今週はいろんな話題がてんこ盛りだ! Charles Arthur が、ダイヤルアップのユーザーにはスパム対抗ツールの PostArmor が必要だと説く。Tom Gewecke は英語以外の言語で Mac OS X を使う人のために Panther に組み込まれた、新しくて改善されているけれどもまだバグの目立つ、いろいろの機能を概観する。そして、珍しく登場した Geoff Duncan が MP3.com の消滅を嘆き、葬送の言葉を述べる。ニュースとしては、Bare Bones 社が BBEdit 7.1 をリリース、先週の Panther アップグレードアンケートの結果報告、そして私たちの新スポンサー、Dr. Bott をご紹介する!
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Dr. Bott が TidBITS のスポンサーに -- 私たちの長期スポンサーとして新たに加わって下さった Macintosh 周辺機器の製造・販売会社、Dr. Bott を歓迎することができるのは嬉しいことだ。私も初めは知らなかったし、ほとんどの人がご存じないことだろうとは思うが、この社名は決してそのカッコいい言葉の響きのために付けられたのではない。数年前の Macworld Expo で、私はドイツ人の Macintosh ソフトウェア開発者、Dr. Roderich Bott と直接会うことができて驚いた。彼は元は化学の研究者で、開発者となってからは Portland で活動していた Macintosh コンサルタントの Eric Prentice と共同でこの会社を設立したのだ。彼ら二人の目標は高品質で革新的な製品を Mac コミュニティーに送り出すことで、自分たちで製品を開発するとともに他の会社の製品も販売して、この目標を達成しようと努めている。Dr. Bott は特に Mac 用にデザインされたキーボード・ビデオ・モニタのスイッチである MoniSwitch のような機器や、また最近では AirPort Extreme ベースステーション用の ExtendAIR アンテナでも知られている。販売面では、Dr. Bott は特に小規模の小売店をサポートすることに力を入れており、多数の製造元から製品を仕入れたり、大量の注文しか相手にしないような大規模卸業者とわたり合ったりする際の力になってくれる。何といっても、Dr. Bott は隅から隅まで Mac の会社であることを実証してきており、今回 TidBITS のスポンサーに加わることでさらにまた Macintosh コミュニティーのために寄与をして下さるのは大変にありがたいことだ。[ACE](永田)
BBEdit 7.1 がライブの HTML プレビューと SFTP を追加 -- Bare Bones Software が BBEdit 7.1 をリリースした。これは同社のパワフルなテキスト・HTML 編集用プログラムへの無料アップデートで、いくつもの歓迎すべき機能を追加している。最も注目すべきなのは Preview in BBEdit コマンドで、これは(Safari の核心でもある)WebKit レンダリングエンジンを用いて、あなたが作業中の HTML ページを BBEdit のウィンドウに表示する。本当に凄いのはこれがライブのプレビューである点で、あなたが HTML コードに変更を加えればほんの数秒後にプレビューも自動的にアップデートされる。確かにグラフィックスは無いし、サーバーサイドの処理も無いのでページの表示は完全ではないが、BBEdit のプレビューのお陰でウェブページの微調整の作業がこれまでよりも格段に速くて簡単になった。(ただ、余分のウィンドウを出すために第二モニタは是非とも欲しいところだが。)他に BBEdit 7.1 で新しいところと言えば、SFTP (SSH File Transfer Protocol) のサポートが挙げられる。これは、 port 22 で sshd の互換バージョンが走っている場合(例えば共有環境設定でリモートログインが選択されている Mac OS X マシンの場合など)に、暗号化された FTP セッションを提供する。最後に、ローカルネットワークで FTP サーバを走らせている人のために、BBEdit の FTP ダイアログが FTP や SFTP のサーバを発見する Rendezvous をサポートするようになった。BBEdit 7.1 は 15.2 MB のダウンロードで、BBEdit 7.0 の登録ユーザーには無料となっている。新規購入は $180 だが、各種のアップグレードやクロス・アップグレード割引などもある。[ACE](永田)
<http://www.barebones.com/products/bbedit/>
<http://www.barebones.com/support/bbedit/current_notes.shtml>
<http://www.barebones.com/support/updates.shtml>
アンケート結果: Panther は捕まえましたか? -- 先週のアンケートで、私たちは「あなたがメインで使用する Mac を Mac OS X 10.3 Panther にアップグレードする予定は何時?」とお尋ねした。その結果、TidBITS 読者の(少なくともアンケートに答えて下さった方々の)およそ半数が、新しもの好きのようだった。回答の 45% がすでに Panther をインストール済みというもので、さらに 6% がまだ買っていないが入手したらすぐにという答だった。(きっととても忙しい新しもの好きの人たちなのだろう。)次に多かったのが Panther がほぼ安定したら (10.3.1 かそれ以降)、と答えた人たち (30%) だった。FireWire ハードドライブに関する問題が大きく取り沙汰されたため、多くの人たちの心に慎重さが芽生えたということだろうか。Panther にアップグレードする必要を感じないという人たちは比較的少なかった。7% は仕事上あるいは使用するアプリケーションで必要になったらと答え、また 11% が今度新しい Mac を買うときにという答だった。では、アップグレードの予定はまったく無しと答えたのは? それは、ほんのごく少数の 1%、つまり 700 人近い総数のうちでたった 4 名の人たちだけだった。
<http://db.tidbits.com/getbits.acgi?tbpoll=82>
<http://db.tidbits.com/getbits.acgi?tbart=07432>(日本語)Panther アプリケーションの改善点
興味深いことに、インターネット検索・参照ツール Watson の作者、Karelia Software が Watson ユーザーを追跡してそれぞれのオペレーティングシステムを調べており、その結果 62.7 % が Panther を、36.2 % がまだ Mac OS X 10.2 Jaguar を、1.1 % が依然として Mac OS X 10.1 (コードネーム Puma) を走らせていた。双方の結果の食い違いは、私たちのアンケートが Panther の長所・短所を報告した記事と組み合わせて実施されたため、読者たちが Karelia のユーザーたちよりも少しは問題点に目が開かれていたことも関係しているのかもしれない。[ACE](永田)
<http://weblog.karelia.com/MacOSX/Followup_on_users_s.html>
文: Geoff Duncan <[email protected]>
訳: 倉石毅雄 <takeo.kuraishi@attglobal.net>
先週、CNET が一昔前にもてはやされていた会社、MP3.com の“財産の一部”の未公表額での買い取りを発表した。これらの財産はドメイン名とそれに付随する MP3.com ブランドの知名度のことのようだ。2003 年 12 月 2 日付で既存の MP3.com が閉鎖され、同社がホストしていた 250,000 以上と推測される世界中のアーティスト達の音楽や材料が削除される。また同社は顧客やユーザについての情報を CNET には与えないと発表している。CNET は MP3.com の今後の計画を発表していないが、ビデオゲーム向けの GameStop.com サイト同様、デジタル音楽界の技術やニュースに注目した新しいサイトになるだろうと思われる。
<http://news.com.com/2100-1027-5107696.html>
<http://www.mp3.com/>
<http://www.gamespot.com/>
法廷における大きな敗訴や、元の Napster の絶大な人気、そして Vivendi/Universal による不運な MP3.com の買収などを経て、MP3.com の最盛期はかなり前に過ぎてしまったと言える。だが、MP3.com の最終的な死滅はオンラインの音楽配布における重要な転換点と言える。メジャーと契約していない独立系のアーティストのための中心的な役割を果たしていた場がなくなったのだ。
情報公開の立場から断っておくと、私は TidBITS の外ではプロの音楽家もあり、MP3.com に無料でダウンロードできるページを維持していたこともある。(私の仲間や顧客たちの多くも同じようにしていた。) MP3.com は主にダウンロード可能なデモを提供する際に個人の限られた通信許容量を消費し尽くさないために活用していた。MP3.com で CD を売ろうとしたり、金を稼ごうとしたことはない。最後の点は MP3.com アーティストの大多数にも当てはまるだろう。小数の例外を除いては、多くはあまり収入もなかったか、何かを売ろうともしていなかった。
それにも関わらず、何年もの間、独立系のオンライン音楽にとっての MP3.comは、最も知名度が高くて活用されたオンラインの音楽配布元、検索エンジン、住所録、そして仲買い役であった。それに加え、オンラインの音楽の権利を所有していたり、配布元と合理的な契約を結んでいた有名なアーティスト達もいた。それでもアーティストにとっては (特に MP3.com が“商業化”するにつれてユーザ体験が低下していったため) 別の Web サイトを維持する方が賢明ではあったが、MP3.com に名前と曲がたった一つあるだけでも聴衆や他のアーティストとつながるために有用だった。MP3.com を利用する楽しみの一つは、近所や世界の反対側にいるかもしれない今まで知らなかったアーティストや音楽を検索することだった。
イギリスのデュオからのなかなかの電子音楽 (保存しておかなかったのが悔しい!) や、ブラジルの青年と彼の大叔父からの素晴らしいモダンなボサノバや、近所の高校バンドからの本当にひどいロックなどを見つけたのを覚えている。確かに、MP3.com にあった内容の多くは大した物ではなかった。だが、他に私の音楽に接する機会がなかったであろう世界中の聴衆からの数多くの手紙や問い合わせなどを私は受け取った。そして MP3.com のページは私が多くの有給の仕事をみつけるのに直接的にも間接的にも役立った。そう言えば、先週末に一緒に演奏したバンドは、このサイトの地域チャートで初めて出会ったのだ。
他にも独立系オンライン音楽配布元はある。著名なものとしては 1Sound、SoundClick、そして Ampcast などがあるが、どれも MP3.com 程の認識度や多くのアーティストによる参加には至っていない。そしてどれも MP3.com の予算、資力、そして社員数などに到達するには程遠い。また見たところ賢そうなCDBaby のように多面的な配布元もある。これは iTunes Music Store などのオンラインサービスに名前を載せたい独立アーティストの一番の選択肢になるかもしれない。もし Apple が戸口を開けさえすれば、CDBaby で 5000 以上のアルバムが待っている!
<http://www.1sound.com/>
<http://www.soundclick.com/>
<http://www.ampcast.com/>
<http://www.cdbaby.com/>
MP3.com は鈍重な巨大獣であったことには間違いないが、それなくしては独立アーティストの世界が広がることはなかっただろう。優れたアーティスト達、音楽、そしてオンラインの音楽配布元などの集団は MP3.com なくしても生き延びて成長していくだろう。だが、これらを発見するための手段は限られた人数にしか知られなくなってしまう。
間違いの無いように断っておくが、私は MP3.com を誉めるためではなくその墓碑を書きに来たのだ。MP3.com は多くの致命的な間違いを犯し、多くの約束を破り、そして数多くのユーザやアーティストを怒らせて、無礼な態度をとり、最終的には自分の重みに押し潰された。だが、MP3.com は独立オンライン音楽の世界で大事な役割を果たし、それがために惜しまれることだろう。
文: Tom Gewecke <[email protected]>
訳: 佐藤浩一 <koichis@anet.ne.jp>
Mac OS X 10.2 Jaguar において、Apple は、世界中で Mac が受け入れられるかどうかの鍵となり、そして定期的に複数の言語を使って作業している多くの人々にとって重要な、言語の取り扱い方と国際化機能をこのオペレーティングシステムで一新した。 3 週間に渡り Mac OS X 10.3 Panther で多国語対応状況を調べてきたが、その結果数々の興味深い機能が発見された。これらの変更点は Jaguar で見られたほど大きなものではない (あらたな不具合もいくつか生じている) が、どちらかといえば圧倒的に好ましい点の方が多い。
入力方法の改善 -- 他言語でのテキスト入力に関して、Panther には新しく 14 の言語 (キーボードとフォントも含めて) が追加され合計 50 を越えるようになるなど、数々の歓迎すべき機能が追加されている。Panther では、エストニア語、ラトビア語、リトアニア語、マケドニア語、セルビア語、ダリ語、パシュトウ語、ウズベク語、アルメニア語、チェロキー語、フェロー語、北部サーミ語、イヌクティトゥト語、そしてウエールズ語が追加された。さらにJaguar で既にあった言語用の新キーボード (大体 QWERTY あるいは“拡張”バージョン) もいくつか新しく増えている。チェロキー語とイヌクティトゥト語の文字では、ローマ字以外の文字にアクセスできないことで混乱する人もいるかもしれない。非ローマ字を使う場合の秘訣は、caps lock キーをオンにすることを忘れないということだ。どうしてか? 私は、“母国語のユーザ”がそうするから、と聞かされている。
Apple はまた、ここ 10 年ほどで初めてアジア文字 (中国語/日本語/韓国語)の入力プログラムを改良した。しかしながら変更点は、昔の“鉛筆”メニューが今は“旗”メニュー以下に移動するなど、主に見た目に限られている。日本語入力プログラムである「ことえり」は、完全に再編成された。“鉛筆”メニュー以下にあった 6 つの入力オプションは“旗”メニュー内に別個に表示されるようになり、前にあった“操作パレット”は無くなってしまった。残念ながら、中国語ユーザーが希望している入力機能は、 Panther でも取り入れられていない。
Panther では、尊敬すべき「キー配列」が完全に姿を消し、これに代わりフローティングパレットの「キーボードビューア」が備わっている。これにはテキストを入力する欄は無いが、画面に表示されるキーボード上でクリックされた文字を最前面のウインドウに入力する。これもまた新しい「入力モードパレット」フローティングパレットでは、現在選択されているキーボードが表示されている。 Apple はさらに、スクリプトとキーボードの変更をするキーボードショートカットも変更している。このほうが効率が良いと思う人もいることだろう (しかし、Command-Space を入力言語の切り替えとしてではなく、いくつかのアプリケーションで希望しているように別機能として使うことはまだ無理だ)。
表示の改善 -- Panther ではまた、デーバナーガリー文字やアラビア語の文章の表示に関連する Jaguar のいくつかの不具合を解消するなど、多くの改善が表示方法に対してなされている。しかし、一番は Apple の Mail が送信メッセージのテキストエンコーディングをついに指定できるようになったことだ。これは重要な点である。なぜなら、なにもしないと Mail はしばしば間違ったエンコーディング方法を選び、結局誰にもメッセージが読めなくなってしまうからだ。受信・送信メッセージに対するエンコーディングのリストはどちらも長いが、もしあなたに必要なものが「言語設定」システム環境設定の言語タブに現れていない場合は、「編集」ボタンを押して追加するだけで良い。
Panther は、「言語」システム環境設定で設定されている優先順位に従い、標準で使うフォントを選択しているので、不適当な使い方を防ぐためにフォントを使えなくする必要はそれほど無いはずだ。例えば、「言語」システム環境設定で中国語が日本語よりも上にあれば、別の言語がリストの先頭にあったとしても、Panther は日本語の代わりに中国語のフォントを使うはずだ。ここで一つ注意を。この新しいフォント代替システムは、アプリケーションレベルでサポートされている必要があるかもしれないので、すべてのアプリケーションで動作するわけではないかもしれない。このような優先順位や分類作業のための言語サポートの数は、Jaguar の 64 から 100 以上に増加した (もしリストが欲しいなら、私にメールを送って欲しい)。
文字パレット」(フォントパネルにあるアクションメニュー (“歯車”のポップアップメニューだ) から「文字」を選ぶことで表示される) には、ある文字の色々なフォントにおけるバリエーションの全てを表示する枠が用意されている。これはローマ字以外の文字を使用しているときに非常に便利だ (これはまた、ある文字が異なるフォントでどのように見えるかを調べるのにとても便利な方法である)。また、合字、ダイアクリティカル、異体字などのフォントに関する特別な高度の機能が使えるようになった。フォントパネルで希望のフォントを選択し、アクションメニューから「体裁」を選んで頂きたい。
最後に、Jaguar の「言語環境」システム環境設定の日付/時刻/数タブは、これらの項目がどのように表現されるかに関しさらに多くの言語設定をサポートしている「書式」タブで新しく置き換えられた。
え、私何を言いました? -- 以上で述べた改善点はもちろん歓迎する事柄だが、Panther は Jaguar で存在していたいくつかの制限を修正していないし、新しい不具合もあるようだ。
キーボードが新しくなったにもかかわらず、Panther は新しいシステム言語を採用していない。Apple Computer Russia は Mac OS X 10.1 と 10.2 用のロシア語バージョンを個別のダウンロードとして提供していたのだから、Apple もついにロシア語を追加することができたはずだ。ギリシャ語ユーザも、ギリシャ語版が無いことにがっかりすることだろう。もし、各国語用システム言語すべてが必要でなければ、あるいはすべての使用可能なフォントが必要なら、カスタムインストールを行なう必要がある。これは、Panther インストール CD の2 枚目と 3 枚目から適切なインストーラを起動することにより、システム言語や“追加言語用フォント”を後から追加することが可能だ。
実際にある欠陥としては、テキストの不具合により Cocoa プログラムで U.S.(とその他の) “拡張”キーボードを使った特定のアクセント付き文字の入力ができなくなっている。中国語の簡体字入力システムは新しく発音記号エンジンを取り入れたが、一部の入力の組み合わせを正しく扱うことができない。そして、 Mac OS X はまだ Adobe Minion Pro などのギリシャ語 OpenType フォントで正しく動作しない。
Panther におけるこれらの大幅な改良も、残念ながら AppleWorks、すべてのMicrosoft 製品 (MSN Messenger と MSN 8 統合ブラウザを除く)、そしていくつかの重要なデスクトップパブリッシングとウェブパブリッシング製品がまだUnicode 対応でないという事実はくつがえせないし、それゆえ多くの言語を扱うことができない。しかしこの状況は、最近リリースされた Adobe InDesign CS や Macromedia Dreamweaver MX 2004 のアップデートに見られるように、時と共に改善されるはずである。さらに、Mellel ワードプロセッサなどの新しいプログラムも、そのすき間を埋める手助けとなるだろう。
<http://www.macromedia.com/software/dreamweaver/>
<http://www.adobe.com/products/golive/main.html>
<http://www.redlers.com/>
追加情報 -- Mac OS における言語関係の豊富な情報がもっと必要なら、Multilingual Mac と Chinese-Mac ウェブサイトを訪ねて欲しい。
<http://homepage.mac.com/thgewecke/mlingos9.html>
<http://www.yale.edu/chinesemac/>
文: Charles Arthur <[email protected]>
訳: 佐藤浩一 <koichis@anet.ne.jp>
先日、どのようなメールがあるかを見るためにメールサーバへ直接ログオンしたときのこと。全部で 115 通のメッセージがあったが、実際に自分宛のものは45 通だけで、残りはスパムか、Windows ユーザーが無意識にまき散らしたウイルスか、あるいは何も考えていない管理者が設定したサーバが、送信者欄に私のメールアドレスを見つけたため私を送信者だと思って送り返してきたウイルスだった。
インターネットを使っていると、このように気の滅入る日が良くある。スパムやゴミメールなどがこの 2 年間で約 10 倍に膨れ上がり、今や全電子メールの50 パーセントを占めると推測されることを考えれば、きわめて普通の事だとも言えるだろう。そのため、誰も皆スパムと戦うための武器が無いものかと、いつも目を光らせている。私たちのようにダイヤルアップでインターネットに接続している人にとって (私は自宅から使っているが、ここは郊外のためブロードバンドが来る可能性はまったくない)、スパムが手元に届いた後に取り除くのでは問題の解決にならない。スパムが、メールサーバからコンピュータへ細い電話線を伝わってくる前に防がなければならないのだ。そのため、Apple のMail、Eudora 6、そして SpamSieve などのスパムフィルタには興味が引かれるものの、この問題に対しては的外れと言わざるを得ない。時間も貴重だが、ダイヤルアップ時の帯域はなおさら貴重で、それをスパムに使われるのはとても許せる事ではない。
メールボックスでブロック -- メールがまだメールサーバにある間にそれをチェックすることが最初の一歩だ。私はここ何年も Mail Siphon や POP Monitor (どちらも Mac OS 9 と Mac OS X 双方で使える) などのプログラムを使ってきた。しかし、これらのプログラムで問題なのは、どれがゴミメールでどれが違うかを自分で決めなければいけないことだ。“Something wrong with the website xfsdksjk”のようなタイトルのメールならすぐにこれはスパムだと言えるが (スパム発信者は、同じタイトルが付いた大量のメールを拒否する ISP のスパムフィルタから逃れるために、最後に適当に選んだ文字をいくつか追加するのだ)、Mail Siphon や POP Monitor はそのような事をしてくれない。結局、スパム発信者に悪態をつきながら全部自分でゴミメールを消す羽目になってしまう。
<http://www.maliasoft.com/>
<http://www.vechtwijk.nl/dev/popmonitor/>
そしてとある日私は PostArmor と出会い、欲しいと思っていたものにやっと出会えたと思った。このプログラムは、ダウンロードする前にスパムを自動的に取り除いてくれるのだ。
PostArmor はメッセージのヘッダしか調べないが、私の経験では実際のところほとんど間違えずにスパムを見極めるための充分な手がかりを得られる。これは、ヘッダ内のある手がかりに基づき各メッセージに対しポイントを割り当て、ポイントが少ないものだけメールボックスに入ってこられる仕組みだ。
PostArmor を使ってみる -- このプログラムは、オランダ在住のプログラマーである Paolo Manna 氏により書かれ、メールソフト (これは、Mail、Eudora、 Entourage、Mailsmith、または POP あるいは IMAP ベースのシステムなら何でも良い) のプロキシとして常駐し動作するようになっている。まず、メールソフトでメールサーバを PostArmor だと指定する。すると、それを受けて PostArmor は実際にメールサーバにアクセスし、内蔵あるいは指定したルール (これは全部変更可能だ) に基づき、メッセージを通すか、消去するか、あるいは隔離するかを決める。
これはどのようにして決まるのだろう? 特定の下品な語句 (あるいはその一部。後で述べるように正規表現を使ってフィルタリングもできる) あるいはアダルト系の件名、“プライバシー”系のタイトル (例えば“government(政府)”、“tax(税)”、あるいは“spy software(スパイソフトウエア)”など) やドメインに関わる件名 (“your domain(あなたのドメイン)”や“quality internet(高品質のインターネット)”あるいは“saw your site(あなたのサイトを見ました)”などの語句を含む)、そしてその他にも多くの語句によりポイントが加算される。メッセージがあるポイント数 (あなたが決められる) を越えれば、PostArmor はメールをすぐさまサーバから削除する。もしある程度のしきい値(これもあなたが決められる) を越えただけなら、削除はされないがダウンロードもされない。PostArmor のメールボックスウインドウで黄色にハイライトされて表示されるのだ。しきい値に満たないものはそのままメールソフトに届く。特定の送信者を許可・不許可リストに載せることもできるし、サーバから戻される“偽造不達メッセージ”を作ることも可能だ。(これは、この偽造不達メッセージでスパム発信者にあなたのアドレスが存在しないことをアピールしようとするものだが、これは帯域の無駄使いである。スパム発信者は、リストから不達メッセージが戻ってくるアドレスを取り除くことなど大して気にかけていないのだ。)
PostArmor をカスタマイズ -- 「でも、」と多分あなたは言うだろう。「私宛に“saw your site”とか“government”とか“tax”などの禁止語句を使って普通のメールを送ってくる人がいる。私は政府のウェブサイトの管理をしているんだから!」それでも問題ない。ポイント数と単語を好きなだけ変更できるし、何と言っても独自のフィルタリングのルールまで作成できる。
PostArmor は非常に柔軟性に富んでいる。件名、送信者、宛先、Cc、Bcc、Content-Type、Reply-To、日付、あるいは“任意”のヘッダ (ヘッダのタイトル自体ではない) を対象に検索できる。この欄が〜を含む、含まない、〜から始まる、〜で終わる、あなたのアドレスがある・無い、などをまず選択し、次にその条件でチェックしたい文字列を選ぶことになる。
このプログラム最大の機能の一つは、私の考えでは、その文字列に対して正規表現が使えることだ。これは Unix ユーザーにはおなじみのツールで、大量の文からある特定パターンの文字列を検索することができるものである。したがって、先に出したメールの件名の例、“Something wrong with the website xfsdksjk”の場合は、件名でいくつかの空白の後に文字あるいは数字がいくつかある正規表現検索式を設定するようになるだろう。ほとんどの Mac ユーザーは正規表現に馴染みが無いかもしれないが、それでも大丈夫だ。PostArmor のReadMe ファイル (これは段階的かつ分かり易く説明されており、一部のマニアではなく普通の人たちがインストールして使うソフトウエアを作ることを目指している人にとっては良い実例だ) には、オンラインマニュアルへの便利なリンクが含まれている。(Mac OS X のユーザなら、Tex-Edit テキストエディタをダウンロードし、それに付属の正規表現ガイドを読んで、正規表現に対応している Find 機能を体験することをお勧めする。Mac OS 9 版では正規表現は使えない。) 例えば、正規表現を使って、中国 (.cn )、台湾 (.tw )、あるいはロシア (.ru ) のサーバから発信されるメールを捕まえることができる。ここで注意して欲しいのは、それぞれの文字の後ろの空白があるが、これが重要だということだ。これが無いと、スパムではなく CNET や Twingo、あるいは <[email protected]> のようなちゃんとしたアドレスから送られてきた友人のメールまでも捕まってしまう。
PostArmor は最初、特にひどいゴミメールだけを消去するように設定されている。疑わしいもののほとんどは隔離され、それをどうするかは自分で決められる。これがうまくいくようであれば、さらにスムーズに動作するよう新しいルールを作成し古いルールを調整していく。そうすれば、一日に 200 通のメールをブロードバンド接続している職場の二つのアドレスで、そしてその四分の一を自宅の第三のアドレスで受け取る私の経験からすると、スパムに対する対処方法がまったく変わってしまうはずだ。前はとても悩まされたものだが、今は身体を大きくしたり借金を少なくするといったニセのうたい文句のメールが、自分の所に届かずに黄色で表示されているのを見てニヤッと笑っていられる。(私はジャーナリストなので、PR 会社から送られてくる大量のゴミメールも捕まえる。これで間違いなく世の中の動きに付いていくための障害が減った。) さらに、新しいウイルスが現れて“Mail Delivery Failed: ....”のような意味不明の不達メッセージを送り付けられたとしても、その文字列で始まるメールを新しく作ることが出来る。さようなら、SoBig。
死角は無いか? -- これには何か欠点があるだろうか? 私は出くわしたことがない。この記事の最初に書いたように、先日 PostArmor に力仕事をさせる代わりにメールサーバに直接ログオンしたが、その理由はプログラムがメールをチェックしようとしたときタイムアウトを頻発したからだ。私は Paolo Manna氏に連絡し、この点を指摘した。彼はすぐさま対処してくれ、Mac OS X 用に新たにリリースされた Java バージョン 1.4.1 を使用し、ログイン時のタイムアウトを 20 秒から 45 秒に長くした新しいプログラム (バージョン 1.3.1) を送ってくれた。
これでは私の問題は解決しなかったのだが、その後これは、私の利用しているISP のメールサーバがスパムで負荷がかかりすぎていたため、ログオンの要求に対する反応だけでも 90 秒もかかっていたためだと判明した。(普通はほんの数秒である。)
他に PostArmor で引き起こされる可能性のある問題と言えば、誤って設定しまうことだけだろう。もしフィルタを誤って、あるいは注意せずに作成すれば、正当なメールを消してしまうことだろう。だが、「メールボックスに直接配信することを許可する」と「完全にスパムと見なして削除する」の間の範囲を広く設定しておくことができる。そうすれば、 PostArmor のウインドウで確認した後許可するか削除するかを決めることが可能だ。このように、PostArmor はとても安全だと思う。オプションで、どのようなメールがブロックされたか、あるいは削除されたかを、指定する間隔でレポートにすることもでき、これでフィルタをさらに修正することが可能となる。
PostArmor は一つのメールアカウントだけで使うなら無料で、それ以上であれば 15 ドルからになる (人数が多ければ割引有り)。これは Java プログラムなので、 Mac OS 9、 Mac OS X、そして Windows 上でさえも動作し、便利である。このあいだ私の iBook が修理中の時、Windows にダウンロードして不要なメールを捨てるように設定できたのだから。
[Charles Arthur は、ロンドンの The Independent 新聞社の技術編集者で、イギリスの登山ウェブサイトである UKClimbing.com の編集者でもある。]
文: TidBITS Staff <[email protected]>
訳: Mark Nagata <nagata@kurims.kyoto-u.ac.jp>
EyeTV の記事へのコメント -- EyeTV のどこが良くて何が欠けているか、読者たちが詳しく検討する。(メッセージ数 9)
<http://db.tidbits.com/getbits.acgi?tlkthrd=2109>
TiVo/ReplayTV/EyeTV に代わるもの -- テレビ番組を録画するプログラムとして、これら3つ以外には? ということで TidBITS 読者たちが Formac の Studio DV/TV や、その他の選択肢を提案する。(メッセージ数 14)
<http://db.tidbits.com/getbits.acgi?tlkthrd=2110>
Panther での Zip 圧縮 -- Panther の使用するアーカイブのフォーマットや、StuffIt Expander の使用にまつわる問題点などの報告から始まり、いろいろな .zip フォーマットの変種に関する議論に発展した。(メッセージ数 11)
<http://db.tidbits.com/getbits.acgi?tlkthrd=2111>
iChat のステータス表示に関する質問 -- ステータス表示が Away になっている時、本当にあなたは席を外しているのか? それなら、その状態でも他の人があなたにメッセージを送れるのは一体なぜなのか? (メッセージ数 17)
<http://db.tidbits.com/getbits.acgi?tlkthrd=2112>
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, , 日本語版最終更新:2005年 12月 26日 月曜日, S. HOSOKAWA