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#1691: OS アップデートと盗難デバイスの保護、望みもしなかった Sonoma アップグレード、アプリの外部決済、触覚タッチの感応時間、血中酸素濃度機能の削除

Apple が多数のオペレーティングシステムアップデートをリリースした。そのうち iOS 17.3 は Stolen Device Protection (盗難デバイスの保護) 機能を組み込むとともに、AirPlay でホテルのテレビを選択できるようにし、Apple Music で共同作業によるプレイリストを可能にし、AppleCare と保証に関する情報をより多く表示するようになった。それ以外のアップデートは主として詳細不明の改良とセキュリティ修正のためのもののようだ。Ventura や Monterey のユーザーで、許可していないにもかかわらず勝手に Sonoma にアップグレードされてしまった人たちがいる。Apple にはこのバグを修正してくれるよう望みたいが、Adam はこの問題について解説するとともにその予防方法を述べる。Adam はまた、iPhone や iPad で長押しの感応時間を調整するためのあまり知られていない設定方法を紹介するとともに、Apple 対 Epic の独占禁止法裁判の実際的な結果について語る。それからもう一つ、Apple は米国連邦控訴裁判所にて控訴審が決着を迎えるまでの間新しいモデルの Apple Watch Series 9 と Apple Watch Ultra 2 で Blood Oxygen アプリを無効化することにした。今週注目すべき Mac アプリのリリースは Bookends 14.2.8 だ。

Adam Engst  訳: 亀岡孝仁  

iPhone や iPad 上で触覚タッチの感応時間を調節する

iPhone と iPad では、通知、アプリアイコン、ウィジェット、Mail のメッセージ、Safari のリンク、Messages のメッセージや会話の吹き出しなど、多くのインターフェース要素を長押しすると、追加のコマンドやオプションを表示出来る。TidBITS Talk の Simon は、iOS と iPadOS では、開発者が "ロングプレス" と呼ぶ時間をカスタマイズ可能にしていることを教えてくれた。Settings > Accessibility > Touch (Physical and Motor の下) > Haptic Touch で、Fast を選択してタッチして保持する時間を短縮するか、Slow を選択して増やすことが出来る。(同様のオプションは、以前のバージョンの iOS や iPadOS でも表示される。)

Haptic Touch settings

従って、どちらの方向でもタッチアンドホールド (長押し) アクションをトリガーするために必要な時間の長さが問題だと思った場合は、この設定を使って機器を自分の使用パターンによりよく適合させることが出来る。私は正確だがせっかちにタップする方なので、Fast 設定を試して、そちらの方がより好きかどうかを確認するつもりだ。また、動作がよりゆっくりだったり、画面上で狙った場所にタッチするのが難しい人達は Slow 設定を歓迎するのではと思える。何れにせよ、選択肢の下にある Touch Duration Test で試してみて欲しい。

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Adam Engst  訳: Mark Nagata   

App Store のアプリが外部サイトへの決済リンク提供を始める可能性

Epic Games が Apple に対して起こした何年も続く独占禁止申し立ての細々とした雑事で、自分の時間も皆さんの時間も浪費しないように私は努めてきた。かいつまんで話せば、Epic 社は App Store に対する Apple の支配を打ち破ろうと望み、Apple が課している 30% の手数料を全部回避するか、あるいは少なくとも減らそうと試みた。しかし 2021 年の裁判で判事は 10 件のうち 9 件で Apple の主張を認めた。残る 1 件について判事は開発者が外部決済のオプションに言及することを Apple が許していない点が California Unfair Competition Law のアンチステアリング規定に違反していると裁定した。これに対して Apple と Epic の双方ともが控訴し、最近になって連邦最高裁判所が双方の控訴を棄却したので、下級裁判所の判事の裁定が有効となった。

App Store external payment warning

その実際的な結果として、開発者が外部決済へのリンクを含めることを Apple が許すようになったので、これからはアプリ外での決済オプションがアプリの中に見られるようになるかもしれない。それでも開発者の側では数多くの手順を踏まなければならず、外部決済リンクのテキストとグラフィックの処理に関する Apple の厳しい制限に従い、ウェブ上での支払いに伴って起こることについて Apple は一切責任を持たないという恐ろしげな響きの警告文を我慢する必要もある。その上、開発者たちは毎月末の後 15 日以内にすべての取引を Apple に報告しなければならない。

その理由は、これらの外部決済にもやはり手数料が課されるからだ。Apple はずっと以前からこの 30% の手数料はコミッション料であって取引手数料ではないと言い続けてきており (オンラインの取引手数料は通常 3% 程度だ)、外部決済の分に対しても引き続き手数料を課す。結果的に、開発者が外部決済を使ってもほんの僅かの利益にしかならない。実際その差は 3% だ。現在 Apple は App Store での購入には 30%、小規模開発者および購読の2年目以降の自動更新分には 15% を課している。リンクがフォローされてから 7 日以内の外部購入に対するコミッションは 27%、小規模開発者と購読更新分は 12% だ。

言い換えれば、開発者たちはクレジットカード処理のために 3% の取引手数料を支払わなければならないので、外部決済を採用しても金銭上の利益は何もない。いずれにしても 30% なり 15% なりを払うことになるからだ。このようにコミッション料を差し引かれたとしても、開発者の中には、とりわけ大規模な開発者なら、外部決済のために余計な手間を掛けたとしても顧客と直接やり取りできる利点の方が勝ると考える者たちがいるかもしれない。

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Adam Engst  訳: 亀岡孝仁  

iOS 17.3、Stolen Device Protection 故に他の OS アップデートより際立つ

Apple はもう一つの大規模なオペレーティングシステムリリースの引き金を引いた。その中では iOS 17.3 が最も注目に値し、そこには待望の Stolen Device Protection 機能が含まれる ("Apple、登場予定の iOS 17.3 で Stolen Device Protection を導入" 14 December 2023 参照)。iOS 17.3、iPadOS 17.3、そして macOS 14.3 Sonoma もまた Apple Music 共同作業プレイリストをサポートし、watchOS 10.3 は Black History Month を祝うために新しい Unity Bloom 文字盤を搭載している。個々のアップデートを簡単に見てみよう:

全体として、これらのアップデートには、即座のアップデートを正当化するに足る十分な説得力はない。Stolen Device Protection をオンにしたい、或いは AirPlay をサポートすると思われるホテルに定期的に滞在するのであれば、すぐに iOS 17.3 にアップデートすることをお勧めする。そうでなければ、一週間待ってオンラインで問題が現れるかどうかを確認してから、ゼロデイの脆弱性をブロックするためにインストールすることをお勧めする。

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Adam Engst  訳: Mark Nagata   

Ventura/Monterey ユーザーは警戒を: 勝手に Sonoma になるかも

ここ一週間ほどのうちに、macOS 14 Sonoma にアップグレードしましょうと勧める macOS からの通知を自分は閉じたのにそれを無視して勝手にアップグレードされてしまったというユーザーからの報告が集まった。TidBITS Talk に最初に報告してくれたのは Dave C.、彼は開発者かつテクノロジーの経験豊富なユーザーであって、2018 年型 Mac mini で意図的に macOS 13 Ventura を走らせ続けていた。その通知を見た彼は左上の (X) ボタンをクリックして通知を閉じたのだったが、なぜかそれがインストールに対する積極的な同意と解釈されてしまった。

Upgrade to macOS Sonoma notification

残念なことに、Apple は "Install macOS バージョン名" という名前のアプリをダウンロードしてからそれを起動するという従来のアップグレード手順を、Ventura からはユーザーに止める方法を与えずスタートするアップデート風のプロセスへと変えてしまっていた。Howard Oakley によればこの新しいやり方のお陰でダウンロードすべきデータの量が劇的に減り、インストールにかかる時間も減るという。そのことと引き換えに、インストーラを簡単に停止させたりインストール先を別のドライブに切り替えたりする柔軟性が消えてしまった。

他にも何人ものユーザーが TidBITS Talk に報告を寄せて、同じ通知から意図せぬ Sonoma アップグレードが起こったと知らせてくれた。警告する投稿を読んでいたので、ユーザー blm は通知を閉じてから Sonoma アップグレードが走り出したのを見て、直ちに Mac を再起動することでアップグレードを阻止することができたという。Jason Kerr も同様の経験をして、やはり直ちにシステム終了することで間に合った。Will B. は意図しないままアップデートを走らせてしまい、インストールのため再起動するよう促されて初めてそのことに気付いた。彼は結局 Mac の電源を切り、macOS Recovery でブートし直して、System Integrity Protection (システム整合性保護、システムの特定の部分を保護する) をオフにしてから、ダウンロードされていたアップグレードファイルを削除して、再起動することによりアップグレードを防ぐことができた。

David Brostoff は通知を閉じてから数分間待ってシステム終了しようとしたが、時既に遅く Sonoma にアップグレードされていた。彼以外にも anch-innkRon LaPedisCharles Reeves, Jr. など何人かのユーザーが、通知を閉じた覚えもないのに Sonoma にアップグレードされていたと報告している。そちらの方がむしろ懸念すべき事態だ。

何が起こっているのか知ろうとして調べてみた TidBITS Talk 参加者たちは、この問題が Intel-ベースの Mac と M-シリーズの Mac の双方で起こっていること、macOS 13 Ventura を走らせていた人も macOS 12 Monterey を走らせていた人もいることに気付いた。David C. は標準ユーザーとしてログインしていて保護されなかったが、blm は admin ユーザーとしてログインしていたのにやはり保護されなかった。また、自動アップデートの設定もどうやら無関係のようだった。macOS に“アップデートを確認”させ“セキュリティ対応とシステムファイルをインストール”させるようにし“新しいアップデートがある場合はダウンロード”と“macOS アップデートをインストール”をオフにしていても、やはり問題が起こったという人たちが何人もいた。

Automatic update settings

Al Varnell はこの通知が macOSInstallerNotification_RC という名前のバックグラウンドアップデートから呼び出されており、そのアップデートは 2024 年 1 月 10 日にすべての Ventura ユーザーに向けて出されたもののようだと教えてくれた。まさにその日付が報告が出始めたタイミングと一致する。けれども単なる通知の存在だけでは、ユーザーが明示的に通知を閉じた場合にもアップデートを呼び出すべきだとはならない。

Will B. は礼儀正しく同情的な Apple Support の Senior Advisor と 45 分間かけて話をしたが、担当者の返答はこの状況は Apple の側で意図したものではないというものだった。担当者は、問題を経験した人には Apple Support に連絡をした上で、Feedback Assistant アプリを通じての報告も送って頂きたいと言っていた。とりわけ、現に Mac が意図せぬアップデートに脅かされている状態での報告を Engineering チームは必要としている、それがあれば関連するログを Feedback Assistant が全部取り込み、その時点でのマシンの状態のスナップショットが提供されるから、と担当者は言っていた。

アップグレードを未然に防ぐ方法がいくつかあるかもしれない:

望まない Sonoma に気付かずアップグレードしてしまうのが特別に心配ならば、さきほどスクリーンショットで示した自動アップデートの設定で“アップデートを確認”をオフにしておけば役に立つかもしれないが、通常は新しいアップデートが出ればそれを知らされる方がよいだろう。また、P. Boersting がメジャーなアップグレードを延期させるプロファイルをインストールするための手順を投稿してくれた。私はテストしていないが、ひょっとすると試してみる価値があるかもしれない。

今回の状況の核心からは多少外れるけれども、最後にいくつかの点をコメントしておきたい:

おそらく Apple は一言も口にしないまま舞台裏でこのバグを静かに修正することだろう。だから、TidBITS Talk やその他のオンラインの議論に目を配って、強制されたアップグレードの報告が出なくなるかどうか見極めたい。

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TidBITS 監視リスト: Mac アプリのアップデート

Bookends 14.2.8 Agen Schmitz  訳: Mark Nagata   

Bookends 14.2.8

Sonny Software が Bookends 14.2.8 をリリースして、Open Researcher and Contributor ID (ORCID) 識別子を使っている人にも対応するようにした。今回からこの参照文献管理ツールで自分の出版物とそれぞれの他の人たちとの関係を調べられるようになり、新たな引用が追加されれば通知を受けられるようになった。今回のアップデートではまた、Bookends フレームワークを最適化して (特にサイズの大きなライブラリで) パフォーマンスを高め、コンマが誤って引用の分離子とされてしまわないための対策をさらに施し、EndNote の XML 書き出しから参照文献を読み込む際の問題を解消し、Mellel 書類をフォーマットする際のエラーに対処し、Copy Formatted Citation のバグ 1 件を修正し、Google Scholar から読み込んだ arXiv DOI を持つ参照文献を読み込む際のエラー 1 件を解消した。(新規購入 $59.99、TidBITS 会員には 25 パーセント割引、111.8 MB、リリースノート、macOS 10.13+)

Bookends 14.2.8 の使用体験を話し合おう

ExtraBITS

Adam Engst  訳: Mark Nagata   

Apple、新しい Apple Watch で血中酸素濃度アプリを無効化

去年の記事“Apple、輸入禁止措置により Apple Watch の2つのモデルを米国で販売停止へ”(2023 年 12 月 18 日) を覚えておられるだろうか? このドラマには続編があり、米国連邦控訴裁判所は昨年 12 月末に、Apple が提案する変更によって医療用デバイスメーカー Massimo が持つ特許 2 件を侵害しなくなるかどうか判断するまでの間は製品の輸入を許可するよう求めた Apple の要求を認めた。そして今回、裁判所は輸入禁止措置を再び発効させて、最終決定までの間は措置を停止するようにという Apple の要求を却下した。だからと言ってこれは Apple が控訴に敗れたという訳ではなくて、ただ単に裁判所が審理の期間中は禁止しておく方が良いと判断しただけのことだ。

それでも、Apple は機能する Blood Oxygen アプリを搭載しない状態の Apple Watch Series 9 と Apple Watch Ultra 2 の販売を続けることはできる。これはソフトウェアで血中酸素濃度機能を削除するだけで米国際貿易委員会の輸入禁止措置を回避することができると米国税関・国境警備局が判断したからだ。

9to5Mac への声明の中で、Apple はこう書いている:

控訴が決着するまでの間、Apple は裁判所の判断に従うと同時に顧客の皆様が最小限の変化をもって Apple Watch にアクセスできるよう対策を講じます。米国においては Blood Oxygen 機能を持たないバージョンの Apple Watch Series 9 と Apple Watch Ultra 2 を導入します。既に購入された Apple Watch ユニットで Blood Oxygen 機能を持つものについては何の影響もありません。

だから、もしあなたが新しい Apple Watch を購入しようというのならば、Apple が Massimo と和解するか、あるいは何か別の回避策を見つけるまでの間、Blood Oxygen アプリを使うことはできない。既に血中濃度スキャナを搭載した Apple Watch を持っている人は今まで通り Blood Oxygen アプリを使うことができる。

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