TidBITS: Apple News for the Rest of Us  TidBITS#862/15-Jan-07

先週 San Francisco の Macworld Expo で、会社名を新たにした Apple, Inc. は以前から噂されていた iPhone を発表した。iPod とモバイルフォンとインターネット情報伝達機に、エスプレッソマシンとウィンドウクリーナーまでも詰め込んで一つにまとめたものだ。いや、ひょっとしたら最後の2つは私の勘違いだったかな? 今号ではまず、Apple の発表に従って iPhone に何ができるのかを一通り概観し、それから Glenn Fleishman がさらに一歩踏み込んで実際に触ってみた報告をする。また、今回 Apple TV と呼ばれるようになった iTV と、Apple の新しい AirPort Extreme(日本では AirMac Extreme)ネットワーキングシステムについても詳細をお伝えする。他の会社から出た発表もいくつかあって、Jeff Carlson が BBEdit 8.6、Yojimbo 1.4、TextWrangler 2.2、Fetch 5.2、それに Microsoft Office 2004 11.3.3 のリリースを簡潔にお知らせする。最後に、Adam がこれらすべてを結び付けつつ、Macworld Expo の会場に新しく芽生えつつある Macintosh の活力について彼の取材の結果を披露する。

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Macworld Expo の中身をもっと聞きたい?

  文: Adam C. Engst <[email protected]>
訳: Mark Nagata <nagata@kurims.kyoto-u.ac.jp>

Tonya と私はこの一週間ずっと、いろいろなプレゼンテーションやパネルディスカッション、インタビューなどで話をしていた。そういうものは全部録音された訳ではないし録音されたものもまだ全部公開されている訳ではないが、いくつかすでに公開されているものもあるのでお知らせしたい。まず、火曜日の Your Mac Life プレゼンテーションで、私は Shawn King と一緒に何と 60 分間も、終わったばかりのキーノートの解剖分析をしている。その後水曜日の MacNotables パネルディスカッションでは、結局 Tonya と私の二人だけが Chuck Joiner を相手にキーノートでは語られなかったことについて討論した。そして最後にもう一つ、MacCentral の Jim Dalrymple が司会した金曜日の Macworld 誌のパネルディスカッション で、私と、Macworld の Chris Breen、それに Your Mac Life ホストの Shawn King という面々が丁々発止のやり取りで一週間のニュースについて議論しているのは是非ともお聞き逃しなく! 来週にはもっとリンクをお知らせできると思う。


Bare Bones 社、複数のアップデートをリリース

  文: Jeff Carlson <[email protected]>
訳: 松田 栄 <sacaboom@gmail.com>

先週 Apple の iPhone に注目が集まる中、Bare Bones Software は 3つのアプリケーションのアップデートをリリースした。Bare Bones 社の主要なテキスト・エディタ BBEdit 8.6 では、Java や TeX の対応が向上し、Markdown 構造化テキスト・フォーマット(これは私たちが TidBITS を作成するのに利用している)のサポート(テキストのカラー付け、文書の構造要素を折り畳む機能、BBEdit 内での結果をプレビューする機能など)が追加されている。新しいバージョンでは、整形された HTML で保存やコピーするコマンドがあるが、これはコードのサンプルをウェブにポストするとき、大変便利だ。BBEdit ではまた、Mac OS X の初期設定ファイルで使われているバイナリ形式のプロパティ・リスト・フォーマットで読み書きができる。BBEdit 8.6 は、バージョン 8.5 以降を持つユーザーなら無料でアップデートでき、ダウンロードは 14 MB だ。

Yojimbo 1.4 では、オーガナイザーの AppleScript のサポートを拡大し、バグを修正している。このアップデートは、登録済みのユーザーは無料で、ダウンロードは 10.1 MB だ。Bare Bones 社のフリーのテキスト・エディタである TextWrangler は、バージョン 2.2 となり、BBEdit の外観とマッチするようにインターフェイスが整備されたただけでなく、機能も同様に、バイナリ形式のプロパティ・リスト・フォーマットをサポートし、Preferences ウィンドウが強化されている。また内蔵されている Java、TeX、JavaScript の各言語のサポートが改善された。TextWrangler 2.2 のダウンロードは 9.9 MB だ。Bare Bones 社のすべてのアップデートでは Mac OS X 10.4 以降が必要となる。


Fetch 5.2 があなたの WebView を改善

  文: Jeff Carlson <[email protected]>
訳: 松田 栄 <sacaboom@gmail.com>

Fetch Softworks 社の Jim Matthews が Fetch 5.2をリリースし、WebView と言う新しい機能を追加している。これは FTP 経由でのダウンロードができない可能性がある第3者とのファイルの共有を、もっと楽にすることを約束している。要するに WebView は、ユーザーが設定したパターンに従って、ftp の URL から http の URL へ変換するのだ。一度その設定を行ってしまえば、WebView ボタンをクリックして、ウェブブラウザでファイルを一覧でき、選択したファイルの http の URL をコピーすることも可能だ。この新しいバージョンでは、FTP over SSL/TLS (FTPS) での安全な接続もサポートしている。また、サーバへのアップロードがドラッグ&ドロップでできるドロップレットのショートカットをサポートし、多数のバグを修正している。Macworld Expo の Fetch ブースへ立ち寄ったとき、 Jim は私たちに、FTP のネットワークのコードを見直し、性能と互換性が改善されたと話していた。Fetch 5.2 は、バージョン 5.0 以降のユーザーなら無料でアップデートが可能。インストールには Mac OS X 10.3.9 以降が必要で、ダウンロードは 15 MB だ。

Microsoft、 Office 2004 11.3.3 Updateをリリース

  文: Jeff Carlson <[email protected]>
訳: 松田 栄 <sacaboom@gmail.com>

最近リリースされたソフトウェアの更新プログラム(2007-01-08 の " Microsoft が Office 2004、Office X の更新プログラムをリリース " を参照)に続いて、 Microsoft は先週 Microsoft Office 2004 for Mac 11.3.3 更新プログラム をリリースした。この更新プログラムでは、スイート全般にわたりセキュリティが強化されている。Windows の Office Word 2003 で作成される Rich Text Format (RTF)文書との互換性が向上し、Excel 2004 の PivotTable レポートの標準偏差の計算が修正されている。Entourage 2004 では、2007 年 3 月 11 日以降のイベントが誤って表示される問題が修正され、日本の郵便番号辞書が更新されている。この更新プログラムは、ダウンロードサイズが 57.6 MB もあるが、以前リリースされた Office 2004 更新プログラムのすべての改善点と修正点が含まれている。更新プログラムは直接ダウンロードするか、Microsoftの AutoUpdate ユーティリティを使用して入手できる。

Microsoft は私たちに、Office 2008 に含まれる予定の機能のプレビューをしてくれた。この Macintosh 版のスイートの刷新は、2008 と称しているのにもかかわらず、2007 年の下半期にリリースされる予定だ。要するに、Microsoft は Office アプリケーションの既存する機能の多くを、さらにわかりやすく簡単に、使いやすくするつもりなのだ。残念なことに、小規模なワークグループが Word や他のアプリケーションに心底必要としている新しい共同編集機能についての発表はなかった。詳細がわかり次第アップデートしていく。


iPhone は携帯電話の定義を変えるか

  文: TidBITS Staff <[email protected]>
訳: 羽鳥公士郎 <hatori@ousaan.com>

Apple 製携帯電話は何か月も前から噂になっていたが、それでも Steve Jobsは、Macworld Expo 2007 の基調講演に集まった聴衆を沸かせてみせた。iPhone は、カッコいい携帯機器で、iPod とスマートフォン、そしてインターネット通信機器の機能が組み込まれている。単独では販売されず、Cingularと2年のサービス契約を結ぶことが必要だ。サービスプランはまだ発表されていない。iPhone は、米国では 2007 年 6 月に出荷開始予定で、構成は2種類、4 GB モデルが 500 ドルと、8 GB モデルが 600 ドルだ。Jobs によれば、ヨーロッパでは 2007 年の第4四半期に、アジアでは 2008 年に販売が開始される。

発売開始が遅いため、熱狂した聴衆もがっかりさせられたが、Jobs が言うには、iPhone はこれから米国 Federal Communications Commission(連邦通信委員会:FCC)の認可を受けなければならない。Jobs によれば、Apple が6か月も早く iPhone を発表したのは、これが FCC の公文書で「発表」されることを望まなかったためだという。

(この説明で、寄稿編集者の Glenn Fleishman にはピンときた。彼によれば、FCC の Office of Engineering and Technology Equipment Authorization プログラム には、まだ公表されていない製品のための機密保持プロセスがあって、2004 年の時点で iPhone のような製品も扱えるよう拡張されていた。製品が発売または出荷されるより最大 180 日前まで機密保持が認められ、それは製品のあらゆる詳細にまで及ぶ。実際、iPhone とともにMacworld で紹介された AirPort Extreme は、この製品が発表されるまで FCCから何の情報も公開されていなかったところを見ると、このプロセスを使って認可されたのだろう。)

デザイン -- Apple の工業デザイン部門なら当然と思うようになってしまったが、この新製品の外観は印象的で個性的だ。市場に出回るどの携帯電話とも似ていないし、iPod とも、この発表の前に現れた、おそらくはリークされたモックアップのいずれとも似ていない。大きさは幅 2.4 インチ(61 mm)、高さ 4.5 インチ(115 mm)、厚さはたったの 0.46 インチ(11.6 mm)で、現行のビデオ機能付き第5世代 iPod と比べてもわずかに大きいだけだ。重さは4.8 オンス(135 グラム)だ。

Apple は物理キーボードを採用せず、電話のうんざりさせられる数字キーも、Blackberry や Palm Treo のような機器の不格好なミニ QWERTY キーボードも、あるいは最新の Blackberry Pearl で採用された1つのキーで2文字入力する方式も退けた。その代わり、対角 3.5 インチのタッチパネル式カラー画面に、必要に応じて現れる仮想キーボードを指でタイプする。画面の解像度は160 ppi(pixels per inch)で 320 × 480 ピクセルだ。キーボードがないため、機器のほぼ全面を使ってビデオや写真を見ることもできる。

iPhone は縦位置でも横位置でも使える。内蔵の加速度計により、どちらの位置になっているかを判定して、(たとえば写真やウェブページを見ているときなど)表示を自動的に切り替える。New York Times の David Pogue が指摘するところでは、前面の1つボタンが下に来るよう真っ直ぐ持つと縦位置で使え、そこから時計と反対向きに回すと横位置で使えるが、どちらの位置からでも 180 度回転した位置では使えない。

iPhone には、加速度計のほかに、2種類のセンサーが組み込まれている。画面の上には近接センサーがあって、iPhone を耳に近づけると、バックライトが消灯し、タッチパネル機能がオフになる。そうすることで、Jobs の言葉を借りれば「顔による偽入力」を防いでいる。また、環境光センサーがあって、暗いところでは自動的に画面を暗くする(これには、電池の消費を節減するという効果もある)。

画面の下にある Home ボタンを押すと、iPhone の メイン画面が表示される。このボタンは数少ない物理スイッチの1つだ。ほかには、消音スイッチと音量スライダが左側にあり、上にあるボタンは iPhone をスリープさせてタッチパネルをロックする。物理スイッチがわずかだということには重要な意味がある。iPhone のインターフェースがソフトウェアで提供されるようになれば、それを Apple が変更したり追加したりするのは、それだけ簡単になる。

この機器の背面はつや消しの金属で広々としており、目に見えるものと言えば、2 メガピクセルのデジタルカメラ用の小さなカメラレンズと、鏡面仕上げの Apple ロゴだけだ。(このロゴは、Apple 流ミニマルデザインの好例だ。ほとんどのカメラ付き携帯電話では、レンズのそばに小さな鏡があって、自分を撮影するときに構図を決めることができる。このような丸い反射は、Appleのデザイナーにとっては余計なものだったようで、それでロゴを鏡面仕上げにしたのだ。)

背面で見えないものと言えば、スピーカだ。これも、多くの携帯電話のデザインとは異なっている。その代わり、1つのスピーカが前面の上端、iPhone が耳に触れるところにあり、もう1つのスピーカが下端にあって、着信音などの音を再生する。このスピーカを使って、iPhone をスピーカフォンとして使うこともできるし、音楽を聞くこともできる。試作品の音質は良かった。マイクロフォンは下端にあり、声をひろう。当然予想されるように、iPhone にはポートも2つある。ヘッドフォンとマイクロフォン用のジャックが1つと、同梱のドックに接続するための 30 ピン iPod コネクタが1つだ。

Jobs の公式見解によると、電池の寿命は、通話やビデオ再生、ウェブブラウジングで 5 時間、音楽再生では 16 時間だ。(コメディー番組 Saturday Night Live のネタの1つで、魔法のランプ機能 iGenie で iWish の願い事がかなえられるなどと大げさに語った「Steve Jobs」氏は、電池の寿命をたずねられ、「20 分」と答えた。これは大うけだった。)

Apple には、別売りの有線ヘッドセット(iPod のイヤホンに似たもので、コードに小さなマイクロフォンが付いている)や、小さな Bluetooth ヘッドセット(iPhone と自動的にペアリングできるだろう)をリリースする計画がある。サードパーティーのヘッドセットと互換性があるかどうかは明らかになっていない。しかし、Apple が Bluetooth という言葉を使っている以上、ほかの Bluetooth ヘッドセットも使えると考えてよいだろう。というのも、Bluetooth の仕様では、標準に準拠したすべての機器が利用できるのでなければ、その名称や、ヘッドセットといった関連するプロファイルを使用することが認められていないからだ。

ユーザインターフェース -- iPhoto の画面は前面のほぼすべてを占めているので、操作のほとんどは、Apple がよぶところの「マルチタッチ・ディスプレイ」で行うことになる。これは Apple 独自の技術で(「そしてもちろん、特許をとった!」と Jobs は強調した)、ユーザはこの機器を片手で操作できる。ポインタを動かすだけでなく、1本の指でタッチパネル全体をドラッグするとスクロールすることができ、2本の指で「つまむ」動作によって画像などのコンテンツを拡大することができる。

Home ボタンを押して表示されるページでは、主な機能がアイコンで表されている。ここからは、あらゆる操作を指の動きで行う。たとえば、仮想スライダを左から右に動かすと、インターフェースのほかの部分のロックが解除される(iPhone がポケットやかばんの中で勝手に動き出さないようになっているのだ)。連絡先のリストをスクロールするには、物理的なホイールと同じようにすればよい。つまり、指を画面上で上向きや下向きに走らせると、そのドラッグの速度に応じたスピードでリストがスクロールする。速い速度で上下の端に達すると、徐々に速度が遅くなり、「輪ゴムでとめた」ように止まる。Kathy Sierra は、彼女の Creating Passionate Users ブログで、このようにインターフェースに無骨さのないことがどれだけ重要であるか、優れた議論を展開している。

物理的なボタンを使用していないため、Apple は、必要な作業に応じてもっとも適切なインターフェースを、それが何であれ表示することができる。電話で話しているとき、映画を見ているとき、音楽を聞いているとき、ウェブを見ているとき、それぞれの状況に対応したボタンを表示することができるわけだ。基調講演の中で、Jobs が iPhone のデモをするのを見ているときが、聴衆が驚嘆の声をあげる時間の半分を占めていた。基調講演をオンラインで見る か、Apple がウェブサイトに用意した QuickTours を見ると、このマルチタッチ機能がどのようなものか、よりよくお分かりいただけるだろう。

Jobs は、iPhone が実際に Mac OS X で動いているという事実を強調した。これは機能限定版ではなく、あなたの Mac を動かしているのと同じ完全なオペレーティングシステムだ。(David Pogue が Apple から聞いたところでは、そうではなく、これは Mac OS X のサブセットだということだ。)しかし、これがコンピュータと同じように動くと期待してはいけない。Mac OS X の諸機能の中でも、使用できるのは、ここで紹介しているような iPhone の機能とインターフェースのみで、システムのそれ以外の部分は Apple によって隔離されている。これはつまり、開発者は独自のアプリケーションや、ウィジェットですら書くことができないということも意味する。もしできたとしても、Apple は将来のアプリケーションを承認して、それを自身の手で配布するだろう。Apple が iPod を厳重に管理していることを考えれば、サードパーティーの製品は、ケースやドック、あるいは iPhone の 30 ピン・ドックコネクタに接続するアクセサリに限定されると予想される。

電話機能 -- Jobs の発表によれば、Cingular が唯一、米国におけるiPhone の「複数年の」携帯電話会社になる。ゲスト発表者、Cingular の CEO Stan Sigman が、索引カードに書かれた演説を読みあげながら語ったところでは、両社は「複数年の」契約を結んだという。興味深いことに、Cingular の国内販売担当社長 Glenn Lurie が PC Magazine の記事の中で言うには、この契約は Cingular にとって利益となり、Apple は得るものよりも差し出すものが多いということだ。(Cingular という名前は、今後 AT&T へと変化し始めるだろう。AT&T が BellSouth を買収したことで、この巨大通信会社はCingular の資本を 100 パーセント所有することになった。それまでは 60パーセントを所有していた。)

iPhone は、電話をかけたり受けたりといった基本的なことをはるかに越えて、電話番号を簡単に探したり、通話を保留したり、会議通話を開始することもできる。Jobs のデモでは、電話の着信を受けて、通話を続けながら、そのほかの機能、たとえばウェブで映画の時間を調べるといったことをしてみせた。このようなことは、スマートフォンの機能としては珍しくないが、Appleのインターフェースはきわめて使いやすい(特に会議通話を設定するのは、ほとんどの携帯電話ではいらいらさせられる)。

iPhone には Visual Voicemail 機能もある。これは、留守番電話のメッセージにランダムアクセスができるという機能で、ほとんどのシステムで使われている、あの恐るべきメニューツリーが取り除かれている。ほとんどの携帯電話やスマートフォンでは、せいぜい、まだ聞いていないメッセージの数が表示され、その後は聴覚のプロセスとなる。つまり、メッセージが録音された順番に、聞くか飛ばすかする。iPhone では、このプロセスは視覚的でランダムアクセスだ。メッセージはリスト表示され、どれでも指でタップして聞くことができる。発信者の電話番号が電話帳に登録されていると、名前が表示される。Apple が Visual Voicemail 機能を追加できたのは、Cingular と結んだ提携のおかげで、Cingular はこの機能を提供するため、同社のネットワークシステムとストレージシステムを部分的に設計し直さなければならなかった。この機能は、Apple が米国外ではオプションとするのでなければ、米国以外でApple と提携しようとする企業にとって障害となるに違いない。

iPhone には SMS ショートメールの機能もあって、タッチパネル上の小さなQWERTY キー配列でタイプしながら、iChat に似たインターフェースで複数の会話をすることができる。テキスト入力は、自動補完などの入力支援機能があるので、簡単に行える。インスタントメッセージのクライアントを搭載する計画はない。iChat の何らかのバージョンすらないというのは奇妙だ。

インターネット機能 -- この新しい iPhone は、超高速 802.11n 対応Wi-Fi か、Cingular の EDGE サービスを使用した携帯電話接続(データ転送速度は下りでおよそ 50 から 150 Kbps)で、インターネットに接続できる。Jobs は、将来のある時点で第3世代(3G)ネットワークに対応すると約束している。Cingular は、現在のところ、UMTS(下りで 200 から 300 Kbps)とHSDPA(下りで 350 から 500 Kbps)を全米で点々と展開しており、ヨーロッパやアジアの携帯電話会社もこの高速ネットワークを積極的に展開している。想像するに、Jobs は、高速ではあるがすべての都市圏でその速度を発揮できるわけではない携帯電話は望まなかったのだろう。Verizon と Sprint の 3G技術は、互換性がないが、ほとんどすべての大都市と多くの中小都市をカバーしている。新たに巨大な存在となった AT&T は、総合戦略の一環として、HSDPA を全米で推進すると考えられる。

iPhone がインターネットに接続されれば、iPhone 版の Safari ブラウザを使ってウェブページを見ることができる。携帯電話で動いているほとんどのWAP 対応ブラウザとは異なり、読み込まれたウェブページは、Macintosh で動いている Safari で通常表示されるのと同じようにレイアウトされるが、文字や画像はきわめて小さくなる。iPhone の Safari は、Opara が携帯電話用に開発したブラウザと比べても遜色がない。

ページの見たいと思った部分を拡大するには、ダブルタップや「つまむ」といった手の動作を使う。もちろん、こんなに小さな画面では長時間のウェブサーフィンをしようとは思わないだろうが、既存のさまざまな携帯電話と比べてみれば、これはウェブを利用するのに気が利いていて役に立つ方法のように思われる。

iPhone では HTML メールの送受信もできる。これはどうやらすべての IMAP接続および POP3 接続に対応するようだ。特に、Apple は Yahoo と提携し、無料の「プッシュ式」IMAP 電子メールを、すべての iPhone 購入者に提供する。プッシュ式電子メールこそ、Research in Motion の Blackberry 機器があれだけ速く広まった要因の1つだ。サーバにメールが届くとすぐ、サーバがそのメールを携帯機器に送り出す。ちょうど、電話で留守番電話のメッセージを受け取るとすぐに通知されるようなものだ。通常の POP や IMAP でメッセージを引き出すこともできる。

iPhone の電子メールのインターフェースは、Apple Mail のユーザには見慣れたもののようだったが、画面上の QWERTY キーボードで長文のメッセージをタイプしようと思う人はいないだろう。電子メールメッセージの中に電話番号があると、iPhone が自動的に認識し、番号をタップして電話をかけることができる。Bluetooth サポートにはキーボードのプロファイルも含まれているだろうから、コンパクトキーボードを使えば、iPhone は旅行用のコンピュータ機器としてより適したものになるだろう。

Jobs は iPhone で動くウィジェット(Mac の Dashboard で動いているような小さなアプリケーション)のデモも行い、株価や天気を調べてみせた。また、おそらくは特別製の Google Maps アプリケーションも披露した。これは街路地図表示と衛星写真表示の両方で地図を表示できる(ただし、道順案内はないようだ)。iPhone に位置情報 GPS サービスがあるかどうかは言及がなかったが、連邦政府の規制により、すべての携帯電話は非常用の E911 座標を交換局に送信しなければならないから、iPhone も、本物の GPS を使うか、あるいはアンテナで補間するかして、何らかの三角測量法で自らの位置を特定し、それを電波に乗せて送信しなければならない。だから、現在位置を認識して地図と組み合わせる機能が登場するかもしれない。

iPod 機能 -- iPhone でビデオや映画の再生を可能にするソフトウェアは、iPod で使われているものと基本的には同じ構成だが、新しいアクセス方法がいくつか追加されている。クリックホイールは表示されず、その代わりに、前述のマルチタッチ・ドラッグ法を使ってスクロールする。iPhone はまた、iTunes から CoverFlow 機能を受け継いでおり、アルバムカバーのミニチュア版をめくるようにして、アルバムをブラウズすることができる。

6月が待ち遠しい -- 全体的に見ると、さまざまな機器のデータを統合するのに悪戦苦闘している人や、パソコンにあるような機能をもっと携帯機器に詰めこみたいと思っている人すべてに、iPhone は大人気となるだろう。ただし、タッチパネルが謳われている通りに動作し、脂ぎった指紋をそれほど残さないとしての話だが。それから・・・まあ、iPhone については、まだ答えの出ていない疑問がほかにも山ほどあるが、それは今後の記事で見てゆくことにしよう。


iPhone に iTouch してみた

  文: Glenn Fleishman <[email protected]>
訳: Mark Nagata <nagata@kurims.kyoto-u.ac.jp>

近う寄りて、我が衣の裾に触れよ、汝、下賤の者よ! 私が Macworld Expo の会場で、あの iPhone を iFondle する栄誉を得た時のことを、今即興で思い出してみればそんな感じだ。新聞社の善良なる記者として(私は The Seattle Times 紙の記者として会場にいた)特別ブリーフィングに招かれ、私は 10 分間だけ iPhone に触ることができた。「iPhone で遊んでみた感想を聞きたい人は: 1回 25 セント」みたいな看板を俺たちは掲げてもいいんじゃないか、と Macworld 誌の論説員 Jason Snell (彼もやはり iPhone をいじくることができた )に向かって私は冗談を言ったものだ。

その時は、Apple がごく一部の報道関係者とパートナーたちのみに限って iPhone に触らせていたことを私は知らなかった。一般向けのサンプルはショウのフロアでガラスの柱の中に収められて展示されていた。デモは常時 Apple のブースで実演されていたが、これはスクリーン上のモックアップの中に埋め込まれたディスプレイを使うという特製の iPhone を使ってのものだった。

この iPhone は、まるで時空の裂け目をすり抜けて未来から飛び込んできた機器のように思える。私は自信を持って言えるが、この iPhone を手に持った時に伝わったのと同じフィーリングと存在感を私が感じたのは、以前何かの彫刻芸術の作品に触れた時しかなかったと思う。これは間違いなく一つの芸術作品だ。[現行の Macintosh を使って iPhone について書いていると、まるで W ホテルのロビーで撮ったこの写真のような感覚に陥るような気がする。 -Adam]

タッチパネルは、Steve Jobs が息継ぐ間もない様子で宣伝した通りに動作する。パネルの上で何かすれば、ほとんど瞬時に反応が返ってくる。「つまむと拡大する」操作も(私は、同僚が言い出した「すぼめると膨れる」という言い方の方が気に入っているが)ほんの数秒で身に付けられる。ウェブページのナビゲーションの方は、ページを掴んでから動かし、その後でつまんでズームするという段階が動作が必要なのでちょっと慣れが必要だ。

私は文字をタイプするのはやってみなかったが、iPhone を使ってみた何人かの同僚たちの話によれば、結構うまくいくということだった、これは予想に基づく (predictive) 提案機能を提供している。(私に言わせれば、後からの (postdictive) 提案もある。)例えば、“t”とタイプすればその後に“h”を提案として追加してくるかもしれないが、もしもその“h”の後に“f”とタイプすれば(“the”の代わりに“thf”とタイプしてしまえば)iPhone は親切にもそれを認識してあなたがたぶん“the”と打つつもりだったと受け取ってくれる。(ただし、強制的にそう変更されてしまうのか、それともただ修正を提案してくるだけなのか、私は知らない。)

内蔵のスピーカーは良いサウンドを提供していたし、iTunes ライブラリのナビゲーションも問題なく直観的にできた。指を放り投げる動作、つまりスクリーンの端の外側に向かって急速に指先をスライドさせる動作を使ってスクロールするナビゲート方法が完璧なものなのかどうか私にはわからないが、使ってみた限りでは何か人工的重力が働いているようでなかなか良い感じだった。また、摩擦力もちゃんと働いている。つまり、ページを放り投げても、それがそのままニュートンの法則に従って等速で動き続けることはない。(もちろんここでの Newton とはあの科学者のことで、Apple の昔の PDA の名前ではない。)

この iPhone は、Wi-Fi 機能も電話機能もない iPod と同じくらいに、好調な売れ行きを示すことだろう。ただ、その発表の後に出た報告によれば、$500 で売られるこの電話機は携帯電話のプロバイダを通じて販売され、2年間のサービス契約を結ぶことが必要とされるので、実際の購入価格は $1,000 くらいになるだろう。容易に予想できることだが、タッチパネルがこの価格の大きな部分を占めているに違いない。たぶん何百ドルかになるだろう。(購入のキャンセル料が数百ドルという高額になることも考えられる。)

iPhone は買いたいけれど携帯電話を Cingular に切り替える気はないという人は、ひょっとしてしばらくの期間待てばコストも下がり、タッチパネルとこのインターフェイスが標準の iPod ラインナップに加わってくると期待できるのかもしれない。


Apple TV が Mac とテレビを結ぶ

  文: TidBITS Staff <[email protected]>
訳: Mark Nagata <nagata@kurims.kyoto-u.ac.jp>

Steve Jobs の Macworld Expo 基調講演での最大のニュースは iPhone だったが、Jobs は Apple TV についても発表をした。これは従来 iTV というコードネームで呼ばれ、2006 年 9 月のスペシャルイベントで先行予告されたものだ。(2006-09-16 の記事“ Apple、iPod シリーズをアップデート、映画を開始、iTVをプレビュー ”を参照。)$300 で発売されるこの Apple TV は Mac と大画面テレビの間に置いて使い、ローカルに 40 GB のハードディスクでオーディオ、ビデオ、写真を保存できるとともに、Ethernet または準スタンダードの 802.11n(これはまだ Wi-Fi 規格に含まれていない)を用いてメディアのストリーミングも提供できる。メディアは一台の Mac から iTunes を使ってシンクすることで Apple TV のハードディスクに取り込む。これは iPod でシンクするのと同じことだ。Apple TV のハードディスクに収まり切らないメディアや、一時的に使える Mac の上のみにあるメディアなどのために、Apple TV は最大 5 台までの違ったコンピュータから、相手側の iTunes 経由でオーディオやビデオをストリーミングして見ることができる。現在 Apple は Apple TV の注文を受け付けており、出荷は 2 月になる予定だ。 Mac mini に似た外見の Apple TV は縦横それぞれ 7.7 インチ (19.7 cm)、高さはたったの 1.1 インチ (2.8 cm) で、Mac mini と比べれば縦横はどちらも 1.2 インチ (3.0 cm) 広い一方、高さは 0.9 インチ (2.3 cm) 薄くなっている。

テレビの画面上で、このメディアはスリムな Apple Remote でコントロールする Front Row 風のインターフェイスを使ってアクセスする。プレイリストやアルバムはメニューで選べ、その他いくつかの方法でローカルなコンテンツをブラウズすることもできるが、それらとともに Apple のウェブサイトにある映画の予告編を見たり、iTunes Store に接続したりなど、いろいろの選択肢もちりばめられている。この Apple TV を使っていない時には、スクリーンセイバが動き出し、あなたがシンクした写真を使って新しいマルチフォト表示を披露してくれる。

出力ポートとしては HDMI (暗号化されたデジタルオーディオおよびビデオ)、コンポーネントビデオ、アナログオーディオ、それにデジタルオプティカルオーディオの各ポートがある。接続用として、この Apple TV は 10/100 Mbps の有線 Ethernet ポートに加え、こちらも実用上のスループットで 100 Mbps に達しうるという 802.11n のワイヤレスネットワーキングまであるという豪華さだ。802.11n は 802.11b (AirPort/AirMac) と 802.11g (AirPort Extreme/AirMac Extreme) どちらのワイヤレスネットワークとも後方互換だが、ただ 802.11n はまだ最終的なものとはなっておらず、この点が全業界との互換性に疑問が残るという暗雲を投げかけている。私たちとしては、Apple が少なくとも Apple 製のものについては既存および将来のワイヤレス機器との間で互換性を保証してくれるものと期待をかけている。

また、USB 2.0 ポートもある。Apple の仕様書ページを読むとこれは「サービスおよび診断用」と書いてある。残念なことだ。もしも外部ハードディスクやネットワーク接続ストレージ (NAS) ドライブなどを接続して内蔵 40 GB ドライブの補助として使うことができたならばきっと便利だろうに。実際、新しい AirPort Extreme/AirMac Extreme ベースステーションではこれができるのだから。ビデオを保存するとなれば 40 GB というのは決して十分な容量とは言えない。つまりは、この Apple TV が本当にメディアセンターなのか、それともむしろ単なるメディア中継機なのか、今の段階ではまだはっきりと言えないということなのだろう。


AirPort Extreme アップデートされる

  文: Glenn Fleishman <[email protected]>
訳: 亀岡孝仁 <takkameoka@bellsouth.net>

先週の Macworld Expo のキーノート講演で取り上げられなかったものに Apple のショーでのもう一つの発表がある。それは同社の AirPort Extreme Base Station のアップデートで Mac mini/Apple TV と同じフォームファクタを持ち 802.11n ネットワークに対応している - 未だ標準化が完了していないより高速のワイヤレスデータネットワークである。この新しい機器は - AirPort Extreme Base Station の名前は継承している - AirPort ベースステーションとしては最初となる Ethernet スイッチを搭載し、3つの local area network (LAN) ポートから 10/100 Mbps Ethernet を提供している。この他には、一つの USB ポートとブロードバンド接続用の wide area network (WAN) Ethernet ジャックを持っている。今の所、一つのモデルしか出されていず、この後説明する理由から外部アンテナ用のジャックは付いていない。

Apple によれば、これまでの AirPort Extreme と未だ現役の AirPort Express ベースステーションを支えている 802.11g に較べると、速度で 5倍、範囲で 2倍に及ぶと言う。これは 802.11n の性能である実際のスループット約 100 Mbps と合っている。これに対して 802.11g の実際のスループットは約 20 Mbps である。

この新しいベースステーションは、2007年2月に $180 で出荷の予定である。これとは別の AirPort Extreme Card の方はアップデートを受けないように見受けられる、と言うのも Apple は既に一部の Mac には 802.11n を搭載して出荷を始めており、今後のデスクトップ、ラップトップ、電話、そして Apple TV にはすべて 802.11n を搭載すると見られている。一つの 802.11n ネットワーク上で AirPort Extreme と 802.11g を使えば速度を低下させるが、802.11g ネットワーク上で 昔の 802.11b を使った時ほどでは無い。しかしながら、802.11b を 802.11n ネットワーク上で使えば、極端に速度低下をきたすことになる。

数多くの会社が USB, PC Card, そして ExpressCard 802.11n アダプタを出してくると思われる。Belkin は数週間前に ExpressCard アダプタを $100 で出荷し始めたが、Mac ドライバについては言及していない。どちらにしても、今後数ヶ月の間には殆どの旧型 Mac のための $50 から $100 の対応策が出てくると思われる - とりわけ最近では USB アダプタが歓迎されるであろう、多くの Mac が拡張スロットを持っていないので。

Apple はそのサイトでのフットノートで一つのモデル - iMac with 1.83 GHz Intel Core 2 Duo - 以外の全ての Core 2 Duo と Xeon Mac は 802.11n をサポートするとしている。この機能を "生かす" ファームウェアアップデートは新しい AirPort Extreme に付いてくる。昨年自分のコンピュータをばらしてみた Mac ユーザーによって、初期の 802.11n チップが搭載されているがその機能はファームウェア上で生かされていない事が広く報じられていた。

これまでの機器に付いていた外部アンテナジャックは、この新しい AirPort Extreme Base Station には付いていない。802.11n は multiple-in, multiple-out (MIMO) アンテナアレイを使っていて、二つ以上の電波が固有のデータを異なった電波反射経路を通って同時に送信する事が可能となっている。この方法により空間での電波スペクトラムの再利用が可能となる。しかしながら、これを可能にするには設計段階で内部アンテナは注意深く配置され調整されなければならない、つまり外部アンテナを取り付けるのは事実上不可能な状態なのである。この MIMO 方式の採用により、聴く能力が向上し (ノイズの中からより多くの信号が拾える)、そしてより遠くまで送れる (特定の方向へエネルギーを集中できる) ことで交信範囲が広がる。

このモデルで新しくなったのは network attached storage (NAS) である:Apple の言い方を借りれば "殆ど全ての" 外付け USB ドライブがプラグインでき、それがそのまま一つのネットワーク資源となる。Apple によれば、このドライブはパスワード保護アカウント、読取り専用アカウント、或いはその他の形のアクセスコントロールの形に設定できるという。更に、USB ハブを AirPort Extreme に取り付けて複数のプリンタやハードドライブを接続することも出来る。これまでは、教育市場向けAirPort Extreme Base Station モデルだけが複数プリンタをサポートしていた。(今の所、"プレナム" として知られている耐火仕様については何も言及されていない。この仕様は現在の教育向けユニットには入っており、多くの企業や教育機関設備には必要とされるものである。)

この新しい AirPort Extreme Base Station は 2.4 GHz と 5 GHz Wi-Fi の両方を提供している。これは 802.11n は両方の周波数で運用可能な事を考慮すれば重要なことである。5 GHz の信号はより短い距離しか到達しないが、ここは混雑度がより少ないより広帯域のスペクトラムが利用できる。802.11n の前は、802.11a だけが - 1999年に 802.11b と一緒に仕様化された - 5 GHz で動作し、一般的には voice-over-IP を使う企業だけがこのバンドを使っていた。

Steve Jobs は 2003年に AirPort Extreme を標準化前の 802.11g 対応で出す時に、802.11a は違う周波数帯を使う上に 802.11b との両立性も壊してしまうということで、退けていた。しかしながら、802.11n を付けるのであれば、802.11a を追加して全チャネルとその目的を世界的にサポートするのは基本的にはただで出来るのである。AirPort Extreme は現在 2.4 GHz (802.11b/g/n) か 5 GHz (802.11a/n) のどちらかを使う事ができるが、両方を同時に使うことはできない。

Apple の技術仕様 によれば、米国では 5 GHz 帯ではチャネル 36 から 48 と 149 から 165 が使えるとなっている。これは多少誤解を招きやすい、と言うのも 5 GHz でのチャネルは 1 単位では- つまり 36, 37, 38, の様に - 増えていかないからである。また、屋内用と屋外用で異なったチャネルが割当てられていることもある。どうもこの新しい AirPort Extreme Base Station では、7つの屋内用チャネル (低い方の数字) と 5つの屋外用チャネル (高い方の数字) を提供しているように見える。しかしながら、米国においては全部で 23 の屋内と屋外チャネルがあるはずなので、今後更に検証してみたい。

この新しい AirPort Extreme Base Station を設定するのに必要なユーティリティは Mac OS X 10.4.8 を必要とするが、1999年に出荷されたような古い技術を使った機器 - 例えばオリジナルの AirPort Card と 802.11b の様な - でもその古い 802.11a, b, 或いは g の接続のままで新たなネットワーク接続を確立するのには何ら問題ない。

この 802.11n 標準は、未だ IEEE 技術標準化グループで作業中のものであるが、多くの企業が初期バージョンのプロトコルで機器に搭載してリリースしている。但し相互の互換性の無さと初期のファームウェアの誤動作の問題で広く批判を浴びている。しかしながら、最近数ヶ月の間に、チップメーカーと標準化に責任のある IEEE の作業グループの間で意見がまとまり一つのプロポーザルとして今週にもリリースされる予定である、そして 3月にもワーキングドラフトとして承認される見込みで、本格リリースに向けた一歩となるだろう。


Macworld Expo SF 2007: Mac の復活だ!

  文: Adam C. Engst <[email protected]>
訳: Mark Nagata <nagata@kurims.kyoto-u.ac.jp>

ここ何年かの San Francisco での Macworld Expo は、以前の停滞期の年月に比べれば上向きの気配を感じさせていたかもしれないが、その原因の大部分は iPod 関係の製品を展示するベンダーの数が多かったことと、Apple がエキサイティングなハードウェアやソフトウェアを出してきたこと、この二点に尽きると言える。言い替えれば Macintosh 業界そのものは、Apple 自身と、iPod 関係の製品を作っているところを除いて、もう長年にわたって Macworld Expo で強い存在感を示すことができずにいたということだ。

だから、今年のキーノート講演を始めるにあたって Steve Jobs が週の残りの基調を定める内容を語る代わりに、まず Apple Computer, Inc. という社名を Apple, Inc. に変更すると発表してそのコンピュータのルーツを薄める方向を示唆する一方、Apple TV メディアセンターを発表するとともに、本当に素晴らしい iPhone もお披露目した時、ふと私たちの胸を一抹の不安がよぎったのも、今述べた存在感の欠如を考えれば根拠のないことではなかった。Jobs は今回、新しい Macintosh ハードウェアやソフトウェアを一つも発表しなかったのみならず、キーノートで彼の口から“Leopard”“iLife”“iWork”といった単語が語られることさえなかったのだから。

(私の分析を述べさせてもらえば、iLife および iWork スイートが登場しなかったのは両者がいずれも Leopard 限定のテクノロジーに大きく依存しているためで、たとえそれらの機能が Tiger の下で部分的に動くとしても Apple にしてみれば Leopard の出荷日より前にリリースすることは避けたかったのだろうと思う。今回 Jobs のキーノートで映写された中で使われた Keynote トランジションのいくつかには Leopard における CoreAnimation テクノロジーを要するものもあったようで、つまり Jobs はたとえそれが俗世間の大衆に向けてはまだ用意できていなくても、自分は最新最高のものを使っていたいのだというように見えた。Leopard が登場する時期、そして iLife と iWork のアップデートもそれに続くかもしれない時期としては、私は 2007 年の 4 月末、あるいは 5 月の前半ごろと予想している。)

その結果として、Apple ブースは、今回もなかなか活発に人が往来していたとはいうものの、従来のように大混雑の人ごみに囲まれるというようなことがなかった。確かに、透明の合成樹脂のケースに収められ、警備員たちに厳しく守られて展示されている二台の iPhone モデルを近くで見るのはなかなか難しかったが、以前のショウで私が感じたほど Apple ブースを通り抜けるのに苦労するということは全くなかった。

iPod 製品のベンダーについて言えば、確かに彼らは今回も強い存在感を発揮していた。ただ、今回の出展者の総数 356 社(昨年の 361 社よりもほんの少し数が減ったが、占有面積は昨年よりずっと大きかった)の中で、彼らの占める割合は目立って減っているように思えた。私の友人の一人が内輪のメーリングリストで最近数年間の Macworld SF に出展した iPod ケースのベンダー数を当てるコンテストをしているが、その結果によれば今年はそういうブースの数が 45 で、去年の 49 より減ったという。

Apple から Mac 関係の新製品が出なかったことと、出展者たちがやはり iPod に重きをおいていたことを差し引いても、今回の Macworld Expo はこれまでに私が参加した中でも群を抜いて力強いものに思えた。これは、新しい IDG World Expo の副社長 Paul Kent のリーダーシップによるところが大きかったと思う。自分の記憶を新たにするため、私は TidBITS の Macworld Expo 関係の記事を 1998 年まで遡って読んでみたが、私はショウがちょっと冴えなかった年に自分がどれだけきつい態度をとろうとしたか、またショウのそのような状態からの回復がどれほど Apple と iPod のベンダーたちの力のお陰でなされてきたか、ということを今さらのように実感することができた。私が長年知っているたくさんのベンダーたちと並んで、今回は私が今まで聞いたこともなかったような会社のブースもいくつもあった。観衆数も非常に好調だった。聞いたところでは予備登録の段階で既に去年より 30% 以上増えたということだ。(最終的な観客数が判明するにはまだしばらく時間がかかるだろう。)大会社が集まっていた南館の混雑ぶりは、ほぼ恒常的にゆっくりと歩かざるを得ないほどのものだったし、北館の方はそれほどまでには混雑していなかったというものの、私の会った何人もの人たちが、2006 年や 2005 年には使われていなかった(そして 2004 年には使うべきでなかった)この北館の方により多くのベンダーたちが集まっていたことさえも全然知らなかったと話してくれた。

ショウのその他の諸要素も、うまく処理されていた。ただ一つ残念だったのは、初めの何日かの間は IDG World Expo が各セッションの出席者の数を低く見積もり過ぎていたために、セッション会場に入れなかった人が出て再度セッションを開いたりしなければならなかったことだ。会期の途中で各会場が模様直しされ、部屋に入れる座席の数を減らしていたテーブル類が取り除けられた。私が一番気に入ったのは講演者たちに配られた大入り福袋だった。 車輪付きの巨大なケース に、パンパンに詰め込まれたソフトウェアや iPod ケース、スピーカー、その他盛り沢山の中身だ。講演者へのおみやげは、去年まではただ単にその労苦をねぎらって Macworld Expo ロゴ入りのシャツかジャケットが1枚だけというものだったので、今回のように豪勢なおみやげが貰えて私は素直に大喜びした。なぜなら、こういうものを貰えるとなれば業界のエキスパートたちもこぞって気を入れて講演の準備をし、力を入れて話もしようと積極的な気持ちになると思うからだ。また、より多くの会社が自分の製品を Mac 業界で最も影響力のある人々の目前に提供する機会を得ることにもなるからだ。こんなに大きな福袋だったのに、噂によればその二倍の数の会社が自社の製品を入れてもらいたがっていたけれど、ケースの容量が足りないという理由で半数が門前払いになったらしいということだった。

私がただ一つ悔やしかったのは、ショウの日程があともう一日長かったらなあ、ということだ。ショウのフロアでもっとゆっくり時間が過ごせたら、と思ったし、ブースに立ち止まってデモを見たり出展社の人をつかまえて製品のことを根掘り葉掘り聞き出したりしたいのに、そういうブースの前も足早に通り過ぎなければならないことも何度かあった。

私の場合、時間が足りなかったのはたくさんのパネルディスカッションや講演、インタビューなどを予定に詰め込み過ぎたからだ。残念ながら北館のずっと隅に押し込まれていた MacTech ブースで新しい TidBITS Archive CD について話したりサインをしたりしていた時を除いて、私が出演した他の催しはすべて立ち見のみの部屋か、あるいは部屋もない所でだった。パネルディスカッションの多くは私が長年付き合って次第に親しい間柄になってきた Mac 有名人の面々と一緒のものだったので、従来は無味乾燥なところもあったディスカッションが今年は打々発止のやり取りに盛り上がり、まるで即興劇のステージかと思えるようなものまであった。こうしたさまざまのことに加え、いくつものイベントや発表の場にも参加したわけだ。いくつかのものは録音されていて今後公開されることもあるので、そういうものが利用可能になればリンクをお知らせしていきたいと思っている。その折には是非とも聞いてみて頂ければと思う。

ひょっとしたら、幕開けのキーノートから始まって締めくくりの MacBrainiac Challenge(わがチームは最後の、微妙な表現の問題で負けてしまった)に Netters Dinner まで、終始一貫今年のショウが楽しかった原因の一番は、年の半ばの Macworld Boston もなければ MacHack/ADHOC カンファレンスもなく、すべてがこのショウに焦点を当てていたためではなかっただろうか。(ご自分で MacBrainiac Challenge に挑戦してみたいと思われる方のために、Chris Breen がすべての問題をオンラインに掲示している。今週中にはそれぞれの解答も掲載してくれるはずだ。)

Macintosh コミュニティーにいる多くの人々にとって、このような expo というのは、友人たちと個人的なネットワークを結び、つながりを再確認するための本質的な機会だ。今回私たちは初めて Crazy Apple Rumors Site の John Moltz に会うことができた。(彼は今回初めて Macworld Expo に参加したということだ。)それから、Dan Pourhadiとともに時を過ごすこともできた。彼にはこれからもっと記事を書いてもらいたいと思っている。それに、誰かが私の傍に来て「あなたは私をご存じでないでしょうが、私はもう <何か大きな数字> 年も続けて TidBITS を読んでいます。あなたに一言『ありがとう』と言いたかったのです」と声を掛けてもらえたことは数え切れないほどあった。そういう優しい言葉を掛けて頂けるのはいつでもとても嬉しいことだし、私も読者の皆さんと会場でお会いできるのが大好きだ。だから、わざわざ私に声を掛けて下さった皆さんに、こちらこそありがとうとお礼を差し上げるとともに、また来年も、ショウがもっと大きくなってもっと大勢の素晴らしい人たちとお会いできることを願っている。


TidBITS Talk/15-Jan-07 のホットな話題

  文: TidBITS Staff <[email protected]>
訳: Mark Nagata <nagata@kurims.kyoto-u.ac.jp>

Macworld 2007 キーノート -- 今年の Macworld Expo のキーノート講演について、TidBITS 読者たちはどう感じただろうか? (11 メッセージ)

僕はあんたより若いんだからさ: "私が君くらいの年の頃は..." -- Dan Pourhadi の連続記事第1回を読んだ読者たちが反応する。(5 メッセージ)

僕はあんたより若いんだからさ: インスタントメッセージング -- 「時代遅れの年寄り」と自称する人が、Dan Pourhadi の記事は若い人たちがインスタントメッセージングをどのように使っているかという話ばかりで、なぜ使っているかの情報がもっと欲しかったと感想を寄せる。 (2 メッセージ)

MPEG4 オーディオと Mac -- MPEG4 ムービークリップで音声が切れてしまうものはないか? そういうファイルをうまく分離 (Demux) する方法がいくつかある。 (3 メッセージ)

iTunes のバックアップ -- iTunes に最近追加されたバックアップリマインダの警告メッセージをきっかけに、良いバックアップの習慣とは何かという議論が起こる。(6 メッセージ)

LaserWriter を救えるか -- そう、古い LaserWriter Select 360 プリンタでも、現代の Mac で使えるのだ。このようにすればよい。 (6_ メッセージ)

iPhone は、iPod なのか Mac なのか -- iPhone は今後 Mac の道を辿るのか、それとも iPod の道を辿るのか? 言い替えれば、iPhone は外部の開発者に対してどの程度オープンになるのだろうか?(5_メッセージ)

iPhone、印象と意見 -- Apple の新しい電話機について依然としていろいろな意見が飛び交っているが、忘れてはならない重要なことは、最終的な製品が登場するまでにまだ6ヵ月もあるということだ。(推測がつまらないと言うつもりはないが。)(10 メッセージ)

iPhone の市場は -- iPhone の潜在的市場について書いたなかなかおもしろい分析記事を、ある読者が紹介する。(1 メッセージ)

これぞ Mac、Mac ビデオ制作の世界 -- Adobe が Premiere を Mac にも復活させると発表した。これは、Final Cut Pro にとって何を意味するのだろうか? (1_ メッセージ)

TidBITS 自動修正を一時的にオフにするには? -- ある読者が、Eudora の auto-correct 辞書がうまく働き過ぎてしまうと言う。これをオフにする方法は? (4 メッセージ)

GPS と MP3 -- 最近レビューされた GPS ユニットに関して、その音楽再生機能についてある読者がコメントする。(1- メッセージ)

GPS 各社からのサポート -- Adam の最近の GPS ユニットレビュー記事に関し、ある読者が Magellan 社を相手にした体験談を寄せる。 (2_ メッセージ)


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