TidBITS: Apple News for the Rest of Us  TidBITS#921/31-Mar-08

何てこった! ハッキングコンテスト Pwn2Own で、Mac OS X が最初のいけにえとなってしまった。あるセキュリティ研究者が、Safari に潜むこれまで知られていなかった脆弱性を突いた攻撃にいかにしてたった 2 分以内で成功し、賞金 $10,000 と賞品の MacBook Air を持ち帰ったかについて、Rich Mogull が説明する。この屈辱の痛みを和らげてくれるのが、Apple が全世界的なブランドの調査でトップにランクされたというニュースだ。また今週号では Amazon の電子ブックリーダー Kindle を使ってみた第一印象を Tonya が語り、Adam は自分のネットワークをギガビット Ethernet にアップデートしたことでスループットが倍以上になった顛末を詳しく説明する。その説明を隅々まで読めば、あなたにも同じことが出来るだろう。詳しく見ておくべき今週の新リリースとしては、Carbon Copy Cloner 3.1、新登場の Outspring Mail 電子メールクライアント、Aperture 2.1、それにオンライン写真エディタの Photoshop Express がある。また TidBITS 監視リストで手早く紹介するのは SOHO Organizer 7.0、SOHO Notes 7.0、MailTags 2.2、Moneydance 2008、Freeway 5、それからいくつもの非常に個別的な(しかしながら本質的に重要なものになるかもしれない)Apple 発のアップデートだ。

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Apple、世界のブランドの頂点に

  文: Adam C. Engst <[email protected]>
  訳: 羽鳥公士郎 <http://www.ousaan.com/mail/>

よいことは続くという話をしよう。まずは Fortune Magazine が同社の企業ランキングで Apple を表彰した(2008-03-05 の "Apple が Fortune's Most Admired Companies リストのトップに" 参照)。そしてこのたび、ほぼ 2,000人のマーケティング専門家によるブランド好感度調査で、Apple はほとんどの部門の最上位を獲得したと、ブランド格付け会社 Interbrand が発表した。Apple は、肯定的な質問、たとえば「それなしでは生きてゆけないようなブランドは?」とか「100 年前に送り込んだと仮定して、歴史上もっとも大きな貢献をすると思われるブランドは?」といったようなことのほとんどすべてで第1位となった。回答者の1人はこう言っている。「[Apple は、]仕事にせよエンターテイメントにせよ、本当にかけがえのないと言って思いつく唯一のブランドだ。私が大好きなほかのどのブランドについても、もしそれがなくなったとしても私は代わりを見つけることができる。しかし Apple には代わりがない。」

Apple はまた、より個人的な質問でも最上位を獲得した。たとえば「ディナーパーティーで隣に座りたいブランドは?」とか「あなたにもっとも大きな影響を与えているブランドは?」とか、あるいはもっと分かりやすく「もしもあなた自身を説明するためにブランドにならなければならないとしたら、なりたいブランドは?」といったことだ。私たち皆が Apple _になる_ というわけにはゆかないが、多くの回答者は、自分が Apple _のようである_ と思いたがっている。「なぜなら私は新しいことを考え付きたいからだ。私は "think different" を選んだ。」

肯定的な質問で Apple と並んで上位にランクされたのは、Google、Nike、Coca-Cola、Starbucks だ。しかし、すべての質問が肯定的なものだったわけではなく、「口論したいブランドは?」では Apple は Microsoft に次いで第2位になっている。確かに、Apple ファンの多くには、Apple のやり方について言いたいことがあるのだが、そのような感情は、人々が意識しているということを示しているという意味では、よいことだ。私としては、Microsoft のマーケティング部門で働いているとしたら、もっと気をもむことになるだろう。なぜなら、この世界最大のソフトウェア企業は「あなたがブランドを再生できるとしたら、再生したいブランドは?」で第1位になっているのだ。アイタタ。コメントも容赦なく、こんな文が並んでいる。「[Microsoft は]革新と冒険から退屈と模倣へと変わってしまった。しかしブランド再生は第1歩でしかない。考え方を大幅に転換することが絶対に必要だ。」

(これは以前にも言ったことがあるが、繰り返そう。Microsoft が有用かつ興味深い方法でブランド再生の実験ができる場所は、Macintosh Business Unitにある。多くの Mac ユーザが Windows を競争相手とみなしているそのやり方からして、全般的な Microsoft Windows ブランドから独立している点で有利だろう。)

ちょっと悲惨だったのは、「本当に『グリーン』だと思うブランドは?」という質問でもっとも多くの票を獲得したのが、圧倒的大差で「なし」だったことだ。その下の4つには Toyota、BP、The Body Shop、Honda が選ばれている。企業は口を盛んに動かしているかもしれないが、環境意識をブランドと結びつけるのに十分なほどには手を動かしていない。

ブランドとその重要性について、特に Apple に関することについては、2002年に Simon Spence が書いた3部からなる記事 "Apple のブランド戦略" をお読みいただきたい。彼は当時ブランドコンサルタント企業 Alexander Dunlop Ltd. の調査および情報技術部門の責任者だった。当然ながら、ところどころ時代遅れの部分があるが、それでもなお、Apple にとってのブランドの意味についてのよい概説だといえる。

(日本語)ブランドこそが価値を体現する|Apple の無形資産|小売店舗に架ける橋


Carbon Copy Cloner 3.1 リリース

  文: Adam C. Engst <[email protected]>
  訳: 羽鳥公士郎 <http://www.ousaan.com/mail/>

Bombich Software は Carbon Copy Cloner 3.1(CCC)をリリースした。人気のあるディスク複製およびバックアップソフトウェアの重要なアップデートだ。CCC 3.1 は、CCC の Copy Selected Items を使用したバックアップ方法でバックアップする際の「より優れた正確性」のために rsync 3.0 を実装し、選択されたそれぞれの操作について CCC が何をするかを説明するすでに充実していたインターフェースの説明文を改善し、バックアップボリュームが起動可能であるかを示す「起動可能」チェック(これは、残念ながら、ネットワークを経由して作った複製ではうまく働かない)を 追加するなどしている。さまざまなバグも修正され、リモートの Mac にバックアップをする際にパスにスペースが含まれていても正しい場所が使用されるようになり、Leopard でCopy Everything を使うときに不可視フラグが保存されるようになり、Leopard のスケジュール済みタスクが再起動後も正しく動くようになり、CCCの Authentication Credentials パッケージを複数の複製元 Mac から1台の複製先マシンにインストールすることができるようになった(以前は、この設定を使うには、承認資格情報を手動でいじる必要があった)。

Carbon Copy Cloner を使ったことがない人のために言うと、これはスケジュール機能とアーカイブ機能を含む複製、同期、バックアップの完全な機能を備えたプログラムだ。私は、Carbon Copy Cloner を使って、私が仕事で主に使っているマシンの起動可能な複製を、ネットワークを経由して、Power Mac G4 ファイルサーバの中に取り付けたディスクに作成するという実験を始めたところだ。(これは私の Leopard Mac の Time Machine バックアップと、Tiger または Panther が動いている Mac の Retrospect ホームフォルダバックアップに追加されるもので、すべてが同じ Power Mac G4 に保存される。)起動可能な複製をネットワーク経由で作る機能というのは珍しく、ほかに備えているのは EMC の Retrospect だけだ(すばらしい SuperDuper はネットワーク経由でリモートのディスクイメージにバックアップを作れるが、それからは起動できない)。Carbon Copy Cloner のネットワーク複製は現在のバージョンの Retrospect よりもずっと速い。

Carbon-Copy-Cloner

Carbon Copy Cloner 3.1 には Mac OS X 10.4.8 以降が必要で、Mac OS X 10.5.2 で快適に動く。このプログラムは、しばりのないシェアウェアだ。つまり、支払いをしようとしなかろうとすべての機能を使うことができ、登録はまったく必要ない。しかし、Carbon Copy Cloner に価値があると思ったら、Bombich Software は寄付を受け付けている。2.1 MB のダウンロードだ。


Apple、ハッキングコンテストで最初の犠牲者に

  文: Rich Mogull <[email protected]>
  訳: Mark Nagata <nagata@kurims.kyoto-u.ac.jp>

3 月 27 日の木曜日に、CanSecWest カンファレンスで開催された第2回の年次 Pwn2Own ハッキングコンテストにおける初めての犠牲者となったのはある MacBook Air 機だった。セキュリティ研究者の Charlie Miller が、Safari ウェブブラウザの中に従来は知られていなかった脆弱性があるのを発見し、それを利用して攻撃することに成功し、かくして $10,000 の賞金(と副賞としてその MacBook Air)を勝ち取るまでに、たった 2 分しかかからなかった。Miller は即座にコンテストのスポンサーである TippingPoint との間で非開示契約に署名し、同社は速やかにこの欠陥を Apple に報告した。Apple がこの脆弱性にパッチを当てるまでの間、詳しい情報が公開されることはない。

昨年は、この Pwn2Own コンテストで使用されるのは2台の Mac に限られていた。けれども今年はコンテストの主催者たちがよりオープンな場を求めるために Mac OS X 10.5 Leopard を Microsoft Windows Vista とも Ubuntu Linux とも戦わせることにした。ルールは単純だ。もしも研究者の誰かがフルにパッチされたラップトップ機を“pwn”することができれば(“pwn”とはハッカー用語で、攻撃を完全に成功させてシステムを乗っ取ってしまうことを意味する)その人が賞品としてそのラップトップ機と賞金を獲得するという訳だ。毎日、賞金の額は次第に減額されて行く。これは、ルールの規定によってアタッカーがシステムをコントロールするのが少しずつ易しくなるからだ。初日はどれかのシステムをネットワーク経由の攻撃で遠隔乗っ取りをするのがルールで、その賞金 $20,000 を手にできた人は一人もいなかった。二日目、これがその MacBook Air がダウンした日だったが、アタッカーが電子メールを送ったりそのシステム上のウェブブラウザを敵意あるサイトに導いたりすること(クライアントサイド攻撃という名で知られている方法)も許された。コンテストの最終日には、よく使われるさまざまのサードパーティアプリケーションをカンファレンスの主催者たちがアタッカーたちのためにあらかじめインストールしておく代わりに、賞金が $5,000 に下がるのだった。コンテストの最後まで攻撃を許さず残ったのは Linux システムだけだった。

この種のコンテストについて言われることについては話を割り引いて聞く必要があるが、それでもこの結果を無視する訳には行かない。Charlie Miller が MacBook Air を落とすのにたった 2 分しかかからなかったのだから、明らかに彼は会場に足を踏み入れた時点で、既に出来上がった完全な攻撃の筋書きを持っていたのだろう。それは、その場で攻撃を作り上げることとは全然話が違う。それでも、コンテストのルールが特にどれかのプラットフォームに有利にできていたということはないのだから、Mac OS X が最初にアタックに屈した犠牲者になったという事実はやはり気になる。

Windows Vista ラップトップ機は最終日まで持ちこたえていたが、最後になって Adobe Flash プレイヤーの脆弱性を突かれて屈服した。このことは、Vista における新しい対抗措置的セキュリティ機能が実際に有効であって、その結果 Windows XP に比べてセキュアなものになっていること、その変更を施さなかった場合よりセキュア度が増していることを示唆しているように思われる。Apple も Leopard で同様の機能、例えばライブラリのランダム化などを Mac OS X に追加したが、セキュリティの専門家たちの議論を元に考えればこれらの防御策はまだ完全には実装されておらず、従って実際にはほとんどセキュリティを増す結果にはなっていないと思われる。

Mac 愛好家でありセキュリティ専門家でもある私は、多くの時間を費やして研究者コミュニティと話をし研究活動もしてきた。大部分の人たちは Mac ユーザーたちが Microsoft Windows ユーザーたちに比べてより安全だと考えているが、その一方で Mac OS X がセキュアなコンシューマ向けオペレーションシステムとしての先導的役割は既に失ったと考えている人も多い。これは、いろいろな意味で、必然的なことだった。Windows は、あまりにも常時攻撃の襲来に晒され続けてきているので、Microsoft としてもオペレーションシステムのセキュリティを大幅に増加させない限り、顧客を失うリスク、特に企業クライアントの間での信用を失うリスクに直面することとなり、他に選択肢はなかった訳だ。(けれども一方では、Windows Vista には深刻な使い勝手の問題が多々あることも私は経験上知っている。その大部分はこの新しいセキュリティ機能とは全く何の関係もないものではあるが。)Mac がアタックを受ける頻度はずっと低いので、Apple が受けているプレッシャーはそれとは全然程度の違うものだ。私が一緒に仕事をしている研究者たち、その多くは Mac ユーザーでもあるのだが、彼らはしばしば Safari と QuickTime が特にセキュリティ上問題のあるプログラムだということを実際に目で見て知っており、今回のコンテストの結果を見ても誰も驚く者はいなかった。

平均的な Mac ユーザーにとって、今回のことはいったい何を意味するのだろうか? あまり大したことは意味しない... まだ今のところは。コンテストの前と後とで私たちにとってのセキュア度が変わった訳ではないし、このような見せ物的なことに基づいて重要な決定を下すべきではない。私はまだ、この前の記事に書いた私のアドバイスを覆したり、追加のセキュリティソフトウェアを買いに近所のお店に走るようにと皆さんをせかしたりするつもりはない。(2008-03-18 の記事“Mac ユーザーはアンチウイルスソフトウェアを使うべきか?”参照。)ただそれでも、私たちはコミュニティ全体として、自己満足に浸ったまま安閑としていることはできない。セキュリティが私たちにとって優先課題ならば、それは Apple にとっても優先課題となる。Leopard では、非常にセキュアなシステムとなるために必要なフックは、既にすべてそこに備わっている。だから、あとはただ、私たちが今後も Apple に働きかけて、その実装の完成を目指すようにと圧力をかけ続ければよい。そうやって、私たちの選んだこのプラットフォームが、来年のコンテストで敗れる可能性がずっと少なくなるようにしようではないか。


Outspring Mail が頭のよいファイリングを約束

  文: Adam C. Engst <[email protected]>
  訳: 羽鳥公士郎 <http://www.ousaan.com/mail/>

昔からの Eudora ユーザの多くが Eudora の末路を嘆いているあいだ、一時はかなり多くのユーザ数を誇ったもう1つの電子メールクライアント QuickMailの開発者たちは、まったく新しい電子メールプログラムをリリースした。その名を Outspring Mailという。

Outspring Mail は、視覚的には 3 ペインのインターフェースを使用し、POPや IMAP、SMTP、SSL のサポートを含むすべての基本機能を備えている。しかし、Outspring Mail はそこからさらに進んで、電子メールクライアントが何をすべきかということについて、Google の Gmail が登場して以来の大幅な再考を行っている。Outspring Mail はユーザの操作を観察し、それを学習し、それぞれのメッセージにふさわしいメールボックスを提案するばかりでなく、よくある質問に答えるときには以前の返答を使うように提案することすらできる。Outspring の CEO、Jeff Baudin は言う。「もしも私が『あなたの事務所に行くにはどういけばいい?』とかそれと似たような内容の電子メールメッセージに頻繁に返事を書いているとしたら、私の電子メールプログラムは、以前私が似たようなメッセージに答えたことを覚えていてくれるほど頭がよいべきではないだろうか。そして現在のメッセージに対して過去の返答の1つを使うように提案してくれるべきではないだろうか。」

Outspring-Mail

Outspring Mail にはもう1つ、「メッセージ延期」というまったく新しい機能もある。これは、ユーザがメッセージの処理を特定の時間延期できる機能だ。すると、Outspring Mail はメッセージを特別なフォルダに置き、指定した時間が過ぎると、それを受信箱に戻し、延期されたメッセージが戻されたことを示す表示をつける。この機能は、ユーザが受信箱をきれいに保つのに役立つだろうが、通常受信箱に積み重なっているメッセージのすべては、繰り返し延期されるか無期限に延期されることになるということも十分にありうる。

スケジュール管理のほとんどを電子メールで行っている人たちにとっては、Outspring Mail のデータ検出能力が役に立つだろう。絶対的な日付(4/15/08など)や相対的な日付(「次の水曜日」など)で検索ができ、テキストがリンクに変換されて、iCal の対応する日付にとぶことができる。

ほかの有用またはユニークな機能としては、タブつきインターフェイス、類似のメッセージを検索する機能、Reply with Template コマンド(Eudora のステーショナリー機能に似ている)、インテリジェントな要約によるメッセージのプレビュー、画像の拡大・縮小および回転機能、スマートメールボックス、内蔵スパムフィルタ、HTML メッセージの表示、Spotlight ベースの検索、Address Book との統合、Growl による新着メールの通知、引用文の色分けなどがある。

私がしばらく使ってみたところ、Outspring Mail にはところどころ荒削りな部分があると感じられた。1度クラッシュし、デバッグ用のコードがまだすべて削除されていないように見えるエラーダイアログも出た。このプログラムは基本的な操作については十分受け入れられる程度に動作し、パフォーマンスが驚くほどではない場合(第1世代の MacBook ではそうだった)、環境設定で、自動ファイリング用の分析によってプログラムの動作が遅くなることがあると警告される。

Outspring はこのプログラムが「Intel ネイティブ」で「Leopard 対応」だと謳っているが、システム要件は特に提示されていない。Apple Mail とQuickMail からメールを読み込むことができるが、ほかの一般的な Macintoshプログラムからは読み込めない。Outspring Mail の価格は 95 ドルで、QuickMail からのアップグレードは 59 ドルだ。10 日間のデモ版が 7.1 MBのダウンロードとして入手できる。


Aperture 2.1が写真編集のためのプラグイン導入

  文: Jeff Carlson <[email protected]>
  訳: 笠原正純<panhead@draconia.jp>

Apple は先週、同社の写真管理ソフト Aperture 2.0 の所有者に対する無償アップグレード版として Aperture 2.1 をリリースし、Adobe の陣地に強力に押し入った。バグフィックスに加えて、Aperture 2.1 には、開発者が画像を編集するユーティリティを作るためのプラグインアーキテクチャが導入された。Dodge & Burn というプラグインがアップグレードには含まれている。それは、変更が画像全体に及ばないように、一部だけを明るくしたり暗くしたりできるというものだ。

このようなレベルでの操作ができることは写真家が彼らの画像を高度にチューニングするときに Adobe Photoshop を使う理由の一つだ。このような選択的な調整を可能にすることは Adobe の支配から離れようと説得することを可能にするかもしれない。しかしながら、もっとありそうなのは、まだ Photoshop に投資していない人々に、彼らの写真修正のために Aperture を使い続けるよう留まらせる事だろう。

プラグインは Images メニューの Edit With サブメニューの下にある。プラグインにアクセスすると新しいウィンドウに選ばれたイメージがロードされる。そこでブラシのサイズとエフェクトのスタイルを選ぶことができる。この内蔵プラグインでは、覆い焼きと焼き込みに加え、画像内の領域について彩度の上げ下げ、シャープ化、ぼかし、コントラストの適用、フェードができる。O を押すと編集結果がオーバーレイとして浮きあがる。これはどこに編集が加えられたかを確認するよい手助けとる。変更を保存すると、編集結果を反映した画像が新しいバージョンとして作られる。

aperture2_plugin

Aperture オーナーを惹き付けるため、Apple はプレスリリースで、写真家によって使われている製品を開発している企業が Aperture プラグインのために開発を行っていることを明らかにした。それらの製品には、 Noise Ninja, Viveza, Power Stroke, Dfx, dpMatte, Image Trendsのプラグインなどが含まれる。(Noise Ninja については、2007-09-07 の Charles Maurer の記事"完璧主義者のための写真編集術" 参照。)

Aperture 2.1 はソフトウェア・アップデート経由で 48.1 MB のダウンロードして利用可能になっている。


Photoshop Express、Web 上の写真編集を無料で提供

  文: Jeff Carlson <[email protected]>
  訳: 亀岡孝仁 <takkameoka@bellsouth.net>

Adobe が Photoshop Express を発表した。これは、iPhoto とか Adobe 自身の Photoshop Elements とかいった専用のプログラムを走らせること無しにデジタル写真をアップロード、共有、そして - もっと重要なのは - 編集を容易にやれるようにする新しいオンラインの写真サービスである。このサービスは無料で、現状では 2 GB のオンライン記憶容量が含まれていて、公開ベータの段階である。これを使うには Flash 9 も必要となる。下記のホームページで Test Drive をクリックすればこのサービスの機能のツアーが出来る。

Photoshop Express の魅力は、Adobe Photoshop によって確立された画像編集の長い伝統を "Web 上の Photoshop" として使えるようにするという風に見れば分かりやすいと思う。しかしながら、私がこのサービスのプレビューを見た時の最初の印象は、"これはどちらかと言うと良く出来た iPhoto オンライン版という感じ" というものであった。そこには、画像を写真アルバムにアップロードしそして整理する、かつそれを他の人と共有する事に対する使いやすいインターフェースと基本的な機能が備わっている ( 私のギャラリーを幾つか作ってみた)。

Photoshop に基づいた技術から連想されるであろう様に、このサービスはあなたの写真に対して修正を加えるという点で輝きを増す。この一般向けという性格からレベルやカーブの調整といったものは見当たらない。例えば露出の調整をしたいという場合、設定を色々変えたサムネールを並べたストリップを提示してくる;一番気に入ったものをクリックすれば良い。(White Balance のようなスライダーで可変してその効果を見られる様なものも幾つかある。) この編集の作業は非破壊型で、その編集を加える前の状態に戻ったり修正項目の間の切り替えといったやり方は分かりやすく作られている。

psexpress_adjustments

幾つかの修正は極めて良く出来ている、例えば一つの色を "浮き立たせ" 残りのイメージはグレースケールにする機能である。私はその Retouch 機能の出来にも感心させられた。欠陥を修正するのにただスポットでパッチを当てていくだけのやり方に較べればはるかに自由度のある修正が可能となる。

psexpress_pop_color

Photoshop Express は、Flickr の様な確立された写真共有サービスに対する本格的な挑戦者というわけではない。Flickr はどちらかと言うと写真を掲載することを通じた一種の社会ネットワークの役割を演じている。Photoshop Express には画像に対してタグを付与するという機能が付いていないし (後で探す作業を楽にしてくれる)、名前を付け直すことも出来ない、勿論表題を付け加えたり編集したりは出来る。しかしながら、Adobe もこの辺の事情はきちんと認識しているようである、というのも他のサービスとの間で写真をインポートしたりエクスポートしたり出来るからである。現在サポートしているのは、 Facebook, Photobucket,そして Picasa である;Adobe の代表者の一人は Flickr へのアクセスを近々追加するという合意を Yahoo との間で取り付けたと話している。

Photoshop Express は最初のオンライン写真編集ツールではないが、Photoshop に根ざしていることから来る利点も持っている。昨年 Adam も記事を書いた Picnik ("Picnik はウェブ上の iPhoto" 2007-09-07 参照) は同じ様な機能を提供し多くのオンラインサービスとも働く。例えば、Flickr ではあなたの画像の上に現れる Edit Photo ボタンをクリックすればその写真を Picnik の中で開く。

このサービスには欠点も多少ある。Photoshop Express は現時点では合衆国のユーザーに限られている。それからネットワークへの負荷が高い、これは大半の処理が Adobe のサーバー上で行なわれるためである。あるコンピュータ上で Photoshop Express で作業をしていると、私のネットワーク上のほかのコンピュータのインターネット性能が落ちるのを経験している。それからこのサービスは全てが Flash を元に構築されている;私はこの技術のファンになったことがない、必要以上に資源を食いそしてはっきり言えば煩わしいというのが私の印象である。一方で、Photoshop Express は、Flash を使うからといって必ずしも気障りなバナー広告や間の抜けたグリーティングカードと同一視されなければならない必要がないことも教えてくれている。

Adobe は、これは消費者に特に焦点を絞っていると言っている。将来の改定では、より多くの記憶容量 (多分、有料で)、プリントの注文の直接受付、Adobe のアプリケーションのサービスのサポート内蔵、そして恐らくはより頑健なタグ付けや共有オプションといった改良が提供されるのではなかろうか。

これを立ち上げることで、Photoshop Express は法的な板挟みにも直面することとなった: サービス条項として (通常は読みもしないで同意をする例のやつ)、アップロードされ一般の共有に供される如何なる写真に対しても、"あなたは Adobe に対して世界的な、ローヤルティ無しの、非独占的、無期限の、取り消し不能の、そして無条件にサブライセンスできる権利を、その様なコンテンツを、使用する、配信する、そこから売上げ或いは他の形の報酬を得る、複製する、改造する、採用する、出版する、翻訳する、公に演じそして公に展示する (全部又は一部) そしてその様なコンテンツを他の材料或いは著作物に如何なるフォーマット或いは現存の或いは将来開発されるかも知れないメディアの中に取り込むことに対して認める" ことを示唆している。別の言い方をすれば、Adobe はあなたの画像を使ってやりたいことは何でも出来るということである。

その日遅くなってから、Adobe はこの表現を変えるという約束を伝えてきた、曰く "我々は Photoshop Express ベータに関するサービス条項に対するあなたの懸念を聞きました。我々はあなたのコメントの観点からその条項を再度見直しました - そしてそのコンテンツを使ってまず絶対にやることはないであろうことまで暗示していることに同意します。従って、我々の法制チームはその条項を Photoshop Express ユーザーにもっと適切な使用条項に変更し掲載することに優先して取り組むこととしました。我々は新しい条項を掲載出来次第あなたにお知らせいたします。"

Photoshop Express が iPhoto や Photoshop Elements に取って代わる様な事態にはならないであろうが、かなりの程度のすぐに欲望を満たしたいに近いものは提供している。何か撮ったものをすぐにアップロードしてついでに少々の修正も加えたい (完全に Web ベースなのでどのコンピュータからでも出来る) というのであれば、イライラ度はかなり軽減されるであろう。それにこれは非技術系の友人や親類が彼らの写真を見せるというのには易しいやり方の一つと言えるであろう。

(注:私は現在 Peachpit Press のための "The Photoshop Express Pocket Guide" を執筆中である。最初の章が無料のダウンロードとして入手できる;続きの章も Safari Books Online の購入者には Peachpit の Rough Cuts プログラムの一部としてオンラインで提供される。)


Kindle についての最初の快い感想

  文: Tonya Engst <[email protected]>
  訳:上松慮生 <ryo.uematsu@gmail.com>

1 ヶ月くらい前に注文した Kindle が昨日やっと届いた。Amazon.com の新しい電子ブックリーダーであるこの Kindle は、たぶん文学会を熱狂させることは無いだろう。そうは思ったものの、電子ブックの出版をしている者として興味を持っていたし、居住空間を圧迫することがある本の山を片付けるかもしれないと思ったし、また、外出のときの読書に最適だろうと思って注文した。

最初の印象は良かった。どうやって使い始めるのかはすぐにわかったし、どんなことができるのかも簡単に理解できた。私は家庭用電化製品の非常に凝縮された操作方法をすぐに理解するほうではない。特にクロックラジオにはいつも悩まされている。さらに、最初 iPod を操作しようとしたときも泣かされた。したがって、私が Kindle を助けなしに簡単に操作できているということは大きな意味を持つ。

しかしながら、Kindle にも奇妙なところがある。

Kindle は機能とインターフェイスにおいて奇妙な組み合わせをもっているが、その一方で使い方がすぐにわかるという点に魅力を感じている。今のところ Kindle に対しては、ロボット掃除機 Roomba に対して抱いている感想に似たものを持っている("Roomba: ロボットが足許に"2005-07-11 を見よ)。Roomba で掃除をするのには時間がかかるし、定期的にカスタマーサービスに電話をして保守部品を取り寄せたりROM のアップグレードを行う必要があるが、私はそれがうまくやってくれていることをありがたく思っているし、便益を享受するためには欠点は我慢している。

最初、我が家で Kindle は Whispernet 配達サービスに使用される Sprint EVDO ネットワークを見つけることができなかった。しかし、一度、電波を受信できる庭でネットワークを見つけた後は追随できるようになったみたいで、家の中でもネットワークにつながるようになった。私の次の段階は、Amazonの Kindle Store で新しいものを買うことである。Kindle には最初からユーザーマニュアル、辞書、そして Jeff Bezos からの素敵なメモが入っていたが、私はもっと多くのことを受け入れる準備ができている。

あなたのネットワークをギガビット Ethernet に

  文: Adam C. Engst <[email protected]>
  訳: Mark Nagata <nagata@kurims.kyoto-u.ac.jp>

私はネットワークのタスクが終わるのを待つのが大嫌いだ。巨大なファイルをコピーしたり、大きな Word 書類を保存したり、バックアップを見守ったりしていると、際限なく時間がかかる。そこにある真の問題は、プログレスバーをじっと見ているのに耐えられなくなった私が往々にして別のタスクに手を伸ばしてしまうことだ。そうなると、決まって私は自分がどこまで作業を進めていたか分からなくなってしまう。もちろん私は MultiFinder 以前の System 6 の日々に戻りたいなどという気持ちは毛頭ないが、Mac OS X のマルチタスキングが果たして本当に私の生産性を向上させているのか、疑問に思えてくることが時々ある。

私がタスクからタスクへと跳んでまわる頻度を少なくする一つの方法は、不要な待ち時間の回数をできるだけ減らすことだ。先週、私は自分の Ethernet ネットワークのパフォーマンスを速度向上させてみようとじっくり考え、その努力が実際手軽かつ安価に実を結ぶことを発見した。これは、ネットワークの速度に不満を持っている人ならどなたにも、ぜひとも試してみて頂きたいことだ。

(一つだけ、簡単にお断りしておこう。私たちはよく、ネットワークの「速度」について話をするが、これは誤解を生み易い用語だ。ネットワークのパフォーマンスを向上させることは、例えて言えば水を通すホースの直径を増やすようなものだ。もしもあなたが水泳のプールを水で一杯にしようとしているのなら、消防用のホースを使う方が庭仕事用の細いホースを使うよりも水源からの距離が同じならばずっと早く仕事が済む。私たちが「遅い」ネットワークから「速い」ネットワークへと切り替える時も、実際に起こることはそれだ。つまり、ネットワークのパイプを太くしているのであって、その結果同じ時間内により多くのデータが運べるようになるのだ。理想的には、ネットワークの「バンド幅」あるいは「スループット」を増やすという言い方をすべきところだが、そういった用語は必ずしも普通のユーザーに分かってもらえるとは限らない。)

ギガビットへ -- Apple は Mac におけるネットワーキングのサポートで、段階的にスループットを増やし続けてきた。最初は、LocalTalk の毎秒 230.4 キロビット (Kbps) という速度だった。その後、毎秒 10 メガビット (Mbps) の Ethernet が登場し、それから 100 Mbps Ethernet(「高速 Ethernet」と呼ばれることがある)に続いて、現在は 1000 Mbps Ethernet、つまり一般に「ギガビット Ethernet」と呼ばれるものに至っている。いくつかの企業のネットワークでは、10 Gbps Ethernet が使われているところもあり、40 Gbps や 100 Gbps の Ethernet も開発中だ。さらに高速のこうしたものたちは、主にネットワーク全体のパフォーマンスを落とすことなく何個かのギガビット Ethernet ネットワークを互いに結びつけるために使われていることが多い。

(この分野にはたくさんの用語が溢れている。10、100、それに 1000 Mbps の Ethernet は、それぞれ 10Base-T、100Base-T、1000Base-T と呼ばれることもある。これらはそれぞれの基盤となるケーブルの規格に対応した言葉だ。T は twisted pair(ツイストペア線)の意味で、これはシンプルな銅線を使い、信号の干渉を抑えるために一定の間隔でねじり(ツイスト)を入れてあるものだ。ケーブルの形式は他にもあって、例えば 10Base-2 ならば 10 Mbps Ethernet が同軸ケーブルで走っており、また光ファイバーケーブルでギガビット Ethernet を運ぶための 1000Base-X 規格もいくつかある。)

Apple が最新の形での Ethernet を導入する度に、大多数のユーザーがそれについて行くようになるまでには通常いくらかの時間のずれがある。Apple は十分安い値段で Ethernet コントローラを調達することができ、それを Mac に内蔵することができているが、いろいろな機器を製造するメーカー各社が同じように安くチップを入手できてそれを組み込んだスイッチやル−タ、その他ネットワーク機器を多くの人たちが手を出せる価格で作り出せるようになるまでにはしばらくかかるのが普通だ。それにもちろん、ある人がいったん完璧に機能する 100 Mbps ネットワークを手に入れたとしても、その人が新しい Mac やその他のネットワーキングハードウェアを購入する時期を考えれば、そのネットワーク上で十分多くの機器がギガビット Ethernet 対応になるまでには何年かかかるだろう。(痛々しくも明らかな事実を挙げれば、スイッチをアップグレードする意味が生ずるためには、その前にそのネットワーク上にギガビット Ethernet 対応のコンピュータが少なくとも2台必要だ。)

以前私たちがシアトルに住んでいた時、私たちは 10Base-2 Ethernet のネットワークを使っていて、四つの場所を長い長い同軸ケーブルで結んでいた。当時このやり方に意味があったのは、10Base-2 がデイジーチェイン接続可能、つまりコンピュータを1台ずつ次々に接続して行くことが可能だったからだ。1998-09-14 の記事“シンプルな Ethernet ネットワークを”を参照して頂きたい。10Base-T もサポートする必要があった場所においては、ハブを追加して二種類の配線規格の間で変換をさせた。

その後イサカに転居した時、私は新居にツイストペア線を配線し、Linksys 製の 100 Mbps Ethernet スイッチを使って自宅のネットワークの三種類の部分(サーバ室兼洗濯室、私の書斎、それに Tonya の書斎)を互いに接続させた。このセットアップで私たちは何年もの間うまくやってきたが、最近になって私はいくつかネットワーク関係の問題を経験するようになった。その問題は、たいていの場合三つある Ethernet スイッチのうち一つか二つで電源をいったん切ってから入れ直すと解消した。その上、私はここにあるメインの四台の Mac のうち三台がギガビット Ethernet のサポートを内蔵していることに気付いた。そういうわけで、そろそろギガビットへ移行する潮時ではないかという気になったのだ。

(もう一つ短い余談を。ハブはすべての入ってきたデータをすべてのポートに再送信するのだが、これはスイッチに比べて効率が劣る。スイッチの場合は、どれでも二つのポートの間に専用の道を作り出し、ネットワークの他の部分に不要なデータが出て行かないようにする。私が初めて Ethernet ネットワークの構築を始めた頃は、スイッチはハブに比べてずっと値段が高かった。けれどももう何年も前に、プロセッサの進化によって価格の差は取り去られている。現代的なタイプの Ethernet に、果たしてハブというものが存在しているのかどうかさえはっきりしなくなっている。もしもあなたがハブに偶然出会っても、立ち止まらずに通り過ぎるのがよい。)

スイッチする -- 最初のステップは、次第に調子の悪くなってきた 100 Mbps Linksys スイッチを置き換えるべき新しいギガビット Ethernet スイッチを購入することだった。私は Amazon.com でのショッピングという近道を選ぶことにした。D-Link、Netgear、その他のメーカーから同程度の価格で出ているスイッチいくつかと比較しつつ、ユーザーによる評価やレビューなどを読み比べた。そういうレビューは注意深く読む必要がある。特に、自分が考えている使用法に関係あるように見える点についてレビューがどう書いているかを慎重に読んでおくべきだ。結局、私は D-Link 製の 5-port ギガビット Ethernet スイッチ DGS-2205 の全く同じ三台を購入した。その日の価格はたったの $34.99 で、その上 $10 の払い戻しまで付いていた。

(どの程度大きなスイッチを買うべきだろうか? それは、あなたがそれをどんな場所で使うにせよ、そこに何個の機器を接続するつもりなのかによって決まる。たいていの家庭内および小規模な事務所の環境では、5個のポートで十分だろう。なぜなら、ほんの少数のマシンしかその近くに置いて使わないだろうからだ。複数の場所の間で接続するには、次のスイッチまで一本の Ethernet ケーブルを走らせればよい。一般に、一つのスイッチに向けて複数のケーブルを長距離にわたって張るよりも、安価なスイッチをいくつもの場所に置いてそれらの間をたった一本のケーブルで結ぶ方が良い。多数の機器がある場合には、8、12、あるいは 24 ポートのスイッチが買える。)

ちょっとしたボーナスとして、これらの D-Link スイッチは常時電源が供給されているため、アクティブでないポートの電源を切り、Ethernet ケーブルのいろいろな長さに応じて適切に電源を割り当て、より効率的な電源アダプタを使うといったことによって消費電力を抑える効果があると宣伝している。私のテストの結果ではそれぞれのスイッチは常におよそ 2.1 ワットを使用し、その価格を計算すれば月額およそ 24 セントになる。これは古い Linksys スイッチを使っていた時に比べておよそ3分の2だ。古くて安いギガビットスイッチの中には動作中に非常に熱くなって結局ファンを必要とするものまである。

これらのギガビット Ethernet スイッチのインストールはこの上なく簡単だった。ただ単に、古い Linksys スイッチから Ethernet ケーブルを付け替えて、それから電源アダプタを繋ぐだけだ。D-Link スイッチのうち二台ではステータスライトが緑に光り、私の Power Mac G5 と MacBook の間に、それから Tonya の MacBook Pro との間に、それぞれコミュニケーションがギガビットの速度で始まったことを知らせてくれた。

しかしながら、一台の D-Link スイッチのライトは緑ではなく黄色で、これはそのポート間のコミュニケーションがたった 100 Mbps の速度でしか走っていないことを示していた。三つのライトのうち二つは別に驚くことではなかった。私たちの家庭内サーバとして働いている Power Mac G4 に付いている Intel Pro/100 Ethernet カードは 100Base-T しかサポートしておらず(2004-07-12 の記事“Power MacにEthernetを追加する”参照)また私たちの 802.11g 対応 AirPort Extreme ベースステーションも、やはり 100Base-T に限られていたからだ。

けれども、三つ目の黄色ライトはちょっと心配だった。こちらはもう一方のスイッチに繋がるケーブルに対応したライトで、1000Base-T 接続を示す緑色になっているべきだったからだ。当初、私は自分が一生懸命に調査して探し当て、わが家の片方の端から反対側の端までネットワークを拡張するために苦労して敷設した野外向け品質の Ethernet ケーブルに問題があるのではないかと不安になった。けれども手早くケーブルを入れ替えたりして調べてみた結果、ある安物のパッチケーブルに 1000Base-T を運べるに十分な線が含まれていないのが問題であることが分かった。それをもう少し良いケーブルに取り替えてみたところ、三つ目のライトは緑色に変わった。

(ここでもう一つ余談を付け加えた方が良さそうだ。今書いた通り、ツイストペア Ethernet ケーブルはすべてが同じ作りになっている訳ではない。非常に古いもの、1990 年代前半に作られたものはカテゴリー 3、いわゆる Cat3 として知られているもので、10Base-T のみにしか適していないものかもしれない。その後これは Cat5 ケーブル、つまり最大 100Base-T にまで対応し、おそらくはギガビット Ethernet でも動作できるものに置き換えられて行った。しかしながら、ギガビット Ethernet のためには本当は Cat5 の後継である Cat5e か、もしくは Cat6 ケーブルがあった方が良い。ネットワーク専門の人たちの意見を聞くと、長い距離を走らせたケーブルでフルパフォーマンスを引き出すためにはやはり Cat6 がベストだという。できれば、あなたが張り巡らせているケーブルも一つ一つ、それがどの種類のものなのかをケーブルの上にはっきりと明記しておくようにするとよい。もしも問題があると思えば、まずは新しい Cat6 ケーブルを入手することだ。どんなケーブルの張り方をするにせよ、長さは 100 メートルを越えてはならず、できるだけ短い方が良い。もしもあなたが自宅や仕事場を改装中ならば、将来どのようにケーブルを引くことになっても対処できるように線を通したコンジット(電線管)と、さらにもう一本の線を張り巡らせておくのが最良の方法だ。TidBITS 編集者の Rich Mogull はこの方法を採ったのだが、後になって彼は下請け業者の誰かが配管の半分以上から線を抜き取っていたことに気付いた! ウェブホスティング会社 digital.forest の Chuck Goolsbee は、そういう急場の被害を防ぐには フィッシュテープ(通線工具)を使うのが一番だと勧めている。)

さて、このプロジェクトの次の段階には、さらなる調査研究が必要だった。私は、既に Mac OS X 10.5 Leopard に内蔵されているドライバと共に働ける PCI ベースのギガビット Ethernet カードを Power Mac G4 用に見つけなければならなかった。(可能な限り、独自のドライバを必要とするような Ethernet カードは避けた方がよい。そういうものは Mac OS X に合わせてアップデートされないかもしれない。)前回、数年前に私がこの Power Mac G4 用に Ethernet カードを買わなければならなかった時には、Accelerate Your Mac サイトで見つけた PCI Ethernet カードに関する読者たちの報告を集めたページが役に立った。このページは今も存在していて、以前にもまして役に立ち、そのお陰で私は TRENDnet TEG-PCITXR カードのことを知った。これは Apple の内蔵 Ethernet ドライバと共に働けるのだ。本当に思いがけなかったが、このカードは $20 で広く売られている。私は Newegg から $15.99 で購入した。

いったんこのカードを私の Power Mac G4 にインストールして Network 環境設定パネルで設定を済ませれば、D-Link スイッチの対応するライトは無事緑色に変わり、私のサーバがちゃんとギガビットの速度で通信できていることを示してくれた。

残ったのは AirPort Extreme ベースステーションだけだった。でも、これが担当するのは家庭内のワイヤレス接続を確保することと、それから私のメインのインターネット接続のためにケーブルモデムに接続することだけだ。速度は最大でも下り方向 4 Mbps、上り方向 750 Kbps という程度だ。だから、たとえ最新の 802.11n 対応でギガビット Ethernet もサポートした AirPort Extreme ベースに取り替えても、あるいは同等の機能を持つ Time Capsule に取り替えても、その差は無いか、あってもごくわずかなものに過ぎないだろう。

(最後にもう一つだけ余談を。もしもあなたのベースステーションがローカルエリアネットワーク (LAN) とワイドエリアネットワーク (WAN) との間のトラフィックを接続させるために NAT を使っているならば、ギガビット Ethernet ではいつでもパフォーマンスの面で問題が起こる可能性がある。この状況は通常の環境では起こらない。なぜなら、たいていの人は比較的速度の遅いブロードバンドのインターネット接続で WAN ポートに繋いでいるからだ。けれどももしもインターネット接続が高速ならば、例えば 30 Mbps のファイバー回線(実際にそういうものが使われているところもある)のようなものであったり、あるいはあなたのベースステーションがブロードバンドケーブルにも DSL モデムにも直接繋がれていなかったりした場合には、パフォーマンスが下がってしまう可能性がある。その理由は、たいていのベースステーションが比較的非力なプロセッサを使っていて、LAN と WAN の間を横切るすべてのパケットを検査して書き直す NAT の必要に対処するには力が足りないからだ。TidBITS 編集者の Glenn Fleishman は、そうとは知らずに NAT をオンにしていたいくつもの Wi-Fi ベースステーション(Apple 製のものも含む)で、LAN/WAN トラフィックが場合によって 30 から 70 Mbps という値にまで絞り込まれてしまうことがあると気付いた。LAN のギガビットポートでは 980 Mbps でトラフィックを送り出せるネットワークですらそうなるのだ。解決策は、NAT ゲートウェイとしての役割を果たす機器をただ一個だけにすること、できればそれを直接ブロードバンドモデムに接続させておくことだ。より良いパフォーマンスが必要ならば、2基の Ethernet アダプタを備えたコンピュータと、Sustainable Softworks 社の製品 IPNetRouterX を使うことが必要になるかもしれない。)

残っているビットは -- 100 Mbps Ethernet から 1000 Mbps Ethernet への移行がどの程度の違いを生むものなのかについて皆さんにある程度の感覚を掴んで頂くために、私は今回のアップグレードの前後で私のいくつかの違ったマシンで 1.07 GB のファイルを双方向にコピーして比較するというごくシンプルなテストをしてみた。私が使ったのは Mac OS X の基本的なファイル共有だ。つまり Apple Filing Protocol (AFP) を使い、コピーに要した時間を iPod touch に付属のストップウォッチを使って手で計った。

100 Mbps Ethernet では、その 1.07 GB ファイルをコピーするのにかかった時間は 106 秒と 113 秒の間だった。つまりおよそ 81 から 87 Mbps だ。これはこのパイプを通る速度としてはかなり優秀な数字だ。ネットワークのオーバーヘッドというものが常にあって、接続のバンド幅をフルに得ることはできないからだ。

同じテストをギガビット Ethernet でやってみると、コピーにかかった時間は 43 秒と 48 秒の間、つまり 199 から 213 Mbps だ。これは相当に大きなパフォーマンスの改善と言えるが、理論的可能値の 1000 Mbps には遥かに及ばない。これはちょっと変だ、と思って私はもう少しテストしてみることにした。

Sustainable Softworks の IPNetMonitorX で Link Rate テストをしてみると、予測値 800 Mbps 以上という結果が出た。こちらの方がずっと理論的限界値に近いが、これは計算によって算出された値であって実際に大量のデータを転送して測定した値ではない。コマンドラインで FTP を使ってテストしてみても、せいぜい AFP によるコピーと大差ない結果しか出なかった。つまり AFP が特別に Apple 内蔵の FTP サーバおよびクライアントに比べて遅い訳ではないことが分かった。けれども非常に興味深い事実は、同じファイルを単純に Finder で複製してみても、ネットワーク経由で私の Power Mac G5 へ転送した場合とほとんど同じくらい時間がかかったということだ。(MacBook へ転送した場合に比べれば倍近く遅い。この理由は私には説明できない。)結局、私はハードディスクやファイルシステムのパフォーマンスの限界にもぶち当たっていたのではないかと思われる。

そういうわけで、結局 $125 以下の出費で、私は巨大なファイルをコピーする際のネットワークの速度をほぼ 2.5 倍にまで増やすことができた。もちろんこれが 10 倍の改善であったならもっと良かったのだが、たぶんそれはもっと高速のハードディスクとネットワークプロトコルをも合わせて必要とするものなのだろう。

間違えて頂きたくないのは、このネットワークのアップグレードによって私のインターネットのスループットの感覚にはおそらく何の変化ももたらされないだろうということだ。なぜなら、そちらのスループットは私のインターネット接続と、接続相手の遠隔サーバとによって大きく制約を受けているからだ。ローカルなバンド幅を増やしたからといって、インターネットのパフォーマンスには、たとえあったとしてもほんのわずかの違いしか起こらないだろう。

でもそんなことはいいじゃないか。私のネットワークの内部で大量のデータをあちらこちらとやり取りするためにかかる時間が半分になるのなら、私は十分幸せだ。これでバックアップ作業がきびきびしたものになるだろうし、巨大なビデオファイルをコピーするのも以前ほどつらい作業ではなくなる。スクリーン共有ももっとテキパキと進むだろうし、サーバ上にある重たい Word ファイルを編集する際の停滞した感じも減るだろう。どれもこれも、みんな素晴らしい。ほんのちょっとの出費に、十分見合ってお釣りが来るくらいだ。


TidBITS 監視リスト: 注目のソフトウェアアップデート、31-Mar-08

  文: TidBITS Staff <[email protected]>
  訳: 笠原正純<panhead@draconia.jp>


TidBITS Talk/31-Mar-08 のホットな話題

  文: Jeff Carlson <[email protected]>
  訳: Mark Nagata <nagata@kurims.kyoto-u.ac.jp>

Vista の悩み再び -- Apple の最新のオンライン広告キャンペーンは、二つのスポット広告を組み合わせて使うことで注目を集めている。Mac と PC それぞれの人物が、ページ上部に出るバナーに反応するのだ。(メッセージ数 6)

ブラウザの規格 -- ユーザーたちの固定化をはかるために、標準でないタグを Internet Explorer 8 に使わせよう(そしてウェブデザイナーたちにそれに合わせた仕事をさせよう)という Microsoft の試みについて、読者たちが議論する。(メッセージ数 2)

下品な投稿者たちが TidBITS を侵略したのか? -- あるオンラインフィルタが TidBITS Talk の号を止めてしまった。いったいどの単語がいかがわしいと判定されたのか? (メッセージ数 8)

カレンダー等データ同期の信頼性が低い機器で、どうすればいい? -- データ同期というのはもともと信頼できないものか? それとも、何か特定の理由があって問題が引き起こされているのか? (メッセージ数 4)

TidBITS ダイジェストを迷惑メールでなくすには -- Thunderbird が誤って TidBITS Talk ダイジェストを迷惑メールフォルダに入れてしまう。どうすればこれらを正当なメッセージに指定できるのか? (メッセージ数 6)

スライドショウプレゼンテーション用のソフトウェア -- ある読者が、ユーザーの手を介さずにプレゼンテーションを上映できる、何かシンプルなものはないかと探している。(メッセージ数 4)

Carbon Copy Cloner はクローン作成時の Smart Update が可能か? -- CCC の最新版アップデートでは、アップデート作業の際に何が起こったのかを明確化してくれる。具体的に言えば増分バックアップの際だ。(メッセージ数 4)

Fusion 1.1 と Time Machine -- バックアップドライブを満杯にしてしまうのを避けるために、Fusion 1.1 は自動的にその仮想マシンのディスクイメージを Time Machine バックアップの対象から除外している。(メッセージ数 2)

Word 2008 用プレーンテキスト貼り付け AppleScript を更新 -- Microsoft Word 2008 にフォーマットの付かないテキストをペーストするための Joe Kissell のスクリプトに対し、ある読者から質問が届く。(メッセージ数 1)

AirPort アップデートが Time Capsule を拡張し AirDisk を追加 -- AirPort Extreme ベースステーションに接続したドライブでも Time Machine バックアップができるという驚きの追加機能が、どうやらある読者のところではうまく働かないようだ。(メッセージ数 2)


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