TidBITS も 700 に達した! ああ、もちろん、誰も 700 歳になったなんて言っている訳ではないが。とにかく、第 700 号を記念して、Creative Commons のニュースと、コンテンツ管理システムに新しい選択を済ませたことをお知らせしたい。今週号の他の記事でお伝えするのは、Palm が新しいハンドヘルド機(Tungsten T3、Tungsten E、Zire 21)をリリースしたこと、Apple から Mac OS X 10.2.8 の再リリース、そして Kirk McElhearn が ShuttleXpress コントローラを手に持ってクルクル回してみせ、以前彼自身が二度と手放さないとまで言った PowerMate と比べて検討する。
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Mac OS X 10.2.8 が復帰 -- 先週の終わり頃、Apple は新たな Mac OS X 10.2.8 アップデートを出した。これは、先だってリリースされ、その後多くのマシンで重大なトラブルを引き起こすことがわかって素早く取り下げられたものに代わる、修正後のものだ。(TidBITS-699 の記事“Mac OS X 10.2.8 顛末記”を参照。)Mac OS X 10.2.6 または 10.2.7(後者は一部の新機種の Mac、例えば最近リリースされた 15 インチ PowerBook G4 などのみを対象としている)の動作するコンピュータが対象の新しいアップデートは、Software Update 経由の 38.9 MB のダウンロード、または独立のインストーラとしても入手できる。一方、Mac OS X 10.2.8 Update (Combo) バージョンもあって、こちらは 97 MB のダウンロードで、Mac OS X 10.2 またはそれ以降をアップデートする。
<http://docs.info.apple.com/article.html?artnum=25524>
<http://docs.info.apple.com/article.html?artnum=25525>
<http://db.tidbits.com/getbits.acgi?tbart=07379>(日本語)Mac OS X 10.2.8 顛末記
修正前の Mac OS X 10.2.8 アップデートをインストール済みのユーザーに対しても、Apple は別途のアップデータを Software Update 経由で提供している。これが Mac OS X Update 10.2.8 (Build 6R73) で、新たに更新された Ethernet ドライバとバッテリ状況メニューへの修正とが含まれている。こちらは 248K のダウンロードだ。そして最後に、Power Mac G5 マシンのオーナーにはさらに別途これらの機種に専用のアップデータが必要で、これは Mac OS X 10.2.8 (G5) Update と呼ばれ、13 MB のダウンロードだ。[JLC](永田)
<http://docs.info.apple.com/article.html?artnum=25576>(日本語)Mac OS X 10.2.8, G5:Mac OS X 10.2.8 (G5) Update について
文: Jeff Carlson <[email protected]>
訳: 倉石毅雄 <takeo.kuraishi@attglobal.net>
先週、Palm, Inc. がハンドヘルドを三機種リリースした。これらは今すぐ購入可能だ。ハイエンドの Palm Tungsten T3 は 320 x 480 のカラー画面を備え、データを縦にも横に回転しても表示できる (後者は電子本を読んだり、付随の DataViz Documents to Go ソフトを使用して表計算を行なっている時などに便利だ)。Tungsten T や T2 モデル同様、T3 のケースの下部をスライドすると Graffiti-入力領域が現れる (TidBITS-655 の“Palm の再生をかけた Tungsten T”を参照)。しかし、T3 は手書き入力認識をソフトに組み込んだものとして Palm からは初めての機器だ。小さなアイコンをタップするとこの領域が隠れてさらに多くのデータを見られる。$400 の Tungsten T3 は 64 MB のメモリ、高速な 400 MHz Intel XScale プロセッサ、拡張カード用スロット、そして Bluetooth ワイアレスネットワーク機能を内蔵している。
<http://www.palmone.com/us/products/handhelds/tungsten-t3/>
<http://db.tidbits.com/getbits.acgi?tbart=06992>(日本語) Palm の再生をかけた Tungsten T
中間に位置するのはスマートな Tungsten E だ。これは人気の高かった Palm V の後継ぎと言っても良いだろう。E は Tungsten T シリーズより軽量で薄く、高解像度 (320 x 320) のカラー画面、32 MB のメモリ、126 MHz ARM プロセッサ、そして拡張カード用スロットを備えている。T3 とは異なり、 Graffiti 領域は既存モデル同様、画面の一部にシルクスクリーンされている。だが、Tungsten E は $200 という積極的な値段に設定されている。
<http://www.palmone.com/us/products/handhelds/tungsten-e/>
価格に敏感なユーザや、基本的なオーガナイザしか必要でないユーザを狙ったモデルである Zire 21 は、160 x 160 のグレー階調の画面 (バックライトなし)、8 MB のメモリ、そして 126 MHz のプロセッサを備えている。Zire 21 の値段は $100 だ。元祖の 2 MB のメモリと速度の遅いプロセッサを備えた Zire の値段は $80 に下がった。
<http://www.palmone.com/us/products/handhelds/zire21/>
新しいハードウェアを紹介するだけでなく、Palm は Palm OS の根幹のアプリケーションのいくつかをようやくアップデートし、ついでに名前も変えた。Date Book は Calendar に、Address Book は Contacts に、To Do List が Tasks に、そして Memo Pad が Memos になった。Contacts アプリケーションは複数のアドレスをサポートし、項目も増えた。例えば Birthday 項目に入力すると、Calendar にその日が加えられる。出来事も分類でき、分類ごとに色分けもできる。そして、ようやく、4K 以上の大きさの Memos が作成できるようになった。だが、ソフトの改良は Tungsten T3 と Tungsten E だけに限られている。既存モデルの所有者が新しい機能を活用するためのアップグレード方法はない。
このような用語の変更は私のようなライターにとっては非常に苛立たしい。Palm Organizers: Visual QuickStart Guide の第三版が現在印刷中なのだが、店頭に本が並んだ少し後くらいに、これらの変更をまとめた無料のダウンロード用 PDF アップデートを以下にリンクした付録 Web サイトから発行する予定だ。
<http://www.necoffee.com/palmvqs/>
<http://www.amazon.com/exec/obidos/ASIN/0321180984/tidbitselectro00/nosim>
文: Kirk McElhearn <[email protected]>
訳: 佐藤浩一 <koichis@anet.ne.jp>
訳: 亀岡孝仁 <takkameoka@earthlink.net>
Griffin Technology 社の PowerMate を買った時、これはすごいと思った。昨年のレビュー記事 (TidBITS-653 の “PowerMate のパワーを解き放つ”を参照) の中で、「これからもずっとキーボードの横にこの装置を置いておこう」とまで書いたのである。ところがだ。これが思ったよりも短期間となってしまった。その理由は、もっと良いものが見つかったからである。Contour Design 社の ShuttleXpress だ。
<http://db.tidbits.com/getbits.acgi?tbart=06974>(日本語)PowerMate のパワーを解き放つ
<http://www.griffintechnology.com/products/powermate/>
PowerMate は不思議な小道具である。回転ノブとプッシュボタンから構成されていて、どのアプリケーションに対しても殆んど何でもできるようにプログラムすることが可能だ。PowerMate のアルミヘアライン仕上げとパルス状に点滅する青色 LED はかっこよさで勝るが、ShuttleXpress は使い勝手ですぐれている。この ShuttleXpress は私の PowerMate に取って代わり、また PowerMateは多くの読者が知っているであろう人気商品なので、今回の記事の大部分はこの 2 つの機器を比較することになるだろう。
<http://www.contourdesign.com/shuttlepro/shuttlexpress.htm>
それぞれの手に一つ -- PowerMate や ShuttleXpress のような代替コントローラに慣れるという事は、仕事のやり方の変更と、2 つの入力デバイスを使うという概念を受け入れるというところまで発展する。一つ目はマウスかトラックボールで、ポイント、クリック、ドラッグ&ドロップに使い、2 つ目は回転装置で、通常はマウスかキーボードから行なうスクロールとかその他の機能を受け持つことが出来る。
この事はある程度の両手使いを示唆している。私は右利きだが、トラックボールを左手で、この様な代替機器を右手でというのがやり易い。誰もがそう感じるわけではないだろうが、試してみる価値はあると思う。
ShuttleXpress の概要 -- ShuttleXpress は空飛ぶ円盤の上半分のような形をしたつや消しの黒色プラスチック製で、元々はビデオの編集用に考えられたものである。しかしこれは、PowerMate の様に自分の望むどんなアプリケーションの中でも、数あるコマンドやアクションのどれでも実行できるようにプログラムできる。専用バックグラウンドアプリケーションはアクティブなアプリケーションを監視していて、その使用しているプログラムに合った適切な設定を使えるようにしてくれる。
ShuttleXpress には中央にジョグホイールがあり、これには指をかけるくぼみが付いていて 360 度回転する。このジョグホイールの周りには、ラバー付きでバネ仕掛けのシャトルリングがあり、全部で 15 のポジションがある。1 つは中央で、両側にそれぞれ 7 つとなっている。それぞれに独立にアクションをプログラムすることが可能だ。5 つのボタンは、ちょうど 5 本の指がくるように円周上の上半分に配置されている。真ん中にある 3 つのボタンにはくぼみがあるので手の位置を決めるのがさらに簡単になり、さらにそれぞれのボタンを別々にプログラムすることができる。
従って、計 7 つのコントロールにより、ShuttleXpress のほうが PowerMate以上にコントロールできる。一番の違いは、5 つのボタンとバネ仕掛けのシャトルリングだ。PowerMate ではスクロールするためにノブを回し続けないといけないが、 ShuttleXpress ではシャトルリングを回した位置でそのまま保持するだけで良く、スクロールが終わればシャトルはもとの中央の位置へさっと戻る。
ShuttleXpress をプログラミング -- ShuttleXpress をプログラミングすることは、PowerMate とほとんど同じくらいに簡単である。だが、ShuttleXpress は少し Mac のやり方から離れている。つまり、専用のアプリケーションを使ってプログラミングしないといけないのだ。ShuttleXpress も、PowerMate のように環境設定パネルを使えば、もっと簡単になっていたことだろう。
プログラムに対する設定を行うには、ShuttleXpress アプリケーションを開き、ポップアップメニューからプログラム名を選択する。約 20 程の構成済みプログラムがリストに表示され、取っておきたいと思うかどうかは別としてそれぞれにサンプル設定が付属している。他のプログラムを追加することは可能だし、リストに無いアプリケーションすべてに対して効力を持つ一般設定の値を調整することもできる。
これらの設定を行うのは、ちょっと分かりにくい。ボタンやジョグホイール (これらは、キーを入力したり修飾キーを押したりファイルやフォルダを開いたり上下左右のスクロールをしたりすべての種類のマウスクリックを実行する) でさえアクションを設定するのは簡単であるが、シャトルリングをプログラムするのはそれほど単純ではない。その理由の一つとして、リングには 15 の設定項目があることが挙げられる。さらに、リングのある位置から隣に移動したときに起こすアクションもプログラム可能である。
内蔵のシャトルリング設定を見れば、それをどのようにプログラムすればよいかのアイディアが浮かぶだろう。シャトルのリングを例えばドキュメントのウインドウで上下にスクロールするため有効に使うためには、回転するにつれスクロールの速度が速くなってほしいと思うに違いない。つまり、最初の位置ではゆっくり、さらに回せばだんだん速くスクロールする、といった具合だ。この可変速スクロール機能は PowerMate の単一速度のスクロールよりはるかに好ましいが、14 すべての設定をプログラムするには少し時間がかかる (ほとんどの人は、中央の中立位置では何もしないようにしておくのが良いだろう)。ジョグホイールに関して言えば、これは 360 回転するようになっており、左右の動作しかプログラムできないので、スクロールは一定の速度しか設定できない。
一つヒントを: いくつかのアプリケーションに対してスクロールを設定するには、まず既定の設定の中から自分の望むものに近いものを探して、それを書きだす。次にそれを取り込み、使いたいアプリケーションの名前に合うよう名前を変更する。作業していくにつれて、あるアプリケーションに対するスクロール設定を好みにあうよう変更することだろう。それをひな形として、同じようにスクロールさせたいと思う他のアプリケーションに適用するとよい。
ShuttleXpress の使い方 -- この小道具を最大限に使うにはどうすればいいのか、そしてなぜこれの方が PowerMate より良いのか?私の PowerMate についての前のレビューを見て頂ければ、色々なプログラムでどの様にこの機器を使うかについてのアイディアが挙げてある。これらのアイディアを ShuttleXpress に借用する事も出来るが、これには五つボタンが付いているのでそれを使えば更に進んだ事が出来る。
私がメール用に使っている Microsoft Entourage では、この五つボタンを次の様に使っている:メールの取り込み、Return を押す (メッセージを開く)、Delete を押す、Command-N を押す (新メッセージを作る)、そして Control-T を押す(Trash を空にする AppleScript を走らせる)である。これで大体私が Entourage で普通に使うアクションはカバーしている、勿論タイピングは除いての話だが。当然の事ながら、ジョグホイールとシャトルリングはスクロール用に設定されている:メッセージリストのナビ用に、シャトルはスクロールアップとダウン、ジョグは上向き矢印と下向き矢印のキーストロークを担当している。
Web ブラウジングの場合は?Safari 用に、ジョグとシャトルをスクロール用に、五つボタンを次の様に設定している:私のホームページを表示する、Command-T を押す (新しいタブを作る)、Command-W を押す (タブ又はウィンドウを閉じる)、Back (Command-[) と Forward (Command-]) 用のキーボードショートカットを押す。
私は Microsoft Word を良く使うので、一つのボタンを自分の仕事を保存する (Command-S を送出) のに設定し、もう一つを新しいファイルを作る (Command-N) に、もう一つをウィンドウの切り替え (Command-F6) に、そして残りの二つをフォーマットパレットの表示・非表示に設定している。これらの設定は必要に応じて何時でも変えられる。現に最後の二つのボタンは、プロジェクトに応じた特有のツールバーの表示・非表示の切替に変更してしまった。
Finder ではどうだろう?そこには New Window、my Home フォルダ、my Applications フォルダ、そして Show と Hide Toolbar がある。でも、これは私の場合は、である:あなたなら Finder ではこうしたいという違うアクションがあって当然であるし、他のプログラムでも同様であろう。
長所と短所 -- ShuttleXpress は、私の使い方では PowerMate より良いが、短所もある。ページのスクロールは PowerMate の方が滑らかである - これは Mac に対するコマンドの送り方がその様になっているというだけなのかもしれない。しかし、ShuttleXpress ではシャトルリングの位置毎に可変のスクロール速度を設定できるので、加速したり減速したりのスクロールが出来るので、とりわけ長いドキュメントの時などより有効である。
ShuttleXpress の方が PowerMate より大きい (直径で約二倍) ので、狭いスペースしかない人には問題かもしれないが、私の手にはよりしっくり来るし、私の指もこの五つボタンにぴったり当てはまる。ゴム製でバネ付きのシャトルリングは、スクロールするのに PowerMate のノブよりは自然な感じを与える。しかしながら、美学的にいえば、PowerMate の光沢のあるアルミとパルス状に光る青色 LED はかっこ良いだけではなく現により涼しく感じる。
ShuttleXpress はコード(和音)を使えるようにすればもっといろいろな事が出来るようになる。つまり、二つ以上のボタンを同時に押すことでアクションを誘起するのである。コードを使えば、アクションの数を五つ以上に広げるられる。更に言えば、これを使ってアプリケーションを切り替えるためにタイプすること、例えば Command-Tab と、を出来るようにして欲しい。(現状のままでは Command-Tab をこの機器に設定する事は出来ない。というのは Finder がこのコマンドを抱え込んで離さないため、ShuttleXpress アプリケーションにマニュアルで選択するとかキーストロークを入力してやる事が出来ない。PowerMate ではこれが出来る。)
それから、ShuttleXpress の設定を何らかの方法でプリントアウトしたい。これだけ沢山のボタンと、シャトルリングの設定があると、どのアプリケーションではどうすればどうなるというのを覚えているのは容易でない。希望を言えば、このプリントアウトはグラフィカルで、ShuttleXpress の形を示してそれぞれの部分に応じた設定を隣接して印刷して欲しい。
Contour Design からは、以上の事のほとんどは次のバージョンで何らかの対応はすると言われている。次のバージョンは数ヵ月後に出る予定だという。もしこれらの修正がなされた暁には、私からの ShuttleXpress に対する文句はもうほとんど無くなっているであろう。
結論を言えば、ShuttleXpress は使い勝手と柔軟性で PowerMate に勝っている。私は気に入った。少なくとも、この様な入力機器の新種に対して誰かが掛け金を上げてくるまでは。ほんの二日ほどで、私は ShuttleXpress に嵌ってしまった。そして、それまではこれ無しではいられなかった PowerMate を引き抜いてしまったのである。未来永劫このデバイスを捨てる事はないだろうなどというつもりはないが - もうすでに PowerMate で同じ過ちを犯している - この ShuttleXpress を私から引き離すためには、競争相手は誰であれかなりのことをしなければならない。
ShuttleXpress は $60 で、Mac OS バージョン 8.6 から 9.2、又は Mac OS X 10.1 かそれ以降で動作する。
[Kirk McElhearn はフリーランスの作家兼翻訳家で、French Alps の村に住んでいる。彼は、Todd Stauffer と共にまもなく出版される本を書いている。タイトルは Mastering Mac OS X - Panther Edition で、Sybex から 2003年中に出版される。]
<http://www.mcelhearn.com/panther.html>
PayBITS: 好意には好意で - もし Kirk の ShuttleXpress のレビューがあなたに何かカチッと閃かせたのなら、彼に PayBITS 経由で数ドル送ってあげて欲しい!
<https://www.paypal.com/xclick/business=kirk%40mcelhearn.com >
PayBITS の説明 <http://www.tidbits.com/tb-issues/lang/jp/paybits-jp.html>
文: Adam C. Engst <[email protected]>
訳: Mark Nagata <nagata@kurims.kyoto-u.ac.jp>
TidBITS が号数を重ねるに従い、私たちは大きな節目の号番号ごとに、それを記念して何か大きな変更をお伝えするのを喜びとしてきた。1997 年の TidBITS-400 では、FileMaker データベースから Lasso で駆動され、それに HyperCard、AppleScript、それに Retrospect も組み込まれたダイナミックな我がウェブサイトが発表された。1999 年の TidBITS-500 ではアンケート調査を導入し、また我がホームページを一からデザインし直して、その週の重大ニュースの見出しや、TidBITS Talk での話題の項目リストなどを表示できる場所を確保した。
<http://db.tidbits.com/getbits.acgi?tbart=04179>(日本語)400 号と可変 Web サイト
<http://db.tidbits.com/getbits.acgi?tbart=05588>(日本語)500 号と新しいホームページ
さらにその2年後、2001 年の TidBITS-600 では、時にはエレガントにもなる HTML でも、また、テキストあるいは HTML アナウンスメントの形でも、購読者が TidBITS を受け取ることができるオプションを提供するようにした。その号全体を HTML で受け取るオプションは特に人気が高かったが、それでも従来通りのテキストのみ (setext) を希望する読者の数に比べればかなり少なかった。同じ号で発表されたその他の変更としては、プリンタに適合した記事レイアウトのオプション、記事内から TidBITS Talk での議論への直接リンク、電子メールでの記事の共有、それに RSS をサポートして NetNewsWire、MacTracker、Radio UserLand、またはお好きな RSS クライアントで TidBITS を読めるようにしたこと、などが挙げられる。そう、今私がこれらのサービスについて改めて説明しているのは、そういうものをまだご存じのない読者の方々が大勢いらっしゃるだろうと思うからだ。
<http://db.tidbits.com/getbits.acgi?tbart=06589>(日本語)第 600 号を記念して TidBITS の新サービスを開始
<http://www.tidbits.com/about/list.html>
<http://www.tidbits.com/channels/tidbits.rss>
CMS を選ぶ -- 今回アナウンスすべきものとして、ウェブサイトを完璧に一新して、1997 年に導入されて以来段々に不都合が目立って来ている古びたシステムから脱出した、とお伝えしたいのはやまやまなのだが、残念ながらパワフルで新しいコンテンツ管理システム (CMS) を取り入れようという私たちの努力はまだ実を結ぶところまでは到達していない。今年の4月のこと、私たちはそれまでの進展状況を報告しつつ、読者の皆さんからの提案を募集した。それ以来、私たちはいくつもの候補を比較検討することに多くの時間を費やしてきたし、いくつかの候補についてはかなりの詳細にわたって調べあげた。
<http://db.tidbits.com/getbits.acgi?tbart=07143>(日本語)コンテンツ管理システム選定にご協力を
この作業は、正直言ってローラーコースターに乗っているようなものだった。1つのプログラムを検討し始めて、その称している機能のすべてが素晴しく見えて夢中になったかと思うと、その中に重大な構造上の限界が見えてくる、という風なことの連続だった。これはいけそうだ、と思ったパッケージを、その表示方法が Finder のウィンドウにちょっと似た展開三角マーク付きの階層インターフェイスにシステム内のすべてのコンテンツ内容が一挙に表示されるものだと知って放棄せざるを得なかったこともあった。たいていのサイトならばこれでも使えるかも知れないが、うちのサイトには現在すでに 6,000 近くの記事と 19,000 の TidBITS Talk のメッセージがあるので、そんなインターフェイスでは即座にぬかるみに足の状態になってしまうだろう。他にもいくつか非常に魅力的なコンテンツ管理システムがあって、電子メールのニュースレターをサポートしていると称するものもあったが、よく見てみると、どれも皆データベース内の記事を電子メールで送信することはできなかった。(ニュースレターを手で作るしかないのだ!)全般的に言って、私たちのサイトで使っているような、記事同士の間や他の種類のコンテンツの項目との間で至るところ相互にリンクで結ばれ合っているという、そんな状況を念頭に置く考え方が、もともと欠けている傾向にあるようだ。Ted Nelson の有名な文句の通り、「すべてのものは互いに絡まり合っている」のであって、私たちは関連した記事同士の間を結ぶ意味的な結合や、記事と関連議論との間の結び付きを失うわけにはいかない。
当然のことながら、この種の批判に対しては、オープンソースこそ答だという声がいつでも付いてまわる。「おお、そりゃあいい考えだ。自分でそいつを書いて、みんなも利用できるように公開すりゃあいいじゃないか!」と。確かに、オープンソースというのは素晴しい考え方だ。けれども結局誰かがその作業を担当しなければならないことに変わりはないし、その人も何とかして生計を立てて行かなければならないのだ。オープンソースのコンテンツ管理パッケージで最も有望そうに見える Tiki で、それを私たちの用途にカスタマイズする作業を見積もってみたところ、200 時間以上、$10,000 以上の費用がかかるという結果だった。それも、巨大なメーリングリストを統合するという難事業には踏み込まないで、という前提での数字なのだ。(そうは言ってみたが、Tiki はとても素晴しいし、Mac OS X でも動作するので、私たちのようにリンクが遍在していて電子メールも統合が必要、というようなことが無い状況ならば絶対に検討してみる価値がある。)
それでも、結局私たちは答を出した。それはこの作業の初期の段階でちょっと検討してみた時に感じた可能性を再確認することになったものだが、その答が Web Crossing だ。見たことのない方のために説明しておくと、Web Crossing はそれこそ猛烈にパワフルなパッケージで、元来はオンラインコミュニティーのためのツールを提供することを狙って作られたものだった。(ウェブ、電子メール、それに FTP のサーバを提供する無料バージョンもある。)Apple も、ディスカッションフォーラムのために Web Crossing を使っているし、他の有名サイト、例えば Salon などでも使われている。私たちが必要とするものが単なるオンラインコミュニティー用のツールだけでは不足だったのは確かだが、Web Crossing は実際フル機能のコンテンツ管理システムを作り上げるために必要な構成要素をすべて提供しており、オブジェクト指向のデータベースにウェブ、電子メール、FTP、それに NNTP のサーバ、その他のものも備えていた。Web Crossing 5.0 に至ってこのプログラムは完全にモジュラーなものになり、今後のアップデートがカスタマイズの変更点を書き換えてしまう心配も無くなったし、またウェブログや wiki のプラグインも追加されている。
さらに重要なのが、Web Crossing のスタッフの Tim Lundeen やその他の人々が、Web Crossing を堅固なコンテンツ管理パッケージに育て上げることに向けて情熱を燃やしていることだ。(ウェブログや wiki のプラグインも、その方向での第一歩と言えるだろう。)そういうわけで、安価な一石で多数の鳥を落としてしまおう、と考えた私たちは、Web Crossing の Tim や他のスタッフたちと協力して私たちの用途に合わせたコンテンツ管理システムを開発すべく、一方では、私たちが他のプログラムに欠けていると思う機能もすべて備えた強力な CMS を今後彼らが作り出して行けるようにと私たちも彼らに協力の手を惜しみたくない、そう考えて、これから共同作業を進めて行こうと考えている。
この作業はまだ始まったばかりなので、TidBITS の下部組織の個々の部分を今後少しずつ、Web Crossing で書かれた同等なシステム(あるいはより良いシステム)で順次置き換えて行きたいと思っている。これは今後数ヵ月くらいかけて進めて行くつもりだ。
Creative Commons ライセンス -- 新しいコンテンツ管理システムとして Web Crossing を採用したことは重大な一歩だが、その効果が現われるまでにはまだしばらく時間がかかるだろう。それと対照的に、第 700 号を記念してアナウンスすべき第2のことは、ちょうど反対、つまり非常に小さな変更ながら即座に効果が現われるという性質のものだ。
TidBITS がスタートした当初から、私たちはユーザーグループのニュースレターなど、非商用の出版物に私たちの記事を再掲載してもらうことをいつも奨励してきた。ただし、その記事の原著者名の行を残して、記事の出典として TidBITS の名前を明示することだけが条件だった。それに応えて、世界中のユーザーグループのニュースレターの編集者たちが、それぞれのニュースレターの空白を埋めたり内容を強化したりするために私たちの記事を使ってくれた。そのことが、ひいてはユーザーグループの活動を力強く保つためにお役に立ててきたのではないかと思う。
この包括的な私たちの目標そのものには何ら変化は無い。非商用の出版物は、これからも記事を再掲載できるのだが、ただ一つ変化することは、今日をもって、すべての TidBITS の号に Creative Commons ライセンスが適用されるということだ。Creative Commons については TidBITS-617 の記事“面白い概念を数個”で書いておいたが、これは、他の人との間で共有したり互いに相手の内容を土台として発展し合ったりできる創造的な仕事の領域を、さらに拡張することを目標として作られた、きわめて価値の高いプロジェクトだ。
<http://creativecommons.org/>
<http://db.tidbits.com/getbits.acgi?tbart=06720>(日本語)面白い概念を数個
その目標に向かって、Creative Commons はいくつかの発案を制定している。Licensing Project は、通常は著作権者にのみ制限されている権利のいくつかを公衆に提供できるライセンスをユーザーが構築するのを援助する。Founders' Copyright プロジェクトは、著作権者が自分の作品をパブリックドメインに供する開始時を 14 年後に短縮、つまり 1790 年に第1回連邦議会で制定された最初の著作権法の条項通りにすることを可能にする。コンピュータ関係書籍の出版社、O'Reilly and Associates は、すべての著者たちに対して出版する本に Founders' Copyright を適用できるオプションを提供している。Tonya も私も、O'Reilly から出版した本にはすべて Founders' Copyright を適用して、その本が 14 年後にはパブリックドメインに移行するようにしている。14 年後には、きっとこれらの本は皆、品切れになってから 12 年も経っていることだろうから。もう1つ、International Commons プロジェクトは、Creative Commons のライセンスを世界各国でそれぞれの国の法律を勘案したものとして適合させ、それにふさわしいライセンスの条文を起草しようとしている。
<http://creativecommons.org/license/>
<http://creativecommons.org/projects/founderscopyright/>
<http://press.oreilly.com/pub/pr/1042>
<http://creativecommons.org/projects/international/>(日本語)クリエイティブ・コモンズ・ジャパン
いずれにしても、私は Creative Commons ウェブサイトで示されたシンプルなステップを辿って、“Attribution-NoDerivs-NonCommercial”(帰属表示・有、作品改変・不可、商用利用・不可)のライセンスを選択した。これで、今後 TidBITS のコンテンツの使用についてはこのライセンスが適用されることになる。前にも言った通り、実質的にはこれまでと大きく変わるところは無い。ただ、再掲載された記事には Creative Commons のライセンスによることが明示されなければならなくなるだけのことだ。再掲載のために私たちがお勧めする叩き台のテキストも、この要請に対応するものに変更するつもりだ。
<http://creativecommons.org/licenses/by-nd-nc/1.0/>
では、これまでと特に違いがないのなら、いったいどうしてわざわざ手間を掛けてまで Creative Commons のライセンスを使おうとするのだろうか? それは、そしてこれは私自身が著作権から生計のための収入を得ている者として発言するのだが、現在の著作権制度には根本的に欠陥があって、そのシステム全体が大企業の利益に傾斜し過ぎており、公衆の利益が置き去りにされているからだ。それと同時に、個人の独創性を擁護しようという本来の目的が、著作権法が合衆国に初めて制定された時代から一歩も進んでいないからだ。Licensing Project や Founders' Copyright を通して、Creative Commons を支えている人々は、まさにその名前通りにクリエイティブな活動を繰り広げ、幅広い範囲のコンテンツが一般の人々に利用できるのを助け、同時にコンテンツの創作者たちが自分たちの仕事を皆に利用してもらいたいという希望を叶えて行けるようにと援助の活動を続けているのだ。彼らにもっとパワーをと、願いたいではないか。
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文: TidBITS Staff <[email protected]>
訳: Mark Nagata <nagata@kurims.kyoto-u.ac.jp>
オンラインのラジオ番組について -- 先週 Adam が Inside Mac Radio Daily のインタビューに出演したのを受けて、読者たちがどんな感想を持ったか、さらにはオンラインのラジオ番組についてどう思うか、Adam は知りたがっている。(メッセージ数 17)
<http://db.tidbits.com/getbits.acgi?tlkthrd=2076>
起動時の USB -- USB 機器が起動時に認識されないことがあるというトラブルを、一部の人たちだけが経験しているのは何故なのだろうか? (メッセージ数 10)
<http://db.tidbits.com/getbits.acgi?tlkthrd=2077>
TiVo Series2 の改善点 -- 新型の TiVo Series2 DVR についての議論の続き。読者たちから、追加すべき新機能がいろいろと提唱された。(メッセージ数 31)
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