TidBITS: Apple News for the Rest of Us  TidBITS#847/18-Sep-06

Apple と Adobe がそれぞれ大きな発表をしたので、今週号は記事を揃えるのが楽だった。Adobe は今日、Adobe Creative Suite 2.3 を発表し、その中で GoLive CS2 は Dreamweaver 8 によってその位置を奪われ、また Acrobat Professional はバージョン 8.0 にアップグレードされることになった。だがもっと大きなニュースは Apple が先週新しいビデオ対応 iPod と、iPod nano、それにぐっと小さくなった iPod shuffle を導入し、その上 iTunes 7 には銀幕を広げて、iTunes Store から完全版の映画を購入・ダウンロードできるようにしたことだ。それだけではない。彼が事前発表をするのは珍しいことだが、Steve Jobs は iTV をデモしてみせた。iTV とはあなたのテレビの上に置いてストリーム・ビデオのコンテンツをテレビで見られるようにするものだ。今週号では以上のことをすべて報告し、それに加えて iTV において鍵となる可能性のある HDMI ビデオ接続についても概観する。最後にもう一つ、Adam は iPhoto 6 の奥深くに隠された、とてつもなく奇妙な読み込み機能について物語る。
 
記事:

本号の TidBITS のスポンサーは:
皆さんのスポンサーへのサポートが TidBITS への力となります

Apple、iPod シリーズをアップデート、映画を開始、iTVをプレビュー

  文: TidBITS Staff <[email protected]>
  訳: 田中大一郎 <dtanaka@cba.att.ne.jp>
  訳: 亀岡孝仁 <takkameoka@bellsouth.net>
  訳: Mark Nagata <nagata@kurims.kyoto-u.ac.jp>

先週行われた Apple のスペシャルイベント、"It's Showtime!" にて、Steve Jobs CEO は現存モデルの名前を引き継ぐ iPod の改訂予定を披露した。また Jobs CEO は皆が期待していたとおり、ムービーをマネージメントできる新バージョンの iTune と共に、ムービーが iTune Store に加えられるということを披露した。そしてApple でもちょっと変わった動きになるが、Jobs CEO はワイアレスのセットトップボックス(コードネームは iTV)を2007年の第一四半期に出荷するという先行発表を行った。では順を追って...。

New iPods -- 最も変化の少なかったモデルは、これまでのバージョンと同じデザイン(白と黒が選べる)を踏襲したビデオ機能搭載 iPod だ。しかし Apple ではバッテリーの寿命に改善を加えており、従来2時間であったビデオ 再生を最大3.5時間に、音楽再生では最大20時間にまで延ばした。スクリーンも 60% 輝度を向上している。この iPod は30 GB バージョンで $250、80 GB バージョンで $350 であり、これまでの 30 GB、60 GB バージョンと比べて $50ほど安い。

Apple の最も成功した音楽プレーヤーである iPod nano では、これまでのプラスチックに代わり昔の iPod mini を彷彿とさせるアルマイト処理されたアルミニウムが用いられ、グリーン、シルバー、ブラック、ブルー、ピンクの多くの色でやってきた。スクリーンはこれまでのモデルに比べ40%ほど明るくなったが、Apple ではバッテリー寿命として音楽再生で最大24時間と謳っている。iPod nano は2 GB のもので$150、4 GB のもので$200、8 GB のもので$250 である。しかしApple では依然として限られたものにしか色の選択を提供していない。現在2 GB はシルバーのみ、8 GB モデルはブラックのみである。4 GB モデルはシルバー、グリーン、ブルー、ピンクで登場する。

iPod shuffle は、まだ制圧されていない競合するMP3プレーヤーに対する Apple のローエンド MP3 プレーヤーの答えであり、1 GB モデルで$80だ。この iPod shuffle は随分小さく−幅1.62インチ(4.11 cm)、高さ1.07インチ (2.72 cm)−、これまでの白色の外観からアルミボディーに代わり、服に取り 付けられるようクリップが取り付けられている。10月より出荷が開始される。

(iPod nano、iPod shuffleのパッケージがこれまでより随分小さくなった事は注目に値する。ゴミの減量化に我々は拍手を贈りたい)

新しい iPod や iPod nano では新たに "instant search" 機能を備えており、クリックホイールを使ってアルファベットを順番に出し、曲やアーティスト名の先頭文字を選択することが出来る。また新たにゲームも追加され、iPod ユーザーは各$5にて、iTune store から多くのゲームをダウンロードすることが出来る。ゲームは今のところ Tetris 、 Vortex 、 Pac-Man 、 Cubis 2 、Zuma 、 Texas Hold'em 、 Mini Golf 、 Mahjong 、 Bejeweled が利用できる。検索機能はこれら最新のiPodらでしか使えないが、前の 5G iPod でもゲームをすることは可能だ。 iTunes ではゲームをプレイすることは出来ない。

iTunes 7 -- iTunes Store への変更に関わる状況から予測されたように、Apple は iTunes に関しても大きなアップデートを出してきた。最初に起動した時、iTunes 7 は嬉しい新機能について知らせてくる - あなたのライブラリに既に入っている歌のアルバムアートが自動的に加えられる。次に iTunes はあなたのライブラリをアップデートする、どうも中身は内部で新しいデータベースフォーマットに移行するだけのようだが、そして次は長いパスで、新しい ギャップレスプレイバック を適用する曲を選び出す。このギャップレスプレイバックは iTunes 7 ではどうも常にオンとなっているようである。ギャップレスでない曲は通常録音の始めか終わりに短い空白の時間があるが、それはそのまま残る (もしこの空白がない場合でも、曲のつながりは通常問題なく聞こえる)。真のギャップレスの曲はファイルの始めから終わりまで音が入っているので、識別パスで個々のファイルでは厳密に何処から音のデータが始まるのかを見つけ、オーディオデコーダがスタートする時に生ずるほんのちょっとした空白時間を無くする様にスタートさせる。このギャップレスプレイバック識別作業はかなり遅いが、幸いにしてあなたはその間他の作業を進める事が出来る。

iTunes 7 では新しいナビゲーションツールが導入されているので、このプログラムでは当たり前になりつつある色々な違うメディアを通しての作業が楽になると思われる。ソースペインは大文字の表題の下に Library, Store, そして Playlists の三つのセクションに分けられている;iPod が接続されると Devices が現れる。Library には、Music, Movies, TV Shows, Podcasts, Audiobooks, そして Radio の項目がある (事実 iPod Games もここに現れる事ができるが、全ての項目は選択可となっている)。Store には iTunes Store のリンクが含まれ、そして Purchased playlist もここに来る。最後に Playlists にはあなたのプレイリストが保持される。消えてなくなったのは、スクリーンのトップにあったボタンで、例えば Videos のソースアイテムが選択された時、TV ショーにするかミュージックビデオにするか選択させてくれたものである。

もっと目につくのは、機能的にはそれ程ではないが、三つのビューである:リスト、グループ、そして Cover Flow で、これらは Search フィールドの左に置かれたボタンで制御される。リストビューは我々が最も慣れ親しんだものである。グループビューは曲をアルバム別、そしてテレビエピソードを番組別にグループの左にそのアートワークを表示しながらまとめてくれる;このビューはポッドキャストやラジオには適用されない。Cover Flow はサイズを調整できる新しいペインで、アルバムカバーをまるで高い反射率を持った黒のテーブルに立っている CD ケースのように見せてくれる。扇形に広がったリストの中心部にあるアイテムの内容がその下のリストビューに表示される、そして水平スクロールバーを使うとあなたのコレクション全体を手早くなぞる事ができる;このリストをソートすると (コラムの頭の部分をクリックして) アートワークペインはそれに応じて変化する。これは確かに目の保養程度のものであるが、自分の音楽コレクションを気ままにざっと見て回りたいというような時には有用になってくるのではないかと思う。Apple としては興味深いそして通常でない動きなのだが、Cover Flow は独立のデベロッパー Jonathan del Strother から購入したものなのである。

たとえあなたのアルバムの多くはアートワークを持っていないとしても、心配には及ばない。というのも Apple はあなたの音楽のためのアルバムアートを無料で用意してくれているからである。以前にリップ(MP3 化)したアルバムのものでもある (選択幅は iTunes Store カタログにあるものに限られるが)。もしあなたがユーティリティを使って低画質のアルバムアートを既に取り込んでいるのであれば、まずそれらを削除しておいた方がいいと思う。やり方は、複数の該当するアイテムを選んで、File > Get Info を選択、Artwork チェックボックスを選択 (しかしその中には何も入れないこと)、そして OK をクリックする。これが完了したら、もう一度選んだ同じアイテムを Control-クリックして Get Album Artwork を選択する。(Clear Downloaded Artwork コマンドは現在のところ Apple からのアートワークダウンロードにしか働かない。)

機能面から言うと、iTunes 7 になって一つ大変歓迎すべき機能が加えられた、残念な制限付ではあるが。これまでもしあなたがあなたの iPod を使って複数のコンピュータ間で音楽やビデオの同期を取りたいと思っても、あなたは運が悪かったとしか言いようがなかった (勿論サードパーティのユーティリティを使えば可能ではあった)。今や、iTunes 7 ではコンピュータ間でコンテンツが購入したものであれば同期が出来る。従って、一つのコンピュータに曲やテレビ番組をダウンロードした場合は、その iPod を他の認可されたコンピュータに差し込むことでそのコンテンツをそのコンピュータにコピーする事が可能となる。これは期待の持てる機能であるが、購入されたコンテンツにしか働かず、自分の CD からリップした音楽はダメである。

我々の知る限り、iTunes 7 になっても、一つの音楽アーカイブを複数のコンピュータで共有したいという家族の状況の改善は全くなされていない。内蔵されている共有機能ではどうしようもない。なぜならば一台のコンピュータだけがプレイリスト作る、曲のランク付けをする等々が出来る、そしてセンターとなるサーバー上に共有の音楽フォルダを維持するのもまあまあ使えるものだが、個々のコンピュータには新しい音楽を手動で追加しなければならない。ここでの一つの新しい機能は iTunes が iPhoto の様に複数のライブラリをサポートすることである;ライブラリを生成したりその間で切替をするには iTunes を起動する時に Option キーを押し続ける。しかしながら、この機能の現実的な唯一の使い道は、旅に出る時にラップトップ上には比較的小さなライブラリを持つ一方で、もう一つのライブラリを持ちそれが家に帰った時には共有保存フォルダを指し示すといった程度である。

気の利いた事として、iTunes は今やタブ付きの iPod サマリページを提供する。ここにはあなたの iPod に関する全ての情報が集められている、名前、空きスペース、シリアル番号、コンテンツ、等々。(Capacity バーをクリックすることで使用中のビュースペースとアイテムの数の切替が出来る。) 更に、今や iTunes は iPod ソフトウェアのアップデートも扱う。これでこれまでの不器用な iPod Updater と自分の持っていない iPod モデル用のアップデートもダウンロードする必要から逃れられる。

iTunes Store -- 予想通り、Steve Jobs の有名な“One more thing...”(「もう一つだけ...」)発表は、やはり今回 iTunes Store に映画を加えるという内容だった。(Apple がストアの名称から“Music”という単語を削除したことに注目されたい。) Jobs は iTunes Store が現在 Disney、Pixar、Touchstone、それに Miramax 各社の映画を合計 75 本取り揃えていると発表した。これらの制作各社はいずれも Disney の所有する会社ばかりだ。彼はまた Apple が今後毎週映画を追加していく予定だと約束した。ただ、実際には Apple が他の映画制作会社たちとの交渉で合意に至ることができるかどうかというのが一番大きな問題となるだろう。現在のところ、これらの映画はアメリカ合衆国の国内でしか入手できない。国際的な配付は 2007 年内の実現が予想されている。

価格面では、旧作タイトルの映画は $10、新作タイトルは予約の場合と発売後一週間は $13、それ以降は $15 に上がる。この価格は先週発表された新しい Amazon Unbox Video サービスと比べても同程度と言える。Amazon Unbox Video の方が Disney 所有の会社以外も含んだより多彩な選択肢を誇っているが、それも Mac ユーザーにとってはただの議論対象に過ぎない。なぜなら、Amazon のサービスは Windows Media Player のデジタル権利管理法を使用しており、これは Mac や iPod とは互換でないからだ。

映画のエンコードは Apple によれば「ほぼ DVD 品質」のものになっているといい、Dolby サラウンドオーディオが付く。ただ、実際にそれがどの程度良いのか、また品質とダウンロードサイズのバランスに関して Apple が正しい選択をできたのかどうか、という論争は他の人たちに任せたいと思う。ダウンロードにかかる時間が相当のものになることは間違いないが、細かいことはただサイズだけでなくいろいろな変数にも依存することになる。テレビ番組については従来の 320 × 240 ピクセルから 640 × 480 ピクセルのエンコーディングへと変更されている。

ビデオを扱うには QuickTime 7.1.3 が必要だ。これも、先週リリースされたものだ。この新バージョンには他に多数のセキュリティ関係の修正も盛り込まれており、クラッシュを引き起こす可能性のある、悪意を持って作られたムービーへの対策がとられている。これは Mac OS X 10.3.9 かそれ以降を要し、Apple のウェブサイトから、あるいはソフトウェアアップデートから、48 MB のダウンロードで入手できる。

これらの完全版映画を購入した際には、短編ビデオやミュージックビデオ、その他既存のビジュアルコンテンツの場合と同じ制限が課されることになる。つまり、iTunes Store でオーディオを購入した場合と異なり、再生可能なフォーマットでディスクに焼くことはできない。オンラインストアの音楽については、それをオーディオ CD で焼くことが Apple の FairPlay テクノロジーによるデジタル権利管理の世界から抜け出る一つの方法となっていた。けれどもビデオに関しては、確かにファイルのバックアップを作ることはできる(ただしそれも DVD では非常に面倒な作業になる)ものの、それを再生するのは Mac OS X か Windows 用の iTunes、あるいは iPod のいずれかの内部以外では絶対にできないようになっている。(iTunes 7 は現在、購入したコンテンツのダウンロードが終わった後にそれをバックアップするように促してくるが、この警告は表示しないようにもできる。また、File メニューの下に Back Up to Disc というコマンドも新たに設けられている。)

また、購入した映画には特典映像のようなものが一切付属していない。例えば、店頭で売られている“The Incredibles”の DVD にはたくさんの特選映像集や短編などが入っているが、Apple のストアでは一切そういうものには触れていない。Amazon.com ではフルスクリーンのディスク 2 枚組セットを $18 で、国内送料無料で販売している。Apple での価格は $13(発売後一週間のみ、その後は $15)だが、どうやら手に入るのは映画の本編のみのようだ。その上、DVD 版には英語、フランス語、スペイン語の字幕とオーディオ、さらにはオーディオ解説(これには二種類ある)まで付いている。人によっては、これが DVD 版とダウンロード版との非常に大きな差を意味することにもなるだろう。

iTV 先行予告 -- 有名な“One more thing...”発表に今回はちょっとひねりを効かせたものも加えたいと思ったのか、Jobs は iTunes Store への映画の追加を紹介した後で少し言葉を止めてから、やおら“One last thing...”(「最後にもう一つ...」)と語り出し、iTV の紹介を始めた。これはワイヤレスのセットトップボックスで、2007 年の第1四半期内に $300 で売り出される予定だという。この iTV は、Jobs によればその名称はおそらく今後変更されるだろうということだが、あなたが見るすべてのビデオを、ただあなたのコンピュータや iPod の上でだけでなく、あなたが Clark Humphrey の電子ブック“Take Control of Digital TV”を参考にして購入した、あの大型フラットスクリーンのテレビ画面でも見られるようにするということを目指したものだ。もちろんあなたの Mac をテレビに無理矢理繋いで使うことも可能だが、それはエレガントとは言い難い。ことにやたらたくさんのケーブル接続が必要になるのだから。この iTV は、基本的には AirPort Express の新世紀スペシャル版だと考えることもできる。少なくともメディア共有と再生という立場からはそう考えてよいだろう。

この iTV の外見は Mac mini を低く押しつぶしたような感じだ。ワイヤードおよびワイヤレスのネットワーク、USB 2.0、HDMI (High Definition Multimedia Interface)、コンポーネントビデオ、アナログオーディオ、それに光学オーディオ入力のインターフェイスを備えている。そのソフトウェアインターフェイスは Front Row に非常によく似た感じで、Apple Remote を使うことによって映画、テレビ番組、音楽、ポッドキャスト、それから写真にアクセスできる。ここでは HDMI インターフェイスが決定的に重要な役割を果たす。なぜなら、HDMI によって高解像度のデジタルビデオデータを暗号化した形でテレビに送り込むことができるからだ。映画制作各社は HDMI を使うことで、彼らの作った映画の全く同一のコピーが DVD プレイヤーの外部へデジタルに流出するのを防止してきた。けれども一方、HDMI を使うということは、認可を受けた特定のデジタルビデオ再生機器でなければ本来の高解像度が得られないということをも意味している。

キーノートの中ではハードドライブや光学ドライブなどに関する話は出なかったが、この iTV では「より抜きの」インターネットサイトから取り込んだビデオの再生をサポートするということで、その際に何らかの形でのキャッシュ保存が必要になるだろうと思われる。その「より抜きの」という言葉の意味するものが、ただ単に「Apple のサイトから QuickTime での映画予告編を見る」ということだけでなく、それ以上のことを意味しているのだとしたら嬉しい。例えばYouTube チャンネル も上映できたら、と思う。DVD ドライブが付いていないのはとても残念だ。同じ環境で DVD を観賞したい場合、別途に Mac、PC、あるいは DVD プレイヤーが必要になるからだ。私たちの観点から見れば、この iTV は高度に洗練されたメディアアダプタとしてふるまうべきものだ。だから、そこにはできるだけ多くの種類の入力が可能となって、そこからの出力をテレビとステレオシステムに送りさえすればすべてが済むというのが理想の状態だろう。

これから数カ月の間には、いろいろな疑問にきっと答が出されていくことだろう。中でも私たちが関心を持っている疑問点は、iTV がローカルネットワークの中ですべてのコンピュータからのビデオやオーディオをプールすることができるかどうか、それから iTunes Store の認証に基づく制限が課されるのか、24 時間内に何人の異なったユーザーが同じ iTunes に接続して音楽を共有できるかというあの厄介な制限がここにも課されるのかどうか、といった問題だ。それからもう一つ議論の話題として考えられるのは、複数台の iTV を家庭内でどう管理すべきかということだ。AirPort Express とその音楽ストリーミング機能での状況と同様に、それぞれの機器に名前を付けることで解決できるのならば嬉しい。


これはあなたの家の(ましてやあなたの)テレビじゃない

  文: Glenn Fleishman <[email protected]>
  訳: Mark Nagata <nagata@kurims.kyoto-u.ac.jp>

Apple による先週の iTV の発表の中にさりげなく隠されていたことだが、この未来のストリーミング用メディアアダプタでは、 コンポーネントビデオHDMI (High-Definition Multimedia Interface) のいずれかのビデオ出力しか提供されないという奇妙な事実がある。これら二つのビデオエンコード方式は、私にはちょっと馴染みの無いもののように感じられた。実は、私はやっと最近になってわが家の 19 インチのブラウン管テレビ(もう 10 年も経って、壊れかけているもの)を、20 インチの Dell 製 DVI 付き LCD(液晶)テレビに、私が標準ビデオ入力とばかり思っていた1本の丸いプラグによるビデオ入力が付いたもの、へとアップグレードしたばかりだった。

けれどもこれは、単に私がコンシューマ向けビデオの世界の動向について行けていないというだけのことなのだ。そして、皆さんの中にもそういう方々は多いだろうと思う。HDMI が大多数の高精細テレビ (HDTV) において一般的なものだということは私も知っていた。これは外部ディスプレイに使われる DVI (Digital Video Interface) 規格の上位互換となる。HDMI には DVI に欠けている包括的なオーディオサポートが組み込まれており、また別途の基準を使って デジタルビデオとオーディオを暗号化し、ライセンスされた機器から機器へ、例えば DVD プレイヤーと HDTV テレビの間で、それを転送することができる。これこそ、映画会社やその他のビデオ著作権保有者たちが彼らの作品の配付に際してデジタルコピーを「許容する」ための条件として要求しているデジタル権利管理 (DRM) の一部なのだ。(HDMI インターフェイスを持つすべての家庭用娯楽機器は、暗号化を伴ったデジタルコンテンツについては最高の解像度で提供できる。規制を受けないアナログ出力については、意図的にダウンサンプルつまり低い解像度に変えられてコピーされないようになっている。デジタル機器からのこのようなアナログ出力の規制外の使用をすべて差し止めようという動きさえも現在進行中だ!)

コンポーネントビデオはアナログであるが、その品質は高いものと認識されている。コンシューマ向けのコンポーネントビデオでは、三本に分かれたビデオケーブルが信号の運搬を担当する。一本は輝度の情報を運ぶ。これは光度つまり光エネルギーの総量と、詳細情報との組み合わせだ。二本目のケーブルは赤色差から輝度値を除いた信号を運び、三本目は青色差引く輝度値だ。緑色はこれら三つの情報から推断される。このように信号を分離しているために、より正確な色を伴ったクリアーな映像を得ることができる。

私たちがこれまで慣れ親しんできたのは、コンポジットビデオだ。ここでは色信号と輝度信号が一つに組み合わされているため、比べてみれば画質は落ちるものの、一本のケーブルで信号を送ることができる。このエンコード法はアメリカ合衆国の NTSC 方式での基準[訳注: 日本でも同じです]となっており、画質の忠実度の低さから“Never The Same Color”の頭文字だと揶揄されるのが常だった。もう一つ別の、ヨーロッパなど世界各国で一般的な PAL 方式も、似たような状況だ。

私が購入したのは比較的最近の LCD モニタでビデオ再生用に作られたものだったのだが、結局私はその時既に時流に遅れていたということだ。(ただ、言い訳をさせてもらえば、私の Dell はコンピュータ用のモニタで、私はテレビとして使っているのだけれどもこれはもともと専用の LCD テレビという訳ではなかった。)私は名の通ったオーディオ・ビデオ販売店の Crutchfield で価格を調べてみた。すると一番安い LCD テレビ( $350 の 15 インチ Samsung)でさえ、コンポジットおよびコンポーネントビデオに加えて S-Video と VGA(“PC Input”と書かれている)までもサポートしていた。(S-Video は古い ADB (Apple Desktop Bus) 規格のキーボードやマウスのケーブルと似たようなプラグを使っていて、コンポジットよりは良いけれどもコンポーネントよりははるかに見劣りのする画質だ。)

HDMI の使えるテレビの価格を調べるために、私は Crutchfield のリンクを使って そのインターフェイスを持つディスプレイのみに選択肢を絞らせてみた。きっとこれは頻繁に使われる検索リクエストに違いない。この店で一番安い HDMI 対応テレビは、Westinghouse の 27 インチ LCD HDTV で価格は $700 だった。これは HDMI と二基の別々のコンポーネントビデオ入力、それにコンポジットおよび S-Video、DVI、そして VGA も内蔵している。

確かにこれらはそれほど高価な選択肢とは言えないが、もしもあなたが既に完璧に動作するテレビ受像機あるいは LCD モニタを持っていてビデオ再生に使っているのならば、いったいどうしてわざわざ新しいものを買わなければいけないのだろうか? コンバータか何かで、既存のモニタが使えるようにならないのか? 残念ながら、それは無理だ。見たところ、HDMI ストリームから暗号化を外してデジタルコンテンツを抽出し、他の方式(例えば DVI)にエンコードし直すことのできるような合法的な手段は存在しないようだ。だから、そのようなアダプタはどこにも売っていないだろうし、そのようなアダプタがあるとしても、暗号解読と再エンコーディングのためにコンピュータが必要になることだろう。コンポーネントからコンポジットへの変換は、S-Video にしろシングルプラグの RCA 方式にせよ、NTSC または PAL のエンコーダによってビデオエンコード方式の変換をしている。そういう変換ユニットでプロフェッショナル用のものが一番安いものでも $300 からということなので、これはどう見ても一般家庭のユーザー向けとは言えない。

Apple が iTV を、新しいものに真っ先に飛びつくユーザー層に狙いを絞ったものと位置付けていることは明らかだ。そして、適切な動機付けをそれに加えることで、テレビが古くなってきたのでそろそろ買い替えようと思っている人たちの一部にも一線を越えて新しいものを買う気にさせることができるだろう。そうすれば、家庭電化製品メーカー各社の懐も潤うことになるし、Apple 自身も iTV やその他の製品と直接連動させて使える iHDTV を計画しているだろうというのは当然予想できることだ。いわゆるセットトップボックスというものは、たいていテレビ用、あるいはケーブルテレビ用のチューナーも内蔵していることが多いのだから。

ここで考えておくべき要素がもう一つある。それは、コンポーネント方式および HDMI 方式のエンコーディングでは、一般的なユーザーがそこからデジタルビデオを抽出して録画するということが、iTV においては Apple の DRM アプローチの枠外でするのが難しくなるという点だ。かなりのお金を投資すれば、コンポーネント出力からかなりの品質の画像を抽出して録画することはできる。ただしそれも、何らかの方式のMacrovision あるいはその他のウォーターマーク(電子透かし)などのコピー防止によってアナログコンポーネントの録画が妨害されるようになっていなければの話だ。

けれども iTV では、そのハードウェアのデザイン上はっきりと、オーディオとは違い、このアダプタを通じてビデオを見るためにはたった二つの特定の認可された方式のみが定められている、という方針が打ち出されている。Apple がコンポジット方式をそこに含めなかったのは、業界に対してさらに一つアメを差し出すことによって、より多くのデジタルコンテンツをより広い視聴者層にリリースできるためには互いに相手の機嫌を取り合って相手をなだめすかして行かなければならないという、Apple なりの姿勢を示したものなのだろう。


iPhoto に読み込みの隠し機能

  文: Adam C. Engst <[email protected]>
  訳: Mark Nagata <nagata@kurims.kyoto-u.ac.jp>

これから述べる iPhoto の裏技は飛び切り奇妙なものだが、でもちゃんと動作する。MacOSXHints.com に書いてあった情報によると、iPhoto 6 は、少なくともいくつかの機種のデジタルカメラといくつかの種類のメモリカードでは、その中にある写真を直接見ることができるという。そのためにはただあなたのカメラを Mac に接続するか、またはメモリカードをリーダーに差し込むかするだけでよい。iPhoto の Import 画面を開いたら、そこで Import ボタンをクリックしてはいけない。その代わりに、Return キーを二度続けて押すのだ。すると一呼吸おいてから iPhoto は編集モードに切り替わり、そこに iPhoto ライブラリの内容ではなくそのカメラあるいはカード上の写真が表示される。その状態で Escape キーを押すと整理モードに切り替わり、空のサムネールが表示される。サムネールをダブルクリックすると、それにあたる写真を再び編集モードにロードする。

写真の編集はできないが、その代わりに、iPhoto で Edit Photos in Main Screen オプションをオンにしている場合は、その空のサムネールをあなたのライブラリへとドラッグすればその実際の写真が読み込まれる。残念なことに、少なくともいくつかのカメラやカードでは、その写真の日付が失われてしまう(私の場合日付がすべて 2000 年 12 月 31 日になっていた)ので、Apple 自身の製品 Image Capture ユーティリティの選択的読み込みの機能を置き換えるほどの良いものとは言えない。この機能は長年ずっと iPhoto に欠けていたもので、これは本当に困ったことだ。

サムネールが空のままなのにはちゃんと理由がある。なぜなら、iPhoto は通常写真を読み込む際に別途にサムネールファイルを作成するのであって、今の場合その読み込みのステップはまだ起こっていないからだ。ただし、Image Capture では読み込みの以前からサムネールを表示できるので、それと同様のテクニックを iPhoto でも使えない理由はないはずだ。だから、ひょっとしたら、何らかの選択的読み込み機能で iPhoto 6 には間に合わなかったものがあって、それを目指すために書かれたコードを私たちは偶然目撃しているということなのかもしれない。

その真偽のほどは分からないが、とにかく Apple よ、私たちはこんな形で動作する選択的読み込み機能が望みだ。ユーザーがカメラを接続するか、メモリカードを挿入するかすると、iPhoto が起動して、今の挙動と同様に Import 画面を開く。しかしながら、その画面はそのカメラにあるすべての写真とすべてのムービーのサムネールで埋まっているべきだ。そこで Import ボタンをクリックすれば、今と同様にすべてが読み込まれる。(そして、サムネールがすべて表示され終わるまでユーザーが待たないと Import がクリックできないなどということがあってはならない。)けれどもその一方で、ユーザーが好きなだけの写真の集まりを選択して、それらをライブラリにドラッグして読み込む、あるいはアルバムにドラッグして読み込み後そのアルバムに追加する、ということも可能であるべきだ。その後でユーザーが全部の読み込みを実行した場合には、iPhoto は現在しているのと同様の方法で既に読み込まれている写真の中に重複があることをきちんと認識して、同じものを再び読み込んでもよいのかどうか尋ねるようにするとよい。


Adobe、GoLive を Creative Suite から追い出し、Acrobat 8 をりリース

  文: Glenn Fleishman <[email protected]>
  訳: 羽鳥公士郎 <hatori@ousaan.com>

ウェブデザイン・管理ツール Adobe GoLive の末路が定まった。このプログラムは、印刷および電子コンテンツ制作のプロフェッショナル向け Adobe アプリケーションスイート Creative Suite から追い出されることとなった。Creative Suite バージョン 2.3 では、Dreamweaver 8 が GoLive CS2 に置き換わる。また、このアップデートで、本日発表され 11 月に発売されるAcrobat 8 Professional が含まれるようになる。Adobe は、CS 2.3 スイートを 2006 年の第4四半期に出荷する予定にしている。

[訳注: この記事について訂正があります。上記プレスリリースでは、「将来のバージョン」で Dreamweaver が GoLive に置き換わると書かれていますが、Adobe によれば、これは「Creative Suite 2.3 より後のバージョン」という意味だそうです。]

Adobe は、昨年の Adobe と Macromedia との合併の一環として、Dreamweaverを手に入れた。Dreamweaver は、リッチメディアコンテンツやデータベースコンテンツ、PHP スクリプトを組み合わせたインタラクティブなウェブサイトを作成するために最適なツールだと、長いあいだ見なされている。一方 GoLiveは、Photoshop と統合され、Acrobat 内部リンクと PDF 作成に直接対応し、使いやすいため、デザイナーに好まれていた。

この 6 月、Adobe ヨーロッパ製品責任者が GoLive とイラストレーションプログラム FreeHand との両方を見捨てると発言したらしいという情報漏洩事件があり、私が記事を書いた。その後の3か国語にわたる調査と Adobe の発表とによって、GoLive と FreeHand は、Adobe の中核となるプログラムには含まれないが、開発は続けられるということが明らかになった。(今日の発表には FreeHand に関するニュースは何も含まれていない。)

Adobe によれば、GoLive は独立したプログラムとして開発が続けられるということだが、この製品がどのような顧客にアピールするかは定かではない。説得力のある噂では、GoLive は、初心者ユーザを主な対象とし、より親しみやすいウェブデザインツールに改作されるだろうと言われている。

Creative Suite に加えられたもう1つのアップデートは、 Acrobat の更新で、バージョン 8 になった。この製品にはほかにも様々なバージョンがある。新機能は 様々な項目の雑多な寄せ集めで、その多くは、限られた分野のユーザの興味しか引かないだろう。しかし、注目すべき機能は、隠されたメタデータやレイヤーなど、不可視情報をすべて削除できるようになったことで、これにより、意図しない情報開示を防ぐことができる。また、「墨消し」ツールを使えば、PDF ファイルからテキストや画像を永久に削除できる。さらに、Acrobat 8 Professional では、作業グループ内で PDF のコメントや注釈を共有できる。

Adobe は Macromedia Breeze の最新版に Acrobat の名を貼り付け、Acrobat Connectとした。Connect は、WebX や NetMeeting に似たような会議ツールで、PDF や画像、ビデオなどあらゆる種類のメディアをすべての参加者と共有することができる。ベーシック版では 15 人までの会議を主催でき、使用できるメディアは限られている。Professional 版は企業が自社のサーバにインストールすることができ、最大参加者数は自由に設定できる。このProfessional 版には、メディア共有のためのツールが1そろいと VoIP(voice over IP)、様々なレポートツールが含まれる。Connect のホスティング版は、Acrobat スイートのほかの製品と同様、11 月に発売される。Professional 版は 12 月出荷開始の予定だ。

Creative Suite 2.3 は、Acrobat 8 Professional と Dreamweaver が含まれる Premium 版で店頭価格が 1,200 ドルとなる。現在の CS2 ユーザは、160ドルを払えばアップグレードできる。そのほかのバージョンやエディションのCreative Suite を持っているユーザは、550 ドルでフルアップグレードができる。Acrobat 8 Professional は 450 ドルで、それ以前の様々なエディションからのアップグレードは 160 ドルとなる。Acrobat 8 Standard は 300 ドルで、各種アップグレードは 100 ドルだ。Acrobat Connect は、基本的なホスティング版で、一月当たり一人当たり 40 ドルだ。オンサイトのプロフェッショナル版の価格はまだ発表されていない。ベーシック版 Acrobat Connectでは、リリース後今年の末まで、無料の試用版も提供される。

スタッフ円卓会議 -- この記事では、普段と違うことをやってみようと思う。この種の発表の後では、必然的に内部の議論が巻き起こるもので、それを1人がまとめて記事にするのではなく、より辛辣な私たちの考えや意見をそのまま聞いていただこうと思う。Glenn と Jeff は GoLive の経験が豊富で、"Real World Adobe GoLive" を3冊書いている一方、Adam は Take Controlの PDF ファイルをいじくるために、Acrobat Professional で多大な時間を費やしている。

[Glenn Fleishman]: GoLive が Adobe のものになる前、CyberStudio と呼ばれていた時代から、極めて才能豊かな多くの人たちが開発を続けてきたにもかかわらず、このプログラムは、数年前に 6.0 がリリースされた頃にはすっかり衰えており、それ以降 Dreamweaver との相対的位置が回復することはなかった。スクリプトやデータベースの結果を統合して取り扱うという点で、GoLive が最低限の機能しか扱えないでいるあいだに、Dreamweaver が GoLiveを追い越してしまった。GoLive 6 には、データベース統合やスクリプトプレビューのツールが多く含まれていたが、それらすべては GoLive CS で捨て去られ、それと同時に Dreamweaver と直接競合するという希望も捨て去られた。2002 年頃から、Macromedia が Dreamweaver に割り当てているリソースよりもかなり少ないリソースしか、Adobe 上層部が GoLive に割り当てていないということが明らかになっていた。Macromedia が Dreamweaver をDirector や Flash と並んで重要な製品だと位置づけていたのに対し、GoLiveが Adobe の旗艦製品となったことは一度もなかった。

Acrobat について言えば、このような成熟した製品が新しい機能を身に付けるということはますます難しくなっている。近年の Adobe が注力していることのほとんどは、2つのことに向けられている。1つは印刷物制作ワークフローの改善で、PDF ファイルを単に中間段階とするのではなく、中間かつ最終段階として、PDF ファイルから最終制作物が生成されるようにする。もう1つは作業グループ内での共同制作で、各メンバーが何も印刷せずに済むよう、PDFファイルにコメントや注釈を加えることができる。バージョン 8 も同じ流れを継承しているが、セキュリティ機能が改善されたことを除けば、注目すべきことはほとんどないようだ。

「墨消し」機能は、「おっと、黒マジックだと思ったよ」機能だと言ってもいいだろう。多くの文書が、例えば Microsoft Word から PDF に変換され、その後機密情報の上に墨が塗られている。しかし、Acrobat Professional ユーザであれば誰でも、墨を消して下のテキストを見ることができた。しかしこれからは、墨で消された項目は PDF ファイルから完全に消去される。

[Jeff Carlson]: 私が思うに、Adobe が何と言おうと、GoLive は死んだ。Adobe は開発を続けると言い続けるだろうが、GoLive を Creative Suite からはずしたということは、このプログラムに引導を渡したことにほとんど等しい。ほとんどの人は、Creative Suite の一部だからという理由で、この製品を使っていたのだから(さもなければ、ただ惰性で使い続けていたという人だ)。そうは言っても、デザイナーの中には GoLive を使い続ける人がいるだろう(この製品がアップデートされると仮定して、そして、ほかの何かに変わったりしないと仮定しての話だが)。そういう人たちは、このプログラムに精通しており、テンプレートを作っていたり、インターフェースを完全に理解していたりするのだろう。それはかなりの離れ業だが。しかし、仮に私が現在仕事で GoLive を使っていたとするなら、今日の発表は、長いあいだ考慮していた Dreamweaver への乗り換えを決心させるものとなるだろう。

[Adam C. Engst]: 私は GoLive にも Dreamweaver にも興味はない。これらの使い方を覚えることが、HTML と CSS を覚えて BBEdit など好みのテキストエディタで作業することと比べて、簡単だというわけではないと、ずっと以前に判断したからだ。むしろ私にとって興味があるのは Acrobat 8 の発表だ。というのも、私たちは Take Control 電子ブックで Acrobat に大いにお世話になっているからだ。プレスリリースの調子からすると、Adobe は Acrobat のインターフェースを簡素化し、共同作業ツールを改善することに注力したようで、それは素晴らしいことだが、それらが本当に、細部に潜む種々の悪魔を追い払ったのかどうか見定めるまでは、判断を控えたい。

Acrobat Professional を使って PDF で作業をすると、ほとんどの時間がイライラの連続となる。例えば、私が電子ブックのサンプルを作ったときのように、すべてのページの下部にリンク付きの赤いテキストを1行加えようとすると、フッタを作るだけなら簡単なのだが、色を1行ずつ手動で赤く変更しなければならない(Acrobat ではフッタテキストの色の設定ができない)し、コピーしたリンクをページ毎に手動でペーストして適切な位置に移動しなければならない(Acrobat ではフッタにリンクを含めることができず、リンクをペーストすると、コピーされた元のリンクと相対的に同じ位置にペーストされるのではなく、常にページの中央に現れる)。PDF で作業するための主要なツールが、こんなに単純なことをこんなに難しくしているのだから、人々が作成するPDF があれほどひどいとしても、何の不思議もなかろう? Acrobat 8 で Adobeがこれらの問題を修正してくれたことを祈るが、これまで期待が裏切られ続けた年月を考えれば、それも望み薄だ。

[Glenn Fleishman]: ウェブページの作成・管理のグラフィカルなフロントエンドに Adam が興味を示さないということは、Dreamweaver が成功している主要な理由の1つを明らかにしている。現在では、ほとんどのウェブサイトは、規模の大小にかかわらず、個別に編集されたページの雑多な寄せ集めではなくなっている。TidBITS など私たちの Web Crossing ソリューションもそうだし、もちろん、ほとんどのブログもそうだ。サイトというものは、データベース駆動型のテンプレートを使って構築され、テンプレートを編集し結果を見るための専用のツールやウェブページを使わずにプレビューするのは、極めて難しいことが多い。Dreamweaver は、スクリプトのプレビューにかなりの程度対応しているだけでなく、拡張可能だ。今日本当に役に立つウェブ編集ツールというのは、既存のテンプレートを使ってページを作ったりプレビューしたりすることができるだけでなく(GoLive CS2 は Movable Type のフォーマットを部分的にサポートしている)、Web Crossing のような、直接の対応が期待できるほどには一般的でないプログラムで動くモジュールを、自分で簡単に書けるようになっていなければならない。そのような機能があれば、テンプレートベースのページ制作の威力を損なうことなく、ビジュアルエディタの威力も利用して、Cascading Style Sheet を管理し、サイト内のページすべてにわたって見た目を統一することができる。


Take Control ニュース/18-Sep-06

  文: Adam C. Engst <[email protected]>
  訳: Mark Nagata <nagata@kurims.kyoto-u.ac.jp>

"Macworld Mac Basics Superguide" で物知りになろう -- さあ、Mac クイズの時間ですよ!(答は最後に)

  1. すべての Finder ウィンドウで見栄えのデフォルトを変更するには?
  2. どうすれば Dock が不可視になる?
  3. ログアウトせずに別のユーザアカウントに切り替えるには?
  4. 凍り付いて反応しないアプリケーションを終了するには?

こういう質問のうち一つでも答に自信のないあなたには、78 ページある新刊ほやほやの電子ブック“Macworld Mac Basics Superguide”をお薦めしたい。Macworld からリリースされたこの電子ブックには TidBITS と Take Control の作者たちもその制作に加わっている。質問と答 (question-and-answer) 形式の読みやすいスタイルで書かれた $12.95 のこの電子ブックを読めば Mac OS X を使う助けが得られ、Dock を使いこなし、システム環境を正しく設定し、複数のユーザアカウントを設定して切り替え、アプリケーションや書類で作業し、あなたの Mac を検索し、あなたの Mac のセキュリティを保ち、問題点のトラブルシュートをしたり、付属の Mac OS アプリケーションを使い分ける、そういったことが迷わずできるようになる。こういう情報は、すべての Mac ユーザーが知っているべきことだ。(少なくとも、知っていれば助かることが多い。)

でも、きっと何人かの方々はこんな風に思っていらっしゃるだろう、「Macintosh の専門知識なら俺の右に出る者はないぞ。俺は pico で plist の編集もするし、気晴らしに Open Firmware でブートするなんて朝飯前さ」と。確かにそれはすべておっしゃる通りだろう。でも、そんなあなたも、飛び抜けて辛抱強くて愛他精神に富んだ専門家でない限り、より経験の浅い友人たちや親戚たちの助けをする時になれば、そのためにあなたの貴重な時間が削られて、あなたのウェブサイトを XHTML Strict 完全対応とするための努力に割ける時間が減ってしまうことだろう。ならば、そういう人たちにはこの電子ブックについて教えてあげるか、あるいはそういう人たちにこの電子ブックを買ってあげればよいではないか。(いやらしい DRM など組み込まれていないので、他の人に買ってあげても何の問題も起こらない。)そうすればあなたはもう、あなたが何年も前に身に付けた知識について彼らから至極もっともな質問の嵐を浴びせられずに済む。(その上、“Take Control of Maintaining Your Mac”の割引クーポンも付いているので、それを使えば彼らの Mac もよりスムーズに動くようになり、あなたの技術サポートの負担もさらに減らせるだろう。)

クイズの答:

  1. ファイル > 新規 Finder ウインドウ (Command-N) を選び、その内容のファイルやフォルダなどを一切選択しないままで、ウィンドウをあなたの設定したい状態にしてから、そのウィンドウを閉じればよい。(Finder の「一般」環境設定パネルにはすべての新しいウィンドウをカラム表示で開く設定がある。これが選択してあるとそれが他のすべての表示に優先されることに注意。)
  2. アップルメニュー > Dock > “自動的に隠す”機能を入にする (Command-Option-D)
  3. 「アカウント」環境設定パネルでファーストユーザスイッチを有効にしてから、メニューバーのファーストユーザスイッチメニューを使う。
  4. アップルメニュー > 強制終了... (Command-Option-Escape) を選び、凍り付いたアプリケーション名を選んでから 強制終了 をクリックすれば強制終了が実行される。または、そのアプリケーションの Dock アイコンをクリックしたままホールドし、そこで現われるメニューから 終了 を選ぶ。

TidBITS Talk/18-Sep-06 のホットな話題

  文: TidBITS Staff <[email protected]>
  訳: Mark Nagata <nagata@kurims.kyoto-u.ac.jp>

ファイル名の変更でファイルフォーマットを変更 -- BBEdit 8.5 はファイルを保存する際にファイル名に .gz あるいは .gzip の拡張子を付けるだけで自動的に書類を gzip 圧縮することができる。これは、価値ある便利な機能なのだろうか? それとも、危険をはらんだ余計なお世話か? (3 メッセージ )

FTP クライアントを比較したら -- ファイル転送プロトコル (File Transfer Protocol) を実装したいろいろのアプリケーションを読者たちが検討し、それそれの機能の便利さについて議論を交わす。(13 メッセージ )

Mac メディアセンターを構築 -- 新しい家に引っ越すので、二台目のテレビとオーディオシステムをどう組み合わせたらよいか迷っている、という読者がいる。どんなハードウェアを使うべきか? Mac 版の TiVo2Go というのはどんなものか? (12 メッセージ )

Microsoft Word 書類の互換性 -- Word を使う Windows ユーザーたちとの間で互換性を最大に保つには、Mac 用にも最新バージョンの Word を購入するのが必須なのか? (13メッセージ )

電子メール専用のホスティング -- 電子メールのサービスプロバイダについて提案が寄せられ、さまざまのホスティングのオプションについて、また電子メール転送に付き物の問題点について、読者たちが探究する。 (17 メッセージ )

賢いエージェントサイト -- あなたが閲覧あるいは購入した項目に基づいて項目の推薦をしてくるサイトという考え方は有望に見えるが、実際の結果は芳しくないことも多い。どこのサイトが良いだろうか? (4 メッセージ )

これはあなたの家の(ましてやあなたの)テレビじゃない -- Apple による iTV の発表は DRM によって課せられた制限事項を持ち出しており、そのことは映画制作会社たちが製品へのアクセスを規制することで消費者の方がそっぽを向き続けるかもしれないという問題をはらんでいる。 (1 メッセージ )



tb_badge_trans-jp2 _ Take Control Take Control 電子ブック日本語版好評発売中

TidBITS は、タイムリーなニュース、洞察溢れる解説、奥の深いレビューを Macintosh とインターネット共同体にお届けする無料の週刊ニュースレターです。ご友人には自由にご転送ください。できれば購読をお薦めください。
非営利、非商用の出版物、Web サイトは、フルクレジットを明記すれば記事を転載または記事へのリンクができます。それ以外の場合はお問い合わせ下さい。記事が正確であることの保証はありません。告示:書名、製品名および会社名は、それぞれ該当する権利者の登録商標または権利です。TidBITS ISSN 1090-7017

©Copyright 2006 TidBITS: 再使用は Creative Commons ライセンスによります。

Valid XHTML 1.0! , Let iCab smile , Another HTML-lint gateway 日本語版最終更新:2006年 10月 13日 金曜日, S. HOSOKAWA