TidBITS: Apple News for the Rest of Us  TidBITS#950/20-Oct-08

Apple は先週新しい MacBook Pro と MacBook の各機種をリリースし、革新的な工業デザインと大幅に改善されたグラフィックス機能を誇りつつ、論争の種も少々盛り込んだ。このリリースと合わせ、新しい 24 インチ LED Cinema Display と、アップデートされた MacBook Air について報告するとともに、すべてのスクリーンが光沢ありのものに切り替わったこと、また MacBook から FireWire が省かれた問題についても検討する。Adam はまた先週のイベントで発表されたいろいろな数字について概観し、これは Macintosh をめぐるすべてがより広く受け入れられつつあることを示すものだと考える。その他のニュースとしては、Glenn Fleishman が Google が後ろ楯となった T-Mobile の G1 電話について実際にしばらく使ってみた体験を語り、Adam は Apple の最新の“Get a Mac”コマーシャルが Microsoft の広告そのものに直接狙いを定めていることに触れる。また、Microsoft Office 2008 12.1.3 と Office 2004 11.5.2 のリリースや、Adobe Creative Suite 4 が出荷されたことについてもお知らせする。最後に、TidBITS 監視リストでは Apple の Migration and DVD/CD Sharing Update や、Typinator 3.2、Mac HelpMate 2.6、Undercover 2.5、OpenOffice 3.0、Flash Player 10、Live Interior 3D 2.0、それに Bento 2.0 についてこっそりとお伝えする。

記事:

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Microsoft Office 2008 12.1.3 と 2004 11.5.2 のアップデート

  文: Doug McLean <[email protected]>
  訳: 亀岡孝仁<takkameoka@kif.biglobe.ne.jp>

最近リリースされた Microsoft Office 2008 for Mac 12.1.3 Update は、重要なセキュリティリスクに対応し、Leopard 内での Office の安定性を改善し、そして幾つかの小さな性能向上を図っている。再度、Microsoft に対して秀逸なリリースノートに賛辞を送りたい、そして同社が、今だ多くのユーザーを持っている Office 2004 に対するバグ修正を引き続き提供し続けているのを見るのはすばらしいことである。

ここでのセキュリティリスクは、攻撃者がユーザーのマシンを乗っ取ることが出来る Excel の重要な脆弱性に関係している。もしユーザーが特別に仕立てられたファイルを開くと、攻撃者はユーザーのシステムを完全にその支配下に置くコードを遠隔に実行できる様にしてしまう。このリスクに関する完全な記述は Microsoft の Security Bulletin から入手できる。

その他の一般的な Office 2008 の変更には、どの Office アプリケーションでもクラッシュさせてしまうバグの修正、PDF を含む書類の作業中の安定性の向上、チャートと画像の表示の性能向上、そして Windows Office アプリケーションの中で PDF を含む書類を開く時に遭遇する問題に対するバグ修正が含まれている。

PowerPoint 2008 では、Leopard 下での安定性が向上し、プレゼンテーションを開こうとすると PowerPoint がクラッシュしてしまうバグが修正された。また、他のアプリケーションからインポートされた画像が URL として現れてしまうバグも修正された。最後に、PowerPoint .ppt 書類が保存される時、正しくないタイムスタンプが付与されるマイナーな問題も解決されている。

Excel 2008 では、計算の信頼性が向上し、チャートの生成が速くなり、Pivot Tables に関する問題が解決され、そして Open/Save のバグも修正された。この最後のバグはメジャーなもので、Excel はある特定のファイルタイプを開くのに問題があり、そして保存しようとする時にメモリーが十分でないと文句を言って来ていた。

Word 2008 での変更はより少数である。Endnote との適合性が改善され、チャートや画像を表示する時の小さな問題が正され、ドイツ語の自動修正バグが修正された。

Entourage 2008 もまたマイナーな修正を受けただけである。カレンダーを複製する事に関する問題が解決され、タイムゾーンがアップデートされ、そして Exchange Server 2007 が走っているマシンとのセキュアな接続を確定する時の問題も解決されている。

Microsoft Office 2008 for Mac 12.1.3 Update は Mac OS X 10.4.9 又はそれ以降と、これをインストールする前にそのコンピュータに Microsoft Office 2008 for Mac 12.1.2 Update がインストールしてあることが必要である。これは 154.4 MB ダウンロードで、 Microsoft の Web サイトから、或いはどの Office 2008 アプリケーションからでも Check for Updates を選択することで起動される Microsoft AutoUpdate ユーティリティ経由で入手できる。

Microsoft Office 2008 for Mac 12.1.3 Update で取り上げられた同じセキュリティリスクは Microsoft Office 2004 for Mac 11.5.2 Update でも取り上げられている。加えて、この小さなアップデートでは Excel 2004 に存在する二つのバグを修正している。

11.5.2 アップデートは主として前述したセキュリティリスクに焦点を当てているが、Excel には重要な変更が加えられている。最も重要な修正は、Always Create Backup オプションを生かした後でネットワークボリュームに .xls ファイルを保存しようとする時起こっていたデータ消滅の問題に対応している。また SUMIF 関数が不正確な結果を返すという問題も解決されている。この二つの問題とセキュリティパッチ以外には、その他の Office 2004 プログラムで個別にアップデートを受けているものは無い。

Microsoft Office 2004 for Mac 11.5.2 Update は Mac OS X 10.2.8 かそれ以降、そして事前にMicrosoft Office 2004 for Mac 11.5.1 Update をインストールしてあることが必要である。これは 13.3 MB のダウンロードで、Office 2004 バージョンの Microsoft AutoUpdate 経由か又は単独のダウンロードとして入手可である。


Adobe Creative Suite 4 出荷

  文: Jeff Carlson <[email protected]>
  訳: Mark Nagata <nagata@kurims.kyoto-u.ac.jp>

Adobe は Creative Suite 4 の出荷が始まったと発表した。これは Photoshop CS4、InDesign CS4、それに Illustrator CS4 を含むプロフェッショナル向けクリエイティブ・アプリケーションのバンドルだ。(この巨大な改訂版にどのような新機能があるかは、2008-09-23 の記事“Adobe、巨大な Creative Suite 4 を発表”をご覧頂きたい。また、Seattle Times 紙に載った私の最新のコラム記事“Adobe's big, new Creative Suite helpful in many ways”(2008-10-11) では、このスイートにおける比較的小さな改良点についても触れている。グラフィックデザイナーや、ビデオプロデューサー、それにあらゆる種類の出版者たちも、きっと今頃はこぞって上司に発注請求を提出しているところに違いないと思う。

私が「巨大な」と言ったのは、ただ単に各アプリケーションに組み込まれた機能の数が多いというだけではない。バンドルには六種類の異なった組み合わせがあって、それぞれにたくさんの種類のアプリケーションが提供されている。ざっと概観してみよう:

すべてのスイートが Bridge CS4、Device Central CS4、それに Version Cue CS4 も含む。また、Production Premium と Master Collection は Dynamic Link も含む。

これとは別に、スイートを購入することなく個々のメジャーなアプリケーションを単独で購入することもできる。


Apple と Microsoft、広告キャンペーンで応酬

  文: Adam C. Engst <[email protected]>
  訳: Mark Nagata <nagata@kurims.kyoto-u.ac.jp>

2006 年以来、Justin Long がリラックスして流行に通じた Mac を演じ、John Hodgman が堅苦しくてストレス一杯の PC を演じた Apple の“Get a Mac”広告キャンペーンは、PC 業界、特に Windows をからかいの標的にしてきた。何年もの間ずっと Microsoft はこれを無視し続けてきたが、2008 年 9 月になって、Microsoft は 3 億ドルをかけたと言われる広告キャンペーンを開始した。このキャンペーンについて Microsoft 内部で流された電子メールによれば、これは「世界中の何十億という人々が現在のそれぞれの生活の中でより多くのことをこなせるようにするために Windows がいかに役立つかを物語る」ことを狙ったものだという。

「視聴者の皆様にコンシューマとしての立場から Microsoft を見直して頂くための手ほどき」として、Microsoft は一連の広告に Bill Gates とコメディアンの Jerry Seinfeld(彼の名を冠したテレビ番組で、彼は一見して Mac と分かる役を演じた)を登場させた。これらの広告は、少なくとも私にとって、あるいは私がこのことについて話し合った人たちのほとんど全員にとって、どうにも意味不明のものであった。最初の広告は Gates と Seinfeld が靴を買うというもので、第二の広告は二人が典型的なアメリカの家庭に住んでいる様子を示しているつもりらしかった。たぶん私が広告に十分通じていないのが悪いのか、それとも私がただターゲット層に属していないだけなのかもしれないが、これらの広告は私には何の意味も為さなかった。(そう感じたのが私だけでなかったのは明らかのようだ。Microsoft は突然このキャンペーンを中止してしまったからだ。でもそれまでに、Seinfeld には 1 千万ドルが報酬として支払われたということだ。)それに続いた“I'm a PC”広告はずっとパワフルかつ効果的で、Apple の広告を独善的なものに見せるだけの力があった。

ある会社の広告が競争相手を直接に攻撃することは別に珍しくもないが、その相手が独自の広告キャンペーンで攻撃し返すことはそれよりもはるかに珍しい。そんなことをすれば相手のキャンペーンで指摘されたマイナス点をかえって固めてしまう恐れがあるからだ。けれども今ここで私たちはさらなる希少の広告分野に足を踏み入れようとしている。Apple は、また新しい“Bean Counter”(札束勘定をする男) 広告を打ち出して、Microsoft が Vista の開発にお金を注ぎ込む代わりに広告に 3 億ドルも使っている、と言わせたのだ。

Apple のこの“Bean Counter”広告は、忠実な Apple ファンのみにしか理解できないであろう出典に依存していると見られてしまう危険はあるものの、この広告は引き続き Apple の Windows Vista に対する批判を力説しているし、Apple 対 Microsoft の広告戦争をフォローしてこなかった人ならば、純粋にその意味でこの広告を捉えるだろうと私は思う。そして、そのことは Apple にとって何も問題ない、と私は確信している。


DealBITS 抽選: PDFpen 4 の当選者

  文: Adam C. Engst <[email protected]>
  訳: 笠原正純<panhead@draconia.jp>

先週の DealBITS 抽選で当選し、SmileOnMyMac の PDF 処理ソフトウェア PDFpen 4($49.95 相当)を受け取ったのは、mac.com の Gilles Brissette、st-kilda.org の Fearghas McKay、それに earthlink.net の Patrick Skelly の 3 名だ。おめでとう! 残念ながら当選しなかった皆さんには PDFpen 4 が 20% 割引となる資格が贈られた。今回応募された 955 人の皆さん、どうもありがとう。また今後の DealBITS 抽選もお楽しみに!


T-Mobile の Google Phone、将来性あるが荒削り

  文: Glenn Fleishman <[email protected]>
  訳: 亀岡孝仁<takkameoka@kif.biglobe.ne.jp>

私は先週 T-Mobile G1 with Google を手に取る機会があった。これは Open Handset Alliance の Android プラットフォーム - 元々 Google によって開発され今でも大きく影響を受けているプラットフォーム - を使ったスマートフォンの初めてのリリースである。この T-Mobile 電話機は主要な Windows Mobile ハンドセットメーカーの一つである HTC によって作られたもので、多くの欠点は見られるものの、大きな将来性を示している。この電話は、米国では 22-Oct-08 に出荷が始まり、翌月には英国に拡大される。(Android に関する更なる背景については、今はちょっと表題が正確ではなくなっているが "Google が夢見る未来の携帯電話は、GPhone ではなく Android" 2007-11-12 を参照されたい。)

Ars Technica で、私はその第一印象を、主として G1 と iPhone (第一、第二世代モデル両方) とを較べながら書いた。この G1 は、2007年6月に最初にお目見えした iPhone そのものが持っていた多くの洗練さに及ばないし、ましてやそれ以来加えられて来た改良には触れるまでも無い。

しかしながら、Android はメーカーが独自の設計をした如何なるハードウェア上でも動き、そして Android は Apple が現在もそして将来も決して許さない様なやり方で発展できることを考慮すれば、修正と成長の余地は大きいのは明らかである。

iPhone は閉じられたプラットフォームであり、開発者は Apple を制約付きアプリケーションのための門番として使う必要がある。これとは対照的に、Android は全てが開かれている:オープンソース (まだ全プラットフォームがそうであるわけではないが、それが目標である)、そして通信事業者は如何なる電話機で如何なるソフトウェアを使って如何なるサービスへのアクセスも許すと確約している。(ネットワークがやられてしまわない様にするための多少の制限は存在するが、現在多くの事業者の制限に較べればこれらの制限は軽微である。)

G1 に付いてくる構成要素は、iPhone, そして一部の BlackBerry や Windows Mobile フォンのものと極めて似たものとなっている。G1 にはタッチスクリーンとスライド型のキーボードの両方が付いており、この組み合わせは電話としては極めて稀である。無線も長いリストになっており - 3G, GPS, Wi-Fi, Bluetooth - そしてカメラもかなりまっとうと言えそうな 3 メガピクセルで自動焦点となっている。この様な構成ではあるが、G1 と Android が抜きん出ている様には見えない。しかし私はこの状態がずっと続くとは思わない。(蛇足かもしれないが、タッチスクリーンでは一本指の動作しか使えない:主に、スライド&タップである。Apple はマルチタッチ技術に関する特許を有しており、これが HTC に対する足かせとなる可能性はある。)

一例を挙げると、G1 に関する私の消え去らない不満は、他の殆どのレビューでも指摘されているが、基本操作を行うための電話機の向きである。G1 をタッチスクリーンと数個のボタンだけで済む使い方ではポートレートモードで使えるが、スライドアウトモードでキーボードを引っ張り出せばスクリーンは自動的にランドスケープの向きになる。これだけだと至極まともである。

しかし、加速度計を内蔵しているにも拘らず、私が使ってみたソフトウェアは皆 (メインのマルチページスクリーン、これは結構賢い、を含んで) 動きの変化を検知しなかった。もしある Web ページをランドスケープモードで見たかったら、キーボードを引っ張り出さなければならない;逆にポートレートモードではキーボードは引っ込んでいなければならない。(私は Market から、Google の現在はベータ中で 全て無料のソフトウェアストア、加速度計がオンになっていて動作しているかを教えてくれるアプリケーションをダウンロードした。結果は、働いていた。)

もっとある。このタッチスクリーンにはガラスキーボードが無い、しかるに iPhone ではこれが情報を入力する唯一の方法である。従って、ポートレートモードでブラウズ中にそのブラウザ上で一語か二語入力してやらなければならない様な場合、キーボードをスライドさせて開かねばならない、そしてその結果ブラウザの向きはランドスケープに変わってしまう、その上で必要な事項をタイプインする。これは面倒だし、元々簡単に変えられるべきものである:確かに Open Handset Alliance はガラスキーボードを加えることには賛成していないが、開発者がその様なサポートを加えたり、或いは Opera の様な Web ブラウザメーカーがその機能をブラウザに付け加え一つの選択肢として提供することも出来るはずである。

明らかに、シームレスな向きの変化に対するサポートを付け加えることは、内蔵のアップスのために改版された Android リリースの中で見る様なものであり、そして開発者がサードパーティプログラムの中で今すぐにでも出来る類のものなのであろう。

最初の iPhone がどれ程完全なリリースに思えたかを思い返すとおかしくなる。その後続いたソフトウェアのリリース、そして第二モデルへの 3G と、サードパーティプログラムのための App Store の重要な追加があったにも関わらずである。(iPhone での最も目立った 手落ちに関することだが、G1 には確かにコピー&ペーストがある。しかし残念ながら、私は未だそれがどこで機能するのか正確に理解する所まで至っていない。どうもそれはあるテキストフィールドの中でしか働かず、そしてキーボードショートカットを必要とするらしい。)

Android と G1 はこれまでの所一つの興味深いプロトタイプの様なものであり、多くのレビューする人達も次に出てくるものを楽しみに甘い点を与えているようである。私も目の前にある電話をレビューする方が良いとは思うが、どうしても、如何に Google とそのパートナー達がこの最初のリリースを越えて来年半ばまでに何光年も進むのかに目は行ってしまいがちである。


デザイン変更を受けた 15 インチ MacBook Pro が解き放たれた

  文: TidBITS Staff <[email protected]>
  訳: 笠原正純<panhead@draconia.jp>

一目見ただけで、Apple の新しい MacBook Pro がプロフェッショナル用の新製品ラップトップであることが分かる。その目玉は、同社が PowerBook G4 時代の中ごろ以来初めて世に出す筐体の大きなデザイン変更だ。Apple は MacBook Air のために開発された製造技術をラップトップラインの他の機種にも適用した。その技術とは、より環境に配慮された製造工程を可能にし、より強くなったけれどそれほど重くはなっていないアルミニウム製ユニボディだ。

新しい 15 インチ MacBook Pro は 0.95 インチ(2.41 cm)の厚みで、重量は 5.5 ポンド(2.49 kg)。前機種(厚さ 1 インチ)と比べてわずかに薄く 0.1 ポンド(45 g)重い。

(Apple は 17 インチ MacBook Pro を 4 GB のメモリと 320 GB のハードディスクに強化したが、15 インチモデルのようなデザイン上の改良を共有させることはなかった。このため、Apple は 17 インチ MacBook Pro を近い将来、おそらく 2009 年 1 月の Macworld Expo でアップデートするだろうと噂されている。)

Apple は、新 MacBook と同様、新しい 15 インチ MacBook Pro において独立したクリックボタンを取り払った。さあ、これからは耐摩耗性のガラスでできたマルチタッチトラックパッド_そのものが_ボタンだ。クリックをするためには単純にトラックパッドを押すだけだ(全面を使うことができる)。ボタンを廃した結果、トラックパッド全体がボタンとなる。そのトラックパッドの面積は以前のノートブックのものより 39 パーセント増大した。Apple はこれをマルチタッチ機能の強化に活かし、今度は 4 本指ジェスチャーを加え、4 本指でスワイプして Expose を起動するといった、より複雑な操作を行えるようにした。この変更がユーザにどのように受け止められるかについてはまだはっきりしていない。ボタンが繊細になりすぎたり、反応が悪くなったり、使いこなせるようにカスタマイズすることが困難になったりといったことが明らかになるかもしれない。おそらく、Apple のエンジニア達は、ユーザがこの乗り換えを簡単に行えるようにと、使い勝手や直感性を改良することに長い時間を費やしたことだろう。

MacBook Pro の Core 2 Duo プロセッサは前バージョンと比べて劇的な変化はない。新モデルは 2.4 GHz と 2.53 GHz があり、2.8 GHz は build-to-order オプションだ。しかし、グラフィックスプロセッサは別の話がある。

MacBook Pro(と MacBook)には 256 MB の DDR メモリを持つ Nvidia GeForce 9400M 統合型チップが搭載されている。Apple によると、この GeForce 9400M は 16 の並列処理グラフィックスコアで 54 ギガフロップスのプロセッサパワーを有しており、前の MacBook や Mac mini にあった Intel 製の統合グラフィックチップの最大 5 倍高速ということだ。言葉を変えると、これは速い。

それだけではない。

MacBook Pro は_別に_256 MB か 512 MB のメモリを備えた 32 グラフィックスコアの GeForce 9600M GT という Nvidia のチップを搭載しているのだ。このラップトップはどちらか一つを使うことができるが、両方を同時に使うことはできないようだ。グラフィックス処理能力を必要とするときにはより逞しいプロセッサにスイッチすることができる。このオプションはどのグラフィックスモードを使うかを環境設定パネルの省エネルギーで設定する必要がある。Better Battery Life か Higher Performance かを選ぶのだ。それからログアウトし、再度ログインすればよい。Mac をリスタートしてもよいが、必要ではない。9600M にスイッチするとバッテリー持続時間がフル充電で 4 時間に減る。統合の 9400M を使っている場合は 5 時間だ(なお、これらは最高の状態の電池を使った場合であることに注意)。

このグラフィックス処理の強化はプロのクリエイティブユーザにとって喜ばしいことだろう。Adobe Photoshop、Apple の Aperture、Final Cut Studio など、ますます多くのハイエンドのアプリケーションが、プロセッサ処理の多くの部分を GPU に振り分けているからだ。それは、ハードコアゲーマーの中で MacBook Pro の立場を良くするかもしれない。(同時に、MacBook Pro のつややかなスクリーンは唯一の選択肢となり、多くのプロを混乱させた。多くのプロを混乱させた。“消滅間近? FireWire とノングレア画面”、2008-10-18 参照。)

その他の MacBook Pro の目覚ましい新機能(新 MacBook や MacBook Air にも見られる)は Mini DisplayPort で、最大 2560x1600 ピクセルの外付けディスプレイを使うことができる。この解像度は 30 インチのワイドスクリーンに該当する。DisplayPort は Video Electronics Standards Association によって提唱された比較的最近のデジタルディスプレイインターフェース規格だ。旧世代の VGA や DVI/HDMI、デュアル DVI ディスプレイで Mini DisplayPort が使える新しいアダプタも出ている。$29(日本では 3,400 円)の Apple Mini DisplayPort-DVI アダプタは新しいMacBook、MacBook Pro、MacBook Air を DVI コネクタを持ったモニタ、例えば古い 20 インチまたは 23 インチの Apple Cinema Display につなぐ。同じく、$29(日本では 3,400 円)の Apple Mini DisplayPort-VGA アダプタは新しいMacBook、MacBook Pro、MacBook Air を標準的なアナログモニタやプロジェクタ、VGA コネクタやケーブルでつなぐ液晶モニタにつなぐ。$99(日本では 11,400円)の Apple Mini DisplayPort-Dual-Link DVI アダプタは新しい MacBook、MacBook Pro、MacBook Air を DVI コネクタを有する、30 インチの Apple Cinema HD Display などの外部ディスプレイやプロジェクタにつなぐ。

その他の MacBook Pro に対する変更点は目立たないが特筆に値するものだ。一つだけ FireWire ポートが残されたが、そのポートは FireWire 800 ポートで、FireWire 400 デバイスにつなぐためにはアダプタを使うか片側が FireWire 800 でもう一方が FireWire 400 のコネクタを持ったケーブルを使うしかない。バッテリーインジケーターライトが底面から右横に移された。嬉しいことに、古臭いうっとうしい留め金は、1 年前に MacBook に導入された磁石式のラッチに追いやられた。もし、MacBook Pro のハードドライブを交換しようとしたことがあるなら、マスター級の技術が必要とされないことに興奮するだろう。ハードドライブは電池のドアの奥にあり簡単にアクセスすることができる。

新 MacBook Pro は二つのモデル構成ですでに購入可能だ。

$1,999(日本では 228,000 円)のベースモデルの仕様:

$2,499(日本では 288,800 円)モデル追加特典の主なものは:

新しいノートブックの発表後、Apple は即座に MacBook, MacBook Pro Software Update 1.2 をリリースした。このアップデートは新しいノートブックにだけ適用され、"外部ディスプレイとの互換性を向上させ、さまざまなソフトウェアの修正を提供します" Apple のリリースノート全部を引用してもこれしかない。このアップデートはソフトウェアアップデート経由でも 45 MB の単独ダウンロードでも利用が可能になっている。


MacBook がメタルとガラスでデザイン一新

  文: TidBITS Staff <[email protected]>
  訳: Mark Nagata <nagata@kurims.kyoto-u.ac.jp>

Apple は先週、デザインを一新した MacBook を発表し、同社で最も売れているノートブック(実際これは史上最も売れた Mac だ)に二年以上にわたってマイナーなアップデートしか出ないという状態を終わらせた。今回の変更により、この MacBook の外見は新型の 15 インチ MacBook Pro とほぼ同一に見えるようになった。両社は共に同じアルミニウムの筐体と LED バックライト付きディスプレイ、ガラス製トラックパッド、それにポートも大部分が共通となっている。ただ、MacBook の方がより小型で軽いだけだ。明らかに、最も大きな変更点はかなり以前から期待されていた通り、プラスチック製のボディからアルミニウムとガラス製に移行したことだ。このボディは一枚のアルミ板から削り出されている。これは強度と耐久性を高めるとともに、このノートブック機の薄さと重量を少しでも減らすためのものだ。この新型の MacBook は重量を半ポンドも減らしてたった 4.5 ポンド (2.0 kg) となり、厚みも 0.95 インチ (2.41 cm) となった。厚みは MacBook Pro と同じだが、重量は 1 ポンド (454 g) 軽い。

MacBook におけるもう一つ大きなデザイン変更は、MacBook Pro と同時に導入された新しいマルチタッチのトラックパッドだ。従来のトラックパッドより 39% も大きくなり、パッド全体がボタンになった。どこでもただ押さえればクリックになる。このトラックパッドは耐摩耗性のあるエッチング加工の施されたガラス製で、複数の指を使った多様なコマンドに反応できる。また、ソフトウェアインターフェイスを通じてクリック領域を指定することもできる。

ディスプレイのサイズは以前と同じ 13.3 インチだが、LED バックライト付きになったことで以前より薄くなり、有毒な水銀を使う必要も排除できた。また、ケースの縁まで、黒いベゼル部分にまで広がることができるので、感覚的に実際よりも広く感じられる。新しい MacBook に搭載されたグラフィックスカードは MacBook Pro や MacBook Air に使われているものと同じ Nvidia GeForce 9400M で、最大 2560×1600 の解像度を持つ外付けモニタを動かせるようになった。これは非常に歓迎すべきことで、Apple が 30 インチ LED Cinema Display をリリースすればなおさら歓迎すべきこととなるだろう。既存の 30 インチ Cinema HD Display に接続するには、$99 の Mini DisplayPort to Dual-Link DVI Adapter が必要になる。

新しい MacBook の一番の難点は、FireWire ポートがなくなったことだ。(これはユーザーを Pro シリーズに移行させる動機を作るためだろうか。)今や FireWire は外付けハードディスクにはあまり一般的でなくなりつつあるが、多くのデジタルビデオカメラやその他の周辺機器には依然として使われている。その上、他の Mac のトラブルシュートをしなければならない私たちのような人にとっては、FireWire がないことはこの新型 MacBook をドライブとして他のコンピュータに Target Disk Mode を使ってマウントすることができないことを意味する。この問題について詳しいことは、今週号の記事“消滅間近? FireWire とノングレア画面”(2008-10-18) を参照して頂きたい。

MacBook は現在入手可能で、二種類の構成がある。$1,299 払えば 2.0 GHz Intel Core 2 Duo プロセッサ、2 GB の RAM (4 GB までアップグレード可能)、160 GB ハードドライブ、スロットローディング式 SuperDrive、Nvidia GeForce 9400M グラフィックスカード、13.3 インチ LED バックライト搭載ディスプレイが付く。一方 $1,599 を払えば、2.4 GHz プロセッサ、250 GB ハードドライブ、それにバックライトキーボードも付く。オプションとして、320 GB ハードドライブや 128 GB ソリッドステートドライブを付けることもできる。

Apple は、白いプラスチック製の MacBook も一種類の構成のみ残し、価格は新たに $999 に下げた。これには 2.1 GHz プロセッサ、1 GB の RAM、120 GB ハードドライブ、それに統合型 Intel GMA X3100 グラフィックスプロセッサが付く。このモデルには FireWire 400 ポートが残る。この白色 MacBook にはハードドライブを大きなものにするオプションもあり、古い 20 インチ Apple Cinema Display や 23 インチ Cinema HD Display を使うこともできる。

これらの新しいノートブック機をお披露目した後で、Apple はすぐさま MacBook, MacBook Pro Software Update 1.2 をリリースした。このアップデートは新型のノートブック機のみに使うもので、Apple によるリリースノートの全文を引用すると「外部ディスプレイとの互換性を向上させ、さまざまなソフトウェアの修正を提供します」となっている。このアップデートはソフトウェア・アップデートからも、45 MB の独立ダウンロードとしても入手できる。


新しい MacBook Air は容量とグラフィック性能が向上

  文: TidBITS Staff <[email protected]>
  訳: 亀岡孝仁<takkameoka@kif.biglobe.ne.jp>

想定通り、MacBook Air は Apple の 残りの MacBook ラインの化粧直しの期間中にも殆ど手をつけられずに残ったが、幾つかの歓迎出来るアップグレードを受けこの細身のラップトップの仕様は改善された。これらの中に含まれるものは、グラフィックカードのアップグレード (Nvidia GeForce 9400M への移行)、120 GB ハードドライブの追加、そして新しい Mini DisplayPort の追加である。$1,799 と $2,499 に価格設定された二つのバージョンがあり、それぞれに 1.6 GHz と 1.86 GHz Intel Core 2 Duo プロセッサが与えられている - ここは変わっていない。値段の高い方のモデルには新しい 128 GB ソリッドステートドライブが付いてくるが、これを 120 GB ハードドライブに落とすと $500 節約できる。この新 MacBook Air は今すぐには出されず、市場に出るのは 2008年11月初旬と見込まれている。

MacBook Air の限られた保存容量と、選択肢は120 GB ハードドライブか 128 GB ソリッドステートドライブかに限られる、そしてより容量の大きい代替のドライブをインストールする適当な方法も無いことから、このマシンはもっと大容量の保存オプションを持つデスクトップ Mac に対する小さな補助的な Mac が欲しいという人達に最適なものとなっている。MacBook Air の細身のフォームファクターは、Apple に標準のラップトップ用の 2.5 インチドライブではなくより小型のハードドライブを選択せざるを得なくしている;この 1.8 インチのメカは (ハードドライブ型の iPod にも使われている) より小型のラップトップを可能にしているが、Apple の購入選択肢も制限している - 現状では、この限られた容量にもかかわらず価格は高止まりしている。

目に付く改良点の一つは、Nvidia GeForce 9400M のお陰だと思うが、今や MacBook Air は外部モニターを 2560 x 1600 ピクセルまでの精細度でドライブ出来る - これは Apple の 30-inch Cinema HD Display の大きさである。これまで MacBook Air がドライブ出来た外部モニターは 1920 x 1200 迄であった。これの示唆するところは、MacBook Air と 30-inch Apple Cinema HD Display の組み合わせは究極の高級組合せという事だろうが、Apple は MacBook Air の build-to-order オプションに如何なるディスプレイも含めていない。思うに、新しい 24-inch LED Cinema Display はまだ入手できず、また Apple は 30-inch LED Cinema Display を (まだ) 提供していないからなのであろう。


新型 24 インチ Cinema Display に LED と多頭ケーブル

  文: TidBITS Staff <[email protected]>
  訳: Mark Nagata <nagata@kurims.kyoto-u.ac.jp>

先週のメディアイベントで、Apple は新しい 24 インチの LED Cinema Display を発表した。これは Apple の外付けディスプレイとしては初めて LED バックライトを搭載したもので、Apple が蛍光管に用いられる水銀を排除するために 2007 年から採用を始めた動きの一環だ。最も重要なことは、Apple が LED Cinema Display をラップトップオーナーに狙いを定めて出してきたことだ。(賢明なる私たちは、Apple の謳い文句「MacBook のためにはじめてつくられた、専用ディスプレイ。」からそのことをはっきりと感じ取った。)その主張を満たすため、Apple はこの LED Cinema Display に iSight カメラ、マイクロフォン、2.1 チャンネルスピーカーシステム、それに3つのコネクタの付いた特殊なケーブルを装備した。コネクタはそれぞれ USB、Mini DisplayPort、それとノートブック機の電源を供給できる MagSafe コネクタだ。その上自己給電式の USB ポートも 3 基装備され、USB コネクタをあなたのラップトップ機に差し込むだけでこれらの USB ポートが使えるようになるが、ラップトップ機に接続されていない状態であってもこれらの USB ポートを使って iPod、iPhone、プリンタ、あるいはカメラなどに電源を供給することができる。

残念ながら、Apple の技術仕様ページによれば、この新型ディスプレイは Mini DisplayPort を搭載した新型の MacBook、MacBook Air、MacBook Pro にしか対応していないらしい。

この 24 インチ LED Cinema Display は従来の機種と同じ 1920×1200 の解像度を持ち、価格は $899、出荷は 2008 年 11 月の初めごろという。

Apple のウェブサイトにはあまり目立った記述がないが、既存の Apple Cinema Display シリーズ (30 インチ、23 インチ、20 インチ) は変更されておらず、引き続き入手可能だ。願わくは、Macworld Expo の頃かその後あたりにこれらについても LED タイプへの移行が実現すればと思う。


Tim Cook の 2008 年 Mac 数字を検証する

  文: Adam C. Engst <[email protected]>
  訳: Mark Nagata <nagata@kurims.kyoto-u.ac.jp>

Cupertino で開かれた Apple のスペシャルイベントにおいて、新機種の MacBook、MacBook Pro、それに MacBook Air を発表するにあたり、Steve Jobs はまず Apple の Chief Operating Officer である Tim Cook を紹介して、Mac の売れ行きがいかに好調であるかを示す数字のいくつかを語らせた。(これを見て、基調講演のこの部分を Jobs が Cook にバトンタッチしたのは他にも Apple 幹部たちがプレゼンテーションを引き継ぐことにメディア側を慣れさせるためではないかという憶測がその場に流れた。実際、Jonathan Ive も基調講演のかなりの部分を担ったし、Phil Schiller は最後の質疑応答セッションに参加した。)

前回のスペシャルイベントの後で私が書いた記事(2008-09-09 の“Steve Jobs の数字を検証する”参照)にある通り、こうした数字は Apple が発表したいと思うものに限られており、独立の第三者が数字を確認することはほとんどない。それでも、その結果は私たちが多くの場合見ているものと同じく良いものだったし、その中で Apple がどれを強調することを選んだかに注目するのは間違いなく興味深いことだろう。

Cook はまず、最新の報告のあった四半期に Apple が合計 250 万台の Mac を販売したと発表するところから始めた。この数字は単に記録を更新しただけでなく、Mac の売れ行きのはっきりとした上向き傾向が以前からずっと引き続いていることを示している。それはコンピュータ業界の他の会社とは対照的なことのようにも見える。Cook は、最近の 15 四半期(つまり 2004 年以来)のうち 14 の四半期で Mac の販売台数の伸び率が業界平均をしのいだと述べた。(ただ 1 つの例外は Apple が Intel ベース Mac への移行をスタートさせた四半期だった。)最近数期の四半期では、Mac の売上げは業界他社の伸び率の二倍か三倍の率で伸び続けている。

Apple からはこの伸びが何か特定の機種によるものという発表はなかったが、Cook は iMac と MacBook Air が類似の PC に比べて「はるかに優れている」と述べ、後の方で Steve Jobs は MacBook が「史上最も多く売れた Mac」だとコメントした。これは Jobs が特に MacBook 自体について話をしているという流れの中での発言で、MacBook/MacBook Air/MacBook Pro ファミリー全体についての話ではなかったが、本当だろうか? でも、そうだとしても私は驚かない。MacBook はずっと以前から相当に大きなパワーと手ごろなサイズのユニットとの組み合わせを実現しているので、私にとってラップトップシリーズの中で最もピンと来るものだからだ。

これらの売上げのお陰で Apple の市場シェアはかなり大きく上昇し、Cook は米国内の小売市場におけるユニット売上げシェアが「一桁の数字」から 17.6% になったと述べた。さらに良かったのが売上高シェアで、Apple は 31.3% を占めた。その理由は Mac が一般的に高価格側の製品に寄っているからだ。同等の機能の PC をずっと安い価格で入手することは通常難しいが、機能の低い PC ならばもっと安い価格で入手できる。金を惜しめばそれなりの物しか入手できないということだろうが、見方を変えればそれは低価格のハードウェアのメーカーがあなたが払っただけのものしか手にできないということにもなる。

Cook はその「米国内の小売市場」というのがどれだけのものを含むのか明言しなかったが、非常に多数の PC が伝統的な小売店ルート以外を通じて販売されている。企業や政府機関、その他の大規模な組織への大口販売があるからだ。Apple が比較の際にこのような形での販売を数えずに自社に有利な数字を出してきたということもあるかもしれない。と同時に、小売店での売上げは多くの場合消費者が自分のお金をどこに注ぎ込んでいるのかの目安になる。この場合は、コンピュータに注ぎ込まれるお金の $3 のうち $1 近くが Apple に行くことになる。

リテール店の Apple Store は Apple の成功の中で特記すべき役割を果たした。Cook によれば、Apple は現在 247 の店舗を 8 カ国に持ち、毎日 400,000 人の来店者があるという。けれども本当に重要な数字は、Apple Store で販売された Mac の 50 パーセントが初めて Mac を使う人だということだ。今日では Apple Store が若者たちに人気の待ち合わせ場所となって、自分に届いた電子メールをチェックしたり相手に自分からの電子メールをチェックさせたりするという利用法が一般的になっている事実を勘定に入れたとしても、それでもこれは圧倒される数字だ。この調子で行けば Apple Store への年間来店者数が延べ 1 億 5 千万人を超えることを考えればもっと圧倒されるだろう。

Cook はまた、教育市場における Apple の伸びについても強調した。はるか昔にはこの分野が Apple の拠点だったが、ここ 10 年くらいは次第に Dell やその他メーカーによる低価格の PC に移行してしまっていた。Cook は Apple が Dell を上回って教育市場におけるラップトップ売上げのトップに位置し、その分野の市場シェアの 39% を占めたと延べた。彼はまた名前は挙げなかったがある有名大学での Mac の市場シェアが 2002 年の 15% から 2008 年の 47% へと増えたことを示すスライドも映写してみせた。昨年、私は Cornell 大学での Mac 使用度について記事(2007-09-13 の“Cornell 大学で Mac の市場シェア上昇”参照)を書き、Apple の市場シェアが 2002 年の 5% から 2007 年の 21% へと増えたと報告した。2008 年はと見ると、全学ネットの ResNet に接続している寮生のうち Mac を使っているのは 27% だった。(奇妙なことに、去年も今年も、学生のうち 6% は Intel ベースの Mac 上で Windows を使っていた。)

Mac 数字の概観の結びとして、Cook は Apple の総売上げがここ数年間でどのように伸びてきたかを示すスライドを映写した。2005 年に 450 万台の Mac だったものが、2006 年は 530 万台、2007 年は 710 万台となった。2008 年は、最初の三つの四半期だけで Apple は既に 710 万台、つまり 2007 年全体と同じ台数の Mac を売り上げているという。

そして、基調講演を報告した今週号の他の記事をご覧になればお分かりのように、Apple が新たに出したラップトップ各機種は、これらの数字を更なる高みに押し上げる以外の何物でもない。

そうそう、もう一つだけ...

イベントの最後に質疑応答のセッションを始めるにあたり、Jobs はこう言ってのけた:「上が 110 で下が 70、これが私の今の血圧だ。Steve の健康状態について今お話しできるのはこれだけだ。もしもこの数字をもっと高くしたいと思うなら、その話題で質問してみるといい。」この誘いに乗った者は一人もいなかった。


消滅間近? FireWire とノングレア画面

  文: Adam C. Engst <[email protected]>
  訳: 羽鳥公士郎 <http://www.ousaan.com/mail/>

先週登場した新しいデザインの MacBook と MacBook Pro には、歓迎すべき(あるいは少なくとも興味深い)変更が多数ほどこされた。ボタンのないガラスのトラックパッド、MacBook Pro の磁石式ラッチ、30 インチ外部ディスプレイを駆動する機能などだ。

しかし2つの、一見すると細かなことが、Mac ユーザーのあいだに不満の嵐を巻き起こしている。MacBook から FireWire を取り除いたことと、MacBook と15 インチ MacBook Pro からノングレア画面の選択肢をなくしたことだ(17インチ MacBook Pro には現在のところノングレア画面の選択肢が残っている)。Apple はシンプルさを追求するあまり行き過ぎてしまったのだろうか。あるいは、単にユーザーが愚痴を言っているだけなのだろうか。そして、FireWire が、まずは MacBook Air から、そして今回 MacBook から取り除かれたということは、このテクノロジーの Mac ユーザーにとっての終焉が始まっているのを目撃しているということなのだろうか。

FireWire はどうなる? -- MacBook から FireWire を取り除いたというのは大きな問題で、多くの人が、これが買わない理由だと宣言している。その替わりに前の世代の MacBook を選ぶか、FireWire 800 を搭載した MacBook Proを選ぶというのだ。中には、MacBook から FireWire をなくすことは、Appleにとって、より高価な MacBook Pro を、ますます高機能になる MacBook と差別化するための手段の1つだと言う人もいる。

FireWire が一般的に使われるのは、外付けハードドライブやデジタルビデオカメラを接続するためだが、ハードドライブは FireWire と USB 2.0 の両方に対応したものが増えているし、Steve Jobs は、TUAW に公開された、 あるユーザーに対する電子メールの返答 の中で、多くの HD ビデオカメラも今やUSB 2.0 を使っていると主張している。ということは、私たちは新しい USB 2.0 の達人たちを愛する方法を学べばよいということなのだろうか。

(皮肉なことだが、Steve Jobs 自身がユーザーの懸念に回答したと同時に、Apple は同社サポート掲示板から、論議を呼んでいる FireWire とノングレア画面オプションの削除に関する書き込みを消去した。もちろん、Apple Discussions Use Agreement にははっきりとこう書いてある。「特に断りのない限り、以下を含む非技術的な話題について投稿しないこと。1. 未発表製品に関する予測や噂。2. Apple の方針または手続きに関する議論、またはApple の決定に関する予測。」そういうわけで、このような削除が行われたとしても、驚くべきことではない。)

残念ながら、USB 2.0 は FireWire を完全に置き換えるものではない。USB 2.0 の名目上のスループットは、FireWire 400 の 400 Mbps(1 秒あたりメガビット)に対して 480 Mbps となっているが、実際に使うときには、オーバーヘッドが増え、理論的には Mac の CPU に頼ることも増えるので、FireWireに比べて大幅に遅くなる。(「理論的には」と言ったのは、8 コアの Mac Proで非公式のテストをしたときに、これは現在のところ、この問題を解決するために投入できる最大の能力であるにもかかわらず、やはり USB のパフォーマンスが非常に悪かったという結果を聞いたことがあるからだ。)もちろん、FireWire 800 は、理論スループットが 800 Mbps なので、さらに速い。

そこで、パフォーマンスだけを取ってみても、FireWire は USB 2.0 に勝っている。しかし、Mac ユーザにとって FireWire が問題となる本当の理由は、私が思うに、Target Disk Mode だ。FireWire を搭載したどんな Mac でも、Tキーを押しながら起動すると、Target Disk Mode になり、外付けハードドライブとまったく同じように動作する。これはトラブルシューティングに極めて有効なことが実証されている。手に負えない Mac を動いている Mac からTarget Disk Mode で起動し、故障しているかもしれないハードドライブのトラブルシューティングをしたり修理をしたりできるからだ。また、画面が壊れてしまったなどの問題がある Mac を Target Disk Mode にして、機能している Mac からハードドライブの作業をすることができる。特に、Mac の光学ドライブが機能しないときは、Target Disk Mode が命綱となる。

Apple の路線は、もう Target Disk Mode は必要ないということのようだ。オーストラリアのサイト APCmag.com の記事に、Apple Australia のハードウェア製品マネージャー Geoff Winder の言葉が引用されているが、それによると、Time Machine と Migration Assistant(これは FireWire に加えてUSB、Ethernet、AirPort で動くようになった)が Target Disk Mode の主な機能を置き換えると Apple は信じている。これは希望的観測というものか、でなければポイントをはずしている。Mac には確かに問題が起こるし、そのような問題をすばやく解決するのに Target Disk Mode ほど便利なものはない。

個人的には、私はすべてのハードディスクで、起動に関するトラブルシューティングが必要な状況に遭ったときには、Target Disk Mode を使っている。そして大企業では、Target Disk Mode を使えば、サポート技術者はユーティリティを搭載した Mac ラップトップを動かない Mac のところに持っていけば、ほとんどすべての Mac であらゆる種類の診断とトラブルシューティングを実行することができ、そのような機能のない PC と比べて、大幅にサポートのコストを削減することができる。

短所を言えば、Apple が支持する FireWire は、汎用にはまったくならなかった。その理由は主に、初期のライセンス料と部品のコストが高かったからだが、その両方とも今では下がっている。FireWire をコンピュータで一般的に使っているのは Apple と Sony だけだし、何年ものあいだ FireWire だけに頼っていた機器というのはデジタルビデオカメラだけだった(多くのオーディオインターフェースも FireWire に依存しているが、PCI や USB のオーディオインターフェースもある)。Intel の USB 2.0 は、ほとんどの技術的指標で FireWire ほど柔軟でも高速でもないが、ほとんどの目的には十分で、それでいてコンピュータや電子機器に安価に組み込むことができる。

Apple の観点から言えば、FireWire を削除するというのは、技術革新における同社の役割を鑑みれば、痛手に違いないが、Apple は、技術的に優れた規格を支持することよりも、部品のコストを下げ、互換性を向上することに、より関心がある。iPod は、FireWire のみの機器として出発したが、ほとんどがFireWire を備えていない PC に簡単に接続できるように、Apple は USB 2.0のサポートを追加した。Mac にも USB 2.0 サポートが追加されると、Appleはしだいに iPod から FireWire サポートを取り除き、それによって間違いなく、Apple にとっての製造コストも下がった。

Apple に、FireWire の替わりに eSATA をサポートするようにと求める人もいる。SATA の理論スループットは最大 3 Gbps、すなわち、実際の転送で 300 MBps(1 秒あたりメガバイト)だからだ。(SATA すなわち Serial ATA は、ほとんどのハードドライブやほかの大容量ストレージ機器で使用されているデータ転送バスだ。eSATA というのは SATA を外付け機器に拡張したもので、ほとんどは異なるコネクタを使用する。)eSATA はホットスワップ可能にもなるし、ハードドライブを接続するには歓迎すべきかもしれないが、SATA は一般的に大容量ストレージ機器を目的としており、ビデオカメラやオーディオインターフェースなどを接続するという FireWire の役割を適切に引き継ぐことはできそうもない。(残念ながら、私たちの友人の Dan Frakes が Macworldに書いているように、eSATA は現実には必ずしもホットスワップ可能ではない。)

そうではなくて、Apple が USB 3.0 をサポートすることを求めるべきかもしれない。これはどうやら規格がほぼ定まっており、4.8 Gbps の理論スループットを実現する予定だ。Apple は、主要なメーカーとしては初めて、1998年にさかのぼる iMac で USB 1.0 をサポートしたのだから、2009 年か 2010年に USB 3.0 の仕様が確定してチップの出荷が始まってすぐに USB 3.0 に切り換えることを計画しているというのも、考えられないことではない。ただ、USB 2.0 で Target Disk Mode が動かない原因となっているアーキテクチャ上の制限が、USB 3.0 で対処されるかどうかは分からない。

光沢かつや消しか? -- 新しい MacBook と 15 インチ MacBook Pro に関するもう1つの主要な論点は、光沢画面かノングレア画面かの選択肢がなくなったということだ。すべてがいつでも光沢になった。

なぜ FireWire が重要なのかを説明するのは簡単だが、ノングレア画面の選択肢が取り除かれたことは、よりぼやけている。(だじゃれを言うわけではないが、ここで本質的に重要なのは、ぼやけさせるかどうかということだ。画面を偏光フィルムによってつや消しにするということは、反射してユーザーの目に直接入ってくる光の強度を弱めるということだ。)

ほとんどの人は、光沢画面の色のほうがより明るく、生き生きとしていて、黒は深く白は明るく、文字もくっきりしていると考えているようだ。光沢は見た目がよい。また、私はまだ確認できていないのだが、光沢画面はノングレア画面と違って完全にリサイクル可能だと聞いたことがある。

光沢画面の欠点を言えば、汚れが目立ちやすいし、反射が非常に大きな問題となる。もちろん、画面の角度を調節して反射を抑えることもできるが、私が光沢画面の MacBook で経験したところでは、空港のように明るく照らされた環境で作業する場合、反射を抑えるのがほとんど不可能ということがたびたびある。

しかし、もっとも激しい反応をしているのはプロの写真家たちだ。その多くが言うには、光沢画面では、見る角度によって色やコントラストが大きく変わるので、正確な色調整ができない。この問題については議論もあるようだが、いずれにせよ、これは写真家にとって重要な関心事であることは明らかだ。

どうすればよい? -- このような変更に立腹している人たちが、黙って座っていなければならないという理由はまったくない。Apple の Product Feedback ページに行き、Apple にあなたの考えをそのまま伝えよう。

しかし、正直に言って、Apple が現行の製品群に変更を加えることはないだろうし、次の大幅な改定で変更されることもほとんど考えられない。変更はあるかもしれないが、いったん切り捨てたテクノロジーを、Mac コミュニティーが大声で嘆いたからといって、Apple が復活させるということは、一毫たりとも想像できない。

Apple はこれまで、過去を捨て去ることを恐れなかったし、MacBook とMacBook Pro の新モデルが急激に売り上げを落とすことがなければ、不満を抱えた私たちはただ変化を我慢して受け入れるしかないのかもしれない。運がよければ、Apple やほかの会社が、製品をさらに改良するかもしれない。USB で動作する Target Disk Mode とか、反射防止画面フィルムとかだ。そうすれば私たちの懸念も軽減されるだろう。


TidBITS 監視リスト: 注目のソフトウェアアップデート、20-Oct-08

  文: Doug McLean <[email protected]>
  訳: Mark Nagata <nagata@kurims.kyoto-u.ac.jp>


TidBITS Talk/20-Oct-08 のホットな話題

  文: Jeff Carlson <[email protected]>
  訳: Mark Nagata <nagata@kurims.kyoto-u.ac.jp>

(顧客サービス物語、PDF 業界版 -- 二つの会社がそれぞれどのようにバグ報告に応えてくれたかという Adam の記事に対して、バグに早く対応することが実際その製品の開発の邪魔になるのではという質問が出る。(メッセージ数 3)

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