先週のギフト特集に加えてもう二冊の Take Control 電子本の発行で我々の頭は完全に干上がってしまったが、今週も Joe Kissell がハードウェアベースのスクロールコントロールの発展経緯について内部情報をお伝えし、Jeff Tolbert は GarageBand を使った録音に関する有益なヒントを提供、そして Adam からはデジタルカメラを買う時に気に留めておくべき大事な事を短くお伝えする。ニュースの部では、iTMS が PayPal での支払いも受け付けるようになった事、そして Peachpit からの Macworld Expo 無料パスの提供についてお伝えする。
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iTunes Music Store、PayPal からの支払いも OK -- お金はお金であり、PayPal も立派なお金である。従って、Apple がついに PayPal とのパートナーを組み U.S. iTunes Music Store に対する支払いを受け入れるようになっても驚くにはあたらない。10-Dec-04 時点で、PayPal アカウントを使って音楽、オーディオブック、そしてギフト券を買うことが出来ている。Apple は更に新規申し込みの優待も行っている:支払いに PayPal を使った新規アカウント開設の申し込みをした最初の 50,000 人には 5 曲が無償となる (31-Mar-05 迄)。
<http://www.apple.com/pr/library/2004/dec/10paypal.html>(日本語)iTunes Music StoreでPayPalの利用が可能に
<http://www.paypal.com/>
<http://www.apple.com/itunes/>(日本語)アップル - iPod + iTunes
PayPal は現金交換サービスとしてスタートした:これはクレジットカードの取り扱い手数料を払っていたのでは見合わないような小額の取引にクレジットカードを使わないで済ます一つの方法として生まれた ( TidBITS-562 の "お薦め Web Site:PayPal" 参照)。PayPal は個人やビジネス向けの取引の、大抵はオークションであるが、決済手段へとあっという間に変身し、今や銀行の様なサービスも加えた eBay 所有の巨人に成長した。私の初期のテストからすると、iTunes Music Store が正常に動作するのは PayPal アカウントでもクレジットカードにリンクした (銀行口座にリンクしたものではなく) 場合に限られるように見える。PayPal と一緒にやりたいという Apple の願望の一部は、かなりの部分を占める小額のクレジットカード購入の取引手数料を引き下げる実験であるのかもしれない。[GF](カメ)
<http://db.tidbits.com/getbits.acgi?tbart=06260> (日本語)お薦め Web Site:PayPal
<http://db.tidbits.com/getbits.acgi?tbart=06862>(日本語)eBay が PayPal を $1.5 Billion で買収
Ballmer のスパムコメントのその後 -- Microsoft CEO Steve Ballmer が Microsoft Chairman Bill Gates は日に4百万通のスパムメールを受け取ると発言したことに関する私の皮肉に満ちた記事の後、これに関する釈明が二つ現れた。最初は、ジャーナリストの Mike Wendland とのインタビューの中で、Ballmer は間違った表現をした、実際に Bill Gates は4百万通のスパムメールを受け取るがそれは一年にであって一日にではないと言った。ちょっとした違いでしかないかもしれないが、年に4百万通だと日に換算するとほぼ 11,000通であり、天文学的とまでは行かなくとも相当な数である。もっと沢山受け取る人が他にもいるであろうことは容易に想像がつく;TidBITS の読者の一人は日におおよそ 4,000通受け取ると報告してくれた。これは彼の子供の学校の他の親や教師達のコンピュータがワームに感染しそこから発信されたスパムのせいだとのことである。
<http://db.tidbits.com/getbits.acgi?tbart=07911>(日本語)Bill Gates と Steve Ballmer とスパム
<http://mikesejournal.com/archives/003089.php>
第二に、スパマーは Gates も Ballmer も嫌いなのでいわば denial-of-service 攻撃のつもりで彼らを直接目標としているという説もあり得ない話ではないが、多くの人が支持するもっと理にかなった説明は、多くのインターネットの利用者は Web でメールアドレスを聞かれた時そのサイトの正当性に疑問があるような場合 [email protected] と入力して、自分の正当なアドレスを渡してプライバシーを心配するのを避けるのだと言う。そして、これは言わば見識の表現でもあるというわけである。私は、この様な事態を考えてみたこともなかったが、もしインターネットの周りの多くの人がこんなことをすれば、Gates が日に 11,000通のスパムを受け取ってもおかしくはない。最後に、鋭い批評を期待している人は、この状況を扱った Joy of Tech 漫画を見てみるのをお忘れなく。[ACE](カメ)
<http://www.geekculture.com/joyoftech/joyarchives/621.html>
Macworld Expo の無料パス -- 1月の San Francisco での Macworld Expo に思いを馳せる時がやってきた。幸いにして、Peachpit Press の我々の友人達が再び来るべきショーへの無料パスを提供してくれる。二枚のパス (展示会場のみ有効のパスで通常は一枚 $40) の申し込みをするには、 <[email protected]> へ名前と郵便の住所を書いてメールすること。パスは先着順に送られるが、申し込みは Peachpit に遅くとも 03-Jan-05 までに届かなければならない。もしパスを貰えたなら、Peachpit のブースにも立ち寄ってお礼を言い、展示されている本に手を伸ばしてみて、そして Adam Engst や Jeff Carlson のようなあなたのお気に入りの著者達ともおしゃべりをしていくのをお忘れなく。[JLC](カメ)
<http://www.macworldexpo.com/live/20/events/20SFO05A>
<http://www.peachpit.com/>
DealBITS 抽選: Audio Hijack Pro 当選者 -- 先週の DealBITS 抽選の当選者は応募者の中から無作為に選ばれた次の方達である。おめでとう!Jon Levine of labornet.org, Thilo Dannenmann of unicorndesign.de, そして John E. Connerat of publications.emory.edu、これらの人には Rogue Amoeba の $32 の Audio Hijack Pro 2.1.1 がそれぞれに一本贈られる。抽選に漏れたその他の応募者全員には Audio Hijack Pro 購入時にクーポンコード TIDBITS を使うことで $5 の割引が受けられる;この割引は TidBITS の読者全員にも適用される。参加された 988人の方にお礼申し上げると同時にこの先の DealBITS 抽選もお楽しみに![ACE](カメ)
<http://www.rogueamoeba.com/audiohijackpro/>
<http://www.tidbits.com/dealbits/rogue-amoeba/>
<http://db.tidbits.com/getbits.acgi?tbart=07907> (日本語)DealBITS 抽選:Rogue Amoeba の Audio Hijack Pro
文: Adam C. Engst <[email protected]>
訳: 笠原正純<panhead@draconia.jp>
2000年のこと、私は自分には良いカメラが必要だという決断を下した。そして、オンラインをチェックして回ったが、カメラ・レビューサイトにある信じられないくらいの詳細さにすっかり困惑してしまった。私には従来の写真についての基礎知識がなかったので、専門用語はちんぷんかんぷんだった。写真家の友人の多くは(私が大きくて高価な高機能なカメラだと思っている)ニコンの Coolpix 990 を持っていた。そこで、私はニコン Coolpix 990 を買って、それでうまくいくと考えるようになった。しかし、私はその高価格を受け入れることができなかった。そして、それは幼児の写真を祖父母のために撮ってやりたいというだけの自分に必要なものではないという考えがどうしてもなくならなかった。
自己反省ののち、私は、ニコンが自分にとって正しいカメラではないということが問題なのだと分かった。私はマニュアル操作も、最高の画質にもこだわらない。より重要なことは、Tristan が特に可愛らしいときに、カメラを持っていて写真を撮ることができるということなのだ。結局、私は Canon PowerShot S100 に決めた。私はそれを大変気に入っていて、そのカメラを Tonya に渡すことになったときには、その後継として PowerShot S400 を買うほどだった。
上記は私たちの新刊 $5 の電子ブック、シアトル在住の写真家 Larry Chen による"Take Control of Buying a Digital Camera" を紹介するためのものだ。簡単にいうと、そこにはどのデジタルカメラを買うかの決定に面したときに、あったらよかったのにと思うアドバイスが載っている。Larry が、スナップ写真を撮る人と芸術写真を創作することを目指す人との間にある重要な違いを描き出すことから始めていることがまさにそれだった。カメラのモデルの多さとほとんどのレビューにある技術的詳細事項の多さに圧倒された人にとって、ここを明確に区別することは最高のスタート地点となるだろう。あなたがカメラをどのように使うか考えることは、あなたの選択枝を絞っていくための長い道のりを進むことだ。それは最終的な決定を自分にとって正当化してくれるだろう。自分に正直であること。例えば、自分は芸術的な写真を撮ることが好きだとしても、自分にはそれに打ち込むための時間は無いということを認めさせられるかもしれない。
<http://www.tidbits.com/takecontrol/buying-digicam.html>
私のような人々にとって、小さなサイズや素早い連射といった機能こそが最優先となるだろう。カメラがポケットに納まらなかったら持ち運ぶことはないだろう。従って、完璧なシャッターチャンスにカメラがないことになってしまうのだ。しかし、芸術写真を撮りたい人々にとっては、高解像度とかマニュアル操作がはるかに重要なことになる。だから、自分のためのカメラを買おうとしているのか、誰かに適当なカメラを選んであげているのかにかかわらず、Larry の電子ブックが、カメラ・レビューサイトで交わされる詳細な議論を通して、あなたの疑問に焦点をあわせ、選択枝をピンホールのように絞ってくれることに助けになるだろう。"Take Control of Buying a Digital Camera" は 73 ページの PDF(1 MB のダウンロード)だ。まず 27 ページの無償サンプル版でお試しいただきたい。
<http://www.tidbits.com/TakeControl/samples/TCoBuyingDigicamSample-1.0.pdf>
文: Joe Kissell <[email protected]>
訳: Mark Nagata <nagata@kurims.kyoto-u.ac.jp>
[Interesting Thing of the Day (ITotD) は、私が今もまだ書き続けている記事のシリーズだ。その話題はとにかく私がおもしろいと思ったこと、内容はそれこそ多岐にわたり、食べ物、地理、科学、言語、歴史、哲学、そしてたまにはテクノロジーについても、何か驚くような発見がある度に書き綴っている。これは一般の読者に向けて書いているので、2004 年 10 月上旬にサイトに載った以下の記事に書かれている情報の一部は、テクノロジーに通じた TidBITS 読者の皆さんにとってはもう聞き飽きた話かもしれない。でも、願わくは皆さんのためにこの記事が少しでもお役に立てば、また私の ITotD の雰囲気をわずかでも楽しんで頂ければと思う。]
おもしろいことについて記事を書いている時以外の私は、コンピュータ本を著述したり、不定期のコンサルタントの仕事をあちこちでしたりしている。これらは、以前私がハイテク会社でソフトウェア開発の管理の仕事をしていた九年間の経験が基になっている。その九年間のうち五年を、私は Kensington Technology Group のために働いて過ごした。これはマウスやトラックボールのメーカーとして有名な会社だ。マウスこそが最先端のコンピュータ周辺機器だと思う人は少ないかもしれないが、もしもマウスが無かったらいったい私たちはどうなっていたか、想像するのも難しいではないか。その当時の私は実に恵まれていて、Kensington 社内でも指折りの非常にクールな入力デバイス・テクノロジーの開発に携わることができた。以下の文章は見え見えの Kensington のコマーシャルに聞こえてしまうのかもしれないが、それでも私は構わないと思う。私はもう今はこの会社のために働いてはいないが、今でも私はここの製品の大ファンなのだから。
<http://www.kensington.com/html/1436.html>
ポイントに達する -- 現代のコンピュータのオペレーティングシステムはすべて、何らかの形のグラフィカルユーザーインターフェイス (GUI) に基づいていて、マウス(あるいは同等のポインティングデバイス)が存在して、それを使ってポインタをスクリーン上で動き回らせることを前提にしたものになっている。私たちの多くはマウスを使うことにあまりにも慣れ切っていて、もはやマウスのことなど考えもしなくなっている。多くの GUI プログラムはキーボードのみでも使うことは可能だが、その操作はずっと煩わしいものになる。そもそも、従来のキーボードのみの時代よりも煩わしさを減らしたい、ということこそが現代的なインターフェイスの要点だったのだから。
けれどもスクロールの操作に関してだけは、標準のマウスでこれを易しくしてくれる GUI はあまりない。ウィンドウ内容を上下に(あるいは左右に)移動させる普通の方法は、ウィンドウの隅の近くにあるほんのちっぽけな矢印の上にマウスポインタを持ってきてからボタンをクリックする、というものだ。このやり方での問題は、ターゲットへの到達だ。もしもその時マウスポインタがたまたまその矢印の近くになかったとしたら(そして、実際その近くにないことの方が多い)マウスをそこまで動かして正しい位置まで持ってこなければならない。そして、画面上で比較的小さな領域であるそのクリック可能範囲の内部に、正確かつ素早く到達させることは、それほど易しくはないかもしれない。ゆっくり慎重にポインタを動かすか、行き過ぎてから戻すか、そういう注意を払う必要がある。もちろん皆さんはとうにこういう作業に慣れてしまって無意識のうちにこなしていらっしゃるのだろうが、実はこのようなスクロールの方法は、間違いを起こしやすくて時間もかかるものなのだ。それに、次にあなたがマウスポインタを使いたい位置(例えばメニューやツールバーなど)から遠く離れた位置にポインタが来てしまうということも事実だ。
キーボード上の Page Up/Page Down キーを使ってスクロールするというのも、確かに一つの解決法だ。でもそのためにはいちいちあなたの手をポインティングデバイスとキーボードとの間で行き来させなければならず、面倒なことも多いだろう。もう一つ別の方法もある。これは何年も前から Kensington の MouseWorks ソフトウェアで提供されてきた方法だが、“Scroll With Mouse”(マウスでスクロール)と呼ばれている。(以前は“Scroll When You Move The Mouse”という長々しい呼び名で知られていた。)この機能は、何かのキーまたはマウスボタンを押しながらの状態ではマウス(あるいはトラックボール)自体が仮想的なスクロールコントロールに変わる、というオプションをユーザーに与えるものだった。
幸運のホイール -- この問題に対処するために最初に広汎な成功を収めたハードウェア的方法が、スクロールホイールだった。マウスの上に特別のホイールを取り付けて、そのホイールを動かすとウィンドウをスクロールさせる指令を出すようなソフトウェアを組み合わせる、というアイデアだった。このスクロールホイールが発明されたのは 1990 年代の初め頃の Mouse Systems 社(現在は KYE の傘下)によるものだったが、爆発的な人気商品になったのは 1996 年に Microsoft 社がその製品 IntelliMouse にスクロールホイールを取り付けた時以来だった。他のマウスメーカー各社とは違い、Microsoft はオペレーティングシステムも、さらにはいろいろなアプリケーションも変更できて、ソフトウェアにおけるスクロールの挙動にハードウェアを緊密に統合させるための“フック”を含ませることができるという独特の立場にあった。一夜にして突然、スクロールはもはや面倒な作業ではなくなった。マウスから手を離す必要もなく、現在どこにポインタがあるのかを考える必要もなく、ただ指を動かすだけで上下にスクロールできるようになったのだ。このメカニズムは即座に消費者たちに受け入れられた。およそ二年のうちに、スクロールホイールはほとんどすべてのマウスで標準装備となった - ただ一つの例外を除いては。何と理解の無いことか、Apple 製のマウスだけが、一個のボタン以上のものを付ければマウスが複雑になりすぎるという理由で、この潮流に従わなかった。
<http://www.microsoft.com/hardware/mouseandkeyboard/default.mspx>
スクロールホイールがほぼ普遍的に受け入れられたことですべてがハッピーエンドに終わったかに見えたが、実際はそうではなかった。厄介な問題が二つ、残っていた。一つは、水平方向のスクロールの問題だった。書類がウィンドウ幅よりも広い場合、これは例えばスプレッドシートやグラフィックスでよく起こることだったが、一方向のスクロールだけのメカニズムでは問題が半分だけしか解決していなかった。この問題に対処するためにさまざまの解決法が試みられたが、それぞれにまちまちの度合でしか受け入れられなかった。ある場合には、Shift キーやその他の修飾キーを押しながらスクロールホイールを動かすとスクロール方向が垂直から水平へと切り替わった。いくつかのメーカーは、二つのスクロール方向に応じて二個のホイールをマウスの上に付けた。IBM の TrackPoint デバイスでは、消しゴムの頭のように見えるミニサイズのジョイスティックをホイールの代わりにマウスに取り付けた。最近では、Microsoft が“チルトホイール・テクノロジー”と称するものを付けたマウスを売り出していて、ホイールのアセンブリ全体をコンパス台のようなものの上に取り付けて、それを左右に傾ければ左右のスクロールができるようにしている。
<http://www.microsoft.com/hardware/mouseandkeyboard/features/tiltwheel.mspx>
すべての支配は一つの輪に -- 残っている問題のもう一つは、入力デバイス、特にトラックボールのデザイン上の問題だ。簡単に指が届いて動かせるようなホイールの良い配置場所が、トラックボールにおいてはマウスほど簡単には見つからないのだ。私が Kensington で働いていた時期、私たちのチームはこの問題に取り組んで頭を悩ますのに長い時間を費やした。結局私たちが達した結論は、鉛直面方向に取り付けられたスクロールホイールをやめて、代わりに水平面方向に大きな輪を、トラックボールを囲むように取り付けることだった。この輪の形は、指先で簡単に動かせるように作られている。時計回りを下スクロール、反時計回りを上スクロールにすることもできるし、その反対にすることもできる。(そのどちらをデフォルトの設定にすべきかで私たちがどれほど長い時間猛烈な議論を交したか、きっと皆さんには想像もつかないだろう。)この Scroll Ring(スクロールリング)が最初に Kensington の TurboRing トラックボールに登場したのは 2000 年のことだったが、いろいろの理由があってこの製品の売れ行きはあまり良くなかった。それでも会社はこの基本的アイデア自体は良いものだと判断してくれて、2003 年になって会社の旗艦製品たる Expert Mouse のバージョン 7 がリリースされるにあたり、光学センサーの採用と、そして、新しく改良されたスクロールリングの装備とが実現したのだった。今私の目の前にある現物を見るにつけ、私はこれまで 10 年以上 Kensington トラックボールを使ってきた経験から言っても、今こそ私の指たちが最も幸せを味わっている時期だと断言できる。
<http://www.kensington.com/html/2200.html>
スクロールのための革新的メカニズムの話と言えば、私が心の底から大切に思っているあるデザインの話題に触れなければ完結しない。それは、動くパーツが一つもない、タッチ・センシティブの、平らなスクロールセンサーだ。タッチ・センシティブのスクロール方法に私が初めて出会ったのは、1990 年代の終わり頃、あの悪運に見舞われた WebRacer 入力デバイスを Kensington 社が開発していた時期だった。ポインタの動きはタッチパッドでコントロールされるが、パッドの右と下の縁はちょうどウィンドウのスクロールバーと同じように働く。つまり、例えば右縁に沿って指を上下に動かせば、ウィンドウがそれと同じ速さでスクロールしたのだった。WebRacer は商業的に見れば失敗だったが、このフラットスクロールそのものは数年後に、見栄えの妨げになる突起物を持たない格好の良いマウスをデザインしようと、会社が研究を重ねていた時に至って再登場することになった。何ヵ月も努力を続けた結果、タッチ・センシティブなパッドの付いた StudioMouse が生まれた。このパッドはスクロールホイールと同じように使えるのだが、それに加えての利点として、センサーの端まで来た指をそのままそこに留めていれば、その間は連続的に上下のスクロールが続くようになった。
<http://www.kensington.com/html/4769.html>
そして、その後のことだった。フラットなスクロールセンサーのタッチ・センシティブな働きと、スクロールリングの形とを、見事に融合させたデザインが登場したのは。それが、現時点でのすべての機種の iPod に搭載されている、Apple Click Wheel だ。初期型の iPod には物理的に動くスクロールホイールが付いていたが、これは埃や湿気、その他の汚染物質の影響を受けやすかった。現在のクリックホイールでは、ただ単にタッチ・センシティブなスクロールを提供するだけでなく、クリックホイールの主要ないくつかの点を指でちょっと押さえればその下にあるボタンが押されるようになっており、両者を合わせてエレガントな万能・多目的の入力コントロールとなっている。
<http://www.apple.com/ipod/>(日本語)アップル - iPod
まだまだ甘〜い言葉を -- Apple のクリックホイールのデザインは傑出しているが、それでも Macintosh コンピュータの入力デバイスは全般的にまだ時代に乗り遅れている。私が現在使っているラップトップ機、Apple PowerBook G4 に付いているトラックパッドにはスクロール機能が何も内蔵されていない。(そして、これも不満なことに、ボタンが一つしかない。)幸いなことに、私は素晴しい $15 のソフトウェアに出会うことができた。名前は SideTrack と言い、トラックパッドの縁を高度に設定可能なスクロール用デバイスに変えてくれる。ちょうど WebRacer のタッチパッドと、また多くの Windows ベースのラップトップ機とも、同じような働きになる。これは本当にありがたい機能の拡張だ。なぜならトラックパッドでは、マウスよりもずっとターゲットへの到達が難しいものだからだ。
<http://www.ragingmenace.com/software/sidetrack/>
私にとって、入力デバイスにスクロール用のメカニズムが付くことは(それがどんな種類のメカニズムであるにせよ)絶対に必要な条件となった。携帯電話と同じように、初めのうちは贅沢品のように思えても、しばらくして慣れてくればもうそれ無しでは過ごせなくなる。だから、誰か他の人が一生懸命に矢印をクリックして旧式のやり方でスクロールしているのを見る度に、私はおお寒い、という気がする。まるで、ロータリー式の昔の電話機でダイヤルを回している人を見ているような感じだ。おやおや、ちょっと待って... あれも、そうあの電話機のダイヤルも、リングの形をした入力デバイスには違いないぞ... こいつはおもしろい。歴史は繰り返す。回るものは、ぐるりと回って戻ってくるのだ。
[スクロール用デバイスについての Joe の議論が役に立ったと思われる方は、ぜひ Interesting Thing of the Day の購読を検討して頂ければと思う。その日の記事へのリンクを記載したメールを毎日受け取れる(無料)購読、毎日の記事のフルテキストをメールで受け取れる(年額 $5)購読、それに各記事の朗読を高品質のオーディオ録音で聴ける(年額 $20)購読がある。]
<http://itotd.com/subscribe.alt>
文: Jeff Tolbert <[email protected]>
訳: 羽鳥公士郎 <hatori@ousaan.com>
GarageBand が初心者向けの音楽ソフトウェアであることは間違いない。音楽家でない人が、始めたばかりでいきなり Pro Tools や Logic Pro のようなハイエンドオーディオソフトウェアの操作や設定をちらっとでも見れば、1960年代終わりの Rolling Stones ツアーバスで旅行するよりも早く、シナプスが丸焦げになるだろう。しかし、GarageBand ならば、一見すると難しそうな離れ業を実行することも可能だ。
私は、ここ何ヶ月かのあいだ、最新の電子ブック「Take Control of Recording with GarageBand」を書きながら、GarageBand で何ができるのか調べてきた。私の最初の電子ブック「Take Control of Making Music with GarageBand」では、GarageBand でループを組み合わせたり編集したりする方法を説明したが、新しい本では、GarageBand を使って、ボーカルやドラム、ギターや MIDI キーボード、はては台所の流しも使った曲を作曲する方法に焦点をあてた。以下は、その本の中から、私が特に気に入っているコツや技を抜粋したものだ。これがあなたのお役に立てばうれしいし、もしあなたがこれでは足りないと思うなら、10 ドルの電子ブックに、106 ページにわたって実際のレコーディングスタジオで使われているテクニックや実用的な助言が書かれている。
<http://www.tidbits.com/takecontrol/garageband-recording.html>
2つのトラックを同時に録音 -- GarageBand では1度に1つのトラックしか録音できないという事実に、多くの人が不平をいっている。これはいくつかの理由で支障になる。バンド全体を1度に録音して、しかもそれぞれのパートを別々のトラックにするということができないだけでなく、ギターとボーカルを同時に録音することすらできないのだ。いや、本当にできないんだろうか。GarageBand では、ステレオトラックを録音することができる。ステレオトラックとは、2つのモノラルトラックが左右の端にパンされたものに過ぎない。そこで、このステレオトラックを書き出して、他のプログラムで2つの要素を分割するという技が使える。これは時間がかかるが、難しくはない。
以下の方法で、どんな2つの要素でも1度に録音できる。ベースとギター、ボンゴとボーカル、2つのアコーディオン、その他どんな音の組み合わせでも。
あなたの Mac に、Felt Tip の Sound Studio がインストールされているか確認する。最近のモデルの多くには、出荷時にこれがプレインストールされている。もしなかったら、Audacity か Sound Studio のどちらかをダウンロードして、インストールする。.
<http://www.felttip.com/products/soundstudio/>
<http://audacity.sourceforge.net/>
GarageBand で新しいステレオトラックを作る。
1つのマイクかギターをプリアンプのチャンネル1にさし込み、もう1つをチャンネル2にさし込む。
普通にトラックを録音する。
ファイルメニューから iTunes に書き出し を選んで、この1つのトラックだけを iTunes に書き出す。あなたの曲の中で他のトラックがアクティブになっていたら、書き出す前にそれを消音しておく。
書き出したトラックを Audacity か Sound Studio で開く。Audacity では、波形の左にあるドロップダウンメニューから、Split Stereo Track を選び、次に Edit メニューから Export Multiple を選んで、2つのモノラルファイルを作る。Sound Studio を使っているなら、File メニューからExport Dual Mono を選ぶ。
でき上がったモノラルファイルを Finder から GarageBand にドラッグすると、GarageBand が自動的に2つの新しいトラックを作る。あとはお好きなように!
ブリードに注意 -- マイクで2つかそれ以上のトラックを録音すると、1つのトラックがもう1つに忍び込んでしまう危険性がある。これは、片方のマイク、たとえばボーカルマイクが、アコースティックギターの音を拾ってしまったり、その逆の場合に起こる。このようなブリードがあると、ミキシングのときに、自由度が損なわれる。ボーカルをばっさり捨てて、ギタートラックを残したいと思っても、古いボーカルのブリードが、ギターマイクの録音に残っているのだ。
ブリードを防ぐには、いくつかの方法がある。
マイクを別の部屋に置くか、少なくともブリードが最小限になるまで離して、隔離する。この方法は、1人でアコースティックギターを演奏しながら歌っているのを録音する場合には、当然ながら使えない。
バッフル(音を吸収する素材)を2つのマイクのあいだに置き、音もれを減らす。この方法もシンガーギタリストには役に立たない。
当然、ギターをプリアンプに直接つなげば、マイクが1つ減るので、音もれ問題もなくなる。また、もっと指向性のあるマイクを使って、マイクをお互い違った向きに向けるという方法もある。
ボーカルやギターのダブルトラック -- ダブルトラックというのは、ボーカルなどのトラックの厚みを増すために古くから使われているテクニックで、同じパートを2回録音して、それを重ね合わせるというものだ。これにより、音が厚くなり、独特のサウンドがえられる。ダブルトラックには、ボーカルトラックの音程が微妙にはずれているのを隠すという働きもある。2つのバージョンを混ぜ合わせることによって、調子はずれの部分がマスクされるのだ。
ダブルトラックを、それを使っていることがわからないようにするには、2つのバージョンはできる限り同一でなければならない。2番目のパートを違った風に演奏して、2つのパートを左右にパンして離すというやり方でもいい。この方法では、厚みが増すだけでなく、ある程度のステレオ効果も得られる。2番目のパートにリバーブやその他のエフェクトをかけて変化をつけるというのも試してみるといい。
オリジナルループを作る -- GarageBand のループのよいところは、それを好きなテンポやキーで演奏できるということだ。しかし、あなたが自分で録音したリアル音源トラックで同じことをやろうとしても、うまくいかない。奇妙なテンポやキーのまぜこぜが得られるだけだ。しかし、あなたが録音したものを、Apple のループと同じように使えるループにすることは可能だ。そのためには、Apple Loops Software Developer Kit に含まれている Soundtrack Loop Utility が必要だ。以下の手順で、あなたの録音からループを作ることができる。
<http://developer.apple.com/sdk/#AppleLoops>
IGarageBand で、ループにしたいトラックをソロにする。繰り返しの範囲を使って、曲の特定の部分だけを隔離する。そうしたら、ファイルメニューからiTunes に書き出し を選んで、それを iTunes に書き出す。あなたのループのビートがいくつであるか、メモしておく。
Iでき上がったファイルを Soundtrack Loop Utility で開く。
INumber of Beats をステップ1でメモした値に変える。File Type が Loopになっていることを確認して、ファイルを保存する。
Iこのループを GarageBand にドラッグする。これで通常の GarageBand のループになった。テンポやキーを変えれば、ループを曲に合わせて変えられる。
ギターをベースにする -- エレキギターは持っているが、ベースは持っていないとしよう。ベースラインを MIDI キーボードで演奏するという手もあるが、それも持っていないとき、あるいはベースパートをもっと自然な音にしたいときは、どうすればよいだろうか。あなたのギターをベースに変えるには、こういう技がある(実際に改造するわけではないので、安心してほしい。電動工具は必要ないし、年代物の楽器に傷をつけたりはしない)。
最終的に必要な音より1オクターブ高いベースラインをギターで演奏して、それを録音する。
このトラックをソロにして、ファイルメニューから iTunes に書き出し を選び、書き出す。
上記の「オリジナルループを作る」にしたがって、このギタートラックをループにする。
ギターループを GarageBand にドラッグして戻す。
トラックエディタを開き、トランスポーズスライダーを -12 まで下げる。これにより、ギターループは1オクターブ低く移調される。これでギターがベースのように聞こえるはずだ。
さらにリアルにするには、トラックヘッダをダブルクリックして、トラック情報ウインドウを開く。以下のような効果を設定しながら演奏してみて、好みの音になるまで試す。
コンプレッサーをオンにして、スライダーをおよそ 30 にする。
イコライザを起動し、低音域を持ち上げ、中音域を下げる。
アンプシミュレーションを加える。American Clean をゲイン気味にするとよい。低音域を上げ、中音域を下げ、トレブルとプレゼンスを好みの設定にする。
Take Control of GarageBand -- GarageBand が出たとき、私は iBook で音楽が作れることにとても興奮し、家を飛び出して楽器や追加のソフトウェアに 1,000 ドル近くも使ってしまったほどだ。私は何年ものあいだ、いろいろな場面で音楽家として活動してきたが、家にいてメロディーや音のテクスチュアがひらめいたときは、GarageBand を使って録音している。もしあなたがiLife '04 を持っていて、まだ GarageBand を立ち上げたことがないならば、ぜひ試してみてほしい。たとえ自分が音楽に向かないと思っているとしても。(私の最初の本「Take Control of Making Music with GarageBand」が出たときに、Tonya Engst が GarageBand の体験談を寄せている。TidBITS-735)の「GarageBand が私を若くてヒップに変えた話」を参照。)
<http://db.tidbits.com/getbits.acgi?tbart=07720>(日本語)GarageBand が私を若くてヒップに変えた話
<http://www.tidbits.com/takecontrol/garageband-music.html>
[Jeff Tolbert は Seattle 在住の音楽家であり、画家、グラフィックデザイナーでもある。ベースとギターを演奏し、キーボードを練習中だ。何年ものあいだ、さまざまなバンドで演奏してきた。たとえば、What Fell?、the Goat-Footed Senators、the diary of Anne Frank String Quartet、80 Bones、それから the Fireproof Beauties など。]
文: TidBITS Staff <[email protected]>
訳: Mark Nagata <nagata@kurims.kyoto-u.ac.jp>
各話題の下の2つ目のリンクは私たちの Web Crossing サーバでの討論に繋がる。こちらの方がずっと高速のはずた。
メーリングリストのソフトウェアとサービス -- あるメーリングリストサービスを使ってきて、送られるさまざまの広告に嫌気がさした一人の読者が、他にはどんなメーリングリストの解決法があるのだろうか、と他の人たちの意見を求める。(メッセージ数 4)
<http://db.tidbits.com/getbits.acgi?tlkthrd=2402>
<http://emperor.tidbits.com/TidBITS/Talk/259>
Apple と CPU -- Apple は将来の Mac に Sun のプロセッサを使うようになるのだろうか?「Apple がその OS を××にポートするらしい」という噂はいつもいろいろと現われるが、事実に裏付けられていないものも多い。それでも、良い議論ならば構わないではないか! (メッセージ数 9)
<http://db.tidbits.com/getbits.acgi?tlkthrd=2401>
<http://emperor.tidbits.com/TidBITS/Talk/262>
Spell Catcher の代替品 -- 短縮した文字ショートカットを展開してくれるユーティリティとして、Spell Catcher 以外にその代わりになるものがあるだろうかという声に対して、TidBITS Talk コミュニティーは一致した結論を出した。TypeIt4Me と、次期バージョンの CopyPaste、この二つだ。(メッセージ数 5)
<http://db.tidbits.com/getbits.acgi?tlkthrd=2397>
<http://emperor.tidbits.com/TidBITS/Talk/258>
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, , 日本語版最終更新:2005年 12月 26日 月曜日, S. HOSOKAWA