TidBITS: Apple News for the Rest of Us  TidBITS#632/03-Jun-02

NASA の火星地表探索車を居ながらにして自分の Mac から操縦してみたいと思ったことはある?Matt Neuburg が Plantraco の Desktop Rover と Telecommander ソフトウェアで結構いいところまで迫る。そして地球上では、Microsoft が本日 Microsoft Office X Service Release 1 をリリースした - Tonya Engst が何が新しいのか(そして何が含まれていないのか)について詳細を報告する。さらに、Virtual PC 5.0.3, Eudora 5.1.1 (今や Mac OS X 下で動く), ConceptDraw 1.8, そして Spring Cleaning 5.0 のリリースについてお伝えする。

記事:

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MailBITS/03-Jun-02

Virtual PC 5.0.3 リリースされる -- Connectix は新機能とバグ修正を加えて Virtual PC をアップデートしバージョン 5.0.3 とした。新 Password Protection 機能は、ユーザーが VM(仮想マシン)の設定を変えたり、フルスクリーンモードから抜けでたり、あるいは VM を作成したり削除したりすることを出来ないようにする。Virtual PC 5.0.3 ではさらに Mac OS X 下での Sockets-Based Shared Networking (SBSN) が追加されてネットワーク上のコンピュータ間のアクセスが改善され、そして VM 上での COM ポート使用に関するコントロール機能が強化された。性能に関して言えば、Connectix は CPU 使用コントロール機能を追加し、これによってユーザーは Virtual PC がフォアグラウンドまたはバックグラウンドアプリケーションである時にプロセサタイムのどれだけを使わせるのかを指示できる。そして、 forward-delete (Del) キーの無いキーボード(例えば PowerBook とか iBook)のユーザーのために、Windows がロックしてしまった場合 Type CTRL-ALT-DEL メニュー(強制再起動)が新たに使えるようになった。この 5.0.3 アップデートは Virtual PC 5.0 かそれ以降の所有者には無償であり、10.1 MB のダウンロードとなっている。[JLC](カメ)

<http://www.connectix.com/products/vpc5m.html>
<http://www.connectix.com/support/vpcm_online.html>

Eudora 5.1.1 ついに Mac OS X 用に出荷 -- Qualcomm は長いこと待たれていた Eudora 5.1.1 の最終版を Mac OS 9 と Mac OS X の両方に対してリリースした。Mac OS 9 上での Eudora ユーザーにはいくつかの小さなバグ修正が嬉しいニュースだが、なんといっても大きいのは Mac OS X 用の Eudora が出来た事である。そうはいっても大きな変化を期待してはいけない - Mac OS X 下で得られるものはカーボン化アプリケーション(Mac OS X native)としての Eudora のほとんど全機能である。Mac OS X: Eudora に関する大事な変更は一つのパッケージに関連ファイル、そしてプラグインとユーザー辞書のフォルダが一緒に収められていることである(Eudora Stuff フォルダにアクセスするには、Eudora アプリケーションを Control-click し、Show Package Contents を選択、そして Contents/MacOS フォルダを開く)。Eudora 5.1.1 は 2001年4月中か以降に Eudora に支払をした人には無償のアップデートで、それ以前に Eudora を購入した人に対してのアップグレードは $30 で、新規購入は $40 である:詳細は Eudora Web サイトにある。もちろん、Eudora の全機能を無料で使える広告付きの Sponsored モードも使えるし、広告なしの機能縮小版の Lite モードもある。Eudora 5.1.1 for Mac OS X は 4.0 MB のダウンロードであり;Mac OS 9 用は 4.3 MB である。もしすでに Eudora を使っているなら、Help メニューの Payment & Registration コマンドから Find the latest update to Eudora をクリックすることでインストーラとドキュメントへのリンクを確立できる:それでもし Paid モードで使用中なら、5.1. 1 アップグレードに対して支払をする必要があるかどうかの情報もそのページにもりこまれている。[ACE](カメ)

<http://www.eudora.com/email/>
<http://www.eudora.com/download/eudora/mac/5.1.1/ReleaseNotes_Classic.txt>
<http://www.eudora.com/email/upgrade/>

ConceptDraw 1.8、XML サポートを追加 -- CS Odessa はそのチャート・ダイヤグラム作成プログラムである ConceptDraw と ConceptDraw Professional のバージョン 1.8 をリリースした(TidBITS-553の 「ConceptDraw コネクション」 参照)。主要な新機能には、XLM での ConceptDraw 文書の round-trip import and export 機能がある。これによりグラフィカル文書を容易にやり取りが出来かつ編集可能なテキスト形式でレンダーすることが可能となる。その他の改良点としては、テキストの検索置換機能が強化されたこと、このプログラムの新バージョンがでているか容易にチェックする機能、ConceptDraw 文書間でのページ固有のリンク、文書をズームするための新しいショートカット、Copy/Paste 対応の改善、Mac OS X インターフェース標準とファイルタイプ対応の改善、等々がある。このアップデートは登録ユーザーに対して無償である;ConceptDraw 1.8 は 2.6 MB のダウンロードで、一方 ConceptDraw Professional は 3.0 MB のダウンロードとなっている。[ACE](カメ)

<http://www.conceptdraw.com/en/products/cdr.shtml>
<http://www.conceptdraw.com/en/products/CDProfessional/>
<http://db.tidbits.com/getbits.acgi?tbart=06179>(日本語)ConceptDraw コネクション"
<http://www.conceptdraw.com/en/resources/18xload.php>

Aladdin、Spring Cleaning 5.0 をリリース -- Aladdin Systems は Spring Cleaning 5.0 をリリースした。これにより同社のシステムクリーンアップ・アンインストールユーティリティに対して多くの機能が追加された。Spring Cleaning 5.0 での新機能は、drag & drop による検索範囲の限定(これは今日の数十万ものファイルを持つ Mac OS X ボリュームに対して役立つ)、 Mac OS X のためのシステムメニュー、 Mac OS X のルートへのアクセスを必要とする操作のサポート、Web クッキー管理の改善、よりカストマイズしやすい検索機能、等々である。Aladdin によれば Mac OS X 下での性能は向上したというが、それでも Mac OS X 下での操作は非常にまだるっこしい。Spring Cleaning 5.0 は $50 だが、以前の版からのアップグレードは $30 である(同じ値段が他の Mac ユーティリティの所有者にも適用される)。[ACE](カメ)

<http://www.aladdinsys.com/springcleaning/>
<http://www.aladdinsys.com/store/upgrades.html>


検証: Microsoft Office X のサービスリリース 1

文: Tonya Engst <tonya@tidbits.com>
訳: Mark Nagata <nagata@kurims.kyoto-u.ac.jp>
訳 : 佐藤浩一 <koichis@anet.ne.jp>

Microsoft 社は今回、Microsoft Office X としては初めてのメジャーなアップデートをリリースした。それが Office X Service Release 1 (SR1) だ。11.9 MB のダウンロードサイズとなるこのアップデートは、主要な Office プログラムのすべて(Excel、Entourage、PowerPoint、Word)のバージョンを 10.0 から 10.1 へと変える。この SR1 アップデートの ReadMe ファイルには多数の変更点がリストされており、その中には個別の問題点の修正(例えばアクセント付き文字やその他の特殊文字などをタイプする際の信頼度の向上など)だけでなく Office 2001 から Office X への移行の際に省かれてしまっていた機能の復活(例えばカスタムツールバーボタンへのペーストなど)や、速度や安定性の向上に至るまでさまざまのものが含まれている。

< http://www.microsoft.com/mac/DOWNLOAD/OFFICEX/OfficeX_SR1.asp>

Microsoft 社はまた MSN Messenger 3.0 もリリースした。こちらはファイル転送や、コンタクト情報の読み込み・書き出しなどの機能が主に追加されている。また、このバージョンからインターフェースもアップデートされて、より Mac OS X の Aqua に近いものとなっている。MSN Messenger のアップデートは無料で、2.3 MB のダウンロードとなる。

< http://www.microsoft.com/mac/DOWNLOAD/MISC/msn_messenger3.asp>

バグ修正 -- 今回のサービスリリースの ReadMe によれば、数多くのバグが修正されているということだ。例えば、Excel X で作ったファイルを Excel 98 で開こうとすると「メモリ不足」エラーが出てしまっていたのが直っているし、Excel のページ設定で“High”以外を選んであっても Excel X での印刷が可能になっている。また、これは特に PowerBook や iBook を使って PowerPoint のプレゼンテーションをする人には嬉しいことだが、第二モニタやプロジェクタに接続中にラップトップがスリープに入った場合そのスリープから目覚める際にクラッシュすることのあったバグを Microsoft はやっと修正してくれた。

データベースのサポートを改良 -- Microsoft は Office X による FileMaker のサポートを大きく改善している。動作のために FileMaker のデータベース全体が同じマシン上にある必要がなくなり、サーバ上のデータベースでも使えるようになった。ODBC のサポートも復活した。もっともこれは ODBC ユーザーたちが希望してきたことがすべて叶えられたわけではないが。Excel の 10.1 バージョンには Microsoft Query を使っての情報伝達のために必要なフックが既に含まれていて、この Microsoft Query が ODBC のために必要なソフトウェアなのだが、実際にこれを動作させるためには別途 Microsoft Query for Excel X をインストールする必要がある。Microsoft は今後いつか Microsoft Query for Excel X をリリースする予定だというが、とにかく今回の Service Release 1 にはこれはまだ含まれていない。

けれども、もしもドライバがインストールされているのならば、古いバージョンの Excel で作った query を Excel X 用に更新することは可能だ。ただしここで注意しなければならないことは、Microsoft はもはや ODBC ドライバを供給していない、ということだ。ドライバが必要ならば他から、例えば OpenLink Software などから購入しなければならない。August Software から出ている ODBC Router も注目に値するだろうし、他の ODBC ドライバもこれから登場するかもしれない。

<http://www.openlinksw.com/>
<http://www.augsoft.com/>

データベース関連の他のニュースとしては、Entourage X でのメール、コンタクト、カレンダーイベントなどのデータベースファイルは、これまでユーザーあたり合計 2 GB までという容量の制限があったが、この制限が 4 GB までに拡げられた。(バックアップのためにそのファイルの場所を知っておきたいという人のために書いておくと、そのファイルはユーザフォルダの中の /Documents/Microsoft User Data/Office X Identities/Main Identity/Database にある。もしもあなたが“Main Identity”とは違う名前で使っているならば(あるいは複数の名前を使っているならば)“Office X Identities”の中の該当するフォルダに移動しなければならない。)

Palm 同期と透明オブジェクト処理 -- Entourage の Palm との同期機能は、この SR1 でもまだ実装されていない。Microsoft によれば、この機能は 2002 年 7 月 15 日に利用可能になるとのことだ。もう1つ、今回の SR1 に間に合わなかった機能修正として、格好良く透明埋め込みされたチャートのオブジェクトを印刷する機能がある。これは、Mac OS X の Quartz ディスプレイテクノロジーを Office X が利用する実例として、大々的に Office X のプレスリリースで宣伝された機能だった。けれども、確かにごくシンプルなシングルシェードの透明オブジェクトならば Office プログラムから印刷可能になっているのだけれども、一旦グラディエントを適用すれば、その途端にそのオブジェクトは透明ではなく不透過なものになってしまう。(悪いことに Excel X ではグラディエントの適用が必須なのだ。)このことは全体から見れば小さな問題かもしれないが、私自身プレスの人間として“おお、こりゃすごい機能だ”の大合唱に声を合わせてしまった立場から言えば、この限界を発見してとてもがっかりした、と言わざるを得ない。(スクリーンショットを撮ってからそれを印刷すればいい、という間に合わせの回避策はある。ただ、私はチャートを回転させたりシリーズの順序を入れ替えたりすることでより多くのチャートオブジェクトを可視に変える方法を勧めたい。)Microsoft によれば、この問題は将来の Mac OS X のアップデートによって解決されるかもしれない、という。

安定性と性能 -- PowerMac G4 733 MHz で Office X SR1 ベータ版のWord、Excel、そして PowerPoint (Entourage は除く) を使用してみると、完全にクラッシュするのが減った事に気が付いた。その上、Office バージョン10.0.0 ではツールバーやウインドウなどのインターフェース要素をクリックして Office アプリケーション (特に Excel) に切り替えることができず、Dock のアプリケーションアイコンをクリックしないといけないことが多々あった。この問題は、全てではないにしてもほとんどの部分でお目にかからなくなった。

自分のそれほど大きくない文書ではすでに充分速かったためか、Excel や Wordでの速度の改善は感じられなかった。ReadMe ファイルによれば、Excel のスピードは同じであり、Word は、長い文書をスクロールするときなど、数少ない特定の状況下でしか速度の改善が見られないという。

しかしながら、Microsoft は特に PowerPoint 10.1 で速度の改善をしたというので、PowerPoint 10.0 と 10.1 の間で、実際にいくつかのファイルで比較してみることにした。ファイルは、家族と PowerPoint に対しインターネットで苦情を訴えた人達から集めた。このようにファイルをテストするのは非常に時間がかかるだろうが、その一方でこうでもしなければ得られない情報が明らかになる可能性もあるからだ。

妹は、大学での宿題用に作成したプレゼンテーションを送ってきた。10.0 では大きいグラフィックの表示がいくぶん遅かったが、10.1 ではスムーズだった。父のスライドはデータ格納システムのイラストでたくさんの複雑なグラフィックを含んでおり、PowerPoint 10.0 では表示にきわめて長い時間がかかった。幸いにも、Microsoft は PowerPoint 10.1 でこれらを効率良く扱えるよう改善した。いらいらするくらい遅かったのが、スムーズなユーザ操作を可能としたのだ。

しかしながら、他のファイルでは PowerPoint にまだ改善の余地があったことを示している。別の姉妹から入手した栗の木の成長に関するプレゼンテーションでは、それぞれ 4 列のデータからなる表形式の Excel グラフがたくさん埋め込まれている。彼女によれば、PowerPoint 2001 ではファイルを開くことさえできず、グラフを修正するため Excel と PowerPoint を切り替えるのが遅すぎるという理由で、Mac 版 PowerPoint 98 を使う代わりに Windows 機を使っている。PowerPoint 10.0 ではファイルを開けたものの、グラフで問題に直面した。実際には OLE (Object Linking and Embedding、Microsoft の Office アプリケーションでデータを共有する方法) に関連していると想像するが、グラフをダブルクリックして Excel に切り替わるのに 10 秒、PowerPoint に戻るのにも同じ時間がかかった。グラフを Excel で修正するのは、メニューを開くだけで数秒止まるなど、耐え難いほど遅い。Office X 10.1 ではこれが若干良くなっている。PowerPoint と Excel の切り替えは数秒速く、Excel での修正はまあまあだ。Office X 10.0 ユーザの一部はこの改善を歓迎するだろうが、この速いとは言えないスピードと PowerPoint と Excel の切り替えを流れるように行なう必要があることから、彼女に Office X を勧めることはまだ出来ない。

別の情報源からは、会社が QuickTime ムービーとして書き出し自動プレゼンテーションをする 40 枚のスライドプレゼンテーションを入手した。ほとんどのスライドはグラフィックを少し含んでいるが、これはどちらのバージョンのPowerPoint も問題なく扱った。その中の 3 枚のスライドは QuickTime ムービーが含まれており、長さはそれぞれ 30 秒である。PowerPoint のパフォーマンスは良かったものの、QuickTime ムービーとして書き出し (Microsoft が言うところの“ PowerPoint Movie”フォーマット) には、どちらのバージョンのPowerPoint X でも約 10 分かかった。QuickTime ムービーを取り除いても書き出しに要する時間は短くならなかった。ほかのプレゼンテーションはそこまで時間がかからない (父の 33 枚のスライドショーで 30 秒程度) ので、おそらく元のプレゼンテーションのグラフィックが何か影響しているのだと思われる。

さらに、必要な QuickTime ムービーは PowerPoint ファイルと同じフォルダにあったにもかかわらず、もう一度自分で挿入するまでどちらのバージョンのPowerPoint X もそれを見つけたりあるいは QuickTime ムービーだと認識しなかった。限られたテストの中でだが、ムービーファイルを認識しない問題は一般的で、たぶん前のバージョンの Mac OS でプレゼンテーションを作成したことと関係があり、Microsoft が Office 2001 の Service Release 1 で修正した Office 2001 と同様の問題だろう。

みんなまとめて -- Office X Service Release 1 はまた、Office v.X Combined Updater 10.0.03 と同じ修正もインストールする。これには、Entourage X Hotmail Update、Network Security Update (Microsoft Security Bulletin MS02-002 にまとめられている)、そして URL Security Update(Microsoft Security Bulletin MS02-019 で説明されている) が含まれる。

< http://www.microsoft.com/technet/security/bulletin/MS02-002.asp>
< http://www.microsoft.com/security/security_bulletins/ms02019_mac.asp>

Service Release 1 は Office の全ての問題を解決するわけではないが、Microsoft が厄介な問題を取り除こうとするきちんとした努力は評価できる。ぜひこのサービスリリースをインストールして頂きたい。Office の挙動が大きく変わる事はないだろうが、うまくいけば将来の問題を回避できることだろう。

[ ほかのたくさんのプロジェクトに加え、Tonya Engst はかなりの量の原稿を書き上げたところだ。その本 - Office X for Macintosh: The Missing Manual はもうじき出版される。]

<http://www.oreilly.com/catalog/offxtmm/>


Desktop Rover が的中

文:Matt Neuburg <matt@tidbits.com>
訳:倉石毅雄 <takeo.kuraishi@attglobal.net>
訳: Mark Nagata <nagata@kurims.kyoto-u.ac.jp>

Plantraco の Desktop Rover は長さ4インチ、 愛嬌あるくらい可愛らしく、 全く無目的だ。 TidBITS で解説させてもらう言い訳は Mac OS X に関連が - ほんの少しだけ - あるという点だ。 正直に言えば、 Desktop Rover はおもちゃだ。 そして、 TidBITS の生真面目という評判を損なわずに言わせてもらるのなら、 これは楽しいと言いたい。

<http://www.plantraco.com/product_dtr.html>

もっとお近づきに -- $60 の Desktop Rover は手のひらほどの大きさで高さ1.5インチの小さな戦車で、ちょっと重量がある。 両側の四つずつの車輪と水平なレールの周りにゴムのキャタピラがついている。 両側の車輪の一つづつがキャタピラの駆動用のギアで、それぞれのギアは小さな電気モータで駆動されている。 それぞれのモータは前進、後退、もしくは停止が選択でき、それを組み合わせて操縦する。 もし両側が前進であれば Rover は前進し、片方が前進でもう片方が停止か後退であれば、Rover は回転する、など。

Rover は結構元気がある。 30秒以内で10フィート移動し、車のウィンドシールドみたいな険しい坂を登るだけの力がある。 主な障害と言えば、草のように滑ってしまうような悪路には対応できない。 いきなり険しくなる場合にも対応できない。 登れないからではなく、長さが短いため、垂直に近い格好になってしまい、仰向けにひっくり返ってしまって身動きが取れなくなるからだ。 平らに置いた1インチの厚さの本は手におえない。

Rover の背からは6インチの長さの絶縁された電線、つまりアンテナが突き出ている。 そう、Rover はリモコンで動くのだ。 送信機はタバコの箱ほどの大きさと形状で、それぞれのモータを制御するために前後に動かすレバーがついている。 そして“撃つ”ために三つ目のレバーがついている。 これについては後ほど述べたい。

コンピュータとの関連は? -- TidBITS の記事を書くためと称して私がこのおもちゃを無料で手に入れる言い訳にした Mac OS X との関連は次の通りだ。 Rover とは別に、$70 で CD-ROM と USB コネクタがついた小さなコードを手に入れることが出来る。 CD から Telecommander というソフトをコンピュータにインストールし、USB ポートからコードをリモコン送信機へつなぎ、Telecommander を起動する。 すると、レバーの替わりにソフトが送信機を操作する。

かなり単純なソフトだが、簡単なものではない。 モータの動作の九つの組み合わせが九つのボタンに対応している。 双方のモータが前進、片方のモータが前進でもう片方が停止、など。 “手動モード”ではボタンをクリックすれば Rover が少し反応し、次のボタンを押して次の動きを行っていく。 “デフォルトモード”では、ボタンをクリックすると動作が大きな創作画面にタイルとして現れる。 この画面でのタイルの順番が Rover が行うべき動作の順番を表わす。 タイルを並べ替えたり、切り取りや貼り付けたり、削除したり出来る。 それぞれのタイルには変更可能な所要時間も付いている。 “再生”ボタンを押すとこの順列が Rover に送信される。 順列を“マクロ”として保存して一つのタイルで表現することも出来る。

これはプログラミングと呼ぶには程遠いし、教育的とも言い難い。 繰り返しや分岐を表わすタイルもないのでタイルの順列を頭から終わりまで通して走らせるだけだ。 それでも、私達の科学的実験対象は、隣の家から引っ張ってきた13歳の男の子だが、熱中していた。 彼はプログラムを瞬間的に理解した。 そして、そこらから見つけたもので床に作った障害物コースを走るための順列を計算して改善するのにそれから一時間ほど費やした。 彼はまた外で Rover を土山などを登らせたりして遊んで楽しんでいた。 結論から言えば、午後のほとんどをテレビやエレキギターの演奏以外に費やしていた。 彼の両親との相談の結果、私はこのおもちゃは大いなる成功だと正式に宣言する許可をもらった。

ちなみに Telecommander は Java のアプリケーションなので Mac OS X が必要となる。 残念ながら、Java アプリケーションの常である弱点も全てある。 600 MHz の PowerPC G3 ベースの Macintosh ですら作動が鈍く感じられる。 タイルの選択や所要時間の変更なども永遠にかかる感じがする。 もちろんインターフェースは標準的なものでなく、メニューがウィンドウ中にある。 逆に利点としては機種に依存しない点が挙げられる。 隣近所の Windows NT のコンピュータにインストールして私の Mac と全く同じように作動した。 便利な機能としてはソフトが自動的に更新する点が挙げられる。 もしソフトを起動したときにインターネットにつながっていると、新しいバージョンがあるかどうか確認し、あればダウンロードする。 残念ながらこの機能ははっきりと説明されておらず、自動的だ。 Check For Updates といったメニュー項目はない。

その他のお楽しみ -- Plantraco から別売されている付属品として、ミニチュアサイズのビデオカメラモジュールがある。Rover の上半分を取り外してカメラモジュールをはめ込むと、Rover の高さが 1インチほど高くなる。このカメラは画像を UHF 電波(16 チャンネルまたは 19 チャンネル)で送信するので、近くにある普通のテレビで受信できる。つまり、Rover 自体が見えない場所からでもテレビ画面を見ながら遠隔操作で Rover をコントロールできるのだ。理論的には、テレビ信号をコンピュータに送って、すべてを1台のコンピュータ上で画像を表示しながら Telecommander を使って Rover を操ることさえできるはずだ。残念ながら私はレビュー界の重鎮とは見られていないようで、このカメラモジュールの無料サンプルまでは提供してもらえなかった。(というわけでこの部分の説明は Plantraco のパンフレットと QuickTime ムービーとの受け売りになる。)まあ、別にそれはかまわないだろう。だって、私には Rover を使ってスパイしたいと思うようなオフィスメイトなどはいないのだから。でも、もしもカメラがあったら、Rover に懐中電灯をくくり付けて裏庭のモグラの穴の探索に繰り出させるのも良かったかもしれない。

私が試すことのできなかったもう一つの機能、これは最低2台の Rover が必要なので試せなかったのだが、レーザー・シューティングゲームの機能が内蔵されているのだ。もちろんこの場合、オフィスに居る怠け者があなた一人、という可能性はまったく考慮されていない。これはオフィスの全員総出で遊ぶためのものだ。送信機の三つ目のレバーのことに先ほど触れたが、このレバーが Rover の“レーザーガン”をコントロールする。これを“撃つ”と、スタートレックに出てくる武器のような音を立てるが、実際に発射されるのは赤外線だ。もしもこの赤外線が相手の Rover に当たれば、その Rover は“被弾”サウンドを発する。送信機と Rover は四種類の周波数のうちの一つを使えるようになっているので、四台の Rover で戦うことができる。ゲームのルールは Rover のオンボードエレクトロニクスで指示されていて、次のようになっている。レーザーを六回発射したら発射を止め、レバーを反対側に引いて“装填”しなければならない。一秒間内に複数回発射すると、即座に全弾が消えて“装填”が必要になる。そして、10 回被弾すると、その Rover は動作不能となり、手で車体を持ち上げて電源を一旦切ってから入れ直さなければならなくなる。説明書にはっきりと書かれている通り、戦いに負けた者は、椅子から立ち上がって Rover をリセットしに行かねばならないのがペナルティーなのだ。

さらに別の機能、こちらは私が実際に試すことができたのだが、いわば二重の遠隔操作というようなものだ。この Telecommander ソフトウェアは二つのスレッドから成っている。一つはユーザーインターフェースのスレッドで、もう一つは USB ポートを使って通信するための不可視なバックグラウンドスレッドだ。このバックグラウンドスレッドは実際に port 1111 上で走る小さな TCP サーバーとなっている。ユーザーが Rover にコマンドを送ろうとする時、ユーザーインターフェースのスレッドが TCP クライアントとして動作してこのサーバースレッドと通信する。この、別スレッドによる分担の構造の意味するところは、インターネット経由で、別のコンピュータ上で動く Telecommander ソフトウェアを使って Rover を運転することができるのだ!(残念ながら Plantraco はこのプロトコルを公表していないので、我々が自分でクライアントソフトウェアを書くことはできない。)

私は自宅に二つのインターネット接続は持っていないので、その代わりに私は二つのコンピュータに異なった偽物の IP 番号を与えてそれらをイーサネットで直結することにより、ミニチュア版のネットワークを作ってみた。送信機と USB ケーブルでつながれている方のコンピュータでは Telecommander を起動させてそれを“サーバーモード”にし、ユーザーインターフェースをオフにしておいた。もう一方のコンピュータでは、Telecommander を起動させてそれを“リモートモード”にし、相手方のコンピュータの IP 番号を指定した。するとたちどころに、この二つ目のマシンから Rover を運転できた。コマンドはまずネットワークを通って一つ目のマシン上で走る Telecommander に送られ、そこから USB ポートを通じて発信されたのだ。

この機能は誰でも今すぐに試してみることができる。Plantraco ではウェブページを使ってテストドライブを公開しているのだ。このウェブページで“Care for a Test Drive?”オプションをクリックすると、ブラウザに新しいページが開いて Java アプレットがロードする。そして、Plantraco のオフィス内にある Rover に搭載された webcam の画像がそのページ上に映し出されるのだ。他の者が使用中の場合には、順番に並んで待たされる。あなたの順番が来ると、八つのコントロールボタンが現われる。ラッキーにも誰もプレイ中でなければ、コントロールボタンがすぐに現われるだろう。ボタンを一つ押してから一・二秒待つと、Rover はあなたの指示に反応して動き、あなたは目の前の画像が Rover の動きに応じて変化するのを見ることができる。これは楽しくて、とても簡単だ。このウェブベースの Java アプレットは家庭用バージョンと同じものではない。使っているのは webcam だし、Telecommander 二つの間の通信の代わりにウェブサーバーとブラウザによる HTTP を使っている。けれども、Rover をインターネット経由で遠隔操作できるという実感はこれで見事に体感できる。家庭用バージョンで Rover を運転するときはそのままでは画像を見ることはできない。もちろん、webcam と Apache をサーバーマシンで動かして Telecommander とウェブブラウザをクライアントマシンで走らせれば実現できるだろう。試してみたい方は TidBITS-619の Adam の記事“FireWire の Webcam を Mac OS X でドライブ”を参照されたい。ただ、私は webcam を持っていないので試してみることはできなかった。

<http://www.plantraco.com/telecommander.html>
<http://db.tidbits.com/getbits.acgi?tbart=06742>(日本語)FireWire の Webcam を Mac OS X でドライブ

ケーキのトッピング -- おもちゃというものは、イマジネーションそのものだ。Desktop Rover もその例に漏れない。これは本物の火星地表探索車ではないし、それほど速く走れるわけでもない。遠隔操作の“通信機能”はほとんどばかげているほどに単純なものでしかない。あなたもたぶん、NASA の科学者でもなければ宇宙飛行士でもないだろう。それにもかかわらず、この Rover には何かとても魅惑的なところがある。こういうちっちゃなものをちょこちょこと走り回らせてみたいと思う無意識の衝動にどういう心理学的説明が付けられるのかは知らないが、とにかくこの Rover は私の中のそうした衝動に火を付けてくれる。このチビ助はほんとにかわいくて、部屋の中をあたふたと走り回ったあげくにあなたの足元までやってきてピタッと止まる。その上、この Rover がより現実の偉大な先進科学に結び付いているというイメージは、Plantraco の巧みなユーモアのセンスとデザインのうまさも相まって、見事にこのおもちゃに具現化されている。

例えば、Rover の上面や送信機の表面は透明な青いプラスチックでできている。これは初代の iMac のイメージだろう。送信機の表面には火星の地表の写真が貼り付けてあり、その上に「地球上のみにて使用のこと」という注意書きが印刷されている。オン/オフのスイッチには「Groove」「Snooze」などと書いてあるし、外箱にはこの Rover のことを「21 世紀の先端世代に贈るヨーガ」と表現したかと思えば、Rover のパワーについて、嘘ではないけれど驚くほど大げさな宣伝文句が書き連ねてある。(例えばこんな具合:「君の家をエイリアンの視点で探索しよう!」)更には何人かの狂った科学者の写真を並べたかと思えば、お決まりのゴージャスな美人も、頭の先から爪の先まで宇宙服に身を包んでいるおかげで目しか見えないけれども、こちらを向いて笑っている。また、Telecommander ソフトウェアを起動させると、惑星間旅行を連想させるようなロケット発射サウンドが流れるし、使用中にも大して意味もないけれどテクノ調の雰囲気だけは生み出すようなステータスメッセージが次々とスクロールして流れて行く。いくつかは本物、いくつかはデタラメだろう:

Mouse clicked - マウスクリックを感知
nautical miles (34,584 km) - 航行距離 (34,584 km)
Lexan shield - Lexan シールド作動
High Gain Antenna (HGA) on - ハイ・ゲイン・アンテナ (HGA) 稼働
Starting client communications - クライアント通信開始接続開始中
Opening Socket[addr=localhost/127.0.0.1,port=1111,localport=49352]
Length is 25 - 長さ: 25
Data is 10 - データ: 10
Finished writing data 10 - データ書き込み終了: 10
Reading acknowledgment - 確認情報読み込み中
Roger. Good morning. - 了解。おはようございます。

一言で言えば、Plantraco のスタッフたちは、彼らが楽しんでいるという気持ちをあなたに伝え、同時にあなたにも楽しんでもらいたい、と願っているのだ。楽しく遊んだ後は、彼らの他の製品にも目を向けてみたい。Plantraco の他の製品としては、リモコンで動くファン駆動のヘリウムガス気球 mylar 型飛行船もある。これは部屋から部屋へと飛び回り、オプションのミニチュアカメラを取り付ければあなたのオフィスメイトのすべてをスパイできる。こいつは一台欲しいものだ。


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