TidBITS: Apple News for the Rest of Us  TidBITS#946/22-Sep-08

これはよくある話になりつつある。最初はそんなものは本当に必要ではないと思っていたが、iPhone 3G がフランスでも使えるようになって、Joe Kissell もようやく思い切ってこれを買ってみた。彼が、どんな風に iPhone が仕事のやり方を変えてくれたかを語り、また彼が出会ったいくつかの限界事項についても説明する。iPhone 3G と言えば、Apple はこれに付属の超小型 USB 電源アダプタを感電のリスクがあるとしてリコールしている。Adam は満 20 歳となった伝統あるユーティリティの最新版 StuffIt Deluxe 2009 を検討し、Joe は VMware Fusion 2.0 における改善点を浮き彫りにする。Tonya はリリースされたばかりのウィンドウ移動ユーティリティ MercuryMover 2.0 をたちまち有効に使いこなす。また、Adam の電子ブック“Take Control of Buying a Mac”の最新版のリリースのお知らせもある。TidBITS 監視リストでは、Gears for Safari、BBEdit 9.0.1、Coda 1.5.1、それから Apple の Digital Camera Raw Compatibility Update 2.2、Apple Remote Desktop 3.2.2 と Server Admin Tools 10.5.5 が出たことを取り上げる。

記事:

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Apple、超クールな iPhone 3G USB 電源アダプタをリコール

  文: Glenn Fleishman <[email protected]>
  訳: Mark Nagata <nagata@kurims.kyoto-u.ac.jp>

ちょっとショックなニュースだが(駄洒落は意図的)Apple は iPhone 3G に付属させて喜び勇んでリリースしたはずの超小型 USB 電源アダプタをリコールした。USB ジャックに二本の金属製差し込みが生えているようにしか見えない超コンパクトのこのアダプタは、どうやら欠陥があってプラグ部分(金属製の差し込み部分)の一方または両方が外れて電源コンセント内に残ることがあったようだ。同社のリコールページには「人体に危害がおよんだという報告は現時点では入っておりません」「販売済み製品のごく一部にこの問題が発生したとの報告がありました」とある。それでも、感電の原因となる可能性があることは確かで、家庭用電源での感電(電気ショック)は軽視すべき問題ではない。

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同社はユーザーに対し、ただちにこの電源アダプタの使用を中止するように呼びかけているが、交換品が出荷できるようになるのは 2008 年 10 月 10 日からだという。問題のあるアダプタが iPhone に付属して販売されたのは米国、日本、カナダ、メキシコ、コロンビア、エクアドル、エルサルバドル、グアテマラ、ホンジュラス、ペルーの各国だ。

付属の iPhone USB ケーブル、別売のドック、また上記以外の国で販売されたアダプタについては問題はない。Apple は iPhone 3G の充電を USB ケーブルでコンピュータに接続するか、または通常サイズの Apple USB 電源アダプタ(プラグ部分が折り畳み式になっているもの)あるいはサードパーティのアダプタを使ってするように強く勧めている。

対策後の超コンパクトアダプタには底部に緑色の点が一つ付いて、安全性の低い初代バージョンと区別できるようになっている。Apple は交換の申し込みをウェブで受け付けているが、その際には iPhone のシリアル番号が必要になる。また、2008 年 10 月 10 日以降は Apple Store 直営店の店頭に直接持ち込んでもアダプタの交換ができるが、その場合はアダプタと共に iPhone 3G も持参する必要がある。

この交換に料金はかからない。

私の予想では、大部分の iPhone 3G オーナーたちは交換品が手に入るまでの間も(以前より少し余分の注意を払いながら)既存の超コンパクトアダプタを使い続けるだろうと思う。なぜなら、他の方法はどれも近くにコンピュータがあることが必要か、あるいは別途の充電器を購入するかしなければならず、Apple はその購入までは補償してくれないからだ。


MercuryMover 2.0 でウインドウを望みの場所に

  文: Tonya Engst <[email protected]>
  訳: 羽鳥公士郎 <http://www.ousaan.com/mail/>

日曜日の午後、部屋の中で枕を投げるのはやめなさいと2人の男の子に言ってから、腰を落ち着けて請求を支払おうとした私は、すぐに MYOB 簿記ソフトウェアのウインドウが見当たらないことに気がついた。この問題は、MacBook Pro に外部モニタをつないでしばらく使った後、MacBook Pro を単独で動かすと、ときおり起きる。そういうときは、MYOB の Window メニューから、見失ったウインドウをズームして視界に戻す。これは面倒だが、たいした問題ではない。

しかしこのときは、MYOB の Window メニューのすべてのコマンドがグレーアウトされており、再起動するなり、再接続するなり、再インストールするなりして、コンピュータにかかずらわずにすむべき週末の午後に時間を費やすよりほかに、ウインドウを取り戻す方法がないように思えた。

この問題については原因も分かっていた。私は最近、MacBook Pro に外部モニタを2つ接続することを可能にする USB 機器 Matrox DualHead2Go をテストしていたのだ。DualHead2Go について話せば長くなるので、別の機会にお伝えするつもりだが、今回の問題に関することだけ言えば、DualHead2Go によって利用可能になった場所に MYOB がウインドウを置いたのに、DualHead2Go を取り外して1つの外部モニタを使ったため、その場所が見えなくなってしまったのだ。

どうしたらよいだろう。こういうとき、ニュースを書いていると、得をすることがある。金曜日に、ちょうどよいタイミングで、そして無視するわけにはゆかない手作りのおいしいブラウニーと一緒に、新品の MercuryMover 2.0 が入った1枚の CD が届いていた。Helium Foot Software の 20 ドルのユーティリティーだ。土曜日にブラウニーを楽しみながら、私は Adam に、MercuryMover は何をするものだったかとたずねた。これは、キーボードショートカットを使ってウインドウを Mac の画面のあちこちに動かしたり、大きさを変えたりするものだ。私は便利そうだと思い、TidBITS のスタッフで本の編集にそれほど忙しくしていない人が何か書いてくれたらよいと思っていた。とにかく、子供たちが外に出ていったところで(チャンバラに適当な棒を探しに行ったに違いない)、MYBO でウインドウが消えた問題を MercuryMoverで解決できるかもしれないと気がついた。

案の定、MercuryMover を使って見失ったウインドウを取り戻すのは簡単だった。System Preferences でこれを有効にして、Control-Command-上矢印を押して起動すると、使い方を手順を追って示してくれ、どのキーを押せば見失ったウインドウを動かしたりウインドウの現在の座標を表示したりするのかを教えてくれた。私はまた、バージョン 2.0 の目玉となる新機能を少し設定してみた。特定のウインドウサイズとウインドウの位置に対応するキーボードショートカットを作成する機能だ。私は MacBook Pro を外部モニタにつないだりはずしたりするので、ウインドウが乱雑になりがちだ。そこでこの機能を使えば、ウインドウの混沌を解消できると思う。さらによいことに、これらの動作はすべて滑らかかつ直感的で、おかげで私は、誰も見ていないことを確認しながらブラウニーをつまみ食いする時間を稼ぐことができた。


StuffIt Deluxe 2009、20 年経っても進化を続ける

  文: Adam C. Engst <[email protected]>
  訳: Mark Nagata <nagata@kurims.kyoto-u.ac.jp>

この 20 年で世界は大きく変化を遂げた。けれども Mac ユーザーたちにとってずっと変わらず存在し続けたものが一つある。それが、第一級の圧縮・アーカイブ用ソフトウェア、StuffIt Deluxe だ。まだ十代であったプログラマー Raymond Lau の書いたシェアウェアとして生まれ、たくさんのバージョンを経るうちにその親会社 Aladdin Systems は Allume となりまた Smith Micro に買収されたが、StuffIt Deluxe はその後も機能を加えつつ、そのロスレスな圧縮能力の改善を続けて行った。大容量のハードディスクと高速のインターネット接続が当たり前のこの時代、圧縮の必要性はもはやそれほど大きくないにもかかわらず(Apple が Mac OS X の内部に Zip アーカイブのサポートを備えていることも忘れてはならないが)StuffIt Deluxe は今でも数多くの Mac ユーザーたちにとって便利なものであり続けている。(その理由がさっぱり理解できないという方々には、これが今でも Smith Micro の Consumer Group における旗艦製品であるという事実だけでも、現に多くの Mac ユーザーたちがこれに依存していることの証拠と見ていただけるだろう。)

今回のバージョン、StuffIt Deluxe 2009 での変更点で最も特記すべきものは、Mac OS X 10.5 Leopard における新テクノロジーのサポートを追加したことだ。Quick Look がサポートされたお陰で、Leopard ユーザーたちがアーカイブを展開することなくその中身を見ることができるようになった。これは大きな利点だ。この機能は Finder でも、Mail でも、あるいは他のどんな Quick Look 対応アプリケーションでも使える。同様に、Time Machine でブラウズしている時にもアーカイブがプレビューできる。また、こちらは Leopard とは無関係だが、Google の MacFUSE ファイルシステムユーティリティが新たにサポートされたので、ブラウズ可能なアーカイブタイプならばどんなものでも Finder の中であたかも一つのディスクであるかのようにマウントできるようになった。

圧縮機能そのものについて StuffIt Deluxe 2009 で特に変わったところがあるかどうかについてははっきりしないが、このプログラムはよくあるファイルタイプ、例えば MP3、PDF、iWork ファイル、Microsoft Office ファイルその他に対して、それぞれ最適化されたコンプレッサを提供している。JPEG 画像に対してさえ、最大 30% にも達するロスレス圧縮ができる。「重複折り畳み」と呼ばれる新機能があって、これは一つのアーカイブ内に重複したファイルはただ一つしか保存しないようにすることでスペースを節約しようとするものだ。StuffIt Deluxe のスケジュールによる自動アーカイブ機能をバックアップ作業の一環として使っている人には特に便利だろう。この重複折り畳み機能も、StuffIt Deluxe が圧縮をアーカイブ内の個々のファイルごとに施すのでなくむしろファイルの集まりを対象と認識して圧縮をしていることを表わす事例の一つと言える。もう一つの新機能は 7-Zip および分割 Zip アーカイブの展開のサポートで、このことにより StuffIt Deluxe 2009 は全部合わせて 30 以上の圧縮フォーマットを展開することができるようになった。

DropStuff は StuffIt Deluxe 2009 パッケージを構成するメジャーなユーティリティの一つであり、それ自身 Smith Micro が StuffIt Standard 2009 製品として販売しているものの中で大きな部分を占めているが、今回新たなカスタマイズのオプションを加えて機能が拡張された。圧縮フォーマットのセットやその他のオプションを、Desktop ドロップレットとして保存できるようになったのだ。このため、ユーザーがいくつもの異なったタイプのアーカイブを手軽にドラッグ&ドロップで作れるようになった。

もう一つのユーティリティ、SEA Maker を使えば、ユーザーが Mac OS X 用のミニ・インストーラを作れる。そのこと自体は新しくはないが、新しいのはその Remote Payload 機能で、SEA Maker がインストーラのパーツを FTP サイトや iDisk から取ってくることができるようになった。また、DropStuff に StuffIt Scheduler ユーティリティを組み合わせれば、自動的にアーカイブをあなたの MobileMe iDisk に転送することもでき、バックアップ戦術の一部として便利に使える可能性がある。

StuffIt Deluxe 2009 の価格は $79.99 で、StuffIt Standard 2009 (ここには DropStuff と、単独では無料の StuffIt Expander が含まれる) の価格は $49.99、そして StuffIt Expander 2009 はこれまで通り無料だ。従来のバージョンの StuffIt Deluxe か StuffIt Standard から StuffIt Deluxe 2009 へのアップグレードは $29.99 で、StuffIt Standard 2009 への従来のバージョンからのアップグレードは $14.99 だ。Mac OS X 10.4 かそれ以降を要する。


Take Control ニュース: 正しい Mac を正しいタイミングで購入

  文: TidBITS Staff <[email protected]>
  訳: Mark Nagata <nagata@kurims.kyoto-u.ac.jp>

新しい Mac を買いたいと決断することは易しい。でも、いざその実行に着手しようとすると即座に次のような疑問が湧いてくる:「私の必要に最も適しているのはどの Mac だろうか」「今すぐ買うべきか、それとも一月待つべきか」「古い Mac から新しい方へどうやって私のファイルを移すのか」「古い Mac はどうすべきか」といった具合だ。Mac 導師の Adam Engst はこれまでこの種の質問に数え切れないほどの回数答えてきたが、それらの答を抜き出してまとめ上げたのが 98 ページの電子ブック“Take Control of Buying a Mac”だ。

この本の中にあるワークシートを助けにしてあなたの必要や予算にマッチした正しい Mac 機種を選び、過去 5 年間に Apple の出した新機種の表を見ながら次に新しい Mac が出るのはいつか予想しよう。Adam はまた、支出に対して最も価値あるものを手にするにはいつ購入すればよいかを説明し、どこで買い物をするかについてもいくつかの異なった場所を比較し、古い Mac からピカピカの新しい Mac へとファイルを転送するための助言とステップ・バイ・ステップの手順を説明し、さらには新しいマシンに置き換えられようとしている Mac をどうすれば最大限に活用できるかにまで考察を加える。

価格はたったの $10 なので、必要な追加装備の付いた Mac をより安い値段で買える助けになるならば簡単に元が取れるだろう。

この本の過去のバージョンを 2008 年よりも前に購入された方は、お持ちの本の表紙にある Check for Updates ボタンをクリックすれば 75% のアップグレード割引にアクセスできる。(私たちはアップグレードしたい人たちができるだけ簡単に新バージョンを手に入れられ、その一方でほんの少しだけお金を払って頂いて著述に要した時間や Caroline Rose の編集作業、それに Tonya の出版のための作業などに代価を支払うこともできるようにしたいと思ったのだ。)2008 年に入ってから旧版を購入された方には既に私たちから無料アップデートへのリンクをお知らせする電子メールが届いているはずだ。


VMware Fusion 2.0 リリースされる

  文: Joe Kissell <[email protected]>
  訳: 亀岡孝仁<takkameoka@kif.biglobe.ne.jp>

私がコンピュータの画面を見る度に、Intel-based Mac 上で Windows を走らせる仮想化プログラムを出している Parallels か VMware から新たなバージョンがリリースされている様に見えたのは、そう昔の話ではない。しかしながら、最近の数ヶ月の間は、この矢継ぎ早のリリースはかなりペースが落ちて来ていた。Parallels は Parallels Server ("Parallels Server が Leopard Server にも仮想化をもたらす" 2008-01-10 参照) と小規模なアップデートの方にその焦点を当ててきており、一方 VMware は過去 4ヶ月を VMware Fusion 2.0 のベータテストに当ててきた (Adam Engst の "VMware Fusion 2 Beta 2 重要な機能を追加", 2008-07-31 参照)。バージョン 2.0 は現在出荷中であるが、これはすごいと言いたい。

もしあなたが Fusion 2.0 公開ベータのテストに関する我々のアップデートに時折目を配っていたのなら、新機能の多くは驚きではないであろう。しかしながら、再度見てみると、VMware Fusion は大幅に変わった;バージョン 1.1 からの目に付く変更点は ("100 を越す新機能と改良" の中で) 次のようなものがある:

このリストは単に氷山の一角でしかない;新機能の全リストについては Fusion 2.0 の広範なリリースノートを見てほしい。

これら新機能のうちかなりのものが Parallels Desktop ではすでに提供されている機能に似ていることにお気づきかも知れない。これは、勿論、意図されたことである。これら二つのプログラムはこれまでも甲乙つけ難い競争相手ではあったが、これまで私は全体的なアドバイスとして、最善のユーザー経験と Mac OS X との緊密な統合を求めるなら、Parallels の方が先んじていると言ってきた;一方、もし CPU 負荷の高い仕事で最善の性能を求め或いは Mac の資源に対する影響を最小にしたいのなら、大体において Fusion の方がより良い選択であった。旧と新のバージョン間での性能に大きな変わりはないとの前提で言うと、この方程式は今や同じではない;統合の観点から言えば、Fusion は今や Parallels Desktop と同等の良さを持つ - 更に場合によっては勝っている所もある。事実、Fusion 2.0 は、ドライバなし印刷や Leopard Server のサポートを $100 以下の製品で提供する等でハードルを上げてきたので、現時点では魅力的な選択肢と言える。

VMware Fusion 2.0 は 248 MB のダウンロードである。これはバージョン 1.x の所有者に対しては無償のアップグレードである;新規の顧客向けの定価は変わらず $79.99 である。 無料の試行版もある。


iPhone 転向者の告白

  文: Joe Kissell <[email protected]>
  訳: Mark Nagata <nagata@kurims.kyoto-u.ac.jp>

これを書いている時点で、私は iPhone オーナーとなってちょうど二カ月目の記念日を迎えている。(これを祝って私たちは一緒にイタリアへの休暇旅行に来ている。「iPhone 未亡人になってしまったわ」とこぼすことの多くなった私の妻も一緒だ。)現在の私の視点から見直せば驚くべきことだが、以前の私は何カ月もの間、私はこの機器の対象とする利用者層に属していないと信じ切ったまま過ごし、これがクールな機器であることに議論の余地がないことは認めるものの、私が iPhone の(あるいはそのスリムな兄弟である iPod touch の)オーナーになることはあり得ないだろうと思い込んでいた。私が初めて iPhone 3G を手に入れた時、何がきっかけで私が考えを変えたのかについていくらか考察した記事を私はポストした。(2008-07-17 の記事“Totally an iPhone 3G Owner”参照。)でも今は、しばらくの間これを使ってみた結果、私は自分がいくつかの点では正しかったが他の点では間違っていたことに気付いた。そして、この iPhone 体験を通じて私を驚かせたことが(良いことも悪いことも)いくつかあった。

何百万人もの(多くは)満足した iPhone または iPod touch オーナーたちの仲間に入りたいとは思うけれどまだ最後の一歩が踏み出せないという人、あるいは(2008 年前半の Joe のように)こんなもの持ってもしょうがないと思っている人は、ひょっとしたら私の観察した結果を記したこの記事を読むことでいずれの道に進むかの決断を下す助けにして頂けるかもしれない。

価格 -- まず最初にお金の話を片付けておこう。iPhone は、キャリヤ(回線業者)交付金のお陰で以前よりは安くなったものの、今でも価格は決して安くないし、毎月の通話およびデータ料金もかなり高くつく。もちろん、他の同等の機器に払うだろう料金とおおよそ同じレベルの金額ではあるし、標準の携帯電話プランと比べても(あなたの通話の習慣にもよるが)それほど大幅に高いという程でもない。それでも、私たちの多くにとってこの毎月のサービス料金は無視できない財政的負担だと言えるだろう。確かに、iPod touch ならば最初に先払いをする(それにもちろん時折 $10 のソフトウェアアップグレード料金を払う)だけでよいが、電話とカメラ、それに GPS を失うことになる。その条件で十分満足できるか、それとも魅力ゼロになってしまうと思うかは、あなたが何を必要とするかによって決まるだろう。

初期コストが安くなったことは、私にとって大きな壁が消えたことを意味した。毎月これほど大きな金額を払わなければならないのは好きではないが、払った以上のものを得ていると信じているのでそちらは受け入れられる。つまり、生産性の向上と浪費する時間の減少によって毎月の支出が十分に埋め合わせられると感じるのだ。これを持っていなければ浪費されたであろう日中の時間を時給で働く仕事に振り向けられるならば、それは私にとって大きな意味がある。

ただし些細な問題が一つ残っている。それが、海外ローミングの問題だ。外国にいる時に通話したりデータ転送をしたりする際のコストについてはいろいろ議論もなされており、それをここでまた長々と繰り返すことはしたくないが、よく海外に旅する者にとってこれは確かに深刻な問題だ。ここフランスで私が Orange 社と契約しているプランでは、ヨーロッパ圏内でのローミングはそう悪くないが、例えば北アメリカへのローミングは全く話が違う。次の 1 月の Macworld Expo で San Francisco に向かうより前に、私はきっと Orange に 100 ユーロを支払って私の電話をアンロックしてもらい(このアンロックは、あと二週間待って使用六カ月目を迎えさえすれば無料になっていただろうが)その上で米国内で使えるデータプランの付いたプリペイドの SIM カードを買うことになるだろう。たぶん、その方法でのコストの合計の方が、そのまま旅行中の通話とデータのローミングに支払うコストよりも安いだろうと思う。

生産性対娯楽 -- 言うまでもなく、あなたが iPhone や iPod touch を生産性のための機器というよりも主に娯楽のための機器とみる人ならば、その娯楽が自分にとってどのくらいの価値があるのかを自分で決めるべきだ。でも私にとっては、音楽やビデオ、それにゲームといったものは単に添え物の飾りでしかなく、それ自体がこの機器を持つ理由にはならない。

私が iPhone を持っても役に立たないと思っていた理由の一つは、私が自宅で仕事をすること、そして善きパリ市民らしく、エクササイズというものをそれ自体遠ざけたいことだ。だから、私は音楽を聴いたりビデオを観たりするためにポータブル機器は必要としない。私は自分の iPhone を iPod として考えたことがなかったので、自宅から出かける際にイヤフォンを持って出るという考えがただの一度も頭に浮かばなかったほどだ。誰かが iPod を聴いているのを見て「そうだ、私も音楽を聴けるようになったんだ」と思うことはあるだろうが、とにかくそれが iPhone に関して私の興味をかき立てることはない。

私の iPhone は、私を以前よりも生産的にしてくれた。例えば、地下鉄に乗って町へ用足しに行くことが私はよくあるが、その間に電子メールに返事を書いたり RSS フィードに目を通したりできるようになった。すぐ後で具体的に説明するが、ちょっと外出している間に必要とする情報断片をすべて取り出せるようにしてくれることで、私をあらゆる種類の厄介事から救い出してくれた。Mac mini で映画を観ている時にこれをリモコンとして使ったこともあるし、自分で Keynote プレゼンテーションをする時にもリモコンとして使ってみようと思う。さらには(これを認めるのは確かに残念なことだと思うが)風呂につかりながら隣の部屋にいる妻に電子メールを送ったことさえある。

一言で言えば、これはとてつもなく便利なツールになった。自宅にいても、町に出ても。私はこれを主に参照用の事典、およびコミュニケーション用機器として使っている。コミュニケーションは主として電子メールだが、時々は音声通話も使い、SMS はめったに使わず、音楽やビデオはごくたまにしか使わない。

頭をピシャリと -- iPhone を持つことは私の頭痛の種だった。というのも、自分がたった今苦労して済ませた厄介事が、ボケットに入っていたこの機器を使いさえすれば簡単に済ませられたことにあとで気付いて、自分の頭を自分の手でピシャリと打つことがしばしばだったからだ。私はまだ、ウェブへのアクセスや、自分の電子メール、自分の写真、大多数の自分のファイルへのアクセスが、どこにいても常時できるという事実にまだ慣れることができないでいる。例を挙げよう:

旅先の光 -- もうじき予定している私の休暇旅行には、コンピュータを持って行かないつもりだ。本当の意味で羽を伸ばすのだ。仕事をするのも、仕事のことを考えるのも避けようとは思うが、その一方でどこにいても電子メールやウェブにアクセスできることが非常に大きな慰めとなるのも確かだ。それだけでなく、私の Xserve に(必要が起これば)遠隔で接続してリブートしたり、ブログ用ソフトウェアをアップグレードしたり、ディスク修復ユーティリティを走らせたりさえできる。緊急にコメントやレビューを必要とする Word あるいは PDF ファイルが編集者から送られてきても、私の電話機で処理できる。自宅に置いてきた MacBook Pro にあるファイルを同僚の一人が必要としても、たぶん私はそれを取ってきてその人に電子メールで送ることができるだろう。たとえ自宅のコンピュータの電源がオフになっていてもだ。その他使い道は数限りない。それにもちろん、私のポケットの中には、イタリア語の会話表現集まで装備されているのだ!

旅先の光 -- もうじき予定している私の休暇旅行には、コンピュータを持って行かないつもりだ。本当の意味で羽を伸ばすのだ。仕事をするのも、仕事のことを考えるのも避けようとは思うが、その一方でどこにいても電子メールやウェブにアクセスできることが非常に大きな慰めとなるのも確かだ。それだけでなく、私の Xserve に(必要が起これば)遠隔で接続してリブートしたり、ブログ用ソフトウェアをアップグレードしたり、ディスク修復ユーティリティを走らせたりさえできる。緊急にコメントやレビューを必要とする Word あるいは PDF ファイルが編集者から送られてきても、私の電話機で処理できる。自宅に置いてきた MacBook Pro にあるファイルを同僚の一人が必要としても、たぶん私はそれを取ってきてその人に電子メールで送ることができるだろう。たとえ自宅のコンピュータの電源がオフになっていてもだ。その他使い道は数限りない。それにもちろん、私のポケットの中には、イタリア語の会話表現集まで装備されているのだ!

ごたごたを減らす -- 普通ならば別々に持ち運ばなければならない、電話にカメラ、地図、フランス語辞書、それにノートブックまでまとめてたった一つの小さな物体に置き換えてくれるのは素晴らしいことだ。それでも、この iPhone が私の期待したレベルに達してくれなかったことが一つある。皮肉なことに、それは使いやすさだ。

例えば、私がパリの街角に立って、町の向こうに行くにはどの地下鉄線に乗ればよいのか迷っていたとしよう。これを見出すために、旧式の方法なら、地図本を取り出して、表紙を開けば、すぐに「ああ、これだ」と分かる。一方、新式の方法は、iPhone を取り出して、Home ボタンを押してオンにし、スライダーをドラッグしてロックを外し、私のパスコードを入力(私の場合 iPhone にたくさんの個人情報が入っているので必要なことだ)してから、もう一度 Home ボタンを押してアプリケーションを表示させ、スクリーンをスライドさせて地下鉄路線図のある画面に行き、アイコンをタップして、それがロードするのを待ち、それからやっと私のいる位置を見つけるという段取りだ。これだけのことをするにはずっと長い時間がかかるので、たいていの場合一緒にいる妻が先にハンドバッグから地図を取り出してどこへ行くべきかを見つけてくれ、その時に私はまだ最初のスクリーンをスライドさせるあたりまでしかたどり着いていないというありさまだ。

これは数多くある例のたった一つに過ぎない。良い多機能ツール(例えばあの有名な Swiss Army Knife もそうだ... 実際、私も一丁いつも持ち歩いている)ならば何でも当てはまることだが、柔軟性と引き替えに利便性を犠牲にするのはやむを得ない。Swiss Army Knife に付いているツールでステーキを切り分けたり家を建てたりしたいとは思わないが、他に方法がない時には、何かがあればないよりましだ。iPhone には最高水準に属する電子メールクライアントもテキストエディタも地図プログラムもカメラもないが、それほど大げさでない作業をどこでもその場で手早くするには十分な水準のものたちが揃っている。

そこで問題は、ものの数を減らしたことが品質と効率性の低下に見合うだけのものかどうかということだが、その答は時にはイエスで時にはノーだ。iPhone は多くのことを結構うまくこなしてくれるが、私が例えば地図やノートブックをやはり持ち運んでおきたいと本気で考え始めたなら、それはつまりこの驚くべき多機能ツールがその分野では私の基本的必要をさえ満たすことができなくなったということを示唆している。

そうそう、ノートブックといえば、この iPhone は、ごく正直に言おう、何か物を書こうとすると、どうしようもなくお粗末な機器に成り下がる。(どんなに素晴らしい出来のテキストエディタをインストールしようとそのことは変わらない。)私の指は比較的細い方だと思うし、ちゃんとテキスト修正機能も内蔵されているというのに、私はほんの短くシンプルなテキストを書く時でさえ結局山ほど書き間違いをする羽目になり、その上その作業の手順全体が想像を超えてはるかに面倒なものになる。また、コピーとペーストができないことも間違いなく最大級のイライラの種だ。それさえあればたくさんのタイピングが省略できるだろうに。

でも、私の意見では、現状の iPhone を巡るすべてのことの中で何よりも一番ダメなことは、メモや to-do 項目の同期ができないことだ。Mac OS X では、Mail と iCal が to-do 項目を共有できるし、Mail からメモを他の Mac と MobileMe 経由で同期できる。でも、iPhone の Notes を Mail のメモと同期させることはできないし、to-do 項目については、サードパーティのソフトウェアを使わずには iPhone は表示すらできず、ましてや同期など無理だ。私はいろいろな iPhone アプリケーションを試して、それぞれ独自のメモや to-do 項目をウェブベースのサービスとの間で、また場合によっては専用のデスクトップアプリケーションとの間で、同期させられるものを調べてみた。けれども私の知る限り、これら二種類の基本的なタイプのデータを iPhone と Mac OS X に含まれたソフトウェアの間で同期させる方法は一切存在していない。

(ここでちょっと言い添えると、私は別にそのような方法の提案を募集している訳ではない。私はただ、怒りの感情を発散させているだけだ。この難問を解決しようとして多くの開発者たちが今も苦闘中であることは知っているし、私がこれまでに目にした解決策はどれも完全に満足できるものではなかったにしても、きっといずれはその中のどれかが目的を達することになるだろうと思っている。私の気に障るのはただ、この問題の根源だ。つまり、Apple が状況をこれほど困難なものにしてしまったことを私は信じられないのだ。)

同じようなことだが、もう一つ私が iPhone に望みたいのは、これが手軽な音声録音機になるだろうという点だ。私のフランス語理解力は皆さんお察しの通りなので、会話をしていても人の言っていることが半分くらいしか聞き取れないことが多い。相手の話を録音しておいて聞き取れなかった部分をあとで再生して聞き直せたら、といつも思っている。まあ、そうは言っても、タップしてスライドしてからオーディオ録音が始まるのを待つ間に 20 秒もかかってしまうのなら、やはり手遅れだろう。その点、従来型のデジタル録音機をポケットに入れておけば、ボタン一つ(か二つ)を押すだけで一秒以内に録音が始まることだろう。

即興のデモ・テストに失敗 -- 内蔵の GPS はいくつもの状況で天の恵みのように思えた。けれども、iPhone は地図のダウンロードと表示についてデータ接続に依存しているので、実際の動作はあるべきものといつも一致しているとは限らない。ある夜、妻と私がセーヌ河畔を散歩していると、何人かの旅行者たちが近寄ってきて一番近い地下鉄の駅はどこかと尋ねた。私はすぐには分からなかったので、iPhone を取り出し、オンにして、Maps アイコンをタップした。そうすれば即座に地図が出てきて、現在位置と、それにもちろん、近くにあるすべての地下鉄の駅も表示してくれるはずだと思ったからだ。以前にも私は何度も同じことをしたことがあって、いずれも何のトラブルもなかった。でも今回は、地図がロードされなかった。私は 3G をオン・オフに切り替えてみたが、それでも直らなかった。他にどうすればいいのか分からなかったので、私は電話機の電源をいったん切り、再起動するのを待った。この頃にはもう旅行者たちはすっかりうんざりした風で、どっちの方にありそうか大体の方向だけでも示してくれないかねと言い出した。私はそうしたが、その後 30 秒ほど経って、地図がようやく画面に現われた。

彼らが立ち去りながら互いにつぶやいていた言葉をはっきり聞き取ることはできなかったが、たぶん「なんて間抜けな奴だ」とか「どうしようもない役立たずの電話だ」とかいう言葉が交わされていたのだと思う。このパワフルな機器の感動的な機能を見せつけてやろうと思っていたのに、結果は面目まるつぶれに終わった。

また、私はある役所に行って、iPhone で電話番号を一つ調べなければならないことがあった。Contacts を開いて、正しい場所をタップした。でも、そこで画面がフリーズしてしまった。しばらく時間をかけて、私は何とか目的のコンタクト情報を開くことができたが、スクロールしようとして誤ってスクリーンをタップしてしまった時、この電話機はその相手に電話をかけ始めた。(その副作用として欲しかった電話番号が表示から消えた。)必要な画面に戻ることができた頃には、役人たちが三人ほど笑いながら私の iPhone を互いに冗談の種にしていた。はてさて、私はこれがパワフルな機器だと知ってはいたが、フランス人の官僚の心をこじ開けて微笑ますことのできる力があるとは知らなかった。驚くべきことだ! これからは、もっとこの機能を使いこなすことにしよう。

さらなる高望み -- iPhone には数々の素敵な機能があるが、その一つ一つごとに私は、それがさらにあと一歩素晴らしいものになって欲しいと思う。例えば、私は Evernote を使っていろいろな看板やメニュー、その他のスナップ写真を撮るようにしている。そうすれば、電話機が写真を Evernote のサーバにアップロードし、サーバでは OCR ソフトウェアを使って画像に含まれたテキストを読み取り、数分以内にその内容を索引付けしてくれる。こうして私は、先月食事をしたレストランでメニューに載っていた料理の名前を(電話機でも Mac 上でも)検索して即座に結果を知ることができる。とてもクールだが、私が本当に願うのは iPhone が素早くそのテキストの英語訳を示してくれることだ。そのために必要なのは、数多くある機械翻訳サービスのどれかにそのテキストを送ることだけだろう。でも現状では、そこまで全部を一つのパッケージでできるものはない。

同様に、私は時々 Jottを使って短いメモを録音し、それを音声認識ソフトウェアと人間の転写記録士の組み合わせによって編集可能かつ検索可能なテキストに変換してもらうサービスを使っている。これをより良くするとすれば、誰かがフランス語で話すのを私が録音すればそれを英語に翻訳したテキストにしてくれる(あるいはその反対の翻訳も)というサービスだろう。確かに、翻訳は大雑把なものになるだろうが、状況によってはどんなものでもないよりましということもある。

まとめの考察 -- iPhone が払ったお金に見合うだけのものだと私が気付いた理由は、単純に言えばこれがおもちゃではなくツールとして最も私の役に立ってくれることが分かったからだ。ツールとしては、これはいくつかのことを私がかつて想像したことがないほどうまく達成してくれる一方、いくつかのことでは正しく動くはずだと思ったものが働かないこともある。けれども全体としては、私は自分の選択に満足している。多くのツールとは違い、ソフトウェアアップデートのお陰で、これは将来さらに良いものになるだろうという期待が十分持てる。私の妻はちょっぴり嫉妬を感じているようだが、この iPhone を使って素晴らしいイタリア料理を注文できることでその埋め合わせはできるのではないかと思う。


TidBITS 監視リスト: 注目のソフトウェアアップデート、22-Sep-08

  文: TidBITS Staff <[email protected]>
  訳: Mark Nagata <nagata@kurims.kyoto-u.ac.jp>


TidBITS Talk/22-Sep-08 のホットな話題

  文: Jeff Carlson <[email protected]>
  訳: Mark Nagata <nagata@kurims.kyoto-u.ac.jp>

Chrome の Mac 用ポートが出た -- Code Weavers が Google Chrome ウェブブラウザを手早く Mac 用に移植したものを出した。読者たちはこれを試してみる一方、「ネイティブ」なアプリケーションとは何を意味するのかと議論する。(メッセージ数 25)

VMware Fusion 2.0 リリースされる_ -- ある読者が Mac OS X 10.5.5 上に Fusion 2.0 をインストールしてトラブルに遭ったが、そんな問題は起こらなかったという人もいる。(メッセージ数 2)

iPhone 転向者の告白_ -- iPhone が役に立つと分かってきたという Joe Kissell の記事に、読者たちがコメントを寄せる。(メッセージ数 2)

iTunes 8 は Genius を加え;iTunes Store は HD TV と NBC を加える -- ある読者が、iTunes 8 の新しい Genius 機能がクラシック音楽についてはまともに動作しない、と報告する。(クラシック音楽がこのソフトウェアの強みであったことは一度もないが。)(メッセージ数 2)


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Valid XHTML 1.0! , Let iCab smile , Another HTML-lint gateway 日本語版最終更新:2008年 9月 29日 月曜日, S. HOSOKAWA