夏の Mac コンファレンス巡りを続けている Adam がミシガン州の Dearborn での ADHOC (元 MacHack) コンファレンスでの眠りを惜しんで過ごした幾夜かについて報告 する。特に ADHOC Showcase プログラマ競争の勝者達に注目したい。またこの号で は、Matt Neuberg が Insider Software のFontAgent Pro と真っ向から対決し、 Salling Clicker 2.2 と WebSTAR 5.3.3 のリリースを報告する。
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Salling Clicker 2.2 が機能追加 -- Jonas Salling が彼の Bluetooth-ベースの リモコンソフト、Salling Clicker をバージョン 2.2 へアップグレードした (TidBITS-694 の“Salling Clicker を活用する”を参照)。“ステロイドで増強した デジタル中枢”と謳っているこの新しいバージョンはEyeTV や Squeezebox メディア 機器、そして VLC (VideoLAN クライアント)ソフトなどの遠隔操作機能を加えた。 PowerPoint 2004 を操作するプレゼン用具として使用すると、Clicker 2.2 は次のス ライドの題を表示する。このバージョンでは Symbian OS を使用している携帯を含め た新しい Bluetooth携帯やハンドヘルドのサポートをも加えた。Salling Clicker 2.2 は現ユーザには無料のアップグレードで、新規ユーザには $20 の 3.7 MB のダウ ンロードだ。試用モードでも使えるが、クリックは 30 回に制限されている。[JLC](倉石)
<http://www.salling.com/>
<http://db.tidbits.com/getbits.acgi?tbart=07320>(日本語)Salling Clicker を活用する
<http://www.slimdevices.com/>
<http://www.elgato.com/>
<http://www.videolan.org/>
WebSTAR アップデートが弱点をパッチ -- 4D, Inc. は 4D WebSTAR のバージョン 5.3.3 をリリースした。この Web、メール、そして FTP サーバのセットは報告されて いる弱点を塞ぎ、他の機能を追加している。このアップデートはライセンスを保持し ている WebSTAR V のオーナーには無料だ。バージョン 5.3.2 以前の WebSTAR の FTP サービスには、長い FTP コマンドを送りつけることによりスタックオーバーフ ローを起こし、攻撃者が管理者権限を乗っ取れるという弱点があった;WebSTAR に含 まれているサンプルのスクリプトによってディレクトリーのインデックスが可能だっ た:そして、Webサーバ部分は、攻撃者が php.ini ファイルをダウンロードすること を許しており、PHP がデータベースと通信するのに使用するアカウント名やパスワードが盗まれる可能性があった。WebSTAR サーバの管理者は、皆この最新バージョンに アップグレードするべきだ。4D によれば、アップグレードで改善されたスパムのフィ ルタも提供されている。IP アドレスの許可リストとSpamAssassin ヘッダがあらかじ めついているメッセージをフィルタする機能が追加された。[MHA] (倉石)
<http://www.4d.com/products/downloads_4dws.html>
文: Adam C. Engst <[email protected]>
訳: Mark Nagata <nagata@kurims.kyoto-u.ac.jp>
カンファレンスの参加者数が減少してゆくという事態に直面した時、人はそれを何か大きなトレンドのせいにしたり、あるいは悪霊のせいにしたくなったりするものだ。ついこの間終わったばかりの Boston での Macworld Expo で観衆の数が細ってゆくのを目にすれば、そういう解釈もまあ適当と言えるかもしれない。表向きは、あのカンファレンスでは Apple やその他の大きな会社が出展を拒否したのが大きな足枷となったのだということになっている。ただ、現実には Apple のスタンスを理解するのはそれほど困難でない。メジャーなトレードショウの第2位に位置するこのカンファレンスに出展するということは、そこにも製品リリースの締切を設定せねばならず、そのことがまたトラブルを招く要因ともなりかねない。また、あらゆる種類の発表について会社としてのコントロール権の一部分を第三者の手に譲り渡すことを強要されるという意味合いもある。それでいて、Macintosh や iPod を新規の顧客に知らしめるという目的にはそれほど役に立たなくなってしまっているのだ。皮肉なことに、最近リリースされた AirPort Express (日本では AirMac Express)、大型モニタ、クリックホイール iPod などの新製品の勢揃いを考えれば、Apple は今回は Macworld Expo に出展しても発表するネタには困らなかっただろうにという気もするのだが。けれどもよく考えてみれば、そういう発表にメディアの注目を得るだけのために、Apple としてはわざわざトレードショウの会場一杯に観衆を集める必要もない。その上、今は Apple Store というものがあって、潜在的な Macintosh および iPod ユーザーたちに新しいデジタル製品を紹介するという目的は既に満たされているのだから。
こうしたことはすべて Boston の Macworld Expo で観衆の数が減ったことの説明にはなるだろう。けれども、先週の ADHOC (the Advanced Developer Hands On Conference - ご存じの通り、以前は MacHack として知られていたもの) で出席者数が少なかったことについては、一概にそのような説明を当てはめることはできない。従来も、MacHack がそれほど大きなカンファレンスであったことは一度もない。最高でも出席者数が 500 人を超えることはなかった。けれども今年の出席者数は特に少なく、顔を出した開発者の数もせいぜい 100 人程度だった。もちろん世の中の開発者の数が激減したわけではないし、Apple が ADHOC にほとんど顔をだしていなかったとはいっても、もう何年も公式には Apple からの派遣はなかったのだ。
そういうことではなくて、実際はごく単純に説明がつく。ボランティアで成り立っている ADHOC の主催者たちが、今回はマーケティングにまでは結局手が回らず、過去に出席したことのない人たちにカンファレンスを紹介するという必須の作業ができなかったのだ。さらにカンファレンスの名称を変更したことと、Apple の Worldwide Developer Conference の開催時期移動のあおりを食って開催時期を一ヵ月後に移動せざるを得なかったことも響いた。(Macintosh 開発者ならば、WWDC への出席はほとんど必須のことだから。)この新しい開催時期は Macworld Expo の直後の週にあたり、また Seattle での Digital Design カンファレンスとは同じ週に重なってしまった。このため少なくとも一人の長年の MacHack 常連が来られなくなった。(彼は PDF の達人である Leonard Rosenthol で、Seattle で講演してほしいという招待を断わり切れなかった。講演料の魅力も、地理的な魅力も、ミシガン州のみすぼらしい Dearborn で開かれる ADHOC のために自腹を切ることには比べるまでもなかったのだろう。)
ただ、本質を言えば、真の問題はこのカンファレンスをマーケティングする人たち、つまり参加者代表であるボランティアのコミティーが、カンファレンス自体に財政的な動機を持ち合わせていなかったというところにあるのだと思う。その動機を持っていたのは Expotech 社、これはカンファレンスの企画をする小さな会社で、これまで MacHack のすべての雑用を一手に引き受けてきたところだ。(実際、これまであまりにも長きにわたってこのカンファレンスに関係してきたため、MacHack 参加者たちは全員、Expotech とは Carol Lynn と Maurita Plouff という二人と、彼女らの年々大人びてくる娘たちのことだと思い込んでいる。)もちろん、志を同じくする仲間たちで集まってネットワークを共にしようというコミティーの目標は賞賛に値するが、それを収益を揚げようという一方の目標と完全に切り離してしまったことが、無計画を目指しているとしか思えない今回のマーケティングへの取り組みという結果に結び付いたのだろう。
<http://www.expo-conv-svcs.com/>
確かに今年の参加者数が少なかったことは問題で、今年のコミティーの側でもこの点に関して何らかの努力を加えてくれるものと期待しているが、それはさておき内容の質的な面をみれば、質的には今年も何ら違いはなかったように思える。もちろん、ホテルのロビーでお喋りをする相手の人の数も例年より少なかったし、セッションや投稿論文の数も減り、毎年恒例の映画鑑賞会で会場が満席になることもなかった(だから“I, Robot”の上映でグループ同士のやじり合いもできなかった)が、カンファレンス自体はいつも通りの便利さと楽しさのムードを保っていた。私が出席したセッション、例えば Extreme Project Management についての James Goebbel のセッションや、Hardware Technical Trends という題の Chad Magendanz の講演など、非常に価値のあるものだった。私は開発者でもないというのに! 今後は、ビジネス系のセッション(例えば私が講演した Hacking the Press セッションや、私は出席できなかったが eSellerate の使い方についての Josh Ferguson のセッションなど)をもっと増やして欲しい。そうすれば、開発者ではない、他のタイプの人々、例えば高度に技術的なユーザーたちや、関連の経営者たちをも引き付けるカンファレンスとなれるだろう。
ADHOC はもはや MacHack ではないのではないか、という不安を言う人もいた。ことにあの有名な MacHax Group のベスト・ハック・コンテストが今回から ADHOC ショーケースと名前を変え、“デモ”が上演されて最後に架空の資本投資投票が行なわれる、という形式になったからだ。けれども、これは名前が変わっただけでそれほど大がかりな変更はなかったし、新しい ADHOC ショーケースの主催者たちが過去 17 年間のベスト・ハック・コンテストから一線を画するものにしようと試みたにもかかわらず、参加者は皆どうしても古い用語や伝統から離れることができなかった。とは言え、プレゼンテーションの最中にいくらか不手際はあったものの、皆が十分に楽しむことができ、一方で参加者の数が少ないということはこれまでのように午前 5 時ではなく午前 2 時にベッドに入ることができるということも意味していた。
そういうわけでまとめれば、MacHack が他のカンファレンスと何が違うのかはもう一つ捕えどころがないが、それが何であるにせよ、ADHOC にもそれが備わっていた。いつもの馴染みの顔が揃い、セッションはためになり、デモはおもしろく、それに今年は Ann Arbor 一素晴しいデリカテッセン、Zingerman's へ巡礼する毎年恒例のグループに、私ももぐり込むことができた。以前 Mac OS 9 の技術主任をしていた Keith Stattenfield は今年は出席できなかったが、彼やその他数人の Apple 者のプログラマーたちも iChat AV 経由で参加(iChat AV の画面は部屋全体から見えるように投影された)し、皆で徹底的に映画“I, Robot”を解剖するユーモラスな2時間を過ごした。こうしたいろいろなイベントの内容については実際にその場に居合わせなければたぶん実感が掴めないと思えるので、文章で説明を試みるよりも、どうか私が Canon PowerShot S400 でその場を撮影した短いムービーをご覧頂きたく思う。(注意事項が3つある。映画“I, Robot”をご覧になったことのない方には意味がよくわからないかもしれないこと、ムービーは必ずリストされている順番にご覧頂きたいこと、それからこれらのムービーのサイズは合計で 100 MB ほどもあるので、高速のインターネット接続をお持ちでない方はあきらめて頂いた方がよいかもしれない。)
<http://www.zingermans.com/>
<http://emperor.tidbits.com/tidbits/resources/739/>
ADHOC ショーケースの上位デモ -- ADHOC のショーケースは、MacHax のベスト・ハック・コンテストと完璧に同じ鎧の鉄仮面、というわけにはいかなかったが、それでもまだ数多くのデモが文句なしに楽しめるものだった。私はノート取りのために SubEthaEdit 書類のホストとなり、この書類にはカンファレンスに出席できなかった人たちも、インターネット経由で何人も加わってくれた。では、以下に投票結果上位5つのデモを紹介しよう。初めに挙げる3つは、同点の3位(お望みなら同点の5位と言ってもよい)に並んだ。
Lisa Lippincott が披露したのは Scroll Plate だ。これは iSight カメラを使ってカラー認識をするプログラムによるものだ。iSight カメラの表示範囲の中で、プレートの上に描かれた矢印の色によって書類を上や下にスクロールさせることができる。スクロールホイールの付いた機器を持っている人はいるだろうが、これにスクロールプレートが加わったのだ!
Wolf Rentzsch が開発したのが EtherPEG Cocoa だ。これは去年のハック、EtherPEG を Cocoa に移植したものだ。EtherPEG は暗号化されていない Wi-Fi のネットワークを通って転送されて行く画像を表示する。Wolf はプログラムの動作にも改良を加え、画像をランダム順でなく本来の順序で現われるようにした。彼はさらにもっと改良を加えるつもりだったが、テストをしている最中に誰かが Google Image Search を使い始め、彼はその人と共同で新しいゲームの開発に夢中になって、残りの時間はそちらにかかり切りになってしまった。一人が検索を実行し、もう一人が画像を見て検索ワードを推理するというゲームだ。ひょっとしたら、これが国中を席巻する、次の大流行ゲームになるかもしれない。
Adam Goldstein、まだ学生の彼は ExposeHopper を書いた。このゲームの中で、あなたはまず Expose を呼び出して、それからプレイヤーをウィンドウからウィンドウへと動かし、コーナーにあるチェックマークを集めて回るのだ。このゲームのすごいところは、ウィンドウ間を移動するごとにプレイヤーが Dock の煙を吐いてパッと消えてしまうことだ。
第2位にランクされたのは Mike Zornek のデモした The MegaMan Effect だ。これは、アプリケーションを起動させた時に標準で現われる、アイコンが跳ねるアニメーションを、アイコンが星空間をズームして進むフルスクリーンのアニメーションで置き換える。これは何年も前の怪しげなビデオゲームから取ったものだ。
最後に、第1回の ADHOC ショーケースで優勝に輝いたのは、Jorg Brown の Unsummarize だった。この巧みなちょっとしたコードは、短い文章や語句を入力すると、ちょうど Apple の Summarize サービスの動作と反対のように、その語句を「拡張」してくれる。(サービス対応のアプリケーションでテキストを選択して、アプリケーションメニューから Services > Summarize を選べば Summarize サービスが働く。)Unsummarize は、(たぶんデモのためにいろいろとからくりが施されていたのかもしれないが)選択したテキストを使ってウェブ検索をし、その検索結果を拡張に使うのだという。Jorg が Unsummarize のアイデアを得たのは ADHOC キーノートで David Pogue が話した冗談からだった。David は、Summarize っていうのはとってもクールな機能だけれど、本当に欲しいのはその反対の機能で、要約だけ書けばあとは Mac が全部記事を仕上げてくれるならいいのに、と言ったのだった。
例年 MacHax Group がしてきてくれたように、今年の ADHOC コミティーにも、ここに挙げたものや、その他のいろいろなデモを、何とか公開して皆が手に入れられるよう、努力して頂きたいと思う。
カンファレンスを採点する -- ここまでの話でお分かりの通り、ADHOC というのは非常に珍しいカンファレンスだ。というのは、過去 18 年にわたる MacHack としての歴史が、あらゆることの様相を色づけしているからだ。そのことが私のカンファレンス採点システムに少々歪みを与えてしまうのは間違いないだろう。まず、出展者の立場で ADHOC を採点はしない。(出展者など一人もいなかったからだ。)講演者の立場からの採点については、報酬も司会者もなく利便性も結構混乱していたとは言えるものの、でもそんなことはすべていわば問題外だ。なぜなら、ADHOC で講演するというのは、自分がコミュニティに貢献するために何かをしようとしてのことだからだ。これは、お互い仲間同士のイベントなのだ。それから報道関係者の立場から言えば、ここではプレスルームなんて意味がないし、ニュースイベントに相当するようなものもない。(ハックコンテスト/ADHOC ショーケースの結果発表を別にすればだが。)でも、どちらもこのカンファレンスの意義から言えば重要でも何でもない。(また利便性の面では本当に便利と言えた。)というわけで、残るのは観衆の立場だけだ。私の採点は次のようになった:
費用と価値。ADHOC のカンファレンス参加費用は、安さの点ではおそらくどこにも負けないだろう。早期登録をした講演者の $325 から、締切ぎりぎりに登録した一般参加者の $550 まで、という範囲だ。それに、論文を投稿して論文コミティーが受領を認めれば、無料で入場できるようになる。ホテルの費用は1日あたり $120 ほどだが、多くの人たちは他の人と相部屋にしてこの費用を分け合うようにしていた。Detroit への飛行機の便も、ここが Northwest Airlines の拠点ということもあり、比較的手軽で料金も安い。
時と場所。ADHOC では、意図的にあまり普通でない開催場所が選ばれていて、参加者がホテルを出たい気にならないようになっている。また、このホテル自体がこの場所でのカンファレンスの伝統の一部になっている。(そうそう、重大な問題がある。このホテルをハックしようというジョークを私はまだ続けているのだが、私が隠しておいた4フィート長さの木製の棒は、今年も見つかるだろうかという問題だ。去年は、この棒をロビーの誰にでも見えるところに、植物の支柱のように見せかけて立てておいたのだ。この棒にまつわる以前の物語については下記のリンクを参照。)カンファレンス開催のタイミングは、今年は良くなかった。今回は、あまりにも多くの他のカンファレンスと近接した開催時期になったしまったのだから。0 点。
<http://db.tidbits.com/getbits.acgi?tbart=06103>(日本語)ATypoKill Eudora ハック
<http://db.tidbits.com/getbits.acgi?tbart=06470> (日本語)MacHax Hack Contest 2001
<http://db.tidbits.com/getbits.acgi?tbart=07244> (日本語)MacHack の 2003 年度ベスト・ハック・コンテスト
利便性。Expotech 社のおかげで ADHOC をめぐる利便性はずいぶんシンプルになっている。何年にもわたってずっと同じことが続けられていることも、その便利さに寄与しているのだろう。初めて参加した人がチケットの予約をする時に気を付けなければならないのは、カンファレンスが公式には木曜から土曜までの開催となっているにもかかわらず、実際に始まるのは水曜深夜のキーノートから、そしてすべてが終わるのは日曜早朝になるということだ。+1点。
出展者の幅広さ・奥深さ。出展する会社はない。ただし、いくつかの会社はさまざまの形でカンファレンスのスポンサーとして援助している。Bare Bones、Nvidia、O'Reilly、QuickSilver、Speakeasy、その他の会社だ。(私たちも、Take Control 電子ブックの宣伝のために、いくらかのお金を出してスナックルームに置くフルーツを買ってもらった。)0 点。
製品サポート。あなたが援助を受けたい会社の人がもしも参加者たちの中にいたら、その人をつかまえて1対1の相談に乗ってもらうのはとても簡単だ。例えば私も eSellerate の Josh Ferguson と話ができて、とても親身に教えてもらえたので、今回のカンファレンスの成果が一層充実したものになった。+1 点。
セッションの質。開発者向けのセッションの質については私は採点する資格がないが、それ以外で私が出席したセッションは皆、最高度の内容だった。+1点。
キーノート。MacHack キーノートは、例えば Ted Nelson、John Warnock、Steve Wozniak、Andy Ihnatko、のような大勢の著名な講演者たちが勢揃いし、真夜中に始まって何時間も続くというのが伝統となっているイベントだ。今年の ADHOC の幕開けキーノートは David Pogue による巧みなものだった。彼は初めのうち、ここでは伝統となっている聴衆同士の超ハイレベルの相互交流活動に直面して、ちょっとひるんだ様子だったが、すぐに David はそれにも負けず、ウィットに満ちた替え歌や冗談で聴衆を彼の話に引き込んで行った。彼はいろいろな Panther 豆知識で聴衆の人々に挑戦を仕掛け、人々は競って David が知らないと思うようなことを語った。(彼らの方が成功したことも何度もあった。)第2夜のキーノート(やはり深夜 0 時に始まった)は Apple 社の Steve Hayman が急病の Jordan Hubbard の代役として講演した。Steve は Apple の教育関係大規模設置(学校に何千台もの iBook を置く、といったようなこと)での経験や、長年にわたる Unix での仕事をもとに語り、彼の話は聞いて面白く、役にも立つ話となった。AppleScript Studio のような開発ツールを使ってグラフィカルなインターフェイスとコマンドラインのユーティリティを融合させるのがどんなに簡単か、ということがよく分かった。+2 点。
無料のワイヤレスインターネットアクセス。ずっと以前から、MacHack で無料のワイヤレスインターネットアクセスが提供されるのは至極当然のことだったが、今年は特にネットワーク関係の問題が全く起こらなかったという点で特筆すべき年になった。いつもネットワークを運営している Steve Yuhasz は、参加者全員が固定 IP 番号に登録するように要請することによって問題を回避することができたのかもしれない。少なくとも、ネットワークの問題が起きた時に誰がその原因なのかという混乱を避けることはできるようになった。そういうわけで今年はネットワークアクセスに何の問題もなく、Speakeasy から提供された T-1 接続も、緊急メンテナンスのために何時間か止まった以外はスムーズに働いてくれた。また、カンファレンス全体が SubEthaEdit によるノート取りを運営するまでには至らなかったが、ADHOC ショーケースの時間に限り私がそれを運営し、何人もの人たちが後日私にそのノートが欲しいと連絡してくれた。+1 点。
割引販売。私たちが出席者に Take Control 全製品の 50% 割引を提供していた以外、今回は私の知る限り他には割引販売がなかった。0 点。
無料提供品。これはそれこそあらゆるものが提供されていた。出席者の誰もが、O'Reilly の本や、さまざまの t-シャツ、マグ、ステッカーなどを抱えて帰宅した。高額賞品としては Nvidia から、ハイエンドのビデオカードが多数くじ引きの景品として提供された。+1 点。
軽食。ADHOC は軽食を提供したり飲み物を常備したりするだけでなく、昼食を日に2回、ブランチを1回、ピザの夜食を数回、それに、バイキング式のディナーにアイスクリームタイムまで用意してくれる。軽食や飲み物は典型的なジャンクフードになりがちで、だからこそ私たちはフルーツを買うためのお金を提供したのだったが、とにかくお腹が空く要因は皆無だった。私が不満に思ったのはたった一つ、ホテルの食事が今年はいま一つで、去年のような素晴しさが無く、はっきり言って標準以下だったということだけだ。+1 点。
楽しさ。人々がどれほど ADHOC で楽しい時を過ごしているのかを文字にしてお伝えするのはほとんど不可能に近いが、毎年休暇の時間をこのために使っている人も多いと言えば分かって頂けるだろうか。公平に言い添えれば、通の人と気軽に会話を交すのが苦手な人にとっては、カンファレンスの楽しさのランクが多少下がるかもしれない。でも、プログラマーではない私にとってさえ、ここでの経験は星の輝きのように素晴しかった。+2 点。
コミュニティ。ADHOC の目的は何かと言えば、それはコミュニティの一言に尽きる。ホテルのロビーではどんな時でも参加者たちが思い思いに座り、自分たちのハックに取り組んだり、あるいは他の人たちとお喋りをしたりしている。商談が成立し、人との絆が深まり、お決まりの別れの言葉と言えば「また来年会おう、もしもその前に会わなければね」だ。若者たちも、ただ参加させてもらっているというだけではない。積極的に歓迎されて、望まれて参加しているのだ。思うに、このカテゴリーで否定的なことが言えるとすればそれはただ一つ、もっと大勢の女性が参加するようになったらいいのに、ということだけだ。今年も、例年と全く同じの雰囲気だった。+2 点。
もう一度繰り返すが、この採点結果をこの前 Macworld Expo を採点した結果と比べてみても意味はない。それはりんごとみかんを比べるようなものだ。この採点結果は、皆さんが来年参加するかどうかの判断材料にして頂ければと思う。もちろん私は来年も出席する。そして、今年参加を取り止めた常連の人たち、今年はあなた方にお会いできなくてとても残念だった。これはあなた方にとってもロスだったと思う。また来年会おう、もしもその前に会わなければね!
文: Matt Neuburg <[email protected]>
訳: 佐藤浩一 <koichis@anet.ne.jp>
訳: 古川敬章 <tac@mac.com>
以前私は TidBITS で、Macintosh でのフォント管理の問題や自分のマシンでそれをどのように軽減しているかについていくつか記事を書いた。私は、長い間DiamondSoft 社の Font Reserve しか使っていなかったが、Mac OS X で問題が発生してしまった。初期の頃は多くの Mac OS X フォントをサポートしておらず、 Classic での起動は不安定だった。そのため、Extensis 社の Suitcaseを試してみて、一年程は喜んで使っていたがついに Panther で問題が発生し、新バージョンがリリースされたものの遅くて頼りにならなかった。さらに、その頃までには Extensis 社が Font Reserve を買収したため健全な競争が終わってしまい、両方の製品から活気が見られなくなった。こうして、Panther が出てからは私の著書“Take Control of Customizing Panther”電子本で述べている通り、フォント管理は Apple 標準の Font Book を使うくらいで最小限にしていた。
<http://db.tidbits.com/getbits.acgi?tbart=04180>(日本語)フォント管理最前線
<http://db.tidbits.com/getbits.acgi?tbart=06751>(日本語)Font Reserve が Mac OS X に
<http://db.tidbits.com/getbits.acgi?tbart=06797> (日本語)Suitcase 10 で旅してみる
<http://db.tidbits.com/getbits.acgi?tbart=07248>(日本語)Extensis が DiamondSoft を買収
<http://www.tidbits.com/takecontrol/panther/customizing.html> (日本語) Take Control of Customizing Panther 日本語版 - Panther のカスタマイズ
しかしながら最近、フォント管理をまた始めてみようかと Insider Software社の FontAgent Pro を調べてみた。このプログラムの初期バージョンを試してみたのだが、少しやりすぎだと思ったので封印してしまった。インストーラは何故か私のパスワードを入力するよう要求し、また既にインストールしてあるフォントを管理しようと試み、さらにフォントをインポートした時何百もの“復旧”をしたと報告したが、その作業を行う許可をした覚えはなく何をしたかの説明も無かった。しかし、現行の FontAgent Pro 2.1 は比べ物にならないくらいユーザーフレンドリーだ。インストールされているフォントを管理できるし(ただし /システム/ライブラリ/Fonts には手をつけない)、次回起動時に選択したフォントが使えるよう設定する起動項目をインストールすることもできるが、これらは自分で好きに決められる初期設定なのだ。一般的に言って、FontAgent Pro はシンプルで信頼できる感じがする製品になった。
<http://www.insidersoftware.com/FontAgent/fontagentpro/>
見た目は? -- FontAgent Pro 使用時は、FontAgent Activator という不可視のバックグラウンドアプリケーションによりフォントが使用可能にされる。つまり、FontAgent Pro は基本的に FontAgent Activator へ指示を出すだけのウインドウなのだ。FontAgent Pro を終了した後でもフォントは管理されている (この構造は Font Reserve と似ている。Font Reserve はそれ自身が不可視で Browser がインターフェースだ)。
FontAgent Pro ではライブラリとセットと呼ばれるものを使っている。ライブラリは要するにディスク上にある FontAgent Pro がフォントを集めたフォルダのことだ。セットとはライブラリのフォントをいくつか集めた概念的な集合であり、基本的にいくつかのフォントを同時に使用可能あるいは使用できないようにするための方法である。セットは入れ子にでき、一つのフォントが複数のセットに含まれていても構わない。
FontAgent Pro ウインドウは 3 つのエリアからなっている。最初の 2 つのエリアはほとんど同じだ。どちらもライブラリあるいはセット毎にフォントのリストを表示でき、状況に応じてフォントをファミリー毎にグループ化することも可能だ。1 番目のものはフォントをアルファベット順に並べることもできる。3 番目のエリアでは順番にフォントをプレビューし比較することができる。各エリアの大きさは変更することができ、最初と最後のエリアは完全に隠すことも可能だ。
ウインドウを使うのは簡単だ。最初の 2 つのエリアはアウトラインを示し、フォントは階層的にフォントファミリー、セット、あるいはライブラリ毎にまとめて表示される。このアウトライン内の項目は隣に 2 つのアイコンがあり、それぞれ使用可能かどうか、そして共有されているかどうかを示している (フォントの共有については、また後で触れる)。アイコンをクリックすれば、その項目の状態が切り替わる (つまり、項目がフォントの場合はそのフォント、あるいは項目がフォントファミリーやセット、ライブラリの場合は下層のフォント全部)。でなければ、項目を選択した後ウインドウのツールバーにあるボタンをクリックする。セットもツールバー上のボタンを使って作成でき、同じエリア内あるいは別のエリアへドラッグするというとても分かりやすく直感的な方法により、フォントを移動したりセットにコピーすることが可能である。この階層構造におけるアウトラインはキーボードからも操作することができる。選択を上下させたり、フォルダと開いたり閉じたりしたり、名前の最初の文字をタイプすることによりその項目にジャンプすることも可能だ。
何をするか -- 以前の記事で述べてきたように、フォント管理における私の要求はとても単純だ。フォントを数多く使うわけでもなく、特定のフォントが必要な作業をいくつも抱えているわけでもない。ましてや、出版や製版業界の人間でもない。しかしながら、ここで私のフォントに関する基本的なニーズと FontAgent Pro がそれにどのように答えてくれるかをいくつか述べたい。
(1) 私は、どのようなフォントを持っているのか、非常に混乱してしまう。そしてこれは、私の Mac OS X フォントがスーツケースに入っているという事実によりさらに悪化してしまう。なぜなら、これは System 7 から Mac OS 9 までのようにフォルダとして動作しないので簡単に中身を見られないからだ。フォントファイルやフォルダ全体をウインドウにドラッグしてフォントを FontAgent Pro に渡すと、それは FontAgent Pro ライブラリフォルダにコピーされる。ビットマップであったり、古いタイプのビットマップ付き TrueType フォントだったためスーツケース内に存在していたフォントは、一旦バラバラにされフォントごとに新しいスーツケースへ入れられる。さらに、フォントはファミリー別にアルファベットの字の名前が付いたフォルダ内に用意される。さらにFontAgent Pro は、ビットマップと Postscript ファイルがフォントファミリーとしてきちんと組み合わされるかどうかチェックする。こうして、Finder でもFontAgent Pro 同様どのようなフォントがあるかどうかが一目でわかる。
つまり、FontAgent Pro へ Garamond の ビットマップスーツケース 3 つと沢山の Postscript フォントファイルを渡した場合、これらは“G”フォルダのITC Garamond サブフォルダに入れられ、元のスーツケースは Garamond Book、Garamond BookCondensed などと名付けられた 14 のスーツケースに再構成される。
(2) 私は、Mac OS X から Classic のフォントを使用可能にしたい。理由は、FrameMaker など Classic でしか動作しないプログラムをたまに走らせる時、特定のフォントを使用可能にしたいからだ。必要なフォントを Classic のフォントフォルダにインストールしすべての Classic プログラムで使えるようにしてもよかったのだが、そうすると同時に Mac OS X でもそれらのフォントがいつでも使用可能になってしまう (もちろん Font Book を使えばこれを防げたが、Font Book とサードパーティー製のプログラムを同時に使うことは私には紛らわしい)。FontAgent Pro は、Mac OS X にて使用可能になった Classic 互換フォントは何であれ Classic アプリケーションで使用可能にする機能を持っている。
(3) 私はコンピュータを複数持っており、それらの間でフォントを調整することは悪夢のようだ。もし私が Workgroup Edition の FontAgent Pro ライセンスを持っていれば、このような心配はしなくて済む。なぜなら、2 台のコンピュータが同じローカルネットワークにあるあいだは、お互いにフォントを共有できるからだ。例えば、マシン A が問題のフォントを FontAgent Pro ライブラリに持っているとしよう。マシン A の FontAgent Pro でそのフォントの“共有”アイコンをクリックする。マシン B の FontAgent Pro で 2 番目のエリアを共有タブへ変更すれば、何と Rendezvous の魔法のおかげであたかも共有フォントをすべて含むセットのようにマシン A が表示される。そのおかげで、マシン B でそれらのフォントをあたかもマシン B に本当に存在するかのように使用可能にでき、ほかのフォントと同じようにすべてのアプリケーションで使えるのだ。このプロセスはとても簡単で、本当に素晴らしい。
FontAgent Proに足りないもの -- 私は最小限のフォントしか必要ではないが、FontAgent Proを使う上でいくつかひっかかる部分があった。これは気づいた点のリストであって批判ではない:FontAgent Proの今ひとつな部分、動作が変な部分、あまり役にたたない部分などを挙げるだけだ。それらの問題点はFontAgentを使うのをやめたいと思わせるほど深刻ではないが、他のフォント管理ツールを引き続き探し続ける要因ではあり、ユーザによってはそれが重要なこともあるはずだ。
FontAgent Proは自分が管理していないフォントについての情報は何も言ってくれない。つまり、どのフォントがシステム経由で有効になっており、あるフォントを有効にすることでシステムのフォントとある種の衝突を起こす可能性があるかどうかも調べるすべがない。また、FontAgent内部で起こりうるコンフリクトも防いでくれない:2つの名前が同じだが中身の違うフォントを、システムはそれらを区別してくれないにもかかわらず、インポートして有効にできてしまう。(一方Suitcaseはすべての有効なフォントを表示し、フォントを有効にする時に起こりうる衝突を警告してくれる。)「フォントをベリファイする」設定もできるが、それでもフォント内部のおかしい部分は警告してくれない;例えば、私は以前使えていた古いTrueTypeフォントを持っているが、Mac OS Xでは使えず(一例は、"A"をタイプすると"L"が出てくるというもの)、FontAgent Proを使っても原因はさっぱり分からずじまいである。また、同一フォントのバリエーション(Palatino, Palatino Bold, Palatino Italicなど)を含むTrueTypeフォントのスーツケースをインポートすると、FontAgent Proにはバリエーションが表示されなかった。(一方Font Bookはそれらを表示してくれる。)
FontAgent Proのインタフェースはおそらく少しシンプルになりすぎている。フォントを取り出して、どのセットに属するかを調べることができない。All Fontsペインのフォントの中からキーワードを含むフォントを検索して、限定して表示することができるが、現在フィルタされたリストが見えていることを示すものが何もなく、フィルタリングを取り消すボタンもない。
またセットに関する情報を書き出す方法が何もない。つまり、2台のマシンにFontAgent Proがある場合、同じ2つのセットを使って簡単に設定することができない。(一方Font Reserveはセットの設定の読み込み/書き出しが可能。)フォントのプレビュー機能は、Unicodeフォントがその地域の文字でサンプル表示されないので、あまり便利ではない。(一方Font BookはCyrillic Unicodeフォントはキリル語文字で表示し、Hebrew Unicodeフォントは主にヘブライ語を用いて表示する。)
FontAgent ProのメインウィンドウはMac OS Xでありがちな問題をかかえている:ウィンドウが前面に出ていない場合もボタンが有効になったままだ。つまり、ウィンドウが後ろにある際に切り替えるためにクリックする時、うっかりどれかのボタン、たとえばフォントセットの削除ボタンを気づかず押してしまう可能性がある。さらに気づいたのだが、環境設定のウィンドウが開いているが他のウィンドウの後ろに隠れている場合、メニューで環境設定を選んでもそのウィンドウが前面に出ない。これは何も起こらなかったかのように見えるので、混乱を招く。
最後にFontAgent Proのフォントを有効にする機能について触れるべきだろう。この機能は任意のアプリケーションの書類で、必要なフォントが、FontAgent Pro ライブラリにある場合には、その都度有効になるように意図されたものである。この機能を追加するプラグインはInDesign, Photoshop, Illustrator, QuarkXPress用に用意されている。他のプログラムでは自動的に動くはずになっている。しかし私が試したところでは言語特化のフォントを含んだMicrosoft Word書類では動作しなかった。私にとっては致命的ではないが、この機能に依存するユーザもいるだろう。
結論 -- FontAgent Proはシンプルで使いやすいものだ。システムに問題を起こさずフォントを素早く、安定して有効にしてくれる。1つのウィンドウにまとまっておりすっきりしていて分かりやすい。セット内にセットを作る機能はとても良く、複数のライブラリを扱う機能はそのままでは衝突を起こすフォントの複数のコピーを区別する(出版の環境ではよくある問題)のに便利で、Rendezvousベースのフォント共有はうれしい。Classicプログラムでも問題なくフォントを有効にできる。これらの機能だけでも十分FontAgent Proを使う理由になるだろう。しかし一方、FontAgent Proはフォントの衝突やフォント内部の問題を警告してくれず、いまだに謎のフォントの世界を手探りでさまよっているような気分だ。FontAgent Proは私の想像上の、理想のフォント管理ツールほどは助けになっていない。
FontAgent Pro 2.1.1は90ドル(Workgroup Editionは140ドル)だ。Mac OS X 10.2.8または10.3.2以降が必要。30日間試用可能なバージョンがダウンロードできる(2.8MB。Mac OS 9版やWindows版もある。)
<http://www.insidersoftware.com/downloads/fontagent.html>
文: TidBITS Staff <[email protected]>
訳: 佐藤浩一 <koichis@anet.ne.jp>
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, , 日本語版最終更新:2005年 12月 26日 月曜日, S. HOSOKAWA