TidBITS: Apple News for the Rest of Us  TidBITS-J#319/18-Mar-96

今週号では、新しい数種類の StyleWriterと新しい Newton の話題をお届け しよう。そしてまた、Netscape 2.01、Now utilities 6.0 のパブリック ベータのニュース、さらにPowerBook や RAM Douber、System 7.5.3 の問 題についてのレポートも掲載した。続いては、Nisus Writer についての 初めての本のレビューと、Apple 社の新しいNetwork Serverの重要性につ いての分析、そしてApple 社の Cool Tools 賞の受賞者達にその賞品の使 い道を語きいてみた。

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山浦 礼子  <raeko@aol.com>

目次:


MailBITS/18-Mar-96

(翻訳::山浦 礼子 <raeko@aol.com>)

StyleWriter とEthernet -- 先週、Apple 社は、カラーインクジェット プリンタ、Color StyleWriter 1500 と 2500をそれぞれ280 ドルと 380 ド ルで発表した。新発売となったプリンタは、モノクロでそれぞれ3ページ/ 分と5ページ/分(カラーの場合はすごく遅いということがわかるのだが) で印刷し、2500 については耐水性インクを使用している。Apple は StyleWriter EtherTalk アダプタも発表し、これによりユーザーは StyleWriter 2500、2400、2200、1500、そして 1200 を 10Base-T、あるい は ThinNet に接続できる。Apple によればこの EtherTalk アダプタは 4 月上旬に190 ドルで入手可能の見込みということだ。 [GD]

RAM Doubler、PowerBooks、そして 7.5.3? Connectix 社は、PowerBook 上で RAM Doubler 1.6.1 を使用した場合における問題についての調査レポ ートをまとめている。System 7.5.3 からマシンを起動させた場合は、間違 いなくクラッシュしてしまうことが明かになっている。レポートによれば、 Apple の低レベルのデバッガである MacsBug をインストールすることでこ の問題を回避できるということだ。 [GD]

<ftp://ftp.info.apple.com/Apple_Support_Area/Apple_SW_Updates/US/Macintosh/Utilities/MacsBug_6.5.2.sea.hqx>

Netscape 2 種類のアップデートをポストする -- Netscape 社は、 Netscape Navigator 2.01 をリリースした。2.0 を改良したものであり、 JavaScript を動作不可とする設定があり、かつセキュリティ機能が拡張さ れている。リリース 2.0 でサポートされなかったJavaScript を使ってユー ザの電子メールアドレスなどの情報を密かに収集するなどのセキュリティ 上の機能が追加されている。しかしながら皮肉なことには、新バージョンで サポートされた JavaScript を無効にする機能のせいで、JavaScrip に対応 していないブラウザでもロードできる Java ヘビーな Web サイト - NetScape 社自身のサイトもそうだ - を2.01では適切にロードしない可能 性がある。このバージョンには、フル・インストーラと輸出版でないフルバ ージョンにあてるパッチが用意されている。

<ftp://ftp.netscape.com/pub/navigator/2.01/mac/2.01NetscapeInstaller.hqx>
<ftp://ftp.netscape.com/pub/navigator/2.01/patch/mac/Netscape2.01USPatch.hqx>
<http://home.netscape.com/eng/mozilla/2.01/relnotes/mac-2.01.html>

また、Netscape 社は Power Mac 用のJava 対応のベータ版も、96 年 7 月 1 日までと有効期限を延長したものを再度ポストした。このリリースにはほか の変更点は何も含まれていない。 [GD]

<ftp://ftp.netscape.com/pub/MacJavaB1/Mac2.0JavaB1.hqx>

Now Utilities 6.0 パブリックベータ -- ソフトウェア会社でこのとこ ろ大流行りのパブリックベータ騒ぎに乗り遅れまいとして、Now Software 社 は 96 年 3 月 29 日出荷予定の Now Utilities 6.0 の(簡単な)パブリッ クベータを先週発表した。Now Utilities 6.0 は、Now Menus と Super Boomerang をアップデートし、頻繁に使用する単語や字句のマクロを自動的 に生成すると思われる Now AutoType を含む 3 種類の新しい機能が追加さ れている。現在の登録ユーザーは 29.95 ドルで、しかも“2 個分で、3 個 分”という嬉しい特別アップグレートが用意されている。ベータ版の使用有 効期限は、96 年 4 月 1 日となっている。ベータを試すには、下記のURL で“Download the Demo(デモをダウンロードする)”というリンクをクリ ックすること。この号の執筆中にはベータは入手可能にはならなかった。し かし、これがあなたの手元に届く頃には入手可能となっていることだろう。 [GD]

<http://www.nowsoft.com/products/utilities/NU6.html>


私は Joe の本です

by Tonya Engst <tonya@tidbits.com>
(翻訳:尾高 修一 <odaka@iprolink.ch>)

Joe Kissell 氏 <kissell@computergeeks.com> 作の『The Nisus Way』に はたいしたプロットがあるわけではない。しかし、この本はよく書かれて おり、どうすれば普通の人が Nisus Writer を意のままに扱って、さまざ まな曲芸を演じさせることができるかについて、おおむね優れた説明が書 かれている。この意味では、Joe の本は過去一年間に現れた 30 冊ほどの コンピュータ関連書籍となんら変わるところはないし、TidBITS がすべて のよいコンピュータ本の書評を載せるわけでもない。それではなぜこの本 を取り上げるのか?

理由は2つある。第一に、次のことを考えていただきたい。Nisus Writer はワープロとして必要にして十分の機能を備えているが、人々がほ かのワープロではなく Nisus Writer を選ぶ一般的な理由は、Nisus Writer のテキスト操作機能が、ほかのワープロが原始的な石器時代の道具 のように見えるほど充実しているからだ。非連続テキスト選択、複数のク リップボード、洗練された(複数ファイルにわたっても可能な)GREP 検 索、2 種類のマクロ言語のおかげで、Nisus Writer はユーザーが入力した テキストを考えられるほとんどあらゆる加工をした上ではき出すことがで きる。Nisus Writer のパワーユーザーである Sandra Silcot 氏がこのよ うな機能を利用して作成した HTML 用のマクロは(ある程度 HTML を知っ ていて、それほど多くの拡張タグを使わない人にとって)、Nisus Writer を最高の HTML エディタに仕立てあげている。

<http://www.nisus-soft.com/>
<http://www.unimelb.edu.au/~ssilcot/SilcotsHTMLMacrosReadMe.html>

Nisus Writer のマニュアルは、ワープロとしての機能はほぼカバーしてい るものの、強力なテキスト操作機能の説明に関しては極めて不十分だ。こ の問題を解決するため、何人かの Internet ユーザーがオンラインチュー トリアルを書いたりしたのだが、そのいずれも私にはあまり役に立たな かった。私はそこそこのパワーユーザーではあるけれども、プログラミン グらしきものは常に避けて通りたいという種類の人間なのだ(10 年前に高 校でやった AP Pascal の授業の後遺症のせいだろう)。市販されている唯 一の Nisus Writer 解説本である Joe の本はマニュアルが持っている問題 を解決しており、パワーユーザー(とパワーユーザーではない人達)に Nisus Writer の達人となるための秘伝を伝授してくれる。

The Nisus Way が重要な第 2 の理由は、CD-ROM が付属していることだ。 この CD には、本の付録として付いてくる CD に普通入っているようなも の(カスタムツールバー、カスタムマクロ、サンプルファイル、その他 色々なアイテム)が収録されている。しかも、すべての機能が使える 90 日間有効な「デモ版」Nisus Writer 4.1 が入っている。このソフトが気に 入って 90 日目以降も使いたいと思ったら、79 ドルで製品版を購入するこ とができる(Nisus Writer の定価は 257.50 ドルだ)。したがって、一度 でも Nisus Writer を買おうかと思ったことがるなら、この買い方が正解 だろう。また、Nisus Writer 4.1 にはわずかながら改良された Sandra の HTML マクロが収録されているほか、Joe がさらなる改良を加えた Sandra の マクロも収録されているので、本を持っている人は好きなほうを 使うことができる。(Joe のマクロを使っていない Nisus Writer ユー ザーは、Sandra のマクロは現在 v. 2.5.2 だということを覚えておくとよ いだろう。前述の URL からアップグレードされたい。)

Adam と私は別々の高校に通ったが、2 人とも “Joe” と彼の臓器が活躍す る教育用映画を見ながら楽しく保健の授業を受けたものだ。その映画で は、「私は Joe の心臓です」「私は Joe の腎臓です」などという具合に 進行するものだった。そんなわけで、私達はなんと QuickTake に Joe という名前をつけていたのだ ― 「私は Joe の眼です」、というわけだ。 Joe Kissell が映画の中の Joe と同じ人物だとは思えないが、この一連の 映画があまりにも良かったので、The Nisus Way を読んだ後、私はこの本 を「私は Joe の本です」と名付けたのだった。

MIS:Press 社から出版されているこの 29.95 ドルの本について詳しく知り たい場合には(それから一部の章を読んでみるには)、Joe がこの本のた めに作った Web ページを見ていただきたい。

<http://www.computergeeks.com/tnw/nisusway.html>


Network Server の反撃

by Chuck Goolsbee <goolsbee@tpdinc.com>
(翻訳:西村 尚 <hisashin@st.rim.or.jp>)

私は Apple 社のサーバ戦略が進化していくのを熱心に観察(そして参加) してきた。長年に渡って AppleSare(そしてほかのサーバ)を管理するよ うになってからは特にそうだ。サーバの世界での Apple 社の努力は本当に 驚くべきものだった。それほど昔ではない頃を振り返ってみると、彼らは SE/30 で動かす AppleShare 2.0 のようなできの悪いソリューションを売 却することで、この市場を Novell 社に明け渡そうとしていた。多数のユ ーザやあらゆるサイズのファイルを多量に抱えた場合、この戦略では、ど こかよそでほかの手ごろなサーバソリューションを探さざるをえなかった。 道を決するできごとは 1992 年夏、Santa Clara で開催された Mactivity Conference で起こった。Apple 社のサーバ部門(当時 Enterprise Services Division と呼ばれた)のプロダクトマネージャ達が大ホールで 大勢のネットワーク管理者たちと会い、熱心に耳を傾け意見交換を行った のだ。あるコメントが頭にこびりついて離れない。「ボクたちは本当に高 性能なサーバを作れるんだよ。でもね、それはトップレベルの UNIX マシ ンで動かさなきゃならないものになるだろうね。君らはそういうマシンを 買って使いたいと思うかい?」その群衆の応えが鳴り響いた。「イエス!」

一年後の Mactivity '93 で、彼らはパーパスビルトなファイルサーバソリ ューションを提供する Apple Workgroup Server 95 を発表した。 [“パー パスビルト”とはマシンが特定の目的を考えて作らていることを意味し、 たとえば、どんなデスクトップ型 Mac をサーバとして使っていてもこれに は当てはまらない。 -Adam] これは、今は見捨てられた Apple 製 UNIXで ある A/UX を効果的に利用できる最後のすばらしいマシンだった。AWS95 は(Network Server シリーズまで)大きなワークグループ向けの最高の Apple 製サーバとなった。以前の職場で、わが AWS95 はワードプロセッサ とスプレッドシートを使う 60 名以上の社員に快適にサーバ機能を提供し た。その間、同時に 5 名から 10 名のスキャナオペレータと画像レタッチ 専門家に 巨大な 画像ファイルをサーブしていたのだ。これは NovellNetWare に性能で匹敵し、セットアップや管理はもちろん総費用で は完全に打ち負かすものだった。

そうこうしているうち、われわれのようにプリプレス業界にいる人々は、 高解像度画像にともなう印刷の待ち時間とネットワークトラフィックを減 らすためにサーバ方式を採用していった。つまり OPI(Open Pre-press Interface)である。OPI サーバを稼働させるとネットワーク、I/O、CPU に極端に負荷が集中する。わが愛すべき Mac OS は OPI サーバとなるには ちょっと適していない。Helios 社、IPT 社、Hyphen 社などのプリプレス ベンダーはそろって Sun Microsystems 社の Sparc ワークステーション あたりに組み込んだ OPI ソリューションを送り出していた。われわれはこ ういった UNIX マシンを、強力な AppleShare ファイルサーバと(OPI)プ リントサーバとしてのみ使っていた。Sparc 2 または 10 で AppleShare サーバはすばらしいものになるが、これはパーパスビルトなサーバマシン ではないのだ。Apple 社の Network Server ラインの投入時期は今をおい てほかにはないが、それはわれわれの多くが老朽化した 90 年代初期の Sun や SGI をまだまだ高価なピザボックスに買い換えるという高出費の 選択に迫られているからだ。Apple 社が投入した Network Server には、 次のようなアドバンテージがある。

なかでも最高なのは、Apple 社はこのアイボリータワーを社外に持ち出し、 何百人ものネットワーク管理者にこのボックス構築の助けになる助言を求 めたことだ。彼らはさまざまな開発段階で、このサーバを過去一年半の3 つのシーズンに私の住む地域で開催された ANNA(Apple Network Manager'sAssociation、ユーザグループ)の分科会に持ってきたのだ。わ れわれがApple の未来に関わるのだという Macintosh コミュニティーか らわき上がる歓声を考えてみれば、あのサーバ部門が 1992 年以来ちょう ど同じことをやってサクセスストーリーを築いたというのは皮肉なことだ。

<http://www.anma.org>

さて、こういった全体を背景として、 TidBITS-317 の Network Server に 関する記事の中の 2、3 の点を取り上げなければならない。TidBITS は Network Server が Apple Internet Server Solution マシンの市場メッセ ージにダメージを与える可能性があるとコメントした。私は違うと思う。 この Network Server は現行の Internet Server 製品ラインと競合するも のではない。これは「GM の大型トラック部門がシボレー・コルベットの売 り上げを食いつぶしているんだ!」といった言質のようなものだ。

[私は今でもこの危険性があると思っている。現実がどうかということをい っているのではなく市場メッセージのことをいっているのだが。Apple社 はずっと簡単な操作と低コストの実現に尽力してきた。ところが、これら の Network Server がいかにすばらしいものであっても、Internet サーバ に比べれば操作は難しくはるかに高価なのだ。これはいってみれば、感覚 の問題だ。 -Adam]

一言で表現するとしたら、Network Server は Apple Internet Server を 補うものだ。例を一つ示そう。一般的に CGI は Web サーバのパフォーマ ンスを食いつぶす最大のものだ。一つの解決法は、Web サイトは Apple Internet Server で走らせ大食漢の CGI は Network Server に持っていく ことだ。Mac は CGI を AppleScript と Apple Event 経由で、安全なライ ン上に張った AppleTalk ネットワーク接続を介して Network Server に 渡せる。(なぜなら Network Server には多数の Ethernet カードをさせ るので、そこにどんなプロトコルを構築しようとコントロールできるから だ。)Network Server には巨大なデータベースに対して CGI を走らせる (その間同時にその部門全体にファイルを供給しながら)だけの馬力があ る。そして、照会の結果が戻ってくるのは Web サーバが同じ仕事を行った 場合に比べて速いし、まったく Web サーバ本来の仕事を邪魔することはな い。Apple が Network Server と一緒に配布しているツール類を使えば、 こういった種類のセットアップもまったく簡単だ。

また、TidBITS のコメントによると、Network Server はセットアップやメ インテナンスが容易でないし、また安全だともいえないということだった。 簡単なセットアップとはなにかついて議論するつもりはないが、私がいっ ておきたいのは私の経験によると Network Server のセットアップ(私は ベータテスターだった)は過去に行った SonOS や Solaris の走る Sun や Windows NT の走る Compaq Proliant のセットアップよりはるかに簡単だ ったということだ。Mac ベースの管理ツール、それに IBM の SMIT (SystemsManagement Interface Tool)が加わって、Network Server のセ ットアップは比較的楽しいものになったのだ。

しかし、メインテナンスと安全性の問題については反論したい。IBM の JFSFilesystem は私が扱ったファイルシステムの中で最も力強く、安定し たものだ。それは安定性、クラッシュに対する抵抗力、回復力において Mac OSの HFS よりはるかに優れ、Sun の UFS よりも良質で、Microsoft の NTFSに勝っている。内部そのものはメインテナンスしやすいように設計さ れていて、私の経験からいえば、その設計は功を奏している。安全性につ いてはちょっと判断が難しい。優れたネットワーク管理者なら誰でも、 Internetサーバと内部ネットワークの間に、自ネットワーク - Internet - 他ネットワーク間でパケットにフィルタをかける良質のルータを用意して いる。これに Network Server の頼もしいネットワーク構成オプションを 加えれば、このマシンの内外にプロトコルベースの安全なネットワークを 構築することは比較的簡単なのだ。

TidBITS が取り上げたもっと大きな問題は Apple 社の UNIX マシンの販 売・サポート能力だ。私はこの問題は扱うにふさわしくないが、ただ、Apple 社は Network Server をこれに興味を示す組織、特にそれを信頼し 100パ ーセント支持する人々にライセンスすることを考慮すべきである、とだけ いっておきたい。プリプレスの世界にはこのようなマシンが望まれていて、 プリプレス業界に強く結びつきを持つ企業も多いわけで、このマシンの市 場となりうるし、売れるはずだ。

最後に、最終的にはマシン性能であり、そして Network Server の優秀さ だ。きわめて簡単にいえば、Network Server は AppleShare のパフォーマ ンスの限界を、はるか高く、永遠に吹き飛ばしたのだ。


Cool Tools その後

by Adam C. Engst <ace@tidbits.com>
(翻訳:尾高 修一 <odaka@iprolink.ch>)
(翻訳:加藤たけあき <oiso@wolfenet.com>)

TidBITS-305 でのインタビューで、Peter Lewis 氏は Apple 社が 1994 年 9 月に実施した Cool Tools Awards の受賞者の追跡調査をすることを 提案した。これが実に良いアイデアだったので、受賞者全員のメールアド レスをかき集めてアンケートを送ったところ、Cornell 大学の CU-SeeMe の作者たちを除く全員から回答を受け取ることができた。私がまず最初に 知りたかったのは、Apple が賞品として受賞者に配った Power Macintosh 7100 が役に立ったかということと、それが今どのように使われているか ということだった。私は受賞者たちが、Apple が独創的なデベロッパーを 認知する賞を与えることについてどう思うかについても興味があった。私 は当時 TidBITS-247 で、以下のように書いた。

「最後に、私の中のシニカルな半分はこれを単なる気まぐれだと考えた がっているが、Apple はこの賞によって注目を得、好印象を与えたのだか ら、この効果が Apple にこの種の賞を続けさせることを心から期待した い。Apple にとってのもっとも強力な味方は忠実なユーザーとデベロッ パーなのだから、Apple がたまに彼らに実質をともなった感謝の意を表明 することは Apple の利益にしかならないのだ。」

第一回の賞から一年以上が経過したが、第 2 回が実施されるという話は Apple から聞こえてこない。毎年何人かのプログラマーに Mac をあげるのは Macintosh プラットフォームにとって最高の宣伝になるし、全体的に見て も優秀なプログラマを Mac に呼び寄せるには安上がりな方法だ。この記事 が Apple 社内での議論を再開させるきっかけになればと思う。

John Norstad 氏 Disinfectant と NewsWatcher で有名な John Norstad 氏は以下のように述べた:

私の“cool tool”は私の仕事を大いに助けてくれました。以前、私は家で 仕事をするのに Mac Classic か PowerBook 180 という選択肢しかなかっ たのです。7100 は大きな前進で、生産性を大幅に向上させてくれました。 去年はこれで NewsWatcher をはじめ、山ほどのコードを書きましたよ。

私の子供達も間違いなく Classic からのアップグレードを喜びましたよ! 「うわぁ、パパ、カラーだ!」

私は Cool Tools 賞は素晴らしいアイデアだと思いますし、ほかの分野で も続けてくれたら素晴らしいと思います。

Eudora で有名な Steve Dorner 氏は、賞品の Mac の家庭での利用につい て語ってくれた:

私は 7100 はもらって以来メインの開発用マシンになっています。私は Eudora 3.0 の開発を全部これでやりましたし、2.x の開発にも使いまし た。今週 [執筆時の今週なので、数週間前 -Adam]、PowerBook 5300 を開 発用に買うので、7100 は妻の DTP 用になります。今妻と子供達が共用し ている Quadra 605 は子供達専用になるので、家庭内の平和に貢献してく れるでしょう。

たった一台の Power Macintosh 7100 のおかげで、私の生活の糧と家庭の 平和が得られるわけです。

John Hardin 氏 MacWeb と MacWAIS の作者は以下のように述べた:

Apple が Cool Tools 賞の一環として私にくれた Power Mac 7100 は、 Power Mac ネイティブ版 MacWeb の開発に直接貢献してくれました。これ は事実上私の 2 台目(当時使っていた Quadra 800 に加えて)の開発用マ シンでした。私は今職場では Power Mac 9500 を持っていますので、4 ヶ 月程前に 7100 を家に持って帰り、自宅での開発に使っています。MacWeb を作っていない時は、MacWeb を使って Internet をサーフィンするのにも 使っています。

7100 は今では家庭用マシンになっていますので、教育ソフトやゲーム、 ホーム・パブリッシングなど、その線での使用が多いですね。私の子供達 はまだ小さいのでほかのコンピュータというものを知りません。そういう 意味で小さな Mac 支持者を作り出すことに貢献しているかもしれません。 [もしかしたら Guy Kawasaki 氏に頼んで、Macを子供に直接あげて小さな Apple 中毒者を作るプログラムを始めるとよいかもしれない。 -Adam] ひょっとしたら Turtle Logo がしまいには C++ や Java になるかもしれ ません。小さな Mac デベロッパーも作り出してしまうわけです!

賞そのものに関していえば、この賞で Apple に公式に認定してもらったこ とは意外でもあり、名誉でもあり、励みにもなりました。Apple がこのよ うな方法で Mac デベロッパーを認知することはぜひとも続けてもらいたい と思います。また、私の感謝の気持ちを表明する機会を与えてくれた TidBITS にも感謝します。

Peter Lewis 氏 Anarchie や NetPresenz などの作者は以下のように述 べた:

私は去年 7100 を受け取りました。同時に私は実用になるホームオフィス を手にしたことになります。そこで、1995 年初めには自宅でパートタイム の仕事を始め、その後 Curtin 大学での仕事を辞めて、今では自宅でシェ アウェアを作る仕事をフルタイムでしています。Cool Tools Award でも らった 7100 なくしては私の計画は最低でも数か月遅れていたでしょうか ら、私にもっと Mac プログラムを書く時間を与えるという Apple が期待 していたとおりの効果があったのでしょう。

もちろん Apple がこの賞を続けてくれたらよいと思います。ただ、難しい のは誰がもっともコンピュータを必要としているかを判断することでしょ う。既に知名度の高い人にはそれほどありがたくないかもしれません。ま た、 Apple が賞と一緒に紙の賞状もくれたらよいと思います(それとも オーストラリアまで届かなかっただけでしょうか?)。コンピュータは素晴 らしいものですが、数年後には粗大ゴミ(よくてローエンドのサーバ)に なってしまう一方、賞状は額に入れて飾ることができますし、いつまでで も長持ちします。また、個人用と会社用の 2 種類の賞を作ってもらいたい とも思います。会社にはコンピュータをあげる必要はありません ― 普通 は会社がコンピュータを買えないことはないでしょうから。でも、たとえ それが Power Mac なしの賞状だけの賞でも、Mac を使っての Internet の プロモーションに貢献した InterCon のような会社が認められなかったの は残念です。

Jay Whittle 氏 Internet Society Jay Whittle 氏のは以下のように述 べた:

Internet Society はアプリケーションを開発しているわけではないのです が、 Power Macintosh 7100 を大いに活用させてもらっています。賞をい ただくまでは、Macintosh が一台もありませんでした。私達の活動の一つ に、Internet で利用可能な新しい、そして革新的なアプリケーションに精 通しておくことがあります。7100 は最初に、または Macintosh プラット ホーム専用に開発されたアプリケーションを研究することを可能にしてく れました。

さらに、マルチメディア機能が付属しているため、素晴らしいデモンスト レーション・マシンにもなってくれています。多くのゲストがこのマシン を使って Internet の世界を散策されました。

Thomas Redman 氏 NCSA ソフトウェア開発グループに所属する Thomas Redman 氏はこう述べた:

NCSAにいただいた賞品の 7100 は Mac 版 NCSA モザイクの開発にとても役 立ちました。あのマシンは開発者の一人にあてがわれ、モザイクに使われ ているプログラム間アプリケーション・インターフェイス(API)や、通信 機能位の改良、そして Open Transport と Internet Config のダイレクト ・サポートといった華やかなテクノロジーを開発しました。偶然にも、当 時あのマシンを使用していた開発者は開発に適したプラットホームを持っ ていなかったので、受賞のタイミングがよくて、とても喜んでいました。 開発グループにマシンの有用性を計る基準はありません;PowerPC マシン は素晴らしい!

Apple 社はこの表彰を続けるべきか? もちろんです! Macintosh 用ソフ トウェアの開発者達に、なんらかの形で感謝を現すことは、Apple 社の未 来にとって非常に重要だと思います。Mac のユーザーと開発者は、そのプ ラットホームの成功に特別な興味を持っています。こういった雰囲気は Apple 社が育てていかなければいけません。今回の表彰のようなことは、 そういった意味でとても有効だといえるでしょう。

ありがとう Apple!

Farhad Anklesaria 氏 University of Minnesota Gopherチームに所属す るFarhad Anklesaria 氏は手短に、こう述べた:

Apple 社から Cool Tools Award の一環でいただいた 7100 は、大学院生 のインターンが新たに“クール”なネットワーク・ツールを作るためのプ ロジェクトに利用されています。詳しいことは、それがリリース間近になっ たときにお話しできると思います!

Aaron Giles 氏 -- JPEGView の作者は、以下のように述べた:

いやもう、まずいえるのは Cool Tools Award は私の夢の実現を手伝って くれました。7100 を受け取ってすぐに、LucasArts 社の“Rebel Assault” を買ったんですが、それが PowerPC ネイティブ ではなっかたのでがっか りしました。それでカッとなった発作で突貫作業をして、私の新しいマシ ンでなんとかまともにゲームを続けることができるように、部分的ネイティ ブ・モードにできるパッチを書き上げました。愚かにもそれをネットに流 してしまったので、LucasArts 社が私の採用を決めてくれなければ停止命 令をもらっていたところでした。今や私の 7100 は、深夜に Mac 用の素晴 らしいゲームを大量生産させてくれています。

Apple 社は絶対にまた Cool Tools Award を実地するべきです。懸命な Shareware 制作者として、ホットな最新システムを持つということは、 JPEGView の制作に費やした年月の認識と、PowerPC ネイティブ版の制作に 計りしれない貴重な助力となりました。Cool Tools Award を素晴らしい シェアウェア/フリーウェアを認めるための寄贈品としてくれたら、それ は Apple 社の未来への素敵な一歩だと思います。

Chuck Shotton 氏 WebSTAR の作者は以下のように語った:

Cool Tools Award の受賞は、Apple社と私にとってこれ以上ないタイミン グでした。私の場合、MacHTTP を Mac IIci で制作していて、MacHTTP 1.3 を最初の PowerPC ネイティブ・アプリケーションの一つとして、Apple社 から借りた 8100 を使ってリリースしました。JPEGView の Aaron Giles氏 に負けたのは、彼の方が1時間だけ時差が早かったせいである! とにか く、 8100 はその後間もなく返却しなければならず、私は Power Mac なし で PowerPC コードをテストし、維持しなければならなかった。いうまでも なく、Cool Tools Award の 7100 の到着で私は救われました! MacHTTP 2.0 は、初期のバージョンの WebSTAR と同様に、その 7100 で創りまし た。Apple社の場合、それが絶妙のタイミングであった。開発者からの厳し い批判が募っていた中で、それは 驚嘆に価する Mac で Internet を創っ たたくさんの人々の仕事ぶりを評価するという、いいジェスチャであった。 多くの開発者が Apple の開発状況を悲しんでいる間に社内の数人が、後押 しが必要な個人の開発者に報酬を与えて、興味を持たせるというアイデア を思いついたのだ。たった一つ難点だったのは、Cool Tools Award の受賞 数に限りがあって、何人かの切望されていた開発者が栄光を手にすること ができなかったことだろう。

Apple 社は、絶対にこれを毎年恒例のイベントにするべきで、そして、 Internet ツールという枠も外すべきだ。多くの認められていない Mac 開 発の英雄達に、 Apple は彼らの努力に感謝しているということをアピール する素晴らしい手段である。私の 7100 については、今や www.biap.com の一部として、陽気に「シュッシュッ」と音をたてながら、Internet にそ の小さなハートで勤め上げています。

Jeff Ferguson 氏 Weather Underground に所属する氏は以下のように述 べた:

Weather Underground は Cool Tools Award の 7100 を6カ月間 Internet マ ネージャの開発に使いました。7100 は我々に、コードを開発するマシンを与 えてくれました。

そして 7100 は、視聴者が Internet の世界に連れていかれるという番組 を作っていた TV スタジオへ移動されました。その内容は気象学で、観客 は幼稚園から高校の教師と学生だった。番組は、Perry Samson氏と、人形 の Herbie Fox の司会でした。7100 には A/V カードが追加され、撮影中 はスタジオの 3 つのマシンの中の一つになり、南極大陸や、海辺のビー チ、台風の目の中等の架空のセットを創るために使われました。

現在、7100 は 1 時間ごとの天気のイメージを摂取して、UM-WeatherTV と いう大学のケーブル・システムで放映するために使われています。


Reviews/18-Mar-96


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