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#1437: Apple の OS アップデート、Apple 対 Businessweek、Apple Watch Series 4 の健康状態監視機能、Wi-Fi の名前、TidBITS を読むためのアプリ

今週号で紹介するニュースとして Adam Engst が、Apple やその他のテクノロジー会社が使っているサーバに中国のスパイが悪意あるチップを忍び込ませたという Bloomberg Businessweek の主張を Apple が断固として否定したことについて検討する。今週号ではまたマイナーアップデート iOS 12.0.1、watchOS 5.0.1、tvOS 12.0.1 についてお伝えし、Glenn Fleishman が Wi-Fi の名称が 802.11ac といった謎めいた呼び方から単純な世代番号の呼び方に切り替えられようとしていることを解説する。また、Adam が新しい TidBITS News アプリやその他のアプリを使って TidBITS を読む方法について調べる。最後にもう一つ、セキュリティ専門家であると同時に救急救命士でもある Rich Mogull が、Apple Watch Series 4 の健康状態監視機能によって命が救えるものか救えないものかを切り分けて説明する。今週注目すべき Mac アプリのリリースは、macOS Server 5.7.1、BusyCal 3.4.4 と BusyContacts 1.2.17、それに Little Snitch 4.2.1 だ。

Adam Engst  訳: Mark Nagata   

Apple、Businessweek の中国ハックの報道記事をきっぱりと否定

私たちも混乱していると思って頂きたい。先週、Bloomberg Businessweek が長く詳細な記事を発表して、中国のスパイがアメリカのテクノロジー供給網に侵入してサーバ機器に悪意あるチップを埋め込み、このサーバ機器が Apple を含む 30 社以上のテクノロジー会社で使われている疑いがある、と報じた。

爆弾のような記事だが、同時にひどく奇妙なものでもある。埋め込まれた場所については具体的なのに、その疑わしいチップが実際に何をしたのかについては漠然としているからだ。その上、情報源はすべて匿名で、そのこと自体は政府レベルの産業スパイ活動や国家安全保障を扱う記事では珍しくないけれども、この記事の中に外部の専門家による公式の論評が一つも含まれていないのは驚くべきことだ。

これに対する反応として Apple は公式声明を発表し、この記事が Apple について主張していることはすべて事実に反すると単刀直入に述べた:

本件に関する弊社の姿勢は明確です。すなわち、Apple はこれまでに一度も、不正なチップ、ハードウェアによる操作、あるいは、故意に埋め込まれた脆弱性といったものを当社のサーバー内で発見したことはありません。本件について、弊社が FBI その他の関係機関と連絡を取り合ったことも一度もありません。弊社が FBI による捜査を受けたり、弊社が法執行機関から連絡を受けているような認識も一切ありません。

Apple はさらに次のようにも述べた:

最後に、Businessweek 記事の公開後に弊社が他のニュースメディアから受け取った質問に対する回答として、Apple は本件について、いかなる報道禁止令(非開示命令)を受けたり、その他の機密保持の義務を負ったりもしていません。

Apple の声明には、不都合な挙動を隠蔽しようとする会社のような論旨が一切見えない。あるとすれば、Bloomberg から何度も照会される質問や申し立てにうんざりしているかのような言い振りが見て取れるだけだ。それ以後、米国の国土安全保障省 (US Department of Homeland Security) も英国の National Cyber Security Center も、いずれも Apple の声明の内容を疑う根拠は何もないと発言した。加えて、BuzzFeed の John Paczkowski は Apple の複数の上席重役たちがあの記事に対して「誰もが否定し、混乱の気持ちを口にした」と述べた。そして Apple は今や、議会に書簡を送付して再度否定を述べた

それに加えて、Apple と Amazon はこの記事の内容を否定したが、両社ともに一兆ドルを超える価値を持つ公的企業であり、製品に対する申し立てについて日常的に訴訟に直面し、時には敗訴もしてきた。両社が出した声明はいずれも非常に具体的で、あまりにも広い内容をカバーし、極めて断定的なものなので、もしも嘘が含まれていれば厖大な責任がのしかかることになるはずだ。

記事が主張するような種類の攻撃が技術的に可能だという指摘はなされてきたものの、ハードウェア製造の経験を持つ私たちの知人の話では、この記事に書かれているその特定の攻撃が誰にも気付かれずに実行できるというのは極めて疑わしいとのことだった。また、セキュリティ報道の分野の別の知人によれば、知っている情報源からその種の話は何も聞こえてきていないとのことだった。そういう事情なので、私たちとしては今のところ Apple のサーバに悪意あるチップは見つかっていないという点について Apple が真実を語っているのだろうと考えている。

けれども、Businessweek も決してただの胡散臭い出版社ではないし、記事の中にはあまりにも多くの情報源と、あまりにも詳しい記述が含まれているので、記事を書いた記者がただ単に混乱していただけとは考えにくい。だから、すべてが手の込んだ作り話であって何らかの事情でこの出版社の編集者たちの目をすり抜けたのでなかったとすれば、これほどきっぱりと否定されるような記事をなぜ Businessweek が出版したのか、私たちにはどうにも説明がつかない。

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Josh Centers  訳: Mark Nagata   

Apple、iOS 12.0.1、watchOS 5.0.1、tvOS 12.0.1 でバグを修正

Apple がアップデートを3つリリースした。iOS 12.0.1、watchOS 5.0.1、それに tvOS 12.0.1 だ。いずれも、Apple の最新のオペレーティングシステムにおけるマイナーな問題点を修正するためのものだ。一般的に言って、あなたが現に苦しめられている具体的な問題に対処するものだと分かっている場合を除き、数日間待ってからアップデートをインストールすることをお勧めしたい。ただし、あなたが Apple Watch Series 4 を持っていて、それが問題なく動いている場合には、watchOS 5.0.1 をインストールするのはもう少し長く待った方が良いようだ。

iOS 12.0.1

iPad ユーザーには嬉しい知らせがある。Apple は iOS 12.0.1 で ".?123" キーの場所を以前の位置へ戻してくれた。iOS 12 で、Apple はこのキーを Emoji キーに置き換えていたからだ。今回のアップデートではまた、iPhone XS に関する2件の問題点に対処が施された。一つは 5 GHz でなく 2.4 GHz の Wi-Fi ネットワークに再接続してしまった問題、もう一つは Lightning ケーブルに接続してもすぐに充電が始まらなかった問題だ。その他細かな修正点として、iOS 12.0.1 では一部のビデオアプリで字幕が表示されなかった問題を解決し、また Bluetooth が使用できなくなった問題も修正された。iOS 12.0.1 ではそれ以外に、Lock 画面に関係する2件のセキュリティ脆弱性も取り除かれた。

iOS 12.0.1 release notes

iOS 12.0.1 のサイズは 10.5 インチ iPad Pro で 80.7 MB、iPhone X では 106.8 MB だ。Settings > General > Software Update から入手でき、また iTunes からもインストールできる。

watchOS 5.0.1

私たちはなぜかこれを見逃していたが、2018 年 9 月 27 日に Apple は watchOS 5.0.1 をリリースして、マイナーな問題点をいくつか修正した。具体的にはエクササイズの分数が増えて表示されてしまうことがあった問題、スタンドした時間が午後の時間帯に数えられないことがあった問題、Apple Watch が充電できなくなった問題だ。watchOS 5.0.1 は Apple Watch Series 1 またはそれ以降で動作するが、初代の Series 0 Apple Watch では働かない。

watchOS 5.0.1 release notes.

私たちが一人の TidBITS 読者から聞いた話によれば、彼女の Apple Watch Series 4 に watchOS 5.0.1 をインストールしたところ、再起動のループに陥ってしまったとのことだった。Apple に相談してみるとペアリングを外してからウォッチを再度ペアリングするよう勧められ、サポート担当者はこれはよくある問題だと言っていたという。残念なことに彼女がバックアップから復元したとたんにまた問題が再発したが、もう一度ウォッチを一から設定し直すと、今度は問題が消え去ったとのことだった。彼女の夫の Apple Watch Series 3 では watchOS 5.0.1 でも何の問題も起きていないという。

また、AppleInsider の新しい記事によれば、オーストラリア在住の Apple Watch Series 4 のユーザーたちから Daylight Saving Time のバグの結果としてウォッチが再起動のループに陥ったという苦情が殺到しているという。この問題は 24 時間後に自動的に消え去るが、Apple は他の国でも Daylight Saving Time の切替が起こる日 (米国では 2018 年 11 月 4 日) より前に watchOS 5.0.2 をリリースすることを余儀なくされるのではなかろうか。

だから、Apple Watch Series 4 を持っていてそれが問題なく動いているという人は、おそらく watchOS 5.0.1 をインストールせずに待つ方が賢明なのではないかと思われる。それでもやはり最新のものを走らせたいと思う人は、37.3 MB の watchOS 5.0.1 アップデートを iPhone の Watch アプリを使って (Watch > General > Software Update から) インストールできる。

tvOS 12.0.1

いつものことだが、tvOS 12.0.1 アップデートについても言うべきことはあまり多くない。「パフォーマンスと安定性が全体的に向上」しているという。自動アップデートをオンにしていない人は、第四世代の Apple TV または Apple TV 4K で Settings > System > Software Updates に行けばアップデートできる。何か問題が起こらないか見分けるためにお決まりの数日間待ってみたが、アップデートせず待つべき理由は私たちの知る限り何もない。

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Glenn Fleishman  訳:亀岡孝仁  

Wi-Fi、曖昧なプロトコル名から単純な世代名に切り替え

802.11ax は忘れて、Wi-Fi 6 によろしくと言おう。Wi-Fi Alliance は、その商標登録された Wi-Fi 名に世代番号を付けると発表した。これは、従来の標準化グループによって設定された曖昧なプロトコル名に依存するのではなく、ある機器がその互換性試験に合格していることを示そうとするものである。

新しい仕組みの中では、Wi-Fi の番号は Wi-Fi Alliance が決めた第4世代から始まる:

この変更は名前だけのもので、その認証プロセスや業界標準グループの作業には一切影響しない。

Wi-Fi Alliance は、オペレーティングシステムのインターフェースがその信号強度表示を修正して実際の接続タイプを示す世代番号を表示するよう望んでいる。それをどう表現するかは悩ましい話の様に思えるし、オペレーティングシステムによってその表示方法は違うであろうとも想像する。或いは、これは義務ではないので、全く無視されてしまう可能性もなくはないであろう。

The Wi-Fi Alliance’s graphic examples for user interfaces incorporating generational numbering for active connections.
Wi-Fi Alliance は、機器のインターフェースが世代毎のスループットも、既存の信号強度表示と共に明示することを望んでいる。

他の名前のプロトコルでも速度は出るであろう

番号システムへ切り替える理由は、Wi-Fi について色々なバージョンにまたがって話したいという欲望に根ざしている。私は、2000 年以来 Wi-Fi について書いてきたが、その文字や番号が何を意味するのかを説明するのに何時も苦労してきた。と言うのも、大抵の人は、一つのこと以外のものなど何も知る必要も、知りたいとも思っていないからである。それは、"これはあれと最大 X Mbps の速度でつながる" と言うことである。

この説明に関する悪夢は 2000 年代の初期に更に悪くなった。何故ならば、Wi-Fi の商標が多くの異なった技術標準を取り込み始めたからである。一方で、Wi-Fi のロゴは、使用する周波数帯と帯域幅を規制する標準を殆ど一義的に指し示すアドオンまで手にすることとなった。

An older Wi-Fi logo showing several lettered standards as graphical additions.
この昔のロゴは、結構バロック風で、しかも、機器で使用されている全ての 802.11 標準を含んではいなかった。

国際標準化組織の一つである IEEE は、大と小のグループによる名前付け方式を設定し、それぞれのグループ内の標準のために文字とその他の記号を使うこととした。802 LAN/MAN Standards Committee は、全ての "メトロポリタン" (大規模) とローカルエリアネットワークの標準を扱っている。その中で、802.11 Working Group は、802.11b や 802.11ac の様な、文字が付いた標準を作成するタスクグループを設けている。

802.11a と 802.11b の揺籃期の時代には (どちらも 1999 年に承認された)、標準には、無線符号化 (どの様にビットを電波に変えるか)、セキュリティ、そしてネットワークのやりとりを組み合わせたものが含まれていた。それは一つのタスクグループにとっては手に余るもので、すぐに行き詰まってしまった。(タスクグループは、学者、研究者、そして競合する民間企業で構成されており、標準化を前進させるためには、合意しなければならない項目が少なければ少ないほど、良い。)

この作業グループは、色々な種類の作業を個別の文字の付いた標準へと細分化した。例を挙げると、802.11e はサービスの品質 (色々な種類のデータを格付けし、ビデオは途切れ途切れにならず、音声通話は明快であるようにする)、802.11i は高度なセキュリティ (802.11b で見られた弱い WEP 標準から抜け出す)、そして 802.11r (大きなネットワーク内でベースステーション間で動き回る機器のためのハンドオフを改善する) 等である。

その間、Wi-Fi Alliance は、主に帯域幅とスループットの改善に関する標準に焦点を当てた: 802.11g, 802.11n, 802.11ac, そして 802.11ax である。時として、業界団体は他の要素も持ち込んだりした。例えば、QoS のための WMM (802.11e) で、これは、更に水を濁らせるものとなった。

メーカーの中には独自の変更を加え、宣伝用の符号として箱に Wireless-N の様なものを貼り付ける所まである。しかし、消費者は一般的に、その製品の能力を見定めるために、箱の上で、或いはインターフェースの中で、標準の名前を探さなければならない。さて、この Wi-Fi ルーターがサポートするのは、802.11a, b, e, g, h, i, j, n, y, そして ac のどれなのだろう?

Wi-Fi Alliance の新しい番号付けシステムは、世代毎の速度向上に焦点を当てているが、10 年前の 802.11n に迄しか遡っていない。802.11a と 802.11b は同時に承認されているので、暗黙のうちにそれぞれを Wi-Fi 1 と Wi-Fi 2 呼び、Wi-Fi 3 を 802.11g に当て嵌めるのは正当ではない。でも、人々はそうするに違いないと我々は思っている。

機器の適合性をより良い名前付けを通して簡素化するのは、遅きに失した、そして技術標準の専門領域になど全く興味のない人々を手助けする賢い考えであるように見える。次に、誰かが私にどの Wi-Fi ルーターを買えば良いかを聞いてきたら、"Wi-Fi 6。箱にそう書いてあるものを探して" と答えられる日を私は楽しみにしている。

さて、私はここらでちょっと失礼して、私の本 Take Control of Wi-Fi Networking and Security で、検索・置換の作業をしてこれらの新しい名前を次のアップデートに反映させる作業に戻らせて頂く。

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Adam Engst  訳: Mark Nagata   

TidBITS News アプリ、Apple News、Google News、Flipboard で TidBITS を読もう

TidBITS の初期の頃には、私たちは自分たちの書いたものが AppleLink、BIX、CompuServe、Delphi、GEnie といった商用のオンラインサービスで、さらにはオープンなインターネットの上でも見つけられることを誇りに感じていた。今日では、皆さんは一つの情報源、つまり tidbits.com にある私たちのウェブサイトを訪れるだけで TidBITS のすべてが見られるし、またサインアップして TidBITS を電子メールで受け取ったり私たちのフィードを RSS リーダーで読んだりすることもできる。(TidBITS 会員はフルテキストのフィードを受けられる。)

けれども、皆さんがお望みならば、他にもさまざまの場所で TidBITS を読むことができる。以下に、TidBITS News アプリ、Apple News、Google News、Flipboard のそれぞれについて、最新のニュースを紹介してみよう。

TidBITS News

Matt Neuburg の iOS 用 TidBITS News アプリは最近になっていろいろトラブルを起こしており、その原因が私たちにあると分かった。私たちは特定のサービスや読者のために RSS フィードを調整することを続けてきたが、このアプリのカスタムフィードに私たちが施した一つの変更が、実はフィードを無効なものにしていて、アプリを混乱に陥れてしまっていたのだった。今は既に修正済みなので、このアプリを気に入って下さった方は、どうぞもう一度試してみて頂きたい。

また、Matt が最近になって現行のロゴと見出しフォントを使うようにアプリのアップデートを出したこともお知らせしておきたい。その他の変更点としては iOS 12 に対応するための更新、オフラインモードの復活、インターフェイスの現代化などがある。

Screenshots of the TidBITS News app
新しい TidBITS News アプリの方が、現代的な見栄えだ。

一つ注意点がある。見出し画面の文字をもっと大きくしたければ、Settings > General > Accessibility > Larger Text に行き、画面の一番下にあるスライダーを右へ動かせばよい。また、Settings > Control Center > Customize Controls で Control Center に Text Size ボタンを追加しておけば、いつでも Control Center で文字サイズを大きくできる。

Mojave の Apple News

二ヵ月あまり前に、私たちは TidBITS 読者に向けて記事“Apple News で TidBITS をフォローして!”(2018 年 7 月 30 日) を書いた。1,400 人近くの人たちがフォローして下さったことが大きな力となり、Apple News のアルゴリズムが私たちの記事を新規の News 読者に向けて推薦するようになった。その記事の中で、私は 7 月頃の約一ヵ月間に 4,645 名のユーザーが私たちの見出しを見たか記事を読んだかしたことを示すグラフを入れた。そして最近の 28 日間について見れば、その数字が 88,258 まで急上昇している。これほど多くの人の目に私たちの記事が触れられるための力になって下さったことに、感謝申し上げたい。(この 28 日間の総閲覧数は 13,238 で、7 月期の 1,104 から大きく増えた。ただ、この Apple News のトラフィックはやはり私たちのウェブサイトの 202,444 ページビューに比べればまだまだ少ない。)

いずれにしても、もしもあなたが Mojave で新しい Mac 版の News アプリを少しだけ時間を取って試してみたいと思われるなら (それに加えて、あなたが米国、英国、オーストラリアのいずれかに住んでおられるなら - Apple News が対応しているのはこの三ヵ国だけだから)、あなたにもフォローして頂ければとても嬉しい。Mojave が出てからまだ数週間しか経っていないが、既に Apple News で私たちのビュー数の 5% を Mojave が占めている。思うにこれは、多くの人にとって Mac で読む方が便利だからなのだろう。News は特に良く出来たアプリなのだから。

Apple News で TidBITS をフォローするには、サイドバーの一番上にある検索フィールドで "TidBITS" を検索して、結果として表示された TidBITS の隣にあるハート形のアイコンをクリックするか、または結果の TidBITS をクリックして表示されるウィンドウ右上にあるハート形をクリックするかすればよい。

Screenshot of Apple News in Mojave
Mojave の News アプリで TidBITS が見つかれば、どちらかのハートアイコンをクリックする。

Google News

Google News とは、もちろん、Google のアルゴリズムを使って駆動される news.google.com のニュースサイトのことだが、この検索の巨人は iOS 用と Android 用に Google News アプリも出している。Apple News と同様に、まずどんなウェブブラウザを使ってもよいので私たちの公式の TidBITS チャンネルを訪れてから、右上隅にある Follow ボタンをクリックして頂ければとても嬉しい。フォロー数が増えることで Google News の中でも私たちの記事がより多くの人たちの目に触れるようになると願いたい。フォローによって多くのトラフィックが駆動されるのだから。

Screenshot of the Google News interface.
Google News が提供するインターフェイスは必要最小限だ。

(ずっと以前、私たちは Google がその検索ページに冬のイースターエッグを作ったことを、短い記事 (2011 年 12 月 21 日の記事“Google に "Let It Snow" とタイプしてみる”) にしたことがある。Google の検索フィールドに "Let It Snow" とタイプすると、画面の上から雪が降り始めたのだった。なぜか Google News のアルゴリズムはその記事をフロントページに掲げ、私たちはその日だけで 100,000 回の訪問を得た。)

Flipboard

Apple や Google を私たちのニュースのエコシステムにおける体重 800 ポンドのゴリラに例え、Matt Neuburg の TidBITS News アプリを自家製のお気に入りとすれば、iPhone と iPad 用に出されている Flipboard アプリの特徴は最良の読書体験かもしれない。既に Flipboard をお使いの方は、検索フィールドで TidBITS を検索して、検索結果の隣にある Follow ボタンをタップして頂きたい。(正しい TidBITS を見つけるにはたくさんスクロールしなければならないかもしれない。すぐ下に私の名前が見えるものを探して頂きたい。) また、Flipboard のウェブサイト上でも TidBITS を見つけることができる

Screenshot of the main Flipboard screen, searching for TidBITS
Flipboard で TidBITS をフォローするのが少々厄介なのは、あまりにも多くの他の「雑誌」がこの名前を使っているからだ。とにかく、ずっとスクロールして探そう。

まだ使ったことがない方のために説明しておくと、Flipboard ではエレガントなページめくりのインターフェイスを使って記事見出しを楽に目で追って行けるようにする。iPhone 上では上下にめくって行くが、iPad 上では左右にページをめくる。いずれについても、表示されたものをタップすればアプリ内のブラウザに記事の全文が開く。そして、今は私たちのウェブサイトがフルに反応できるようになっているので、なかなか良い読書体験ができる。

Screenshot of the Flipboard interface on the iPhone
iPhone 上の Flipboard では垂直方向にページをめくる。
Screenshot of the Flipboard interface on the iPad
iPad 上の Flipboard は水平方向にめくるやり方を採用している。

私たちは現在 Flipboard でたった 48 名のフォロワーと 542 名のビューワーを数えているだけなので、トラフィックがもっと増えればきっと Flipboard が私たちの記事を新規の読者に推薦できる力になるだろう。

皆さんがどのようにして TidBITS を読んで下さっているにしても、私たちはそのことに感謝したい! どこか他の場所にも TidBITS を組み入れて欲しいとお思いならば、どうぞお知らせ願いたい。私たちに何ができるか考えてみたいと思っている。

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Rich Mogull  訳: Mark Nagata   

私は救急医療隊員: Apple Watch Series 4 が命を救う場合とは、救えない場合とは

私が初めて死体を見たのは 1990 年の秋だった。当時の私は毎週2晩ずつ救急救命士 (Emergency Medical Technician) 養成学校に通い、コロラド州 Boulder で本物の救急チームに初めて加わっていた。その男の隣人たちが心配して 9-1-1 に電話をかけたのだった。私たちは到着したが、すぐにその場を去った。この男がなぜどうやって死んだのか私たちには分からず、ただ彼は何らかの理由で倒れ、そのまま亡くなったように見えた。私たちにできることは何もなかった。

その後私は EMT 養成学校を卒業し、地元の消防・救急隊にボランティアとして参加しながら、救急医療隊員 (Paramedic、緊急医療処置ができる資格を持つ救急隊員のこと) 養成学校に通い、救急救命サービスで二年間フルタイムで働いた。それから、私は大学を卒業するための学業に戻り、山岳救助やスキーパトロールでも働き、災害対応チームにも参加するようになったが、これは今もまだ続けている。

私は心房細動 (AFib) による卒中も、転倒や墜落も、マウンテンバイクの事故も、あるいはさまざまの人的過失や愚かさの結果の数々も、見てきた。フルタイムで働いたのはほんの数年間だけだったけれど、25 年間にわたってずっと何らかの形で救急救命サービスのシステムに参加し続けてきた。

さて、新型の Apple Watch Series 4 は、健康状態監視機能のお陰で人の命を救うことができ、おそらくはスタート後数週間以内にそれは実際に起こるだろう。私が経験した実際の事例で、もしもその人が Apple Watch Series 4 を着けていたとしたらもっと良い結果になっていただろうと思われるものはいくつもあった。私が初めて目にしたあの犠牲者の場合は、それで助かったかどうかは分からない。おそらく無理だったかもしれない。でも、何人かの命を間違いなく救えるメインストリームのデバイスを作ったという点で、Apple は十分にその功績を認められるべきだと私は思う。

だからと言って、それが完璧だという訳ではない。Apple Watch Series 4 は、総合的な救命用デバイスには程遠い。重大な制約もあるし、現実に大きな障害にも直面している。とりわけ価格と、バッテリー寿命は大きな問題だ。けれども最終的には、これを身に着けていた結果として何人かの人たちが長生きできるだろう。時が経つにつれて、その機能はもっと信頼性が高く、もっと安価に入手でき、もっと包括的なものになって行くだろう。とりわけ、Apple に競合する各社が追い付いてくれば前進のペースが上がるだろう。

Apple Watch Series 4 が備えている健康関係の重要な機能は三つある。転倒検知と、心房細動検知と、単純化された心電図 (ECG) 機能だ。それぞれについて、それがどんな役に立つか、どのような制約に直面しているか、Apple が次に目指すのは何かを、論じて行こう。

転倒検知

長年にわたり、私は「滑って転んだ」という緊急通話に対する出動を数え切れないほど経験してきた。救急車を呼ぶ理由の中で、これは最も多いものの一つだ。特に高齢の人たちの場合は、いくら素早く出動しても転倒が命にかかわることもあり得る。頭部の怪我も頻繁にあって深刻な結果になることもあるが、股関節骨折の方がずっと数が多く、回復が非常に困難になることもある。

高齢の家族を監視しつつ、それでいて個人的自由を確保できるような、医療用デバイスを購入することができる。一定年齢以上の人なら、その昔にテレビでよく見かけた「助けて! 転んじゃって、立ち上がれないのよ!」というコマーシャルを覚えておられることだろう。昔からよくあるこの種のデバイスの多くは、助けを必要とする患者が自分でボタンを押してデバイスを動作させる必要がある。しかも、その種のデバイスの多くは固定電話に接続されて働くので、自宅の中でしか使えない。

Apple Watch Series 4 は、動作そのものはこれと同じだが、内蔵された加速度計とジャイロスコープを使って自動的に転倒を検知する。Joanna Stern の Wall Street Journal ビデオが、Hollywood のスタントダブルによる実演を見せている。転倒を検知した後、着けている人が 1 分以内にアラートに応答しなければ救助を求める。Apple Watch は手首に固定されていると分かっているので、ナイトテーブルの上に落として間違ったアラームが出ることもないはずだ。ただ、あらゆる状況で転倒を検知できる訳ではないし、例えば心臓発作で崩れ落ちた場合のような、滑って転んだのではない状況では働かない。それでも、これが検知できるものの一部分は、直ちに命を救うことに結びつくだろう。また、従来の固定電話に接続されたデバイスとは違って、これは自宅の中とは限らずどこででも動作できる。

家族のために Apple Watch Series 4 を購入した場合、その人がシャワーの最中にも必ず手首に着けているようにしてもらおう。シャワーの中というのは、事故が起こる可能性が高いからだ。十分な耐水性能があるので心配は要らない。

誤検出が多過ぎても、私は気にしない。まず第一に、この機能がデフォルトでオンになるのは、そのユーザーが Health アプリの Medical ID 画面で自分が 65 歳以上だと設定している場合に限られる。そうでない人は、Watch アプリの中で自分でオンに切り替えなければならない。第二に、転倒のパターンの中には他とはっきり違うものがいくつかあり、転倒して、かつ 1 分間身動きせず、かつ音の出るアラートに反応せず、さらに 9-1-1 電話が呼びかけても返事がなければ、ほとんどのケースは除外できるだろう。もちろんこの仕事には誤検出が付き物で、救急救命士たちはしょっちゅう火事の誤報や負傷者のいない交通事故で出動している。でも、夕食の最中に呼び出されでもしない限り、私にとって誤報はそれほど気にならなかった。

残念ながら、転倒が検知されても、必ずしもすべてが良い結果に終わる訳ではない。でも、誰かが直ちに応答できる方が、何日も経ってから応答するよりも良いことは確かだ。

この転倒検知機能には三つの重大な阻害要因がある。第一はコストだ。とりわけ、すべての Apple Watch が対となる iPhone を必要とする点が大きい。これとも関連するが、第二は主たる対象の層が知能の衰えと戦いつつある人たちから成っているにもかかわらず、iPhone と Apple Watch の双方を操る必要があることの複雑さだ。そしてその延長として、第三には Apple Watch を常に充電された状態に保ち、常に身に着けているために努力を要するという問題もある。これもまた、最も弱い立場にある世代の人にとっては難題だ。

これらの問題点は、決して Apple が悪いからではない。これらはただ、現実世界がテクノロジーに対して持ち合わせている制約だ。このことを変えるために Apple にできる唯一の方策は、Apple Watch を iPhone に付随させなければならないという要件を取り除くことだろう。

全体的に見て、私はこの機能については信じられないほどワクワクした気持ちでいる。なぜなら、これは人の命を救うからだ。時には大言壮語が現実となることもある。

心臓学と心房細動についての予備知識

残りの二つの機能を論じる前に、人間の心臓がどのように働いているかの基本を理解しておきたい。ここでは意図的にすべてを単純化して話をしよう。この記事を読んで下さる心臓専門医がおられたら、どうぞ血圧を上げ過ぎないためにも、次のセクションまで飛ばして読み進めて頂きたい。

心臓は、左右二つの部分に分かれ、全部で四つの部屋がある。右側半分は血液を肺へと送り出し、左側半分は体の残りの部分へ血液を送り出す。それぞれの部分の上側にある部屋は心房と呼ばれ、言わば「ステージング用のポンプ」として血液を下側の部屋つまり心室へ送り、この心室が主たるポンプの役割を果たす。もしも心房がなければ、心室が血液を動かすことは可能でも、十分に効率的に送り出すことができない。

心臓を構成する細胞はなかなか野生児で「自動能」と呼ばれる能力を持つ。つまり、他の大多数の筋肉とは違って、神経細胞に依存することなく自ら電気信号を発生して独自に収縮する。心臓細胞は外部からの影響なしに自ら鼓動するのだ。また、心臓細胞同士の間にメッシュネットワークのような関係を形成して、周囲の細胞と影響し合いながら動く。すべてが協調的に働き続けるために、心臓には二つのペースメーカーがある。これらはそれぞれ細胞の塊で、強い電気信号を送り出すことで、すべての細胞が一緒に働いて血液を正しいタイミングで絞り出せるようにする。心房にあるのが SA node (sinoatrial)、心室にあるのが AV node (atrioventricular) だ。

SA node は、まるでバンドのドラマーのようにリズム正しく信号を発して心房を収縮させる。この信号が特殊な伝道路を伝い下り、AV node に達する。するとそこから別の伝道路を伝って心室全体に信号が発せられ、全身に血液を送り出す大きな収縮が引き起こされる。

このプロセスに故障を起こさせるような、多くのことがあり得る。中でも一般的なのが、SA node または心房の中の細胞に何かが起こって協調が崩れ、動きが同期しなくなる場合だ。これが原因で心房細動 (AFib) が起こることがあり、すると心房の細胞は一緒に働くのをやめてデタラメに収縮するようになる。そうなればもはや心房はポンプで血液を送り出すことができず、心室が勝手に働くに任せてしまう。それでも心室は懸命に努力して (それ自体良いことではない) 働き続けるが、そこから起こる最悪の問題は、血流が停滞する結果として心房や血液で満たされていない心室の中で血が凝固してしまうことだ。凝固した血が塊となって剥がれると、心室は喜んでそれを体の他の部分へと送り出す。もしもそれが脳の中で血管を塞ぐ血栓となれば、脳卒中が起こる。

心房細動 (AFib) が起こす問題は他にもあって、例えば心拍数が異常に高くなることもある。乱れた信号が AV node を混乱させ、結果として心室の鼓動が異常を起こし、心拍が乱れる。もしも心室が異常な高速で鼓動すれば、それは医学的に緊急事態だ。なぜなら、心臓は一定時間内しかそれほど高速には働けないからだ。さらに、心拍数が高過ぎれば血流の効率が下がり、卒中の危険がさらに高まる。

心室が細動を起こすこともある。けれども心室細動 (VF) が起これば血流が止まり、そのままではすぐに死んでしまう。もしも幸運が訪れれば (つまり VF を止められれば)、誰かが "Clear!" と叫んで、患者は目を覚ますことができるだろう。

心房細動 (AFib) を Apple Watch で検知する

Apple は Stanford 大学との共同研究を通じて、Apple Watch の心房細動検知機能に磨きをかけた。AFib の特徴として、乱れた信号が AV node や心室の他の部分に届くにつれて、心拍の乱れ、つまり不整脈が現われる。もしも心房が完全に止まってしまったり (そういうことも起こり得る)、あるいは乱れた信号がブロックされたりすれば、それはまた別の種類の不整脈 (電気的問題によるもの) となり、AV node と心室は独自の、規則的な、しかし本質的にゆっくりとした、心拍を刻み続ける。

どのバージョンの Apple Watch も、ウォッチの背面にある特殊な発光装置を使ってあなたの手首の皮膚の下に光を送ることにより、心拍を検知できる。いくつかのセンサーが戻ってくる光の微妙な変化を読み取り、心拍と直接関連する血流の変化を測定するのだ。かなりいい加減な説明だと思われたかもしれないが、その判断は正しい。手首での測定のみに基づく心拍監視は、あまり正確ではないことが知られている。

けれども、心房細動を検知するためには、心拍数の値そのものはそれほど重要でない。その代わりに、Apple Watch は不規則な拍動を監視する。その際には手首の上でウォッチがずれて動いたり、周囲の光が変化したりといった、本来あるノイズの要素も考慮に加えられる。AFib に特徴的な不規則性のパターンを十分な回数検知すれば、Apple Watch はアラートを出す。

心房細動は心臓の症状としては最も一般的なもので、特に高齢になればなるほどそれが言え、卒中を起こす主要な原因の一つだ。急性心房細動 (rapid AFib) つまり心室が高速で拍動するタイプの AFib を起こしている場合を除いて、自分でそれと自覚できることはまずない。だから、無症状の AFib を早期に通知してもらえることの価値は、非常に重大だ。早期に発見できれば、制御が可能だからだ。卒中を起こしてしまった後に比べれば、はるかに管理が容易だ。

手首に心電図 (ECG) を持つことの意義

心臓は強力で揃った電気信号を発するので、心電図を使ってかなり容易にそれを読み取ることができる。心電図は下の写真のようなグラフを生成する。基本的なことは簡単に読める。最初のちょっとした盛り上がりは SA node から出た信号だ。これを P-wave と呼ぶ。その後に信号が AV node まで伝わる間の小休止があり、それから QRS 複合によるスパイク波形が来る。この波形が、AV node が信号を発し、それが引き金となって心室全体が収縮することを表わしている。そして最後に来る盛り上がりが T-wave と呼ばれるもので、これは心室が次の収縮に備えて再充電していることを示す。

私の ECG に注釈を付けたもの、iPhone と AliveCor の Kardia デバイスおよびそのアプリを使って記録した。

従来型の ECG は、電圧の変化を検知するための電極を何個か皮膚に取り付けることにより、これらの活動を測定する。私が救急医療隊員として働き始めた当時は、屋外では 3-lead の ECG を使っていたので、最も明白なタイプの不整脈しか検知できなかった。電極の一つを右腕に、一つを左腕に、もう一つを左脚に取り付けることで、Einthoven の三角形と呼ばれるものが形成され、電気信号がどのように流れているかについて多角的な視点が提供される。今日では 12-lead の ECG を使うようになって、ずっと多くの視点が提供され、心臓発作のようなものも検知できる可能性が生まれた。

Einthoven の三角形は ECG が心臓の電気信号を読む方向を示す。Apple Watch Series 4 が使用する Lead I は上部を水平方向に読むが、Lead II は心臓と同じ方向のベクトルに近い向きで読む。

Apple Watch Series 4 には、Lead I ECG が装備されている。これは、指を Digital Crown に押し付けることによって呼び出される。心臓の状況をある程度うまく表示できるが、多くの場合 Lead II のデータの方が明確だ。なぜなら、その方が実際の心臓の伝導方向により近い角度でデータをキャプチャし、結果として最も強い信号を示すことができるからだ。Apple Watch のセンサーや、単誘導 (1-lead) の ECG に本来的な制約があることを考えれば、Apple Watch Series 4 が検知できるのは基本的なタイプの不整脈と、あとはいくつか興味深いフィットネス関係のデータのみといったところなのだろう。

AFib を識別することは、十分に可能なはずだ。なぜなら、いったん AFib が起これば、ECG 上には P-wave の欠落と、多くの細胞がバラバラに出す信号から来る多数のうねった線として典型的に現われるからだ。AFib をオンデマンドで識別できるようになれば、ただ単に光学的に検知した不規則な心拍のデータだけに比べてはるかに多くの視点を担当医師に伝えることができる。

しかしながら、Lead I ECG が心臓発作を検知することは不可能だ。他の種類の問題を検知できることはあるけれども、それらの多くはさらにもっと多くの情報を必要とする。例えば P-wave と QRS 複合との間の正確な時間差といった情報だ。Apple がそこまで踏み込んで病状の警告を提供するようになるにはまだ相当の時間がかかるだろうと思う。経験を積んだ医療のプロでさえそうした問題を見落とすことがある上に、単誘導しか使えないとなればなおさらだ。

私が思うに、Apple Watch Series 4 の ECG 機能が直ちに役立つ最も重要な応用法は、AFib 検知機能にさらなる磨きをかけることで、医師が既知の AFib 患者をより詳しく観察できるようになることだろう。時が経てば、間違いなくもっと研究が進んで、Apple Watch の Lead I ECG を使ってさらなる問題を検知できるようになるだろうが、それらはいずれも、検知可能で対処可能な、いくつかの主要でよく知られたタイプの不整脈の範囲を超えることはできないのではなかろうか。例えば心室細動を考えてみよう。これは検知は簡単だけれども、いったん心室細動を起こせば、あなたは死に行くことに忙し過ぎて、指を Digital Crown に押し付けることなど到底無理だろうから。

それでもなお、私は Apple Watch Series 4 の ECG 機能は有望だと思う。これは、医師が患者の既知の問題を追跡するために、最も役立つだろう。とりわけ、光学的 AFib 検知によって、従来診断のつかなかったタイプの AFib が見つけ出せると思われるからだ。今日、多くの AFib 患者たちは胸に小型のセンサーを埋め込んで問題を追跡し、症状が悪化すればすぐ医師に電話できるようにしている。つまり、医学的需要は十分にあるということだ。また、心臓に病気を抱える患者がいつでも特定の状況下で ECG を記録できれば、その ECG データを専門医と共有することで役に立つだろう。心臓の症状は、ほとんどの場合診察室の中で表面化するものではないからだ。いずれは、Apple がこのテクノロジーを拡張してもっと他のタイプの不整脈も検知できるようになれば嬉しいと私は秘かに期待しているが、すぐに実現されるとは思えない。

健康管理の新しい地平

Apple Watch Series 4 の意義は大きい。転倒の検知によって、ほとんど直ちに多くの命が救われるだろう。AFib (心房細動) の検知によって、卒中の発生率を減らす役に立つだろう。そして ECG 機能は、医師が自分の患者をより良く観察し、コミュニケーションを深めることに繋がるだろう。若く、健康で、アクティブな人たちでさえ、自転車の交通事故に遭った際にも、先天的または偶発的な心房細動の早期発見のためにも、その恩恵を受けられるだろう。

残念なことに、これらの機能は Apple Watch と iPhone を両方とも購入できるだけの財力を持ち、これらのデバイスを使いこなせるだけの認識能力を持ち、しかも充電されたウォッチを常時身に着けていられる、そういう人たちのみが享受できる。最も傷付きやすい人たちの間に広く使われるようになるためには、これらは極めて深刻な阻害要因だ。

しかしながら、それは決して Apple がここまでやってきたことの価値を減じるものとはならないはずだ。たとえ Apple Watch Series 4 の健康状態監視機能が不完全であったとしても、たとえそれがごく一部の病状や出来事しか検知できなかったとしても、それを身に着けていることで少なくとも何人かの人たちは、より長く健康な生活を送れるのだから。

さて、Apple が打ち立ててみせたことの説明はこれくらいにして、将来に向けて進むべき方向についていくつか期待を述べてみよう。

まず第一に、今後はもっと多くの保険会社が顧客に対して Apple Watch を提供したりあるいは助成金を支給したりするようになるのではなかろうか。既に AetnaJohn HancockUnitedHealth Group などいくつかの保険会社が、健康追跡で顧客を取り込むためにこれを始めている。これにより、ユーザーの金銭的負担がいくらかは軽減されるはずだ。また、Apple がさらに新しいバージョンの Apple Watch を導入しつつ古いバージョンを値引きして販売し続ければ、時とともに価格は下がるだろう。それにまた、医師たちがこのエコシステムを利用して患者たちとこれらの機能を利用するようになるまでにはもう少し時間がかかるだろう。

テクノロジーの進歩について言えば、私たち健康管理のプロたちがいつでも知りたいと思うバイタルサイン、つまり脈拍数、呼吸速度、酸素飽和度、血圧、それに血糖 (ブドウ糖) レベルを知ることができるようになるのが望ましい。

Apple は脈拍数を既に確保している。呼吸速度を電気的に検知することは可能だろうが、手首からは難しいかもしれない。残りの三つの解決法については数多くの噂が飛び交ってきたが、Garmin が出した最新のデバイスは酸素飽和度を検知できると主張している。脈拍数の検知と組み合わせれば、酸素飽和度の低さは睡眠時無呼吸症の診断の助けになる。睡眠時無呼吸症もまた、長期的な健康の問題の重要な指標の一つだ。心房細動の検知と同様に、睡眠時無呼吸症の検知は生活の質の大幅な改善の可能性を持っている。今後 Apple Watch が二回程度の改訂を経れば、この方向での新しい機能が登場しても私は驚かない。

血圧もまた、健康に関する幅広い問題の重要な指標だ。とりわけ卒中には深い関係がある。噂はさまざまにあるけれども、膨張式のカフを使わず血圧を検知できる手段で科学的根拠のあるものを、私はまだ見たことがない。これは技術的に大きな問題で、Apple はきっと何らかの努力をしているのだろうが、解決には手首以外のことが絡んでくるのかもしれない。

同じことが血糖レベルにも言える。糖尿病の管理には血糖値の測定が不可欠だ。現時点では、信頼できる測定のテクニックは少量の血液サンプルを必要とするものだけだ。ウォッチを使って正確な探知ができたならば、それは科学のとてつもない大躍進と言えるだろう。これもやはり、私たちの予想を超えたところにある。

そういった追加の機能はさて置くとしても、Apple Watch Series 4 はもっとアクティブなライフスタイルを促進し、大きな病に結び付く可能性のある心臓疾患の初期症状を検知することができ、特定の種類の命にかかわる事故の際に助けを呼ぶことができる。これらは私たちの生活を改善し拡張することのできる、非常に大きな進歩だ。私自身のごく限られた経験の範囲の中でさえ、現実世界の出来事で、もしその人が Apple Watch を身に着けていたならばもっとずっと良い結果になっただろうにと思えることが確かにあった。今年中に私は家族の何人かにそれぞれ Apple Watch を買おうと思う。デバイスに制約があることを知っていてさえも、私はもっとよく眠れるようになるだろう。

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TidBITS 監視リスト: Mac アプリのアップデート

訳: Mark Nagata   

macOS Server 5.7.1

macOS Server 5.7.1

Apple が macOS Server 5.7.1 をリリースして、Profile Manager の機能を拡張した。具体的には Apple Business Manager アカウントの構成、tvOS 用 App Store アプリのインストール、さまざまの新しい制限、ペイロード、コマンドの構成ができるようにした。macOS 用には、今回のアップデートで近接通信に基づくパスワード共有要求の許可、パスワードの自動入力の許可、管理者以外のユーザによるソフトウェアアップデートのインストールの許可など制限ペイロードの新しい設定ができるようになった。iOS の側では、Profile Manager が USB 制限モードの許可、Contacts の管理対象アカウントが管理対象外アカウントに書き込むことの許可、監視対象デバイス上での eSIM の無効化などをできるようにした。

macOS Server は今回から macOS 10.14 Mojave を必要とする。Apple が今回から Calendar Server、Contacts Server、Mail Server、DNS、DHCP、VPN Server、macOS Server によるウェブサイトなど、オープンソースの各種サービスをバンドルしなくなったことに注意しよう。この件に関しては 2018 年 1 月 26 日の記事“Apple、多くの macOS Server サービスを非推奨に”を参照のこと。Apple が、オープンソースの代替製品に乗り換えるための移行ガイドを公表している。(新規購入 $19.99、無料アップデート、106 MB、リリースノート、macOS 10.14+)

macOS Server 5.7.1 の使用体験を話し合おう

BusyCal 3.4.4 and BusyContacts 1.2.17

BusyCal 3.4.4 と BusyContacts 1.2.17

BusyMac が BusyCal 3.4.3BusyContacts 1.2.16 をリリースして、いずれのアプリにも macOS 10.14 Mojave 互換性のための修正を施し、Preferences > Updates でアップデートの頻度を変更できるようにした。

BusyCal 3.4.3 では、リンクの付いたノートをポストすると残りのコンテンツがリッチテキストに変わってしまったバグを修正し、他の Exchange または Office 365 アカウントの派遣ユーザーが自分の Inbox でミーティング以外の通知を見ることがないようにした。BusyContacts 1.2.16 は Google アカウントキーチェーンの認証エラーの処理を改善し、Mojave の activity パネルが電子メールやメッセージを表示しなくなった問題を解消し、一部の CardDAV サーバからの返答が重複したり矛盾したりした際の処理を改善している。

これらのリリース後間もなく、BusyMac は BusyCal 3.4.4 と BusyContacts 1.2.17 をリリースして Google が最近バックエンドに施した変更 (結果として起動時にクラッシュを起こした) との互換性を提供し、また Mojave 関係のバグをいくつか修正した。BusyMac によれば Dark モードには将来のリリースで対応する予定だという。(BusyCal は BusyMac からも Mac App Store からも新規購入 $49.99、無料アップデート、13.8 MB、リリースノート、macOS 10.11+。BusyContacts は BusyMac からも Mac App Store からも新規購入 $49.99、無料アップデート、7.8 MB、リリースノート、macOS 10.11+)

BusyCal 3.4.4 と BusyContacts 1.2.17 の使用体験を話し合おう

Little Snitch 4.2.1

Little Snitch 4.2.1

9 月の初めに Objective Development は Little Snitch 4.2 をリリースして、macOS 10.14 Mojave とその Dark モードへの互換性を追加した。このネットワークトラフィック管理ユーティリティはまた、特定のタイプの接続を "private" と宣言して、通常 Network Monitor に表示されるホスト名とドメイン名を隠し、Private Connections の要約項目のみを表示させるという機能に対応した。さらに、今回のアップデートでは NFS サーバプロセスとの互換性、コード署名チェックのパフォーマンス、サードパーティのアプリのローカライズされた Internet Access Policy の処理を改善している。

Objective Development はその後 Little Snitch 4.2.1 をリリースして、Mojave の App Store で不正なコード署名の警告が一部のユーザーに出ていたバグを修正した。この最新のアップデートではまた、ルールの重複に関するバグを解消し、Dark モードへの対応を改良し、10.13 High Sierra やそれ以前で Little Snitch Network Monitor のダークな見栄えを使う機能を復活させている。(新規購入 $45、無料アップデート、39.2 MB、リリースノート、macOS 10.11+)

ExtraBITS

訳: Mark Nagata   

Apple Releases “Everyone Can Create” Series on Apple Books

Apple、"Everyone Can Create" シリーズを Apple Books でリリース

Everyone Can Code 構想を精神的に引き継ぐものとして、Apple が新たに Everyone Can Create 教科課程を Apple Books 上でリリースした。図画写真音楽ビデオのそれぞれにプロジェクトガイドを提供するものだ。Apple はこれらのプロジェクトガイドを主として学校を対象とすることを狙っており、2018 年 3 月にプレビュー版が出て以来、350 校以上の学校がこれを取り入れている。学校を対象としてはいるものの、Everyone Can Create は誰でも無料でダウンロードでき、利用する際には iPad 上で Apple Pencil を使うやり方が最も適している。どうぞ皆さん、これらのガイドを使ってみて、感想をコメントに書き込んで頂きたい!

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Halide Designer Explores iPhone XS Camera Improvements

Halide の設計者が iPhone XS のカメラの改善点を検討

全体的に見て、iPhone XS は iPhone X からそれほど大きく進歩していないように見える。ただし、カメラだけははっきりと進歩している。プロフェッショナル向けの iOS 用カメラアプリ Halide を設計した Sebastiaan de With が、iPhone XS のカメラが進歩している点のいくつかを詳しく調べる。デザインし直された広角レンズ、新しくなったセンサー、長くなった露出時間などだ。 その後に続けて出した記事で、彼は iPhone XS のカメラにおけるソフトウェアの改善点を調べ、フロントカメラで撮った自撮り写真には「ソフトフィルター」が使われているという噂をずばりと切って捨てる。

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