、合衆国司法省と 18 の州およびコロンビア区によって起こされ過去4年間にわたって続いてきた反トラスト法訴訟が、連邦地方裁判所の Colleen Kollar-Kotelly 判事による裁定をもっていきなりの終局を迎えた。Kollar-Kotelly 判事はこの裁定の中で、Microsoft 社と司法省並びに9つの州によって提出されていた和解案を基本的に受け入れており、実質的な修正はほんのわずかしか加えていない。今回の判事の裁定によって、和解案に異議を唱えていた残りの各州にとっても、控訴に訴えない限り、これまでの努力が無に帰されてしまうことになる。(長きにわたったこの訴訟の経緯については、下記の TidBITS の過去記事シリーズを参照されたい。)
<http://db.tidbits.com/getbits.acgi?tbser=1152>
(日本語)Microsoft 社が反トラスト法違反で起訴される
誰を反トラストするか? 第 1 部
(日本語) 誰を反トラストするか? 第 2 部
(日本語)Microsoft 独占企業との認定
(日本語)Microsoft" 社は反トラスト法に違反した
(日本語)Microsoft 分割命令の審判下る、当社は控訴
(日本語)Microsoft 独占禁止法違反の裁判は、連邦最高裁へ
(日本語)分割への険しき道
(日本語)マイクロソフトが独占判決を最高裁判所へ控訴
(日本語)政府が Microsoft 分割を断念
(日本語)茨の茂みへ:マイクロソフトに好都合な和解
(日本語)提案されていたマイクロソフトの和解案は拒否
(日本語)Bill Gates は嘘つきか?
Kollar-Kotelly 判事の意見を読みつつ、私は次の3つの点が重要なものだと感じた:
判事によれば今回の裁判所の役割はこの訴訟の審理をやり直すことではなく、提出された和解案を評価してそれが公共の利益に適うかどうかを判断することのみであったという。さらに、この訴訟がもともと政府によって起こされたものであるという事実そのものが、提出された是正案を裁判所として評価するためのやり方を束縛している。つまり、たとえ判事たる彼女自身がもっと厳しい是正案を課すべきだと判断したとしても、彼女としては是正案として提出された政府の予想に「なびき従う」以外にはなく、その是正案が公益に適ったものであるかどうかだけをその政府の方針に従った形で判断せざるを得ないのだ。
彼女は、Microsoft の独占状態を終わらせることと、その独占を違法な手段で保っている状態を終わらせることとを厳しく区別している。独占というのはそれ自体本来的に違法であるわけではない。また、Microsoft が合法的な方法で独占状態に達したという事実(この点についてはどちらの側も合意している)は、独占状態を終わらせるという形での是正案(例えば会社を分割するなどの案)の正当性を失わせる。提出された是正案は、独占状態を終わらせるのではなく、独占を違法な手段で保つことを終わらせようというものなのだ。
彼女はまた、機能を混合すること(例えば Internet Explorer の機能を Windows の内部に組み込むこと)と、そのことの結果たる競争抑止的効果との区別をすべきだ、ということにも注目している。コードの組み込み自体には問題はない。問題なのはそれが競争相手に与える影響なのだ。従って、是正策はその影響に対してのものでなければならず、機能の混合という行動自体に対するものであってはならない。また、彼女はコードの組み込みを禁止すればそうした機能に依存した製品を作っているサードパーティの開発者たちに悪い影響を与えるかも知れないとも述べている。
さて、この最終裁定の内容を一通り眺めてみよう。その全文書類と Kollar-Kotelly 判事による 101 ページにわたる意見書(異議を唱えた諸州に対する彼女のコメントも冒頭に付いている)は、こちらで読むことができる:
<http://www.dcd.uscourts.gov/FinalDecree.pdf>
<http://www.dcd.uscourts.gov/StateSettlement.pdf>
報復を排除 -- 多数の項目において、Windows またはいかなる Microsoft のミドルウェア製品のついても、それと競合するソフトウェアを開発・配布・宣伝・使用・販売・ライセンスなどをする OEM(オリジナル機器製造者)に対して Microsoft が報復すること、または報復を示唆して威嚇することの禁止が明示されている。(ミドルウェアとは、他の開発者たちがそれを利用してアプリケーションを動作させることができ、かつそれを他のオペレーティングシステムに移植することも容易であるようなソフトウェアのことで、例えばウェブブラウザや Java バーチャルマシンのようなものだ。)
また、Windows と Microsoft 外のオペレーティングシステムとを共に装備した PC、あるいは複数種のオペレーティングシステムで起動できる PC を出荷することへの報復あるいは報復の威嚇も禁止されている。つまり、OEM が Linux をプリインストールしたマシン(または Linux をオプションとしたマシン)を販売することを Microsoft が止めることはできない、ということを意味するのだ。
OEM たちだけでなく、独立のソフトウェアベンダー (ISV) たちも、Windows あるいは Microsoft ミドルウェアと競合するソフトウェアを開発・使用・配布・宣伝・サポートなどをすることについて Microsoft から報復や報復の威嚇を受けないようにと保護されている。さらに、Microsoft が ISV との間で ISV が競合ソフトウェアを開発・使用・配布・宣伝しないことを条件に含んだ契約を結ぶこともできなくなっている。
(Kollar-Kotelly 判事は、提出された是正案の文面に「報復の威嚇」に関する明言を追加した。報復を禁止するだけで十分、という政府の主張にもかかわらず、この「報復の威嚇」が重大な問題となり得ると彼女は判断したのだった。)
少し別種の保護条項としては、Microsoft が他社との間でその会社が Windows または Microsoft のミドルウェアを専門に、または特定の固定された割合で、配布・宣伝・使用・サポートなどをすることを条件とした契約を結ぶことも禁じている。但し、当該会社が実質的に同等の時間を競合製品にも向けることができる場合は禁止から除外される。Apple はこの除外に当てはまる。なぜなら、Apple は 1997 年に、Microsoft が Microsoft Office をサポートし続けることを交換条件に Apple が Internet Explorer をデフォルトブラウザとし、Netscape Navigator を排除し、他のウェブブラウザも宣伝しない、という契約を結んでいるからだ。このような種類の契約は今回の和解案の禁止条項には抵触しない。(この除外条項には1つ制限が加えられている。もしも Microsoft が第三者の知的所有財産をライセンスしようとしており、かつその知的所有財産のライセンスがその契約の主要な目的であるならば、禁止からの除外は適用されないのだ。この制限は Kollar-Kotelly 判事によって書き加えられた。あらゆる契約が軒並み見せかけだけの知的所有財産ライセンス契約と化するような事態を、彼女は避けたかったのだろう。)
一様なライセンス -- 和解案におけるこの条項は、Windows をライセンス使用する OEM たちに対して Microsoft が一様なライセンスを発行することを義務付けている。本質においては、この条項によって Windows のライセンスに関するフェアプレイのフィールドが形成されることを保証しよう、という意図があるのだ。Windows には各国語向けの異なったバージョンがあること、ボリューム価格割引、各種のマーケティング関係の割引、などの例外はあるものの、それらすべてが多様な規模の OEM たちに一様に配布されている限りフェアプレイは保証され得るだろう、ということだ。
Kollar-Kotelly 判事はこの箇所ではちょっとした反対意見を表明している。ライセンスが一様であることが必ずしもライセンスを受ける者の利益に、ひいては公共の利益に、なるとは限らない、と彼女は考えたのだ。けれども、懸念は表明したものの代替案を出すところまでは至らなかったようだ。
フレキシブルな OEM ライセンス -- Microsoft に対する苦情の多くは、同社が OEM に対して Windows の見栄えを変更することを制限してきたことに由来していた。今回の和解案ではこの問題に対処するため、Microsoft が OEM の以下のような行動を妨げてはならない、と義務付けている:
Microsoft 外の製品にアイコン・ショートカット・メニュー項目をインストール・表示すること。但し、それらを表示する位置については当該製品のタイプに応じてふさわしい場所に置くようにと Microsoft が制限を課すことは許される。
Microsoft 外のミドルウェアを配布するために、自由なサイズ・形状のアイコンをデスクトップにインストールすること。但し、それらのアイコンがインターフェイスの機能性を損なわない範囲に限定される。
起動後、あるいはインターネットへの接続後に、自動的に Microsoft 外のミドルウェアを起動させること。Microsoft がこの挙動に制限を課すことができるのは、当該製品が Windows のインターフェイスを別のもので置き換えるか、または大幅に変更してしまう場合に限られる。(Kollar-Kotelly 判事はここでも元の是正案での文面を変更している。元の文面では、このような自動起動が許容されるのは Microsoft のミドルウェアが既に自動起動をしていてそれを置き換えるものであり、かつその製品がインターフェイスを持たないか、または Microsoft のミドルウェアによく似たインターフェイスを使っている場合に限られていた。)
Windows がスタートアップする前に他のオペレーティングシステムを起動できるオプションをユーザーに提供すること。
最初のブート段階においてインターネットアクセスプロバイダへの申し込みを提示すること。Kollar-Kotelly 判事はこの箇所で、OEM が Microsoft の技術仕様に従わなければならない、という文面を削除している。その理由の1つには、Microsoft が技術サポートの費用を負担していない、ということがある。
API と通信プロトコルの公開 -- Microsoft がそのミドルウェア中の私用 API を利用して不公平に優位に立つことを防ぐため、和解案においては Microsoft が API (Application Programming Interfaces; アプリケーションがミドルウェアやオペレーティングシステムに接続するための入口) を公開することを義務付けている。さらに、Microsoft は、Windows 2000 のような Microsoft のサーバ製品と通信する Windows にインストールされた製品の通信プロトコルを、妥当で差別的でないライセンス条件で提供しなくてはならない。
この部分においては Kollar-Kotelly 判事は顕著な変更を一つ加えている。API と通信プロトコルが公開されるまでの期間がそれぞれ 12 ヶ月と 9 ヶ月だったものを共に 3 ヶ月へと短縮している。
和解案に対する意見のいくつかは、Microsoft がこれらの通信プロトコルの使用料無しのライセンスを発行するべきだと主張していた。だが、判決の中では彼女は、Microsoft の賠償において貴重な知的財産の権利を無料で提供する義務はないとして、これに同意しなかった。
Microsoft が API や通信プロトコルを公開しなくてはいけないというこの条件には一つの顕著な制約がある。Microsoft は違法コピー防止、ウィルス対策、ソフトのライセンス、デジタル権利管理、暗号化、そして認証システムを侵害する可能性のあるものは何も公表しなくて良い。同様に、Microsoft はこのようなシステムのライセンスに、ライセンスを受ける側が違法コピーや知的財産の意図的侵害を行っていない、ビジネス上の必要がある、会社の長期的展望や正当性が妥当な基準を満たすことを確認することができる、そして、関連するソフトをスペックを満たすという第三者による認定に同意する、などといった条件を課す事ができる。
一般ユーザによるコントロール -- 一般ユーザのコンピュータ使用環境に対するコントロールを増すため、和解案では一般ユーザや OEM がアイコン、ショートカット、メニュー項目、そして自動起動などで Microsoft や Microsoft 以外のミドルウェアへのアクセスを使用可能にもしくは削除出来るよう Microsoft に義務付けている。さらに、一般ユーザや OEM は、非 Microsoft ミドルウェアで Microsoft ミドルウェアを置き換えられる。
同様に、Windows 自体も OEM によるアイコン、ショートカット、そしてメニュー項目などをユーザの同意無しに自動的に変更することは許されない。ユーザが新しいコンピュータを初めて起動してから 14 日以上経ってからでないとこの同意を求めることは出来ない。そしてこのような自動削除は Microsoft と Microsoft 以外の製品をも含まなくてはいけない。この部分は特にデスクトップの使用されなくなったアイコンを取り除く Windows Desktop Cleanup Wizard を保護することを目的としている。
Microsoft 知的財産の RAND ライセンス -- もし和解案によって提供されたオプションをある会社が行使するために知的財産のライセンスが必要な場合、Microsoft は知的財産を妥当で非差別的 (RAND: reasonable and non-discriminatory) 条件で提供しなくてはならない。ライセンスは限定された範囲で移譲を禁じても良い。だが Kollar-Kotelly 判事は、第三者がこのオプションを行使する際に特定の知的財産を Microsoft へ逆にライセンスすることを義務付けることになると思われた項目は、理由を述べずに却下した。
順守と執行 -- Kollar-Kotelly 判事が加えた変更でもっとも顕著な点は Compliance and Enforcement Procedures (順守と執行手続き) の部分だ。当初、Microsoft と司法省は、双方からそれぞれ選ばれた二人とその二人が選ぶ三人目の独立した三人から成る Technical Committee (技術委員会) を提案していた。この提案に対して Kollar-Kotelly 判事がどのような懸念を抱いていたのかは分からない。だが、最終判決では彼女はこの Technical Committee を Microsoft 取締役会の現在もしくは過去に Microsoft に雇われていたことがない三人以上から成る Compliance Committee (順守委員会) で置き換えた。このアプローチは反対していた州が提案していたものだったので、彼女が彼らを満足させるために一つだけ譲歩した可能性もある。
順守の大きなポイントは Compliance Committee によって任命された Compliance Officer だ。和解案の全ての Microsoft の役員や取締役への配布と説明、和解案についての毎年のブリーフィング、Microsoft の順守状況を監視、原告団への Microsoft による順守しているとの毎年の認定、そして原告団への違反の報告などが Compliance Officer の任務に含まれている。
執行権利は原告団にあり、州をも含む。連携のため、原告の州は執行委員会を組む必要があり、委員会に報告せずに単独で行動を起こすことは許されていない。管轄やさらなる判定や指示を出す権限はコロンビア区の連邦地方裁判所が保持している。これに関しては Kollar-Kotelly 判事が強い思いを抱いており、最終判決ではっきりと述べている。
五年後にアップデート -- 通常の独占禁止法判決は最低十年間有効だが、この和解案では業界の速いペースを反映して五年後に失効するようになっている。しかし、Microsoft が意図的で組織的な違反を繰り返しているようであれば、原告団は最長二年間の延長を一度だけ要請できる。
最終判決は反対していた州が提案して期待していたものからかなり弱くなっている。しかし、彼らは目標を高く設定しすぎたのは事実なので、希望したものが何も得られなかった。そのため、判決は分割の可能性すらあった Microsoft の勝利と見られている。是正案は、Microsoft の独占の違法な維持を終わらせようとする妥当な案ではあるが、Microsoft を引き留めるのには大して役に立たないだろう。これらの是正が有効になっても他の会社が Microsoft という巨人と対決できるかどうかは怪しい。
しかし、競争の場が公平であるかどうか、Kollar-Kotelly 判事がこれから監視していくだろう。344 ページの議論の一番最後で彼女はマキアベリを引用してこう述べている:“‘王は、約束を破る正当な理由をいくらでも見つけられる’と Microsoft を称して言えると思ってはいけない。この是正案が文字通り、また意図通りに実行されるよう、この法廷はその広い権限を行使するつもりである。”
文: Derek K. Miller <dkmiller@penmachine.com>
訳: 亀岡孝仁 <takkameoka@earthlink.net>
訳: Mark Nagata <nagata@kurims.kyoto-u.ac.jp>
この 6月に旅行の支度をしている時、女房が私のスーツケースを覗きこんでいた。彼女の言によれば、彼女なら旅に出るときは余分の洋服やアクセサリを持っていくのに、"あなたは、ワイヤを詰め込んでいるようね!" 確かに、シャツ、ズボン、それに洗面道具は端の方に追いやられ、代わりに Ethernet ハブとケーブル、USB トラックボール、キーボード、ヘッドフォーン、それに Mac 用ガラクタもろもろが幅を利かせていた。その時、彼女はまだ私のブリーフケースの方はまだ見ていなかった。
その日、私は Toronto のホテルでの長い三日間への準備をしているところであった。これは、Canadian Paediatric Society (CPS、カナダ小児科学会) の年次総会での毎日のニューズレターを取りまとめる仕事のためであった。何の仕事かといえば、いろいろなセッションに参加し、ノートを取りそして写真を撮り、記事を書いて編集し、そして 4 ページだてを 3回レイアウトし、翌日の朝までに数百人という参加している医師達に配るというものである。記事の中身は、前日のハイライト、本日の案内といったものである。
一年前の 2001年には、私はやはり編集者をやったが、それは私の故郷である Vancouver での話であった。その前の年 2000年には、同様の仕事をするのに、それは他の会社がやったのだが、三人がかりであった。
斧を研ぐ -- Abraham Lincoln は次のように言ったという、もし木を切り倒すのに 8時間あるとすれば、自分は 6時間は斧を研ぐのに使うと。前回の CPS カンファレンスでの経験で、私もリンカーンの教訓に従うべきだと思った。それまでラップトップは持ったことがなかったので、出発の数日前に PowerBook G4 を一台 Vancouver の Mac Station からレンタルした。
必要と思うソフトウェアを単にインストールする仕事だけで、ほぼまる一日を使ってしまった - 最新版の Mac OS X 10.1 と 9.2、フォント、フラッシュカードドライバ, iPhoto, iTunes, Palm Desktop, WordSmith, Photoshop, GraphicConverter, PageMaker, Acrobat Distiller, BBEdit, Office X, Toast Titanium, FTP ソフトウェア, Samba X, Mozilla, そして Internet Explorer である。
<http://www.palm.com/software/desktop/mac/>
<http://www.bluenomad.com/ws/prod_wordsmith_details.html>
<http://www.adobe.com/products/photoshop/>
<http://www.lemkesoft.com/us_gcabout.html>
<http://www.adobe.com/products/pagemaker/>
<http://www.adobe.com/products/acrobat/>
<http://www.barebones.com/products/bbedit.html>
<http://www.microsoft.com/mac/officex/>
<http://www.roxio.com/en/products/toast/>
<http://prdownloads.sourceforge.net/xamba/>
<http://www.mozilla.org/releases/>
<http://www.microsoft.com/mac/products/ie/>
この中で、Classic モードを必要としたのは PageMaker, Acrobat Distiller, それに私の古いバージョンの Photoshop 5 のみであった。それ以外すべては Mac OS X ネイティブで動き、Mac OS X のマルチタスクは正常に動作するので、これで行くと最初から決めていた。次の仕事は、私の古い Power Mac G3 からのドキュメントである。その中身は、ニューズレターのテンプレート、ロゴに写真、それに MP3 ファイル等である。
最後はテストである:記事を BBEdit または Palm IIIxe 上で書いて PageMaker にすんなりと移行できるか?借りてきた Canon PowerShot G2 デジタルカメラからカードリーダと GraphicConverter を使って写真を取り込めるか?
<http://www.dcresource.com/reviews/canon/powershot_g2-review/>
PageMaker はすべてのフォントを埋め込んだ PDF ファイルとしてエクスポートできるか?ちゃんと読める CD-R を焼けるか?メールと FTP はちゃんと動くか?ネットワーク上の Windows マシンは見えるか?急場になった時に同じ事を違うやり方でも出来るか - BBEdit の代わりに Word、Disc Burner の代わりに Toast、Photoshop ではなく GraphicConverter、ブロードバンドでもダイヤルアップでも?
フー!もう降参!
私は意識的に過剰なほどの準備をした。なぜならば、まず時間的に不具合に対応している余裕がない、それに昨年は運が良くうまくいったことも大陸半分離れた所ではそう順調には行かないかもしれないからである。すべて準備は整ったといっても、私にはまだ飛行機に乗って仕事を片付けることが残されている。それにどうも風邪をひきかけているらしい。
ジェット機で飛び立つ -- 私の運は出発の日も持ちこたえてくれた。風邪もひどくならず、割引の Air Tango の自動チェックインにも行列はなかった。空港警備も、ワイヤのいっぱい詰まった私のバッグを通してくれた、そして私の窓際の席の隣の席も空いていた。
Toronto は、蒸し蒸しする摂氏 32 度(華氏 90 度)であった。まずエアポートホテルにおさまり、外はまるでお風呂のシャワーのような土砂降りだった。これが唯一何も予定のない夜だったので、メールのチェックをし、私の準備状況の再確認をし、ひと泳ぎし、女房と子供たちの所にメールするため、機上で取った写真を使って iMovie を使って短いスライドショーに仕上げた。
家では、1998年以来 DSL インターネット接続を使っているので、それにすっかりスポイルされてしまっていた。ホテルのダイヤルアップラインを通してこの短いスライドショーが 15分もかかってのろのろとアップロードされていくのをじっと見つめていると、これから先の数日が思いやられた。高速のインターネット接続サービスは、ワイヤード(或いはワイヤレス)ビジネス出張者に対して、ビジネスホテルでは未だ十分なだけ広まっていない。
作業開始 -- 次の朝、Ontario 湖の水辺にある Westin Harbour Castle へとバスで向かった。部屋にチェックインするには早すぎる時間であったので、まずカンファレンスの事務局に顔を出して挨拶し、机の上に PowerBook をしつらえ、作業の開始である。程なく、カンファレンスセンターを歩き回るのには、G2 カメラを片手に持ち、Palm とその折畳みのキーボードはポケットに入れてというのが最もやりやすいことに気づいた。
<http://www.starwood.com/westin/search/hotel_detail.html?propertyID=1084>
<http://www.palm.com/products/accessories/keyboard/>
WordSmith ワードプロセッサを使って沢山のノートをとり (TidBITS-604の私の記事を参照)、写真も数百枚撮った。
<http://db.tidbits.com/getbits.acgi?tbart=06621>(日本語)どう調理する?Mac にやさしい Palm のワープロふたつ
大きなカンファレンスでは一般的な様に、常にいくつものセッションが同時並行で進行している。そこで、ある時は一つのセッション全部に、最初から最後まで参加した - 例えば、未熟児はどうしてその幼少時に視力を失うことが多いのかといった興味をそそるものに。そしてある時は、セッションからセッションへと跳び回り、要点を書きとめ、写真を数枚撮った。暗い会場では、Canon G2 の高開口レンズと結構強力なフラッシュは重宝であった。
いったん自分の部屋に落ち着けるようになった時に、部屋に備え付けの机にミニオフィスを仕立て上げた (下の写真参照)。アーァ、部屋の壁には真新しいイーサネットジャックが付いているのに、ホテルはそれをどこにもつないでいなかった。ダイヤルアップしかないか・・・ セットアップに際しては出来るだけ人間工学的に配置するよう留意した。前年の轍は踏みたくなかったからである。当時、私は PowerBook 1400 を高さの合わない机の上において作業したため、腕に繰り返しのストレス障害を与えてしまった。このあと完全に回復するのに数ヶ月も要してしまった (TidBITS ではこのトピックスに関して数年前になるが多くの記事を掲載した、そしてそれは今でも当てはまるものである)。
<http://www.penmachine.com/westin_office.html>
<http://www.penmachine.com/journal/2001_06_01_news_archive.html#4220179>
<http://db.tidbits.com/getbits.acgi?tbser=1222>(日本語)クイズ結果: 苦痛からの脱却
<http://www.tifaq.com/archive.html>
デジタル砥石 -- その後の三日間はきちんと型にはまった仕事が続いた。午前と午後の時間はさまざまのセッションを跳び回って過ごした。休憩時間には自室に戻り、Palm をシンクロナイズして、写真も PowerBook に転送した。夕食後には記事を書き、写真をクロップ・リサイズして、少しずつ PageMaker テンプレートの空白を埋めていった。夜の 9時か 10時には文章を校正してオンスクリーンでの編集を済ませ、それが終わると私と CPS スタッフとのコンタクトを取ってくれている Elizabeth Moreau に電話をする。彼女がこの「ベータ版」に目を通して最後の修正を施し、それから最終版の PDF ファイルが生成される。
CPS はコスト節約を優先した印刷プロセスを用意してくれていたが、そのため印刷作業は複雑なものだった。Westin ホテルの地下にはビジネスセンターがあるのだが、メインの印刷機は数キロメートルも離れたダウンタウンの別のホテルにあるのだった。
私は印刷用の PDF ファイルを 11 PM までに彼らに電子メールで送ることになっていた。届いたファイルはそこで Windows コンピュータを使って印刷され、複写され、深夜に車に積まれて Westin まで届けられて戻って来るのだ。最初の号の PDF ファイルが仕上がったのは 10:55 PM ごろだった。十分時間がある、と私は思っていた。けれどもそのファイルがたった数メガバイトの大きさだったにもかかわらず、ダイヤルアップの線を通ってボチボチと運ばれて行くだけのことに、何ともイライラ続きの 12 分もかかってしまったのだ。仕方がない、明日の夜はもう少し早く仕上げなければ、と私はつぶやいた。
翌日わかったことだが、前年 Kinko's に発注して作ったデジタル直接印刷とは異なり、最初の晩に私が用意したグレイスケールの写真はここのビジネスセンターの機器ではあまり綺麗には印刷できていなかった。そこで、第二夜は、私はハーフトーンスクリーンを試してみた。こうしてできたニューズレター第2号のための PDF ファイルは、少しファイルのサイズが大きくなり過ぎて、私の電子メールゲートウェイの制限にかかってしまった。制限にかかったのでゲートウェイはその書類全体を返送してきた...またもや超鈍足のダイヤルアップ結線を通って。仕方がないので私はダウンロードを中断し、ダウンタウンのビジネスセンターの親切な青年に電話をし、PDF を CD-R ディスクに焼き、自分の足で2キロの道のりを歩いて彼に会いに行って、自ら深夜の手渡し配送便の役目を務めたのだった。
その翌朝、スクリーン上では素晴しく美しかった写真は、印刷後の紙面上では前日よりも悪い出来に見えた。そこで、最終日の号では、非常に粗いスクリーンを試してみた。スクリーン上では写真は何とか我慢できる程度に見え、一方 PDF ファイルのサイズは劇的に小さくなった。そのため電子メールによる転送は(最終日にしてやっと!)問題なくできた。写真の印刷の仕上がりは結局どれも満足のいくものではなかったが、記事の文章と情報の内容とは、多くの人たちに喜んでもらえたようだ。最終版の PDF は、どうぞ皆さんもご自分でご覧頂きたい。2001 年版と併せ、私のウェブサイトに置いてある:
<http://www.penmachine.com/cps_samples.html>
教訓 -- ハイエンドの PowerBook とカメラとは、努力と出費に十分見合うだけの価値のあるものだった。例えば、PDF を素早く生成してくれたのは有難かった。そうでなければ私の最終ファイルの出来上がりがものすごく遅れてしまい、殊に第二夜の電子メールが返送された騒ぎの日には収拾がつかない事態になっていたかも知れない。人間工学に注意した機器の使用は私の手首を救ってくれたし、過剰なほどの事前の準備は私の正気を保ってくれた。コンピュータのパワーを要する何個かのタスクを同時進行で走らせられたことには、とても助けられた。(私が 2001 年にレンタルした PowerBook 1400c では、media player しか動作していない時に、MP3 を演奏させることすらできなかった。)Tylenol Cold Daytime は素晴しくよく効く風邪薬だったが、夜に服用すると眠れなくなることがわかった。それから、ダイヤルアップなんてもう懲り懲りだ。
<http://www.penmachine.com/journal/2002_06_01_news_archive.html#77825205>
ワイヤのいっぱい詰まった私のバッグも、やはり役に立った。最終日のこと、別プロジェクトとして、私は自分の PowerBook G4 をビジネスセンターの高速インターネット接続に繋いでいくつかの PowerPoint ファイルをダウンロードし、それらを一つのプレゼンテーションにまとめ上げた。これをハイブリッド CD-R に焼いて、この急ぎの仕事の依頼主である医師に渡した。彼女はこれを自分のラップトップで読み、その日の午後のプレゼンテーションに間に合わせたのだ。この仕事全部にかかった時間は、もしもダイヤルアップ接続を使っていたならばファイルをダウンロードするだけにも足りなかっただろう。
私がニューズレターの仕事の合間にこうした追加のリクエストの仕事もこなせるのを見て、CPS のスタッフも喜んでくれた。家に向かう帰りの飛行機の機内から我が町 Vancouver の美しい航空写真を私が撮りまくっていた頃には、私のクライアントたちから、また来年の Calgary にも来て欲しいという依頼が届いていた。こういう仕事は家族から離れて連日 16 時間ずつも働き続けるというハードな仕事ではあるけれども、報酬はかなりの金額だし、いろいろなことにチャレンジするのは楽しい。それに、一人の男と一台の Mac があれば三人前の仕事ができるということも、実証できるのだから...時には、ね。
<http://www.penmachine.com/photoessays/2002_06_aerial/>
[Derek K. Miller は Vancouver で、まだ就学前の二人の娘たちと一緒に日々暮らしている。週末には 60年代レトロのバンドでドラムを叩き、その他の日は文章を書いたり、編集したり、妻と二人で過ごしたりしている。彼女はまだあのワイヤ類が気になるようだ。そう言えば、彼はウェブログも作っている。]
PayBITS: 楽しんで頂けましたか? 次回には自前の PowerBook とカメラを買えるように、Derek に PayPal 経由で小銭を送ってみませんか?
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PayBITS の説明 <http://www.tidbits.com/tb-issues/lang/jp/paybits-jp.html>
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, , 日本語版最終更新:2005年 12月 26日 月曜日, S. HOSOKAWA