TidBITS: Apple News for the Rest of Us  TidBITS#841/07-Aug-06

Apple は今週 Worldwide Developer Conference (WWDC) を開催している。その皮切りは、Mac OS X 10.5 Leopard の主な機能のプレビューと、Intel プロセッサへの移行の完結となるべく PowerPC ベースの Power Mac および Xserve 各機種を引退させ、より高速の Intel ベースの Mac Pro および Xserve システムが後を引き継ぐという発表だ。また今週号では、Adam が新刊の電子ブック“Take Control of Syncing in Tiger”と“iPhoto 6: Visual QuickStart Guide”を発表し、Matt Neuburg が TypeIt4Me 3.0 にキーを打ち込み、Jeff Carlson が Apple の最新のセキュリティアップデートを概観、それから Glenn Fleishman は AOL の無料インターネットサービスへの転向と、Mac OS X 用の VMWare の発表、そして Apple の Intel ベース Mac に影響が出る可能性もある、Wi-Fi 脆弱性を突くコードについて報告する。

記事:


新システムで最初の号をお送りします

文: Adam C. Engst <[email protected]>
訳: Mark Nagata <nagata@kurims.kyoto-u.ac.jp>

はてさて、私たちはわざわざ辛い道を選んでしまったようだ。TidBITS の号を書き上げて最終的な形に生成する新しいシステムを作ったのだが、それを実地に移す最初の号の予定が、ちょうど Apple が WWDC で新しい Intel ベースのデスクトップ機 Mac Pro をリリースし、また Mac OS X 10.5 Leopard のプレビューを披露するという、まさにその同じ日に重なってしまったのだ。その必然の結果として、私たちは一日の大半をニュースの執筆に費やさねばならなくなった。(今日のようなキーノートの日こそ、私たちが SubEthaEdit を使うそもそもの目的だ。こういう日は、私たちは皆同時進行で記事を書いたり編集したりしているのだから。)そのため、当初予定していたような新システムの最終テストをする余裕がなかった。今週号は皆さんに読んで頂きたい内容がたくさんあるため、新システムの詳細についての説明には深入りしないことにするが、少なくともこれだけは心に留めておいて頂きたい。今号以降では文章のフォーマットに若干の変更があるだろうことと、新システムへの移行によっていくつかの事柄が可能となり望ましい状態になることだ。今後しばらく時間をかけて改善を図っていくつもりなので、何か問題点と思われる具体的な事柄にお気付きの場合は、どうか私にお知らせ願いたい。


Apple が Security Update 2006-004 をリリース

文: Jeff Carlson <[email protected]>
訳: 笠原正純<panhead@draconia.jp>

先週、Apple は、多数の潜在的脆弱性にパッチを当てる Security Update 2006-004(日本語)Security Update 2006-004 についてを公開した。アップデートされるコンポーネントには AFP(Apple Filing Protocol)サーバ、Bluetooth 設定アシスタント、Bom (アーカイブファイルを扱う)、fetchmail、gunzip が含まれている。コンピュータをクラッシュさせたりコードを実行したりする不正な形式のイメージファイルに関する数多くの問題点への対応もとられている。さらに、LaunchServices、OpenSSH、telnet、WebKit における変更で、悪意のあるサーバやウェブページへの接続について対策をとっている。アップデートはソフトウェア・アップデートか単独ダウンロードとして利用可能だ。対応するダウンロードの種類と容量は次の通り。Mac OS X 10.3.9 Client(29.5 MB)(日本語)Mac OS X 10.3.9 Server (42.7 MB) (日本語)Mac OS X 10.4.7 Client (Intel) (8.3 MB) (日本語)Mac OS X 10.4.7 Client (Intel) (5.4 MB)(日本語)


Mac で Windows を走らせる情報三態(もっと、ちょっと・・・なし)

文: Glenn Fleishman <[email protected]>
訳: 笠原正純<panhead@draconia.jp>

この記事の参照先:
· Parallels Desktop: The Switch Is Complete (日本語)Parallels Desktop でスイッチ完了
· WinOnMac Smackdown: Dual-Boot versus Virtualization(日本語)WinOnMac タイトルマッチ: デュアルブート vs 仮想化

VMware と Microsoft の二社は WWDC において、本日アナウンスを行った。仮想化技術の主要なデベロッパである VMware は、同社の virtual machine softwareの Intel ベースの Mac OS X バージョンを提供することを発表し、時を同じくして、 Microsoft は Intel ベースの Mac 用 Virtual PCを作らないことを発表した。 Apple は、来春にリリースされる Mac OS X 10.5 Leopard における Boot Campの実装について、公式ステートメントで新しい情報を提供しなかった。(これを書いている時点で、Microsoft の Intel サポートについての FAQ はアップデートされていない。私たちはプレスリリースから読み取ったのだった。)

一般的に、仮想化ソフトウェアとは一つの OS を他のものと並行的に走らせることを可能にするものをいう。例えば、Mac OS X 用の仮想化ソフトウェアは Mac OS X と WindowsXP(或いは Linux のディストリビューション)を、再起動する必要なく一方から他方へスイッチできるよう、同時並行的に走らせることを可能にする。Robert Movin はWinOnMac タイトルマッチ: デュアルブート vs 仮想化について TidBITS-825 でカバーし、TidBITS-834 では Parallels Desktop でスイッチ完了 をレビューしてくれた。

VMware は彼らの製品のベータ版を "今年中に" にリリースしたいとしている。そして、テストに参加表名を行うためのサインアップページを提供 している。Mac OS X 上で Intel ベースの OS を走らせるための競争を提供することよりも有意義なのは、全てのプラットフォーム上で作られるディスクイメージをそれぞれから相互に利用できるようにするという同社のプランだ。このサポートは、VMWare の Windows XP クライアント版で走っている仮想マシンを、高速ネットワークの共有ボリュームを経由して Mac にコピーしたりマウントしたりし、変換することなしに走らせることができるかもしれないということを意味する。VMware は 400 万人のユーザがいると主張している。

Microsoft の Macintosh Business Unit は、同部署が Intel ベースのMac で動作するよう Virtual PC をアップデートするのではという、数ヶ月にわたる憶測を終わらせた。同社は、アップデートには現行のソフトウェアを改良するというよりも一からスタートしなければならず、Apple や他社が行うであろう "代替の解決策" で十分役に立っているので、と述べた。

Parallels はすでに、Intel ベースの OS を走らせるための Parallels Desktop for Mac のリリース を済ませている。


無線ドライバハックは Mac と Windows を標的にするか

文: Glenn Fleishman <[email protected]>
訳: 羽鳥公士郎 <hatori@ousaan.com>

Mac OS X の無線ネットワークハードウェアドライバに対して、深刻な攻撃手段となる可能性を秘めた、限定されたデモンストレーションが行われた。この攻撃は、ドライバと Mac OS X カーネルとの最下層でのインタラクションにおける欠陥を利用したもののようだが、今だそれ自体として確認されてはいないし、Apple もこの件に関して何の声明も発表していない。この欠陥は、もし本物だとすれば、攻撃者が無線を経由してルートアクセス権限を得ることを可能にしてしまう。

研究者 Jon Ellch と David Maynor は、特定の Wi-Fi アダプタを使用している、Mac OS X で動作している Apple の Intel ベース Mac と Windows XP で動作している PC とに、この欠陥があることを発見し、先週、その発見をBlack Hat USA 2006 Briefings で発表した。両研究者は、詳細が明らかになることで現実のセキュリティー脅威が生じることを避けるため、この攻撃を実地に行ってみせることは避けた。

両研究者が主張するところでは、この欠陥は、上記の通り Wi-Fi を搭載したあらゆるコンピュータに影響する可能性がある。コンピュータが実際にネットワークに接続しているかどうか、またネットワークに接続するよう設定されているかどうかは、関係がない。また、この攻撃には、不正アクセスポイント、すなわち、身分を偽ってクライアントと接続しようとするアクセスポイントは必要ない。

両研究者が披露した ビデオテープ は、これを実際にやって見せているわけではない。両者は、何かで覆われた USB 機器のようなものを MacBook に接続し、それを Linux コンピュータ上で動作しているネットワークに接続した。そして、デスクトップ上でファイルが操作されている様子を示しているが、それ以外の攻撃は行われていない。

これが単なる八百長のデモであるのか、それとも本当のできごとであるのか、Washington Post の Security Fix ブログで活発に議論されている。ただし、このブログの著者 Brian Krebs に対する個人攻撃に注意されたい。(驚くなかれ、多くの人が、この MacBook に向けられた攻撃を、自分個人に対するものだと勘違いしている。)

TidBITS は2人の専門家に意見を聞いたが、このビデオテープがステージ用の演技であるのか、それとも本当の脆弱性であるのか、結論は得られなかった。ベテラン Wi-Fi 技術者でありセキュリティ専門家の Jim Thompson は懐疑的で、 その技術的な理由を非常に詳細に説明している。もう1人のセキュリティ専門家、Gartner 調査担当副社長 Rich Mogull は、この脆弱性には説得力があり、複数のプラットフォームにおいて、独立して開発された類似の攻撃がすでに現実のものとなっていることもあり得ると語った。Mogull は、最近の会議の1つで似たような攻撃が行われたかもしれないというレポートを見たことがあるそうだが、セキュリティ上の理由からその会議を特定することは避けた。彼によると、Black Hat で発表をした両研究者は、この研究が彼らの手を離れて広がらないよう、非常に警戒している。

この可能的欠陥に信憑性を与えていることは、7 月に Intel が Centrino 無線製品のうち3種について ドライバアップデートをリリースしたということだ。リリースノートによると、最も古いアダプタ(802.11b のみのモデル)のパッチは、「不正なフレーム」、つまりパケットに似たデータの塊によって、ハッカーにマシンの乗っ取りを許してしまう可能性のある脆弱性に対処するものだ。もう2つの新しいアダプタについては、深刻だが、それほど恐ろしくはない欠陥があるらしい。Mogull によれば、Intel がこれらのパッチをリリースしたということは、この種の脆弱性が全く知られていない問題ではないということを示している。

すでに述べたように、実際の攻撃が行われたのを自分の目で見て、この脆弱性を確認した人はいない。第三者が同じ方法を異なる機器に適用して、独自に攻撃の検証をしたこともないし、Intel のファームウェアパッチを別とすれば、Apple や Intel、Microsoft からの公式な応答もない。また、この種の攻撃が現実世界で実行された例も確認されていない。

現時点で私たちから提案できることは、心配しないように、ということだ。Apple がパッチを発行するまでの期間に、この欠陥が暴露され、広く知られるようになり、あなたのマシンにとって脅威となる可能性は、極めて低い。また、この脆弱性は、現在のところ Intel ベースのコンピュータに限られているようだから、Mac ユーザの多くにとっては、ますます心配には及ばない。

私たちは、詳細が明らかになり次第、続報をお伝えするつもりだが、もし Apple が、不正なフレームについての修正と称するセキュリティアップデートをリリースし、そしてもしあなたが MacBook か MacBook Pro を持って移動する機会があるなら、アップデートをできるだけ早くインストールすることを考慮するべきだろう。


TypeIt4Me がまた、再び、復活

文: Matt Neuburg <[email protected]>
訳: Mark Nagata <nagata@kurims.kyoto-u.ac.jp>

この記事の参照先:
· Are Input Managers the Work of the Devil? (日本語)Input Manager は悪魔の業か?
· You Type, It Typinates (日本語)あなたがタイプし、Typinator が応える
· Let TypeIt4Me Type It For You(日本語)TypeIt4Me にタイプさせよう
· Scripting the Unscriptable in Mac OS X(日本語)Mac OS X でスクリプト化不能だったことを可能にする
· Macworld Expo San Francisco 2003 Superlatives, Part 1(日本語)Macworld Expo San Francisco 2003 報告その 1

Riccardo Ettore の TypeIt4Me には長い歴史がある。1987 年から世に出ているということは、私が Mac を使ってきた期間よりも長い。何をするものなのか忘れた、とおっしゃる方のために簡単に説明すると、TypeIt4Me に省略形と展開形の組(例えば“ty”と“TypeIt4Me”)をいくつかあらかじめ登録しておけば、TypeIt4Me はあなたが何をタイプするか常に監視していて、どんなアプリケーションの中でもあなたがタイプした省略形を展開形の言葉で置き換えてくれる、というものだ。

2003 年の 1 月の記事 (Macworld Expo San Francisco 2003 報告その 1) で説明したように、Mac OS X ではシステムレベルでのハッキングを防止するということが強く打ち出されたために TypeIt4Me を以前の Mac OS でのように実装することは不可能だろうと思われがちだ。けれども実際はそうではない。TypeIt4Me は、Mac OS X 向けの初期のバージョン (TypeIt4Me にタイプさせよう) ではこの防止機構を免れて動作するメカニズムである input manager として巧みに実装されていた。しかしながら、この実装方法には一部限界があって信頼性にも欠けるところがあったためか、それとも当の input manager (Input Manager は悪魔の業か? ) 自身が最近セキュリティーホールの可能性を持つものと立証された不面目に汚されてしまったためかもしれないが、先月末にリリースされた TypeIt4Me 3.0 は input manager に代わり Accessibility API (Mac OS X でスクリプト化不能だったことを可能にする)を使うように書き換えられた。(競合製品である Typinator (あなたがタイプし、Typinator が応える) や CopyPaste + yTypeも、この Accessibility API を使っている。)

というわけで今回から、TypeIt4Me をインストールすると、バックグランド専用アプリケーションが走るようになったのを皆さんはお気付きになるだろう。(というか、皆さんの目には気付かれないように走っているだろう。)これはシステム環境設定パネルによってコントロールされ、オプションを設定しておけば追加メニュー(メニューバーの右側にアイコンとメニュ−として現われるもの)として見えるようにもできる。あなたが省略形の言葉をタイプしてからそれに続いて区切り文字(これは何十もの可能性の中からあなたが設定しておく)をタイプする(例えば“@”を区切り文字として“ty@”とタイプする)と、TypeIt4Me はその事実を Accessibility API を通じて探知し、あなたが現在使っているアプリケーションに対してこれらの文字を選択してからそこに展開形の言葉をペーストするようにという指令を出す。その後でクリップボードの内容は元通りに戻しておく。また、特殊な展開方法シンタックスも使えて、さまざまの便利なトリックとして応用できる。例えばペースト後に挿入ポイントをどこに持ってくるかを指定できたり、あるいはペーストする内容のどこかに元のクリップボード内容を自動的に挿入したり(これは例えば HTML の開閉タグをテキストの前後に付ける時などに便利だ)もできる。

省略形と展開形の組を保存しておくファイルは、どこでもあなたの好きな場所に置いておくことができるし、省略形情報のファイル(あるいは個々の省略形も)を特定のアプリケーションのみに限定することもできる。また TypeIt4Me を特定のアプリケーションにおいてのみ無効にすることもでき、緊急の場合にはメニュ−から Pause を選ぶだけで TypeIt4Me の自動展開挙動を一時的にすべてオフにすることもできる。その場合も、個々の省略形をメニュ−から選ぶことで、対応する展開語を手動で入力することは可能だ。

私の見たところ、TypeIt4Me 3.0 はソフトウェアの構造そのものを大きく改善させたと言える。エレガントかつシンプルであり、見たところ信頼性もあり、本当の意味で柔軟性とユーザーの信頼感とをバランス良く融合させている。TypeIt4Me 3.0 は Mac OS X 10.3 Panther かそれ以降を必要とし、Universal Binary だ。ダウンロード のサイズは 4 MB で、価格は $27(過去のバージョンからのアップグレード価格は $9)だ。30 日間は無料で試用できる。


AOL が値下げ、5 GB の無料ストレージを提供

文: Glenn Fleishman <[email protected]>
訳: Mark Nagata <nagata@kurims.kyoto-u.ac.jp>

America Online が先週、料金爆弾を投下した。彼らの古くさい、変てこな、イライラさせられるソフトウェアを AOL アカウントに付けて使うことが、ダイヤルアップのインターネットアクセスを使わない限り無料になるというのだ。ダイヤルアップのアカウントは月額たったの $10 になり、これは使用量も無制限、顧客サポートも無制限で付く。(いくつかの報道によれば、ダイヤルアップサービスは現時点では使用量無制限で月額およそ $26 のままで無料アカウントも 9 月までは利用できないという。その代わり、既存の契約者の月額 $26 のアカウントは一ヵ月の移行期間を経てから月額 $10 に値下げされていくようだ。既存のブロードバンドのみの契約者は現在月額およそ $15 を払っており、こちらは今後無料に変わる。)

AOL はおよそ 1,800 万人の契約者を持っているが、この第2四半期のうちにおよそ百万人ほど減らしている。EarthLink、AOL、さらには企業向け専用のリセラーである iPass も含め、ダイヤルアップサービスのプロバイダたちはすべて四半期ごとに大幅な減少に苦しんでいる。これは、アメリカ合衆国のユーザーたちが次々とブロードバンドのインターネットアクセスに乗り換えているからだ。

私も以前に AOL を使ったことがあるので、私もこのことを自分の目で確かめてみたいと思った。私は AOL のウェブサイトに行き、右上の隅の Sign Up Now をクリックしてみたところ、無料(自分の帯域幅を使う場合)または使用量無制限のダイヤルアップ接続で月額 $10、という条件が提示されていた。私の義理の両親たちはしばらく以前から使用量無制限で $10 という月額を払ってきており、私は以前これを何かの課金ミスだろうと思っていた。今は、私は AOL がこの移行期間中に苦情を言ってきた顧客(両親たちは苦情を言った)に対してひっそりと値段を切り替えているのだろうと思っている。彼らは、今ではブロードバンドのユーザーなのだが、まだ新しい電子メールアドレスに変える気はないので AOL のアカウントも持ち続けたいと考えているのだ。

ただ、AOL もちゃんと収入の道はあるのだと言っている。ボリューム! 下着泥棒! スパゲッティだけの食事! 広告! さあ答はこの四つのうちどれか? その上この会社は、これまで請求事務や集金業務、その他の仕事に携わっていた従業員たちを何千人と切り捨てることによって、また AOL CD-ROM を四百万千億トンも挟み込んだり郵送したりするのを止めることで、とにかく膨大なお金が節約できると見込んでいる。また、この会社は今回の移行の結果得られる新しい、より大規模な顧客層が見込めることで、そこに広告を売り込めば以前より良い収益があがるとも考えているのだ。(5 月には顧客サービス関係でおよそ 1,300 人を削減すると発表があった。それから 5,000 on 03-Aug-06 には 5,000 人削減の発表があった。現在 AOL は世界中でおよそ 19,000 人の従業員を抱えている。)

では、AOL はあなたに何を提供してくれるのか? もしもあなたが AOL の現状でのニュースグループやチャット、壁に囲まれた庭みたいなニュースサイト、それにあの酷い、酷い電子メールなんかに満足なら、それはそれで結構だろう。私の場合は、AOL が現行のパッケージで何か特別なものを提供してくれるのかと探しても答を見つけるのに苦労するだけだ。その一方で、電子メールのウェブベースのインターフェイス自体は悪くはないし、ウェブ専用サービスのいくつかはそれぞれちゃんと機能する。また、AOL の Instant Messenger フォーラムといえば、Apple の iChat の基盤となったものに他ならない。

そうそう、そう言えば、AOL はあなたにto 5 GB の無料オンラインストレージ領域も提供しようというのだった。AOL はちょうど一年ほど前に オンラインストレージ会社 Xdrive を買収した。同社は現在 5 GB へのシングルユーザアクセスに月額 $10 を課金している。(より大きなストレージ容量は追加料金がかかる。同社は現在この 価格リンク を隠そうと躍起になっているようだ。)

Xdrive はこの 9 月の初めごろからすべての加入者に個人用の使用に限って 5 GB のオンラインストレージを提供し始める。これらのアカウントには他の人たちがファイルを受け取れるための公開フォルダを作る方法がいくつか提供される。これだけの量のストレージを無料で提供することで、間違いなくインターネットベースのストレージに対する敷居が低くなる効果があるだろう。これは(現在公開ベータ版 (!) として二年目を迎えた)Google のGmailがしたこと、また電子メールのストレージ、転送、添付などについても安価に開放したことと、同様の効果をもたらすだろう。

これらすべてが AOL にとって何を意味するかは、まだはっきりとしない。AOL のソフトウェアは依然としてうさん臭い。AOL の電子メールフィルタは非常に間違いが多い。私たちのようにメーリングリストを運営している者たちはすべて、何度も本人確認を済ませて完璧に認証を得たはずの AOL ユーザーたちに宛てた電子メールが、ある日突然理由もなしに返送されてきたという経験を何度もしており、しかもその問題は AOL に直接対処させることが不可能なのだ。

それに、やれやれ、AOL はこれまで何度も何度も、ユーザーたちの全般的信頼を裏切り続けてきた。一番多いのは、そのサービスへの課金をストップさせるのが不可能に近いということで、これは非常に不愉快な、法廷でも立証されている問題だ。しかし、今回 AOL がユーザーに課金するのを止めるということになれば、状況は大きく変わるだろう。そして、かつてのマーケット・マシンは広告マシンへと変貌するのだろう。

その一方で、10 日ほど前に 650,000 人ほどの AOL Search ユーザーたちが最近三ヵ月間に入力した 2 千万件ほどの検索語データが、明らかに目的を持って、しかし本来あるべき許可を受けずに公開されてしまったという事件があった。この事件は、AOL が依然として適切な内部的コントロールと私たちの利益に資する感受性を持ち合わせていないということを示しているのではないだろうか。問題のデータは学術研究のためのものだったのだが、そこでのキーワード検索自体はユーザーたちが組んだものであって、データから検索者を識別できる情報や個人的なデータ部分を削除するというような「匿名化」の処理は施されていなかった。AOL は今日このデータを削除して謝罪したが、すでにダウンロードされてしまったジーニーたちはもはやランプに戻すことはできないので手遅れだ。

さて、私たちは AOL を必要とするのか? 信用していいのか? 何億ものウェブサイトが他にあって、多くがより良い機能を持ち、より行き届いた管理の下に運営されている、今のこの時代において。その答を示す責任は、AOL の側にこそあるのだろう。


Mac Pro, Xserve で Macintosh のハイエンドも移行完了

文: TidBITS Staff <[email protected]>
訳: 亀岡孝仁 <takkameoka@bellsouth.net>

Apple の Intel ベースのコンピュータへの移行も今日の新型 Mac Pro デスクトップと Xserve サーバーのリリースで完了となった。これらは Mac のトップエンド機種へ相当な爆発力を与えると共に旧 Power Mac G5 と Xserve G5 へのお別れをも意味する。

Power よさよなら、Pro よこんにちは -- この Mac Pro は、Power Mac G5 と同じアルミの筐体を共有しているが、中身は単にスピードが上がっただけではない。Mac Pro には二つの 64-bit, デュアルコア Intel Xeon 5100 プロセッサ が搭載され、最大 3 GHz の速度で動作し、プロセッサ当たり 4 MB の共有 L2 キャッシュを有している。PowerPC G5 の AltiVec グラフィックプロセッサの代わりに Apple の言によれば前者よりも高速の 128-bit SSE3 ベクターエンジンを搭載している。驚くには当たらないと思うが、このマシンでは、ワット当たりの性能 (Power Mac G5 Quad よりも 3倍良い) から一般的な使い方 (1.6 から 2.1 倍速い) まで全てが速くなっていると Apple は号している。

Mac Pro は、4つの内部 Serial ATA ハードドライブベイに最大 2 TB (テラバイト) 迄のハードドライブ装置を収納でき、かつこれらはスライドインキャリア (Xserve のベイと同様) で容易にスワップできる。拡張用に 4つの PCI Express スロットが用意されており、そのうちの一つは最近のハイエンドグラフィックカードが使えるように 2倍幅となっている。この他に、光学ベイが 2つ用意されている:一つは 16x SuperDrive が標準装備されており、もう一つの方にも二台目の SuperDrive が装着できる。Apple は同時に 2枚のディスクを焼けるとどれ程便利かを強調しているが、我々はデュアル光学ドライブの真の理由は他にあり、将来の内蔵 Blu-ray や HD-DVD 焼付け機の様なものに備えているのではないかと想像している。(Roxio は最近 Toastの次期バージョンでの Blu-ray 焼付けサポートを発表しており、DVD Studio Pro はすでに HD-DVD ディスクのエンコーディングをサポートしている。)

Mac Pro は、一つの構成のみではあるが今すぐ入手でき、ベース価格は $2,500 で、構成はデュアル 2.66 GHz デュアルコア Intel Xeon プロセッサ、1 GB の 667 MHz DDR2 メモリ、256 MB のメモリ付きの Nvidia GeForce 7300 GT グラフィックカード、16x SuperDrive、そして 250 GB SATA ハードドライブとなっている。他のオプションも build-to-order オプションとしてあり、プロセッサは 2 GHz 又は 3 GHz、メモリの増量 (最大 16 GB)、2台めの SuperDrive、ハードドライブの増量、それに Nvidia 或いは ATI 製のより強力なグラフィックカードである。驚きは、ベース構成には Bluetooth や AirPort Extreme のワイヤレスハードウェアが付いていないことである (モデムもであるが、これは Apple のデスクトップ Mac から姿を消してから久しい)。

新型 Xserve も Intel に -- 新型 Mac Pro と共に Apple は本日 Xserveについてのアップグレードを発表した。これは PowerPC G5 を 2.66 か 3.0 GHz で走る一対のデュアルコアIntel Xeon プロセッサに置き換えたものである。他の基本仕様は、 プロセッサ当たり 1.33 GHz のフロントサイドバス、プロセッサ当たり 4 MB の L2 キャッシュ、1 GB の RAM (最大 32 GB 迄拡張可能)、内蔵 ATI Radeon X1300 PCI Express グラフィックカード、それに二つの 8レーン PCI Express スロット等である。ストレージに関しては、Xserve には 24x Combo ドライブが標準装備され (8x 2層 SuperDrive もオプションとしてある)、そしてドライブベイが 3基あり、そのうち 1基に 80 GB SATA ドライブが付いている。SATA (Serial ATA) かそれより高性能の SAS(Serial Attached SCSI) 機器を使って最大 2.25 TB までのストレージを装備できる。標準ポートには、FireWire 800 ポート 2基、FireWire 400 ポート 1基、USB 2.0 ポート 2基、そして DB-9 シリアルポート 1基がある。そしてこれまでのように、Xserve には数無制限の Mac OS X Server 10.4- 報じるところによると本日現在 universal binary となっている - が付いてくる。価格は変わらず、ベース構成で$3,000 である。Apple はこの新型 Xserve の出荷は 2006年10月になるとしている。

これらの仕様は素晴らしいと言えるが、Intel ベースの Mac としては驚くほどではない。新しいもので大変歓迎すべきは、Xserve にオプションで第二の電源装置が付けられることである。これでネットワーク管理者が長年望んできた冗長度のあるホットスワッパブルの電源装置を持てることになる。もう一つの歓迎すべきことに、ホスティング会社である digital.forestの Chuck Goolsbee によれば、ビデオカードの復活が挙げられる。これは Xserve G5 にはなかったもので、ある種のクラッシュ状況下でホストサービスに使っている Xserve を再起動し管理していかなければいけないサポートスタッフにはビデオカードのない事が大いに信じがたいことであった。更にこれらの人は、USB とビデオポートは Xserve の前面にある方が良いといっている。と言うのも、作業によっては電源ボタンと光学ドライブへのアクセスが必要となるからである。それに我々の digital.forest にある Xserve との経験からしてみても、CD を取り替えたり、電源を入り切りするためにラックを回りこんで前にいったり後ろに行ったりするのは大変であるし、その上ラック一杯に並んだ Xserve を目の前にした時どれがどれかを覚えておくのはそう簡単な仕事ではない。

良くない方の話としては、Chuck はこの新しい Xserve が約 2 インチ (5 cm) も前のモデルよりも奥行きが深くなってしまったことに不満である。前のモデルですらその奥行きは 28 インチ (71 cm) もあったのである。この余分の奥行きのお陰で新しい Xserve は多くの既存のサーバーラックに収まらない。これと同じ話は Dell のサーバーにも言えるのだが、Dell の場合は自分のサーバーキャビネットを売るための方策とも見える;ではなぜ Apple が Xserve の奥行きを深くしたくなったのかは良くわからない。digital.forest ではもうすでにそのキャビネットのうちのいくつかのドアを取り外さねばならない羽目に陥っているが、これでは何のためのキャビネットかわからなくしている。


WWDC 2006 にて Mac OS X 10.5 Leopard プレビュー

文: TidBITS Staff <[email protected]>
訳: Mark Nagata <nagata@kurims.kyoto-u.ac.jp>

この記事の参照先:
· Rewind Advances to 1.2(日本語)Rewind が 1.2 に進化

Apple の 2006 年 Worldwide Developer Conference (WWDC) で今日、Steve Jobs は Mac オペレーティングシステムの次期メジャーリリースとなるべき Mac OS X 10.5 Leopard の詳細を語り、集まった大勢の開発者たちの気持ちをくすぐった。リリース予定は「春」になるという。(ここアメリカ合衆国においては、この表現は 2007 年の 3 月から 5 月にかけての時期を意味する。)Jobs は Leopard に盛り込まれた十個の新しい、あるいは改善された機能を挙げてそれぞれの概観を語った後で、それ以外の「トップ・シークレット」の機能については Microsoft の Windows Vista 開発者たちにコピーされないように発表を控えておく、と遠慮がちに付け加えた。(WWDC の場では Windows Vista 開発者たちを敵に見立ててからかう言葉がかなり飛び交っていた。)Leopard の開発者用プレビュー版は WWDC の登録済み出席者たちに配られた。さて、この記事では、発表で触れられた新機能のうち、エンドユーザーの目に見えるものだけに焦点を絞りたい。だから、Xcode 3.0とか、Leopard の 64-bit アプリケーションのサポート、それに新しい CoreAnimationフレームワークなどについては、興味のある方はどうぞ他の情報源で、現時点での詳細を調べて頂ければと思う。

タイムトラベルしてあのファイルで会おう -- Steve Jobs がプレビューした Leopard の新展開の中で最も興味深いものといえば、まず Time Machine が挙げられるだろう。これは、ある種のファイル・ジャーナリングを約束するものだ。あなたが選んだどんな時点でも、ファイルシステム全体の中で変更されたファイルを自動的に差分バックアップする。Mac OS X 10.3 Panther で Apple はハードディスクのジャーナリングを追加したが、こちらはディレクトリ構造における変更が特別なファイルの中に記録されてクラッシュの際に回復できるようにするもので、その結果ディレクトリが壊れる頻度も減り修復にかかる時間も短縮された。一方 Time Machine では、Apple はこの考え方を個々のファイルやさらにその先まで拡張した。Jobs の説明によれば、Time Machine のバックアップが完備してさえいればマシンのすべてが、システムその他も含めて、すべて回復できるようになるという。確かによさそうに聞こえるが、考え方自体は新しいものではない。Time Machine そのものは何となくRewind と似ている感じだ。これは Mac OS 8 と 9 用に Power On Software が出したアプリケーションだった。

Time Machine は特定のフォルダやファイルもバックアップできるし、ハードディスクにもサーバにもデータを書き込むことができるが、ただ Jobs はそれがネットワークマウントのドライブやクライアントとサーバ双方のソフトウェアなどを必要とするかという点までは明言しなかった。彼がしてみせたデモの中では、後退して並ぶ一連のスクリーンがあなたの見ているファイルにおけるいくつかの復帰ポイントを示し、星間フィールドが時間の経過をイメージさせた。Jobs は、いったん消去したファイルを時間をさかのぼって(矢印またはスクリーンの端にあるタイムラインをクリックすればよい)見つけ出し、それから Restore をクリックしてファイルを復旧させてみせた。Leopard のプレビューサイトにも同様の実例を示した QuickTime ムービーがある。こうしてズームバックされたファイルの彼方にはブラックホールかワームホールのようなものが見えている。このファイル削除イベントの地平に、これまでに消去したファイルが無限に続いているように見えるが、復旧には限りがあることに注意されたい!

現時点で公表されている情報からは、Time Machine が特定のファイルやフォルダに対して決まった個数(それを越えない回数)だけのバックアップを保つようにできるのか、あるいは、セキュリティーやプライバシーの観点から、特定のファイルのすべてのバックアップを消去したりすることができるのか、明らかではない。Time Machine は個々のプログラムに結び付けて使うこともでき、現に次のバージョンの iPhoto(今回のデモでも使われた)ではこれがプログラムの機能の一部となるようだ。つまり、個々の写真が iPhoto アプリケーションの内部で Time Machine のインターフェイスを使って復帰させたりまた元に戻したりができ、その際 iPhoto のゴミ箱を使う必要もなく特定のファイルがどこにあるかと探し回る必要もない。今述べた QuickTime ビデオの中で使われている Address Book の実例はもっとおもしろい。その項目がいつ消去されたのかが目に見え、それを復旧させることもできる。データベースの中のデータを独自のやり方で表現するようなタイプのアプリケーションの多くが、この Time Machine との統合によって利益を被るだろう。データベース全体をバックアップすることなく、個々のオブジェクトだけをバックアップすることができるようになるのだから。

Time Machine のせいでさまざまの副次的効果が現われることは考えられる。システムがスローダウンするとか、あるいは例えば 2 GB の MySQL テーブルにあなたが変更を加えた場合には巨大なバックアップファイルが出現するとか(これこそ、新しい Mac Pro が最大 2 TB ものストレージ容量を提供している理由なのだと納得できる)そういったことも十分あり得るが、それでも自分のシステムの状態が常時記録され続けていて、混乱が起こっても手軽に元の状態に戻れるという安心感が欲しいユーザーにとっては、Mac においてこれ以上のものはないだろう。

Time Machine は Windows XP で人気のあの機能、システムのリストア・ポイントを設定したり、Windows XP に自動的に作らせたりできる機能を、そのまま真似ているのではないようだ。(Windows XP の機能をそんな風に言ってもよいとしての話だが。)そのような機能があれば、避け得ないハードウェアのコンフリクトが起こっても、その前の設定状況に巻き戻して使えるようになる。Faronics の Deep Freeze は、Mac のためにその種の機能を提供している。

はたして、Time Machine は EMC Insignia(以前は Dantz)の Retrospect を脅かす存在になるのだろうか? どうやらそうではないように見える。Retrospect で使われているクライアント・サーバのアーキテクチャや、スケジューリングのツールなどはたぶん Time Machine には無いだろうからだ。その一方で、Time Machine は Apple 自身の Backup ソフトウェアを時代遅れのものと化してしまうだろう。こちらは以前から変わらず安っぽくて使いにくいパッケージだったし、最近若干の改善はみたものの大勢を変えるには至っていなかった。それより素晴らしいのは、Time Machine が Leopard そのものに統合されたシステムの一部分であって、もはや .Mac とは一切結び付いていないということだ。もちろん、.Mac の iDisk や、その他どんなオンラインのストレージ領域でも、Time Machine が認識する形でマウントされたネットワークボリュームを提供するところならばどこにでもバックアップすることができるはずだが。

Spaces で仮想デスクトップ -- モニタが一台しかないけれど、たくさんのアプリケーションや書類を開いているのでもっとスクリーンスペースがあったらなあ、と思ったことはないだろうか。私たちは 1991 年以来ずっと複数モニタの Mac の価値を言い続けてきたが、もちろん誰もが二台以上のモニタを買う余裕がある訳でもないし、机の上にそれだけの場所の余裕がある人ばかりでもないだろう。Steve Jobs が大嫌いなことで有名な「ゴチャゴチャ」を避けられるようにユーザーたちを助けるため、Leopard は Spaces という仮想デスクトップ機能を導入することになった。これは、あなたがいろいろな作業をしている際にアプリケーションをグループ分けして、その瞬間ごとにあなたがしている作業に関連するウィンドウだけをあなたが見られるようにするというものだ。Apple 独特の好みなのだろうか、あなたが次の作業に移ろうという時になるとスクリーンの表示が水平に、垂直に、あるいは斜め方向にさえも回転して「隠れていた」モニタが見えるようになる、という風になっている。

これまで何年かにわたって Apple が Mac OS X のために導入してきた機能の多くと同じように、Spaces もやはりそれ自身新しいコンセプトではない。Unix のウィンドウィングシステムはずっと以前から複数の仮想デスクトップを提供して、ユーザーが一度に一つずつのことだけに集中できるようにしてきたし、またサードパーティのソフトウェア、例えばVirtueDesktopsのようなものも、複数の仮想モニタの間で切り替えられるという機能を既に Mac ユーザーに提供してきている。

Spaces での切り替えは、Dock にあるアプリケーションのアイコンをクリック(そうするとそのアプリケーションが属する Space に切り替わる)するか、Expose 風のサムネイルブラウザを出してそこから Space を選んだりアプリケーションを一つの Space から別の Space へとドラッグしたりするか、またはキーを押して Space たちの間で循環して切り替えるか、という方法で実行する。

Spotlight がさらに明るく -- 誰もが Spotlight のファンという訳ではない。ことに、ファイル名を検索することが多いので Spotlight が余計な結果まであまりにも多数リストし過ぎてかえって不便なことが多いと思う私たちのような人も少なくないだろう。まだ詳しいことはほんの少ししか発表されていないのだが、どうやら Leopard でのSpotlight はこれまでより少しばかり役に立つようになるかもしれない。これは、Boolean 検索 (AND, OR, NOT) が追加されたことと、著者・タイプ・ファイル名拡張辞などのメタデータを検索できるようになったことが理由だ。また、QuickLook という機能で、検索結果のリストにある項目をアプリケーションを開かずにプレビューできる方法が提供されるようになる。それから、ネットワーク上で複数の Mac で作業することの多い人は、複数のマシンにわたって同時に検索できる機能をありがたいと思うだろう。

拡がるアクセスの世界 -- 数年前のこと、Steve Jobs はキーノートの講演で、Apple は新しい text-to-speech オプションの「買方である」と述べ、基本的に Mac OS 9 の時代から変わっておらずもはや古くなった Victoria や Fred のような音声に代わるものを求めていると語った。どうやら彼は求めていたものを得たようだ。なぜなら、Leopard には Alex と呼ばれる新しい合成音声が備わっていて、これは現行の Apple の音声よりもまた現行の Windows 音声よりも、どちらよりもはるかに良いものになるからだ。いくつもの微妙な点が盛り込まれているが、中でもこの新しい音声は定期的に「息を吸う」音を使って、よりリアルな声を再現できるようになっている。また、英語以外のいくつかの言語、例えば日本語や中国語でも使えるようになる。この Alex 音声は非常に高速に語らせてもクリアに聞こえるのが特徴で、そのことがこれを Leopard における アクセシビリティ の改善に重要な役割を果たさせる鍵となっている。Leopard における VoiceOver 機能は Alex 音声を利用して働くが、それに加えてナビゲーションの改善、ステレオスピーカまたはヘッドフォンを使った左右の位置の指示、より進化したカスタマイズ、などの点も特記すべきだろう。

Leopard では、初めて Braille(点字)が直接サポートされ、サードパーティの Braille 表示 が使われる。もう一つ、アクセシビリティ関係の改善を挙げて結びとしよう。Leopard における QuickTime にはクローズドキャプション(字幕表示)機能がサポートされ、オーディオ・ビデオの他にテキストトラックも同期をとって再生できるようになる。

Mail が呼んでいる -- Leopard 版の Mail では、生産性と見栄えのアピールを共に向上させるための新機能がいくつか加わる。まず、テンプレート(ひな形)ベースのシステムがある。これは iWeb や Pages、iDVD に見られるインターフェイスと見栄えも動作も非常によく似ている。出来合いのひな形ファイルを使うことで、iPhoto ライブラリから画像をドラッグしたり、テキストをタイプあるいはペーストしたりするだけで、美しくフォーマットされたニュースレターや声明文、招待状、グリーティングカードなどができる。Mail はあなたのメッセージを HTML で送信するが、これは今どきのほとんどの電子メールクライアントで読める。(現在は圧倒的大多数の電子メール通信がプレインテキストのメッセージだが、そのプレインテキストメッセージに対する機能強化は、あるかもしれないが触れられなかった。)テンプレートを使って作業を始められるのに加えて、既に書き終えたメッセージに後からテンプレートを適用することもできる。この新バージョンの Mail はまた、あなたが自分でテンプレートを作れる設備も提供してくれている。

Mail はまた Notes も提供する。これはあなたが自分のためにメモを書いて、それを電子メールとして送らずにあなたの受信箱で(別途の Notes メールボックスでも)見えるようにするというものだ。この Notes はすべてのフォーマッティングをサポートしているので、画像や PDF ファイル、その他のメディアコンテンツも含めることができる。

それに加えて、この Leopard 版の Mail では、どんな電子メールメッセージでも、あるいはメッセージやメモの中で選択したテキストでも、クリック一つで To Do 項目に変換することができる。こうした To Do 項目には締切り日や優先度、アラームなどを付けることができ、しかもそれらを作れる機能がシステムワイドなサービスとして提供される。例えば iCal と Mail が同じ To Do リストを共有することもできるし、サードパーティの開発者がこの To Do 項目に書き加えたりアクセスしたりするソフトウェアを作ることも可能となる。

キーノートではデモが行なわれなかったけれども Apple のウェブサイトでは触れられているのが、Mail の RSS サポートだ。RSS フィードを購読して、その記事があなたの受信箱に現われるようにできる。スマートメールボックスを使えば、こうしたニュース記事を並べ替えたりグループ分けしたり、フィルタ付けすることもできるようになる。たぶん、この機能は Safari の RSS サポートを置き換えるものではなく、それに加えて装備されるものとなるのだと思う。

ダッシュ一発 Dashboard-- Tiger の機能の中で、Dashboard ほど極端に意見の分かれたものはなかっただろう。これが大好きになった人も多かった(現在 2,500 以上ものウィジェットが出されていることからもわかる)し、その一方で大嫌いな(あるいは全く無視している)人も数多くいる。今回のキーノートの会場で、Dashboard が Leopard のトップ 10 の新機能の一つだと聞いた聴衆の反応は、最初のうちはどうひいき目に見ても沈黙のうちに迎えるという感じでしかなかった。けれどもデモの最後の頃になると、嬉しげな歓声も起こっていた。聴衆の気持ちをわくわくさせたのは、Web Clip と呼ばれる新機能だ。これを使えば誰でもほんの数秒で、好きなウェブページの一部からカスタムの Dashboard ウィジェットが作れる。プログラミングの知識は一切不要だ。Safari で望みのページに入り、ツールバーのボタンをクリックする。すると Dashboard が開いてそのページを新しいウィジェットの中に表示する。このウィジェットをリサイズしたり場所を移動させたりして、ページの中であなたの見たい部分だけが見えるようにする。それから Close をクリックすれば、それだけで新しいウィジェットが出来上がり、その内容はその後も動的にアップデートされ続ける。オークションの進行具合や、ウェブカム、ニュースのヘッドライン、その他ウェブのコンテンツなら何でも(そのコンテンツの X-Y 座標が変更されない限り)そのウィジェットの中に表示されることになる。また、ウィジェットの境界線部分を調整するためにいくつか提供されたテーマの中から好きなものが選べる。きっと、広告主たちはこの新機能を歓迎しないだろう。広告だらけのウェブページから、ユーザーが好きな一部分のコンテンツだけを切り取って楽しめるようになるのだから。

開発者のための機能としては、Leopard には Dashcode も含まれるようになる。これはウィジェットをデザイン・開発・デバッグするための助けになるツールだ。いたるところでテンプレートを使うという Leopard の一貫したテーマを受け継ぎ、この Dashcode もよくあるウィジェットのテンプレート、例えば RSS、ポッドキャスト、画像などのためのものを備えている。いずれも必要に応じて修正したり拡張したりできる。Dashcode はまた、検索フィールドやボタンなど、よく使うコントロールのパーツライブラリも持っている。最後にもう一つ、Dashcode は HTML と CSS のビジュアルな編集や、JavaScript エディタとデバッガも提供する。ウィジェットの開発を楽にするツールが今すぐ欲しいというあなたには、Gandreas Software から出ている Widgetarium というものもある。

iChat にスクリーン共有とエフェクト-- Apple のインスタントメッセージクライアントのiChat は、Mac OS X 10.3 でオーディオとビデオのチャットを提供し、Mac OS X 10.4 でマルチユーザのオーディオ・ビデオチャットを追加したが、今回はさらにいくつかの新機能を加えて格段に進化したものになるという。そのうちいくつかは要望の最も多かった機能(あるいは他のチャットクライアントに既に装備されている機能)を反映したものであり、またそれ以外のものはハイエンドの共同作業ソフトウェアのようなものにしか見られなかった新テクノロジーを反映したものになる。

複数ログイン、つまり同時に一つ以上の AIM または Jabber アカウントにサインオンできる機能は、最も要望の多かった機能のトップに位置するものと言えるだろう。また、不可視性(特定のメンバー以外の人からは見えなくなる)や、接続が切れた場合に自動的にチャットに再加入できる機能、それから Safari のタブブラウジングに似たタブ・チャッティングの機能も要望の多かったものだ。このタブ・チャッティング機能は、同時に一人以上の人たちと(別々に)チャットすることの多い人には大歓迎だろうし、FireAdium のようなサードパーティのチャットクライアントの同様の機能にも肩を並べるものだ。その他の機能として約束されたものには、これは歓迎する人もそうでない人もいるだろうが、バディーアイコンのアニメーションとかペアレンタルコントロールの拡張などがある。

もっと印象的な機能もある。Leopard の iChat では、あなたのスクリーンにあるものをチャットの相手と共有することもできるようになる。例えば iPhoto のスライドショウや Keynote のプレゼンテーションを使ってバーチャルなプレゼンテーションルームを作ったりもできるし、さらにはフルスクリーンの共有さえできる。Apple によれば、iChat のオーディオチャット機能を使って意見を交換しながら「友人と一緒にウェブをブラウズしたり、奥さんと一緒に飛行機のベストの座席を選んだりもできる」という。私たちの立場からは、フルスクリーン共有を使って遠隔地からの技術サポートの仕事を楽にすることができたら、というのが最も興味ある可能性だ。

iSight ユーザーたち、特に若い世代の人たちの間では、Photo Booth を使って顔を歪めて見せたり、その他自分の画像にいろいろなエフェクトを施すのが非常な人気だという。そこで Apple は iChat にリアルタイムの Photo Booth エフェクトを追加することにした。まあ、私たちにしてみればこんなものはたいていの人にとってあまり楽しいとも言えないとは思うが、私の知っているある五歳の子供などは、叔母さんや叔父さんたちとチャットしながら、その顔にびっくり屋敷の特殊ミラー効果を施して飽きもせずいつまでも楽しんでいるのも確かだ。

おそらく私たちの多くがもっとよく使うことになるだろうと思われるのが、iChat の背景機能だ。これは、ビデオフレームの背景を何でも好きな静止画像で、あるいはビデオ動画でさえも、魔法のように置き換えて使えるというものだ。つまり、友人とチャットする際にまるであなたがビーチにいるように、あるいはまさに今 Times Square にいるようにも見えるということだ。もちろん、あなたが今ちゃんと仕事場にいるように見せて、実はサボって遊んでいるということも可能だ!(こういう機能が素晴らしいと思ったあなたには、何も来年 Leopard が出るまで待つ必要はないということをお知らせしておこう。そういう機能の多くは、今既に Script Software の $20 の ChatFXユーティリティを使えば可能だからだ。幸運にも、Julian Miller をはじめ Script Software 社の人たちは、Script Software のブログ に Julian が書いている通り、彼らのオリジナルなアイデアが将来のバージョンの iChat にコピーされるという事実に対して悪い感情を抱いてはいない。その時までには間違いなく彼らの方もさらに新しいバージョンの ChatFX を出していて、さらに凄いことができるようにしているに違いないし、それに私の聞いたところでは、彼らは Skype および Yahoo Messenger のサポートも取り入れる予定らしい。)

iCal はマルチユーザ -- Apple の iCal は個人用に使うものとしては人気があるが、ワークグループでカレンダーを共有して使うような場合にはほとんど使われていない。そういう目的には、例えば Now Software の Now Up-to-Date & Contact を私たちは使っている。しかし、iCal のこのシングルユーザ指向は Leopard で変更されることになる。CalDAV 標準 のサポートが追加されるからだ。Apple によれば、Leopard の iCal では複数の人が同じグループカレンダーを共有することが可能になり、アクセスコントロールも完備し、ミーティングの招待状を送る前にグループの各メンバーの予定を確認したりすることもできるという。ただ、AutoSchedule という新機能もあって、すべての人が集まれるためのベストな時を選ぶように試みてくれるらしい。また、その他の情報、例えばカンファレンスルームやプロジェクタ機器の空き具合やなどの都合も勘案してミーティングの予定を決めることもでき、ミーティングに参加する人たちに特定の書類をあらかじめ見ておいて欲しい場合には、単にその書類をイベントの上にドロップするだけで彼らすべてと共有できるようになる。


Take Control ニュース/07-Aug-06

文: Adam C. Engst <[email protected]>
訳: Mark Nagata <nagata@kurims.kyoto-u.ac.jp>

Mac ユーザーたち、新刊電子ブックで "Sync Different" しよう -- きっと皆さんは iPod へ楽曲を同期させたり、.Mac 経由で Safari のブックマークの同期をとったりする方法をもうご存じだろう。でも、同期をとる方法なら、それこそ宇宙世界とも思えるほどさまざまのやり方が Mac ユーザーの前に用意されているのだ。私たちの最新刊の電子ブック"Take Control of Syncing in Tiger,"は、その宇宙世界をあなたの Macintosh の中に持ち込み、iSync からキッチンのシンクまで、ありとあらゆるものを使ったテクニックをお教えしようというものだ。この本で扱われるトピックとしては、電話番号を携帯電話や PDA との間で同期、デスクトップ Mac とラップトップ Mac でファイルの同期、機器と機器の間を Bluetooth、USB、FireWire、Ethernet で接続する方法などがある。

長年の Mac 熟達者 Michael E. Cohen によって書かれたこの 135 ページの電子ブックは、Mac OS X の内部で同期がどのように働いているのかを詳細に、かつ興味深く解説してくれる。またあなたの状況に即した同期のためにどんなソフトウェアとハードウェアが必要なのかをきちんと並べ上げ、同期がうまく行くための最適の戦術を供給してくれる。最後のところにはトラブルシューティングのセクションもあって、消すつもりのなかったデータを間違って上書きして消してしまった後の、あの意気消沈した気分を経験したことのあるすべての人のために、実際的なアドバイスと共に安心の気持ちをもたらしてくれる。

新刊電子ブックで iPhoto 6 をマスターしよう -- 今年の初め頃、私は過去五年間にわたって繰り返し現われ続けて私の生活に付きまとってきたあるプロジェクトにまたもや一生懸命に取り組んでいた。それが、私のiPhoto Visual QuickStart Guide. をアップデートするという作業だ。今年の版はちょっといつもよりも長い時間がかかった。なぜなら、これは Visual QuickStart Guide シリーズの中でもフルカラーで出版された最初のものの一つとなったからだ。それでもやっとつい最近、印刷版の本も書店の店頭に並ぶようになった。ここで本題に戻ると、今回私はこれを電子ブックの形に仕上げたばかりのところで、これは私たちの Take Control 電子ブックと並べても遜色のない出来映えになったと感じている。ただ PDF ファイルとしてプリント出力するだけならば誰にでもできるが、本物の電子ブックにはそれだけでなくブックマークもあり、内部および外部双方の参照に対応したリンク(カラー付けされて見やすくなっている)も付いている。(索引のページ番号すべてをリンクにし、またすべてのリンクにカラー付けをしてくれた Sid Steward と彼の PDF 魔術に、特別の感謝を捧げたい。)

というわけで、もしもあなたが iPhoto 6 に関して何か助けを必要としているのなら、ぜひ私の“iPhoto 6: Visual QuickStart Guide”をご一読頂きたい。その中で私は簡潔なステップ・バイ・ステップの説明に数限りないフルカラーのスクリーンショット写真を組み合わせて、一ページに一つずつ、個々の作業の説明を示している。(何年も前から私たちの仕事を見てきて下さった方々なら、これらの写真に見え隠れする私たちの生活模様のさまざまを楽しんで頂けると思う。Tonya も Tristan も、これらの写真に頻繁に登場している。)この本は、あなたが iPhoto 6 でできることすべてをカバーしている。写真を読み込んで整理することから、印刷したりプレゼンテーションに使ったりすることまで、すべてがここにある。さらにトラブルシューティングの章では問題が起こった時の対処の仕方をいろいろと提案し、付録の章にはより良い写真を撮るためのヒントを多数挙げている。この電子ブック版の価格は $15(デジタル写真関係の他の電子ブックとのバンドル購入ならばさらにお安くなる)だが、紙に印刷したものをお好みのあなたのために、さきほどのリンクのページには印刷版の本を Amazon のショッピングカートに入れる(現在の価格は $16 だ)ためのリンクも用意してある。


TidBITS Talk/07-Aug-06 のホットな話題

文: TidBITS Staff <[email protected]>
訳: Mark Nagata <nagata@kurims.kyoto-u.ac.jp>

あなたの Macintosh で Getting Things Done -- 整理システム Getting Things Done について書いた Jeff Porten の連続記事をめぐって、そのアプローチを支持する読者と、iCal ベースの技を使ってウェブベースの追跡方法ができると指摘する読者が現われた。 2 メッセージ

iPhoto ライブラリを合併 -- Apple は、一人の Mac ユーザーは一台のコンピュータでは一つしか iPhoto ライブラリを持っていないということを前提にしている。けれども現実にはそうとは言えないことも多い。何個かのライブラリを一つにまとめあげるための方法として、どんな手段が可能なのだろうか? 5 メッセージ

ワイヤレス Mighty Mouse -- Apple でももはや標準となったマルチボタンのマウスが、最近 Bluetooth の兄弟分を得た。そこで読者たちがそれぞれの意見でちゅーちゅー騒ぎ出す。12 メッセージ

Talking Points Memo が Mac に(質問も) -- 政治関係の活発なウェブログをいくつか書いているあの著者が、Mac にスイッチしてきたと公式に述べて、彼の感じた印象や疑問などを書いている。中でも大きな話題となったのは、Eudora メールボックスを Windows から Mac へ合流させる方法についての話だ。 3 メッセージ

ちょっと思い付いたから言ってみるけど -- Consumer Reports の最新号ではウイルスやスパム、スパイウェアにラップトップ、といった問題に取り組んでいるようだが、その記事の中には Mac のことがただの一言も触れられていない。これは「何だってぇ!」と大声をあげるべきところか? そう、もちろん、大声をあげてみよう。 2 メッセージ


tb_badge_trans-jp2 _ Take Control Take Control 電子ブック日本語版好評発売中
Tiger でのファイル共有、TidBITS 翻訳チーム訳
Panther でのユーザとアカウント、TidBITS 翻訳チーム訳
Panther のカスタマイズ、TidBITS 翻訳チーム訳
Panther へのアップグレード、TidBITS 翻訳チーム訳

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Valid XHTML 1.0! , Let iCab smile , Another HTML-lint gateway 日本語版最終更新:2006年 8月 15日 火曜日, S. HOSOKAWA