TidBITS: Apple News for the Rest of Us  TidBITS#967/02-Mar-09

今週はウェブブラウザに関する大きなニュースが二つある。まず Apple が Safari 4 の公開ベータ版をリリースし、新しくなったタブのインターフェイス、グラフィカルな Top Sites 表示、それにブックマークと履歴のための Cover Flow 機能を披露した。Doug McLean が、この Safari 4 の新機能を概観するとともに、Omni Group がその OmniWeb ウェブブラウザ(と他に3つのプログラム)を無料化したというニュースも伝える。Matt Neuburg は、自分が最もお気に入りのキーボードをレビューする。Unicomp 製の完璧にレトロ調の Customizer 104 で、かの伝説の IBM 製 Model M キーボードのフィーリング再現を目標にデザインされている。今週号の他の記事では、iPhoto 用のフォトブックテーマを徹底的に解説した素晴らしいウェブサイトを Adam が紹介し、Glenn Fleishman が Amazon の新製品 Kindle 2 電子ブックリーダーを実地に使ってみてレビューする。今週の TidBITS 監視リストでは 1Password 2.9.9、Photoshop 11.0.1、MacSpeech Dictate 1.3、Corel Painter 11、それに Cocktail 4.3.1 を紹介する。

記事:

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Liz Castro の iPhoto Book Themes サイト

  文: Adam C. Engst <[email protected]>
  訳: Mark Nagata <nagata@kurims.kyoto-u.ac.jp>

実は、私は iPhoto から印刷する方法としてはハードカバーのフォトブックよりもカレンダーの方が好きだ。その理由は単純で、私が一生懸命に時間を費やしてカレンダーを作れば、それがきっと丸一年間(わが家の壁に、あるいはそれを誰かにあげた場合にはその人の家に)貼っておいてもらえるだろうからだ。それとは対照的に、iPhoto のハードカバーのフォトブックは確かに出来映えは素敵だが、私の経験から言ってフォトブックは何度か目を通された後はたいてい本棚の中にしまわれてしまう。もちろん、それは悪いことではない。特別の旅行やイベントなどは、本の中に記録しておくのがベストであって常日ごろ見るようなものではないだろう。

けれども正直言って、私にはフォトブックを敬遠する理由がもう一つある。フォトブックは、作るのに結構手間がかかるのだ。少なくとも、何でもかんでもきちんと仕上げなければ気が済まない私のような性格の人にとってはこれが大きな問題だ。フォトブックに入れたいと思う写真をすべて選んで、それから書き添えるべき言葉がもしあればそれもすべて書き終えたとしても、iPhoto はまだまだ多種様々なテーマを提供した上に、それぞれのテーマごとにまたたくさんのレイアウトのオプションを提供してくる。時には、私はどのレイアウトが一番良いのか選ぶだけでも頭が混乱して、その前にちょっと休憩して電子メールを読んだり何か気楽にできることをしようか、という気になってしまう。

もしあなたが iPhoto でフォトブックを作ろうかと考えているなら、Peachpit で私の同僚として本を著述している Liz Castro が素晴らしく役に立つウェブサイトを作った ことをご紹介したい。彼女はこのサイトで、iPhoto のフォトブックテーマの一つ一つについて、とことん詳しく説明している。それぞれのテーマごとに、iPhoto からのスクリーンショット画像を使って、外側のレイアウト、内側のレイアウト、そして可能な背景も、すべて要約している。

それから、彼女はさらに実例へと進む。個々のレイアウトオプションを、表紙、前書きページ、そしてそのテーマについて最大何枚の写真を一ページに入れるかに応じて可能なページの種類ごとに、実例で示している。どのページもたくさんのことを網羅しているが、iPhoto で可能なすべてのオプションを自分でいちいち確かめるよりも、このサイトですべてをぺらぺらとめくってみる方がずっと楽だ。

Liz は当初、iPhoto の旧バージョンでの各種テーマを説明するためにこのサイトを始めた。だから iPhoto '08 用のページもまだそこにあるが、彼女はそれらすべてを iPhoto '09 用にアップデートさせたページも完成させた。大体において iPhoto '09 におけるフォトブック関係の変更点は Travel テーマについてのものが中心だが、どのテーマについても前書きページ(実際これは単なるテキストページであって、ブックの中のどの場所に置くこともできる)や地図ページを加えることが可能になったことも忘れてはならない。とは言っても、やはり最も多数のカスタマイズのオプションを提供しているのは Travel テーマだ。Liz はまた、新しく加わった地図ページの使い方についてもいくつか便利なヒントを書いてくれている。

そういうわけで、もしもあなたが iPhoto でたくさんの数のオプションに圧倒された気がしたなら、あるいはフォトブックが iPhoto '09 でどう変わったかを知りたいだけの人も、ぜひ Liz のサイトを訪れてみるとよい。


OmniWeb とその兄弟、無料となる

  文: Doug McLean <[email protected]>
  訳: 細川秀治 <hosoka@ca2.so-net.ne.jp>

Omni Group は、最近 同社のブログ で、これまでは有償であった4種の市販プログラムを今後はなんら制限なしに無償でダウンロード可能にした、と発表した。これらの製品には、好評のウェブブラウザ OmniWeb、画面効果とプレゼンテーションツールの OmniDazzle、ディスククリーンアップツール OmniDiskSweeper、メモリ最適化ツール OmniObjectMeter が含まれている。

OmniWeb はこれらのアプリケーションの中で最も広く使われており、これまでは 14.95 ドルで販売されていた。Safari と同様、OmniWeb も Apple の WebKit レンダリングエンジンを利用しており、そのためページの表示能力は Safari 3 と類似のものが提供されている。コメントに応えて、Omni Group CEO の Ken Case は、同社は WebKit の組み込みバージョンを定期的に更新する計画であり、将来の 5.9.x アップデートには、より新しいバージョンの WebKit が含まれる予定であると確約した。

OmniWeb には革新的な特長(サイト固有の環境設定、グラフィカルタブ、恒久的なワークスペース、伸張可能なテキストエリア・フィールドなど)があり、これらの特長が熱心な支持者達をこのブラウザに惹きつける魅力になっていたのだが、OmniWeb は、Mac の主要ブラウザである Safari や Mozilla の Firefox を相手にした困難な競合に直面していた。Apple と Mozilla のどちらもはるかに多くの開発リソースをこの戦いに注ぎ込むことができ、そして Safari と Firefox の無料配布の作戦は、OmniWeb が特定の分野で秀でていたかもしれない技術的優位性をすべて影の薄いものにしてしまった。

今や OmniWeb は無料となったので、使用者の大幅な増加が見込めるかもしれない。これは確かに大変素晴らしいブラウザであって、これまでは単に無料の対抗製品に競合できるまでの力がなかっただけだ。我々はウェブブラウザについて関心を持つあらゆる人に働きかけて、OmniWeb を試してみるよう強く勧奨しよう。何といっても、一筋縄でいかないウェブサイトをチェックするために複数のブラウザを持つのは、多くの場合役に立つのだ。

スタッフとリソースの限られた小企業として、Omni Group は必要なだけの開発およびマーケティング人員をこれらの製品に投入することはできないと決断した。けれども、これらをただ放置するのではなく、無料で配付することに決めた。しかし、同社ははっきりと言明している、プログラムは中止されたのでも放棄されたのでもない。また彼らは、もはや積極的な開発が進行中であるとは考えてないが、Omni Group は可能な限り製品をアップデートしたいと望んでおり、Omni Group の Linda Sharps はこう述べた。「我々はこれらの製品に追加したいと思うアイデアをまだまだたくさん持っている。将来いずれかの時点で、その実現のためにより多くのリソースを割り当てられるようになることも可能と思う。」

一部のユーザーは、これらの言葉にもかかわらず、フリーウェアへの移行はこれらのプログラムの開発を減速させて中止に追い込み、おそらくそれらを忌まわしい“メンテナンスモード”に放置するだろう、と懸念している。Omni Group ブログでの幾つかのコメントでは、同社がこのプログラムをオープンソースにして、より広いコミュニティでそれらの進化を継続すべきだ、と提案している。プログラムのオープンソース化について尋ねたとき、Case はこう応えた「我々はフリーウェアにすることに加えて、これらのプログラムの何れかまたは全てをオープンソースにすることを検討した。しかし、良いオープンソースのプロジェクトには、それでもなお、良いプロジェクト管理、寄稿のフィルタリング、などに人員が必要で、それは我々が当社の他の製品に意識を集中する正しい処方箋ではない! しかし何れにせよ、我々はそのアイデアを排除するものではない。」

オープンソース版についてはまだ結論は出ていないが、OmniWeb の忠実なファンは、新しいバージョンが現在制作中であることを知って慰められているのかもしれない。Case は言った「我々は OmniWeb 6.0 がまだ出ていないからというだけの理由で OmniWeb 5.x を無料化したのではない。我々は OmniWeb 5.9.x アップデートでの作業をまだ継続しており、同様に、より大きな 6.0 アップグレードも開発中だ - それらは全くフリーになる。」

Sharps はまた、このフリーウェアへの移行はなんらビジネス局面での深刻な問題を示していない、と指摘する。事実、Sharps によれば、2008 年は同社の“これまでで最高の年”であり、同社は着実に成長を継続しており、新たな開発者を捜して求人を実施するほどだ。これら新たに無償になったプログラムでさえ、同社のポジティブな広告として経常指標に貢献するだろう。これで惹きつけた新しいユーザー達がそれから同社の製品(Getting Things Done の発想によるOmniFocusOmniGraffle ダイアグラム・プログラム、好評の OmniOutliner、プロジェクト管理プログラム OmniPlan など)を発見するだろう。


Apple が Safari ベータ版をリリース

  文: Doug McLean <[email protected]>
  訳: 細川秀治 <hosoka@ca2.so-net.ne.jp>

Safari ウェブブラウザの大きなアップデートをしないままで1年以上が経過した後、今度 Apple は Safari 4 公開ベータ版をリリースした。それには、数多くの新機能、インターフェースの増強、パフォーマンスの向上、が盛り込まれている。

主要な変更点には、最もよく訪れたサイトを一覧したりそこへ接続したりできる Top Sites 機能の新設、ブックマークや履歴に Cover Flow を統合、タブの位置をウィンドウの最上端に配置替え、WebKit レンダラーに新しい Nitro Engine を採用したことによる JavaScript の処理速度向上、およびデベロッパツールのフルセットがある。

Safari 4 リリース後 Twitter 上での簡単な調査は賛否両論を示しており、熱烈な賛辞もある一方で、見つからない機能やバグの多い挙動についての不満も同じくらいあった。このアップデートが当たりなのか外れなのか言明するにはまだ時期尚早だが、Safari 4 は語るべき多くの話題を提供している。

Top Sites -- たぶん間違いなく Safari 4 で最も劇的な新機能だ。Top Sites では、ひと目見ただけで一覧できるジャンプ台が提供されており、ここからあなたの最も頻繁に訪れるサイトにジャンプできる。このビューは、新しいブラウザウィンドウを開いたり、ブックマークバー上で新しい Top Sites アイコン(黒い長方形のグリッド)をクリックすると、表示される。Top Sites が開かれると、ブラウザ内のウィンドウに、あなたが最もよく訪れたサイトのスクリーンショット・サムネイルが(そのサイトの最新の外観で)格子状に配置されて表示される。

safari4_topsites

このグリッドには編集モードがあり、グリッド内でサムネイルを移動したり、サイトを画鋲で特定の位置に固定したり、グリッドのサイズを3種類(サムネイルを 6、12、24 コマで表示)から選択したりできる。また、Top Sites ビューでは、サムネイルの右上に青地に白い星を表示して、そのサイトがその後更新されたことを知らせる。Top Sites にあるこれらのミニチュアウィンドウのどれかをクリックすると、ブラウザタブでそのウィンドウが前面に来て、そのサイトを表示する。

私は、Top Sites 機能の見映えがとても素晴らしく思えるし、そのインターフェースからサイトを開いて楽しんでいるが、その根底にある考え方には疑問がある。基本的に私は自分のトップサイトが何であるかは、Safari が教えてくれるのではなく、自分で制御して決めたい。Edit ボタンをクリックするとこのビューからサイトを削除したり、サイトを特定の位置に固定したり(例えば、Google ニュースが常に左上に表示されるように)できる。しかし、あるサイトを削除すると Safari が選んだサイトがその上に置き換わる。なぜ私が望むサイトの URL を単にタイプして選択できないのだろうか?

ここでの問題は "Top" という言葉の中にある。私は自分のお気に入りのサイトが表示される機能を望んでいるのだが、Apple が私に提供するのは私の最もよく訪れたサイトが表示される機能で、Apple はそれが同じことだと考えているようだ。これは一部のユーザーには疑いもなく当てはまるだろう(例えば私の母は、ほんの一握りの同じサイトを決まって訪れて、他のサイトに行くことは滅多にない)。しかし、いつもウェブサーフィンに夢中になっている人々やバリバリのインターネット調査マンはどうだろう? もし私が、新しいソフトウェアの研究に1日を費やすと、その研究で訪れた幾つかのページが真のお気に入りサイト(私が容易にアクセスしたいと思っているサイト)に取って代わるのはあり得ることだ。特にブラウザの履歴を私が習慣的に空にするなら、これは本当にそうなるだろう。

おそらく、しばらくすれば、私の Top Sites は私がよくチェックするサイトになるだろう。しかし私が頻繁に訪れないサイトでも、この Top Sites に入れて容易にアクセスできるようにしたいと望んでいるとしたらどうだろう? 例えば、稀にしか更新されないサイトに私が興味を持っていて、そのサイトに新しい情報が投稿されたらすぐ見に行く方法としてこの Top Sites からアクセスできるようにしたい場合だ。要するに、私が、Safari に自分のトップサイトが何であるかを伝えたい(Safari が、私に伝えるのではなく)。

そのようにする、ある曖昧な裏技があることが分かった。ブラウザウィンドウをひとつ開いて、あなたが Top Sites に表示したいサイトを読み込む。それから別のウィンドウで Top Sites を立ち上げ、Edit ボタンをクリックしておく。最後に、はじめのウィンドウから URL をドラッグして、Top Sites のサムネイルのひとつの上に落とし、それから画鋲ボタンをクリックしてそのサイトをその位置に固定する。

望むべくは、Safari 4 の完成バージョンで、どのように Top Sites が表示されるかを処理するより優れた方法(Make Top Site のようなメニュー項目)が提供されないだろうか。それでもやはり、頻繁に訪れたサイトを把握する視覚的な方法として、この機能は多くの可能性を胎んでいる。

Cover Flow -- Safari へのもうひとつの主要な追加は Cover Flow ブラウジングをブックマークや履歴に組み入れたことだ。Finder や iTunes と同じように、この Cover Flow により、あなたの履歴やブックマークリストを、ブラウザページのスナップショットにしてページをめくって眺めることができる。Safari にはまだトップメニューバーからのクラシックなドロップダウンメニューがあり、そこであなたの最近の履歴やブックマークのテキストリストを見出すことができる。あなたがこれらのサイトをフルビューで開くか,ブックマークバーのブックマークのアイコンをクリックすると、新しい Cover Flow ビューを見ることができる。

しかし、私は Cover Flow をブックマークの閲覧に利用して役立つかどうかについては懐疑的だ。けれども、履歴の閲覧に利用した場合はかなり意味があると思う。どちらの場合も、私は Cover Flow が私の検索を高速化するかどうかを判定するのに興味がある。(標準的なテキスト主体のリストよりも疑いもなく見映えは良いのだけれど)

通常、私は自分の履歴を検索するときは、それほど頻繁に訪れていないサイトを探している。サーフィンや検索をしている間に見付けた、名前を覚えていない事柄だ(そうでなければ、おそらくそれらを単に Google 検索するだろう)。だから、私の履歴を検索する場合、私はとても視覚的な人間なので、少なくとも私にとっては画像ファイルを見るのが、より速く検索できるやり方だろうと思う。履歴のリストから正しいような気がするサイトを開いて、発見したのは私が考えていたものと違うだけだったことは、数え切れないほどある。画像ベースの Cover Flow はこの種の問題を解決してくれるだろう。

けれども、Cover Flow を私のブックマーク検索に利用するのは、検索にもっと時間が掛かるように思われる。それは、この2つの状況に根本的な違いがあるためだ。私のブックマークの中で、私はたいてい自分が探しているサイトの名前を知っている。この場合、画像を優先した適用の検索は、どうも不利なようだ。Cover Flow を使って iTunes を検索するのはとても便利だが、これはアルバムのカバーが互いにがらりと違って見えて、しかも認識できる名前が盛り込まれているからだ。しかし、殆どのウェブサイトの外観は、互いにそれほど大きな差異はない。私が Cover Flow を使って私のブックマークをざっと急いで調べた場合、多くのページ(特にブログなど)はどれも殆ど同じように見える。このような場合、語句のリストがあってそれらをスキャンするとより役に立つ。なぜならサイト名はそれらの外観よりも目立って違っているからだ。

タブ -- 新しいタブは、通常タイトルバーと呼ばれているウィンドウの上端に配置され、これによりページの表示に広い面積を確保している。上端に配置することで、タブがうまく機能し、すっきりと無駄のない外観を提供している(タブを最初にこの位置に配置したのは Google の Chrome だ)。タブブラウズの大の愛好者として、専用のタブバーを廃したことも、タブの位置を上端に移動したことも、私はさほどこだわらないが、しかし、タブ自体のサイズが変化することに関心を持っている。

Safari 4 で個々のタブのサイズは、現在ブラウザで開いているタブの数によって決まる。したがって、2つのタブが開いている場合は、それぞれトップバーの半分の幅を占める。4つのタブを開いている場合は、それぞれトップバーの1/4の幅を占める。これは Safari 3 や Firefox とも大きく違っている点だ。それらのタブは同じ幅で、新しいタブは右側からタブバーがいっぱいになるまでタブバーに追加される。タブバーがいっぱいになると、タブは幅を縮小され、ある程度縮小された後三点リーダが現れそれをクリックすると開いているタブをスクロールできる。タブサイズの一貫性により、タブの位置を素早く見付けたり閉じたりするのが容易にできる。Safari 4 のタブサイズが変化することは、新しいタブを開いても、同様にタブを閉じても、タブの位置が僅かに変化することだ。この違いは僅かかもしれないが、あなたをかなりまごつかせて動作が遅くなる。

もうひとつ困ったことは、タイトルバーが無くなったことで、(ほとんどどの Mac アプリケーションもそうなっているのだが)現在のウィンドウの定位置に単一の名前が表示されなくなったことだ。さらに、タイトルバーをクリックすると、予期しないウィンドウが開くことがあり、これはタブをクリックすることは、Safari を最前面に切り換えるだけでなく、そのタブを表示することになるからだ。

Nitro Engine -- Apple はその新しい Nitro Engine による JavaScript の実行が Internet Explorer 7 よりも 30 倍速く、Firefox 3よりも 3 倍以上速く、Safari 3 よりも 4.2倍速いと主張している。これは iBench と SunSpider を使ったベンチマークテストの結果だ。Apple は同様に、HTML パフォーマンスにおいても Safari 4 は、他のブラウザに勝っていると報告しており、ページの読み込みは Internet Explore や FireFox のいずれよりも 3 倍速いそうだ。

私自身のテストおよび Twitter での事例証拠によっても、Safari 4 は Safari 3 や Firefox 3 よりも顕著に速いと言える。これは、JavaScript の多いページで特にそうだ。更新された WebKit はまた、HTML 5 や CSS 3 をサポートするようになり、Apple はまた「Safari 4 は、ダイナミック Web アプリケーションのために特に設計された CSS、JavaScript、XML、SVG などの Web 標準にブラウザがどれだけ適合しているかを検査する Web Standards Project (WaSP) のオンラインテスト Acid3 に初めて合格したブラウザでもあります。」と謳っている。

デベロッパツール -- Safari 4 は付属するデベロッパツールのセットも増強し、開発者や Web デザイナーが、ページ構造を調査、JavaScript をデバッグ、オフライン・データベースの検査、コードのテスト、をできるようにした。これらのツールが歓迎される付録であるにもかかわらず、Safari 4 の developer seed バージョンの中で入手可能になると広く報告されていた Save as Web Application 選択項目は今回見当たらない。

その他の変更 -- さらなる変更点には、アドレスバー内の幾分不適切な Snap-Back ボタンが再読込ボタンに替わったことがある(ページの読み込み中に再読込ボタンは回転歯車に置き換わり、その上にカーソルを置くと、ストップボタンに置き換わる)。このように新しいインターフェースがさらに簡素化さている。嬉しい追加は、単なるテキストズームの代わりにフルページズーム(Command +/- でアクセス)、更新バージョンの Smart Address Field と Smart Search Field (気の利いた検索の提案が提供される)、そして最後に、あなたをより安全に危機回避する強化されたフィッシング詐欺保護やマルウェア保護だ。

ダウンロードとインストール情報 -- Safari 4 は、公開ベータ版であることを心得ておこう、そのため実行が不安定になるかもしれない。さらに、Safari 4 はブックマークを(Safari 3 のような HTML ファイルでなく)plist ファイルとして保存している。そのため、旧式のブックマーク同期ツールは(最近リリースされた Foxmarks のブックマーク同期ツールは Safari 4 を大幅にサポートしているのではあるが)、このバージョンではうまく働かない可能性がある。インストールする前に、あなたのブックマークをバックアップするよう気を付けておこう。これも気を付けることだが、このアップデートはインストール直後にコンピュータを完全に再起動する必要がある。

Safari 4 は 31.7 MB のダウンロードだ。このアップデートを使用するには、Mac OS X Leopard バージョン 10.5.6 または Mac OS X Tiger バージョン 10.4.11 が必要だ。Leopard で使う場合は、あらかじめセキュリティアップデート 2009-001 をインストールしておく必要がある。


Kindle 2 デザイン改良、機能はそのまま

  文: Glenn Fleishman <[email protected]>
  訳: 亀岡孝仁<takkameoka@kif.biglobe.ne.jp>
  訳:

Amazon の Kindle 2 はそもそも Kindle 1 であるべきであった。これは左手で書いたお世辞(私は左利きだが)かも知れないが、私は初代の Kindle 電子本リーダーは、デザイン、操作性、そして取り扱いに難点があると思っていた。

基本的に、Kindle 2 は前のリリースから同じソフトウェア、表示形式、コンテンツに対する制限、そして技術を受け継いでいる。いずれにしても、この新しいバージョンは自分自身の正当性をより良く主張している。

機能は形の変化に従う -- この Kindle 2 ($359) は最初のモデルの考え過ぎのデザインから抜け出して、より平らで、薄く、より伝統的な、角を丸めた長方形の形となっている。奇妙な玉虫色の垂直選択バーの代わりに、これはディスプレイの更新遅延問題を避けるために設計されたものだが、ナビと選択のために小さな四角のジョイスティック突起が付いている。これは大幅な改善である。

Kindle2

Amazon は、小さなキーボードをより分かり易い、単純なレイアウトに再配置した:通常の配列の丸いボタンと底辺にある細長のスペースバーである、初代の Kindle では人間工学的なスプリットキーボード風のものであった。

original_kindle

これらの変更は見かけだけのものではない。お陰でこの機器はバージョン 0.5 プロトタイプのような感じから、リリースに値する磨きと出来栄えを持つものになった。

次のページ、前のページ、或いはホーム、前の動作に戻る、そしてコンテキストメニューを呼び出すナビのために再設計されたボタンも大幅に改善された、もっとも大きさはより小さくなってはしまったが。初代の Kindle では、正しいボタンを押すのは難しいこともあり、間違って違った動作を始動させてしまいがちであった。

Kindle 2 には 2 GB のメモリが内蔵されており (更に追加するオプションはない)、その殆どが初期状態では未使用となっている。Amazon では、これで 1,500 の本が収納出来るとしている。内蔵の電池はユーザーが取り替える事は出来ないが、Amazon は電池寿命は改善されていると言っている。

Kindle 2 は USB ケーブルでも充電出来、Amazon は粋な iPhone 似の格好良いアダプタを付けている。これは Apple のものとの違いははっきり分かるが同じ様にコンパクトである。

T-Mobile が Android-based G1 電話をリリースした時に私はそのメーカーの HTC が電源アダプタに何の配慮もせず、ただ単に安物の一般的なものを付けてきた事に文句を言った。Amazon は明らかに Apple と同じ側におり、小さな気配りが大きな配当をもたらすことを信じている。

階調を上げる -- E-Ink ベースのスクリーンは引き続き Kindle のスターであり、Amazon の言う所によれば画面の更新が 20% 早くなって改善されていると言う。ピクセルが書き換えられる瞬間が初代の Kindle よりも気にならなくなっているのは私にも感じられる。Amazon と E-Ink はまた、選択、回転する進行アイコン、そしてハイライトを表示するためスクリーンの小部分がより高速に書き換えられるのをより簡単にもした。

スクリーンのグレー階調は 4 から 16 のレベルになった。これ程少ない階調でも画像の表示はどれ程劇的に改善されるのかを見るのは驚きに値する。少ない表示色数でより多くの色数を表現するためのディザリング技術は 4 階調ではどうにか効き始めるが、これが 4 倍になると、その効果はより大きくなる。

E-Ink や他の会社もその紙の様なディスプレイの改良版を作るのに必死になって働いている。そしてもうちょっと密度の濃いスクリーンでより高速の画面更新、そして - 敢えて夢物語を言わせて貰えば - 256 のカラーかグレーが実現できれば、より汎用の機器が可能となるであろう。

もっと光を、ゲーテ曰く -- 欠落しているもので一番大きいのは照明の無いことである。E-Ink スクリーンは、変更が書き込まれない限り電力は消費しない様に設計されている。これは今日読めるものの中で最も紙に近いものである。しかしながら、そのコントラストは私が照明無しで快適に読めるほど高くは無い。

私は評価用の機器を入手して以来色々な場所で読むことを試しているが、多くの場所で私の完璧な視力 (補正付き) を持ってしてもうまく行かない。昼食時のテーブル上で私は新聞や本を、明るい頭上の蛍光灯の間接照明があれば問題なく読めるが、Kindle は 45度傾けてやらないと正しい照明が得られない。このつや消しのスクリーンは広い範囲の読み角度で反射を遮ってしまう。

家にあっては、私がいつも活字の細かいペーパーバックを読むカウチの上で、Kindle はようやく読める程度である。私は、直接照明は受け入れ難い (感覚をごちゃごちゃにする) と言う様な人なので、Kindle は私のニーズには合っていない。

私に本とささやいて -- Kindle 2 はファイルをダウンロードするために同じ Sprint セルラーデータ接続を使っている。初代モデルはワイヤレス接続を不能にする機械的なスイッチを持っていて、電池寿命を伸ばしたり飛行機の中での使用のために使われていた。Kindle 2 では、このワイヤレススイッチをソフトウェアに組み込んで、状況にかかわらず全てのメニューの一番上に出てくる。

以前と同様、このセルデータ接続は Kindle の秘密兵器である。本が欲しい?Kindle Store で、そしてこれはあなたの Amazon アカウントにリンクしている、この機器用に出されている物をナビしていくだけである、そうしていると、あなたのこれまでの購入習慣に基づいた推薦図書も提供してくる。欲しい本を選択し、購入をクリックすれば、それは 1分もかからないうちに Kindle 上にある。

Sprint ネットワークに対する月極め料金はいらない;ダウンロードに必要な料金はきっと Amazon が本、ブログ、雑誌、そして新聞に課金する料金に含まれているのであろう。

Amazon はこの配信システムを WhisperNet と呼んでいて、例えば The Washington Post を定期購読している様な場合、毎朝機器に配信保存され、何時でも見られるというのは大変便利である。

ドリルダウンしていけば、実験用の Web ブラウザがある。これはどうも初代 Kindle バージョンから変わっていない様であるが、CSS をサポートするには余分の詳細設定をオンにする必要がある。このブラウザは緊急用には役立つが、とても常時使える様な代物ではない。

私は Amazon が更に一歩進んで 802.11g Wi-Fi チップを搭載しなかったことに未だ驚いている。アンテナと無線の部品は既に持っているのだから、Wi-Fi を追加しても Amazon の負担はたったの数ドルで済むはずで、それにより Kindle はもっと色々な場所でより使いやすくなるはずである。Kindle 2 は、前のモデルと同じ様に、その無線をオンにしたまま米国の外では使えない。そして、Amazon は Kindle 2 を、送付先の住所が米国内でかつ米国をベースとしたクレジットカードを持っている人以外には販売しない。

Kindle に組み込まれた他の種類のささやきにテキスト音声合成がある。Kindle はスクリーン上にあるテキストなら何でも、内蔵のスピーカー或いは装着したヘッドフォン経由で極めて心地良い声で朗読できる。私にはデフォルトの声は十分なものであった;但し長距離のフライトとかドライブでは、人間の抑揚がないので飽きが来るかもしれない。

この機能についての Authors Guild からの火蓋を切る一斉射撃があって、Amazon は、出版社が個々のタイトルについて音読オプションをオン、オフするのを可能にする変更を加えることに合意した。争点は Amazon はスクリーン上で読むのを売る権利を買ったのか、或いは更に音声版も売る権利も含まれているのかに関するものである。Amazon は問題はないと言っているが、出版者と著者の不安も払拭しようとしている。

(私は Authors Guild の会員でもあり、このグループは過去数十年に亘って著者の蝕まれ行く権利を守るのに良い仕事をしてきた。このこと自体を見ると読者のアクセスが否定されたかの様な印象を受けるかもしれないが、これは実際には、著者がその言葉に対してそれを売る人達から支払を受けたいということに関するものである。私はこの記事に付帯するものとして詳細な説明記事を書いた:"Why the Kindle 2 Should Speak When Permitted To" である。更に、Guild プレジデントの Roy Blount, Jr. によるこの件に関する面白い論説記事も読んで欲しい、但しこれは先週 Amazon がその方針を変更する前に書かれたものである。そして Harlan Ellison のわめきを、禁ことばの入った YouTube クリップ "Pay the writer"で聞くことが出来る。)

権利は沈黙を守る -- ここまでは、まずまずである。しかしこの新しいハードウェアの裏に古いマシンの魂が潜んでいる。Kindle に対して、Amazon は独自のデジタル権利管理フォーマットの本しか販売しない。あなたは本を買っているのではない;あなたはあなたが所有する Kindle での使用をライセンスされているのである。

Amazon はそれをスマートフォンにまで延長するかもしれない。同社は 230,000 に及ぶ同じライブラリにアクセス出来る Kindle リーダーソフトウェアの様なものについて騒ぎ立ててきた。もし Amazon が、ビデオの購入とレンタルに使っているのと同じ方針に従うのであれば、あなたが買うメディアは Amazon に保存され、サポートされるどの機器に対しても使える様になるであろう。

これに関しては Adam が Kindle 2 のプレビューで書いている、"Amazon、電子ブックリーダー Kindle 2 を発表" 2009-02-09。結論を言うと、Amazon はフォーマットをロックしてしまっているので、Kindle フォーマットであなたが購入した本はそれ以外では見ることは出来ない。

火をともす -- Kindle 2 は素晴らしくアップデートされた電子本リーダーである、そして頻繁に旅をする人でかつ本をむさぼり読む様な人であれば考慮に値するものであろう。何ポンドもの本を持ち歩いたり、或いは飛行機の中や人里離れたホテルの部屋での退屈の恐怖に直面する代わりに、Kindle 2 は荷物を軽くしてくれるしそのギャップも埋めてくれる。

私にとっては、その値段と少々の欠陥を考えると私の欲しいものリストには入らない:私は殆ど旅はしないし、通勤も自転車か車での近距離だし、それに読むのも極めて広範囲で現在の Kindle ライブラリではとても私のニーズは満足できないであろう。


史上最高のコンピュータ・キーボード?

  文: Matt Neuburg <[email protected]>
  訳: Mark Nagata <nagata@kurims.kyoto-u.ac.jp>

かなり前になるが 2004 年のこと、Adam は理想のキーボードを探し求める彼の絶え間ない旅路の物語を記事にした。いつもテキスト、いつもタイプ中、いつも必要に迫られている彼に最適のキーボード、懐かしく記憶に残るその昔の Apple Extended Keyboard に匹敵するようなものを求めての旅だったが、結局彼が落ち着いたのは Matias Tactile Pro だった。(2004-03-29 の記事“荘厳なるアルプスにキーボードの帝王が輝く”参照。)けれども、ここではどうか私と一緒に、さらにもっと昔へと記憶を遡って頂きたい。そこにはもっと素晴らしいキーボードがあった。異論はあるかもしれないが史上最高のクリック感と、最も軽快な弾力感、最高の反応性の良さを兼ね備えたキーボードだ。それは頑丈なプラスチック製の重厚な塊で、丈が高く、表面が凹んで、しっかりして、優しいざらつき加工がされた、大きな、個別分離の、カタカタ鳴るキーたちが並び、その昔には全国のオフィスやコンピュータ・ラボで、一斉に音を立てていたものだった。それこそが IBM 製の伝説の Model M で、そのフィーリングは Selectric タイプライターやパンチカードマシンなど、当時のあらゆる種類のビジネス機器のそれを思い起こさせるようにとデザインされたものだった。

Model M のキーは“buckling spring”(座屈ばね機構) という、1978 年に IBM が特許 を取った方式で動作した。キーキャップを支えるのはコイル式のスプリングで、これがちょっとしたドレスのような形をしている。キーキャップの下でこのスプリングが垂直方向に動いて、ロッキング式のアクチュエータスイッチの回転部から突き出しているつまみを上から押さえるようになっている。けれども、このスプリングは完全に _真っ直ぐ_ 垂直方向に動くわけではない。スプリングの上端と下端に付いた部品が傾斜していて、スプリングの動きに応じて少しだけ前方に膨らんだり凹んだりする。ユーザーがキーを押し始めるにつれて、スプリングは圧縮され(そしてこれが重要なところだが)同時に前方の膨らみが増す。圧縮する力にこの膨らみの増加の角度が加わることで、突然の、しかもよく聞こえるカチッという音とともに、アクチュエータスイッチが前方へ「オン」の位置へと切り替わる。この時、そのキーの文字がタイプされるのだ。けれどもキーにはまだたっぷりと動く余地が残されているのでさらに下向きに動き続けるが、それとともにスプリングの抵抗力も増し続け、ハウジングに行き当たれば止まる。

ここではあらゆる種類の力と、音、それに神経や筋肉の反応とがぴったりと理想的に組み合わさって、その結果ちょうどうまい具合に、非常に手応えのある、しっかりした、予想に違わぬ、クリーンなフィーリングを生み出している。あなたの指がキーの上に乗った時に、意図せずキーを押してしまう可能性は全くない。スプリングの抵抗力がそれよりもずっと大きいからだ。それに、仮にあなたの指が不意にけいれんしてちょっとだけキーを押してしまったとしても、ロッカースイッチのアクチュエータが動き出すところまでは行かないだろう。それでも、いったんあなたが意図してキーを押そうとすれば、非常に早い時点でロッカースイッチがカチッと切り替わってから、さらに下へ押し続けると次第にスプリングの抵抗力が強くなるという小気味よいフィードバックを伴ってキーが動き続ける。そして、もしも力任せに指を押せば、キーがハウジングに行き当たった時点で第二のクリック音が聞こえて指は押し止められる。それと同時に、さきほども書いたようにキー自体がかなり背が高く、キーキャップの表面が少し凹んでかなり横方向にも幅があるので、ほとんどあなたの指が揺りかごに乗せられて正しい場所に導かれるような感覚さえある。

こうしたすべてのことの結果、あなたが間違ったキーを打ってしまう可能性や、そのキーを打ったかどうかはっきりと分からなかったり、タイミングを間違えて正しくない順序でキーを打ってしまったり、あるいは一回でよいのに「跳ね返り」効果のせいで意図せず同じキーを二度打ってしまったり、といったことが起こる可能性は事実上ゼロに近くなる。あなたが最近のキーボードに多いゴム製のドームスイッチに慣れているなら、このキーボードをほんの2分間ほど使って慣れたころには、あなたは以前よりもクリーンに、安定して、正確にタイプできるようになっていることに自ら気付いて驚くことだろう。しかもそれは、あなたがかつて経験したことのないほど、リラックスして、的確な動作から生まれるのだ。

Model M キーボードの製造権は 1991 年に IBM から Lexmark へと売却され、その後 1996 年にこのデザインはケンタッキー州 Lexington にある小さな会社、Unicomp にライセンス供与された。2009 年 1 月には、NPR が Unicomp を巡る話を記事にしている。同誌の記者 Martin Kaste によれば、Unicomp の創設者は Neil Muyskens で、彼はこのキーボードの製造を続けるためだけの目的で IBM を去ったのだという。その際、ただオリジナルのテクノロジーを引き継ぐだけでなく、オリジナルの金型も引き継いだとのことだ。製造は、人の手による作業が必要な(座屈するスプリングは手で組み込まれるだけでなく一つ一つテストされた)だけでなく、非常にハイテクなもの(キーの反応時間はロボットのタイピストによって再テストされた)でもあった。その結果の価格は、決してそれほど高いものとはならず、実際、普通のキーボードよりほんの少し高い程度だった。けれども、その記事によれば、そのほんの少し高いという事実が営業上の重大問題となった。小売りのチェーン店は(まだ破産していなかったところはすべて)どこも店頭に置いてくれなかったし、Kaste の言う「年取ったオタクたち」も、会社がうまく行くほどまでには素早くこれを買ってくれなかった。とりわけ、こうしたキーボードはあまりにも信頼性が高くて長持ちするので、おそらく一生のうちに二度以上購入する必要がないようなものだったのだから。

その後の成り行きはあなたにも想像がつくだろう。この話を聞いて、私は居ても立ってもいられなくなった。悪くはないけれどもじきに安っぽさが露呈して長持ちしないキーボードにはもううんざりだ。私の心と指とに満足を与えてくれるキーボードのためにお金を出さなかった自分にも罪悪感を覚えた。そこで私は Unicomp のキーボードを一台買った。私はこれが大好きだ。今もまさにこれでタイプしている。もしもあなたが本物のタイピストであって、机の上に十分な置き場所があるなら、もう何をおいても断然これをお薦めする。これは単に私がより正確に、よりスムーズに、(従って)より速くタイプできるというだけではない。より _気持ちよく_ タイプできるという点が大きいのだ。くつろいだ気持ちで、イライラすることもなく、緊張せずにタイプできる。コンピュータの前で一日中タイプすることに、より熱意をもって向かえる。何となくぼんやりした不安を抱えながら仕事をすることはもうない。そのお陰で私は、本当に心から幸せな、以前よりも生産的なライターとなれるのだ!

自分も一台欲しいとお思いなら、まず手始めに PCKeyboard.com ウェブサイトを見てみるのがよい。(名前の最後にいちいち“s”が付いているのはなぜかと考え込まない方がよい。ひどくややこしい。)私が購入したのは、そのサイトで“Customizer 104/105”と書かれている機種だ。カラーは黒のみ(キーは素敵な灰色)の一種類で、配線の構成は2種類、PS/2 (嫌なこった、どっか行け) と USB (イェーイ!) だ。そこで、私は Windows (US) USB 機種でキー配列が US English のものを注文した。

さて、今の名前の中に出てくる“Windows”という単語に必要以上に過剰反応しないで頂きたい。このキーボードには、スベースバーの隣で、Option キーのあるべきところに何やら窓が空を飛んでいるような絵があり、Command キーのあるべきところには Alt という単語が書いてある、ということを除けばあなたに Bill Gates を思い起こさせるものは何もない。どうしても気になるのなら、これら二つの記号の上に何かを貼り付けてしまえばよいだろう。(たぶん Unicomp では交換用のキーキャップも実際に販売しているだろうが、私は確かめてみなかった。)けれど、Option と Command のキー位置を入れ替える必要だけはある。それにはこうすればよい。

まず、キーボードをあなたのコンピュータに繋ぐ。するとダイアログが現われて、キーボードが既知のものではないと警告し、左側の Shift キーのすぐ右にあるキー(私のキーボードでは“Z”)と右側の Shift キーのすぐ左にあるキー(私の場合はスラッシュ)をタイプするように求め、それらを入力すれば、これはどうやら U.S. キーボードらしい、とあなたに確認を求めてくる。それから、アップルメニューで「システム環境設定...」を選び、「キーボードとマウス」環境設定を開き、「キーボード」パネルで「修飾キー...」をクリックする。そのダイアログで、Command キーが Option を意味し、Option キーが Command を意味するように設定する。これで準備完了だ! でも、忘れてはいけないことがある。このキーの入れ替えはあくまでもソフトウェアによって、個々のユーザーであるあなたのためだけに設定されたものなので、コンピュータの起動時、まだどのユーザーもロードされていない段階では、Option キーを押さえながら(利用可能なシステムを選択するため)起動する際にはやはり Alt キーの方を使う必要がある。

(はいはい、私は嘘をついていました。これが Windows キーボードである兆候が、実はもう一つある。右 Control キーの隣に、Application キーがあるのだ。たぶん、これはマウスを右クリックするのと同じ働き(Mac ユーザーにとっては Control-クリック)をするはずのものだと思う。私のマシンではこのキーは何もしない。でも、私には別に気にならない。)

この Customizer 104/105 キーボード の価格は $69 で、送料が別途かかる。(それから、もしあなたのオフィスが誰かと相部屋なら、その人たちのためにどこかで耳栓を買ってきてあげる必要もあるだろう。)他のいろいろな機種と各種構成についてはウェブサイトを参照されたい。


TidBITS 監視リスト: 注目のソフトウェアアップデート、02-Mar-09

  文: Doug McLean <[email protected]>
  訳: Mark Nagata <nagata@kurims.kyoto-u.ac.jp>

Agile Web Solutions のパスワード同期ユーティリティ 1Password 2.9.9 は Safari 4 Beta のサポートを追加したアップデートだ。また、 iCab ウェブブラウザのサポートも加わった。今回のアップデートでは、Agile Keychain のロード時間の改善と、Safari や Firefox からの読み込み機能の拡張も盛り込まれ、また読み込みの実行動作、メモリリーク、Mac OS X 10.4 下でのクラッシュなどに関係したバグにも修正が施されている。変更点の完全なリストは Agile Web Solutions のウェブサイトで読める。(新規 $39.95、アップデート無料、11.4 MB)

Photoshop CS4 11.0.1 は、Adobe 製品の代表格である写真編集プログラムのメンテナンス・アップデート版だ。この最新版では、Pen バレル回転が Wacom タブレットでも正しく動作するようになり、プラグインが 3D テクスチャを編集した場合にも正しく認識され、Auto-Blend Layers コマンドの生成結果が改善された。また、クラッシュを引き起こしていたバグが2つ修正された。一つはフォーマットの付いたテキストをペーストした際のもので、もう一つは壊れたフォントを使って作業した際に起こったものだ。(新規 $699、アップデート無料、33.1 MB)

MacSpeech の MacSpeech Dictate 1.3 は同社の音声認識ユーティリティのメンテナンス・アップデート版で、報告された問題点を修正し、新機能もいくつか追加している。変更点の主なものとしては、Cache Document および Cache Selection コマンドを新設してユーザーが既存の書類を音声によってナビゲートしたり編集したりできるようにしたこと、メニューバーに追加されたマイクロフォン状態表示、キーボード上の特定のキーを入力できる Press the Key コマンドの新設、それに Recognition ウィンドウを閉じる Cancel Training コマンドの新設などがある。その他の変更として、認識ウィンドウの出力内容が今回から自動フォーマッティングなしに処理されるようになり、Force Quit this Application コマンドが削除された。また、Go to End コマンドが働かなくなっていた問題や、MacSpeech Dictate をクラッシュさせていた二種類のバグなど、いくつかのバグも修正された。最後にもう一つ、今回のバージョンには TidBITS 寄稿編集者の Matt Neuburg が書いた新しいオンラインヘルプ本も含まれている。(新規 $199、アップデート無料)

Corel の Corel Painter 11 はプロフェッショナル向けの絵描き・イラストレーション作成ソフトウェアの最新版だ。変更点の主なものとしては、より多くのメディアオプションを提供する Hard Media および RealBristle Dry Media コントロールを新設したことや、投げ縄ツール用への多角形モード新設などいくつかの選択ツールを拡張したこと、Wacom 製のペンやタブレットなどのサポートを増やしたこと、個々の書類ごとのカラープロファイルを新設したこと、新しいリサイズ可能なカラーパレット、Adobe Photoshop のサポートの改善、それから中心的な一つの地点からいくつかの Transform モードを切り替えて使える機能などがある。(新規 $399、アップグレード $199、103 MB)

Maintain の Cocktail 4.3.1 は、この汎用メンテナンス・ユーティリティのセキュリティおよび安定性に関するアップデートだ。今回のバージョンではスケジュールに基づくシステムキャッシュのクリア作業中に Cocktail が反応しなくなっていた問題点に対処し、トロイの木馬 Lamzev.A とワーム Inqtana を削除する機能を追加し、また害を及ぼす可能性のあるファイルをクリアする機能を改良している。($14.95、1.8 MB)


ExtraBITS、02-Mar-09 版

  文: TidBITS Staff <[email protected]>
  訳: 辻村尚夫<tsuhi02@qg8.so-net.ne.jp>

iMovie '09で720pの書き出し -- MacWorld誌のChris Been氏は、iMovie '09からインターレースなしの 720p に映像を押し込んで書き出そうと週末を費やした。その手順は異様に難しく、iMovie がインターレースの映像を扱う解決されていないバグのせいでさらに困難を極めた。(リンク投稿 2009-03-02)

Dan Frakes 氏、Safari 4 のタブを検証 -- Safari 4 のベータ版はタブの動作について注目すべき変更が加わり、いくつかの変更が有効という意見がある中、一方で他の変更は物議を醸している。MacWorld 誌の Dan Frakes 氏が、良いところ、悪いところ、最低なところについて解説する。 (リンク投稿 2009-03-02)

MacOS iPhone プロジェクトが、System 7 を iPhone に移植 -- iPhone で古いAtariのゲーム Adventure を走らせるなんてレトロオタクの典型だと思っていたけれども、iPhoneで完璧に動くSystem 7だって?まだ実際に出回っている訳じゃないけど、スクリーンショットだけでもチェックを入れておく価値があるかも。(リンク投稿 2009-03-02)

MobileMeの様々な改善 -- 特段地球環境の改善に役立つって訳ではないけれども、アップルは、MobileMe のいろんなところに性能改善を入れ、いくつかのイライラするユーザーインターフェイスの作りを訂正し、ちょっとばかり他の改善もしている。(リンク投稿 2009-02-27)

iPhone がクレジットカード端末になる? -- 農業祭りや町の祭りで商売をする人たちは、iPhoneを使ってProcessAway 経由でクレジットカード決済をすることが出来るようになった。あとは、iPhone 同士で直接決済ができるようになったり、あるいは日本の携帯電話でどんどん一般的になっていっているように、幅広い製品に対して支払いができるようになるのを待つばかりだ。(リンク投稿 2009-02-27)

Safari 4 ベータ版の隠された設定 -- Safari 4ベータ版のスピードが気に入っているけれども、「ウィンドウ上端のタブ」や新しいツールバーの変更点に複雑な気持ちになったり、苛ついたりしているかな? Random Genius のブログにはこれらを制御する隠れた設定や、他の設定について書かれている。(リンク投稿 2009-02-26)

The Photographic Directionary -- Photojojo に教わった情報だが、テキストのみならず注意深く選ばれた写真を使って単語を定義したウェブ サイト、The Photographic Dictionary というところがある。特に概念を示す単語、たとえば「unknown」などという単語をみてみるのがおもしろい。(リンク投稿 2009-02-26)


TidBITS Talk/02-Mar-09 のホットな話題

  文: Jeff Carlson <[email protected]>
  訳: Mark Nagata <nagata@kurims.kyoto-u.ac.jp>

バックアップには電力も必要 -- どのサイズの UPS を購入するかを決める方法、また停電に対処する最良の手段について、読者たちが知恵を出し合う。(メッセージ数 2)

EtherPad はウェブへの同時書き込みをもたらす -- Dropbox のバージョン保存機能は SubEthaEdit と組み合わせて使えば理想的なものと思えるが、現時点ではまだそれは希望リストの一項目に過ぎない。(メッセージ数 2)

Time Machine がフォルダを無視 -- 現在進行中で原因の分かっていない Time Machine の異常行動について読者たちが体験を語る。(メッセージ数 2)

iPhone に位置情報記録が追加されるか? -- Apple 外のアプリケーションは iPhone 上バックグラウンドで動作できないという Apple の制限を、Google は何とかして回避しようとしているのか? (メッセージ数 2)

Safari 4 -- ベータ版の Safari 4 では以前のページにワンタッチで戻れる SnapBack ボタンがなくなってしまったが、読者たちがこの機能を今までに使ったことがあるかどうかと議論する。(メッセージ数 10)


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©Copyright 2009 TidBITS: 再使用は Creative Commons ライセンスによります。

Valid XHTML 1.0! , Let iCab smile , Another HTML-lint gateway 日本語版最終更新:2009年 5月 15日 金曜日, S. HOSOKAWA