TidBITS: Apple News for the Rest of Us  TidBITS#724/01-Apr-04

今週号はニュースで一杯だ。Microsoft が AOL を吸収合併し、国土安全保障省が Mac で標準化、Hormel がスパム缶でアンチ・スパムのキャンペーン、などの驚天動地のニュースがある。新製品のお知らせとしては Geoff Duncan が G5 でも Mac OS 9 ソフトウェアを走らせられる CountDown G5 を、Jeff Carlson が iChat 2.2 パブリックベータ版を検討し、Glenn Fleishman がワイヤレスでラップトップの充電ができる画期的新技術について報告する。Adam からは SubEthaEdit を使った遠隔会議サービスが紹介される。それから、Apple が GarageBand のアドオンを一つリリースし、私たちの Take Control シリーズ電子ブックに初めてのビジネス書が登場する。

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MailBITS/01-Apr-04

ピーピー言う GarageBand! -- Apple Computer は今日 4 月 1 日、Bleeper のリリースを発表した。Bleeper は無料で、これは画期的なオーディオユニットプラグイン、Apple の入門レベルのデジタルオーディオプログラム、GarageBand のプラグインとして使うためのものだ。技術的には音楽作成プログラム用として史上初となるこのプラグイン Bleeper は、Mac OS X 内蔵の音声認識テクノロジーと統合し、そのコンピュータの前で猥褻な言葉や不適切な用語などを話したり歌ったりすると、リアルタイムでそれを探知してピーピー音を鳴らす。Bleeper は既存のオーディオトラック(GarageBand の楽曲で「ラジオミックス」を作るためのもの)でも、リアルタイムでマイクから録音中のボーカルに対しても、どちらでも使える。(子供たちが GarageBand で遊びながら悪い歌を歌うのではないかと親が心配する必要もなくなる。)Bleeper を楽器演奏のトラックに適用することさえできるのだが、この場合は少し予想外の結果になるかもしれない。Bleeper 自体はさまざまな設定が可能で、音楽クリエータが沈黙を挿入できるようにしたり、いろいろな代替音の中から選んで置き換えることも、不適切語を Bleeper が探知する度にテレビでよくあるようなピコピコ音を挿入することさえできる。もう一つ史上初のことがある。それは Mac OS X 管理者ログインを使えば Bleeper をすべてのユーザーにインストールして各種設定もできるということだ。つまり、両親なり教師なりが Bleeper をインストールして、GarageBand ではすべてのボーカルトラックで使用を強制するといったこともできるわけだ。管理者権限を持たない Mac OS X ユーザーは自分の曲のために Bleeper を設定し直すことはできるが、オフにすることはできない。英語版の Bleeper は現在ソフトウェアアップデート経由の 4.1 MB のダウンロードで利用可能だ。Apple によれば各国語にローカライズされた国際版の Bleeper も数週間以内には利用可能になるという。[GD](永田)

http://www.apple.com/ilife/garageband/
http://db.tidbits.com/getbits.acgi?tbart=07500(日本語)iLife '04 で新しいソフトが追加

“Take Control of Your Island Nation”リリース -- 言うまでもなく、私たちの中で島国生まれの人は少数派だ。けれどもこの最新刊の Take Control シリーズ電子ブックでは、私たちはちょっといつもの軌道を外れて、今や超流行のビジネスマン用セルフ・ヘルプ本の怒涛渦巻く世界へと足を踏み入れてみることにした。あの“First, Break All The Rules: What the World's Greatest Managers Do Differently”(「まずは原則を破ること: 世界のトップリーダーたちの行動はどこで一味違うか」)とか“The Five Dysfunctions of a Team: A Leadership Fable”(「チームを率いる者の5つの落し穴: リーダーシップ物語」)といったベストセラーの仲間入りをしたいというわけだ。あの伝説のビジネスコンサルタント、Apple Computer が NeXT を買収した時も AOL と Time Warner が合併した時もその陰の力となったと言われている噂の人物、 Michael Milkem の手になるこの電子ブック“Take Control of Your Island Nation”(「Take Control: あなたの島国の覇権を握る」)は、腐敗した政府を転覆させる戦術と、立ち行かなくなった会社を再生させる戦略との比較を詳しく分析する。助けを請わねばならぬ事態に至る前に、いかにして自分の利益となるパワーを持った相手を判別して味方につけるか、ビジネスの武器となるべき必要な弾薬をいかにして集める(そして人の目につかぬように隠す)か、そして、核心となる戦場に自ら参入するタイミングをいかにして計るか、ということを順々に解説していく。フォロースルーこそがすべての鍵で、いったん覇権を掌握すれば、情報の出所を管理し、協力者には報酬を与え、反乱行為を徹底的に撃退するために自分の武力を集中的に配置する。この電子ブックはそのような鍵となる戦略のために貴重な助言を提供してくれる。さらにボーナスセクションもある! 今の時代に一番肝心なのはイメージ戦略だ。だから、戦闘に疲れた顔と葉巻の香りの染み着いた服装は重役会議室においては不利以外の何物でもない。そこで、身だしなみのヒントをいくつか挙げて、テレビ局のインタビューチームがあなたの重役室を訪問した時にあなたの言葉に重みが加わるようにお助けする! この電子ブック“Take Control of Your Island Nation”(「Take Control: あなたの島国の覇権を握る」)は 2004 年 4 月 1 日の発行で、ページ数は 53 ページ、価格は $5 だ。[ACE](永田)

http://www.tidbits.com/takecontrol/business/islandnation.html(日本語)Take Control Ebooks: あなたの知りたいことがすぐわかる

Canned Spam Can Can Spam with CAN-SPAM -- Hormel 社は今日、同社のソーセージ缶詰である Spam 缶を、連邦反スパム(CAN-SPAM)法と協力してスパム撲滅のために利用しようというキャンペーンを発表するとみられる。今日以降、Hormel 社は不正電子メール送信者の電話番号、メールアドレス、その他の情報を Spam 缶のラベルに印刷し、ミルクカートンの宣伝で有名になったあの“Have you seen me?”と同じ調子の写真を横に添えるという。缶詰スパムを使ってスパム送信者の摘発に協力しスパム撲滅の力になった人には謝礼としてスパム缶が贈られる。(Canned Spam buyers who help to can spam by canning spammers can receive cans of Spam as a reward.) [GF](永田)

http://www.hormel.com/spam/
http://www.spam.com/


DealBITS 抽選: サイン入りのスパム

文: Adam C. Engst <[email protected]>
訳: Mark Nagata <nagata@kurims.kyoto-u.ac.jp>

今週は特別に、今日1日限りの DealBITS 抽選だ。今回は、人気のソーセージ缶詰のメーカー Hormel 社の協賛も得て、本物の Spam 缶を1個、賞品とする。そしてこれを真のコレクターズ・アイテムとするために、私が自らその缶にサインして、幸運な当選者の方にはあの Adam Engst 本人からスパムを受け取ったのだという証明ができるようにさせて頂く。(ただし、SpamCop や私の ISP に苦情を寄せることだけはご勘弁願いたい。なにしろこの抽選に応募したあなたは、ご自分でそのスパムを要請されたのだから!)

ぜひ奮って下記リンクの DealBITS ページで応募して頂きたい。その際、ページに記された応募のルールをよく読んでそれに同意してから応募されたい。いつも通り、寄せられた情報のすべては TidBITS の包括的プライバシー規約の下で扱われる。最後に一言: ご自分のスパム(電子スパムの方です)フィルターに注意されたい。当選したかどうかをお知らせする私のアドレスからのメールを、あなたに受け取って頂くのだから。

http://www.tidbits.com/dealbits/AdamSpam.html
http://www.tidbits.com/about/privacy.html(日本語)TidBITS プライバシー規約


iChat AV 2.2 Public Beta で MSN をサポート

文: Jeff Carlson<[email protected]>
訳: 佐藤浩一 <koichis@anet.ne.jp>

Apple は本日、同社の人気インスタントメッセージ・オーディオ/ビデオ会議アプリケーションである iChat AV 2.2 のパブリックベータをリリースした。少数の不具合が修正されたほか、このバージョンでは Microsoft によるテキストベースの MSN メッセージネットワークもサポートするようになっている。

http://www.apple.com/ichat/download/
http://www.msnmessenger-download.com/

iChat は AIM (AOL Instant Messaging) ネットワークを使用しており、プロトコルに互換性がないことから、今まで iChat ユーザーは MSN ネットワークを利用できなかった。AIM は 1 億人以上のユーザー数を誇っているが、私も含めて多くの iChat ユーザーが、会社で MSN を使っている友人や家族とコミュニケーションが取れていない。解決策としては、iChat に加えて Microsoft のMac 版 MSN Messenger (無料でダウンロード可能であるし、Microsoft Office X にも同梱されている) を走らせることだけだった。他のチャットユーティリティ、例えば複数のインスタントメッセージプロトコルを扱える Fire のようなものでも、AIM と MSN のあいだで直接通信することは不可能だった。

http://www.aim.com/
http://www.microsoft.com/mac/default.aspx?pid=msnmessenger
http://fire.sourceforge.net/

iChat AV 2.2 Public Beta は、Apple のデータセンターに置かれている G5 Xserve の中継アレイを使って自動的にプロトコルを翻訳することにより、このギャップを埋めている。Apple は、この翻訳プロセスはテキストメッセージやファイル転送 (これは、前のバージョンの iChat 同様、対話している 2 台のコンピュータの間で直接行われる) の速度には影響しないとしている。

互換性の代償 -- インスタントメッセージのトラフィックは膨大なため、この新サービスは残念ながらすべてが無料ではない。Apple と Microsoft との間で取り交わされた契約により、iChat と MSN クライアントの間のチャットセッション中には“対象が絞り込まれて短く適切な”宣伝メッセージがテキストチャットに含まれることになる。使用される文字は、タイムスタンプや他のシステムメッセージ (例えば“相手とのインスタントメッセージセッションが開始されました”などの) と同じ、灰色のサンセリフ文字で現れるということだ。

両社は、表示はメッセージの邪魔にならないように行い、またメッセージをクリックすれば Microsoft Office が 5 ドル引きになるなど、ユーザーにとっても利益があるものになると保証している。両社の関係者などによれば、もしこのようなスポンサー付きメッセージがシステムとして成功すれば、ウイルス警告、株価、あるいはニュースの見出しなど、特定の情報を灰色の宣伝テキストとして表示するための権利を販売することを考慮しているとのことだ。(私はここで、例えば iChat Status や Status Symbol など iChat のステータスメッセージにこの種の情報を表示するサードパーティー製の iChat ユーティリティを使えば同様の機能が持てるということを指摘するべきだろう。)

http://www.ittpoi.com/
http://www.ifthensoft.com/

ところで、.Mac 加入者には朗報がある。このプロトコル変換作業は Apple が提供しているため、.Mac のフルサービス (年 100 ドルだ) 加入者はこのスポンサー付メッセージを表示しないようにすることが可能である。iChat は .Macメンバー名が Mac OS X のシステム環境設定の .Mac 環境設定に設定されているもの (つまり、有効な .Mac アカウント) と同じかどうかチェックし、自動的にメッセージを無効にする。望めば、iChat の環境設定でこの機能をオンに戻すこともできる。

iChat AV 2.2 Public Beta はすでに入手可能で、Apple のウェブサイトから6.3 MB のダウンロードとなる。このベータ版の使用期限は、2005 年 4 月 1日だ。


国土安全保障省が Mac で標準化

文: Adam C. Engst <[email protected]>
訳: 亀岡孝仁 <takkameoka@earthlink.net>

1999年9月に遡って思い出してみて欲しいのだが、当時、米陸軍がそのメインとなる Web サーバーを Windows NT から WebSTAR (当時は StarNine Technologies, 今は 4D が所有) の走る Power Macintosh G3 に変えるという注目を集めた動きについてお伝えした。その理由は単純であった:陸軍のホームページがハックされ面目丸つぶれに改ざんされてしまったのである。この事件に関わったティーンエイジャーは FBI に逮捕されたが、陸軍はこの問題に対する対策の一つとしてセキュリティの弱い Windows NT からの脱却を決めたのである。

http://db.tidbits.com/getbits.acgi?tbart=05552(日本語)米陸軍、Mac OS ベース WebSTAR に移動す

1999年と言えばもうずっと昔のように思えるかもしれないが、物事には変わらないものもあり、本日になって国土安全保障省 (DHS) はその全てのコンピュータを Mac OS X の走る Mac に標準化するであろうと発表した。1999年の時の陸軍の決定と同じく、今回の理由もセキュリティである。Microsoft はWindows の穴を塞ぐ努力を引き続きしているが、それ以上の勢いで拡がるワーム、ウイルスの伝染で数百万台もの Windows ベースの PC がゾンビスパムの発信源に変えられてしまい、その損害と後始末費用は数十億ドルにも達するのを我々は目の当たりにしてきている。

とはいえ、1999年とは事情は変わっている。DHS は勿論その内部及び外部のWeb サイトのセキュリティに対して今でも関心を払っているが、現在ではたった一つの悪性の Windows ワームかウィルスが省全体を麻痺させてしまう可能性のほうが心配である。陸軍の場合はその Web サイトが改ざんされて面子を失っただけだが、DHS のコンピュータを目標にしたワームベースの攻撃で、同省のテロリスト攻撃への対応能力が極度に落ちてしまう可能性がある。DHS はこの様な攻撃に対して極度に神経を使っており、この3月には Phatbot と呼ばれる Windows プログラムに対する警告を発している。このプログラムはpeer-to-peer ネットワークの概念を悪性のソフトウェアに変えてしまう。

http://www.washingtonpost.com/wp-dyn/articles/A444-2004Mar17.html

言うまでもないが、この発表は Apple Computer にとっては朗報である。これだけで数十万台の Macintosh を必要とするであろう。Apple の株は Wall Street が将来の好採算を予測して $2.85 高となった。

DHS が Mac OS X にスイッチすることを手放しで喜んでばかりはいられない。過去に、Mac がワームやウィルスに大方無関係でいられたのは、一つには Macは "関心を引く" 場所で使われてこなかったからである (誰にとっての関心かといえば、それは悪意のあるソフトウェアを書く人達にとってである)。DHSより興味を引く目標はそうないであろうし、近い将来 Mac を対象にした試みがもっと多く見られるようになるであろうことはまず間違いない。Apple とてこの可能性に気付いていないわけではない。その証拠にすでにセキュリティエンジニアの募集広告を出し始めた。下記はその一つの証である (ログインするには Apple ID が必要)。

https://jobs.apple.com/cgi-bin/webobjects/employment.woa/wa/jobdescription?requisitionid=2108056

この得失を天秤にかけても、やはりプラスの効果の方が大きいと思う。とりわけ、Microsoft の ISP 市場を独占しようとする動きに対して (この号でのGlenn Fleishman の記事参照)、この様な発表は Apple が競争から取り残されてしまうのを防ぐためにも重要である。政府機関での使用は、とりわけ機密情報を扱う場所での、ビジネスの世界でも Mac の言い分を援助する効果があるであろう。この世界ではセキュリティは IT マネジャーの考えを変えさせられる数少ないものの一つだからである。Windows はこの人達の面倒を実に良く見てきた:少ない初期投資と永久になくならないメンテの仕事で。


Countdown G5 で Power Mac G5 でも Mac OS 9 ブート可能に

文: Geoff Duncan <[email protected] >
訳: Mark Nagata <nagata@kurims.kyoto-u.ac.jp>

起動ソフトウェア専門の会社 Freedom Technologies は今日、CountDown G5 が本日付けで入手可能になったと発表した。これは論争の種となってきたファームウェアアップデートで、これを使えば Apple の Power Mac G5 システムが Mac OS 9 でも Mac OS X でも、どちらを使っても起動可能となるというものだ。

http://www.freedom-tech.fr/products/countdowng5/
http://www.apple.com/powermac/(日本語)アップル - Power Mac G5
http://db.tidbits.com/getbits.acgi?tbart=07241(日本語)Apple、64 ビット Power Mac G5 を発表

Apple から出荷された状態では、Power Mac G5 システムは Mac OS X でしか起動できない。(もちろん Classic 環境の下で古いソフトウェアを走らせることはできる。)けれども今や Mac OS 9 ユーザーも、Mac OS X を使いたくないと思ったり、あるいは必要なソフトウェアの Mac OS X 版がまだ出ていないという状況のユーザーの一人であったりした場合に、Mac OS 9 で Power Mac G5 システムのパフォーマンスと生のパワーとを楽しむことができるようになったのだ。CountDown G5 の採った方法は決して微妙な離れ業ではない。ただ CountDown G5 を使って Mac OS 9 でブート可能なシステムを作ることはサポート対象外のハイブリッドマシンを作ることを意味しており、保証を無効にしたり、将来オペレーティングシステムがアップデートされた時に予測不可能な問題を引き起こしたりするかもしれない。それでも、もしもあなたがどうしても Mac OS 9 で G5 のパワーを使ってみたいと思ったり、あるいは Mac OS X の Classic 環境にどうしても我慢がならなかったりしたならば、きっとこの CountDown G5 が唯一の解決法なのだろう。

CountDown G5 の動作のしくみ -- CountDown G5 は Power Mac G5 のファームウェアをアップデートして、そのマシンが Mac OS X でも Mac OS 9 でも起動できるようにする。このアップデートを施した後は、その Power Mac G5 はブート可能な Mac OS 9.2.2 ボリュームをも有効な起動ボリュームとして認識するようになる。もちろん Mac OS X 10.2.7 かそれ以降のインストールされたボリュームでも起動ボリュームできる。CountDown G5 が Power Mac G5 のファームウェアをアップデートする方法は、何か欠陥や非互換性の問題が起こって変更の必要が生じた場合に Apple が使うであろう方法と全く同じものだ。(例えば初期型の iMac が Mac OS X 10.2 やそれ以降をインストールすると動作しなくなってしまったのを回避するために出されたファームウェアアップデートのようなものだ。)

http://db.tidbits.com/getbits.acgi?tbart=06973(日本語)Jaguar のインストール前に必ずファームウェアのアップデートを!

Power Mac G5 にはいろいろの新しいサブシステムやプロセッサテクノロジーが投入されているにもかかわらず、システムのファームウェアパッケージそのものは Mac OS 9 互換のマシン用に出されているものとそう違わないことに Freedom Technologies 社は着目した。ブラックボックスの中身を注意深くリバース・エンジニアで解析することにより、彼らは Power Mac G5 ファームウェアのどの部分を変更すれば Mac OS 9 互換性が提供できるのかを突き止めることに成功し、それをどんな変更にすればよいかも完全に見極めたのだった。Apple は Power Mac G5 ハードウェアを Mac OS 9 で徹底的にテストすることはしなかった。Apple としてはすべてを(たとえ Classic 環境を使っているユーザーであっても)Mac OS X を通じてアクセスさせよう、というのが基本姿勢だったからだ。でも、Freedom Technologies の技術者たちの報告によれば、彼らは Power Mac の機能をすべて Mac OS 9 からアクセスしても何の問題も発見できなかった。おそらくその理由の一つは、新しいテクノロジーの多く(例えば FireWire 800 や USB 2.0 など)がオープンスタンダードに基づいたものであるので完全な技術的仕様が公表されているからだろう。CountDown G5 の主任開発者によれば、非互換な箇所もいくつかは見つかったが、それらを回避するのにそれほど多くの技術的努力は必要でなかったという。

けれども、Mac OS 9 で起動した時には、Power Mac G5 システムは G5 プロセッサのネイティブな 64-bit モードの恩恵を受けることはできない。Mac OS 9 を 64-bit 互換なものに書き換えるには、Apple の側で相当の労力が必要となるだろうし、言うまでもなく今日では Apple が Mac OS 9 のために割ける開発人員は事実上ゼロと言っていいのだ。同様に、Freedom Technologies としては特定のドライバや周辺機器が G5 システムを Mac OS 9 で起動した時に動作すると保証することはできない。なぜなら、サードパーティのベンダーがそれぞれのソフトウェアドライバをどのように開発したかを彼らは知る由もないからだ。CountDown のリリースノートには既知の非互換性の具体的なケースが説明されている。(現時点では、ほんの数個の USB プリンタやデジタルカメラのみだ。)

http://www.freedom-tech.fr/products/countdowng5/release-notes.html

T Minus 10 -- CountDown G5 は独自の CD-ROM からインストールする。ディスクを挿入して、“C”キーを押しながら再起動し、システムが起動し始めれば次々と出てくる指示に従って答えて行けばよい。このインストーラはユーザーが CountDown G5 製品の本性をしっかりと理解し、本当にこれをインストールしたいと思っているのかをくどいほど確認してくる。CountDown G5 インストーラの問によく考えもせずにクリックし続けたり、早く済まそうと Return キーをむやみに押したりしてはいけない。デフォルトのボタンとダイアログの性格はその場その場によって変わる。インストールが実際に始まるに先だって、ユーザーは必ず正しく質問に答える(かつシリアル番号を正確に入力する)ことを求められる。

このような厳重な警戒措置を採った理由は簡単だ。いったん CountDown G5 をインストールしたら、もう元には戻れないのだ。Freedom Technologies としては合法的に Apple のデフォルトのファームウェアを提供することはできないので、インストーラに「アンインストール」のオプションを提供することはできなかった。Apple 自身も、Power Mac G5 システムに入れて出荷されたファームウェアを再インストールする方法は持ち合わせていなかった。つまり CountDown G5 のインストールは完全に片道切符であって、もし仮にこの2分間のインストール作業中に停電が起こってしまえば、マザーボード交換以外には Power Mac G5 を復活させる方法がなくなるかもしれないのだ。

ユーザーはまた CountDown G5 をインストールすることがほぼ間違いなく Apple の保証を無効にしてしまうであろうことを忘れてはならない。ただ、Apple はこのことに関してはまだ何も公式に発表していない。同様に、サードパーティのハードウェア製品の保証も CountDown G5 を使ったシステムによって無効になるかもしれない。特に、Mac OS X のみを念頭に置いて開発された Macintosh 周辺機器は、CountDown G5 付きの G5 システムにおいてであっても、Mac OS 9 で動作するとは考えにくい。なぜなら、こうした機器に対応した Mac OS 9 ソフトウェアは出ていないからだ。例えばサードパーティのマウスやその他の入力機器、スキャナ、プリンタなどにはこの注意が必要だ。ただし、Mac OS 9 互換を謳っている機器のいくつか(例えば外部ハードドライブなど)では何の問題もなく動作するはずだ。

発進せよ! -- CountDown G5 1.0 は現在 Apple の Power Mac G5 システム用のものしか出ておらず、それ以外の Apple ハードウェアではインストールが拒否される。Freedom Technologies によれば、新型の iMac や Apple のハイエンドのラップトップ機についても対応するバージョンの CountDown を検討中とのことだ。ただ、彼らの焦点があくまでも Apple のプロフェッショナル向けの Power Mac G5 にあることは変わりない。Freedom Technologies では Apple が新型の Power Mac G5 システムを出す度に CountDown をアップデートして行かねばならない。また、Apple がその製品サイクルに何かファームウェアの改訂を滑り込ませる度にもアップデートが必要だろう。Freedom Technologies では、その特定の Power Mac G5 システムにおけるファームウェアと CountDown が互換であるかどうかを判定するごく小さなアプリケーションを提供している。

http://www.freedom-tech.fr/support/downloads/countdown-tester.dmg

CountDown G5 1.0 は現在 E.U. 加盟のヨーロッパ諸国では 50 ユーロで入手可能だ。合衆国市民は追加のテクノロジー輸出関税を払わなければならないため価格が $95 から $110 程度となる。(実際の価格は交換レートの変動とテクノロジー貿易協定の推移によって変わり得る。)CountDown G5 の唯一の入手方法はシリアル番号の付いた CD-ROM としてであり、ダウンロード版は無い。

http://www.freedom-tech.fr/store/

[訳注: 日本での発売は役所との交渉に手間取ったため来年の4月1日まで延期されたという噂があります。これはただの噂に過ぎませんが。]


ネットワーク選択の自由の終焉

文: Glenn Fleishman <[email protected]>
訳: 佐藤浩一 <koichis@anet.ne.jp>

もう 10 年前になるだろうか、私は“The Experiment Is Over (実験は終わった)”というタイトルで、政府が出資する利用制限付きのインターネットバックボーンが終わりを告げたという記事を TidBITS に書いた。政府や研究所が構築・接続・利用料金の支払いを行っていた実験段階のインターネットは、大規模な会社がインフラとデータ転送に課金する商業段階へと移り変わったのだ。

http://db.tidbits.com/getbits.acgi?tbart=01501

今日、私たちはこの二番目の段階、個人に対して複数の会社がインターネットサービスを提供することが終焉を迎えるところを目の当たりにしている。今朝早く、Microsoft が AOL の事業全体を買収する契約を結んだとのニュースが飛び込んできたのだ。これは、両社が買収について話し合いを持っているとする噂を裏付けるものである。これとは別に、Microsoft が数年前に言い寄ったことのある、今や収益を上げるようになった EarthLink 社を、他の大規模 ISP数社と共に同社が買収することに成功した。Microsoft はすでにケーブル ISPの Road Runner 社の一部を保有しており、MSN を通じて 9 百万人のユーザーにインターネットサービスを提供している。

http://www.guardian.co.uk/business/story/0,3604,1173902,00.html
http://news.com.com/2100-1033-252490.html?legacy=cnet

短期的には、Microsoft がこれらの大規模 ISP を併合したことによりスケールメリットが生まれ、インターネットへのアクセス料金は下がるだろう。これはしかしながら、Microsoft が市場の圧力と無限に近い資金援助に裏打ちされて69 % にのぼるシェアを獲得した後、残った地方の小規模な ISP が生き残れるのかどうかという疑問を呈する。例えば、MSN は 2003 年第 3 四半期に最初の四半期利益を計上できたが、これ以前の 8 年間はずっと赤字だった。

前回の Microsoft との不毛な戦いに負けてスタッフや財源を失ったアメリカ司法省は、早々にこの動きに対抗しないことを表明している。スポークスパーソンは「幾多の独立系 ISP がアメリカのいたるところで Microsoft と競争しているのだから、Microsoft による最近の買収劇には反トラストの懸念は無いと考えている」と述べている。先日 Microsoft が反トラスト法に触れているとした欧州連合は、この Microsoft のアメリカ内における ISP に関する動きを注意深く見守っていると言われている。ついには、アメリカ連邦取引委員会から「消費者にとってスパムと戦うには単一の組織が最良である」との声明まで出る始末だ。

http://www.internetnews.com/bus-news/article.php/3330201

長期的には、コストは上がるだろう。直接的ではないだろうが、サービスと抱き合わせで、例えばケーブル会社がチャンネルをパッケージとして販売するため見ることもできない数のチャンネル料金を支払うような形になるだろう。しかしさらに気にかかるのは、Microsoft が経営する影響でインターネットの脆弱性が増えていくことだろう。生物学的に単一である場合、ペストや伝染病、あるいは環境の変化により大きな人口の減少を起こしやすい。コンピュータの世界も同じである。大きな ISP の中でオペレーティングシステムや作業慣行のバラエティが少なくなると、Microsoft 特有のソフトウエアやシステムを狙った悪意あるコードによってインターネットのより広い範囲が影響することになるかもしれない。


どうぞこちらの SEETS にお掛けください

文: Adam C. Engst <[email protected]>
訳: Mark Nagata <nagata@kurims.kyoto-u.ac.jp>

分散ワーキンググループに参加した経験のある方なら、きっと共有カンファレンス・コールの意義についてはご存じだろう。私は、さまざまのプロジェクトで長時間を遠隔電話会議に費やしたことがある。でも、何と言ってもこうした電話会議における大きな問題は常に誰かがノートを取っていなければならないことで、これは自分も議論に参加している場合はとても難しいことになる。また、ノートの内容はノートを取る人の注意深さによってのみ良いものになるのだし、私の仲間たちのうちでもノートを取る技術(それに熱意)は人によって大きく違っていた。

けれども、私は現在この問題を根本から解決できると称している、新しいサービスを試してみようと思っている。その名前は SEETS、これは“SubEthaEdit Transcription Service”の略で、そのアイデアは単純だ。あなたが契約したカンファレンシング・サービスの一環として、訓練を受けたノート筆記者があなたの会議を傍聴して議論をノートに書き留めてくれるのだ。けれども、きっとこの名前からあなたも推察して下さったとは思うが、その素晴しい点は筆記者が取るノートは共有 SubEthaEdit 書類であって、その会議の参加者ならば誰でも筆記に加わることができるということだ。(ご存じない方のために説明しておくと、SubEthaEdit とは、以前は Hydra という名前で知られていたが、無料の、リアルタイムで使える協力編集作業用テキストエディタで、TheCodingMonkeys と自称するドイツのコンピュータサイエンス専攻の学生たちのグループが作ったソフトウェアだ。)

http://www.seets.com/
http://www.codingmonkeys.de/subethaedit/

実際、誰かが SubEthaEdit で議論のノートを取っていてくれると議論に身が入るものだ。なぜなら、これまで何が語られたかが文字となってその場で読める(だから議論が不必要に蒸し返されることもなければ遅刻してきた人も素早く議論に加われる)し、また次に何を語るべきかも分かる(議事事項を前もって設定できる)からだ。それに、たとえ一人の人だけが主にノートを取っていたとしても、その人が書き忘れたり大切だと気付かなかったような点などを、他の人がちょっと手を加えて書き足したりできる柔軟性もあるのだ。

SEETS のノート筆記者は、ただ単に会議の内容を書き留める訓練を受けるだけではない。その議事進行の構造を反映して、適切に一つ一つの要点にラベル付けをし、それぞれを発言した人の名前も記録しておかねばならないのだ。確かにたいていの人はそれほどノートに書き加えたいとは思わないだろうが、時々は何かを書き加えたり用語を訂正したりする人がいれば、ノート筆記者の方もノートの正確度を上げる助けになるというものだ。

このような SEETS ノート筆記サービスは、カンファレンス・コールにかかる費用を大幅に引き上げるように見えるかもしれないが、実際の価格は全国平均の1人1分あたり 25 セント、という標準とそう変わらないものだ。(ただし廉価版の電話会議で1分あたり 8 セント、などというものよりはずいぶん高い。)このような価格に抑えることのできた理由が2つある。実際の通話に安価な Voice-over-IP (VoIP) テクノロジーを使ったこと、それから実際のノート筆記サービスに能力が高くて賃金の安いインドの労働者を雇ったことだ。そしてもちろん、1分あたり 25 セントという価格が高いと思われても、SEETS のお陰でそのビジネスに携わる人々全員が議論の内容に集中できて、後日ノートの内容を整理し直すのに時間を費やす必要もないのならば、決して無駄な出費ではないと言えるだろう。

実際のところ、これこそが SEETS の最大の利点だ。会議が終わった時、既に誰もがノートを自分の手に持っているわけだ。誰かがノートを整理・清書して送ってくれるのを待ち、その電子メールが届いてからやおら次の行動計画は何だったかと思い出す必要はないのだ。

私は決して SEETS がすべてのカンファレンス・コールにふさわしいなどと言っているわけではない。一つには、SEETS は現在のところ英語しかサポートしていない。ただ、同社では将来いくつかの言語のサポートを追加していくかもしれない。また、議事の内容によっては第三者に聞かれてはまずい機密事項もあるだろう。けれども、毎週決まって一時間を費やさねばならないあの定例の電話会議なら、SEETS を使えば少なくとも議事がいつもあなたの手元にあって、電話が切れたとたんに皆が議論の内容を忘れてしまったのではないかと、気を揉む必要もなくなるのではないだろうか。


Tes-La がラップトップをワイヤレスで充電

文: Glenn Fleishman <[email protected]>
訳: Mark Nagata <nagata@kurims.kyoto-u.ac.jp>

ワイヤレスの電子電源テクノロジー MobileWise に見られるような短距離誘導充電テクノロジーの成功に勇気づけられて、Posicharge, Inc. からワイヤレスネットワークのテクノロジーにおける最新の進歩の成果が発表された。これは Tes-La 受動エネルギー充填システムと呼ばれ、Wi-Fi ホットスポットにおいて Tes-La コイルをそのワイヤレスゲートウェイに取り付けるだけで、あなたのラップトップ機が空中を伝って電圧を取り込んで充電できるようになる。これは、自動車を運転中に道路の料金所で空中を伝ってお金の支払いができるのとよく似たシステムだ。

http://www.mobilewise.com/
http://www.tes-la.us/

ラップトップ機には特別のアンテナ状アダプタを取り付ける必要がある。これはマシンに付属の電源アダプタの代わりに使う。原理的には何キロも離れた所から電源を転送することも可能だが、Tes-La コイルからの距離が遠ければ遠いほど電源強度は下がってくる。Tes-La システムを使用する際には身体にアース線を取り付けるか、または常時金属に体を触れていることが推奨される。これは静電気の蓄積を避けるためだ。(Posicharge では一対のアース線で最新流行のリストバンドのように見えるものを売り出している。安物のベルクロ・ストラップとは大違いだ。)

この Tes-La の素晴しい点はそれが決していい加減なシステムではないところだ。電源供給プロトコルとしては TCP/EP、つまり電源用 TCP、を用いている。TCP/EP は個々のバケットに含まれる外向きアンペア数を評価することで計測される。ラップトップ機は、その電源の必要量に応じてこのプロトコルと交渉をおこなう。例えば、最初に接続した時にはバッテリが 70% 程度にまで高速充電される。その後は、アンペア数が絞り込まれてゆっくりと残りの容量が充電されてゆく。この方法のもう一つの利点は、広域にわたる電源消費だ。このシステムは付近にいるユーザーの数を考慮して電源を分散し、複数のユーザーがいても平均的に電源が分配されるようにする。

http://www.tes-la.us/technology/

しかしながら、この Tes-La システムにも欠点はある。空中を伝って電力を送ることは 1920 年代以来の人類の夢であったのだが、それに伴ういろいろな危険も見過ごせないものだった。Posicharge のライバル社の一つである Noside Connections 社は、Tes-La 転送の直接送信路の上に犬を置けば、ものの数分でその犬は黒焦げになってしまうだろうと言う。(Noside はこの例は純粋に理論的なもので、実際に動物を使ってこのような残虐な実験は決して実行していないと主張している。)

Posicharge 社はそれに対して、Tes-La システムは障害を感知すれば自動的に転送される電力を抑えるように設計されており、そもそも Wi-Fi が実際に提供されているカフェやその他の公共的な場所で犬がうろついていることは通常あり得ないと反論している。

Tes-La は、FCC、FDA、FAA、USDA、NSA、DHS その他の政府機関からの認可が得られ次第、合衆国国内で利用可能になる予定だ。

[ 訳注: お楽しみいただけましたか? 念のため申し添えますが、この号、TidBITS#724/01-Apr-04 の _すべての_ 記事は、あくまでもエイプリルフールの日のみ、4月1日の、一日限りの内容となっておりますので、あしからず!]


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Valid XHTML 1.0! , Let iCab smile , Another HTML-lint gateway 日本語版最終更新:2005年 12月 26日 月曜日, S. HOSOKAWA