今週の特大号では、Apple と Microsoft が競い合っているようだ。Apple は記録破りの 1億 600万ドルの四半期純利益を計上し、iTunes Music Store では 1億 5,000万曲を販売した。また、6 つの“Mini” Apple Store も開店したばかりだ。一方 Microsoft は Virtual PC 7 (G5 のサポート付き) を出荷中で、Microsoft Office 2004 にはバグ修正アップデートも出ている。また今週は Charles Maurer がデジタルカメラのテクノロジーにズームインし、Adam と Matt Neuburg がラジオ番組で競演する。それから、新しい TidBITS スポンサーとなった Rogue Amoeba を歓迎したい!
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Rogue Amoeba がTidBITSのスポンサーに -- 私たちは、オーディオ・ユーティリティー企業 Rogue Amoeba Software が長期スポンサーになったことを歓迎してお知らせする。彼らは、おそらく Audio Hijack と Audio Hijack Pro によって最も良く知られていることだろう。Audio Hijack はあらゆるアプリケーションからのあらゆるオーディオ・データを取り込む。 Audio Hijack Pro はより多くのオーディオ・フォーマットに対応し、多種多様な方法で取得した音データの音質を向上させることやさらに多くのことができる。これらのアプリケーションはあなたの持っている古い LP レコードから音楽を録音したりインターネット・ラジオ番組の録音に信じられないくらい威力を発揮する。 Audio Hijack Pro をテストするときに私が最初にしたのは、長距離の自動車旅行のときに iPod で聴くために、BBC ラジオで放送されているHitchhiker's Guide to the Galaxy の最新エピソードを録音することだった。 Rogue Amoeba は彼らの Macintosh オーディオに関する専門知識を使って Nicecast (インターネットラジオ放送局を可能にする) と Detour (異なるプログラムの音声データを別の出力機器に転送する)を作った。さらに、彼らは、二つのフリーのアプリケーションも作っている。異なるオーディオ入出力ソースを素早く切り換えることが可能になるものとあらゆる入力機器からの音声を鳴らすというものだ。私は、このような小さなメーカーが自分に合った小さなニッチ市場を開拓するのを見るのが大好きだ。それらが凄い名前と傑作のマスコットを持った可愛らしい企業であるときはなおさらだ。あなたの興味が、自分だけのビープ音やインターネット・ラジオ番組の録音することであるとか、ビニール製レコードから MP3 を作ることであるとか、単にあなたのMac の入出力を思い通りにしたいだけなのかにかかわらず、オーディオに少しでも興味があるなら、 Rogue Amoeba のソフトをチェックすることは役に立つだろう。私たちは彼らをスポンサーに加えられたことを喜んでいる。 [ACE](笠原)
<http://www.rogueamoeba.com/tb/>
<http://www.bbc.co.uk/radio4/hitchhikers/>
Apple が1億600万ドルの第4四半期利益を発表 -- 先週、Apple Computer は、過去9年間で最高の第4四半期決算を発表しアナリストと市場を驚かせた。2004会計年度の第4四半期の売上げは 23億5,000万ドルに跳ね上がり、1億600万ドルの利益を上げたことが報告された。さらに、 Apple は200万台を上回る iPod をこの4半期間に出荷し、前年同期比37%もの増収を果たした。これには、400万ドルのリストラ費用も含まれている。四半期の総利益率は27%と高水準を維持しており、世界市場での売上げは総売上の 37%を示している。注目に値するのは、Apple の小売店による売上げが前年同期比 95% も増加していることだ。
<http://www.apple.com/pr/library/2004/oct/13results.html> (日本語)アップル、第4四半期の業績を発表
<http://www.apple.com/ipod/>(日本語)アップル - iPod
Apple は、G5プロセッサーの不足による発売遅れにもかかわらず、iMac G5 が力強いスタートを切ったと述べた。Apple は、この四半期に83万6,000台のMac を出荷した。そのうち半数以上は iBook と PowerBook で占められていた。Apple は、前年同期比500%増加となる202万台の ipod を出荷した。そのうち、約6%は業務提携に基づいてHPにより製造されたものだった。恐るべきは、 Apple が以前に売り上げたすべて(570万台) の3分の1にあたる数の iPod をこの3ヶ月間に出荷したことだ。そして、この企業は、次の4半期(消費集中期のホリデーシーズンを含む)の売上げが280億ドルから290億ドルの間になることを予想している。 [GD](笠原)
Apple 1億5,000万曲を販売 -- Apple は iTunes Music Service で1億5,000万曲以上を売り上げたことをアナウンスし、彼らがオンライン音楽産業における400ポンドのゴリラのような存在であることを思い起こさせた。次の一手は、買い物集中のホリデーシーズンに間に合った。それはTarget とApple 自身の小売店に加えて、Best Buy で iTune ギフトカードが買えるようになることだ。昨日の Apple による決算結果をフォローするアナウンスで、この第4四半期に200万台を越える iPod が出荷されたされたことが付け加えられた。Apple は400万を上回る曲が一週間で販売されたと述べた。これは年間売上曲数は2億を上回るペースだ。
<http://www.apple.com/pr/library/2004/oct/14itunes.html>(日本語)iTunes Music Storeからのダウンロード件数、1億5,000万曲を超える
<http://www.apple.com/itunes/>(日本語)アップル - iPod + iTunes
このアナウンスが第4四半期の最後に行われたことで、私は Apple の「他の音楽製品」(iPod 以外のすべて)が9,800万ドルを最後の4半期でもたらしたことが分かった。それは、荒っぽく見積もって前年同期の3分の1以上の増加になる。iPod からの収入とあわせれば、Apple の収入の4分の1はコンピューターではなく音楽によっているということを意味する。[GD](笠原)
Apple がミニアップルストアを開店 -- Mac や iPod を購入する際の購買経験を改善するために、 Apple は6店の新しいアップルストアを開いた。それらは、これまでのものに比べて「ミニ」なレイアウトを採用している。小さなデザインのために、製品やインフォメーションは長い壁に沿って置かれ、メインフロアは空けている(その壁はアルミニウム板で作られていて、Finder を実体化したようだ!)。一つの小売カウンターは Genius Bar の倍の広さだ。最も興味深いのは、一方の壁に作られる新しくできた self-checkout kioskだ。ユーザーはそこで、店員の手を借りずに製品をスキャンして買ったりすることができる。ミニストアは一般ユーザーに対して振り向けられているように見える。iPod がポータブルや iMac と同様強く押し出されていて、 eMac やPower Mac G5 は全く見られない。現在、Apple は93の Apple Store を合衆国と日本に展開している。[JLC](笠原)
<http://www.apple.com/retail/>(日本語)Apple Retail Store
<http://www.apple.com/pr/library/2004/oct/14retail.html> (日本語)アップル、新しい"Mini"アップルストアのデザインを披露
Take Control of Upgrading to Panther がオランダ語に -- 毎週TidBITS をオランダ語圏の Macintosh ユーザーに送り届けている、疲れを知らないオランダ語翻訳チームが Joe Kissell の "Take Control of Upgrading to Panther" 翻訳版を届けてくれた。他の翻訳版と同様に、それは7.5ドルで3分の1が翻訳者に渡される。早期購入者に対する私たちのサポートポリシーを引き継いで、既に英語版 "Take Control of Upgrading to Panther" を購入したオランダ語圏の人にはオランダ語翻訳版が無償で提供される。もし、あなたの英語版電子ブックの表紙にアップデート・チェックボタンがあれば、それをクリックすることで翻訳版のダウンロードページにアクセスできる。もし、あなたの電子ブックが古くてアップデート・チェックボタンがないのなら、eSellerate から新しいバージョンの電子ブックをダウンロードすることができる。ただし、あなたが領収書を持っているか、私たちがアップデートメカニズムを取り入れる前に購入したユーザーでフリークーポンを持っているかする必要がある。ベルギーの読者にも、オランダの読者と同様に直接ダウンロードできるリンクをお送りするつもりだ。しかし、もし全てがうまくいかない場合は、Tonya に連絡を取るためのFAQページをお使いいただきたい。[ACE](笠原)
<http://www.tidbits.com/takecontrol/nl/panther/upgrading.html>
<http://www.tidbits.com/takecontrol/faq.html>
The Mac Night Owl Live で TidBITS の一夜 -- 2004 年 10 月 15 日、Gene Steinberg 司会のラジオ番組“The Mac Night Owl Live”は TidBITS のダブルヘッダーとなった。寄稿編集者の Matt Neuburg と私が二人とも、Geneと対談したのだ。Matt の話題は彼の二冊の新刊書、Word 2004 の新機能について書いた Take Control 電子ブックだ。Gene と私の対談の大部分は Appleの 1億 600万ドルの四半期利益と、こういった数字が実際何を意味するのかといった議論に費やされた。(私たちの ExtraBITS ページで Apple の四半期業績についてレポートしてくれた Geoff Duncan、Mark Anbinder と Glenn Fleishman に感謝したい。そのお陰で私の声は本来よりもずっとしっかり準備できた自信に満ち溢れていたのだから!)この“The Mac Night Owl Live”はインターネットでも番組アーカイブで聴くことができる。一見の価値あり!
<http://www.macradio.com/Friday/>
<http://www.tidbits.com/extrabits/>
文: Adam C. Engst <[email protected]>
訳: Mark Nagata <nagata@kurims.kyoto-u.ac.jp>
数週間前のこと、Edelman の宣伝担当者で Microsoft の Macintosh Business Unit で働いている人が私に連絡してきて、Office 2004 で新設されたツールの Microsoft AutoUpdate ユーティリティに、自動アップデートが施されると知らせてくれた。これを記事にする価値があるかどうかを確かめようと、私は「つまり、君が言っているのは、AutoUpdate が自動的に動き始めるのがより良くなるために、AutoUpdate が自動的に動き始める、ということかい?」と尋ねてみた。彼がイエスと答えたので、私はこれは無人の森の中で木が倒れたのと同じ種類のニュースになると判断した。
でも、冗談は抜きにして、実際のところこの 927K のアップデートを Microsoft AutoUpdate に施すのはぜひとも実行しておくべきだ。(あなたの起動項目リストで Microsoft AU Daemon をオフにしているのなら、あなたの Applications フォルダの中にある Microsoft AutoUpdate を探して手動で起動させることもできる。)なぜなら、このユーティリティは今重要な任務を持っているからだ。それが、22.8 MB もある Microsoft の Office 2004 用の Service Pack 1 をダウンロードしてインストールする、という任務だ。この Service Pack 1 は Office スイートの各プログラムにおいて、数々のセキュリティ関係、ならびに安定性に関する問題を修正するものだ。
<http://www.microsoft.com/mac/autoupdate/description/AUOffice2004111EN.htm>
私の観点から最も重要に見えるのは、Microsoft が Word 2004 のあのしゃくに障るテキスト選択のバグを踏み消してくれたことだ。単語単位で選択をすると、選択域の前の単語も選択に含まれてしまうことがしばしばあったのだ。この修正だけでも、Service Pack 1 は私にとって充分意味がある。 Word 関係の他の改良点としては、FileVault が動いている時に AutoRecover が正しく動作するようになったこと(非常に特殊な状況以外では FileVault の使用はお勧めできないことをここで繰り返しておこう)や、Font メニューでフォントを選択した時にテキストのフォントが正しく変わるようになったこと、それから Swiss German 校正ツールが正しく検出されるようになったことなどがある。その他、Word 2004 の新機能についての助言は、ぜひ新刊の二冊の“Take Control of What's New in Word”電子ブックをご覧頂きたい。
<http://www.tidbits.com/takecontrol/word-1.html>
<http://www.tidbits.com/takecontrol/word-2.html>
この Service Pack 1 により、PowerPoint 2004 ではムービーをスライドショウで再生する際のパフォーマンスが向上し、フォント関係の互換性も向上、またルーラがオンになっている時のオブジェクトのドラッグが修正されている。Excel での変更点はただ一つで、これは Word や PowerPoint にも施されている。それは、マクロを含む書類を開いた時のセキュリティの向上だ。
<http://support.microsoft.com/?kbid=886633>
Entourage 2004 にも多数の修正がある。接続エラーが起こった時は Entourage アイコンが Dock で跳ねないようになった。送信済みのメッセージが Microsoft Outlook の Info Bar で送信済みステータスを表示するようになった。モデムの利用法が改善された。SSL 上の SMTP が改善された。iPhoto からの写真を添付する動作が向上した。Microsoft User Data フォルダがネットワークボリューム上にあっても動作するようになった。Entourage のために Adobe の CS 製品のキーボードショートカットの一部が働かなくなっていたのが直った。通常の POP サーバと Domino IMAP サーバの両方に接続した時の挙動が向上した。Entourage 2004 の新機能についての助言は、電子ブック“Take Control of What's New in Entourage 2004”をご覧頂きたい。
<http://www.tidbits.com/takecontrol/entourage-2004.html>(日本語)Take Control Ebooks: あなたの知りたいことがすぐわかる
最後に、Remote Desktop Connection client 1.0.3 において、ウィンドウを最小化してデータを Macintosh アプリケーションにコピー・ペーストする際の安定性が向上した。その他にも安定性が改良されたところがあり、Mac OS X 10.3 やそれ以降で使う人や、PowerPC G5 プロセッサを持つ Mac を走らせている人にはありがたく思えるだろう。
文: Mark H. Anbinder <[email protected]>
訳: Mark Nagata <nagata@kurims.kyoto-u.ac.jp>
Microsoft から、長らく待ち焦がれた Virtual PC のアップデートがリリースされた。これは、一年半前に Connectix から買収されたエミュレーションソフトウェアだ。今回の Virtual PC 7 は、スタンドアロンの製品としても、または Microsoft Office Professional の一部としても購入できる。新機能としてはパフォーマンスの高速化や、Mac の高速グラフィックスプロセッサとの統合の強化があり、Windows から Mac のプリンタへ印刷させるのが易しくなって、さらにおそらくこれが最も重要なことだろうが、Power Mac G5 との互換性が追加された。
<http://db.tidbits.com/getbits.acgi?tbart=07087>(日本語)Microsoft が Virtual PC を買収
<http://www.microsoft.com/mac/products/virtualpc/virtualpc.aspx?pid=virtualpc>
Virtual PC が Apple の旗艦たる Power Mac G5 デスクトップ機と互換性がなかったことは、これまで Apple にも Microsoft にも恥をかかせる結果になっていたので、この問題が修正されたことだけをとっても Virtual PC 7 にはニュース価値があると言えるだろう。この G5 機が発表されたのは 2003 年 6 月の Apple の Worldwide Developer Conference でのことで、Microsoft が Virtual PC 6.1 をリリース(そして Office Professional にバンドル)したのが 2003 年 9 月のこと、当時はこれが G5 では動かないという限定条件付きでリリースされたのだった。
<http://db.tidbits.com/getbits.acgi?tbart=07325>(日本語)Virtual PC が新 Office で再登場、しかし問題も
Microsoft は Virtual PC 7 で 10% から 30% のパフォーマンスの向上があると主張している。これは必要システム条件の下限に近い環境のユーザーにとって歓迎すべきことだろう。(Virtual PC は 700 MHz 以上の PowerPC G3、G4、または G5 のコンピュータと、少なくとも 512 MB の RAM を必要とする。)
現在入手可能な英語版としては、Windows XP Professional 付きの Virtual PC 7 が $250、Virtual PC を含む Microsoft Office 2004 Professional Edition が $500 となる。Office Professional のアップグレード版は $330 で入手できる。同社によればフランス語版、ドイツ語版、日本語版、それにスウェーデン語版も数ヵ月以内に利用可能になるし、Windows XP Home や Windows 2000 Professional に対応したものやスタンドアロン版(OS の付属していないもの)の Virtual PC も予定しているという。
文: Charles Maurer
訳: 羽鳥公士郎 <hatori@ousaan.com>
訳: 亀岡孝仁 <takkameoka@earthlink.net>
訳: Mark Nagata <nagata@kurims.kyoto-u.ac.jp>
私の前世は商業写真家だった。その人生の終わりに、私はすべてのスタジオ機材とカメラを売り払った。ただ1つのカメラを除いて。それは戦前の映画でよく見かける Speed Graphic プレスカメラに似た、黒い蛇腹のついた珍妙な機械、Horseman 985 だ。ロールフィルムを使い、三脚の上ではカメラの前部と後部を好きな方向にねじることができた。両手に抱えれば、「Front Page」に出演している気分にもなれた。こんなに便利なカメラは見たことがなかった。しかし今や、デジタルセンサーがレンズの光学的限界を押し上げ、ソフトウェアは皮の蛇腹よりも柔軟になった。色を調整するだけでなく、光学的な操作もできるようになった。今年、ほどほどの値段の(こういうものはだいたいそうだが)デジタル一眼レフが私の Horseman に取って代わった。もはや私がフィルムを使うカメラを持つなどとは想像できない。
この記事では、デジタルカメラの技術について調べてみようと思う。それも普通でない仕方で。つまり、基本的な原理から攻めてみるつもりだ。この方法は、はじめは抽象的な机上の空論のように見えるかもしれないが、それも長くは続かないはずだ。科学的な原理を理解すれば、たくさんの誇大広告を無視することができ、多くの金額を節約できるということがわかるだろう。
光電セル -- ここに小さな窓ガラスがあって、その中に特別な金属の小片が埋め込まれており、金属の小片には導線がつながっているとしよう。光子がガラスに衝突する。その衝撃は金属中の電子を不安定にする。その電子は導線中の電子に衝突し、それが導線の先の電子に衝突し、それがさらに多くの電子に衝突する、という具合に、運動する電子の波が導線を伝わってゆく。つまり、電流が生じる。たくさんの光子がガラスに衝突すれば、それだけたくさんの電気が流れる。
これを光電セルという。つまり、光の強さに反応するセンサーだ。さて、このような光電セルを何百万と集めて格子状に並べ、それを切手の大きさに縮小したとしよう。この切手サイズの光電セルの集まりを、カメラの中で通常フィルムがある位置においてやる。その上にレンズが像を投影する。一つ一つのセルが像のごく小さい部分を受け取って、その部分の光の量に比例した電荷に変換する。これがつまり光センサーだ。
光センサー上の電荷の行列全体が、画像全体を電気に置き換えたものになる。しかし、これだけでは、画像の強度に対応するだけだ。光の強度は、人間の目には色のない明るさとして解釈されるから、この光センサーは色のない、白黒写真の情報を与えることになる。光センサーの出力をプリンタの入力に送り、プリンタが電圧に反比例した量のインクを(電圧が低ければインクをたくさん)紙の上にまけば、白黒写真が現れることになる。光センサーの出力を、アンプを介して直接プリンタに接続することもできるし、出力をいったんデジタル数字に変換して、そのデジタル数字をプリンタに送ることもできる。前者の方法がアナログで、後者がデジタルだ。デジタル数字の値域が大きければ、黒と白とのあいだの階調が細かくなる。階調が十分であれば、プリントアウトは連続階調の写真のように見える。
光センサーに色を記録させるには、目が光の波長を感じているように、光センサーにも光の波長を感じさせる必要がある。人間は、長い波長を弱い赤として、短い波長をとても弱い青として、中間の波長を強い緑として受け取る。白黒光センサーに色を記録させるいちばん簡単な方法は、それぞれのセルにフィルターをかぶせ、短い波長、中間の波長、長い波長のいずれかに反応するようにすることである。人間の目は中間の波長に高い感受性を持っているから、中間波長用には他の2倍のセルを使うのが実用的だ。つまり、青を1つ、赤を1つ、緑を2つということになる。このような、赤・緑・青・緑のフィルター付きセルの集合が Bayer 光センサー(発明者の名前をとって名付けられた)であり、ほとんどすべてのデジタルカメラに使われている。
ここで、光の点が4つのセルの集まりよりも小さく、1つのセルだけに当たっているとしたら、どうなるだろうか。光点がすべての波長を含んだ白色光だったとしよう。白い光点が青にフィルターされたセルの上にあれば、その点は画像の中では青になる。白い光点が赤にフィルターされたセルの上にあれば、画像には赤い点が現れる。緑にフィルターされたセルの上にあれば、その点は緑に見える。これでは画像にたくさんの誤りが生じることになるので、メーカーはセンサーの前に拡散フィルターをおいて、画像をぼかすことで、小さな光点が複数のセルの上に広がるようにしている。
このようなセンサーでは、4つのセルが、画像の一部分についての完全な情報を捕らえる最小の単位となることに注意してほしい。ということは、4つのセルが画像の基本的な要素、つまり「画素」または「ピクセル」となる。残念なことに、メーカーは、自分たちの製品をより印象づけるため、1つのセルを1ピクセルと数えている。これはちょうど、234 本の弦で作られたピアノが、88音ではなく 234 音を出すことができるといっているようなものだ。センサーのセルレベルでの機能とピクセルレベルでの機能は異なるから、広告は無視して、ピクセルとセルとを適切に区別することが大切だ。この記事でもそうすることにする。
より単純なアプローチとしては、それぞれのセルがすべての波長に感受性を持つようなセンサーを設計することがあるだろう。そのようなセンサーは 2002 年に Foveon 社が特許を取って、現在実用製品の第二世代が市販されている。Foveon のセンサーは色付きのフィルターを使わず、その代わりに、光感受性物質をシリコンの中に3つの異なる深さで埋め込んでいる。光の波長が長ければ、光は半透明のシリコンの奥まで浸透し、より深いところにある光感受性物質を刺激する。Foveon のセンサーでは、1つのセルがすべての波長を含む完全なピクセルを記録できる。(ただし、Foveon は実際の画素数に3をかけて、広告に正当な競争力を持たせている。)
ピクセルはいくつあったらいい? -- 印刷したときに意味のあるもっとも細かいものというのは、人間が見ることのできるもっとも細い線で定義される。目を近づけて読むときの距離(およそ 25 cm)で、正常な視力を持った人が見分けることのできる線というのは、視力表の 20/20(または 6/6)にあたる線、つまり光学解像度の単位でいうと 8 l-p/mm の線よりもわずかに細い線である。(訳注: 視力 20/20 は、日本の視力 1.0 に相当する。)
しかし、これは白黒の線の場合であって、写真用の(印刷用ではない)フィルムに、これほど細い白黒の線を記録できるようなカメラは存在しないので、通常の写真にそのようなものが現れることはない。レンズがこれほど細い線を生み出そうとしても、白と黒は灰色にぼけてしまう。濃い灰色−薄い灰色の線は、黒−白の線よりも太くなければ見えない。通常、細い線の知覚においては、太さが半分になるか2倍になるかするより小さい違いは、実質的に意味を持たない。だから、Schneider-Kreuznach の次の意見は的を得ていると私は思う。「写真の解像度が 4 l-p/mm 程度であれば、その写真を 25 cm の距離から見たとき、文句なくシャープであると見なすことができる。」8 インチ x 12 インチの写真であれば、これは 1,600 x 2,400 ピクセル、すなわち 3.8メガピクセルに相当する。(8 インチ x 12 インチというのは、ほぼ A4 の紙と同じ大きさである。写真のサイズとしては 8 インチ x 10 インチの方が標準的であるが、この方が議論が簡単になる。)
まとめると、400 万画素あれば 8 インチ x 12 インチの写真に含めて意味のある情報はすべてまかなえる。これより細かいディテールは、技術愛好家が拡大鏡で比較をする場合や、自然科学または法医学の分野では意味を持つかもしれないが、通常の目的では意味がない。これは大きなプリントにも当てはまる。なぜなら、大きな写真を 25 cm しか離れていないところから見るということは、私たちが普通にすることではないからだ。このことは、ロードショー劇場の巨大な映像にすら当てはまる。映画を作るときの編集や特殊効果に、日常的に使われているデジタル処理は、どんなにスクリーンが大きいとしても、右から左まで 2,048 ピクセルの情報より多くなることはない。縦の長さは映画のフォーマットによって異なるが、典型的にはおよそ 1,500 ピクセルである。
もちろん、ここにはかなりの逆説がある。シネマスコープの1コマには、明らかに 400 万よりはるかに多くの画素がある。8 インチ x 12 インチの写真を300 dpi のプリンタで印刷したときですら、2,400 ピクセル x 3,600 ピクセルで 860 万画素になる。人間の目は線の太さよりも細かい線の中の不連続性を見ることができるから、大きなプリントにこれだけの余分なピクセルがなかったら、斜めの線がギザギザに見えてしまう。
どんなサイズの写真であっても、またフィルムから作られた写真であっても、300 万から 400 万の情報の要素しか含むことはできないから、十分に拡大された画像は、元の画像には存在しなかった画素から主に構成されることになる。つまり、画素を補間する必要がある。この補間は、フィルムの場合は連続的な光学的調整によって、高解像度のスキャナーの場合は機械的に、そしてデジタル写真の場合はソフトウェアによって論理的になされる。拡大するには補間が必要なので、デジタル写真では補間アルゴリズムが本質的に重要である。ほとんどの場合、センサーの解像度やレンズの品質よりも、補間アルゴリズムの品質の方が重要だ。この点については後述する。
今のところは、実際のところ未来永劫そうなのであるが、(1) 画像に含まれている情報と (2) その情報の表現とをはっきりと区別することが大切だ。両方とも、しばしば画素数で測られるが、両者の意味合いは全く異なっている。写真の中の情報は何らかの数の画素数として記述できる。その情報を補間して、任意の数の画素を増やすことができるけれども、そうしたところで情報が増えるわけではない。ただ、情報をより細かく分割して表現しているにすぎないのだ。
わかりやすくするために、いくつか具体例を挙げてみよう。
よい品質の 8 インチ x 12 インチの写真と、それをタブロイド判の新聞紙一面に引き延ばした写真は、どちらもおよそ 1 メガピクセルの情報を持っている。
よりよい品質の写真と、それを光沢紙の雑誌のページ全体または新聞紙の見開き一面に引き延ばしたものは、およそ 1.9 メガピクセルの情報を持っている。
さらによい品質のスチール写真(最高品質)と、それを光沢紙の雑誌の見開きに引き延ばしたものは、およそ 3.8 メガピクセルの情報を持っている。
もしあなたが 8 インチ x 10 インチの写真用プリンタを持っているなら、下記にリンクした何枚かの写真(およそ 30 MB)を印刷してみて、この異なる情報量を比較してみることができる。これは、他の条件が同じになるようにして、おおよそ上記の解像度で私が撮影したものだ。(このテスト用の写真は、それぞれ 3.4、1.5、0.86 メガピクセルで撮影されている。私は Foveon センサーを使い、低い解像度を実現するには、2つまたは4つのセルを電気的に平均するという組み込みの機能を使った。)写真は、私が手に入れられる限りでもっともよい補間機能を使って、3,140 x 2,093 ピクセルに拡大してある。
<http://www.tidbits.com/resources/751/HighMedLowResolution.zip>
これらの写真は、JPEG 2000 ファイルで、QuickTime ロスレス圧縮を適用し、100 パーセント品質で GraphicConverter を使って保存してある。画像を整えるために、レベル調整をし、空に写ったゴミをとり、PhotoZoom Pro を使って「Photo - Regular」のデフォルト設定で拡大した。この工程には、小幅で適量のシャープ化が含まれている。
これを印刷してみれば、解像度が違っていても、写真の違いが驚くほどわずかであることがわかるだろう。すべての写真はそれぞれ十分にシャープに見えるだろうし、手を伸ばした距離から見れば、すべての写真が同じに見えるだろう。違いを見分けるためには、目を近づけて比較しなければならない。これはなぜかといえば、もちろん、低い解像度の写真に欠けている情報が、人間の目の鋭敏さの限界に近い情報だけであり、それらを見ることが難しいからである。
Bayer 対 Foveon、理論上の比較 -- 今日のカメラは、大きく分けて二つに分類される。Bayer センサーを持つカメラと、Foveon センサーを持つカメラだ。これを書いている現時点では、後者つまり Foveon センサーを使うカメラは、たった二つしかない。まだ発売されていない Polaroid 530 と、こちらはちゃんと本物の Sigma SD-10 とだ。
<http://www.pdcameras.com/usa/catalog.php?itemname=x530>
<http://www.foveon.com/SD10_info.html>(日本語)レンズ交換式デジタル一眼レフカメラSD10 株式会社シグマ
Bayer センサーでは、一つのセルは一つの色しか記録しない。けれども印刷時のピクセルはどんな色にでもなれる。Carl Zeiss がこのことを次のように説明している:「CCD の個々のピクセルには、その前方にちょうど一個ずつのフィルターによる色パッチが付く。そのピクセルは、その色についての明暗度しか感知できない。それならば、ちょうどその場所においての他の二色の明暗度は、いったいどうやって感知するのだろうか? 実は、それは感知できない。その代わりに、周囲のピクセルでそれら二つの色についてのフィルターが付いているものたちからの信号をモニターして、それらの補間(平均化)を通じて色を生成しなければならないのだ。」
これらのセルは多数の部分的情報を提供してくれるので、この補間は正確なものになるかもしれないが、一方では不正確な補間がに起こることもあり得る。色の付いた光のパターンがこれらのセルを覆ったフィルターのモザイク状のパターンと影響し合って、グロテスクなモアレのパターンを発生させてしまうかもしれない。こういう問題を避けるために、Bayer センサーには全体にフィルターが掛けられていて、すべての光のスポットをその一つのセル以上の部分ににじませるようになっている。このようにして補間された解像度の正味の結果は、色によって異なるけれども白黒においてピークとなり、そのセンサー固有の解像度に比べておよそ 50% ほど多い mm あたり線間数 (l-p/mm) の数値となる。これはかなりの数に聞こえるかもしれないが、実際にはよほど注意して観察しなければ見分けがつかない程度だ。
それよりも問題となるのが、このフィルターが単にモアレのパターンを防ぐだけでなくて、同時にエッジをにじませてしまうことだ。Bayer センサーでは、すべての線のすべてのエッジがにじんでしまう。下記のリンクの画像で、拡大テストによる補間解像度とにじみの具合をご覧頂きたい。このテストでは、同じ数のピクセル(ピクセルの数であってセルの数ではない)を持つ Foveon センサーのカメラと Bayer センサーのカメラを比較した。どちらも 340万ピクセルだ。(ただし Bayer の方は 1380万個のセルを持っている。)
<http://www.tidbits.com/resources/751/Resolution.jpg>
世間ではよく解像度だけを取り上げて大騒ぎするが、それは単にこの数字が大切そうに聞こえてテストするのも簡単だというだけの理由なのだ。けれども、例えば天文観測のような特殊な場合を除いては、解像度が細かくなっても実際の影響はほとんど無い。定義に立ち返って考えれば、極限まで解像度を細かくすることは、ただ詳細部が見えるようになるというだけの意味だ。かろうじて見えるだけのものは、私たちの目の前ででしゃばらずにじっとしているか、それとも写っていないので非常に残念に思えるかのどちらかだろう。けれども容易に見えるものこそが私たちにとって一番重要なのであり、写真のシャープさの印象を決定づけるものなのだ。シャープさに対する私たちの印象というのは、充分に広さを持っていて容易に判別できるような線のエッジにおいて、はっきりとした断裂とコントラストが見て取れるかどうかによって決まる。このことは、下記のリンクにある二つの亀の写真を比べて頂ければ分かりやすいだろう。シャープに見える亀の方が低い解像度の写真で、解像度は低いけれどもエッジがはっきりと定まって見えている。
<http://www.tidbits.com/resources/751/Sharpness.jpg>
Bayer センサーは白黒の線をより細かく解像することができるが、Bayer センサーは Foveon センサーほどシャープな線を再現できない。その結果として、両者の最高品質の画像を比較すれば、Bayer の画像の方が大きく引き伸ばしたりクローズアップで調べたりした際により印象的に見えるだろうが、Foveon の方は少し離して見た時によりくっきりした感じに見えるだろう、というのが私の予想だ。さらに、詳細部が細かすぎてセンサーの分解能を超えるような場合には、Bayer の画像は醜く見えたり空白になってしまったりするが、Foveon の方はちゃんと詳細を近似して補間してくれるだろう。つまり、大きく引き伸ばしてクローズアップで調べても、Foveon の方が実際に良く見えるような分野もあり得るということだ。結局、私の予想では、3.4 メガピクセルの Foveon と、13.8 メガピクセルとして売り出されている Bayer とは同じ程度のレベルにあるということになる。両者の撮った写真は、確かに違って見えるだろうが、適切なアルゴリズムで拡大されたものを比べれば、全般的評価としては対等ということになるだろう。
Bayer 対 Foveon 実践編 -- "もしそれが適切なアルゴリズムで拡大されたものであれば..." - と言うくだりは意味のある比較のためには重要な仮定である。通常、対象物を少し拡大するのであれば、その外観は変わらない。もし単純にある種の移動平均で延長するのであれば、ある程度の大きさまでは大きく出来るしその見え方も特に変になったりはしない。これがたいていの拡大が行われるやり方である。これが Photoshop やそして多分 Sigma のPhotoPro も含めてたいていのフォトエディタで使われているバイキュービックアルゴリズムの基本なのである。そして殆どの Bayer と Foveon の間の比較の基礎ともなっている。しかしながら、移動平均を使うと線のエッジの所まで広げられてしまい、Foveon のシャープな線を破壊し Bayer のような柔らかいエッジにしてしまうであろう。より優れたクラスのアルゴリズムは線のところで平均化を止めるようになっている。いずれにしてもいかなる平均化法であっても、規模は違っても似たような形の小さな規則性 (wavelets) を歪めてしまう傾向がある。最も良いのは wavelets も探すアルゴリズムである。このクラスのMacintosh アプリケーションで私の知っているのは唯一つで PhotoZoom Proである。PhotoZoom Pro の機能セットは限られておりしかも気になるバグもある - Mac 用のバージョン 1.095 はまるでベータリリースのような感じである- しかし素晴らしい拡大写真を作り出す。
<http://www.trulyphotomagic.com/>
Bayer と Foveon の適切な比較の一つはこれらのセンサーが全体としてどれぐらいの情報を捕獲できるかと言うことであろう。(どれぐらいの空間的情報、つまり:私が TidBITS-749 の 「色とコンピュータ」 で説明したように、色を較べるということはアメーバを較べるようなものである。) これをやるために、私はより大きな Bayer センサー、 13.8 百万セルを有する Foveon センサーよりも 70% 大きい、を使って SD-10 を一眼レフに対してテストした。Kodak は、国境なき医師団 (Medecins sans Frontiers) が恩恵を受けるのだと言う話をしたら、このカメラを提供してくれるのにも大変協力的であった(もしこの記事が役に立ったと思われたら下記の PayBITS の部分を参照して寄付をお願いしたい)。そしてまた、Sigma はこのカメラで使える一対の校正された 50-mm マクロレンズを送ってくれた。
<http://db.tidbits.com/getbits.acgi?tbart=07840> (日本語)色とコンピュータ
私は広範囲な色を持ち沢山の細微なタッチを持つ一枚の油絵をコピーした。それぞれのカメラでこの絵の大きな部分が収まる写真を撮り、真ん中から小さな部分を切り取り、PhotoZoom Pro ("Photo - Regular" に対するデフォルト)を使ってオリジナルと同じ大きさとなるよう引き伸ばし、そしてその引き伸ばしを標準画像、つまりいかなる拡大も、補完も、センサーの前にぼかしフィルタを置いたりもしないクローズアップと比較した。引き伸ばしの前に三枚の写真全てが出来る限り同じ様になるようバランスをとった、その上で、空間的情報の混同からくる不可避の色の違いを避けるために、三枚の画像全てを黒白に転換した。この作業は ImageJ 上で行った。最初に個々の画像を三つのチャネルに分解し、そして個々のチャネルを全ヒストグラムに渡ってコントラストの平坦化をおこない、その後これらのチャネルを合成してカラー写真へと戻し、この新しいカラー写真を 8-bit に転換し、更にその 8-bit ファイルを平坦化した。(コントラスト平坦化については下記の二番目のリンクを参照のこと。)絵画を選ぶにあたっては、殆どの色ブラシのストロークは黒のブラシストロークで縁取られていて、隣り合った色が変換の後混じって似たような濃さのグレーになってしまわないようなものを選んだ。私の 314-dpi プリンタを使った二枚の引き伸ばし写真は14" x 21" の部分と同等のものである。
<http://rsb.info.nih.gov/ij/>
<http://homepages.inf.ed.ac.uk/rbf/HIPR2/histeq.htm#1>
Bayer と Foveon からの写真の間の違いは微々たるものである。この二枚の写真は綿密に較べてみない限り区別はつかない。強いて言えば、標準上のコントラストのはっきりした線は Bayer 上ではより繊細で、Foveon 上ではコントラストが更に強められる。どちらが標準により近いように見えるかと言うと、それは目からの距離と照明に依存していると言えるが、それでもその違いは気にするほどではない。この二つの画像は少々違った情報を有しているが、全体の情報量としては殆ど同じである。
一方で、保存の効率とプロセス速度に関しては、議論の余地なく Foveon の勝ちである。これが二枚のそっくりな写真の比較である:
Foveon Bayer RAW 7.8 MB 14.7 MB 8-bit TIFF 9.8 MB 38.7 MB
もし私のテスト写真を印刷してみたいのであれば、ダウンロードできる。しかし、意味のある比較をするためには、あなたのプリンタがこの写真用に縦横両方向に対応できるドットパーインチの数を指定できなければいけない。私の経験から言えば、Olympus P-440 は 314 dpi で対応可能で、一色の位置合わせで時折1ピクセルの誤差が出るか出ないかの精度である。しかし Epson 9600では、縦横両方向にきれいに対応できる密度設定は一つも見つかったことがない、しかしこれを徹底的にテストしたことはないことを申し添えておく。他のプリンタについては私は全く知らない。(もし自分でやってみたければ)下記のリンクにある Printer Sharpness Test ファイルにあるテストパターンを使っていろいろ実験を重ねてみる必要があるであろう。この目的のためには、黒白の縞模様だけが意味がある。
<http://www.tidbits.com/resources/748/PrinterSharpnessTest.zip>
下記にある 5.8 MB のファイルの中にある個々の写真のピクセル数は 1512 xほぼ 2270 である。もし写真が正しく印刷されたならばその幅は 1512 をドットパーインチの数で割ったものとなるはずである。Photoshop かGraphicConverter を使って印刷する;Preview は用紙に収まるよう自動調整する。
<http://www.tidbits.com/resources/751/Bayer_vs_Foveon.zip>
覚えておくべきことは、テストでの質問は、どちらの写真がより良く見えるかとかどちらの写真がより詳細を示しているとかではなくどちらの写真が全体として標準画像に近いかということである。私のお奨めするのは上下を逆さまにして見ることである。更に覚えておくべきことは、これらの写真は通常であれば額に入れて壁にかけておくような大きな引き伸ばし写真の小さな部分であることである。そしてまた、全体にコントラストの平坦化は行っているが、オリジナルの色は同一とはいえないしコントラストの平坦化である種の色調の違いが強調されたかもしれない。もし写真のある部分で Bayer か Foveon のどちらかの方がより良いと感じたならば、その部分の色調は似ていることを確認する必要がある。もし色調が違っていれば、そこでの違いは人為的なものである可能性が高い。これの一例は左側にあるテープの下の影である。
私はまだテスト出来るところ迄いっていないが、Bayer と Foveon センサーの最も大事な光学的相違は、レンズの不具合をどれだけ明確に暴き出せるかだと思っている。Foveon センサーの方がよりシャープなので、ぼけや色ずれはFoveon センサーの方が Bayer よりもはっきりと出るのではないかと思っている。
メガピクセルって、メガナンセンス -- メガピクセルの数値でカメラを売ろうとするのは、馬力の数値で自動車を売ろうとするのと同じくらい馬鹿げたことだ。センサーの中に多数のセルを詰め込もうとすればする程、個々のセルを小さなものにしなければならない。セルの大きさがレンズの分解能よりも小さくなってしまうことすらあり得るのだ。たとえレンズがより微妙な細部を捉えることができたとしても、セルの個数を倍にしたことによる違いは、直接両者を並べて見比べることでかろうじて判別できる程度のものだ。
その一方で、ピクセルが小さくなれば別の問題も生じてくる。電子センサーというものは、我々の目には見えないような、光の中のランダムな揺れを拾い上げてしまう。写真を引き伸ばせば、それらはフィルムの中の微粒子のように見える。セルが大きい程、このような揺れは小さいセルに比べてより滑らかに処理される。また、大きいセルは最大許容電圧に達することなくより多くの光量を扱うことができるので、誤差ノイズよりもずっと上のレベルで動作できる。このような理由から、より大きなセルで撮影したもの程、クリーンな画像になる。私のポケットサイズの Minolta Xt で撮影した写真を大きく引き伸ばせば、ノイズが多すぎて気になることはあっても、ピクセルが少なすぎて気になるということはない。
それとは対照的に、私の Sigma SD-10 で撮影した写真にはノイズがほとんど無いので、非常に大きく引き伸ばすことができる。30 インチ×44 インチに引き伸ばしてテストしてみても、2-1/4 インチ×3-1/4 インチの Horseman で撮ったものと比べて遜色ない。この Sigma 機は、Horseman よりも解像度が低い。おそらく、最も細かい 35-mm フィルムからスキャンして抽出したものに比べてもまだ低いだろう。けれども、そのノイズレベルたるや、4 インチ×5 インチのシートフィルムに迫らんばかりのものにまで抑えることができる。これほどにノイズが低いからこそ、画像の内容の細部がきちんと残され、そしてそれこそが本質的なことであり、クリーンさの鍵なのだ。認知の段階において、ある低い境を超えたところでは、絶対的なシグナルの量よりもノイズ対シグナルの比率の方が脳にとってはるかに重要な意味を持つという。実際、私の古い 11 インチ×14 インチの写真の箱を開けて見てみると、35-mm の写真と 2-1/4 インチ×3-1/4 インチとを区別できる唯一の方法は、ノイズが滑らかなトーンになっているかどうかという点だ。写真の一部分を詳細に見比べただけでは両者は区別できない。
まとめると、今日のカメラに使われているセンサーの実情を考えれば、数メガピクセル多くなろうと少なくなろうと気にする程のことではないということだ。セルを小さくして多くの数をセンサーの中に詰め込めば、得られる情報より失う情報の方が大きいこともある。つまりはセルの個数よりもセルのサイズの方が重要なことが多いということだ。同じお金を出すならば、私はピクセル数の多い小さなセンサーよりも、ピクセル数の少ない大きなセンサーの方を選びたいと思う。他のことは差し置いても、センサーが大きければそれだけシャープさが増す。なぜなら、大きいセンサーの方がカメラのぶれに対する感受性が少ないからだ。市場に出ている各種のセンサーについての実際的な比較試験の結果を、こちらのチャートでご覧頂きたい:
<http://www.tidbits.com/resources/751/SensorChart.png>
三脚対レンズ -- たいていの人には、デジタル写真において最も重要なのはレンズの品質だという思い込みがある。ここまで読んできて下さった方ならば、私がそうではないと論じてももはや驚きもされないかもしれない。35mm カメラで昔から言われている大原則といえば、酒に酔っていないちゃんとした写真家が三脚を使わずに撮影した時に、それでもシャープな写真が撮れる一番遅いシヤッター速度は 1 をレンズの焦点距離で割った数だということだ。例えば 50-mm レンズでは 1/50 秒、100-mm レンズでは 1/100 秒となる。そういう設定でもやはりいくらかのちょっとしたにじみがどうしても付きまとうが、たいていの場合、ほんの些細なものなので気付かない。このにじみこそが、レンズ同士のシャープさの違いを覆い隠してしまう犯人なのだ。シャープさの違いを見るためには、何倍も速いシヤッター速度で比較しなければならない。
35-mm サイズのセンサーを持つデジタルカメラでも同じ大原則が成り立つ。しかし、ほとんどのデジタルカメラはもっと小さいセンサーを使っている。センサーが小さければ、カメラのぶれが同じでも写真のにじみは大きくなる。三角比を使って計算して頂ければ、4/3 インチのセンサーでほぼ二倍、2/3 インチや 1/1.8 インチのセンサーでは四倍のシヤッター速度が必要なことがお分かりになるだろう。(デジタルセンサーのサイズには 4/3 インチ、2/3 インチ、1/1.8 インチといった数字が使われる。これは真空管の時代の名残の数字で、ドレスのサイズと同じく意味のない適当な数にすぎない。)つまり、普通のレンズでは 1/100 秒とか 1/200 秒とかが最低速度なのだ。さきほどと同様に、レンズ同士のシャープさが比べられるようになるにはさらにあと何倍か速いシヤッター速度が必要になる。だからこそ、レンズの光学特性よりもレンズの重量の方がずっと画質に影響する、ということを忘れてはならないのだ。カメラバッグが重くなればなる程、三脚を家に置いたままで出かけることが多くなるだろうから。
(注意して頂きたいのは、だからと言って必ずしも 35-mm サイズのセンサーがベストだとは言えないということだ。センサーのサイズが大きくなれば、他の光学的な問題が増大してくる。全体的な妥協点として、業界は 4/3 インチ(いわゆる三分の四)を新しい標準とする方向に向かっているようだ。これは 35-mm レンズの直径のほぼ半分にあたり、それほど悪くはないものと言えるだろう。)
正直に言って、私は今日製造されているレンズの中に、ちゃんとした写真家の手によって印象的な画像が撮影できるだけの充分なコントラストと解像度を持たないものがあったとしたら、それこそ意外に思うことだろう。確かに、三脚で撮った写真を両方並べて綿密に比較すればレンズの違いが見て取れることは間違いない。けれども、自宅の居間にテスト用の写真を並べて飾るような人は、ほんの少数しかいないだろう。現実の世界においては、写真の光学的欠陥に気付くような人はいない。人々が気付くのは、カメラのぶれやピントの合っていない写真、画像の歪みや色ずれなどだけだ。歪みや色ずれはもちろん不快なものだが、確かに充分な資金と経験とを投入すれば他のレンズよりもそういう問題を引き起こしにくい製品を見つけることはできるかもしれないけれども、実際問題としては、ことにズームレンズについては、これはある程度どうしても避けられない問題と言える。幸いなことに、こうした問題は通常ソフトウェアによって修正したり隠したりすることができる。
実際、にじみでさえもある程度はソフトウェアによって除去することができる。例えば、ある一つのピクセルに落ちるべきだった光のうちの半分が、周囲のピクセルに拡がってしまったとしよう。それが分かっている場合は、それだけの量の光を周囲のピクセルから中央のピクセルに戻すことも可能だ。現に、これこそが Focus Magic の動作内容らしい。(Focus Magic については TidBITS-748 の記事“完璧主義者のための写真編集術”を参照。)
<http://www.focusmagic.com/>
<http://db.tidbits.com/getbits.acgi?tbart=07832>(日本語)完璧主義者のための写真編集術
もう一つの迷信 -- この記事の締めくくりに、広く知れわたっている迷信をもう一つ、暴いておこう。Bayer センサーの利点はそのセルの半数が緑であることで、緑にあたる波長こそが目の視覚認知において最も多くの情報を提供しているのだから、という話だ。私にはこの話がとても信じられなかったが、私は専門家ではないので専門家を訪ねて聞いてみた。実際、視覚認知の分野で国際的に知られている三人の科学者たちに意見を聞いた。彼らも、その話はとても信じられないと答えてくれた。私が、彼らがまだワインを飲みすぎていない時点でこの質問をするように特に注意したにもかかわらず、だ。後日、私はその一人にあまりにもしつこく同じ質問を繰り返したので、彼女はとうとうベッドから起き上がって(そう、彼女は私の妻の Daphne だ)彼女の古い教科書を私に投げつけてくれた。その本、Robert Boynton 著の“Human Color Vision”には、こういう記述がある:
「『色』というものを調べようとすると、」と視力表を投影しているプロジェクタの前にフィルタを取り付けながら実験者が言う。「以前に 20/20 を読み取れた被験者が、今度は 20/60 かそれ以下の鋭敏度に対応する文字しか読み取れないことが分かるだろう。この実験から正当に結論づけられることは何か? その答は、結論無しということだ。」なぜなら、フィルタが光の量を減らしてしまったからだ。「ここでは対照実験が必要になる。ニュートラルなフィルタを使って、同じだけ輝度を減らさなければならない.... そういう対照標準を適用すれば、典型的な結果として得られるのはスペクトル分布を変えても視覚の鋭敏度にはほとんど影響が見られないということだ。」
要約すれば、Bayer センサーの個々のセルは皆同程度の解像度に関する情報を提供しているのだ。緑の光が Bayer センサーに赤や青の光よりも多くの情報を提供しているのは事実だが、それは単にそのセンサーに緑のセルが多いというだけのことだ。
デジタルカメラを購入しようと比較検討中という方は、ぜひこの記事を参考にして、一番重要な決断を下して頂きたい。どの種類、どのサイズのセンサーを買うか、ピクセル数はどうするか、という決断が最初になる。それを決めたら、さらにたくさんの細かい決断があなたを待っている。次の記事では、こうした事柄について概観してみたい。また、その記事では Sigma SD-10 のレビューもしてみたいと思っているので、それを書き上げるのはもう一個追加のレンズが日本から到着してから少し後、ということになる。
PayBITS: 解像度を説明し、メガピクセル信仰の裏側を暴いた Charles の話がお役に立てたならば、どうぞあなたから「国境なき医師団」に寄付をお願いします: <http://www.doctorswithoutborders-usa.org/donate/>
PayBITS の説明 <http://www.tidbits.com/tb-issues/lang/jp/paybits-jp.html>
文: TidBITS Staff <[email protected]>
訳: Mark Nagata <nagata@kurims.kyoto-u.ac.jp>
各話題の下の2つ目のリンクは私たちの Web Crossing サーバでの討論に繋がる。こちらの方がずっと高速のはずた。
TAO に圧倒される --TidBITS-750 で TAO について書いた Matt Neuburg の記事を読んで、二人の読者から、このアウトライナーのインターフェイスがその使い勝手を妨げているのではないかという声が届いた。(メッセージ数 3)
<http://db.tidbits.com/getbits.acgi?tlkthrd=2340>
<http://emperor.tidbits.com/TidBITS/Talk/202>
ホームシアターの和音は Harmony -- Andrew Laurence が Harmony Remote をレビューした記事をもとに、オール・イン・ワンのリモコンについての議論が盛り上がる。(メッセージ数 7)
<http://db.tidbits.com/getbits.acgi?tlkthrd=2339>
<http://emperor.tidbits.com/TidBITS/Talk/201>
デジタル写真の編集方法をアドバイス -- 写真をデジタルに修正することに関する Charles Maurer の記事に、読者たちが反応を寄せる。(メッセージ数 6)
<http://db.tidbits.com/getbits.acgi?tlkthrd=2338>
<http://emperor.tidbits.com/TidBITS/Talk/200>
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, , 日本語版最終更新:2005年 12月 26日 月曜日, S. HOSOKAWA