TidBITS: Apple News for the Rest of Us  TidBITS#671/17-Mar-03

時折とてもよく出来た非常に役立つユーティリティに出会うことがある。そのユーティリティなしで Mac を使うのはとても苦痛だろう。 Adam の場合それはLaunchBar だ。シンプルで強力なアプリケーションランチャーで、大きな潜在性を持っている。また今週は、Mac OS X のトラブルシューティングについて Conflict Catcher 的なユーティリティを提案する。ニュースでは、BBEdit 7.0.3 のリリース、Chimera の改名、Caffeine Software 社への追悼。

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MailBITS/17-Mar-03

BBEdit 7.0.3、バグをつぶす -- Bare Bones Software は、html をはじめ、さまざまなエディタとして利用できる定番テキストエディタ BBEdit の、小幅ながら有益なアップデートをしたバージョン7.0.3をリリースした。

多くのバグフィックス(完全なリストに関してはリリース・ノートを参照して下さい。)に加えて、BBEdit 7.0.3 は "Text Files: Opening" の環境設定パネルに HTML か XM L文字セットへのリンク文字セットをエンコーディングする新しいオプションを追加した。(BBEdit に正確に表わすことができないデータを含んでいるドキュメントを開かせるようにオプションを設定できるようになる。−私たちが TidBITS で毎日しているような)

BBEdit7.0.3 は、さらにマクロメディア社の Dreamweaver MX の限界点を回避して非 ASCII 文字も正確に橋渡しできるようになり、オープンしようとするファイル(.m3uや SMIL ファイルのような)が開くことを可能にするために、QuickTime 再生に対するデフォルトの設定を無効にする。他の改善された2つの特徴:他にも、Mac OS X で短いユーザー名を挿入する新しい HTML プレースホールダーとほんの少し賢い Close Current Tag コマンドが改善された。BBEdit 7.0.3 最新版は登録ユーザに無料で、15.1MB のダウンロードである。[ACE](湯本)

<http://www.barebones.com/products/bbedit/>
<http://www.barebones.com/support/bbedit/current_notes.shtml>
<http://www.barebones.com/support/bbedit/updates.shtml>

Caffeine Software 社、操業を停止 -- 2003年3月3日、TIFFany, Curator, Cycles そして優美な PixelNhance のメーカーである Caffeine Software 社が操業を停止した。同社のホームページ上のお知らせは、なぜ会社をたたむことになったかについて触れておらず、我々の問い合わせでもさらなる情報は得られなかった。1週間 ほど後に、同社はホームページに同社製の全アプリケーションソフトウェアの最新版を含む 57.1MB におよぶディスクイメージへのリンクを追加した。もしあなたがまだ TIFFany をお持ちでないなら、記載どおり本当に1か月で期限切れとなってしまうかわからないが、同社のライセンスサーバーへ試用のためのライセンスを要求することはまだ可能だ。その他のアプリケーションについては私が知る限り無料で、完全に機能する。私にとっては殊更 PixelNhance を失ってしまうことが惜しまれる。それは使って楽しいインターフェースにより iPhoto の優れた追加編集ツールとしても活用できる、巧みでシンプルな画像処理プログラムである。これらのプログラムを利用可能な状態にしておいてくれた同社を 私はいまなお喜ばしく思う。おそらく彼らは新しい会社で新たな人生を踏み出すことだろう。[ACE](ぱぶ)

<http://www.caffeinesoft.com/>

Chimera、Caminoに変身 -- MacOS X用のオープンソースのWebブラウザとして知られているChimeraが法律上のやむを得ない理由でCaminoと名称を変更し、バージョン0.7をリリースした。Camino 0.7の新機能はメニューシェアリングプロトコルのサポートによるURL Manager Proと互換性の提供。ダウンロードマネージャの搭載、そしてスライドバー内にサイトの訪問履歴が表示できるようになり、メールアドレスへのリンクに機能するリンクの送信メニューが追加され、画像やリンクの他のアプリケーションやデスクトップへのドラッグが可能になった。またRendezvousを使ってローカルのFTPやWebサーバーを閲覧ができる。その他にもリリースノートにはさらに多くの新機能が見ることが出来る。私はCaminoのタブブラウジングと小気味良い描画性能が気に入っているが、Caminoをデフォルトブラウザとした生活が一週間も過ぎると、Safariの荒々しいほどの速度とGoogle検索窓、そしてInternet Explorerの予約購読や優秀なURLオートコンプリート機能を望んでいる自分がいることに気付くのだ。しかしCamino開発チームが新しい機能の追加とブラウザの開発に引き続き意欲的に取り組んでいることが見て取れるのは素晴らしいことだ。-競争はWebブラウジング環境全体の革新と進化を助けるのだから。Camino 0.7はダウンロードで7.6MBの容量がある。[ACE](坂本)

<http://mozilla.org/projects/camino/>
<http://mozilla.org/projects/camino/releasenotes.html>


TidBITS 御用達ツール:LaunchBar

by Adam C. Engst <ace@tidbits.com>
訳: 亀岡孝仁 <takkameoka@earthlink.net>
訳: 佐藤浩一 <koichis@anet.ne.jp>

ずっと昔まだコンピュータの夜明けの時代に、WordStar と呼ばれるワードプロセッサがあった。このプログラムを重宝して使っていた人たちの多くが、そのキーボードコントロールが自分の指に組み込まれてしまっていると言っていたが、私自身はこの人達が何の事を話しているのか良くわからないでいた。ところが、Objective Development の Norbert Heger によって書かれた Mac OS X ユーティリティの LaunchBar のお陰で、これらの人が何の事を言っていたのかわかったのである。

LaunchBar は起動ユーティリティである。Apple は Mac OS X 上でアプリケーションを起動するのにいろいろな方法を提供している。例えば、Finder 上でアプリケーションやドキュメントのアイコンをダブルクリックする、Dock 上のアイコンをクリックする、或いは Recent Items メニューからアイテムを選択するなどである。しかしながらこれらのやり方すべてが - それに他の起動ユーティリティを含めて - 何らかの理由で帯に短したすきに長しなのである。

アプリケーションをダブルクリックするというのは簡単でかつ理に叶っているが、そうする為には Finder 上で辿ってそのアプリケーションに行き着かなければならない。そうする為には、そのアプリケーションがどこにあるか知っていなければならない。Dock 上のアイコンをクリックするのも、数少ない、しょっちゅう使うアプリケーションのためにはいいが、本当に少数に限られるし、事前に自分で設定しておかねばならない。Recent Items メニューは疑いも無く良いアイディア - 最近たまたま使ったアイテムへ早くアクセスできる - であるが、Recent Applications リストにでてこないアプリケーションを起動したい時には、たちまち Finder からの狩の旅に戻らなければならない。もっと悪いことには、たまにしか使わないアプリケーションがそのリストにあるかどうかは見てみるまでわからない。

LaunchBar はこれらの問題すべてを解決してくれる。

タイプして起動 -- LaunchBar を起動するにはいろいろな方法があるが、例えばそのメニューバーアイコン、Dock アイコン、或いはウィンドウをクリックする、とかだが多くの人が使うのはシステム全般に共通のキーボードショートカットによる方法である。定義済みの五つの中から選択する;私の場合は Command-Space を使っている。LaunchBar が起動された後は、起動したいアプリケーションの名前から数文字をタイプし、次に LaunchBar の目障りでないウィンドウに表示される、タイプした文字から関連付けられて選択された正しいアプリケーションを確認して、そして Return を押すのである。この間たったの一秒、どんなアプリケーションを起動しようとしているかには影響されない。

LaunchBar の方法を他の起動アプリケーションのやり方と較べてみよう。LaunchBar は起動されると自動的にアプリケーションを探してハードディスクをスキャンするので、常にどれがインストールされているか知っており、そのうちのどれかを起動したい時にも Finder 上のフォルダを探すことを全くせずに出来るのである。自動的にスキャンするので、Dock や他の起動ユーティリティのように個別のアイテムを設定する必要はない(新しいアイテムを起動に供せられるようにスキャンする時、どこを見るかについてコントロールすることも出来る - これについては後で詳しく触れる)。そしてつまるところ、あるアプリケーションを起動したのが昨日だったのか或いは一年前だったのかは全く問題でない - LaunchBar にとって最後にアクセスされた時間はほとんど意味を持たない。

LaunchBar はアプリケーションを起動するだけに留まらない。ドキュメントもその関連したアプリケーションの中で開ける。Finder 上のフォルダも開けるし、LaunchBar の中にある矢印キーを使ってフォルダの中をナビゲートすることも出来る。System Preferences の中の特定の設定ペーン、或いは Karelia の Watson の中の特定のツールを開くことも出来る。デフォルト設定となっている Web ブラウザ(どんなブラウザであっても)からブックマークを開けるし、最新版の LaunchBar では、指定の Web ブラウザから同じ事が出来る。更に、メールアドレスを "起動" することすら出来る;つまり、デフォルト設定のメールプログラムを使って選択したアドレスに対する新しい送信メッセージを立ち上げる。

<http://www.karelia.com/watson/>

さてここまで来ると、一体全体 LaunchBar はどうやって BB とタイプすれば BBEdit を起動したいのだと知ることが出来るのか不思議に思われているであろう。その答えは簡単である - それは魔法。冗談はさておいても、そう見えてしまうのである - 実際には知能型適合アルゴリズムで、LaunchBar は学習による推測を行なっているのである。それも大変良くできている - もし私が IPNM とタイプすれば、それは IPNetMonitor X だと正しく推測する。問題は、入力した省略語がいくつかのアプリケーション、ドキュメント、ブックマーク、或いはメールアドレスとそれなりに一致した場合である。この場合、LaunchBar が表示する選択肢リストをスクロールして、正しいものを選ばねばならない。例えば、私がもし RE とタイプして Retrospect Express を欲しいとした時には、一度か二度自分でこれを選択してやる必要がある。そうすれば LaunchBar は、私が Retrospect、或いは Retrospect Client、或いは ResEdit、或いは私のハードディスク上にある膨大な数のシェアウェアからの無数の Kagi Register アプリケーションを求めているのでないことを知るのである。そして勿論、MAIL とタイプして Microsoft Entourage を選ぶというように、LaunchBar がどうやったって推測できないものをマッピングしてやる方法も提供されている。

この適合アルゴリズムが LaunchBar を他から際立たせるものとなっている。最初に立ち上げた時は、それなりに知的な推測を行なうが、一旦それが間違っていたとわかると、その間違いから学習し常にそのユーザーの特異性に自分を適合させていくのである。そしてこれはふところが深い - 私は省略語をタイプする時しょっちゅう間違えるが、LaunchBar がそれ相応に振舞ってくれる限り私は満足である。最悪、私が間違いをすれば LaunchBar に違う省略語マッピングを後で教え込まなければならなくなるぐらいのものである。

LaunchBar のキーボードベースのやり方でファイルを起動するのは非常に速いだけでなく、更にいいことには、これがかなり普遍的であることがわかった。すべての Mac ユーザーのように、Tonya は自分の Mac を自分の思うように構成する。それで、私がその前に座らなければいけない時はいつでもまごついてしまう。それが今や、何かをどこにしまったのか彼女に聞いたり、Finder を使って探したりする必要がないのである。彼女の Mac で単に Command-Space を押して省略語をタイプし、後は LaunchBar にいつもの魔法を使ってもらえば良い。この様に、LaunchBar は、それぞれに違うよう設定された複数の Mac に対して一定のインターフェースを提供する助けになるのである。

環境設定 -- LaunchBar は、あなたが入力した省略語に合うアプリケーション、文書そしてフォルダの組み合わせを、どこから探し出すのだろうか?LaunchBar の環境設定メニューで「設定を開く」を選ぶと、LaunchBar がどのフォルダをスキャンするかを示す多少複雑なウインドウが出てくる。このウインドウにフォルダやファイルをドラッグすることによってそれらを追加することができ、すでに定義済みのフォルダはそれぞれの隣にあるチェックボックスで使用する・しないを切り替えられる。例えば、私は Apple の Developer Tools をインストールしているので、LaunchBar では多数の開発者用の文書ファイルが開けるように設定されていた。そのようなファイルは、私には素早く開く必要は無く、またその省略語が別のものと重複するのはいやだったので、すべてオフにしてある (逆に、ライター兼編集者である Matt Neuburg は、LaunchBar が Cocoa 文書ファイルを特別に認識していなかったなら、基本的に開発はまったくと言っていいほどできなかっただろうと述べている)。代わりに私は、 Eudora のニックネームフォルダ内のアドレスブックファイルをすべて追加している。 LaunchBar は標準でそれらを認識しなかったのだ。

現実問題として、ほとんどのユーザは LaunchBar の環境設定ウインドウを見てみようとも思わないだろうが、もう見たくないと思うような項目が何度も提案されるのであれば、そのようなファイルが入っているフォルダを使わなくしたり消去するために環境設定ウインドウを開いてみるのも良いだろう。

さらなる改良 -- LaunchBar はこの基本機能の中で、ほとんどのユーザは使わないかもしれないが、使いこなせば大きな違いが出る小技を提供している。アプリケーションを選んだ後に Option-Return を押せば、それの起動時にLaunchBar は他のアプリケーションをすべて隠してくれる。また、Command-Return を押せば選択されたアプリケーションを Finder で表示する。LaunchBar はドラッグ& ドロップ対応なので、ファイルを LaunchBar のウインドウにドラッグすれば、そこで選択されたアプリケーションで開くことができる。さらに、ドラッグし始めてからでも、LaunchBar の起動キーを押して必要な省略語を入力して、そのファイルを LaunchBar のウインドウにドロップすることも可能だ。これは、例えば HTML ファイルを BBEdit で開くのに便利である。なぜなら、ダブルクリックすると普通は Safari で開いてしまうからだ。ドラッグ &ドロップは、フォルダに対し、あるいはファイルの移動、コピー、エイリアスを作成するなどのために使うことができる。

Dock が好きではないので隠している人は、LaunchBar で動作中のアプリケーションのリストを得ることも可能だ。まず、LaunchBar のキーボードショートカットを 2 回押す。リストが出てきたら、矢印で、あるいはマウスのクリックやスクロールホイールを使ってアプリケーションを選び、Command キーを離せば手前に出てくる。

メタファーを拡張する -- LaunchBar は通常、さまざまなウェブブラウザや電子メールプログラムのブックマークやアドレスをサポートしている。しかし、プログラム独自のファイルフォーマットが読み込めない場合 (Outlook Express、Entourage、そして Mailsmith など)、テキストファイルとして書き出して LaunchBar にそのファイルからメールアドレスを探し出すよう指定することで、その問題を回避できる。

ここで、一つの考えが浮かぶ。誰かの電話番号や郵便の宛先をそれらの名前の省略形をタイプすることで連絡先データベースから探し出せたら素晴らしいのではないだろうか? 例えば、LaunchBar がその人の連絡先情報をすべて表示し、選択された情報を各々のアプリケーションに渡すという感じだ。E をタイプすれば標準の電子メールプログラムで新規のメールアドレスを作成したり、P を押せばモデムでその電話番号をダイヤルしたり、あるいは A を入力すればクリップボードに郵便の宛先を入れて別のアプリケーションでペーストできる、などというのはどうだろう?

これらの機能はあるとうれしいが、さらに言えば誰でも LaunchBar に新しいタイプのデータを認識させてどのように動作すればいいか教えることができ、可能であれば AppleScript を使って指定するアプリケーションに情報を送ることが、XML に基づく抽出レイヤーで出来ればさらに素晴らしいだろう。

一線を越える -- 私は告白しよう。完全にはまってしまった。往年のWordStar のファンたちのように、気が付くとどの Mac でも Command-Space を押している。そして、LaunchBar がインストールされてないため動作しないとわかると、おあずけを食らって涎を垂らしている犬のような気分になってしまう。LaunchBar が動作しない Mac OS 9 で Mac が動いていると知った途端、不合理にもいらいらしてしまう程だ。LaunchBar はもう私の神経細胞の中にすっかり入り込んでしまい、おかげでますます生産性は上がった。是非試していただきたいソフトである。特に、アプリケーションを沢山使っているとか、主にキーボードを使って作業している、あるいは Unix のコマンドラインの世界から Mac OS X に来たのなら特にそうだ。

LaunchBar 3.2.9 の価格は、個人使用なら 20 ドル、業務で使うなら 40 ドルであり、すべての機能が使えるがセッション毎に最大 7 回しか起動できない試用版も用意されている。ダウンロードのサイズは、たったの 246K だ。

<http://www.obdev.at/products/launchbar/>

PayBITS: LaunchBar を知ったおかげで Mac OS X の操作が Adam と同じように簡単になったなら、感謝の意を数ドル送って頂けませんか?
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求む: Mac OS X 用 Conflict Catcher

文: Adam C. Engst <ace@tidbits.com>
訳: Mark Nagata <nagata@kurims.kyoto-u.ac.jp>

Mac OS X の良い点といえば、Mac OS 9 に見られたのと同種のコンフリクトがもはや起こらない、ということだ。新しいソフトウェアをインストールするとそのせいで何か他のプログラムが異常動作したり、悪魔に魅入られたような振る舞いをするなどということは、起こらないか、起こったとしても非常に稀なことのはずだ。そこまでのレベルの信頼性を Apple は約束し、事実それは実現された。

一方、悪い点もある。Mac OS X にはそれなりの弱みもあり、運悪く特定の場所のファイルがちょっと壊れただけでありとあらゆる奇妙な問題が発生し、その原因を特定するのが困難を極める、というようなこともあり得る。ここで、私が経験した実例をいくつか簡単に紹介してみよう。

妻の Tonya の Power Mac G4 (QuickSilver) を Jaguar にアップグレードしたのは私だった。その時私は Archive&Install のオプションを使ってちゃんとクリーンなシステムをインストールしたはずだったのだが、いざ起動させてみると Finder が起動したかと思うとすぐに終了し、また起動し、また終了、という繰り返しで、Mac は全く使い物にならなかった。これを修復することができたのは、Tonya がマニュアル関係の作業専用に第2のユーザーアカウントを作っていてくれたおかげだった。その第2のユーザーとしてログインすると、すべて何の問題もなく動作したのだ。結局、苦労の末に私が発見したのは、Tonya の ~/Library/Preferences フォルダをデスクトップに移動してからログインし直せば問題が解決する、ということだった。(Kirk McElhearn の書いてくれたコマンドライン手引きの連続記事にある通り、~ が現在のユーザーのホームフォルダを意味することを思い出して頂きたい。)その後、あるメーリングリストで Fetch の著者の Jim Matthews が投稿してくれた記事のおかげで、私は長時間を費やすことなく原因の見当をつけることができた。その原因は、com.apple.LaunchServices.plist というファイルだったのだ。私は root ユーザーとしてログインし、その問題のファイルを削除し、やっと Tonya は自分のアカウントで彼女の Mac を使えるようになった。かくして、結婚の危機は(「私の Mac に何をしたんですって?!?」)危機一髪のところで回避されたのだった。

<http://db.tidbits.com/getbits.acgi?tbser=1238>
(日本語)Mac ユーザのための Unix コマンドライン手引き、その 1
(日本語)Mac ユーザのための Unix コマンドライン手引き、その 2

実は、これは決して珍しいことではない。もちろん Jim も同じ問題に遭遇したのだし、私の両親が Power Mac G4 Cube を Jaguar にアップグレードした時にも、私の母のアカウントに全く同じことが起こった。おかげで私は予定外の両親宅訪問をすることになり、両親の Mac を復活させるために作業しなければならなくなった。この時も、私が root ユーザーとなってcom.apple.LaunchServices.plist ファイルを削除すると、問題は解決した。結局、両親は私のスキルにますます信用を厚くしてくれ、高いお金を払って私に教育を受けさせたのも無駄ではなかったと納得してくれた。やれやれ!

似たような問題は私の Mac にも最近発生した。何か月か前、私は Macworld の記事で Maxtor Personal Storage 5000 FireWire ハードドライブについて書いたことがある。Maxtor ドライブには便利なボタンが付いていて、そのボタンを押すと Retrospect Express が起動されてバックアップ作業を済ませてくれるのだ。けれどもある時、私のレビュー記事を Macworld に送った後随分経ってから、この Maxtor ドライブのうち2台のボタンが利かなくなってしまった。最初は私の iBook を使っている時、2度目はそのしばらく後で私の Power Mac G4 を使っている時だった。苦労の末にやっと Maxtor の担当者と連絡がついたのだが、彼らは結局問題を再現させることができなかった。そこで、話の相手はそのボタン用のドライバを書いたプログラマー、John Brisbin にまで至ることになった。John と私とで検討した結果、すべては正しくインストールされており、ドライバも通知用アプリケーションも正しくロードされて動作しているにもかかわらず、それでもやはりボタンは動作しない、という結論になった。

<http://www.maxtor.com/en/products/external/personal_storage_5000/>

光明が見え始めたのはその後のことだった。John が私に、実際の作業をするRetrospect Express プラグインが、“情報を見る”ウィンドウの“このアプリケーションで開く:”ペインで Retrospect Express を起動するように設定されているかどうか確かめて欲しい、と言ってくれたのだ。これが大当り...その2台のマシンとも、この設定が外れていた。実際、このプラグインを開くことのできるプログラムの選択肢を並べているはずのポップアップメニューは、アプリケーションでもないようなでたらめのファイル名の羅列になってしまっていたのだ。彼の忠告に従って、私はまず私のユーザーとしての~/Library/Caches/com.apple.LaunchServices.UserCache.csstore ファイルを削除してみた。これはそのユーザーのための個々のアプリケーションに対応したファイルタイプのキャッシュだ。それがうまく行かなかったので、次に私は/Library/Caches/com.apple.LaunchServices.LocalCache.csstore、つまりすべてのユーザーに適用されるファイルタイプ対応のシステムレベルのキャッシュを、削除してみた。その後再起動が必要だったが、Mac が起動した時、問題のプラグインは見事に Retrospect Express にリンクされていることを記憶しており、ボタンも完璧に動作するようになった。

あと2つ小さな実例を挙げておこう。数日前、ある人が私に iPhoto で彼のキーワードウィンドウが出てこなくなった、と相談をもちかけてきた。また別の人が、iPhoto でスライドショウが表示できなくなった、と言ってきた。どちらの場合も、~/Library/Preferences の中にある com.apple.iPhoto.plist ファイルを削除するだけで即座に問題は解決した。

なぜ Conflict Catcher が必要か -- 私がどこへ話を持って行こうとしているのか、もう皆さんにはおわかりのことだろう。Mac OS 9 でと同じ様な、プログラム同志の間のコンフリクトはもはや存在しないかも知れないが、Mac OS X もそこで動作するアプリケーションも、ともに以前にも増してそのサポートファイルに起こる問題によって悪影響を受けてしまうのだ。本質は以前と何ら変わっていない。Mac OS 9 でも、壊れた初期設定ファイルによってありとあらゆる問題が起こっていたではないか。

変わったことといえば、Mac OS X にははるかに多数のファイルが、さまざまの場所に分かれて保存されており、問題が起こった時にその原因を突き止めるのがはるかに困難だということだ。このことを端的に示す例を、もう1つ挙げてみよう。

数日前、私の Eudora ツールバーと InDesign パレットとに表示される文字が、どちらも Geneva フォントを使用すべきところを、突然ひどく汚くてギザギザの文字に変わってしまったことがあった。他のアプリケーションでのテキストでは Geneva は問題なく表示されていた。こんな問題を引き起こすようなことは何もした記憶がなかったので、私はまずこれは初期設定ファイルかフォントキャッシュファイルかが壊れたのだろうと見当をつけた。私の Mac での第2のユーザーとしてログインし直して調べてみたところ、そちらのユーザーではEudora も InDesign も正常だったので、この問題は私の第1ユーザーのみでの設定の問題だとわかった。

けれども、それから 45 分もかけて初期設定ファイルや、フォントやキャッシュファイルなどを外したりして調べても、原因は特定できなかった。ユーザーのLibrary フォルダ全体を外して Mac OS X を新規に再構築させてもみたが、問題は何も変わらなかった。この作業全体が非常に手間のかかるもので、変更を加えて、ログアウトし、ログインし直し、InDesign を動かして問題の再現を確認、そして次のテストに移る、ということの繰り返しであり、私はかなりイライラさせられた。Ted Landau の素晴しい本、Mac OS X Disaster Relief も開いてみて、システムのフォントキャッシュを削除せよ、と書いてあったのを実行もしてみたが、やはりこれもうまく行かなかった。最後に、Ted の本の議論を読みながらふっとアイデアが頭に浮かんだ。ひょっとしたら、私のフォントスムージング設定に何か問題があるのではないか、ということだ。これが当たりだった。一般設定の環境設定画面で、「滑らかな文字を使用しないフォントサイズ:」設定が 9 ポイントになっていたのだ。Eudoraツールバーや InDesign パレットではこれが 8 ポイントになっていないときれいに表示されないのだ。その前にさんざんいろいろな初期設定ファイルを再構築させてもうまく行かなかったのは、この設定がいつも 9 ポイントに戻されていたからだった。仮に、もしも私が例えば Conflict Catcher のようなツールを持っていて、手軽にすべての設定ファイルやキャッシュファイルなどを調べることができたとしたら、トラブルシューティングにこれほどまでに時間がかかるようなことはなかっただろう。

<http://www.amazon.com/exec/obidos/ASIN/032116847X/tidbitselectro00>

これだけ実例を読んで頂ければ、標準的なトラブルシューティングの作業を自動化できるようなユーティリティが必要なことが、きっと納得して頂けたことだろう。言い替えれば、Casady&Greene 社の Conflict Catcher のようなもの、それも Mac OS X 用のものが必要なのだ。Conflict Catcher は Mac OS 9用として必要な機能は事実上すべて備えている。皆さんは Mac OS X ではそんなものはもう要らないだろうとお考えだったかも知れないが、これまで述べてきたような体験を踏まえれば、事実は全く逆であることがわかる。 Conflict Catcher に馴染みのない方のために一言説明しておくと、これは Mac OS 9 におけるコンフリクトのトラブルシューティングの手順を簡略化するためのツールで、特定の機能を持ったフォルダ(コントロールパネル、機能拡張、フォント、初期設定、その他あなたが指定したもの)の内部からファイルを外へ動かして使用中止にさせるものだ。その状態で再起動し、問題が再現するかを調べてから、その操作を繰り返してゆく。Conflict Catcher はこうして原因の可能性の範囲を狭めてゆき、何回か再起動を繰り返すだけで1つなりいくつかなりのファイルに問題発生の原因を絞ることができるのだ。もちろん、もしも Mac OS X 用の Conflict Catcher のようなものがあったとしたら、それはさまざまの初期設定やキャッシュのフォルダを調べて、root の権限でいくつかのファイルを動かし、原因確認の作業を自動化してくれるものになるだろう。でも、そういう機能はすべて Mac OS 9 用として既に持っていたことではないか。

<http://www.conflictcatcher.com/>

ファイルを使用中止にしたり使用可能に戻したりするのを自動化する、というのは別に先端科学を必要とするような内容ではない。やる気のあるシェアウェア開発者にも、たやすく参入できることだろう。Conflict Catcher のしてきたような機能に加えて、もっとより広い状況で、手でする作業にいくらかの知性を適用してくれるようなこと、例えばあなたが iPhoto で問題を抱えていたとすると、iPhoto 関係の問題点の原因候補としてまず最初にチェックすべきいくつかのファイルをそのプログラムがとりあえず使用中止にして確認させてくれる、というような機能もあれば素晴しいだろう。トラブルシューティング用のツールとしてどんな機能が欲しいか、今後 TidBITS Talk でも議論してゆきたいと思う。どうぞ積極的にご意見をお寄せ頂きたい。

<http://www.tidbits.com/search/talk.html>

Root に行こう -- トラブルシューティングの話のついでに、最初の2つの例に登場した root ユーザーについて簡単に触れておこう。知らない人のために説明しておくと、root ユーザーというのはあなたの Mac に必ず存在しているユーザーで、すべてのファイルにアクセス権を持っているユーザーなのだ。root ユーザーにできないことは何もない。つまり、これは便利であるとともに危険な存在でもあるのだ。あなたが root ユーザーとしてログインしている時には、たとえあなたが Mac OS X の稼働のために必要なファイルを消去しようとしたとしても、何者もあなたを妨げてはくれない。だから、時折 root ユーザーを使うのは意味のあることではあるが、それは必要な時のみに限るようにして通常は使わないでおく、という心構えが重要だ。

どうすれば root ユーザーにアクセスできるのだろうか? まず、あなたの“アプリケーション”フォルダ内の“ユーティリティ”フォルダにある“NetInfo マネージャ” を起動させる。その“セキュリティ”メニューから“認証...”を選び、あなたの管理者パスワードを入力する。それから再びセキュリティメニューに戻って“ルートユーザを有効”を選ぶ。この時、NetInfo マネージャは必要に応じて root ユーザーに空でないパスワードを決めるようにと要求してくる。次にシステム環境設定パネルを開き、“アカウント”アイコンをクリック(マイアカウント ではない!)し、「...で自動的にログインする」をオフにすればよい。(変更を可能にするために下の方にある鍵ボタンをクリックしなければならないかも知れない。)自動ログインをオフにするのは必ずしも必要とは限らないが、root ユーザーとしての作業が終わった時点でそれを使用不可に戻すのを忘れないためには良いやり方だと思う。さて、ここでいったんログアウトしてから、ログインウィンドウを使って“root”としてログインし直してみよう。(ユーザー名とパスワードのフィールドを表示させるために「その他のユーザー」ボタンを押さなければならないかも知れない。)いったん root としてのログインが済めば、どんなユーザーのフォルダのどんなファイルでも消去できてしまうのだから、注意しよう。必要な操作を済ませたら、ログアウトして再びログインし直し、変更の結果をテストする。うまく行ったら、root ユーザーをまた使用不可に戻しておこう。それには NetInfo マネージャの セキュリティメニューから“認証...”を選んで管理者パスワードを入力し、セキュリティメニューの“ルートユーザを有効”を選べばよい。その後で、もし必要ならば アカウント環境設定で自動ログインをオンに直しておこう。

Unix に強い人たちの中には、NetInfo マネージャで root ユーザーに切り替えたりせずにコマンドラインで sudo コマンドを使って問題のファイルを削除するだけでいいのに、と思っていらっしゃる方がおられるかも知れない。けれども、上記の例ではいずれも、当初私はどのファイルを削除すべきなのかがわかっていなかった。それを発見するためにも Finder のフレキシビリティが必要だったのだ。何をすればよいかがあらかじめわかっていたのなら、確かにコマンドラインの方が早かっただろう。

二重人格 -- 記事の締めくくりに、Mac OS X をお使いの方々すべてに私からお勧めしたいことを1つ、書いておきたい。上に記したものも含め、さまざまの問題を私は経験してきたが、そこから学んだ教訓は、とにかく自分のシステムに管理者権限のユーザーを普段使う以外にもう1つ、_必ず_ 作っておくべきだ、ということだ。トラブルシューティングをする時以外にはそのユーザーは使う必要がない。というより、そのユーザーはそういう場合専用に使うと考えておいた方がよいだろう。私の場合は“Ghost in the Machine”、短い名前は“ghost”(幽霊)と名付けており、パスワードは私の普段のアカウントと同じにして忘れないようにしている。

何らかの問題が起こった時には、まずログアウトしてからあなたの幽霊アカウントにログインし、そこでも同じ問題が起こっているかどうかを確かめる。ちょうど、Mac OS 9 で Shift キーを押しながら機能拡張なしの再起動をしてみるのと同じ様な感じだ。もしも問題が起こらなかったら、その問題が特定のユーザーアカウントのみでの問題だとわかる。つまり、システムの中で1人のユーザーだけに関係するファイルのみにトラブルシューティングの作業を集中させればよいのだ。(基本的には、あなたの ~/Library フォルダの中だけを見ることになる。)もしも別アカウントでも引き続き問題が起こるようなら、これは1人のユーザーだけの問題ではないことがわかり、もっと上層、例えば /Library とか /System/Library とかを見なければならないことになる。

問題がすべてのユーザーにかかわるものだとわかった時は、Shift キーを押しながら再起動、つまり Safe Boot をして Mac OS X を Safe Mode で起動させてみるとよい。これはいろいろなことを意味する。まず第1に、Safe Boot は強制的にディスクのチェックを実施する。これは Disk Utility の Repair Disk 機能に相当する作業だ。また、起動時に Command-S を押し続けてシングルユーザーモードに入ってからコマンドラインに“fsck -fy”と入力しても同じ作業が実施される。また、Safe Boot は最小限必要なカーネル拡張のみをロードし、起動項目も /Library/Startup Items や /System/Library/Startup Items に Apple がインストールした起動項目しか扱わない。(これらの起動項目は、起動時に各ユーザーが開くアプリケーションや書類を指定したログイン項目とは違うことに注意。)通常は Safe Mode を動作させる必要は無いが、問題が起こった時にはディスクをチェックして、サードパーティのカーネル拡張や起動項目が問題を起こしているのかどうかを手軽に見極めることのできる、良い方法と言える。

私たちが Mac OS X で遭遇する問題というのは新しい種類の問題かも知れないが、問題に出会った時にトラブルシューティングのために行なう作業そのものは基本的には以前と変わらない。必要なのは、そういうトラブルシューティングのやり方をどうやってうまく実行するかという知識、それにどんな人でもトラブルシューティングができるようにするためのツールやテクニックだ。それ無しには、多くの人たちがいつまでも、私の父と同じ様な嘆きの声を発し続けることになるだろう。「おまえがいてくれなかったら、いったいどうやってこの問題を直したらいいのか、途方に暮れていたよ」と。

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