TidBITS: Apple News for the Rest of Us  TidBITS#886/02-Jul-07

ついに iPhone が出た。あなたも買っただろうか? Glenn Fleishman は勇敢にも近所の Apple Store で行列に並んだので、この開幕日の大騒ぎ(ただしとても抑制された、能率的な種類の興奮だったが)をレポートし、またやっと手にすることのできたこの新しい機器の第一印象を語る。今週号では iPhone の音声通話とデータ通信の料金プランの詳細をお伝えするとともに、TidBITS スタッフたちがこれは早速買うべきか、それとも待つべきかと意見を述べ合う。また、とてもあり得ないようにも思えることだが、先週は iPhone と無関係のニュースもたっぷりとあった。PDFpen 3.2、MacBook Pro Software Update 1.0、Final Cut Studio 2 アプリケーション群のアップデート、SuperDrive ファームウェアアップデート、Adobe Creative Suite 3 の残りのアプリケーション、それに iTunes 7.3(これだけは実際 iPhone と関係するが、Apple TV 関係の機能も一つ追加された)もリリースされた。最後にもう一つ、Adam が音楽界の最新のごたごた騒ぎについて検討する。Universal Music Group が iTunes Store との長期契約へのサインを拒んだのだ。

記事:


----------------- 本号の TidBITS のスポンサーは: ------------------

---- 皆さんのスポンサーへのサポートが TidBITS への力となります ----


MacBook Pro Software Update 1.0 リリース

  文: Jeff Carlson <[email protected]>
  訳: Mark Nagata <nagata@kurims.kyoto-u.ac.jp>

Apple が MacBook Pro ソフトウェアアップデート 1.0 をリリースした。これは 2.2 GHz と 2.4 GHz の MacBook Pro モデルに対して詳細は発表されていないが多数の問題点を修正するものだ。 MacFixIt に寄稿された情報によれば、このアップデートは Nvidia グラフィックスカードに関係するいくつかの問題点をパッチし、ディスプレイが「チラチラする」問題も解決しているかもしれないという。このアップデートは対象となるマシンからソフトウェア・アップデート経由でも、または 14.7 MB のダウンロードでも入手できる。


Adobe、残りの Creative Suite 3 を出荷

  文: Glenn Fleishman <[email protected]>
  訳: Mark Nagata <nagata@kurims.kyoto-u.ac.jp>

Adobe Systems は伝統的習慣を破って、2007 年第3四半期内の出荷を約束した製品をその四半期が始まってたった二日目にリリースした。四半期ベースのリリースというものは、普通「できるだけその四半期の最後の日に近い時期にすることでその四半期収益を確保しようとする」ものなのに。

この四月に、Adobe は Creative Suite 3 (CS3) を構成する 13 個の主要アプリケーションのうち 9 個を、個別プログラム及び 6 つのエディションとしてリリースしていた。(2007-04-02 の記事“Adobe、Creative Suite 3 の計画、価格、発売時期を発表”と 2007-04-16 の記事“Adobe、Creative Suite 3 出荷、ビデオ関係ベータ版提供”を参照。)その時にリリースされたプログラムは Photoshop(ちゃんと二つのバージョンが揃っている)と InDesign、それに Dreamweaver など、プリントおよびオンライン関係のものすべてを網羅していた。それに加えて同社は、残る 4 つのビデオならびにオーディオ関係のツールとそのサポートアプリケーションについては、同年の第3四半期までに出すと約束していた。

そして今日、Adobe は After Effects、Premiere Pro、Soundbooth、それに Encore を Intel ベースの Mac および Windows XP と Vista 用に出荷し、合わせて 2 個の Windows 専用アプリケーション、OnLocation と Ultra も出荷した。OnLocation は直接ディスクに書き込む (direct-to-disk) 録画ツールで、Adobe によれば Boot Camp でも動作するとのことだ。出荷の遅れていた 2 つのエディションも出荷が始まった。Production Premium ($1,700) と Master Suite ($2,500) だ。Master Suite には CS3 シリーズの製品すべてが含まれている。


Universal、Apple との長期 iTunes 契約を拒絶

  文: Adam C. Engst <[email protected]>
  訳: Mark Nagata <nagata@kurims.kyoto-u.ac.jp>

New York Times の報道によれば、レコード会社最大手の Universal Music Group(フランスの巨大メディア企業 Vivendi が所有する企業グループ)が、ダウンロード可能な楽曲を Apple の iTunes Store を通じて販売するための二年契約の更新を拒んだという。それに代わるものとして、Universal は月毎のオプションという道を選ぼうとしており、それにより Apple に対しては最小限の通知をするだけで船を乗り換え、どこか他のオンライン音楽小売業者と独占契約を結ぶことも可能となるようにしたいようだ。

今回の動きは明らかに会社同士のチキンゲームだ。Universal 社の持つ楽曲はアメリカ合衆国内で販売される音楽全体の三分の一を占めているので、iTunes Store にとってはそれほど巨大な音楽ライブラリへのアクセスを失うことは破滅的な事態となるだろう。けれども、Universal の 2007 年第1四半期の全世界収益のうち 15% 近くがオンライン販売によるものであり、iTunes Store がオンライン市場の 75% 以上を支配しているという事実を考え合わせれば、Universal としてもその収益の 10% 以上に寄与している小売業者を怒らせてよいはずがないだろう。

疑いもなく、Universal はより有利な契約条件を目指して Apple と交渉したいと望んでいるわけだ。例えば、楽曲あたりの価格を人気度に基づいて設定するなど、もっと多くのコントロールの力を Universal の手に渡すような契約とか、あるいは、Universal が力ずくで Microsoft を屈服させて Zune の使用料を払わせた(2006-11-13 の“Zune と DRM と Universal Music”参照)ように、Apple にも Universal に対して iPod 一台あたりの使用料を支払わせるとか、そういうものを望んでいるのだろう。

私は Universal が今の時点ですぐに iTunes Store から楽曲を引き揚げることはないと思う。それには三つの理由がある。まず、Apple は今や Wal-Mart と Best Buy に次ぐ第三の音楽小売業者であって、iTunes Store はまだまだ成長を続けているからだ。これからますますパワフルになろうとしている大手の小売業者との関係を危うくするようなことはどう見ても得策ではない。

iTunes の人気の多くの部分は iPod に由来するものだ。既に一億ユニット以上が売られ、音楽も再生可能な iPhone のリリースにも支えられて、iPod の今後にはその勢いに何らかげりの兆候も見られない。他のオンライン音楽小売業者のほとんどすべては Windows ベースのデジタル著作権管理を使用しているので iPod とも iPhone とも非互換だから、他のどのオンライン小売業者も近い将来に iTunes Store と競合できる手がかりすらないだろう。

そして第三の理由は? Steve Jobs だ。iPod も、iTunes Store も、それからフラットレートの価格システムの精神も、すべて彼の心の奥底から出たものだ。だから、そこに大きな変更を加えるとすれば、何らかの利得の伴うものでなければあり得ない。例えば、EMI との交渉の結果では、より高価な iTunes Plus トラックには DRM を付けず、しかもより高音質でエンコードされることになった。(2007-04-02 の記事“Apple と EMI、iTunes で DRM フリー楽曲を提供”参照。)Jobs なら、とにかくそれ以外のことが起こるのを許さないだろう。


PDFpen 3.2、編集マークを追加

  文: Adam C. Engst <[email protected]>
  訳: Mark Nagata <nagata@kurims.kyoto-u.ac.jp>

私たちの多くにとって、紙の上で文章を編集するという作業は、ワードプロセッサの登場に伴って過去のものとなったように思える。事実、その考えは正しい。デジタル書類を作ってそれを共有することが簡単にできるようになった今、紙の上での編集作業をする必要は劇的に減ったと言える。けれども、時として私たちは自分の書いた文章を 編集者や校正者が変更できるようにしてもらいたくない場合もある。たとえ Microsoft Word の変更追跡機能があったとしても、誤った変更が多数加えられてしまってはうまく直すまでに膨大な努力が必要になってしまうかもしれないからだ。その上、既に InDesign や QuarkXPress などでその書類のレイアウトが済んだ後で校正の作業が加えられることもよくあるし、校正者たちが書類のマスターコピーで作業することを望まないような出版者も多くいる。

そのような非破壊的編集作業のための現代的解決法が、PDF だ。その本の解像度の低い PDF を作って校正者に送れば、校正者は Adobe Acrobat を使ってそこに変更点を書き込むことができる。しかしながら、Adobe は比較的使いやすいけれども特定の目的に絞られてはいない、ごく少数の編集ツールしか提供しないという方針を選んだ。スティッキーノートを追加したり、挿入・消去・置換をすべきテキストを指し示したり、テキストを強調表示したり、ページの上に図を描いたり、しるし (callout) を挿入したり、といったツールだけに限られている。けれども考えてみれば、そうしたツールが代表しているのは標準的な校正および編集用マークの働きではないか。少なくとも歴史的には、そうしたものこそがプロの校正者や編集者によって紙の上に書き込まれる一連の記号の意味であった。そういう記号(マーク)は、一見したところではただ古めかしいだけのように感じられるかもしれないが、実はそれらこそが最も能率的に書き込んで読み取れる、本質的に手早く簡潔な命令セットに他ならないのだ。

さて、ここにもう一つ、PDF を編集するための方法がある。これはプロフェッショナルのため、より組織化されたアプローチを好む人たちのために用意された方法だ。SmileOnMyMac が、同社の PDF 操作プログラム、PDFpen および PDFpen Pro のバージョン 3.2 をリリースしたのだ。新たに Library パネルが追加されて、ここで標準化された校正マークのリサイズ可能なグラフィックスが提供され、編集者が手軽にそれらを使って PDF にマークを入れられるようになった。使い方は、単にマークを Library パネルから書類の上へドラッグしてから位置決めするだけだ。いくつかのものは編集意図を紛れなく明らかなものとするためにリサイズする必要があるかもしれない。個々の記号の意味が分かりにくい場合は、ツールチップがそれぞれの意味の説明を表示してくれる。また今回のアップデートでは、スキャンした書類にマークアップを保存できる PDFpen の機能が改善され、いくつかの細かなバグも修正された。登録ユーザーには無料のアップデートで、新規購入の価格は PDFpen が $50、PDFpen Pro が $95 となっている。(Pro 版の方はクロスプラットフォームの書き込みフォームが作れる。)

[画面を見る PDFpen-Library-Panel]


Final Cut Studio 2 アプリ、SuperDrive ファームウェアアップデート

  文: Jeff Carlson <[email protected]>
  訳: Mark Nagata <nagata@kurims.kyoto-u.ac.jp>

Apple から、ビデオ制作アプリケーション群 Final Cut Studio 2 スイートに対するアップデートがリリースされた。ソフトウェア・アップデート経由でも、独立のインストーラとしても入手できる。ただし、独立のインストーラを入手するためにはあなたの Apple ID と Final Cut Studio 2 シリアル番号を使って登録が必要だ。今回のいろいろなアプリケーションに対するアップデートの大多数はバグ修正と安定性向上のためのものだが、特記すべき内容を持つものもいくつかある。また、Pro Application Update 2007-018.1 MB のダウンロード)は、基盤となるフレームワークと Final Cut Studio 2 の共有コンポーネントのいくつかをパッチする。(このパッケージはそれらのアプリケーションに特化されたものでもあるようだ。)

Final Cut Pro 6.0.137.5 MB のダウンロード)は、AVCHD (Advanced Video Codec High Definition) 撮影フォーマットを読み込むサポートを追加した。これは昨年導入されたビデオフォーマットで、ハードディスクや、ソリッドステートのメモリ、それに MiniDVD ディスク(高精細 HDV フォーマットで録画するカムコーダやビデオカメラの多くで第一の選択肢となっている MiniDV テープとは別のもの)など、ランダムアクセスのストレージ機器への保存に適するようにデザインされたものだ。AVCHD カムコーダは既に数種類出回っているが、それらで撮影したものはこれまで Windows でしか編集できず、Mac でのツールは存在していなかった。Apple のリリースノートには AVCHD を扱う際の注意点がいくつか書かれており、その中で、ビデオが読み込まれる際に Apple ProRes 422 または Apple Intermediate Codec へとコード変換されるので、元の AVCHD ファイルに比べて最大 10 倍程度大きなサイズをハードディスク上で占めるようになると注意している。(ここで AVCHD が含まれたということは、次期バージョンの iMovie HD でもこのフォーマットがサポートされることをも意味しているのかもしれない。)

Motion 3.0.119.4 MB のダウンロード)は、32-bit float のプロジェクトや互いに交わる 3D グループのレンダリングに関する既知の問題点を数多く修正している。Soundtrack Pro 2.0.174.5 MB のダウンロード)は、安定性とパフォーマンスが向上し、Delay Designer サラウンド効果プラグインをアップデートしている。Compressor 3.0.193.3 MB のダウンロード)は、iTunes Plus の使う 256 Kbps AAC フォーマットで音楽を書き出せる機能が追加され、ポスターフレームが設定できるようになり、その他の修正も施された。Color 1.0.18.3 MB のダウンロード)は、安定性が向上し、Final Cut Pro からのメタデータのサポート、シングルディスプレイモード、それに Nvidia グラフィックスカードを持つ Mac での浮動小数点処理が追加された。

最後に、こちらは Final Cut Studio 2 とは無関係だが、Apple は SuperDrive ファームウェア・アップデート 2.1(12 MB のダウンロード)をリリースした。詳細は発表されていないがいくつかの修正が施されており、特にある種の CD メディアの読み取りが改善されたという。このインストーラは SuperDrive Update 2.1 という名前のアプリケーションをあなたの Utilities フォルダの中に入れ、そのアプリケーションが別途に走るようになっているが、これはあまり普通ではないことだ。注意すべきはこのアプリケーションが起動時にアップデートの作業を始めることで、これは良くない。他の多くのアップデータのように挙動すべき、つまりユーザーが作業を始めるようにすべきだ。(そうすることで、例えばそのドライブが使用中でないよう気を配ることもできると思う。)また、このアップデータは Mac を再起動させて初めてその効果を発揮するようになっている。


DealBITS 割引: Small Dog から 4 GB の iPod nano

  文: Adam C. Engst <[email protected]>
  訳: Mark Nagata <nagata@kurims.kyoto-u.ac.jp>

先週の DealBITS 抽選で当選し、青色 4 GB iPod nano(再生品)に Mophie ケースを付けた賞品(合計 $136.99 相当)を受け取ることになったのは、charter.net の Barbara LHeureux だ。おめでとう! 残念ながら当選しなかった皆さんのために、Small Dog はこれと全く同じ青色 4 GB iPod nano(再生品)に Mophie ケースを付けたセットを 2007 年 7 月 11 日までの期間に限り $119.99 という割引価格で提供している。忘れないで頂きたいが、このように Small Dog がクールな賞品や割引価格を提供し続けられるのは、多くの TidBITS 読者の方たちが Mac 関係用品の購入に Small Dog を利用して下さることが唯一の理由なのだ。店頭で購入の際に TidBITS のことを一言言って下されば、彼らも TidBITS スポンサーになった甲斐があったと思えるだろう。今回の DealBITS 抽選に応募して下さった 1,841 人の皆さん、どうもありがとう。また今後の DealBITS 抽選もお楽しみに!


iTunes 7.3、iPhone と Apple TV 機能を追加

  文: Jeff Carlson <[email protected]>
  訳: Mark Nagata <nagata@kurims.kyoto-u.ac.jp>

Apple は iTunes 7.3 をリリースし、iPhone のサポートを組み入れた。これで iTunes は(iPod に対してと同様に)コンピュータと iPhone を結ぶハブとしての役割を担うこととなった。コンタクト情報やカレンダー、音楽、ムービーなどの同期も処理できる。iTunes はまた iPhone の電話およびデータのサービスプランをアクティベートするためのインターフェイスとしても働く。Apple のサイトにあるビデオが、 このアクティベートの手順を実演して見せている。iTunes 7.3 はソフトウェア・アップデート経由でも、 Mac 用 (33.8 MB) および Windows 用 (47.4 MB) の独立ダウンロードとしても入手できる。注意すべきは iTunes 7.3 があなたの iTunes ライブラリをアップデートすることで、アップデートを適用する前には現時点のバックアップをきちんととっておくのが賢明だ。

また、iTunes 7.3 は Apple TV に要望の多かった機能、フォト・ストリーミングを追加した。従来は、写真は Apple TV にあらかじめ同期(つまりコピー)してからでなければ見ることができなかった。


iPhone の電話、データプランの料金設定は妥当、しかし Wi-Fi がない

  文: Glenn Fleishman <[email protected]>
  訳: 亀岡孝仁 <takkameoka@bellsouth.net>

iPhone 発売開始の数日前になって、Apple と AT&T は サービスプランを発表した。これによると、個人口座では、月額 $60, $80, 及び $100 で、それぞれに 450, 900, そして 1,350 分のピーク時通話時間;無制限のセルラーデータ;200 の SMS テキストメッセージがついてくる。これらのプランには、繰り越し時間が含まれており、使わなかった時間は 12ヶ月までの間ためておく事が出来る、そして AT&T のセルラーネットワーク内での通話及びビジュアルボイスメールは使い放題となる。

最も安いプランには 5,000 分の夜間及び週末通話時間が含まれている;それ以外のより高額のプランでは、夜間及び週末通話は無制限である。(5000 分と言えば 83 時間以上にあたるので、これを越すのは、午前 2時にお互いに電話しあっているティーンエージャーや不眠症の人たちだけであろう。)

2台以上の家族プランでは、$80, $100, そして $120 があり、ピーク時間はそれぞれ 700, 1,400, そして 2,100 分で、2台目以降の iPhone にはそれぞれに月額 $30 が課金される。AT&T はその家族プランでは通常の電話に対しては月額 $10 課金しているが、一般的にこの事については iPhone の説明のところでは触れていない。家族プランには、個人向けサービスでの二つのより高額のプランと同じものが提供される。

もっと長い通話時間 (個人向けでは 2,000, 4,000 及び 6,000 分、そして家族プランでは 3,000, 4,000, そして 5,000 分) も提供されている。

既存の AT&T 顧客は、同じ SMS メッセージと無制限データのパッケージを月額 $20 の追加で iPhone サービスとして追加できる;1,500 SMS メッセージは月額 $30 の追加、使い放題では月額 $40 の追加となる。

iPhone ユーザーにとっては、SMS メッセージは関心の高いものであろう、と言うのも Apple は - 少なくとも当初は - iChat やその他のインスタントメッセージングをサポートしていないからである。SMS はこれに代わるものとなる可能性が高く、かつ行ったり来たりの短い会話であっても、テキストメッセージ数はあっという間に膨れ上がるであろう。

他の携帯電話と違い、iPhone のアクティベートは Apple Store や AT&T Store でやってもらわなければいけないと言うことは無い。その代わり、買ったら箱ごと持ち帰り、Mac OS X 10.4.10, Windows XP SP2 (Home 或いは Professional), 又は Vista (Basic 以外) を使って iTunes 上で電話を生かすのである。既存の AT&T 顧客は、現在の電話番号を iPhone に移行できる。他のキャリアの番号の移行は可能だと思うが (連邦の規則だから)、どうやってやるのかの詳細は未だオンライン上には見当たらない。これをやるためにはもう一度 AT&T Store に出向かなければいけなくなるかもしれない。 Gizmodo も AT&T に対してこの質問をした が、返事は無い。

これらの価格は、AT&T からの EDGE 標準を使った他の低速セルデータ携帯機器に対する似たようなプランや、電話契約に加えて月額 $20 を払う EDGE 使い放題を提供している T-Mobile 等と較べても、同等といえる。(AT&T と T-Mobile は世界的な GSM 標準、米国内ではデータには EDGE、そして世界の他の地域ではより高速のデータに UMTS と HSDPA が使われている、を採用している二つの米国キャリアである。)

興味深くもあり、そして現時点でははっきりしないことは、AT&T が独自の契約場所やローミングパートナーからなる 10,000 箇所にも及ぶ独自のWi-Fi ホットスポットネットワーク を活用しようとしているのかどうかである。このネットワークの使用料金は AT&T の DSL 顧客に対しては無料か月額 $2 である;より高速のサービスへの契約者は今日から無料で利用できる.こととなった。

iPhone には本物のブラウザが組み込まれているので、この電話のユーザーが Wi-Fi ホットスポットに接続してそのゲートウェイのページを見て使用条件に同意する (無料のネットワークではこの手続きが必要である)、サービスの料金を払う、或いは既に持っているアカウントにログインすると言ったことは可能のはずである。

でもこれでは EDGE から Wi-Fi へのシームレスなローミングからは程遠い話である。明らかにこれはオープンで無料のネットワークや家庭や職場と言った予め設定の可能なネットワークでは機能するであろう。この分野では、私は AT&T に期待するものはもっと大きかった (そしてまだ望みは捨てていない)。巨大な全国規模のネットワークを作っておいて、それを旗艦商品に使わないと言う手は無いであろう!


スタッフ円卓会議: iPhone を買うのは誰だ?

  文: TidBITS Staff <[email protected]>
  訳: Mark Nagata <nagata@kurims.kyoto-u.ac.jp>

この現実歪曲フィールド (Reality Distortion Field) の到達範囲内に住んでいる人なら誰でも知っているように、Apple は先週の金曜日に iPhone をリリースし、正確な数字は発表されていないものの、最初の三日間で売れた台数は あるアナリストによれば 500,000 台別のアナリストは 700,000 台と見積もっている。その数字の中には我らが Glenn Fleishman の購入した一台も含まれている。テクノロジー面での欲望の対象として iPhone が他に比類ないものであることに疑いの余地はないが、はたしてそれはあなたも今すぐ一台買うべきだということを意味しているのか? それについては今後 Glenn が彼の iPhone の機能を探究しその限界も見極めて行くに従って追々記事にして行くつもりではあるが、今の段階では、情報の完全公開という我々の立場もあることだし、とりあえず私たち自身がそれぞれに iPhone の購入予定をどのように立てているか、あるいは立てていないか、ということについて皆さんにお話ししておきたいと思う。

[Glenn Fleishman] 私がこれまで持っていた携帯電話は、iPhone の話を耳にした途端(Steve Jobs が iPhone の発表をした基調講演の会場ホールで、こいつはちゃんと私のポケットに入っていた)その内部にある何かから魂が幽体離脱して出て行ったようだ。それ以来ずっとこの携帯電話は調子が悪く、いきなりクラッシュしたり、勝手に電源が切れたり、かかってきた電話に出ても勝手に保留状態になってしまったりした。もう数えるほどの日数しか寿命が残っていないのだと私にも分かった。

iPhone が発表されるより前から、私はより良いコミュニケーションツールを求めてその市場の直中にいた。私は Windows Mobile スマートフォンにしようかと真剣に考えてさえいた - 何てこった、私としたことが。そういうわけで今回の iPhone は、ずっしりした値札が付いているとしても、最もふさわしい移行の道筋に思えた。

リリース日が近づくにつれて、いくつか限界点も明らかとなり、次第に私は気が進まない状態になって行った。もうあと 6 か月か 9 か月もしないうちに 3G iPhone が出ることも分かっていたし、その頃までには AT&T も高速ネットワークをより具体化させているに違いない。それに、新型の 3G チップも出現して Apple の望むサイズとバッテリ寿命が実現されていることだろう。何よりも、私は分かっていた。初代の iPhone がいくら良いものであったとしても、やはり第一世代ならではの不安定なところがどこかにあって、修正の手を加えなければならないだろうということを。

それでも、いまいましいことに、私は記者だ。食パンの薄切りの発明以来最大のニュースの一つについて書こうというのに、人から聞いた話とか、Apple から貸し出された機器なんかを元にしたのでは、まともな記事なんて書けやしない。Apple のレビュープログラムは iPhone については非常に小規模で、スタート以前から iPhone をあらかじめ与えられていたレビュー担当者はたった4人しかおらず、スタートした金曜日の夜になってやっと、ちょっと大勢に配られた。(そのちょっと大勢の中に、私も Jeff も、The Seattle Times で働く他のライターたちの誰も含まれていなかった。私たちは The Seattle Times 紙に定期的に Mac のコラム記事を書いているのだが。)

そういうわけで、私は早速一台を買った。(今週号の記事“iPhone との日々、始まる”を参照。)私は何も後悔していない。明らかにこれはこれまでに持ったり使ったりしたことのあるハンドヘルドのオーガナイザーの中で最高のものだし、携帯電話としても(限界点はあるものの)私がこれまで持ったものの中で最高だ。

[Jeff Carlson] 私は iPhone が本当に _欲しい_ ことは認めよう。実際私はターゲットとなる顧客層に属している。つまり、Mac に焦点を定めた、モバイル命のヘビーユーザだ。それでも、私は初日に出かけて並ぶことはしなかったし、今後も当分の間は真剣に iPhone の購入を検討することはないだろう。その主な理由は価格だ。その値打ち以上に不当な価格がついているとは思わないが、それでも $500 というのは今すぐ財布から取り出すには高過ぎる。(たった一つ残っているクレジットカードにしても、これに使うのは気が引ける。)その上、AT&T の iPhone プランに毎月さらに $20 ずつも払わなければならない。それくらいならまあ何とかなるのだが、どれほど iPhone が魅力的なものだったとしても、それは今すぐ払う _必要_ のある出費とは言えない。私が今使っている携帯電話は Treo 650 で、これは iPhone と同じ機能を多数(同じくらいうまく機能するとはとても言えないが)持っているし、インターネットサービスの方は私は必要としていない。Glenn と同様に、私も自分の Treo が iPhone の出現を悟ったと分かった。以前よりも頻繁に誤作動をするようになってきたからだ。(例えば、通話中に保留にしてかかってきた別の通話に出ると、その後で最初の通話に戻ろうとしてもできない。)

それに、一言で言って、今や Palm は時代遅れと化した。彼らは Treo に画期的な進化を施せる数年の余裕を持っていたのに、それを実現させることなく現状維持を続けてしまった。この会社は今では機構の再編成を済ませているが、 最近 CEO のEd Colligan から出されたコメント を読んでも安心する気持にはなれなかった。投資家たちとの電話会議の席で、彼は iPhone ユーザーたちが買ったばかりの新しい機器を 30 日以内に返品するようになるのではないかという希望を表明している。(いや、私にはそれで Palm Foleo がこれっぽっちでも牽引力を得られるとはどう見ても思えない。)今回の iPhone のリリースを受けて、Palm の to-do リストには積極果敢な革新というものが最優先項目として載せられるべきだ。さもなければ、競争に耐えるために彼らは Treo 各機種を超大安売りで売り出す必要があるだろう。

この iPhone には間違いなく私を惹き付ける引力がある。人々が iPhone に反応しているのはその機能に魅力を感じたからではなくて、Apple が正しいやり方でその機能を盛り込んだからだ。Apple は、人々が他の携帯電話のどこが気に入らないかを調べて、一からデザインをやり直したのだ。もし私が明日にも一台買おうと思い立ったとしたらその理由はただ一つ、この iPhone が隅から隅まで、何か飛び抜けて素晴らしいものを作ろうという Apple の意思に貫かれているからだ。これは、三流のコンポーネントと四流のソフトウェアを活用することで収益率を最大限にしようという態度とは正反対のものといえる。もちろん Apple が他の会社と同じく利益高を真剣に見据えているということは私も承知しているが、この iPhone を見る限り、彼らが会社のために製品を作ったのではなくて _私_ のために製品をデザインしてくれたのだ、という感覚が伝わってくる。そして、それこそが何よりも大きな違いなのだ。

[Adam Engst] こう言えば私のギーク信用度が下がることは承知の上だが、私としては、私も Tonya もあわてて iPhone を買うようなことはないと思う。問題点は三つある。価格、地域、それにライフスタイルだ。遠慮なく言ってしまえば、$500 から $600 に、加えて毎月 $60 というのは、そういう機器に私たちが気楽に払えるお金の範囲を遥かに越えている。事実、私たちは Virgin Mobile 製の $30 の携帯電話を既に持っていて、従量制の通話料でおよそ年額 $60 しかかかっていない。それとは別に何台もの iPod も持っていて、これで音楽やポッドキャストのモバイル用途には十分以上だ。

私たちがニューヨーク州北部地方に住んでいることで、さらに価格面での厳しさは増す。このあたりでは携帯電話の通信サービスがかなりまばらなのだ。Ithaca 市のダウンタウン地域や Cornell 大学のキャンパス内では間違いなく iPhone の受信状態も良好だろうとは思うが、町の中心から数マイルも離れればどう見ても望み薄だろう。受信状態が悪ければフィードバックサイクルが加速する。どこにいてもアクセスできることが保証されないのなら、絶対に必要な時以外は携帯電話なんて使わないという気持ちになるものだ。

そして最後に、私たちのライフスタイルは iPhone が大きな意味を持つようなタイプのものとは違っている。私たちは自宅で仕事をするので、通勤の必要はない。仕事関係のイベントやミーティングで家を離れることもたまにしかない。自宅にいる時には、地上線による通信が完璧に機能していて、高速のインターネット接続も複数種類確保され、ラップトップの Mac が数台あって、スクリーン上の面積も大量にある。仮に私たちが大都市の近郊に住んでいて長時間通勤が必要で、フルにモバイル化されたライフスタイルを楽しんでいるのだとしたら、iPhone はずっと魅力的で重大なものとなるだろう。こういった話題で私が悪魔の代弁者を演じているのが聞きたければ、 こちらの MacNotables ポッドキャストをどうぞ。

そうは言っても、それでもやはり私は一台欲しいと思っている。何かの理由でわが家の玄関に一台が届けられたら、きっと私は何とかしてそれを私のライフスタイルに取り込む方法を見つけ出すことをお約束しよう。もっとも、主な使用法は家庭内 Wi-Fi を通じてのものになるだろうが。

[Matt Neuburg] 私 Matt Neuburg としては、この iPhone という奴など愚劣だとしか思えない。iPod が出た時も、愚劣だとしか思えなかった。その前は、Mac OS X が愚劣だと思っていた。それより前には、初代の色とりどりの iMac が愚劣に思えた。さらに昔には、ウェブ (World Wide Web) を愚劣だと思っていた。既に電子メールと FTP があるのだから、単にそれにハイパーリンクと画像をたっぷりと盛り合わせただけのウェブなんて、いったい何のために必要なのかと思っていた。一言で言えば、この Matt Neuburg という男は、何に対しても正しい判断のできない人物だった。だから、世の中の人たちに言いたい。皆さんは、たぶんこの Matt Neuburg という男の言うのとは正反対のことをする方が賢明なのだから、きっと今すぐ iPhone を買うべきじゃないか? それに、私 Matt Neuburg が思うに、自分自身を第三者に見立てて語る男なんて、単なる妄想狂に過ぎないさ。

[Mark Anbinder] iPhone を買った人たちがこの週末に出会った問題点の中でよく聞かれたものの一つこそ、私が iPhone を当分買わないと思っている根本的な理由に関係している。私が働いている Cornell 大学は、私を含む数名の IT 関係スタッフ用に iPhone を購入しようとしてきたのだが、AT&T の誰と相談してもそれを実現させる方法が全く見つからなかった。

iPhone が公式に個人使用の顧客向け専用とされていて、企業での使用が考慮されていないという事実こそ、iPhone を購入した人たちの多くがこの週末、これまで使っていた AT&T の企業向けアカウントから電話番号を移送しようとして出くわしたつまずきの石だった。AT&T の番号自動移送システムでは、企業用アカウントから個人用アカウントへの電話番号の移送ができなかったし、AT&T のカスタマーサービスの人が言うにはその移送はその企業アカウントの連絡責任者からの許諾がなければできないということで、金曜日の午後 6 時を過ぎた後に責任者をつかまえることなどできなかった。

信じてもらえるかどうか分からないが、WWDC で iPhone がお披露目された時に私は確かに感銘を受けはしたけれど、今すぐ iPhone を買いたいという圧倒的な欲求を感じることはなかった。(もしも買いたい気持ちがあれば、私は金曜日の夕方に近所の AT&T Store で容易に一台買うことができた。午後遅くなるまで行列はそれほど長くならなかったのだから。)でも、もし Cornell に買ってもらうのだとしたら、あらかじめ Cornell がその方法を見つけ出していることが必要で、それは困難なことだと判明しつつある。

Apple は AT&T に対して当面は iPhone をコンシューマ向け製品としてだけ提供するようにと強く要求している。だから、企業向け割引プランが利用できないばかりでなく、単純に企業アカウントでは使う方法がないのだ。企業を通じて購入する人が会社のクレジットカードを使うことは可能だが、購入後の有効化(アクティベーション)の段階ではやはり個人の社会保障番号 (social security number) による信用調査が行なわれる。私の同僚の一人は、彼が仕事用に登録しようとしているにもかかわらず、彼自身の社会保障番号が使われることで彼個人が二年契約の責務に縛られることになる点についてはどうしても懸念があると言っている。

私は金曜日の夜に実際ある人の iPhone に(まだパッケージを破っていない箱のままだったが)AT&T Store の出口を出てすぐの所で触れることができた。だから、まだ使ってみてはいないとしても、少なくともしばらくの間は新し物好きの欲求をぐっと抑えることができると思う。私としては、どうすれば会社用に購入できるかを会計士連中が発見してくれるまではおとなしく待っていたい。きっと、何か経理上の手品のようなことが必要になるのだろうが。

[Joe Kissell] 私は新しい携帯電話を買いたいという市場にいるし、iPhone は私の必要にうまくマッチしてくれると思う。ただ一つ些細な問題があって、ちょうど今週私はフランスの Paris に引っ越したばかりで、これから二年間すべての通話を転送してもらうために AT&T にローミングサービス料金を払うのは費用効率が良いとは思えない。だから、私は今年の後半にも iPhone がヨーロッパでリリースされるまで待ちたい。その時になって、料金プランと契約条項がちゃんとしたものならば、私は喜んで一台買うことになると思う。


iPhone との日々、始まる

  文: Glenn Fleishman <[email protected]>
  訳: 羽鳥公士郎 <hatori@ousaan.com>

昨日、Seattle の北はずれの信号で停車したとき、私たちの右隣に止まった車の運転手が窓越しに話しかけてきた。さては、さっきガソリンスタンドから出てきたときに燃料タンクのふたを開けっ放しにしてしまったのだろうか。いや、そうではなかった。私の妻 Lynn とその男がそれぞれ窓を開けると、彼は言った。「ねえ、それって、iPhone?」

その前日、それは iPhone 発売日の翌日だったのだが、近所の公園と博物館で開かれていたフェスティバルの中を歩きながら、私は iPhone を取り出して、息子の Ben が歴史的な鐘の横に立っているのを写真に撮った。すると日本人の老婦人が私に話しかけた。「4 ギガバイトですか、8 ギガバイトですか?」

Apple が、そのよそよそしさと、秘密主義と、戦略的な情報発信によって、どれだけ強い関心を iPhone にひきつけることができたのか、この2つのできごとによく表れている。

私は金曜日の夜に iPhone を購入した。その体験は楽しく、かつ教訓的なものだった。2日間使ってみて、電話、iPod、インターネットが組み合わさったこの機器には満足している。いくつかの場面では計り知れないほど貴重だと分かったが、がっかりさせられた点もすでに見つかった。

機敏な読者であれば、私が先週 The New York Post のコラムで、新し物好きや出張の多いビジネスマンのカテゴリーに当てはまらない人は次世代モデルが出るのを待って購入したほうがいい理由をいくつか挙げたことを知っているかもしれない。その記事で私が提案したことは今でも成り立つ。次のリリースまで待つべき理由は十分にある。しかし、それ以降のリリースまで待つ理由はそれほどないだろう。(Post の編集者たちはこの記事を 「最初のレビュー」と名づけ、掲載されたものには私が以前から iPhone を使っていたことが暗示されているが、実際のところ私は 1 月以来 iPhone に触ったことはない。2007-01-15 の "iPhone に iTouch してみた" 参照。Post の記事を書いた顛末については私のブログの記事 "Glenn Stabbed in Nude iPhone Review!" を参照。)

もっとも悪いことは(というほどでもないが)待ったこと -- 新しいiPhone を購入するのは、想像したほどの試練ではなかった。 University Village の Apple Storeには長い行列ができていたが、その動きは速く、私が入り口にたどり着いたときには、たくさんの、本当にたくさんの iPhone が私の目の前に残っていた。

私は情勢を確認するため午後 5 時すぎに到着し、多数の写真を撮った。米国北西部で最初の Apple の店舗であるこの Apple Store では、少なくとも 300人が列を作って待っていた。丸一日以上並んでいた人はわずかで、多くは数時間待っただけだった。その近くの AT&T Store には、およそ 60 人が並んでいた。(TidBITS 寄稿編集者 Mark Anbinder と多くの TidBITS 読者も Flickrプールに写真を寄せてくれた。)

Apple Store の開店の様子を観察するため、入り口近くで午後 6 時まで待っていると、最初の数十人が中に入ることを許された。私はその場を離れ、より短い AT&T Store の列に加わった。その方がよさそうに思えたのだ。ところが、20 分待っても、iPhone を携えて立ち去った人はわずかだった。

前に並んでいた人の1人が覗いてみて分かったことは、AT&T はすべての人に付属品を売りつけていたのだった。別の AT&T Store で iPhone を買った The Seattle Times の Brier Dudley をはじめ、全国からの報告によっても、このことが確認された。これは企業上層部からの指令ではなかった。というのも、掲示は見たところ手書きのようだったし、売り物は場所によって異なっていたからだ。ほとんどの店舗ではこのような要求がなかったようだ。

しかし、一部の AT&T Store で購入した人は、車載充電器やそのほかの商品からなる付属品パッケージを購入する必要があるといわれた。これはたいてい50 ドルかそれ以上になった。それらの品物は翌日または 14 日以内に返品すれば全額払い戻しが受けられるということだった。

このような AT&T の行動は実にくだらなく、AT&T を率いる Randall Stephenson と Steve Jobs とのあいだの CEO 対 CEO 会談にまで発展しかねないと思う。これらの店舗はすべて企業が所有するものだから、責められるべき人物は上層または中間管理職以外にない。私が思うに、この企業は単に、独占契約をした電話について一般的なアップセル戦術を採用しただけなのだろう。しかし彼らは多くの個人に対して信用を失ったのだし、この話が広まったおかげで、人々は今後、このようなばかげたことは避けようと、AT&T Storeに寄りつかなくなるだろう。

私は AT&T Store の列から離れ、Apple Store に戻った。そこでは、午後 6時 30 分の時点で行列の半分がすでに目的を果たしていた。私は 20 分で店内に入り、その 2 分後には店外に出ていた。午後 7 時に到着していれば、5 分も待つことはなかっただろう。見るからに多くの商品が陳列されており、店員たちが iPhone の入った大きな箱を裏から運び出していた。

私の近所の AT&T Store のケチな戦術は普遍的なものではなかった。ありがたいことだ。TidBITS の同僚であり Take Control 編集者の Karen Andersonは、金曜日の大部分を費やして近くにあるもう1つ別のモールの AT&T Storeに並び、すぐに気持ちよく iPhone を購入することができた。(Karen は元Apple 従業員だ。)

待っているあいだ、私は回りにいた何人かと、iPhone が入手困難になることを見越して鞘を取るべきかどうかと話し合った。私たちが店舗から遠く離れていたときには、私たちは皆2つ購入し、すぐに1つを Craigslist で高値で売り払おうと考えていた。店舗に近づくにつれ、初期の需要が供給を凌駕することはないかもしれないと悟り、結局私たちは皆、1つだけ購入した。

Apple Store の中で1つ利口になったこととして、iPhone はその日からApple の保証が適用される一方、AT&T はいつものひどい携帯電話損害・紛失保証を提供しないけれど、Apple が 7 月から何らかの AppleCare 契約を提供する予定だ。2つの店舗の従業員から別々に説明されたが、両社いずれのサイトでも詳細を見つけることがまだできない。

iPhone の入手可能性は見たところ変動しているようだ。AT&T Store では土曜日に iPhone がほとんど品切れになったと伝えられた一方、Apple Store には積み荷の波が定期的に押しよせているらしい。Apple は iPhone の販売店在庫状況ページを作成し、iPhone が地域の販売店で購入できるかどうか知らせている。

蒸し暑い日の水浴びのように快適 -- iPhone のアクティベートは、私にとっては、Apple と AT&T が主張する通りに簡単だった。数段階の手順で数分間かけて、既存の AT&T 携帯電話契約をアップグレードし、電話番号を設定し、そして使い始めた。

2人の Macworld 編集者は不運に見舞われた。1人は先週あらかじめ法人契約を個人契約に変更したことで問題が生じ、もう1人が買った iPhone はまったく動かなかった。両者とも、問題は1日かそこらで解決した。伝えられるところでは、多くの人が iPhone をアクティベートするのに(比喩的な意味にせよ文字通りの意味にせよ)支障をきたした。しかし、すべてのアクティベーションのうちどれだけの割合に問題があったのかはよく分からない。

現在までのところ、iPhone に対する私の反応は、これは私が今まで使った中で最高の携帯電話だということで、Apple は多くの点ですぐれた設計上の選択をしたと思う。これは大まかに言って広告どおりに動き、私がテストしたところでは実際に故障するということはなかった。機能が足りなかったり、特定の操作方法が欠けていたりということはあるが、それは故障とは言えない。しかしそれは、細かい点で改善の余地があるということでもあり、そのような点こそが、ソフトウェアとハードウェアの両面で今後大きな意味を持つこととなるだろう。

iPhone をポケットから引っぱり出し、ロック解除ボタンを押さえた指を滑らせれば、個人的な情報にも、ウェブにも電子メールにも、カメラにも電話にも、すべてのものにアクセスできる。これはすばらしいことだ。1日も経たないうちに、私はいつの間にか、近くにラップトップがあるときですら反射的にiPhone を取り出したり握りしめたりするようになった。

妻と公園を歩いていて、ある俳優の名前が思い出せなかったとき、私は言った。そうだ、調べればいい! 私たちは笑いあったが、もし私たちのオタク度があと 10 パーセントほど高ければ、私は実際に調べていたことだろう。

解像度、明るさ、そして鮮明な表示はとにかく尋常ではない。ただ単にレンダリングしたイメージや写真イメージをとりあえず表示したというだけでなく、最小の文字でさえもかなり読みやすい。これまで iPhone の写真を見たときには、レンダリングした文字を画面の上に挿入しているように感じられた。実際に iPhone の画面を見ているときでも、何か現実離れしたものを見ているような気がする。アンチエイリアスされた文字の品質がすばらしいせいだ。それに画面も明るく、戸外の明るい光の下でも十分に使える。

こんなことをいうのは気が進まないのだが、この類のもので 10 インチのハンドヘルド版があれば、多くの家庭にとって信じられないほど役に立つ商品となるだろう。以前の私は、キーボードを除いた機能限定版コンピュータが役に立つとは思ったことがないのだが。そのような機器に 802.11n を利用したローカル・ネットワーク・ストリーミングの Apple TV 機能を付け加えれば、Ultra-Mobile PC やタブレット PC など類似の機器にはまったく存在しなかった未来が開けるような気がする。

欠点もいくつか -- iPhone でもっとも議論を呼んだことは、物理的なキーボードを搭載せずに「ガラスの」キーボードでより優れた柔軟性を提供するという決定に関してだった。そのころにはまだはっきりと分かっていなかったのだが、画面上のキーボードにはアルファベットだけがタイプライター式の配列で表示されていて、数字や句読点、記号は別のボタンをタップすると表示される。(不思議な話だが、これは、最初期のデータ符号化方式の1つであるBaudot コードがテキストを平均 5.5 ビットで送信するために使っている方法と似ている。)

2日間経っても、私にとってこのキーボードは不便でイライラさせられる。私は 27 年間、11 才のときからこのかたタッチタイピングをしてきて、ほとんどのキーボード配列はすぐに覚えることができる。QWERTY キーボードであれば1分に 100 ワードはゆうにタイプできるのだが、私は iPhone にうまく適応するには年をとりすぎてしまったのかもしれない。私の脳の再訓練については今後レポートしたい。

自動修正と自動予測は確かにかなりうまく機能する。私が普段タイプするものを学習する機能があるのかどうかは分からないが、私の名前はすでに覚えてくれたようだ。

しかし、このキーボード操作法でもっともイライラさせられるのは、パスワードを入力するときだ。パスワードというのは、ほとんどどこでも、大文字と小文字を区別する。つまり、"TidBITS" は "tidbits" とも違うし "TiDbItS" とも違う。ウェブサイトやシステム全体の設定をする欄にパスワードを入力するとき、iPhone のキーボードで1文字タイプするたびに文字は隠れてしまう。ところがキーボード上では、Shift や Caps Lock を押していようがいまいが、タイプするときには大文字しか表示されない。このようなやり方では認知的不協和が引き起こされる。"e" をタイプしたとき、キーボードでは "E" と表示され、そしてその文字はパスワード欄では黒丸で表示されるのだ。

Safari ブラウザはかなりうまく動き、驚くほどきれいに表示されたページを、指の動きやタップの組み合わせでズームインしたりズームアウトしたりできる。ウェブページのある部分をダブルタップすると、CSS やテーブルで定義されたコラムが画面の幅いっぱいに広がる。これは気の利いた機能だ。ただ、iPhone を横長の向きに回転させたときですら、長めの文章を読むのにちょうどよい組み合わせの拡大率を得るのは難しい。

私としては、Apple が普通の人でも使えるようなアクセシビリティ機能を付け加えて、タップ1つでそのコラムからテキストを抽出して大きな文字で表示するとか、フォーマットを少し省略して表示するとかして、さらに通常の表示に戻すこともできるようにするといったことを考慮してくれればよいと思う。

通信について言えば、Wi-Fi ネットワークの外に出てしまうと、データ通信をするのに旧式の遅い EDGE ネットワークが頼りだというのは、iPhone のもっとも不満なところだ。それに関連することとして、AT&T には Wi-Fi ホットスポットの定額利用プランがない。それがあればデータ通信が容易になるのだが。(私は Macworld に、iPhone で使用できる Wi-Fi の選択肢について概要 を書いた。)

ここ2日間ほどいろいろ歩き回って、EDGE ネットワークに切り替わるたびに、私はうめき声をあげた。ネットワークが見つからないこともある。そんなときは、AT&T ネットワークの文字の隣にある小さな E が消えてしまう。つながったとしても、速度がダイアルアップモデムよりわずかに速い程度だということもある。AT&T が利用者に伝えている通りの、平均で 100 から 200 Kbpsというような速度も、私はときおり体験した。

AT&T が第3世代(3G)セルラーデータ・ネットワークを完成させれば、iPhone にはまったく新しいモデルが必要となる。このネットワークは今年中にできる予定で、それに必要なチップも、Jobs が言うには、今年の終わりには確実に入手可能になる。そうなれば、3G iPhone は 1 月の Macworld Expoで発表されるという段取りになるだろう。

あれこれのソフトウェアに対する変更は、もちろんずっと容易で、Apple とAT&T が開発を続けるうちに自ずから登場してくることだろう。立ち上げ時に間に合わなかった機能が長いリストをなしていると考えられ、7 月の終わりまでには、マイナーアップデートによって多数の機能が追加されるだろうと思う。たとえば、Google Map を使うとき、ある場所を指定してそこをブックマークすることができない。地図アプリケーションにこの機能が欠けているなんて、ちょっと考えられない。

しかし、もう1つ注目すべきこととして、 Salon の Fahrad Manjoo が指摘しているのだが、私たちはここで Apple と AT&T を完全に当てにしている。この電話のソフトウェアを変更したり改良したりすることについては、彼らが私たちと同じプライオリティを持っているに違いないというわけだ。ソフトウェアに機能が欠けていると批判すれば、オタクたちが電子メールで、ソフトウェアは手を入れてアップデートすることが可能だと主張することになるだろうとは彼も書いている。それはその通りだが、「間違っていることを直すのに、世界中のソフトウェア開発者ではなく、Apple に頼らなければならないというのは、私にとっては気分の良いことではない。」

まさにそれが問題なのだ。TidBITS の私たちは、アプリケーション開発者を熱烈に応援している。Mac が Mac たる所以は、個人的な楽しみのため、または経済的利益のため、あるいはその両方のために、プログラマーやソフトウェア会社がこのプラットフォームに献身していることにある。iPhone についてもそうならなければならない。Apple の Worldwide Developers Conference の後、Jobs は大雑把な言葉遣いで、サードパーティーの開発が可能になり、何らかの形の認定プログラムが提供される予定だと述べている。それが遠い将来でなく、近い将来実現することを願おう。


TidBITS Talk/02-Jul-07 のホットな話題

  文: TidBITS Staff <[email protected]>
  訳: Mark Nagata <nagata@kurims.kyoto-u.ac.jp>

iPhone の第一印象 -- この iPhone の、あなたの第一印象はいかが?(1 メッセージ)

Exchange に代わるべき、Mac フレンドリーなものは -- Microsoft の Exchange 以外に選択肢がない訳ではない。他に、どんなメール及びカレンダー用サーバが利用できるだろうか?(5 メッセージ)

iPhone 広告ヒステリー -- iPhone は、大騒ぎして扱われ過ぎだろうか? この機器についての報道は、アメリカ合衆国以外の国ではなおさら煩わしいものかもしれない。他の国ではまだしばらくの間利用できないのだから。(8 メッセージ)

Snapz Pro X 2.1 がユニバーサルに -- Ambrosia Software の定評あるスクリーンキャプチャユーティリティが、Intel ベースの Mac でもネイティブに走るようになった。これを使ってプロフェッショナル級のスクリーンショットを撮るにはどうするのがよいか、読者たちが議論する。(4 メッセージ)

iPhone、AT&T で混乱 -- iPhone のリリースに先立って AT&T の側で起こった混乱について、ある読者が詳細を語る。他のキャリアから電話番号を移送して使えるようにするのはどの程度困難なのか思案する。 (4_メッセージ)

奇妙な AirPort の問題 -- 奇妙な問題がある。AirPort で接続された MacBook が、Google のサーバには接続できない。なぜだ? (3 メッセージ)

iPhone の言語機能 -- iPhone は、どの言語スクリプトを正しく表示できるか? (1_メッセージ)

iPhone と DUNS? -- iPhone をラップトップ用のモデムとして使えるか?(1-メッセージ)


tb_badge_trans-jp2 _ Take Control Take Control 電子ブック日本語版好評発売中

TidBITS は、タイムリーなニュース、洞察溢れる解説、奥の深いレビューを Macintosh とインターネット共同体にお届けする無料の週刊ニュースレターです。ご友人には自由にご転送ください。できれば購読をお薦めください。
非営利、非商用の出版物、Web サイトは、フルクレジットを明記すれば記事を転載または記事へのリンクができます。それ以外の場合はお問い合わせ下さい。記事が正確であることの保証はありません。告示:書名、製品名および会社名は、それぞれ該当する権利者の登録商標または権利です。TidBITS ISSN 1090-7017

©Copyright 2007 TidBITS: 再使用は Creative Commons ライセンスによります。

Valid XHTML 1.0! , Let iCab smile , Another HTML-lint gateway 日本語版最終更新:2007年 7月 7日 土曜日, S. HOSOKAWA