TidBITS: Apple News for the Rest of Us  TidBITS#925/21-Apr-08

TidBITS は今週 18 歳になる! これはインターネット年齢で言えば少なくとも 234 歳だが、まだまだ私たちはスローダウンするつもりはない。記念日特集として Adam が思い出の道筋をたどり、Macintosh の世界が 1990 年以来どんな道程を歩んできたかをみる。また、私たちの Take Control 電子ブックすべてを対象とした特別 50% 引きセールも開催する。今週号のその他の記事では、Glenn が TheCodingMonkeys の Port Map を使って彼のネットワークにパンチ穴を開け (もちろんこれは慎重な、新時代方式での話だ)、また最新の通話「無制限」プランについて説明する。今回は voIP プロバイダ Skype の出したプランだ。リリースのニュースとしては Safari 3.1.1 と BusySync 2.0 を紹介し、TidBITS 監視リストでは Apple TV、Mactracker、1Password、Teleport、Camino、Interarchy、ConceptDraw、Google Earth、それに Typinator のアップデートについて簡潔に触れる。

記事:

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Safari 3.1.1、セキュリティの問題点に対処

  文: Jeff Carlson <[email protected]>
  訳: Mark Nagata <nagata@kurims.kyoto-u.ac.jp>

Apple が Safari 3.1.1 を Mac と Windows 用にリリースした。これは最近 CanSecWest カンファレンスで開催された Pwn2Own ハッキングコンテストでつけこまれた脆弱性を修正するセキュリティアップデートだ。(2008-03-28 の記事“Apple、ハッキングコンテストで最初の犠牲者に”参照。)Safari 3.1.1 用のセキュリティ・リリースノートによれば、このアップデートはそのカンファレンスで明るみに出た WebKit における JavaScript の弱点に、「JavaScript 正規表現の追加の検証を実行することによって」ヒープバッファオーバーフローを防止して対処しているという。

また、悪意を持って作られた URL に含まれているコロン文字がクロスサイトのスクリプティング攻撃に結び付く可能性があるという欠陥も修正された。また、他に2件の修正は Windows 版の Safari のみに対するもので、アドレスバーのコントロールを開放してしまうタイミングの問題点と、メモリ破損の問題点に対処している。

Safari 3.1.1 はソフトウェア・アップデートから、あるいは 39 MB のダウンロードとして入手できる。Mac OS X 10.4.11 または Mac OS X 10.5.2、あるいは PC 上では Windows XP または Vista を必要とする。


Take Control ニュース: すべての電子ブックで 50% 割引

  文: Adam C. Engst <[email protected]>
  訳: Mark Nagata <nagata@kurims.kyoto-u.ac.jp>

TidBITS の 18 回目の誕生日を記念して、すべての Take Control および Macworld Superguide シリーズの電子ブックを次の火曜日、4 月 29 日(日本時間では水曜日の朝ごろ)まで 50% 割引で提供している。このセールを利用するには、私たちのカタログページ に入ってから買い物を始めて頂きたい。そうすれば、必要なクーポンコードが自動的にショッピングカートの最初のスクリーンで適用される。カタログのタブ付きインターフェイスで違ったタブにある複数個の本を選んでおいて、それから Buy Selected Ebooks ボタンをクリックして一緒にショッピングカートに入れることもできることに注意されたい。(印刷版の本はこのセールの対象に含まれていない。)

特にお勧めの新刊・近刊アップデートタイトルをいくつかご紹介しておこう:

また、Macworld の最新刊電子ブックのお勧めは:

これらの本の印刷版は今回のセールの対象になっていないが、既存の電子ブックの内部から注文した場合の印刷版は以前から(このセールの値引きとは関係なく)定価より値引きされていることをお忘れなく。だから、例えばあなたが電子ブック“Take Control of Switching to the Mac”をセール価格の $5 で購入したとして、その最初のページの一番上にある Print リンクをクリックして印刷版を注文すれば、やはり定価より $10 安い値段で印刷版が手に入る。(古い電子ブックで Print リンクの付いていないものも、Check for Updates ボタンをクリックして、そこで開くウェブページにある Order Print Copy タブをクリックすれば同じように印刷版が注文できる。)


BusySync 2.0、Google Calendar のサポートを加えてリリース

  文: Glenn Fleishman <[email protected]>
  訳: Mark Nagata <nagata@kurims.kyoto-u.ac.jp>

BusyMac が BusySync 2.0 をリリースした。異なるシステム同士で iCal カレンダーの同期ができる、同社のソフトウェアのアップデートだ。いろいろなバグ修正や堅牢性の向上のほかに、この新バージョンでの主な変更点と言えば Google Calendar との同期ができるようになった点だ。この機能追加のお陰で、従来の BusySync 1.5 における最も大きな弱点、すなわち BusySync カレンダーの購読者たちが BusySync カレンダーの出版者に接続しようとする際に、その出版者側のシステムが公開され到達可能な IP アドレスを持たないプライベートなネットワークであった場合、またはユーザーの設定の手の届かないポートマッピングを要した場合に、接続ができなかった問題が克服された。

BusySync を使って、BusySync の走る任意の Mac OS X 10.4 Tiger あるいは 10.5 Leopard システムにあなたのカレンダーを出版できる。他の人たちがこれを購読するのにパスワードを必要とするかしないかを選ぶことができ、そのカレンダーを読み出し専用(標準の iCal 出版・購読モデルと同様)にするか、または読み/書き双方のアクセスを許して、購読者たちが出版者と同じく自由にイベントを追加・消去・修正できるようにするかも選べる。

無料でまだベータ版の Google Calendar(どうやら大多数の Google ウェブアプリケーション用にリリース段階にあるようだが)をサポートしたことによって、BusySync ユーザーたちが中間媒介となるカレンダーを作って Google にホストさせ、これが双方向に変更を受け入れるようにすることができるようになった。つまり、Google Calendar が出版者・購読者双方がアクセスできるコンジットとして働き、プライベートネットワークの障壁を避けることができるようになったわけだ。

BusySync 2.0 は、あなたの Google アカウントを使ってあなたの作ったどんな Google Calendar カレンダーにでも情報を引き出し押し込むことによってこの巧みなトリックを実行する。Google Calendar を使えば読み・書き双方のアクセス権を指定して他の人たちとカレンダーが共有できるので、BusySync はイベントのやり取りを iCal や Google Calendar との間で双方向に実現できる。あなたが Google Calendar を共有しているどんな相手でも、その人があなたと同じく BusySync 2.0 をインストールしている限り、ローカルな iCal との間でイベントの取り込みや同期ができる。BusySync のオンラインヘルプには、Google Calendar のセットアップについて詳しい説明がある。

また、場合によっては、BusySync 2.0 が Leopard の Back to My Mac 機能とともに働くこともある。Back to My Mac は、あなたのコントロール下にあるどんな2台の Mac の間にも暗号化されたトンネルを作ることができる。私は BusySync 2.0 のベータテスト期間中ずっと Back to My Mac をオンにしていたが、Back to My Mac がその接続を利用しようとする際に他種のサービスにうまく対処できない弱点を持っていることを、BusySync は何度もあらわにしてみせた。(BusySync のベータ版リリースノートに Back to My Mac が言及されているのを見かけられたら、それらは間違いなく私がその問題のバグを報告したことにかかわっている(修正したことにかかわっているわけではない)と思って頂きたい。)

BusySync 2.0 の価格はそれが走るコンピュータ1台ごとに $25 だが、BusyMac ではこれを 2008 年 5 月 1 日まで $19.95 で販売している。(大量購入での値引きもある。)30 日間有効の試用版が 2.5 MB のダウンロードで利用可能だ。旧バージョンの BusySync のオーナーは無料でアップデートできる。バージョン 2.0 は、あなたのネットワークで走っているバージョン 1.5 とも後方互換となっている。


Skype、非従量制国際通話プランを提供

  文: Glenn Fleishman <[email protected]>
  訳: 羽鳥公士郎 <http://www.ousaan.com/mail/>

eBay の Skype サービスは、「本当の」電話番号に電話をかけることのできるSkypeOut システムに、非従量制の地域内および国際通話料金体系を新しく加えた 。Skype はインターネット電話の代名詞だが、従来の公衆交換電話網(PSTN)から発せられた通話の着信と、PSTN に向けた通話の発信を完全にサポートしている。

この新しいサービスは、Skype の米国およびカナダ向け定額通話プラン(月2.95 ドル)を、34 か国の固定電話に拡張するものだ。この 34 か国は、ほかの VoIP 通話プランでもよく見かける国々で、Skype に分単位で支払う場合の1分あたりの通話料が現在もっとも安価な国々にも含まれている。月 9.95 ドルで、これらのすべての国の固定電話に非従量制の通話をすることができる。

メキシコの3つの市、Mexico City、Monterrey、Guadalajara の固定電話への通話は月 5.95 ドルで、同国のほかの地域の固定電話および携帯電話への通話は「割引価格」になっている。

Skype は奇妙なことに、メインの登録ページに国ごとの価格をまだ掲載していない。これらの価格は、プレスリリースだけに、ユーロ建てで示されている。20 のヨーロッパの国のうち任意に選んだ1か国の固定電話への非従量制通話は月 3.50 ドルほどで、そのほかの 14 か国のいずれか1か国の固定電話では約 5.95 ドルだ。ヨーロッパの 20 か国すべてへの非従量制通話は月 5.95 ドルほどになる。アジア向け、ブラジル向けの特別料金も提供されている。

これらのプランは、Vonage など既存のインターネット電話サービスに含まれているものと同等だが、Skype ではほかの必要な音声サービスとバンドルされていない。たとえば、私のオフィスの「固定電話」は、Speakeasy Networks(現在は Best Buy の一部)が提供する月 30 ドルほどの VoIP サービスだが、これには 30 余りの似たような国々の固定電話への非従量制通話が含まれている。しかし、これを独立したプランとして購入することはできない。

携帯電話会社は、米国とカナダのほかでは、この非従量制サービスから除外されている。ほとんどの国の業者は、固定電話または VoIP システム(これは固定電話の交換機を使っている)から発して携帯電話へ向けられた通話に対し、たとえ同国内であっても法外な料金を課することが通常だからだ。

私が、Skype が好む星印つきの「無制限」ではなく「非従量制」という言葉を使っていることにお気づきかもしれない。このサービスの脚注では、無制限とは「適正な使用」、つまり月に 10,000 分を超えないことを意味すると述べられている。これでは無制限とはいえない。Verizon Wireless は、2007 年に、同社の携帯電話ブロードバンドサービスに関連して無制限という用語を誤解を招くように使ったとニューヨーク州検事当局から訴えられ、和解している。同社は今ではこの用語の使用を正しく停止し、制限についても分かりやすく説明している。

Skype を使うには、Mac OS X、Windows やほかのプラットフォーム用の無料のクライアントをインストールするか、Skype 対応 VoIP 電話を使うか、またはWi-Fi ベースの携帯電話でサードパーティの VoIP アプリケーションを利用可能にするソフトウェアを携帯電話にインストールする必要がある。


Port Map のポート転送で NAT を通り抜ける

  文: Glenn Fleishman <[email protected]>
  訳: 亀岡孝仁 <takkameoka@bellsouth.net>

TheCodingMonkeys は、無料のオープンソース Port Map アプリケーションをリリースした。これはユーザーや開発者等が外の世界から特定のプログラムのためにアクセスを開かせるためのルーターの能力を制御するのをやり易くするものである。殆どのホームネットワークルーターは network address translation (NAT) を使って私的ネットワークアドレスを - IP アドレスだがルーティングが出来ないか或いはローカルネットワークの外側からは手が届かない - そのルーターに付与された単一のルーティング出来る IP アドレスに関連付ける。残念なことに、この方法だと個々のコンピュータは Web サーバーの様な独自のサービスを提供したり、或いはゲームや他のインターネット跨ぐプログラムのための、例えば TheCodingMonkeys の共同編集パッケージである SubEthaEdit の様な、着信接続を受け入れることが出来ない。

しかしながら、NAT はしばしば受動的ファイアウォールと呼ばれるが、決してレンガの壁ではない。大抵の NAT が使えるルーターには、私的アドレスを持ったコンピュータ上で走っているソフトウェアがルーターに対して制限された形の受信アクセスを許すよう要請する事に関する二つの標準的な方法の一つが組み込まれている。ルーター上の自動ポートマッピングプロトコルは、一つ或いはそれ以上のポートを開き - 一つの IP アドレスに付属した番号の振られたスロットの様なもの - そしてそのポート番号を要請してきたソフトウェアに対して手渡す。そのルーターが自分自身に対してインターネット経由で到達出来る公にルーティング可能な IP アドレスを持っている限りは、ポートマップされたアプリケーションも到達可能となる。

"ポートマッピング" 或いは "ポート転送" と呼ばれる静的な、手動のポートマッピングは、あなたがマップしようと決めたローカルネットワーク上の特定のコンピュータとサービスに対して永続性のあるポートを設定させてくれる。これに対して、自動ポートマッピングは通常一つの任意の内部ポートを選択するのだが、それはルーターが再起動されたり或いはあなたがマッピングしているサービスを殺してそして再度生かした時にいつでも変わりうる。

2003年に始まった全ての Apple Wi-Fi 機器には Apple によって開発された NAT-PMP (Network Address Translation-Port Mapping Protocol) と呼ばれるインターネット標準が組み込まれている。その他の大抵の Wi-Fi やブロードバンドゲートウェイは UPnP (Universal Plug and Play) と呼ばれるよりフル機能だが扱いにくい技術を採用している。Port Map は NAT-PMP と UPnP のどちらもサポートしている。

Port Map を使うには、あなたがインターネットにさらそうとするプログラムによって使用されるポートはどれになるのか見当をつける必要がある。例えば、Web サーバーならばまず間違いなくポート 80 が使われる、勿論他のポートを使うようにも設定は出来るが。Port Map には幾つかのプログラムやサービスに対しての既定値も含まれている;このリストはもっといっぱい入ったものにすることも出来る。あなたのニーズに合ったポートを探し出すには、ユーザーマニュアルやオンラインヘルプを参照する必要があるかもしれない。

Port Map を使ってルーター上に特定のパブリックポートを要請することは出来るが、ルーター側は必ずしもその要請を受ける必要はなく、そしてそのパブリックポートは一度に一つのサービスだけが使うことが出来る。もしあなたが Web サーバーを走らせていてそれを広く到達可能にしたいと言うのであれば、そのパブリックポートは 80 とすべきである、なぜならばそれが全ての Web ブラウザが暗黙のうちに使っているポートだからである。(URL にコロンと番号をはっきりつけることでポート番号を含めることは可能である、例えば http://www.example.com:1633/.)

自動ポートマッピングに関する問題は、もしあなたが良く知られたパブリックポートをそのサービスに使わないない場合は、そのポートを公にしなければならないことである。Back to My Mac は NAT-PMP と UPnP を使い、あなたの色々な Back to My Mac を生かしたコンピュータにどのポートが割当てられているかの情報を提供するのに .Mac を使う。Port Map を使う場合も、その情報を配布する必要がある。ポートマッピングを設定した後、それを選択することが出来、そして Port Map は一つの URL を表示する、それはあなたが定義したものか、或いは既定の情報から引き出されたものかであるが、あなたはそれを他の人に与えるかあなた自身に対してそのサービスにリモートでアクセスするために与える。

実際の場では、Port Map は次の様に働く:私は SubEthaEdit を友人と一緒に使いたい。そこで SubEthaEdit と Port Map を立ち上げる。既に作成済みの SubEthaEdit 項目を選択しそれを On にする、或いはそれがそこに存在していなければ新たな項目として作成する。Port Map は URL を生成する、そこで私はこれを友人に iChat、メール、或いは電話で伝える。私の友人はこの URL を使って SubEthaEdit の私のコピーに接続する。

市場には Port Map に対抗するものが二つある。Codelaide Software のLighthouse ($12.99, 14日のデモ付き) は Port Map に似ているが、機能がより豊富で、既定値のリストは長く、それにプロファイルをインポートそしてエクスポートする機能も持っている。同社は定常的にこの既定値をアップデートしているので、それをこのソフトウェアにダウンロードできる。

Bains Software の ShareTool ($20, 一回 15分デモモード付き) は Bonjour ディスカバリーと資源アクセスをトンネルを利用して、自動ポートマッピングを使って彼らのソフトウェアが走っている二つのシステム間のセキュアな接続を可能にする。Mac OS X のパーツ (ファイル共有やスクリーン共有の様な) や多くの個別のアプリケーションはその利用可能性を宣伝するのに Bonjour を使っているので、Bonjour トラフィックを暗号化トンネルで流してやれればあなたのローカルネットワークを効果的に延長できることになる。この方法を使えば、例えば、共有 iTunes ライブラリから音楽をあなたのローカルネットワークの外側にストリームしてやることも出来る。

Port Map は、何が出来るかを示した一例に過ぎないが、TheCodingMonkeys はそのコードをリリースしてデベロッパー達にそのインターネット対応のプログラムにもっと NAT 感覚を組み込むよう促している。


TidBITS の 18 年間を振り返る

  文: Adam C. Engst <[email protected]>
  訳: Mark Nagata <nagata@kurims.kyoto-u.ac.jp>

今週は TidBITS の 18 年目の記念日にあたる。ずっと遡って 1990 年にスタートした日を想い出す日だ。これまでほぼ毎年、このイベントを祝う記事を何かしら私たちは書いてきた。TidBITS History シリーズでお読みいただきたい。

(日本語) TidBITS 6.0| TidBITS 7.0| あなたにふさわしいバッジをつけて| TidBITS Talk 登場| TidBITS 創刊 9 周年を達成| TidBITS 10 年の教訓| TidBITS、11 年を経て| TidBITS が満12歳に| TidBITS も 13 歳: 目標を持とう| TidBITS 14 周年を記念して Take Control 50% 割引セール| TidBITS の誕生日: Macintosh の 15 年間を振り返って| TidBITS 16 周年記念休暇| TidBITS が 17 歳に

今年は、TidBITS ももう(アメリカ合衆国では) 大人の仲間入りをしつつある、つまり選挙権があり、兵役に就くことができ、銃器を所有でき、土地の所有ができ、親の同意なしに結婚でき、17歳以下鑑賞禁止の映画も見られ、陪審員になることもできる、そういう大きな意味を持った誕生日だ。それを記念して、私はこれまで毎年の記念号の TidBITS を読み返して、私たちがどんな道のりを歩んできたか、世の中のことがどれほど変化したか、といったことを見てみたいと思う。だから皆さんもどうぞご一緒に、その当時のことを思い出してみませんか...

1990 -- 創刊号の TidBITS #1 で、私は Lotus と Novell の合併が「業界リーダーの Microsoft にとって痛手」ではないかと書いた。ちょっと名前をすげ替えてみれば、Yahoo が AOL との合併で Microsoft による敵対的買収に対抗している構図が浮かぶだろう。またこの号では電力線搬送ネットワーキングのテクノロジーが 38.4 Kbps のスループットをたたき出したことにも触れた。今では電力線搬送ネットワーキングは 200 Mbps にも達しているが、それでもまだ主流の地位は獲得していない。

1991 -- TidBITS #54 では、私たちが初めて行なった TidBITS 読者アンケートの結果を報告した。その結果を昨年の 2007 読者アンケートの結果と比べてみると面白い。昨年の結果については“TidBITS 2007 読者調査結果: 読者像”(2007-03-12) と“TidBITS 2007 読者調査結果: ニュースと情報の出所”(2007-08-16) をご覧頂きたい。

1992 -- TidBITS #120 では Jon Pugh が執筆陣に加わって、SuperMac の VideoSpigot カードと、ビデオ録画のための ScreenPlay ソフトウェアをレビューした。その当時以来ビデオ作成機能がどれほど進歩したかを考えてみれば感慨深いものがある。今では HD ビデオカメラに、ソフトウェアとしては iMovie から Final Cut Pro までずらりと揃っているのだから。この号ではまた CODE 252 ウイルスについても取り上げた。短期間に連続して現われた中で、たしかこれは三番目のものだった。幸いなことに、Mac でのウイルスの問題はそれ以上悪化することなく、私たちはまだ Mac OS X をターゲットにしたウイルスを見ずに済んでいる。

1993 -- TidBITS #173 で、私は ThoughtPattern の終焉を嘆いた。これはフリーフォームのデータベース兼断片情報キーパーで、当時の私はこれが心底大好きだった。その後の年月の間に、同じようなプログラムを私たちがたくさん目にしてきた(レビューもしてきた)のも驚くには当たらないだろう。Conquer Your Text シリーズの記事をご覧頂きたい。またこの号は Glenn Fleishman が初めて TidBITS に登場してくれた号でもある。彼は Quadra 700 が Apple の製品ラインから消えたことについて書いている。当時の私たちは、その後の TidBITS の報道と基盤構造の両面でいかに Glenn が重要な役割を果たすことになるかを知る由もなかった。

(日本語) WebArranger は Web よりも使える| 復活: Helix の逆襲| それはキーパー(Idea Keeper だ、それは)| Boswell:テキスト保管庫| 断片情報キーパーをあと3つ| Tinderbox でハートに火を点けて| デジタル下駄箱: iData Pro X 1.0.5| NoteTaker でテイク・ノオト| Hog Bay Notebook でグイッと行こう| DEVONthink は考える、あなたのために| よく使い込んだ NoteBook| TAO は上げ相場| 散らかり放題を Curio で片付ける| ピカピカの NoteBook| DEVONthink がプロになる| Yojimbo はあなたの情報を守る用心棒| SlipBox: 臭跡と感受性と

1994 -- TidBITS #222 で、私は Tonya が Microsoft での技術サポートの職を辞したので今後はもっと TidBITS に記事を書いてくれるだろうと書いている。私の著書“Internet Starter Kit for Macintosh”が成功を収めたすぐ後のことだ。彼女は間近に迫っていた PowerBook シリーズのリリース、520/520c、 540/540c、それに Duo 280/280c と、Duo Dock II について書いた。Tonya の古い Duo 230 はまだわが家の屋根裏部屋にあると思う。いつかあれを持って降りてきて、MacBook Air と並べて見てみたい。

1995 -- TidBITS #273 の前に、Geoff Duncan が TidBITS に加わっていて、彼はこの号で Apple が同社の eWorld オンラインサービスで翌日サポートを実施し既存の電話によるサポートを強化するものとすると発表したことについて書いた。電話によるサポートは今日でも存在しているが、Apple は1対1のオンラインサポートを止めてリテール店での Genius Bar に代えてしまった。もちろん、Apple の Knowledge Base にはオンラインでアクセスできるし、Apple ディスカッションフォーラムもあって大いに埋め合わせになっているのだが。また、Tonya はこの号で CD-ROM ベースの ZIP コードおよび電話番号データベース、ProPhone をレビューした。これこそ、今日ではインターネットのお陰で完全に抹消されてしまった製品カテゴリーだ。

1996 -- TidBITS 日本語版 #324/15-Apr-96 で、私たちは最初の TidBITS オランダ語版について発表した。オランダ語版チームはその後も活躍を続け、日本語版チームと並んでともに一貫した出版を残してくれている。その他の言語版もいくつか生まれては消えて行ったが、私たちは今後個別の記事がもっと容易に翻訳できるようにしたいと計画を練っているところだ。興味深いことに、この号には IBM が Mac OS をライセンスする可能性があるという記事も載った。ライセンスという考え方はもはや過去のものとなったが、Psystar から Mac クローンが出るのではないかという大騒ぎがあったり、IBM が従業員に Mac への乗り換えが容易にできるようにしたというニュースが届いたりしたのはつい先週のことではなかったか。

1997 -- TidBITS 日本語版 #375/14-Apr-97 では Eudora 3.1 と Emailer 2.0 のリリースが記事になった。どちらのプログラムも 1997 年には巨大な位置を占めていたが、今はどちらももう開発されてはいない。Eudora 6.2.4 は引き続き Mac OS X でも多くのユーザーのために働き続けているが、クラシックな Eudora コードベースの開発は既に終了しており、このプログラムが Thunderbird に基づいたオープンソースのアプローチに移行するのが成功するかどうかはまだ何とも言えない。Emailer は結局 Mac OS X へのジャンプを果たせなかったが、その開発チームの人々のうち何人かは Microsoft 社へという別のジャンプを果たし、彼らはそこでまず Outlook Express、次いで Entourage の開発作業に携わった。またこの号には“Crack A Mac”チャレンジの $13,000 にのぼった賞金を結局誰も受け取れなかったというニュースも載った。CanSecWest の Pwn2Own コンテストであっという間に MacBook Air が乗っ取られてしまったのとは大違いだ。(2008-03-28 の記事“Apple、ハッキングコンテストで最初の犠牲者に”参照。)

1998 -- TidBITS 日本語版 #425/13-Apr-98 では Matt Neuburg が Word 98 をレビューし、こう述べた:「Word 98 の新機能の多くは、実際には古い機能の上に追加の、オプションのインターフェイスを被せただけのものに過ぎない。」ある意味、Microsoft が Word 2008 でしたのもまたもやこれと同じことだとも言える。機能のセットを変更するというよりも、むしろインターフェイスを変えることで既存の機能がよりよく見えるようにしたいという意図が感じられる。

1999 -- TidBITS 日本語版 #477/19-Apr-99 で、Apple が 1999 年の第2四半期に 1.35 億ドルの利益をあげ(これで六期連続で利益のあがる四半期となり)同社に 29 億ドルの現金をもたらしたことを記事にした。これでも決してはした金ではない。でも、Apple の 2008 年第1四半期の収益報告では 15.8 億ドルの利益と 184 億ドルの現金となっている。これはすごい。この号にはまた、Connectix が Virtual PC の修正版を出して PowerBook G3 でのフロッピーディスクに関する問題点に対処したというニュースも載った。もちろん Virtual PC は驚くべきテクノロジーの離れ業だったが、Intel ベースの Mac で走る今日の VMware Fusion や Parallels Desktop に比べれば見劣りがする。仮想化は、エミュレーションを遥かに凌ぐ!

2000 -- TidBITS 日本語版 #527/17-Apr-00 でのニュースは Palm 同期化付きの Now Up-to-Date & Contact 3.9 のリリースだ。Now Up-to-Date & Contact は Mac OS X へのジャンプを実現して今でもちゃんとした製品だが、Now Software では完全に書き直した製品を現在開発中だ。けれども厳然たる事実は Palm 同期化が今日ではもう重大事とは言えないことで、これは一つには Apple の同期化テクノロジーのお陰であるとともに、一つには Palm OS ベースのハンドヘルド機の人気が衰退してしまったためだ。今日では、何から何まで iPhone なのだから。

2001 -- TidBITS 日本語版 #576/16-Apr-01 では、Mac OS X 10.0.1 のリリースが記事になった。Mac OS X の最初のリリースからわずか三週間後のことだった。これまで八年の間に、Mac OS X は五つのメジャーなリリースを経て、このオペレーションシステムは単なる好奇の対象という段階から、何百万人という人々に使われ業務用途にも耐えるオペレーションシステムへと進化してきた。でも、私たちは今でも Mac OS X のメジャーなリリースが出る度に、数週間以内には素早いバグ修正リリースが間違いなく登場してくるだろうと思っている。

2002 -- TidBITS 日本語版 #626/15-Apr-02 で、私は自分の著書“iPhoto for Mac OS X: Visual QuickStart Guide”の最初の版について発表した。当時の私は自分がこの本をその後ずっとアップデートし続けることになるとは思ってもみなかったが、今の私はこの本の七つの版をずらりと書棚に並べている。その最新版が“iPhoto '08: Visual QuickStart Guide”だ。けれどももっと興味深いのは、私たちがこの本の印刷版を予約注文した人たちのためにこれを電子ブックとしてもリリースしたという事実だ。(iPhoto 1.0 には重大な問題がいくつもあり、私たちは間もなく出るはずのバージョン 1.1 を待ってから本を出版することに決めた。)この電子ブックの大成功こそ、その後私たちが Take Control シリーズをスタートさせる決断をした際の大きな要因の一つとなった。印刷した本からは入手できない情報を提供できる電子ブックを、多くの人々が歓迎してくれたのが明らかだったからだ。

2003 -- TidBITS 日本語版 #676/14-Apr-03 では Safari の第2公開ベータ版のリリースが紹介された。まだ正式リリースにはなっていなかったが、これが「広く採用されている」と私たちは書いた。Safari はその後、事実上 Mac ユーザーのウェブブラウザの代表格としての地位を得るようになったが、2003 年に誰も予想さえしなかったのは、これが Windows や iPhone にまで移行を果たしたことだ。

2004 -- TidBITS 日本語版 #727/26-Apr-04 で、私たちは Apple の 2004 年度第2四半期業績報告を検討し、75 万台の Mac と 80 万台の iPod を売り上げた収入によって 4,600 万ドルの純利益があったと書いた。手持ちの現金は 1999 年のほぼ倍、46 億ドルとなった。これらの数字を単純に比較することはできない(2008 年度第1四半期には年末ホリデーシーズンの売上げが含まれており、2008 年度第2四半期の業績は 2008 年 4 月 23 日にならないと発表されない)が、この最新の四半期業績では 240 万台近くの Mac と 220 万台以上の iPod が売れたと報告されている。

2005 -- TidBITS 日本語版 #776/18-Apr-05 では Mac OS X 10.3.9(Panther の最後のバージョン)のリリースと、Mac OS X 10.4 Tiger が 2005 年 4 月 29 日に登場するという発表の両方が紹介された。これで、Panther の最初のリリースと Tiger の登場との間隔は 18 ヶ月ということになる。これ以前はその間隔がもっと狭かった。けれども Tiger から Leopard へのジャンプにはさらに長い 30 ヶ月という期間が必要で、そのまた後のネコ科の獣が登場するまでにどれだけ待つことになるのかは分からない。この号でも 2005 年度第2四半期の業績報告が扱われ、Apple は 74.9 万台の Mac と 80.7 万台の iPod を売り、2.9 億ドルの純利益をあげるとともに手持ちの現金は 70.6 億ドルとなった。

2006 -- TidBITS 日本語版 #826/17-Apr-06 では、Aperture 1.1 と Apple Remote Desktop 3 について伝えるとともに、Kevin van Haaren が寄稿記事で Mac ユーザのために Windows のヒントとコツを紹介している。Boot Camp や(その後間もなく Parallels Desktop と改名された)Parallels Workstation が、ますます多く使用されるようになってきたからだ。これに関して私が興味深いと思うのは、これらがまるで現在のことのように感じられることだ。Aperture 2.1 が出荷されたのはつい最近のことだったし、Apple Remote Desktop のバージョンはまだ 3.2 だ。もちろん、それぞれ改良はされてきたが、Mac のように成熟したプラットフォームにとって二年というのはそれほど長い期間ではないということなのだろう。

2007 -- TidBITS 日本語版 #875/16-Apr-07 でのニュースは、Mac OS X 10.5 Leopard が 2007 年 10 月にならないと出荷されないというものだった。遅れの理由は Apple がより多くの人的資源を 2007 年 6 月に迫った iPhone のリリースに向けなければならなかったからだ。この iPhone は Apple にとって巨大な意味を持ち、今後比較的近い将来には第二世代の iPhone が登場し、iPhone App Store も開くと期待されている。これら二つが揃えば、Apple が iPod によって開拓した指数関数的な売上げの伸びが iPhone でも実現されるかもしれない。

今後への展望 -- 大昔から最近までの歴史の概観はこれで終わる。きっと皆さんも、1990 年に TidBITS が初めて世の中に登場した頃以来、Macintosh の世界がどのように発展してきたか、じっくり考えてみるのと楽しまれたことと思う。

私たちは、TidBITS をこれほどまでに長い間出版し続けることになろうとは、夢にも思いもしなかった。でも、こうして 18 歳となったからには、当然私たちは 20 歳を目標とし、その次には 25 歳を目指すことになる。それに、いずれにしても私たちはこれを続けて行かなければならない。インターネット上で継続的にアップデートされるテクノロジー関係出版としては最古参であるという私たちのポジションを手放さないためにも。(全体で第2位の古参は Irish Emigrant News で、こちらは 1987 年 4 月以来のアーカイブを持っている。)


TidBITS 監視リスト: 注目のソフトウェアアップデート、21-Apr-08

  文: Adam C. Engst <[email protected]>
  訳: Mark Nagata <nagata@kurims.kyoto-u.ac.jp>


TidBITS Talk/21-Apr-08 のホットな話題

  文: Jeff Carlson <[email protected]>
  訳: Mark Nagata <nagata@kurims.kyoto-u.ac.jp>

Eudora から Apple Mail へ、しぶしぶ切り替え -- Tonya の記事を受けて、読者たちが Mail への切り替えについてそれぞれの体験談や意見を述べる。(メッセージ数 14)

Mail を設定して iCal スパムを防ぐ -- Mail が電子メールの .ics 添付書類を自動処理する機能は、頼んでもいないのにイベントが勝手に iCal に追加されることを許してしまうが、これは Leopard だけでなく Tiger でも問題となる。(メッセージ数 2)

Mac 以外のメールアカウントを同期 -- 重要な電子メールを複数のマシンでうまく管理するベストの方法について読者が意見を求めたところ、POP 対 IMAP の猛烈な議論が巻き起こる。(メッセージ数 45)

私の iPhone は車の中で鳴らない -- ある読者が車の中で音楽が聴けないのは、iPhone の埋め込み式のヘッドフォンコネクタが原因かもしれない。(メッセージ数 2)

Power Mac 8100/80 -- ある読者の古いけれど働き者の Mac は今でも生き生きと働いているが、今こそ現代的なマシンにアップグレードする(ソフトウェアも一切合切アップデートする)ことを考え始めるべき時期だ。(メッセージ数 9)

Leopard の画像アイコンプレビュー -- Finder が画像ファイルをアイコン表示する際に付けられるフレームをなくす方法はないか? (メッセージ数 3)

Leopard の iTunes 7 で機能が減った -- ある読者が、CD から iTunes プレイリストの中へ楽曲をドラッグできないことを発見する。でも、他の人たちはまだこの機能が使えている。(メッセージ数 4)

Macs@IBM -- IBM 社が Mac を取り入れ始めているという最近の報道によれば、同社はただ従業員が使うマシンとしてサポートをするだけでなく、ソフトウェア開発のターゲットとしても扱おうとしているらしい。(メッセージ数 4)


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Valid XHTML 1.0! , Let iCab smile , Another HTML-lint gateway 日本語版最終更新:2008年 4月 26日 土曜日, S. HOSOKAWA