TidBITS: Apple News for the Rest of Us  TidBITS-J#393/18-Aug-97

今度機能拡張がコンフリクトを起こしたらどうしようとお悩みの読者は? 今週号 Casady and Greene 社の Conflict Catcher 4.0 のレビューで Adam が対策をお目にかける。加えて Macworld 関連では、TidBITS 伝統のとっ ておきの記事を続行掲載。さらに Hacke のクラッキングのレポート(Hacke とは第 2 回 Crack-A-Mac コンテストの Web サーバの名称)、MacUser 誌 Macworld 誌合併続報、そして Word のマクロウィルスを回避するテクニッ クを多数公開。

目次:

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MailBITS/18-Aug-97

(翻訳:小川 浄 <HGB00351@niftyserve.or.jp>)

クラックさる! -- TidBITS-387 でお伝えした 2 回目の Crack-A-Mac Web サーバセキュリティコンテストが先週まんまと打ち負かされた報は、 Mac のインターネットコミュニティに驚きをもって迎えられた。最初の Crack-A-Mac コンテスト(「箱から出しただけの」Mac Web サーバを使っ ているのが特徴だった)と違い、第 2 回のコンテストではリモート管理、 データベースへのアクセス、その他の特徴を備えた上等なサーバ機能が用 意された。首尾良くなされた侵入は明らかに Blue World Communications 社の Lasso という CGI のセキュリティホールを利用していた。Lasso は WebSTAR と FileMaker Pro を結んでいたのだ。Blue World 社では Lasso 用のセキュリティ・パッチプログラムを出した。さらに Pacific Coast 社 も同様の潜在的危険性に対応するため SiteEdit 製品をアップデートした。 Crack-A-Mac コンテストは再稼動しており、97 年 10 月 15 日までに侵入 できた参加者に 10 万スウェーデンクローネ(約 12,500 米ドル)提供が ある点に変更は無し。[GD]

<http://hacke.infinit.se/>
<http://www.blueworld.com/>
<http://www.pacific-coast.com/>

筆者の誤りですか? -- TidBITS 読者の中の文章大家の存在多数が、先週 の Macworld Expo の記事への反応で明るみに出た( TidBITS-392 参 照)。筆者の受け取った電子メールのおよそ半分は、ショー内容や Apple 社と Microsoft 社の話ではなく、「テニヲハ」によって Jobs 氏を悪く描 いてしまうという筆者のまれに出る文章癖についてであった。「大勢の喝 采と歓声だけが Jobs 氏はコンピュータ界のロックスター待遇であるとい う事実誤認を表わしていた」と筆者は記した。Jobs 氏のロックスター的存 在位置を拍手喝采が示していたことを、実際悪い意味で述べるのに belie、 ビライという言葉をここに使ったつもりだ(belie には「誤りであると示 す」という意味がある)。我々はみなそれが偽りであることが分かってい る。この次、筆者は自分の文章をちょっとばかりの水酸化カリウム(つま りライ)できれいにしてしまおうかと考えている。さもなくば「違う角度 から考える(Think Different)」(これまた同記事中ミスタイプされてい た「見方を変える(Think Differently)」ではない)のを善しとする者と して批判の矢面に立っていくか、だ。[Jeff にも告げたが、ジャーナリズ ム界には 3 つのライが存在する。嘘(lie)、いまいましい嘘(damned lie)、誤りを示すこと(belie)である。 - Adam][JC]


マクロウィルス(反応を少々)

by Adam C. Engst <ace@tidbits.com>
(翻訳:尾高 里華子 <odaka@iprolink.ch>)

少し前に、マクロウィルスのことはしばらく記事にしないとお約束したの は重々承知の上で、どうしてもお伝えしたい役に立ちそうな情報を少し載 せることにした。

Michael Gibbs 氏 <michael.gibbs@cas.honeywell.com> は、次のような コメントを寄せてくれた:ウィルスに感染した“市販品や配布用など”の ディスクに対する警戒のことを書いてありましたが、これには、ほとんど のアプリケーションがインストールする際に機能拡張をオフにするように なっており、大抵の場合 Mac のシステムが免疫がなくなってしまうという 皮肉な一面もあるのです。私は機能拡張を外してリスタートする前に、イ ンストールディスクすべてを SAM でチェックするようにしています。

Michael はいいところを突いている。インストールする前にオリジナルの ディスクをチェックするのはいい考えだ。だが、ほとんどのアプリケーショ ンのインストーラーにはファイルが圧縮された状態で入っているため、感 染を見つけ出すチェックに引っ掛からない。したがって、用心のために新 しいプログラムをインストールした直後にもチェックを行った方が良いだ ろう。

非公式ではあるが Microsoft のある社員 が次のようなメールを送って くれた: Word for the Macintosh の次期バージョンには、Word 97 for Windows と同レベルの改良されたプロテクションが施されることになりま す。マクロが入った文書を開こうとすると Word は警告を発し、マクロを 実行せずに文書を開くことができるようになるのです。この機能はデフォ ルトとして設定されます。Word では、VBA プロジェクトレベルで、Normal (標準)テンプレートをロックしたり、パスワードプロテクトをかけたり できます。これで Normal テンプレートにマクロを加えることができなく なるのです。ただし、スタイルやツールバーの変更のようなそのほかのカ スタマイズは可能です。これらすべては、Word 内で実行されるので、現在 SCANPROT にある制限を受けなくなります。

記事中にあった、変換によりマクロの命が絶たれるという話は、全くその 通りです。現在 Word から、または Word への変換のほとんどすべては、 相互変換形式である RTF を使って行われています。今までのところ(そし て多分今後も)RTF にはマクロが書かれないようになっています。だから、 変換の際にすべての既存のマクロが文書から取り除かれることになるので す。つまりこれで、ユーザーは文書からウィルスを簡単に取り除くことが できるのです。単に文書をひとまず RTF [これは Save As のダイアログに ある Interchange Format でよく知られている - Tonya] として保存して、 そして Word の文書に戻すのです。これを行うと、文書の内容自体はその ままで、マクロ、お手製メニュー、キーボードマッピングなどが取り除か れます。

Kendall Bullen 氏 <kendall@his.com> は次のような Tips を教えてく れた:マクロの入ったファイルを開く代わりに、Word の新規文書を作成し て、File メニューから Insert を選び、疑わしいファイルをその新規文書 に挿入します。フォーマットが施されたテキストもうまく挿入でき、普通 にファイルを開いた時に実行されるマクロが勝手に実行されることもあり ません(ただし、ほかのテンプレート情報も失われてしまう)。この方法 を用いて、Word 6 で文書をいくつか“感染していない”ものにしてあげま したが、我々が試した限りではうまくいきました。

Jonathan Rynd 氏 <jrr7@cornell.edu> によると、Padgett Peterson 氏 が作製したフリーウェアの Microsoft Word 用マクロスキャナ、MacroList というものがあり、使ってみたところなかなか役に立つとのことだ。

<http://www2.gdi.net/~padgett/av.htm>


Macworld Expo '97 最良品

by Jeff Carlson <jeffc@tidbits.com>
(翻訳:松岡 文昭 <mtokfmak@mxa.meshnet.or.jp>)

Macworld Expo で最も楽しめる事柄の一つは、普通とは異なった理由で注 意を引くアイテムや製品、そしてイベントを探すことである。私の今年の 探索は幾つかの並外れた事柄によって報われた。

ピクルスの最も創造的な使用 -- David Pogue 氏は彼の著書 The Weird Wide Web の呼び売りを行いながら、木枠とピクルスを串刺しにするための 2 本の釘と古いランプからの電源コードで作られた奇妙な仕掛けで、ピク ルスに光を放たせたり光らせたりしていた。ピクルスを保存処理するのに 使われる塩は電気で反応する。人々が笑い始めたとき、「これは科学なん ですよ!」と、彼は声高にそのショーを正当化したのだ。

クールだがしらけたアトラクション -- Power Computing は、勇敢な展 示会来場者がボストン・ハーバー越しにバンジージャンプできる背の高い 艤装 Power Tower で、昨年、名を残した。同社は Power Tower を引っ提 げて戻ってきたが、それは背が低く、興奮の度合いが減ったバージョン Power Zip Line であった。体をハーネスで縛り、地面に向かって傾斜の付 いたケーブルを滑り降りるものだ。面白そうではあったが、ハーバーに向 けてまっ逆さまに落下するのとは全く同じではないのだ。

ベスト・エンターテイメント -- 私は不幸にもこれを見損なってしまっ たが、多くの人達の言うには、今年一番の見物は Mac OS 8 のお披露目で のことだった。ソウルのゴッドファーザー James Brown 氏が、熱狂的な 2 時間のセットで群衆を楽しませたのだ。

最も不運な衣装 -- すべての Expo には、従業員にコスチュームを着せ 楽しむ会社が一つあるように思える。今回のショーでの勝利者は、クール な新デジタルカメラのリリースに併せ、MPEG Cam コスチュームを作成した Hitachi 社の皆さんだ。唯一の問題は、コスチュームが布と発泡スチロー ルでできていたことから、そのすらりとしたカメラがぐにゅぐにゃの Star Wars のロボットのようになってしまったことだ。

ベスト・フロア・エンターテイメント -- この賞は疑問の余地なく、 Motorola 社の Mac 互換システム StarMax ラインの見せ場で、ブース前の 通路を一貫して人垣で埋めた奇術師の Joel Bauer 氏に送られる。彼は単 に優れた奇術師であっただけでなく、彼はインフォメーションに完璧に精 通し、台本なしでパフォーマンスを行ったのだ。だから、あなたが彼の一 席を見ていたとしても、次のショーでは異なっていることは請け合いであっ た。種も仕掛けもなく、彼は真のプロだ。

最も役立つ粗品 -- Motorola 社は、彼等のプレゼンテーションを聞いて くれた人達に、通常 2 日目には破れてしまう他社の袋を容易に負かしてま う、頑丈なナイロンの提示会袋を配った。

最も良かった粗品 -- 今回の Expo は無償提供品がすこし少ないようで あったが、私は特に Alien Skin Software 社の人達が配っていたゴムのエ イリアンが気に入った。それ等はキュートと粗野の面白いミックスで、色 は配っていた従業員の髪の色としばしばマッチしていた。

殆ど言及されなかった追加展示物でベストなもの -- Apple 社のパビリ オンの奥深くで、Rhapsody アプリケーションを呼び物にしている会社の一 隊は、次世代のオペレーティング・システムがうまく進展していることを 証明した。Apple 社は Mac OS 8 のコピーを何百万個も売ることを優先し、 現在は Rhapsody から注意を引き離すようにしているが、次世代の OS が 出てきた時には、それを利用するためのソフトウェアが用意できているで あろう。来場者は、Rhapsody のプレ・リリース版で動いている実行可能な プログラムで遊ぶことができたのだ。


続・雑誌統合

by Adam C. Engst <ace@tidbits.com>
(翻訳:尾高 修一 <odaka@iprolink.ch>)

先週号( TidBITS-392 )に書いた Macworld と MacUser の統合 の記事に は、溺れんばかりの反響をいただいた。この記事の中で特に問題発言はし ていなかったので、この反響の大きさには正直言って驚いた。雑誌の定期 購読が読者のみなさんにとって重大関心事であることは間違いない。

定期購読 -- まず最初に、MacUser の Web サイトにある FAQ では、統 合された 2 誌の定期購読は適切な形で引き継がれることが明示されている ことをお知らせしよう。したがって、Macworld の定期購読はそのまま新 Macworld に引き継がれ、MacUser の定期購読は Macworld に切り替わる。 それに、もし Macworld と MacUser 両方を購読していた場合には、MacUser の購読料が Macworld の購読が切れた後に付け足されることになる。

<http://www.zdnet.com/macuser/mumwfaq.html>

海外版 -- 次に、海外版の MacUser と Macworld が米国版の記事を転載 することはあっても、海外版は米国にある同名の雑誌とは無関係だという ことを述べておくべきだった。Macworld と MacUser の統合は海外版には 全く影響がない。

インターネットの役割 -- 寄せられたメッセージの多くは、雑誌業界の 不振にインターネットがどのような役割を果たしているかという推測に関 するものだった。多くの読者は、今では情報がインターネットから (Macworld や MacUser の Web サイトからも)よりタイムリーかつ安価に 入手できるので Macworld や MacUser の購読を止めたと述べていた(海外 での米国雑誌の価格は異常に高いことが多いのだ)。予想していたことだ が、月刊誌の遅さと価格に不満を持っていた人たちの多くが米国・カナ ダ以外に住んでいたが、北米に住んでいる人たちでさえ印刷物よりもイン ターネットが良いと述べていた。もちろん、TidBITS 読者は必然的に情報 を印刷物よりインターネットから求める傾向の強い人たちだし、私が話を 聞いた Macworld と MacUser のスタッフには購読者数と広告収入の減少に インターネットが大きな役割を演じたと考えていた人はいなかった。

しかし、米国の人たちは Macworld と MacUser の発行部数のうち、海外の 読者が占める割合は比較的小さいと考えてしまいがちだ。正確な数字は不 明だが、たとえば TidBITS メーリングリストに登録している 47,000 人の うち、20 % ほどは海外在住者だということがわかっている。それでも、 Andrew Nielsen 氏はこう述べている。

「米国で生産されたものの『国外』での消費を語る際には一般化のし過ぎ に注意しなければなりません。特に基礎となるデータが存在しない場合は 危険です。Mac の 40 % で海外から買われていたことに Apple の経営陣が 気付くまでには長い時間がかかりました。また、私が初めて行った WWDC では、国内からの参加者用にはたくさんの窓口が設けられていたのに、 『国外』の参加者用にはたった一つしか窓口がなかったのにいらいらした ことを憶えています。推して知るべしでしょう。」

MacAddict は? 何人かの読者は創刊一年ほどになる MacAddict が Macworld と MacUser の凋落に一役買っていたのではないかと考えていた。 MacAddict の Cheryl England 氏は、もちろん MacAddict がこの統合の最 大の原因だと冗談を飛ばしたが、真面目な話、MacAddict の発行部数は今 では 16 万部ほどになっており、6 ヶ月前の発行部数検査の際に記録され た 12 万 7 千部から着実に伸びていると語った。MacAddict の楽観的で新 刊誌らしい活きの良い論調が Macworld や MacUser のより分別のある論調 に代わる選択枝を提供したことは間違いない。このことは何人かの読者か ら寄せされた意見からも見受けられた。

Cheryl は、MacAddict は Macworld と MacUser に別な意味での影響も与 えた可能性があると語っていた。まず、MacAddict が店頭に登場した時、 2 誌の店頭での売り上げが落ち込んだ可能性がある。Macintosh 雑誌を買 おうと思っている人は、突然 2 つではなく 3 つの選択枝を目にすること になったのであり、このことが Macworld と MacUser に良い影響を与えた はずはない。

次に、毎月 MacAddict に付属する CD-ROM は雑誌本体と不可分になってお り(Web サイトも不可分になっている。雑誌、CD-ROM、Web サイトは同時 にデザインされるのだ)、このことが広告主を大手の雑誌から引き寄せる ことになったかもしれないと語っている。たとえば America Online は、 MacAddict CD-ROM 全部のスポンサーとなるのではなく、CD-ROM のスペー スを買うことができる。CD-ROM 広告は AOL のクライアントソフトウェア やゲームのデモなどの大きなファイルを配布するための主要な手段である ため、印刷物やオンラインでの広告とは大きく様相を異にするに違いない。

広告売り上げの法則-- 雑誌の主な収入源は広告であるので、今まで述べ てきた発行部数の話はやや誤解を招くかもしれない。私が聞いたところで は、定期購読料は雑誌の印刷と配送の費用にほぼ相当し、スタッフやイン フラ、それに利益を賄っているのは広告収入なのだ。大判でつやつやの雑 誌を作る人の数を考えると(特にテスト用の試験室を持っている場合はな おさらだ)、雑誌の経営状態を維持するには広告料が絶えず流れ込んで来 なければならない。(Consumer Reports 誌や Cook's Illustrated 誌な ど、ほんの一部の雑誌は広告を受け入れず購読料主体の経営方針で活動し ている。だがこれはあくまでも例外だ。)

発行部数と広告は比例している。発行部数が多いほど、高い広告料を請求 することができるのだ。しかし、Macintosh 雑誌に広告を載せたい会社の 数には限りがあるので、純粋に売り上げだけに注目すると、Macworld と MacUser は同じ広告主を争奪していたのだ。さらに悪いことに、大規模な 合併が広告主を減らすことになる。もし Fractal Design 社と MetaTools 社がある雑誌に広告を掲載しいて、両社が合併して MetaCreations 社に なったら、大口の広告主が実質的に減少したことになる。残った広告主を めぐって争うことを止めることが両誌の統合の最大の理由かもしれない。

しかし、広告営業戦線ではもっと重要だったかもしれない要素がある。 Akimbo Systems 社の Roy Leban 氏 <royleban@akimbo.com> は次のように 語った。

「通販カタログがこの統合劇に果たした役割については述べていませんで したね。雑誌の広告収入が減少した背景には通販カタログの成長がありま す。カタログは目次と索引と宛て先の部分を別とすれば、一平方センチた りとも有料広告ではない部分はありません。これには前後の表紙まで含ま れています。ある会社が通販カタログに広告を載せなければ、その通販業 者は商品を取り扱ってくれません。単純明快です。ほんの一か月でも広告 を載せないと、通販業者は商品を売ってくれないのです。」

ということは、各社は雑誌とカタログ両方に広告を掲載する代わりに、雑 誌の代わりにカタログに広告を出すことにするのだ。だって、雑誌に広告 しても、ユーザーが通販業者から買おうとしても売っていなかったら意味 がないではないか? よほど恵まれた会社でないとどこにでも広告を出せる わけではない。

Macintosh の世界では、Windows の世界よりもメールオーダーの売り上げ の割合が多い。このことがカタログが Macworld や MacUserの広告収入 に 悪影響を与えたのだと思う。

奇妙なことに、このことはあまりよく知られていない。最近 Apple の支持 に乗り出したファンが、誰よりも支持を必要としている小さな Macintosh 会社の支持にもエネルギーを注いでくれればと思う。


Conflict Catcher 4.0 自ら標準を上げる

by Adam C. Engst <ace@tidbits.com>
(翻訳:亀岡 孝仁 <tkameoka@fujikura.co.jp>)
(翻訳:尾高 修一 <odaka@iprolink.ch>)

どんなプログラムでもこれで完成と言うことはない - 常に改良、機能追加 の余地はあるものである。とはいえあるプログラムは他のものより進化が 進んでおり、さらに新しい機能とか新しいインターフェースを考えつくの は難しいものもある。私にとっては、Casady & Greene 社の 65 ドルの起 動ファイル管理ソフト Conflict Catcher は後者の部類に確実に属するも のである。そのプログラマーである Jeff Robbin とはかなり前からつきあ いがあり、過去には Conflict Catcher に関しての改善とか変更の進言を 彼に対して e メールしていた。しかし時と共に Conflict Catcher がなす べき事でやれないことを考えつくのは難しくなってきていた。率直に言っ てそれはきちっとした錬れた製品である。そのうえ版を重ねるごとに、4.0 が最新であるが、いくつか有用な機能を加えさらに完成度を上げてきている。

<http://www.casadyg.com/C&G/Products/CC4/description.html>

背景 -- 歴史的に言えば、起動管理とはコントローパネルの事であり、 システムフォルダの中の特別なファイル(機能拡張、コントローパネル、 起動項目等々)から目的のファイルをマニュアルで取り除いたりすること なく起動ファイルをオンオフする手助けをしてきていた。Conflict Catcher が最初に登場したとき、問題のありそうな起動ファイルを探すための七面 倒くさい操作を以下のようなとりつきやすい方法で手助けしてくれると言 うので瞬く間に強い支持を受けることとなった - 一つのセットの起動ファ イルで立ち上げてみて問題がまだ存在するかどうかチェックをし次に違う セットで起動するといった具合にして問題を起こしたファイルを特定しよ うとするものである。Conflict Catcher はどのセットの起動ファイルをテ ストすれば良いかを考えるところは全部やってくれるので、使用者がやら ねばならないことは、まだ問題は存在しているかどうかを答えればよかった。

この様な早い時期から競合製品は追いつく努力をしてきた。Now Software 社は Now Startup Manager にコンフリクトテスト機能を加えたし、Mac OS 7.6 では Apple 社はこれまでのどうしようもなかった機能拡張マネジャー を格段に洗礼された有用なユーティリティに作り替えた。おそらくこの機 能拡張マネジャーが Mac OS 7.6 以降の一部として提供されるので Conflict Catcher にとってもっとも手強い競争相手となるであろう。市販 のソフトがすべての新しい Machintosh に付属してくるソフトと競争しな ければならないというのは容易なことではない。

ではこの新バージョンの Conflict Catcher はこれまで TidBITS-194 と TidBITS-276で取り上げた従来のバージョンとどこが違うのであろうか? 大部分はインターフェースに関するものであるが、目につくような機能上 の改良もいくつか含まれている。

コンフリクトテスト -- Conflict Catcher のもっとも重要な機能はや はりそのコンフリクトテストにあり、4.0 でも改良が加えられている。新 版ではこれから行う試験のチェックリストから始まる。これは Mac OS 7.6 で採用されたインストールの作業を始める前にどの様な作業をしなければ ならないかを順を追って教えてくれる統一化インストーラーの様なもので、 Conflict Catcher のチェックリストはまず問題を記述する事(これは驚く ほど役に立つ - 私はその問題に集中してみることが容疑者探しの助けにな る事に気づいた)、起動ファイルとシステムソフトが破壊されていないか チェックする事、直感的に怪しいと思う起動ファイルを指定する事、そし て自分の Mac 動作上常に開いていなければならないファイルだけをロック するよう求めてくる。

さらに Conflict Catcher 4.0 で新しくなったものに限度はあるが起動時 にクラッシュが起こったときに使える自動コンフリクトテストがある。残 念ながら私の場合この機能のテストをする機会に恵まれなかった、と言う のも私の Mac は長いこと起動時にクラッシュしていないからである。

追加情報 -- Conflict Catcher 4.0 での私の気に入った新機能はその 充実した参照ライブラリーで、起動ファイルについてとそれがどこから来 たものか、何をするものかについて記している。この情報はそれぞれの起 動ファイルが自分の中に持っているべき自己参照情報(悲しいことに、自 分が何であるか明らかにしていないものが沢山ある)を補足するものであ る。年とともに起動ファイルの数が急増してきて、それぞれが何をするも のでそしてそれは絶対にないといけないものなのかをたどることはさらに 困難になって来ている。過去には、A/ROSE や DAL の様にわけのわからな い起動ファイルが少なからずあったし、最近では JgPly.PPC.shlb や npacrx_ppc.Lib の様な暗号めいた名前が、これはクロスプラットフォーム アプリケーションから来ているのであろうが、増えてきている。いずれに しても Conflict Catcher の様なものなしでこれらを覚えておく事は不可 能である、また Conflict Catcher では自分なりの説明をつけ加える事も 出来る。さて Apple 社の機能拡張マネジャーはより最近の起動ファイルに は含まれている簡潔な記述情報も読むのだが、Apple 社がその他の会社か ら起動ファイルについての追加情報を収集し維持していく気になるとは思 いがたい。Conflict Catcher の最新のアップデートである 4.0.3 ではこ の参照ライブラリーを更新する新ファイル Conflict Catcher Reference を追加している。

個々の起動ファイルについてとそれが何をするのかの情報を提供するだけ でなく、Conflict Catcher はそれぞれの起動ファイルの Web サイトへの リンクも提供しようとしている。もし Internet Config を使用していれ ば、Internet Config 設定で指定された Web ブラウザーがそのリンクをク リックするだけで目的の Web サイトを開いてくれる。残念ながら、これら のリンクは問題の製品のページへ直接つながるのではなくその会社のホー ムページへ行ってしまう傾向にある。確かにある製品のページへ直接導こ うとするのは無駄な努力かもしれない、と言うのもそのような URL は しょっちゅう変更されるからだ。しかしながら方法がないわけではない、 Casady & Greene 社はこのリンクすべてをまず自社の Web サーバーに向け そこで自社で保有しているデータベースを使って目的のページへつないで やる事も出来るはずである(この手法を使えばどの起動ファイルに Conflict Catcher のユーザーの関心があるかについてのおもしろいデータ を集計出来るかもしれない)。技術的に言えばそれはロケット科学ではな いが、この URL を常にアップデートしておくにはかなりの努力が必要であ ろう。

Conflict Catcher コントロールパネルは Casady & Greene 社の Web サイ トへリンクする Web メニュー、Conflict Catcher Reference へのアップ デート、検索できるオンライン版の Conflict Catcher Reference ライブ ラリー、それに有用な Machintosh 情報及び出版物のサイトが含まれてい る(TidBITS は含まれていないナァー!)。

プラグインの管理とカスタムフォルダ -- もう一つの嬉しい新機能は、 どんなフォルダにもあるどんなファイルでも管理できることだ。ほとんど の Web ブラウザや、Illustrator、Photoshop、QuarkXPress などのプラグ インを使うアプリケーションなどに威力を発揮する(Conflict Catcher は このようなプログラムを直接サポートしている)一方、完全にカスタマイ ズ可能なので、たとえば Delayed Startup Items が使うフォルダを追加す ることもできる。(Delayed Startup Items は Josh Adams 氏と Erik Hanson 氏作の 8 ドルのシェアウエアだ。Mac を起動後ただちに使うこと ができるというものだが、指定した時間の間アイドル状態が続くと指定し たアプリケーションを起動するというものだ。)いずれの場合も、Conflict Catcher は名前に“(disabled)”が付いたフォルダを作り、プラグイン をここに移動することによってオフにする。

<ftp://mirror.aol.com/pub/info-mac/cfg/delayed-startup-items.hqx>

インターフェース微調整 -- Conflict Catcher 4.0 にはインターフェー ス面での改良も加えられている。私のお気に入りは、起動時に Caps Lock キーが押されていたら Conflict Catcher ウインドウが表示されるという ものだ。これはデフォルトのスペースバーなど、ロックされないキーを押 しておくよりはるかに便利だ。私はいつも正しいタイミングでスペースバー を押すのを忘れてしまう。

Conflict Catcher 4.0 にはほかにも起動ファイルを整理する方法がある。 修正された日付、インストールされた日付、メモリ使用量、読み込み時間、 メーカーなどだ。ビューによってはグループを縮小することができるので、 Finder ライクな三角形をクリックするとそのグループの中身が隠れるとい うことになる。私は普段起動ファイルをフォルダごとに表示しているが、 何か問題があるとインストールした日付順にソートし、何を最近インストー ルしたかが見えるようにする(新しいファイルが元凶であることが多いか らだ)。リストのビューでは、Conflict Catcher は各ファイルのアイコン を表示するので、描画は遅くなるが識別するのは容易になる。

古くからある Conflict Catcher の機能に、Mac を様々な設定で起動でき る起動ファイルセットがある。Conflict Catcher 4.0 ではシステムに固有 のセットが追加されたので、Apple が供給する特定のバージョンのシステ ムに含まれる起動ファイルだけで起動することができる。これはトラブル シューティングに便利だ。セットはアプリケーションごとにも設定できる ので、デフォルトではほとんどの Netscape プラグインをオフにし、時に は全部オンにしたセットで起動するといったことも可能だ。アプリケーショ ンごとのセットを使う場合には、Conflict Catcher の Finder メニューを オンにすることをお薦めする。問題のアプリケーションを起動する前にア プリケーションごとのセットをオンにする最も簡単な方法だからだ。

Conflict Catcher は以前から色々な方法で起動ファイルをリンクすること ができた。たとえば、A というファイルは B がオンの場合には常にオフ、 または A と B は常に同時にオフにするといったことを指定することがで きる。Conflict Catcher 4.0 での新機能は、メインウインドウでグループ のリンクが別のリストとして表示されるようになったため、簡単にオン/ オフできるようになったことだ。デフォルトのグループすべてには Apple のソフトウェアだけが含まれているが(カスタムグループも表示される)、 たとえばクリック一つで PowerBook 5300 の CD-ROM 関係の機能拡張をす べてオフにして、同時に Group Link リストですべての CD-RM 機能拡張が オフになっていることを確認できるのは嬉しい。

最後に -- Conflict Catcher に悪いところはあるだろうか? いや、これ には非の打ちどころがない。問題に遭遇したことはないが、Casady & Greene 社が何年にもわたって付け足してきた機能によってやや多機能化が 進み過ぎた感はある。今では Now Startup Manager もコンフリクト検査機 能を搭載しているので、Conflict Catcher を差別化するためには新機能を 加えなければならないため、これは難しいところだろう。だんだん似てく る競合製品を勝つことと、致死的な機能過多症候群の境は紙一重なのだ。

ドキュメンテーションが必要最小限になってきている昨今では(特にユー ティリティにおいては顕著だ)、Conflict Catcher の 272 ページに及ぶ マニュアルは群を抜いている。マニュアルは良く書かれており、プログラ ムのインターフェースを眺めればわかる程度のことしか説明していないよ くあるレファレンスマニュアルよりもはるかに多くの情報をあたえてくれ る。Conflict Catcher のマニュアルには Mac と Conflict Catcher がど ういうしくみで動作するかということや、様々な問題に遭遇したときにど うすべきかといったアドバイスなどが盛沢山だ。私自身はほとんどの場合 どうすべきかは知っているのだが、不可解な問題に直面した時にはマニュ アルをめくってみて明らかな点を見落としたりしていないか確認すること が多い。私は Ted Landau 氏の傑作、『Sad Macs, Bombs, and Other Disasters』第 3 版(Peachpit Press 刊、ISBN: 0-201-68810-7、29.95 ドル)を手にすることも多い。これは驚異的な Macintosh トラブルシュー ティング用レファレンスで、書店で Macintosh 本が苦戦している中、特に 注目に値するものだ。

DealBITS Discount -- Cyberian Outpost は TidBITS 読者だけに Conflict Catcher を 57.95 ドル(通常価格から 2 ドル割引)で提供して いる。

<http://www.tidbits.com/products/conflict-catcher.html>

    Casady & Greene -- 800/359-4920 -- 408/484-9228
      408/484-9218 (fax) -- <sales@casadyg.com>

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