TidBITS: Apple News for the Rest of Us  TidBITS#694/25-Aug-03

Mac と、Bluetooth 対応の携帯電話とを持っている方は、Joe Kissell がレビューした Salling Clicker の記事を読んで、さまざまの巧みな方法であなたの Mac を電話機でコントロールする方法を学んで頂きたい。テキストが一番自分に合うという方には、Matt Neuburg が Hog Bay Notebook をレビュー記事で絶賛する。今週のニュースとしては、Snapz Pro X 1.0.8 と、Dejal Simon 1.2 のリリース、ついに出荷された Power Mac G5 向けに Photoshop を最適化する Photoshop プラグインと、MacWireless から発売された AirPort 用アンテナのお知らせがある。

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MailBITS/25-Aug-03

Snapz Pro X 1.0.8 がちょっと改良 -- Ambrosia Software 社から Snapz Pro X 1.0.8 がリリースされた。同社のスクリーンショット・ビデオキャプチャ用ユーティリティの最新版だ。今回の改良点の主なものは、スクリーンショットを一時停止するプロセスに新しい方法を採用して iTunes 4 や Macromedia の新製品との互換性を確保したこと、インターネット経由のバージョンチェック機能、Panther との互換性、パフォーマンスの改善、その他がある。Snapz Pro 1.0.8 は登録ユーザーには無料で、4.4 MB のダウンロードだ。Snapz Pro X でビデオをキャプチャしたい人は、Ambrosia が次回のメジャーリリースに向けて準備中の変更点についての議論に参加してみると良いだろう。システムオーディオをキャプチャできるようになること、ビデオキャプチャのパフォーマンスが大幅に向上すること、などがその主な点のようだ。[ACE](永田)

<http://www.ambrosiasw.com/utilities/snapzprox/>
<http://www.ambrosiasw.com/webboard/Forum70/HTML/000003.html>

Dejal Simon 1.2 がインターネットサイトを監視 -- Maxum 社の古参の PageSentry と、James Sentman のパワフルな Whistle Blower とが並び立つサーバ監視ツールのカテゴリーに参戦したのが Dejal 社の Simon 1.2 だ。Simon はウェブページや FTP サーバ、またローカルのアプリケーションなどをモニターし、さらに DNS や ping のテストをすることもできる。サーバの動作が止まると、Simon は電子メールで、声で、サウンドを鳴らして、ユーザの指定したアプリケーションを起動させることで、または一連の既成のアクションのうちから1つを実行させることで、あなたにサーバの停止を知らせてくれる。おそらくこれが Simon の一番ユニークな機能だが、単にサーバが動いているか止まっているかだけではなく、もっと細々した詳細をモニター、つまりウェブページが変更されたかどうかを監視して変更されればそれをあなたに知らせてくれることもできるのだ。Simon は他のツールほどには多彩なテストを提供していないが、その分値段が安い。Basic 版は 3 種類のテストができて価格は $30、Standard 版は 10 種類までのテストができて値段が $60、そして $200 の Enterprise 版はテストの個数が無制限だ。完全機能の試用版が Dejal のウェブサイトから 2.5 MB のダウンロードで利用可能だ。[ACE](永田)

<http://www.dejal.com/simon/>
<http://www.maxum.com/PageSentry/>
<http://whistleblower.sentman.com/>

Photoshop が Power Mac G5 で高速に -- Adobe 社は、Power Mac G5 を使うグラフィックのプロが間違いなく歓迎するであろう、Photoshop 7 用の無料プラグインを公開した。この Mac OS X 用 Adobe Photoshop 7.0.1 G5 Processor Plug-in アップデートは、PowerPC G5 プロセッサの能力を引きだすように Photoshop を最適化し、さらに G5 で動作するよう新しく作られたAdobe Color Engine コンポーネントも使用している。このプラグインは無料の1.4 MB のダウンロードだ。

<http://www.adobe.com/support/downloads/detail.jsp?ftpID=2132>

このリリースは、6 月に開かれた Apple の Worldwide Developer Conferenceで発表された Power Mac G5 の、シングルプロセッサモデルが出荷を開始されたというニュースと歩調が合っている。Apple によれば、デュアルプロセッサモデルは 8 月末頃にお目見えできるとのことだ。発表以来、この 64 ビットプロセッサを装備し、それ以前のデスクトップ Mac より格段に速くなった Power Mac G5 を、Apple では 10 万台以上注文を受けた ( TidBITS-685の“Apple、64 ビット Power Mac G5 を発表”を参照)。[JLC] (佐藤)

<http://www.apple.com/pr/library/2003/aug/18pmg5.html>
<http://db.tidbits.com/getbits.acgi?tbart=07241>日本語Apple、64 ビット Power Mac G5 を発表

MacWireless より AirPort 用アンテナ登場 -- AirPort や AirPort Extreme ネットワークの使用範囲を広げたいだろうか? Mac に精通している会社である MacWireless 社は、グラファイトや白の AirPort ベースステーション (MacWireless では、アンテナを付けるように設計されてないこれら 2 つに必要な改造方法を提供している) と、AirPort Extreme ベースステーション (ただしこちらはアンテナ端子を持つものに限る) に接続できる、指向性および無指向性アンテナをいくつか販売している。価格は 70 ドルから 150 ドルのあいだで、モデルによりアンテナの利得レベルは異なる。Apple の認定済みでAirPort Extreme ベースステーションとマッチする外見のアンテナのほうが好みなら、Dr. Bott 社の ExtendAIR Omni と ExtendAIR Direct に注目してみよう。これらは MacWireless でも扱っているし、Macworld もちょうどレビューしたところだ。屋外や悪状況化で信号の強度をあげることに興味を持っているのなら、 MacWireless の様々な屋外用マウントボックスや Power over Ethernet 製品も見てみることをお勧めする。

<http://www.macwireless.com/html/products/antenna/antennas.html>
<http://www.macworld.com/2003/09/reviews/airportextremeantennas/>

ワイヤレスネットワークで使われるアンテナになじみの無い方は、私の著書、The Wireless Networking Starter Kit を読めば詳しくわかるのだが、簡単に言えば、無指向性アンテナとは 360 度全周に対し電波を発する棒のようなものであり、使いたいと思うエリアの中央に置くと良い。指向性アンテナは電波を特定の方向へ向けるので、使用エリアの端に置くのがベストだ。[ACE] (佐藤)

<http://wireless-starter-kit.com/>


Hog Bay Notebook でグイッと行こう

文: Matt Neuburg <[email protected]>
訳: Mark Nagata <nagata@kurims.kyoto-u.ac.jp>

2001 年のことに遡るが、私が一連の TidBITS 記事で、情報を Mac で保存したり引き出したりするためのいくつかの斬新な方法について書いた時に、数多くの読者たちから熱烈な意見が寄せられて、こういうツールはシンプルであればあるほど良いと感じる人もいるのだということを、私に説きつけようとしてきた。そのことも頭にあって、私はその後 TidBITS-593 で“断片情報キーパーをあと3つ”を書いて、シンプルなツールに注目したし、さらに後になって、同じ趣旨で iData Pro X の記事も書いて、ここではそのノートが単なるテキストでフォントやスタイルも指定できないし、ユニコードも認識しないので、たぶんこれはあまりにもシンプル _過ぎる_ とまで言った。(TidBITS-675 の記事“デジタル下駄箱: iData Pro X 1.0.5”。関連するシリーズ“チェリーを2バイト - ユニコードと Mac OS X”も参照。)ところが、この記事に対してある読者から、あまり目立たないが実は非常に熱狂的なユーザーたちに支持されている Hog Bay Notebook というものがあって、これは是非とも一見の価値がある、というお便りが届いた。

<http://db.tidbits.com/getbits.acgi?tbart=06529> (日本語)断片情報キーパーをあと3つ
<http://db.tidbits.com/getbits.acgi?tbart=07145>(日本語)デジタル下駄箱: iData Pro X 1.0.5
<http://db.tidbits.com/getbits.acgi?tbser=1217>(日本語) チェリーを2バイト - ユニコードと Mac OS X - その1| チェリーを2バイト - ユニコードと Mac OS X - その2

Hog Bay Notebook は最近バージョンが 2.0.1 になっているが、これは確かに一見の価値がある。実際、これはとてもシンプルだ。使い方は1分もあれば充分身に付く。その上、エレガントさと見た目のすっきり感は、もう素晴しいの一語に尽きる。それでいて、パワフルでもある。これは、内部に驚くべき検索エンジンが組み込まれていることによるところが大きい。あなたがもしいろいろな情報の断片を持っていて、それらに対してちょっぴりの整理と、信じられないほどの検索可能性を与えたいと思っているなら、Hog Bay Notebook こそがあなたにぴったりのツールかも知れない。

<http://www.hogbay.com/software/notebook/>

ノートをとる -- Hog Bay Notebook 書類の実体はノートであって、1つのノートは1つの TextEdit 書類とほとんど同じようなものだ。個々のノートにはタイトルを付け、テキストを入力し、文字フォーマットや段落フォーマットを与えることができる。フォーマットに含まれるものとしては文字揃えや行間隔、段落マージンやタブなどがあり、これらはルーラを使って指定する。すべて TextEdit と同じだ。ピクチャをペーストしたり、また他の書類、たとえば PDF や HTML などをドラッグしてきて、それを添付物としてノート内に保存させることもできる。(TextEdit でそんなことができるなんて知らなかったと言う人は、きっとまだご自分のコンピュータと深くはつきあっていない人なのでしょう。)

実際、Hog Bay Notebook のノートは _本当に_ TextEdit 書類なのだ。Hog Bay Notebook 書類はバンドルであって、個々のノートは .rtfd ファイルであり、この .rtfd ファイルというのは TextEdit のネイティブタイプの1つだ。だから、もしも仮に明日 Hog Bay Notebook がこの宇宙から消え去ったとしても、「パッケージ内容を表示」で書類を開けば、ほら、あなたのノートはすべてそこに見えている。何の心配も要らない、すべてそのまま TextEdit で開けるのだ。見えていないのは個々のノートのタイトルだけだが、それらはすべてまとめて XML 書類の中に納められているので、どんなテキストエディタでも読める。このような構成になっていることが、あなたが Hog Bay Notebook を使う間いつも、あなたを信頼感と安心感で満たしていてくれるのだ。

整理する -- 1つの書類の中にたくさんのノートが含まれている時、それらをさらに整理することもできる。必要ならば、あなたの書類の内部に仮のフォルダのようなものを作って、ノートをいくつでも(もちろんフォルダも)その中にしまっておくことができる。こうしてでき上がった階層構造は、アウトライン表示によって一覧できる。また、個々のノートにいくつかのアトリビュートを設定することもできる。ステータスは、「済」か「未済」かのどちらかで、チェックボックスによって表示される。ラベルは、カラーとして表示される。(Mac OS 9 の Finder と同じだ。)レーティングは、1 から 5 までの中から選び、その結果は並んだ星によって表示される。これらのアトリビュートが表示されるのはあなたのノートタイトルのテーブル表示の中で、ここでは好きな列によるソート順設定ができる。

Hog Bay Notebook にはまた、整理に関する二・三の追加機能もある。選択したテキストをハイライト状態にすることができ、1つのノート内ならばハイライト部分から次のハイライト部分へとジャンプすることが可能だ。(残念なことに、1つの書類内全体にわたってジャンプすることはできない。)また、wiki スタイルのリンクもある。つまり、大文字で始まって内部に別の大文字を持つ単語、たとえば“LikeThis”のようなものがあれば、それが自動的に他のノートの名前と認識され、その単語をクリックすればそのノートにジャンプする。(その名前のノートが無ければ新規に作られる。)さらに、最近見たノートを、ウェブブラウザの“戻る”機能と同様に、履歴を辿って遡ることもできる。

探して、見つける -- Hog Bay Notebook は、とんでもない大技を隠し持っている。無料でオープンソースの検索エンジン、Lucene を内蔵しているのだ。ウィンドウの上部にある検索フィールドにあなたが何かタイプすると、そのタイプと同時進行であなたの書類全体にわたってのバッチ検索がライブで実行される。検索結果はテーブル表示に現われ、マッチした部分それぞれのノートタイトルと、そのマッチの質のランクを表わした棒グラフとが表示される。デフォルトでは単語単位の検索になっているが、文字単位やワイルドカードを使った検索も、ブーリアン検索や熟語検索、近似検索、さらにはウェイト付き検索までも可能だ。ただ、シンプルさを保つために、タイトルも自動的に検索対象に含まれる。もちろん、これほど魔法のような検索ができるのは索引づけをしているからで、索引は自動的にライブで生成されており、結果としてあなたの書類のサイズはいくらか余分に大きなものとなる。

<http://jakarta.apache.org/lucene/docs/>
<http://jakarta.apache.org/lucene/docs/queryparsersyntax.html>

一度 Hog Bay Notebook の限界を試してみようと思い、私は自分の日記すべてを読み込ませてみた。3,000 以上のノートを一度にだ。Hog Bay Notebook はこれにもビクともしなかった。ただ、その際私はバグを1つ見つけた。テーブル表示やアウトライン表示では、タイトルの個数が一定の数を超えると、その分のタイトルが現われなくなってしまうのだ。でも、この問題点はノートをフォルダに切り分ければ回避できることだ。この点を除けば、検索エンジンも、ソートも、ナビゲーションも、書類を開いたり閉じたりするのも、すべてノートが1個しかなかった時と変わらずに高速、つまり、実行はすべて一瞬だった。

琴線に触れる -- 小さな問題が二・三あったのは事実だ。Hog Bay Notebook を AppleScript でスクリプト化することは全然できない。これは非常に残念なことだ。また、ラベルの名前やカラーをカスタマイズすることもできない。アウトライン表示でノートを1つ選択すると、そこでは表示されるが、同時にテーブル表示でも表示されることはない。だから、現在のノートのアトリビュート(ステータス、ラベル、レーティング)をどうやって調べろというのか、私には理解できない。それから、ノートからそれが属しているフォルダへとナビゲートすることができない。つまり、1つのノートの内容を読んでいる時、そのノートが階層のどの部分にあるのかを、知る手だてが無いのだ。これは、きっと著者の見落としだろうと思う。

けれども、そういう事柄と秤にかけて比べてみても、この Hog Bay Notebook のインターフェイスがいかにクリーンか、いかに人の心を動かさずにはおかないか、ということについては、ただただ驚嘆の念を覚えざるを得ない。これは、ある意味 Cocoa の落し子とも言える。つまり、Cocoa プログラミングで提供されているすべてのウィジェット、すべてのテクノロジーを利用し尽くしたもののように見えるのだ。アウトラインはドローワの中に登場する。テーブルは分割表示され、分割は上下方向にも左右方向にもできる。ノートは分割表示の片方の中でも編集できるし、別途ウィンドウの中に開いて編集することもできる。他のアプリケーションのクリップボード内容を、そのアプリケーションのドックメニューを使って Notebook にスイッチせずにその中へペーストすることもできるし、選択したテキストを Service 経由でコピーすることもできる。スペルチェック機能もあり、これはインラインでも動作する。ノートを声を出して読ませることもできる。Finder に似たツールバーもあって、これは折り畳んだり、テキスト表示・小アイコン・大アイコンにカスタマイズもできる。実際のところ、いろいろな物事が究極の彼方までカスタマイズ可能、という感じだ。その上、強力なやり直し (Undo) もある。私に言わせれば、この著者は Cocoa の機能のすべてに徹底的に働いてもらおうとしているのだ。きっと。

そうは言っても、Hog Bay Notebook が単なる Cocoa の応用実験に過ぎないなどという間違った印象を持っていただきたくはない。これは、リストの交響詩に例えるべきではなく、むしろモーツァルトのシンフォニーに例えるべきだ。このインターフェイスは、クリーンで、行儀が良く、隅々まで正しさの感覚に満ち満ちている。ユーザーにとっては、使いやすく、わかりやすく、まるで羽のように軽々としている。けれども、もしもあなたが少しでも Cocoa プログラミングの経験のある人なら、きっとあなたもわかるに違いない。うわべの美しさに隠されてはいるが、この一見飾り気のない姿は、決してたやすく達成できるものではないのだということを。私が一番感銘を受けたのは、Hog Bay の著者たちが、Cocoa を正しく使いこなそうという目的のために全身全霊を傾けて努力しているのがはっきりと見て取れることだ。そのこと自体、ユーザーにとっては、Hog Bay Notebook を使っていれば自分の情報断片たちはすべて安全だ、という信頼感を与えてもらえるというものではないだろうか。

Hog Bay Notebook は $20 のシェアウェアで、700K のダウンロードとして利用可能だ。

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Salling Clicker を活用する

文: Joe Kissell <[email protected]>
訳: 佐藤浩一 <koichis@anet.ne.jp>
訳: 亀岡孝仁 <takkameoka@earthlink.net>

Apple が最初に Mac OS X の Bluetooth サポートを発表したとき、私は面白そうで便利な技術だと思ったが、所有している PDA や携帯電話などの周辺機器をBluetooth 装備モデルに買い替えるだけの価値があるかどうか判断がつかなかったので、近い将来自分がそれを使うことになるとは思っていなかった。しかし、私の著書を書いている最中に、有線に代わるこのショートレンジワイヤレス技術に触れる必要を感じ、思い切って D-Link 社の Bluetooth アダプタを一対とBluetooth 対応モデルである Sony Ericsson 社の T68i 携帯電話を購入した。それからほどなく、私は連絡先と予定をワイヤレスで同期したり、さらにはワイヤレスのインターネットアクセスを PowerBook に提供するために電話機を使ったりしていた。わたしはあっというまに Bluetooth の便利さの虜になっていたのだった。

<http://www.apple.com/bluetooth/>
<http://www.dlink.com/products/?pid=34>
<http://www.sonyericsson.com/us/spg.jsp?page=start&Redir=template%3DPS1%26B%3Die%26PID%3D9932%26LM%3DPSM_V>

そして、みんなの話題になっていた新しいソフトウエアが登場した。Salling Clicker という 10 ドルのシェアウエアである。これを使えば、Bluetooth が装備されている Mac と Sony Ericsson 互換電話機 (T610、T68、T68i、R520m、あるいは T39m) さえあれば誰でも電話機で Mac をコントロールすることができるようになる。(Nokia 7650/3650 ユーザーは、Veta Universal を電話機にインストールしそれを Arboreal Software 社の Romeo と合わせて使うことにより、同等の機能を得られる。) 最初、Salling Clicker はマニアックに過ぎないかと思ったのだが、すぐにとても便利なものだということを発見した。みんなも同じ意見らしく、Apple などは Apple Design Award を 2 つも授与したほどだ (TidBITS-686の“Apple が Design Awards 2003 を発表”を参照のこと)。

<http://homepage.mac.com/jonassalling/Shareware/Clicker/>
<http://veta.irowan.com/>
<http://www.irowan.com/romeo/>
<http://db.tidbits.com/getbits.acgi?tbart=07251>日本語 Apple が Design Awards 2003 を発表

インストレーション、アクション、そしてトリガー -- Salling Clickerのインストーラは、環境設定とシステムワイドなメニューを Mac に追加する。電話機とコンピュータを Mac OS X 内蔵の Bluetooth ソフトウエアでペアリングしたあと、この環境設定を使って AppleScript アクションが含まれているメニューを設定する。続いてそのメニューを電話機に送ると、それが電話機のアクセサリーメニューに現れる。このようにして共生関係が確立されれば、コマンドを電話機から Mac へ送ったり、コンピュータから送り返される情報を受け取ることも可能になる。

Salling Clicker の基本動作単位はアクション、つまり電話機をきっかけに実行させたい Mac 上のイベントあるいはイベントの組み合わせである。このアクションは AppleScript を使って作成するのだが、Salling Clicker にはキー入力をスクリプト未対応のアプリケーションに送ることが出来る初歩的な GUI スクリプティング機能が含まれている。アクションにはいくつかの種類がある。単純なアクションはユーザの対応やフィードバックが必要ないコマンドである。他にも、スライダーコントロール (例えば音量を調整するため) やテキスト入力フィールド、選択可能オプションの一覧、そして AppleScript スクリプトからの出力を返すことの出来る 2 種類のメッセージがある。

電話機のメニュー表示に現れるアクションに加えて、電話機のボタンがそれぞれ別のアクションを動作させるように、つまり普通のリモコンのようにキーの設定をすることが可能である。これはキー配置を覚えないといけないが、大抵はメニューをスクロールするより遥かに便利である。

電話機に転送したアクションのメインメニューは最大 12 項目で、それらは一つのアクション、アクションのメニュー、あるいはキーパッドとなっている。あるメニューを別のものに入れ子とすることで、何百ものコマンドを電話機に入れることも可能である。メインメニューに良く利用するアクション (例えばシステム音量の変更) などを少しだけ置いておき、サブメニューにお気に入りのアプリケーション用アクションを割り当てるのが、典型的な設定だろう。

アクションが実行されるためのもっとも革新的な方法は距離によるものだ。電話機がコンピュータの Bluetooth の範囲内に入ったときに自動的に実行されるアクションのリストや、逆に範囲外に出たときに実行されるアクションのリストを作成することができる。これが便利だと思われる例は、部屋を離れるときに iTunes を一時停止し戻ってきたときに演奏を再開する、などがあるが、他にも様々な利用法、例えばコンピュータから離れるときにパスワードで保護されているスクリーンセーバを起動するとか分刻みで課金する人たちの休憩時間を計るとか、などが考えつくことだろう。

この距離による動作は一応うごくのだが思っていたほどうまくはいかなかった。一例を挙げれば、通信範囲が電話機の種類や Bluetooth アダプタ、コンピュータの置き方、他の機器との干渉などにより大きく違ってくるのだ。いくつか違った条件下で、私の家での実効距離は最低 6 フィート (2 m) から 最大 20フィート (6m) になること、多くの場合隣の部屋にいるときでさえコンピュータは“範囲内”にいると認識してしまうことを発見した。他にも、電話機が範囲内に入ったり範囲外に出たりした時、必ずしもすぐには気付いてくれない場合があった。距離によるスクリプトが実行される遅延時間は、1 秒以下の場合もあれば 1 分以上かかることもあった。

アクションの作成 -- Salling Clicker は、DVD Player、iTunes、Keynote、そして PowerPoint などに対して広範囲にわたる内蔵アクションを装備しており、またアクションのコレクションに対し閲覧、追加あるいは更新のための便利なユーティリティも備わっている。最も興味をそそるアクションの一つがキーパッド設定で、これは電話機をマウスのようにポインターを動かしたりクリック、ドラッグ、そして画面上のものに対し Control- クリックさえもできるようにする。Salling Software で提供するアクションに加えて、独自のコレクションを公開しているウェブサイトも両手の指では足りないくらいある。多くのユーザにとっては、これらのすぐに使えるアクションで充分であろう。しかし、Salling Clicker の真価はそのカスタマイズ機能にあるのだ。AppleScript を使えば、既存のアクションを書き換えたり自分自身でアクションを作成することにより、ほとんどなんでもすることができる。

Salling Clicker には、統合された AppleScript エディタと共に、何種類かのアクションに対するテンプレートが含まれている。これらのテンプレートは基本メニューコマンド、ポップアップメッセージ、スライダーコントロール、リストなどを作成するための AppleScript 構造を提供している。必要なのは項目を入力することだけだ。しかしながらこれは期待していたほど便利ではなかった。この統合されたスクリプトエディタは構文チェックのためのボタンを備えているが、電話機にインストールしないとスクリプトのテストができないので、実際問題として、スクリプトは作成・テストが簡単に行える Script Editor で行い、その後それを Salling Clicker の環境設定にコピーアンドペーストして電話機に転送するほうが理にかなっている。

これらの機能は私の好奇心をそそったが、Salling Clicker の実用的な使い道を探すのに苦労した。このようなメカニズムに対する一番自然な使い方はKeynote や PowerPoint プレゼンテーションをコンピュータの前に立たずにコントロールすることだが、これは私の主要な関心事ではなく、そのための専用の機器もすでにある。他にも iTunes をコントロールするような一般的な使いかたも良いとは思えなかった。これは私の家の間取りのせいである。コンピュータが聞こえるということは、キーボードが使えるということなのだ。リモコンもそれ以上簡単にならない。つまり、このソフトは良く出来ているのだが何に使って良いかわからないのだった。

自分のキラーアプリケーションにぶち当たる -- 数週間後、私は Cubase SX を使ってちょっとした録音をするためのマイクのセットアップをしていた。私の仮設のマイクロレコーディングスタジオは壁に内張りをした押入れである;これ以外のどの部屋で録音しても通行車両、鳥、それに隣近所からの雑音を拾ってしまう。しかし、この部屋での問題は自分の PowerBook のファンの音をマイクが拾ってしまう事であった。必要なのは、マイクを中にコンピュータを外に置いてやることである - しかしやる事は色々ある中で、録音、停止、巻戻し、そしてプレイといったボタンを押さなければいけない。だがその時、閃いたのである:ひょっとしたら Salling Clicker を使えばこれができるのではないかと。

<http://www.steinbergusa.net/Products/Cub_SX.htm>

まず最初にやらなければいけないのは、必要な動作を AppleScript を使ってやるにはどうすればよいかを見つけだす事である。しかし残念ながら、Cubase SX はスクリプト化できないので、直接メッセージを送るのはダメである。次に試したのはSalling Clicker についている GUI スクリプトサポートを使ってキーストロークを Cubase SX に送る事であるが、何らかの理由で正しい動作をしてくれない。でも幸いなことに、Apple のベータ GUI スクリプト作成ツールなら動作してくれることがわかった。使いたいコマンドのうち一つ二つについては、Cubase SX の設定を多少いじくり回さねばならなかったが、その後は、単純に Apple の System Events バックグラウンドアプリケーションにキーストロークを送るよう命ずるだけであった。このスクリプトを何回か複製してそれぞれのアクションに合うよう修正を加えた。それからそのスクリプトを私の電話のキーパッドに割り当てメニューを発信した。それで押入れに潜りこみ、ヘッドホンを付けて何か試しの録音をしてみた。特に驚く事はないのだが、動作は完璧で遅れも関知できない程度であった。

<http://www.apple.com/applescript/GUI/>
<http://db.tidbits.com/getbits.acgi?tbart=07102>

こうやって書くと複雑に見えるかもしれないが、全プロセス - どんな効果を出したいのか考える所から最後の実現方法まで - に要したのは半時間にも満たない。Salling Clicker がなかったら、コントロールボタンを押さなければいけない度に押入れからとび出さなければならなかっただろう - とてつもなく不便である。

この仕掛けがうまく行った事で、 Salling Clicker を使って他の事も出来ないか考えてみる気になった。最初に頭に浮かんだのは、基本的なサーバー管理の仕事を Timbuktu Pro のように手の込んだものを使わずに出いないかということであった。Salling Clicker 用にユーザーが作り上げたものの一つにコンピュータの運転時間を電話に表示させるものがある;これを基にすれば、その他の興味を引くデータを表示させたり、コンピュータを再起動させたり、問題が多いプロセスを殺したりするスクリプトを書くのはた易いことである。他には、居間にいて iTunes コレクションを聞きたいが SLIMP3 (TidBITS-676の 「SLIMP3: MP3 よ、いざ Hi-Fi へ」 を参照) のようなリモート再生装置に金をかけたくない人達にも代替手段を提供できるかもしれない。これは Mac からステレオまでオーディオケーブルを延長できれば、iTunes の全ての側面をあなたの電話から制御できる。プレイリストを見たり、曲に点数を付けたりすらも出来る。もちろん、これらも電話とコンピュータが十分に近い距離にあればの話である。Bluetooth の動作範囲は限られており、小さなアパートの中ですら十分な感度が得られないかもしれない。

<http://www.netopia.com/en-us/software/products/tb2/mac/>
<http://www.slimp3.com/>
<http://db.tidbits.com/getbits.acgi?tbart=07150>(日本語)SLIMP3: MP3 よ、いざ Hi-Fi へ

ホームオートメーションも面白いアプリケーションだと思うが、Bluetooth の到達距離の短さがその有用性を損なってしまう。HomeRun オートメーションソフトウェアの出版元である Findley Studios は、電話を使って家の照明の入り切り、明るさコントロールを可能にする一連の Salling Clicker スクリプトを提供している。(これをやるには追加のハードウェアが必要である:ランプ毎に X-10 モジュール、コントローラ、そしてコントローラをコンピュータにつなぐための USB アダプタである。)

<http://www.findleystudios.com/homerun/applescripts.html>

Salling Clicker を複数のマシンと共に使ったらどうなるだろうか?もし Bluetooth アダプタを持った Mac を一台以上持っているなら、それぞれからメニューを発信できる;電話が一つのコンピュータの領域を離れるにつれてそのメニューは落ちて、次の領域に入るにつれて、そちらのメニューが自動的に現れる。この機能は、いくつかの部屋に Mac を持っている人には便利な機能である。しかしながら、結果はがっかりするものであった。一つの電話には一時に一台の Mac からのメニューしか現れないのである、一台以上のコンピュータが Bluetooth のレンジ内にあってもである。これは電話のせいかも知れないし Mac OS X のせいかも知れないが、いずれにしても、例えば主に使うコンピュータとサーバーが同じ場所にあった場合、Salling Clicker を使って両方のコンピュータを簡単にはコントロール出来ない。

クリックしよう! もしすでに Bluetooth コンパチの電話と Bluetooth 対応の Mac をお持ちならば、Salling Clicker はたったの $10 であり考えるまでもないお勧めである;無償のデモ版があり 30 クリックまでだが全機能を提供している。それだけで新たに多くのハードウェアに投資するだけの理由になるか?多分そうではないであろう。しかし開かれる可能性の範囲を考えると - とりわけ多くのプレゼンテーションをするとか押入れでホーム録音をする人とかにとっては - もし新たに携帯電話を買おうと機種探しをしているのであれば、これは考慮に値するであろう。

[Joe Kissell はサンフランシスコに住む作家でかつ Mac デベロッパ−でもある。彼の最新作は 2003年4月に Wiley から出版された 50 Fast Mac OS X Techniques である。彼の日刊記事は "Interesting Thing of the Day" Web サイトで見られる。]

<http://www.amazon.com/exec/obidos/ASIN/0764539116/interesthingo-20/ref=nosim>
<http://itotd.com/>

PayBITS: Joe の Salling Clicker で問題が解決できそうだと思われた方は、彼への感謝を数ドル PayBITS で送ってみませんか!
<https://www.paypal.com/xclick/business=jk%40alt.cc>
PayBITS の説明 <http://www.tidbits.com/tb-issues/lang/jp/paybits-jp.html>


TidBITS Talk/25-Aug-03 のホットな話題

文: TidBITS Staff <[email protected]>
訳: Mark Nagata <nagata@kurims.kyoto-u.ac.jp>

iSight の帯域幅使用度 -- Apple の iSight と iChat AV ビデオを使うには帯域幅の太いパイプが必要なのだろうか? (メッセージ数 3)

<http://db.tidbits.com/getbits.acgi?tlkthrd=2043>

電子本 - 歴史は繰り返す -- 電子本というのは本当に新しいものか、それとも、パンフレット類や針金綴じの印刷物が世に溢れていた出版の黎明期を呼び戻しているに過ぎないのだろうか? (メッセージ数 2)

<http://db.tidbits.com/getbits.acgi?tlkthrd=2041>

更なる Mac OS X スクロールヒント -- 読者たちから、Mac OS X でのスクロールに関するヒントがいくつか寄せられた。(メッセージ数 3)

<http://db.tidbits.com/getbits.acgi?tlkthrd=2040>

17 インチ PowerBook へのクレーム -- 幾人かの読者から、17 インチスクリーンの重さのために PowerBook のヒンジがリッドを正しい角度に保つことができないという声が寄せられたが、そんなことは起こっていないという読者たちもいた。(メッセージ数 10)

<http://db.tidbits.com/getbits.acgi?tlkthrd=2039>

海外でのパワーアダプタ -- 外国での電源についての最新情報と、どの地域でどのアダプタが必要なのかの情報。(メッセージ数 18)

<http://db.tidbits.com/getbits.acgi?tlkthrd=2038>

本格的なデータの保管 -- データのバックアップのためにテープを使うことの利点を議論し、また「耐火」性を謳っているテープのうちに本当にその名に値するものがあるのかも調べる。(メッセージ数 13)

<http://db.tidbits.com/getbits.acgi?tlkthrd=2036>

PC 市場における Apple のシェア -- 市場にある Mac の数をどう規定するのか、またその数字をどう評価するのかについての議論が続く。(メッセージ数 23)

<http://db.tidbits.com/getbits.acgi?tlkthrd=2035>


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Valid XHTML 1.0! , Let iCab smile , Another HTML-lint gateway 日本語版最終更新:2005年 12月 26日 月曜日, S. HOSOKAWA