TidBITS: Apple News for the Rest of Us  TidBITS#879/14-May-07

Apple と Greenpeace をめぐる議論は今週も続く。Apple の定期株主総会で議題になった環境関係の話題に対するいろいろな反応を Adam が検討し、Green Electronics Council からより良い評価基準が出されたことにも触れる。Adam はまた、ファクスのテクノロジーがまだまだ北欧の隠退生活を夢見るには早いことの理由を説明し、一方デンマーク人たちが Apple の(そして iBook G4 ロジックボードの)どこに問題を見つけたかについても語る。ニュースの部では、Microsoft Office 11.3.5、Apple の Pro Application Support 4.0、PopChar X 3.2、有望に見える Encyclopedia of Life、それに Macworld の Apple TV Superguide のリリースについてお伝えする。

記事:


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Microsoft、Office 2004 11.3.5 アップデートをリリース

  文: Jeff Carlson <[email protected]>
  訳: 亀岡孝仁 <takkameoka@bellsouth.net>

Microsoft は Office 2004 for Mac に対するアップデートをリリースした。これには、同社の言う "アタッカーがあなたのコンピュータのメモリの内容を悪質なコードで上書きできるという脆弱性に対する修正" が含まれている。このアップデートは 58.5 MB もあるが、これは主としてこれまでの全ての Office 2004 アップデートが含まれているためである。これは独立のダウンロードとして、或いは Microsoft AutoUpdate アプリケーション経由で入手可である。


Apple、Pro Application Support 4.0 をリリース

  文: Jeff Carlson <[email protected]>
  訳: 亀岡孝仁 <takkameoka@bellsouth.net>

Apple は Pro Application Support 4.0 をリリースした。これは "Apple のプロ・アプリケーション群に対して一般的なユーザーインターフェースの信頼性を向上させる" アプリケーション固有でないアップデートである。対象となるプログラムには Final Cut Studio, Final Cut Pro, Motion, Soundtrack Pro, DVD Studio Pro, Aperture, Final Cut Express HD, Soundtrack, Logic Pro, そして Logic Express が含まれる。私の推測では、このリリースは、今月出荷が予定されている Final Cut Studio 2 の到着の前触れと思われる (2007-04-16 の "Apple、Final Cut Studio 2 と Final Cut Server を発表" 参照)。このアップデートは Software Update 経由でか、或いは 7.6 MB の個別ダウンロードとして入手出来る。


Encyclopedia of Life 立ち上がる

  文: Adam C. Engst <[email protected]>
  訳: 亀岡孝仁 <takkameoka@bellsouth.net>

Encyclopedia of Life の発表に数多くの高名な科学機関が手を携えた。これは、1.8 million に及ぶ名前のついた動物、植物、そしてその他の生命体の種の一つ一つをひとつの Web サイト上に記録しよういう全地球的なプロジェクトである。簡単に言えば、Encyclopedia of Life は Wikipedia と同じ様な線の幾つかを辿る事になるであろう。寄稿できるのはその分野を専門とする科学者に限られるであろうので、この制限の結果、プロジェクトの成長は抑制されるであろうが Wikipedia に見られるような間違いや論争好きさは多少軽減されるのではなかろうか。生きた有機体に関する情報を必要とする人の観点からすれば、Encyclopedia of Life の デモページは極めて期待できるものであり、書面情報、写真、ビデオ、音声、地図、その他諸々を一緒にして、しかもそれらを読者の経験度に合わせられるインターフェースを通して提供してくれる。まだ、生の情報はないが、デモページを見たり、 FAQs を読んだり、そしてメインページにあるビデオを見るだけでも価値があるというものである。


PopChar X 3.2 に細やかな気遣いが加わる

  文: Adam C. Engst <[email protected]>
  訳: Mark Nagata <nagata@kurims.kyoto-u.ac.jp>

Ergonis Software から最近アップデートがリリースされたフォントユーティリティ PopChar X 3.2 では、さまざまなバグが修正されたほか、アプリケーションで画面の隅に表示される“P”をカーソルがその隅の近くにある時以外は隠しておくというオプションが追加された。これは、このユーティリティを常時使っている人にはありがたい機能かもしれない。ただし、それほど頻繁に使わないユーザーならば常時表示のままにして PopChar の存在を思い出させてくれるようにする方がよいかもしれない。(詳しい説明は 2006-07-03 の記事“PopChar X 3.0 が便利さを改良”を参照。)その他の改良点としては、最近選択された文字をハイライト表示して手軽に再使用できるようにするオプションや、表示レンダリングの高速化、それに PopChar X の根幹部分を書き換えて解像度に関係なく働くようにし将来の Mac OS X リリースに備えたことなどが挙げられる。PopChar X 3.2 はここ二年以内に購入した人には無料で、新規購入は 30 ユーロ、アップグレードは 15 ユーロとなっている。このプログラムは Mac OS X 10.3.9 かそれ以降を要し、ダウンロードサイズは 1.7 MB だ。


DealBITS 抽選:Small Dog から USB ドライブ搭載 Parallels

  文: Adam C. Engst <[email protected]>
  訳: Mark Nagata <nagata@kurims.kyoto-u.ac.jp>

一年前ならば、今週の DealBITS 抽選と同じことをしたとしたら、もっとずっと詳しい説明を添える必要があったことだろう。だが一年前には仮想化つまり Windows やその他の PC オペレーティングシステムを Intel ベースの Mac で走らせる機能はまだほんの始まったばかりで、Parallels Desktop も Mac で Windows アプリケーションを走らせたい人に必携のアプリケーションという段階にはまだ達していなかった。

今週の DealBITS 抽選はいつもとちょっと違っている。Small Dog Electronics 提供の今回の賞品は、 512 MB の Kingston USB ドライブに Parallels Desktop を載せたもの(定価 $69.99 相当)だ。幸運が足りずに当選から漏れた応募者にももれなく Small Dog での割引が贈られるので、ぜひ奮って DealBITS ページで応募して頂きたい。寄せられた情報のすべては TidBITS の包括的プライバシー規約の下で扱われる。どうかご自分のスパムフィルターや challenge-response システムに注意されたい。当選したかどうかをお知らせする私のアドレスからのメールを、あなたに受け取って頂くのだから。また、もしもあなたがこの抽選を紹介して下さった方が当選すれば、紹介に対するお礼としてあなたの手にも同じ賞品が届くことになるのもお忘れなく。

[訳注: 応募期間は 11:59 PM PDT, 20-May-2007 まで、つまり日本時間で 5 月 21 日(月曜日)の午後 4 時頃までとなっています。]


デンマークの人たちが iBook G4 の欠陥を公開

  文: Adam C. Engst <[email protected]>
  訳: Mark Nagata <nagata@kurims.kyoto-u.ac.jp>

デンマークの National Consumer Agency(国立消費者庁)の Consumer Complaints Board(消費者苦情審議会)が、Apple の iBook G4 における製造上の欠陥の証拠を発見したと主張している。具体的には、ハンダ接合に欠陥のある個所があって一年以上使用した後に機能しなくなるとのことだ。問題のハンダ接合個所は電源関係をコントロールする部分にあるので、この問題に見舞われた iBook G4 はいきなり電源が切れるかスクリーンが真っ暗になるかするという。この問題に対する最も一般的な回避策は、トラックパッドの左側あたりの部分にクランプまたは 内部シムを使って余分の圧力を加えることだ。

この iBook G4 は 2003 年の 10 月に導入され、2006 年の 5 月に廃止となって MacBook により置き換えられた。皮肉なことに、この iBook G4 自身が置き換えた PowerPC G3 ベースの旧型 iBook モデルもやはりロジックボードにトラブルを抱えており、Apple は 2004 年の 1 月にいくつかの iBook を対象にiBookロジックボードリペアエクステンションプログラムを実施している。(2004-02-02 の記事“)Apple、iBook ロジックボード交換を発表”と、2004-06-21 のフォローアップ記事“iBook 修理プログラム拡張される”を参照。)けれどもこれらの旧型モデルに起こった問題点についての議論 を読み返してみると、今回 iBook G4 オーナーたちが遭遇した問題と非常によく似たところがあることに気付かされる。 Applefritter サイトでのおしゃべりを見ても、ハンダ接合に弱いところがあるのが問題で、クランプやシムによる回避が提案されていることまで一致している。さらに詳しいことが知りたい方は、今回デンマークの審議会が依託した実験のレポート を読んでみられるとよい。

Apple は今回のレポートが発表された後、デンマーク国内でいくつもの件で和解している。けれども問題は、当然ながら、Apple がこの問題に対処するため全世界的にまたもや新たなリペアプログラムを実施するのかどうかということだ。今回 2,000 以上のオンライン署名が集まり、それとともにデンマークの消費者苦情審議会が Apple に要求しているのもその点だ。この件に関し私たちは Apple にコメントを求めたが、それに対する返事は届いていない。


PageSender 4.0: ファクスはまだ死なず

  文: Adam C. Engst <[email protected]>
  訳: Mark Nagata <nagata@kurims.kyoto-u.ac.jp>

ファクスは死んだ、そうだろう? はっきり言ってしまえば、ウルトラ最新流行の Web 2.0 サイトでファクスサービスを吹聴しているところなんてどこにもないし、そもそもインターネットそのものが、貧弱なファクス機に取って替わるものとなっているのは確かじゃないか。違うかい? それに、もしも何か書類をファクスする必要が起こったなら、ちゃんと Mac OS X に内蔵のファクス機能があるじゃないか。

いや、そうとも言えないのだ。もしもファクスが死んでしまったのだとしたら、SmileOnMyMac もきっと、五年目になる彼らのファクスプログラム PageSender をアップデートするなんていう仕事に時間を無駄にすることはなかっただろう。でも彼らはつい最近、ちゃんとアップデートを出したのだ。 ファクス送受信の既存の機能に加え、PageSender 4.0 ではスパムファクスのフィルタ分け、PDF の表紙ページ、Address Book から直接の電話番号読み込み、表紙ページのテキストでフォントやスタイルのコントロール、それにプレビュー機能の改善などを盛り込んでいる。これは Print ダイアログから手軽に使え、スクリプト対応で、 Mac OS X 10.4 内蔵のファクス機能には欠けている盛り沢山の機能を提供できる。PageSender 4.0 は Mac OS X 10.4 かそれ以降を要する。価格は $40 で、2007 年より前に購入した登録ユーザーは $20 でアップグレードでき、今年になってから購入した人には無料だ。

(ちょっとおもしろい話がある。SmileOnMyMac は PageSender の誕生日を記念して特製のバースデイケーキを作り、そのケーキで子供たちを集めておいて、このプログラムに Happy Birthday の歌を歌わせている。私も子供の親として、小さな子に「手じゃなくてフォークで食べるのよ」と語りかけている母親の声を聞けば、このビデオが 100% 本物だと自信を持って言える。ついでながら、PageSender は 5 歳になったかもしれないが、ファクスのテクノロジーそのものは 1843 年にまで遡る。)

私もできるだけファクスは使わないようにしているが、それでも使う時には、送信はファクス専用機、受信は MaxEmail を使っている。(2005-04-04 の記事“eFax を MaxEmail に替える”参照。)本当に PageSender を使っている人がいるのだろうかという好奇心にかられて、私は SmileOnMyMac の Jean MacDonald にそのことについて聞いてみた。

すると彼女は同社が 500 人のランダムに選んだ PageSender ユーザーたちを対象に実施したアンケートの結果を送ってくれた。このアンケートの返答率は 10% で、その返答のうち半数が最近 5 年間に間違いなく何度もファクスを使ったと答えていた。返答の四分の一は「たぶん使った」「使ったかも」「ますます減っている」のどれかを選び、残りの返答は「使っていない」か「使いたくもない」のどちらかだった。質問はあと二つあり、「あなたはファクスで何を送りましたか?」と「それを電子メールで送れなかったのはなぜですか?」というものだった。

大筋において、このアンケートに返答した人たちの答は BY'te DESIGN Hawaii の John Baughman と同意見だった。彼は、政府の役所とか銀行や保険会社などに書類を送る時、とりわけサインを必要とする書類を送る場合にはファクスを使うと答えていた。他の人たちの用途としては、医療記録やカルテ、ラボの実験結果、建築用の入札書、スケッチやアートの草稿、購入のための注文書、注文の確認書、その他にファクスを使うということだった。

けれどももっと驚いたことがある。それは、ファクスを使った理由としてほとんど全員が、受取人がファクスで送るようにと要求してきたからだと答えていたことだ。Walter Kicinski はこう言っている。「書類をファクスで送ってもらいたがる人たちは多い。たいていは、一定の書式を必要とするビジネス上の申請書のたぐいだ。彼らがそう望むから、私たちはファクスで送るのだ。」

ファクスでの送付を必要とする理由はさまざまだ。大規模な集中管理ファクス受付システムを持った会社のようなところから、医療用の HIPAA 規定に準拠させやすいからとか、建設会社の出張事務所で電子メール環境がないとか、ISP という中間業者を通さないことで少しでもセキュリティを増したいとか、いろいろの理由が挙げられていた。ファクスの方が電子メールより扱いやすいからと答えていたのはほんの少数の人たちだけだったし、そう答えていた人も、ファイルフォーマットに対処したり、大きな画像の巨大ファイルを添付したり、あるいは添付ファイルを受け取ってもサインしてファクスで送り返すためには結局それを印刷しなければならないのだから、というあたりに問題があるのだと書いていた。

結局のところ、ファクスは確かにセクシーではないかもしれないが、ちゃんと機能している。職業的な経歴の大部分を電子メールの時代に過ごしてきた私たちのような者にはちょっと信じ難いことだが、今なおビジネスの世界ではかなりの大きな部分が、特定のタイプの重要なコミュニケーションの目的には依然として電子メールを採用できないでいる。即座にサインを必要とする書式なら、さっとファクスする方が簡単だ、というわけだ。

でもさ、やっぱり、そりゃおかしいよ。可能なところから、テクノロジー環境を整えるように努めていこうじゃないか。(より良いファイルフォーマットを使って、手軽でセキュアなデジタル署名とか、オンラインフォームとかが利用できるのだから。)そうして、こういった多くの人たちに、古びた 19 世紀のテクノロジーから乳離れできるようにさせてあげようじゃないか。ファクス機に一生懸命シャベルで石炭を放り込むなんて、やっぱり時代遅れだと思うから。


Steve Jobs、株主総会で Greenpeace に物申す

  文: Adam C. Engst <[email protected]>
  訳: 羽鳥公士郎 <hatori@ousaan.com>

2007 年 5 月 10 日に開かれた Apple の年次株主総会では、同社の環境問題への取り組みが大きな役割を演じたが、疑いもなく Steve Jobs の公開書簡"A Greener Apple" のおかげで、激しい議論が抑えられていた。私が "Steve Jobs、緑を語る"(2007-05-07)で分析したこの書簡の中で、Jobs は、Mac とiPod の製造における有害化学物質の使用を削減し、古い機器のリサイクルの水準を高めるために、Apple が今日行なっていることと、将来行うと計画していることとを、明確に述べた。

株主提案 -- 具体的に言うと、この書簡は Apple の製造およびリサイクルの取り組みについて2つの提案を呼んだが、どちらも投票にかけられる前に、それぞれの提案者(Trillium Asset Management と As You Sow Foundation)によって取り下げられた。San Francisco Chronicle はこのように書いている。「とはいえ、両グループは Apple に対し、古くなった製品のリサイクルと新しい製品からの有害化学物質の除去において、数ある技術系企業の中でも先導的な役割を引き受けるよう促した。」Roughly Drafted も同じようなことを、しかし異なる仕方で書いている。「どちらのグループも、Apple の最近の公約について、当面の懸念に十分対処しており、同社が更なる目標に向かって前進し続けることが期待できるとして、これを賞賛した。」この2つの違いにお気づきだろうか。最初の引用では両グループは完全に満足していないことが含意されているのに対し、2つ目はより肯定的な口振りになっている。

Apple 対 Greenpeace -- その後、Greenpeace の代表者たちとのあいだでやり取りがあった。Roughly Drafted が生き生きと描写している。

「これらのコメントにもかかわらず、Greenpeace の代表者たちはこの会議を利用して、同団体の反 Apple キャンペーンを宣伝する機会とした。Greenpeace が送り込んだ活動家の中でも、Iza Kruszewska は、同団体のApple を標的とした資金調達プログラムにおける主要な立案者の一人だ。Kruszewska は iPod の以前の広告をもじった Greenpeace のTシャツを着ており、Apple の製品は有害で危険であると訴え、その問題をいくらかでも解決するため Greenpeace に寄付をするようユーザたちに勧めていた。Kruszewskaは、Apple の発表を自分たちの手柄にしようとした後で、Jobs に対し、Appleはさらに方針を発表することで Greenpeace の政治的目標に向かって前進することができるのではないかと質問した。それに対して Jobs は、そのような『美辞麗句』が実際には環境のために何かの役に立つわけではないと主張した。」

それとは対照的に、 Macworld はこのように書いている。「Greenpeace を代表して2名がこの会議に参加しており、Jobs と Apple に対し、同社が環境に関する公約をしたことについて祝辞を述べた。」ここでも、どちらの記事を読むかによって、かなり異なる印象を受けることになる。

しかしどちらも、Jobs の Greenpeace に対する反応を似たような言葉で表現している。Macworld は「Jobs は激しい言葉で述べた」と言い、Roughly Drafted は「Jobs もまた激しく非難した」と書いている。そしてここからが興味深い。Macworld は Jobs の言葉をこう伝えている。

「私が思うに、あなた方の組織はとりわけ主義主張にあまりに頼りすぎており、事実を十分に尊重していない。あなた方は人々を、彼らが今していることではなく、彼らが遠い将来の計画について何と言っているかによって評価している。飾り立てられた主義主張に重きを置きすぎ、科学や工学を軽視しすぎていると思う。あなた方の組織がエンジニアをもう少し雇って、実際に企業と対話をし、彼らが実際に何を行なっているかを調べるようにしたら、非常に有益だろう。あれやこれやの美辞麗句に耳を傾けたところで、現実には彼らのほとんどは何もしていないのだから。」

別の言い方をすれば、私は先週号の記事で Greenpeace の得点表を批判したが、Jobs もそれと同じ考えだ。その記事で私は、得点が数値として計量化できるものに基づいているのではなく、公式声明に基づいているとして、不満を述べた。言うまでもないことだが、Jobs はこの考えを論理的な結論にまで突き詰めることはしなかった。つまり、Apple の環境問題への取り組みを懸念している人たちには、Apple の公式声明のほかに、とやかく言うべき対象が存在しないということだ。Macworld が伝えるところでは、Jobs はさらに、Greenpeace やほかの環境保護団体に対し、彼らの評価技術が改善されて、将来の得点表が声明ではなく科学に基づくものになるよう、手助けを申し出た。これは、私が数量的な格付けが望まれると言ったことにぴったり沿っているが、私としてはそれに加えて第三者が検証できるものであればよいと思う。

それにしても、様々な出版物で使われている言葉がこれほどまでに異なり、この問題が全体としてこれほどまでに異なって映されているということについて、私はまだ衝撃を受けている。私たちが頼りにできるのは言葉しかないとしたら、この連続体のどこに真実があるのかを知るのは、困難だ。

EPEAT 登場 -- 先週の記事を書いた後、読者の Jerry Zernicke が、Ars Technica の1つの記事を知らせてくれた。そこには、それぞれのコンピュータモデルが環境に与える影響を消費者が評価するのに役立つもう1つのシステムが言及されていた。 EPEAT(the Electronic Product Environmental Assessment Tool)というそのシステムは、International Sustainable Development Foundation の一部である Green Electronics Council のプロジェクトだ。EPEAT は 2006 年 7 月に立ち上げられたが、その3年間の展開と履行に必要な資金は米国 Environmental Protection Agency(環境保護庁)が拠出している。Green Electronics Council の Scot Case によると、展開の過程には環境関連の非営利団体、教育機関、政府機関、企業のIT購買担当者、メーカー、コンピュータリサイクル業者などが関わっている。

EPEAT は Greenpeace の Green Electronics Guide に比べ包括的かつ具体的であるように見えるが、これもまた評価対象製品のメーカーからの公式声明に多くを依拠している。これが際立っていると思うのは製品検査手段だ。EPEATは定期的に特定の製品を選び、それぞれのメーカーが主張している基準に合致しているかどうかを検査している。この検査過程では、単にメーカーからさらなる情報を要求することもあれば、詳細な実験室分析や、さらには破壊検査までが含まれることがある。

EPEAT の評価尺度には 23 の必須基準と 28 の選択基準とがあり、8つの部門に分かれている。製品が銅賞を受けるには、すべての必須基準に適合しなければならない。銀賞には、すべての必須基準に加えて選択基準の少なくとも 50パーセントが必要だ。金賞では適合すべき選択基準の割合が 75 パーセントに上がる。

430 のシステムが EPEAT の銅賞を受けており、その中で 374 がさらに銀賞も受けているが、これには Apple のすべての製品が含まれている。金賞を受けているシステムはない。Integrated Systems 部門では、銀賞を受けているシステムはたった3つだけ、17 インチ、20 インチ、24 インチの iMac で、それぞれ 28 点満点中 16 点だ。Notebooks 部門でも、Apple の 15 インチと17 インチの MacBook Pro が、選択点 28 点中 19 点でリストの最上位を占めている(MacBook は言及されていない)。Desktops 部門では、Mac Pro が 17点を得ており、18 点を得ているのは1つのメーカーの PC だけだ。同様に、Monitors 部門では、Apple の 20 インチ、23 インチ、30 インチ Cinema Display がそれぞれ 16 点で、トップとわずかに1点差だ(多数の NEC モニタが 17 点を得ている)。

ということは、EPEAT の格付けでは、Apple は、改善の余地が大いにあるとはいえ、ほかのメーカーと比べればよくやっているということになる。iMac は銀賞を独占しているかもしれないが、28 点中 16 点ということは、たった 57パーセントで、滑り込みセーフといったところだ。一方で、Gateway のProfile コンピュータも Integrated Systems 部門に名前が挙がっているが、選択点を1点も得ていない。

関連記事 -- 私の先週の記事は、通常よりも多くメディアに取り上げられた。Guardian Unlimited は、コンピュータがどれだけ環境に優しいか人々はあまり気にしていないと論じる記事の中で、かなりの部分を引用した。その論拠としてこの記事が指摘しているのは、Jobs の公開書簡 "Thoughts on Music" が、Technorati によればおよそ 6,200 のブログで、Google Blog Search によればおよそ 3,300 のブログで記事になったということだ。それに対し、"A greener Apple" は、Technorati が捕捉したところでは 860、Google Blog Search によれば 450 のブログでしか記事にならなかった。(私がこれらの数字を再確認してみたところ、それ以来ほんのわずかしか増えていなかった。)

これは興味深い調査だ。この数字が含意することは、人々は企業の環境方針よりも DRM(デジタル著作権管理)の方に強い関心を持っているということだからだ。その理由はおそらく、DRM は純粋に人工的な構築物で、機能的には必要でなく、十分な願望があれば業界から速やかに除去することができるからだろう。一方、有害化学物質の除去や古いハードウェアの完全なリサイクルというのは、ほとんどの人が立派な目標だと認識しているけれど、何人かの重役たちが考えを改めただけですぐに達成できるものではないことは確かだ。

私はまた、 Your Mac Life2007 年 5 月 9 日付の番組で、Shawn King との会話を楽しんだ。私が登場する部分は 20 分間で、開始から72 分ごろ(下記 URL を QuickTime Player で開けば簡単に見つけられる)、Shawn がSmileOnMyMac の Greg Scown と PageSender について話すのを終えたところから始まる。面白いことに、彼らの話の最後、65 分ごろには、私が書いた記事 "PageSender 4.0: ファクスはまだ死なず"(2007-05-09)からいくつかのポイントが議論されている。私たちの話はというと、Jobs の書簡についてで、Shawn はいつものようにするどい質問をし、楽しくて洞察に富む会話をリードしていた。

最後に、Greenpeace や Apple の株主が何らかの形で Steve Jobs の書簡の原因となったのかどうか、あるいは単に、今こそ環境に対する責任を Apple ブランドの一部にするときだと Apple が決心しただけなのかどうかは、重要なことではない。私たちすべてが、現在の些細な物事にとらわれず、電子機器が環境に与える影響を最小限にするという全体的な目標に注力できなければならない。私たち消費者と産業界とが一体となって、きれいな環境を維持するための支払いを今始めなければ、後になってつけが回ってくる。

このことははっきりさせておきたいのだが、あらゆる環境保護運動で言われているように、これは地球を守るということではない。この惑星についてはまったく気にすることはない。そうではなくて、これは私たちに資する環境を維持するということだ。つまり、私たち人類にとって、許容できるというだけでなく、積極的に住みたいと思うような環境を維持するということだ。多くの人が、環境保護主義を、ある種の利他的な願望で、生活の質を、それもしばしば世界の反対側の見知らぬ人々の生活の質を、ほとんど誰も気がつかないような程度に改善することだと考えている。しかし、それだけではないのだ。長期的に見れば、環境保護主義は適切な利己主義であって、人類が生き残るために必要なのだ。


Take Control ニュース/14-May-07

  文: Adam C. Engst <[email protected]>
  訳: Mark Nagata <nagata@kurims.kyoto-u.ac.jp>

Apple TV のすべてを知ろう -- 早々と Apple TV を買い込んだあなたにも、わが家のホーム・エンターテインメント・システムに加えようかと思案中のあなたにも、ぴったりの新しい電子ブックが出た。Macworld で働く私の友人たちは(Take Control 電子ブックを執筆してくれた人たちも多いが)Apple TV がリリースされたその日から、ずっとこれを調べ続けていて、その結果わかったことのすべてを盛り込んで電子ブック“Macworld Apple TV Superguide”にまとめあげた。これは Macworld の電子本シリーズの最新刊だ。

この本を読めば、Apple TV のセットアップ、そのインターフェイスのナビゲーション、ビデオ・音楽・写真などあなたのメディアが Apple TV で手軽にアクセスできる方法などについて大いに助けになるだろう。もしも何かトラブルが起きたら、充実したトラブルシューティング・セクションがあるのでよくある問題やその解決法がわかる。そうこうするうちに、きっとあなたも Apple TV の 40 GB ハードディスクではちょっと足りないと感じるようになるだろう。そうしたらまたこの電子ブックを開いて、ディスクをもっと大きなものに載せ換えるためのステップ・バイ・ステップの説明を見ればよい。

まだ HDTV をお持ちでない方のために、非常に簡潔ながら HDTV の選び方についてのセクションまで載っている。けれども正直に言えば、そういうテレビの購入を検討中のあなたには、Clark Humphrey の電子ブック“Take Control of Digital TV”をお勧めしたい。こちらにはずっと深く詳細な解説が展開されていて、いろいろな専門用語がどんな意味か、あなたの目的にぴったり合った機種を選ぶにはどうすればよいか、といったことがわかる。今回は特別に、これら2冊の電子ブックを両方購入して頂いた方には $5 値引きで提供している。


TidBITS Talk/14-May-07 のホットな話題

  文: TidBITS Staff <[email protected]>
  訳: Mark Nagata <nagata@kurims.kyoto-u.ac.jp>

MacBook Pro で Skype -- Skype の Voice-over-IP サービスを使っていてパフォーマンスの悪さに悩んでいる読者がいる。彼のネットワーク接続が問題なのか、それともオーディオ入力ソースに問題があるのだろうか? (11 メッセージ)

Parallels で Timeslips -- 仮想化環境で Timeslips プログラムを使っていて問題に出会った人はいませんか? (1 メッセージ)

ICeCoffEE 機能は至る所に -- 古い Apple Data Detectors テクノロジーについての最近の議論が、ウェブページで URL を Command-クリックするとそのページが開く、という種類の手軽なやり方を思いつくのがいかに困難なことか、という認識にたどり着く。 (4 メッセージ)

MacBook ドライブの故障? -- ハードドライブの調子が悪い... これは、DiskWarrior の出番だろうか? 確かにその通りだ。だが、古いバージョンを使うと悲惨なことになるおそれがある。(8 メッセージ)

暗号化されたディスクイメージが閉じない -- いつまでも開いたままになりたがるディスクイメージの問題に、読者たちが解決法を提案する。(7 メッセージ)

画像中心のラボに向くネットワークはワイヤードかワイヤレスか? -- あるコンピュータラボが引越しを予定している。これを機会にインフラの再検討をしたいのだが、グラフィックス中心の用途のマシンでは、ケーブルを張り巡らして使う価値があるだろうか、それとも、ワイヤレスのネットワークでも十分データのスループットの必要にたえるだろうか? (5 メッセージ)

Treo 755 レビュー -- 最新の Palm Treo は、期待外れなのか、地平に登場しつつある不思議な機器なのか、それとも、iPhone によって Palm は完全に市場から蹴り出されてしまうことになるのだろうか? (2 メッセージ)

Address Book のデータ消失 -- Address Book のデータベースが内部で壊れてしまうのを何度も目撃した読者がいる。自動的にバックアップをするにはどんな方法がよいだろうか? (2_メッセージ)

Apple TV -- Apple TV は、コンピュータからも、インターネットからも、インターネットラジオをストリームしてくれない。ある読者に言わせれば、これではこの機器の魅力も半減だ、という気がする。(1_メッセージ)

パスワードを記憶する -- あなたのパスワードを紙に書いて財布に入れて持ち歩くのは良い考えだろうか? まあそうとも言えるが、ちょっとしたトリックが必要となる。 (2-メッセージ)


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Valid XHTML 1.0! , Let iCab smile , Another HTML-lint gateway 日本語版最終更新:2007年 5月 18日 金曜日, S. HOSOKAWA