True Tone はそれほど物議を醸してはいない。最初に iPad Pro に導入され、2017 年の iPhone のモデルに加えられた。True Tone は、環境光に基づいて画面のホワイトバランスを調整する。その目的は、異なる照明条件下で画面を見ることをもっと快適にすることだ。色を正確に合わせようとするデザイナーにとって、これは問題かもしれないが、概して、私たちは不満を耳にしてはいない。
最後に、Apple T2 チップは、かなり興味深い。これは、従来機種のT1 チップの後継であり、iMac Pro でデビューした。そして、これは、Touch Bar、Apple Pay、その他のようなシステム機能を管理する内蔵された制御システムである。Ars Technica が iMac Pro のレビューで、これについて説明した。MacBook Pro の場合、これは、安全な起動という機能を手助けし、ファイルを迅速に暗号化し、そして、たぶん最も注目すべきこととして、キーを押さなくてもあなたが自分の Mac に話しかけられるようにHey Siri を有効化する。
ほとんど常にそうであるように、こうした更新は全て歓迎すべきことだ。そして、あなたが MacBook Pro を買おうと思っていたのなら、今が好機だ。もし、過去 2 週間の間に、従来機種の一つを買ったのであれば、それを返却し、新機種を同じ価格で得ることができる。この 2 週間からちょっと外れている場合は、Apple Store の従業員に、あなたの事例を直接嘆願することが可能かもしれない。だからと言って、保証はないが。
誤解しないで頂きたい。App Store が個々人にも開発者たちにも非常に大きなインパクトを及ぼしたことに疑問の余地はなく、実際この Apple の記事には数え切れないほどの証言が並んでいる。それにまた、Alan Oppenheimer が語るこんな話もある。彼は、AppleTalk の作成を手伝うところから始めて、その後インターネットサービスプロバイダを運営するようになり、それから開発の仕事に没頭して、その結果が Art Authority となって結実したという。
それにまた、数字を見るだけでも App Store は本当に物凄い。毎週、155 の国から 5 億人以上の人たちが App Store を訪れ、Apple によれば同社は過去十年間で総額 1 千億ドルを開発者たちに支払ったという。現在、2 千万人の Apple 開発者たちがいて、App Store には 2 百万以上のアプリがある。(他方、Statista によれば Google Play には 38 億のアプリがあるという。)
だから、確かに App Store は成功してきた。けれどもこれは単なる店舗であって、アプリを見つけにくいこと、開発者たちが支払う手数料が高いことなど、種々の問題点がある。それに、成功の大部分は純粋に iPhone や iPad の人気の高さによるものではないのか? (もちろん、iPhone の人気が App Store の後押しにどの程度よるものかと問うのは公平なことだろうが。) どんなハードウェアプラットフォームであっても、何億台ものデバイスを販売し、そこにソフトウェア開発キットがあれば、多数のアプリが生まれるのは必然だろう。
もう一つ、App Store の成功に不可欠であったのが、配布と販売に Apple が厳格な管理の力を及ぼしていることだ。iOS アプリを App Store 以外で販売したり、Apple のガイドラインに従わないアプリを配布したりするには Cydia によるしかなく、それには jailbreak したデバイスが必要となる。言うまでもなく jailbreak はセキュリティ脆弱性に依存して働くものなので、Apple はそれをできる限り困難なものにしようと努力している。結果として、iOS アプリについては App Store がほぼ完全な独占を達成している。ただし良い面を見れば、ユーザーのプライバシーやセキュリティを乱用するアプリが大体において存在しない市場が出来上がっているとも言えるのだが。
Apple は記事の中でさらに「2008 年以前、ソフトウェア産業は少数の巨大な企業によって支配されていました」とも主張する。当然ながら、2007 年までは iPhone というものが存在せず、この主張は Mac などのデスクトップコンピュータに対するものに違いないが、それでも事実とははっきり違っている。確かに Microsoft と Adobe は当時から (そして今でも) 巨大な存在であったけれども、小規模の開発者たちは当時からちゃんと大勢いて、その多くが革新的な Mac ソフトウェアを作り出し、私たち TidBITS でも彼らの作り出したものを長年伝え続けてきた。さらに言えば Apple 自身にとっても、脅威となる恐れのない小規模な会社から成る業界の方がはるかに好ましいはずだ。Apple は、Microsoft Office や Adobe Creative Cloud などのソフトウェアが iOS や macOS においても他のプラットフォームと同等に使いやすくなりそれらに支配されるようになる事態を望んでいない。
Apple の記事は、App Store が富への近道であるかのような言い方をする。もちろん実際にうまく行って大金を手に入れた小規模の開発者たちもいるけれども、App Store が払い出す資金の大部分は大規模な会社へ行く。Pokemon Go は 2017 年だけで 20 億ドルを生み出した。現状の情報を知るのは困難だが、2011 年に実施されたある調査によれば iOS ゲームによる収益額のメディアン (中央値) は $2400 だった。(つまり、この調査の対象となったゲームの半数が $2400 以上の収益をあげ、半数がそれ以下だったということだ。収益額の平均は、最上位のごく少数の会社によって歪められ、$86,000 以上であった。) 私が言いたいのは単に、Apple が宣伝する大きな金額に惑わされてはいけない、大多数の開発者たちが作った大多数のアプリは、大して収益をあげていないということだ。
ソフトウェアの配布と支払システムを提供することで App Store がソフトウェア出版の世界からある種の摩擦を取り除いてくれたことは事実だ。けれどももしその点がそれほど重要ならば、対となる Mac App Store、こちらは 2010 年にデビューしたのだが、Mac App Store も同じくらいに支配的な存在となっていたはずではなかろうか。けれども Apple の往々にして厳格過ぎる技術的要件 (とりわけサンドボックスに関係する要件) や、面倒な登録手続き、30% の手数料といったことのため、多くの Mac 開発者たちが Mac App Store を完全に避けるようになり、何人かの大物の開発者たちは製品を Mac App Store から撤収してしまった。Apple は macOS 10.14 Mojave で彼らを呼び戻せるようにといろいろ変更を加えようとしているようだが、それでも私の論点は変わらない。開発者たちに選択の余地があれば、彼らは必ずしも App Store を選ぶとは限らないのだ。
私が App Store に抱く不快感の一部は、Apple が許容するビジネスモデルのタイプが限られている点にある。確かに、Apple は 2009 年にアプリ内購入を追加し、2016 年にはあらゆる種類のアプリで購読制を認めるようになったが、Apple はこれまで一度たりとも真の意味での試用版も、クーポンを使った値引きも、有料アップグレードも、認めたことがない。いくつかの場合については開発者たちが回避策を見つけてきたけれども、結局のところ App Store は単なる「自由市場」に過ぎない。購読制が浸透することでこの点は変わるのかもしれないが、App Store の存在の大部分の点においては、Apple が強制する経済モデルの帰結として、開発者たちはアップグレードを出して既存のユーザーのために働くよりも、新しい顧客を追い求めることのみに力を注ぐようになる。
考えてみればさらにもっと困ったことだと思えるのが、App Store が目に見えて価格を押し下げつつあることだ。ソフトウェアの価格が下がるに伴って、知覚価値も低下し、今や基本的にゼロに近いところにある。App Store ではそもそもの初めからアプリを見つけにくいことが問題で、似たようなアプリが数多くあるカテゴリーの中で自分のアプリを目立たせる手段があまりにも少なかったため、開発者たちとしては大体において価格面で競争するしかなかった。今や、無料でないアプリは高価だと認識されるのが実情で、無料のアプリの多くは侵入的でプライバシー侵害の恐れも多い広告による収入に依存せざるを得ない。もちろん、これは大体においてウェブそのもののやり方に倣っているとも言える。ウェブではもう長い間広告が収入をあげるための主要なやり方であり、ユーザーたちの側が広告の追跡と個人化に対する不満をますます募らせているのが現状だ。
ここまで考えてくると、どのように批判をしてもそこには負け惜しみのように聞こえる恐れが付きまとう。App Store は人生の現実であり、競争相手がいない以上、実質的な変更は非常に少なく、あっても長い時間間隔を伴うのが自然だろう。でも私は、App Store が達成したことを称賛したり、あらゆる世界の中で最高のものを生み出すのが必然だったと考えたりする必要など、どこにもないと思う。たとえ App Store がなかったとしても、iOS のエコシステムは十分同じように進化したかもしれない。Mac の世界を見れば、Mac App Store の外でアプリを配布しても大して苦境に陥ることはなかったのだから。
結びに、私としては iPhone や iPad を、さらには iOS 全般を称賛することには全然と言ってもよいほど抵抗を感じない。そして、独立の開発者たちからも、また大企業の開発者たちからも、次々と届けられる便利で楽しいアプリの数々を称賛することにも吝かではない。でも、App Store の価値を称えるって、いったいどういうことだろう? まるで、ショッピングモールの素晴らしさを騒ぎ立てるようなものじゃないか。
Stairways Software の Peter Lewis が Keyboard Maestro 8.2.2 をリリースした。この自動化およびクリップボード用ユーティリティに少数の調整やバグ修正を加えた、メンテナンス・リリースだ。今回のアップデートでは macOS 10.14 Mojave のためにインライン・ポップアップメニューの表示を変更し、Insert Token by Name メニューに Characters セクションを追加し、Assistance Window の文言を "take some action that should trigger this macro" に改善し、エンジンの終了の際やウィンドウをキャプチャする際に起こることがあったクラッシュを解消している。(新規購入 $36、TidBITS 会員には 20 パーセント割引、無料アップデート、23.3 MB、リリースノート、macOS 10.10+)
プライバシー関係の最新の発覚だが、New York Times の記事が、一部のスマートテレビ、それも Philips、Sharp、Sony、TCL などメジャーなブランドの製品が、Samba Interactive TV と呼ばれるサービスを使っている結果として今やあなたが視聴するすべてを追跡していると伝える。Samba TV ソフトウェアは、視聴者がこのサービスを有効にすることを強く推奨し、番組のお薦めやその他特別サービスを提供すると約束するが、それらのお薦めを実行するためにどのような情報を収集するかについて一切説明していない。あなたがテレビのスマート機能を使っていなくても、Samba TV ソフトウェアはテレビ画面に何が流れているかをスキャンすることによりあなたが何を視聴しているかを識別できる。Netflix の番組や、テレビゲームなども対象となる。Samba TV を有効にしている場合は、Samba Interactive TV サービスを無効にしておくのがよいかもしれない。あるいは、テレビをインターネット接続するのを止めて、その代わりに Apple TV を使うのも一つの方法だ。