TidBITS: Apple News for the Rest of Us  TidBITS-J#343/02-Sep-96

今週号では、Apple 社と Be 社が将来をともに歩むのか? そして Mac を整 備することの負荷が増大していることといったエッセイで、あなたの神経 細胞を直接刺激しよう。また、Adam は成長する Web Ninja についての強 力なレビューを書き、Tonya は新刊の Macintosh Bible 第 6 版について 説明している。ほかにも、Internet Config 1.3、Netscape Navigator for Cyberdog、OpenDoc 1.1、そして多くの Web サーバについてのニュースを お届けする。

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山浦 礼子  <raeko@bnn.co.jp>

目次:


MailBITS/02-Sep-96

(翻訳::山浦 礼子 <raeko@bnn.co.jp>)

本日、米国ではたいていの人は働くことを休み Labor Day(労働の日)を 祝い、自分達の時間を楽しんでいることだろと思う。私達はといえば、暴 風などではげおちた外装をペインティングしなおし、DealBITS をすでに発 行し、このTidBITS を出版するなどして、周囲の人々と同じように楽しん だ。TidBITS といえば、先週の TidBITS メーリングリストの配信がうまく いったので、現在は私達のツールや技術に磨きをかけているところだ。だ から、すでに 私達が Rice University LISTSERV の TidBITS リストを閉 鎖し、以前と同様の方法で購読を試みようとしてもエラメッセージを受信 するだけだということを覚えておいてほしい。もしも TidBITS を購読した い人がいたら、<tidbits-on@tidbits.com> へ e-mail を送付すればよいこ とを広く周囲に教えてほしい。 [ACE]

Internet Config 1.3 -- Peter Lewis 氏と Quinn 氏は、パブリックド メイン(PDS)として配布される Internet Configuration System の Internet Config 1.3 をリリースした。このソフトは、たとえば各自の e- mail アドレスやお好みの Web ブラウザなどといった多くの Internet プ リファレンスを統制する。Internet Config 1.3 の新しい点は、いくつか のバグフィクスのほか、 ホームページやバックグランドカラーをセットす るための World Wide Web ウィンドウや、ファイアウォールやプロキシー 関連のすべての設定を行なう Firewalls ウィンドウがある。Internet Config 1.3 は入手するに値するものともいえるのだが、1.2 のユーザーに はあっと驚く機能はない。ここ数日中に登場するであろう Info-Mac のミ ラーサイトで Internet Config − 月曜日にアップロードされたばかり − を探そう。しばらくは以下の URL でも入手可能だ。 [ACE]

<ftp://ftp.tidbits.com/pub/tidbits/select/internet-config.hqx>

Netscape Navigator for Cyberdog -- どうお考えだろう。Apple 社と Netscape 社は、Nescape 社が Cyberdog と OpenDoc をサポートする Netscape Navigator の新バージョンを開発しており、(ひょっとしたらこ ちらがもっと重要なことかもしれないが) Apple 社がそれを Cyberdog に デフォルトの Web ブラウザとして Mac OS の一部として流通させていくこ とを共同で発表した。Netscape 社はリリースの日程を発表していないが、 個人的には、1997 年の第 2 四半期までは Netscape Navigaor for Cyberdog が登場するとは思わない。産業界では、この発表について意見が わかれている。Netscape 社が Microsoft 社のインターネット戦略に対抗 してその勢力を維持しようとしていると歓迎するもの、そして、 より先進 的な OpenDoc Web ブラウザを歓迎するものなど。ほかには、Apple 社が独 自の開発を断念して Navigator か Microsoft Internet Explorer の二者 択一をしたのだとする失望の声も聞かれる。 [GD]

<http://product.info.apple.com/pr/press.releases/1996/q4/ 960827.pr.rel.netscape.html>

OpenDoc 1.1 入手可能に -- 先週遅く、Apple は OpenDoc 1.1 のファイ ナルバージョンを無料で公開した。あなたがデベロッパーでもなくあるい は OpenDoc のパート(今では Live Objects と呼ばれる)で生計を立てて いるというごく稀な勇士の 1 人でもなければ、バージョン 1.1 で行なわ れたバグフィクスや Cyberdog 1.1b3 を動作させるにも基本的には重宝し、 かつ Apple 社から無料で入手できる。ダウンロードは 3MB ほどだ。いく つかの古い Mac ユーザーには、特別バージョンがあることを覚えておいて ほしい。詳細は Web ページを参照のこと。 [GD]

<http://opendoc.apple.com/users/getod.html>
<http://www.cyberdog.apple.com/beta/index.html>

パーソナル・サーバ・ウォーズ -- あなたのデスクトップにローエンド の Web サーバをつけようとする戦争が激化している。ResNova 社の Web for One ( TidBITS-337 を参照)と Maxum 社の RushHour をベースとする Web サーバを Mac OS のなかに組み込もうとしているという Apple 社の計 画についての噂のほか、Quarterdeck 社もあの有名な WebSTAR サーバソフ トをベースとする Web サーバ Personal WebSTAR のベータをリリースした。 Personal WebSTAR は管理機能やログイン機能を省略し、System 7 の Users & Group コントロール・パネル経由での簡単なコンフィグレーションを提 供し WebSTAR server-side プラグインをサポートしている。Personal WebSTAR では CGI アプリケーションはサポートせず、同時には 2 ユーザー までしか応じない。興味のある人は、Qarterdeck 社は Personal WebSTAR のベータテスタには、ベータについて話し合うリストを購読することを要 求している。

<ftp://ftp.starnine.com/pub/betas/pws_beta1.5.sea.hqx>
<http://www.starnine.com/address-list-editor.html>

もしもあながたまったく自由にほかの商業用の Mac Web サーバを探してみ たいと思っているのであれば、Chiris Hawk の WebCenter と呼ばれるプロ グラムは調べてみる価値があるだろう。現在のところはアルファ版である が、WebCenter は Macintosh の web マスター達から賞賛のコメントをも らっており、(少なくとも現在のところは)WebSTAR のプラグイン(これ は Quarterdeck 社の condends は独占の技術)の最新のサポートを取り除 かねばならないのだけれども。 [GD]

<http://www.slaphappy.com/>


タール丘陵で飛び交う Be の噂

by Geoff Duncan <geoff@tidbits.com>
(翻訳:齊藤 聡 <akkun@ca2.so-net.or.jp>)
(  :加藤 たけあき <oiso@wolfenet.com>)

先週の Wall Street Journal で注目した記事は、Apple Computer 社が Be 社と交渉しており、Apple 社の Mac OS 8 に替わるものとして BeOS を求 めているという噂が Macintosh の世界に流れているというものだ。

Be 社は、以前に Apple 社の重役であった Jean-Louis Gassee 氏に率いら れ、1995 年の 10 月に PowerPC をベースとした BeBox コンピュータを世 に送り出した。BeBox の大きな魅力のひとつはそれが PowerPC にネイティ ブであり、マルチスレッドであり、マルチプロセッサに対応したオペレー ティングシステムを持っているということである( TidBITS-298 を参 照)。さらに最近では、Be 社は Boston の Macworld Expo において Power Macintosh 用の BeOS を Power Computing のマシンで走らせるデモを行っ た。

<http://www.be.com/>
<http://www.be.com/aboutbe/pressreleases/96-08-06_BePower.html>

両方の会社からの情報によると Apple 社によりなされたそのような提案は ないということだが、BeOS をベースとするオペレーティングシステムで幾 たびとなく遅れている Mac OS 8 を Apple 社が置き換えようとするかどう かといった推測は根強く流れてきている。いくつかあるものの中で、この オペレーティングシステムは完全に PowerPC ネイティブであり、マルチス レッドであり、マルチプロセッサをサポートしており、プリエンプティブ マルチタスキングである - これは Mac OS 8 の開発の遅れの原因となった 技術的なハードルとして挙げられる全ての機能だ。さらに、このオペレー ティングシステムはシステムレベルのデータベース機能を持っている。ア プリケーション間で高帯域のデータ交換ができ、クリーンなプログラミン グインターフェースももっている。これには 10 年以上の遺産コードやパッ チやアップデートなどない。

私には Apple 社と Be 社の間で起きたことについて内情を知ることはでき ない。しかし Apple 社が Copland を目指して技術的な手助けとして BeOS を追い求めているということはありそうもない。いくつかの出版物の見解 とは違っているが、そういった作業は、BeOS の上 にMacintosh のインター フェースをかぶせ、“Made in Cupertino”のステッカーをパッケージに貼 り、それを Mac OS 8 と呼ぶことで済むほど単純ではない。

つまり、BeOS がいままでに存在した どんな ソフトウェアも動くように デザインされてはいないことを思い出すことが重要だ。それは Macintosh 用であれ、Windows 用であれ、あるいは Unix 用であれ、である。これは 全ての Macintosh アプリケーションが Be ベースのオペレーティングシス テムのもとで“ネイティブで”走るように書き直されなければならないだ ろうということを意味している。エミュレーションにより現行の Macintosh アプリケーション(とシステムソフトウェア)を走らせるようにする BeOS 用“System 7.5 バーチャルマシン”を作成するような技術的可能性はあ る。しかし、BeOS のためにそのような選択をすることは、疲れ知らずで挑 戦的で性能の低下を引き換えにするもののすることだ。実際、Apple の Mac OS 8 の最後の仕上げ(これはすでにその背後に何年ものデザイナーとエン ジニアの努力を背負っている)の方がずっと簡単だろう。 Power Macintosh に移行するときに、Apple 社は Macintosh の世界について下位互換性にど んな巨大な問題が潜んでいるか立証している。Apple 社は下位互換性を考 えて Mac OS 8 を設計しているが、BeOS は下位互換性を窓の外に完全に放 り出してしまっていることを忘れてはならない。

(デベロッパーは Apple 社の Mac OS 8 が - 完成したとき - 新しいオペ レーティングシステムの機能とサービスを利用するために確実にアプリケー ションを書き直す必要が生じることにも気づくだろう。その点で言えば、 現存するアプリケーションは、それらのアプリケーションが System 7.x システム上で走っているように“blue box”上で動作させるようにできる だろう。)

第二にそれと同様に重要なことは Be 社は、まだ BeOS を開発中であるこ とで、そのオペレーティングシステムは、Windows、OS/2、Mac OS、様々な Unix や、その他のオペレーティングシステムの開発に役立ってているよう な、長年に渡っての業界での経験もない。BeOS が、何か技術的な問題点を 抱えている可能性も十分に(というよりも恐らく)あり得ることだ。何故 なら、他のオペレーティングシステムより歴史が浅いからだ。こういった 問題を解決することは比較的に簡単なことだとは思うが、 Apple 社がそれ にボランティアすることは、デベロッパたちや、その顧客に BeOS の予想 外の問題をあぶり出してしまうかもしれないので、得策とは言えないだろう。

しかし、それでも Apple 社が Be 社と BeOS の成功に興味を持っていない ということではない。始めから Be 社はオペレーティングシステムを移植 するつもりであったし、それらのプランには実際に PCI Power Macintosh ベースの PowerPC 603 や 604 CPU、同様に、Apple 社の PowerPC Platform (PPCP)マシン、IBM、そしてその他のベンダーが含まれている。Apple 社 の MkLinux に対する努力のように、もし Macintosh のオーナー達に BeOS が共存可能なオペレーティングシステムのオプションになれば、Apple 社 の利益につながることは間違いない。特に、Mac OS 8 の登場の遅れで被害 を受けているビデオや、オーディオ、その他の高帯域の領域を使用して働 いているパワーユーザー達にだ。もしデベロッパが BeOS 用のユニークな アプリケーションを創りだしたら、議論はより強まるだろう。そして Be 社の利益になることも明らかだ。例えば、もし BeOS が全てのハイエンド の Power Macintosh と 将来 Apple 社、Power Computing 社や(間もな く)Motorola 社といった、他の Macintosh ベンダーから登場する PPCP 仕様の Mac にバンドルされたとしたら。

<http://www.mklinux.apple.com/>

それは Be 社もまた Apple 社のテクノロジの恩恵を受けることになると言 える。 QuickTime は BeOS にとっても大きなプラスになるだろうし、Be 社は間違いなく Apple 社が Be 社用 Machintosh Application Environment (MAE) を開発する契約を結ぶことになるだろう。 多くの Macintosh アプ リケーションを稼働させることになるであろう BeOS 用 Application Environment (MAE) をだ。

<http://www.mae.apple.com/>

つまり、Be 社と Apple 社が一緒に何かをすることを知っても驚くべきこ とではないのだ。しかし、 Apple 社が BeOS をレディー・メイドの次期 Mac OS 8 として検討しているという噂に関しては、あまり気にかけない方 がいいだろう。両社の間には、あまりにも多くの克服して行かなければな らない問題があるのだから。


Peachpit 社、『バイブル』をアップデート

by Tonya Engst <tonya@tidbits.com>
(翻訳:尾高 修一 <odaka@iprolink.ch>)

Peachpit Press 社は最近 Macintosh Bible (ISBN 0-201-88636-7) の第 6 版を出版した。この版も、Macintosh の宇宙の親しみやすいガイドブッ クという『バイブル』の 10 年来の伝統を継承している。この新版は、 Jeremy Judson 氏と定評ある Macintosh ライター陣によって編集されて いる。新版では、Macintosh を使ったホームオフィスの作り方に関する良 く考えられた章や、インターネットに関する章が書き加えられている。イ ンターネットの章では、接続の仕方や、Web ページを作るための必要最低 限の知識、それにどんなクライアントソフトウエアを使ったら良いかとい うことが盛り込まれている。

<http://www.peachpit.com/peachpit/titles/catalog/88636.html>

私が TidBITS-269 でレビューした第 5 版は期待を裏切るものだった。レ イアウトは退屈で、文章もやや頼りなく、内容はインターネット関連の話 題を明らかに欠いていた。新版のレイアウトも同じようなものだが、特に 新しくなったフォントと“hot tip”アイコンにより、視覚的にめりはりが ついた感じがする。もっと重要なことに、第 6 版は頼りない感じがなく、 さらに人間性が感じられることだ。各編者の略歴の後にそれぞれのサイン が入っていることや、時折挿入してある「お気に入りのゲームは?」「なぜ Mac は Mac なのでしょう?」といった質問に編者たちが答えているような 部分がこの印象をさらに高めている。

Macintosh Bible は相変わらずやや外した感じで情報を伝達している。た とえば、WordPerfect に関する部分で、「Microsoft Word が大真面目なバ ロックだとすれば、WordPerfect は軽妙なテクノ・ジャズだ」と述べたり、 別のところでは「単刀直入に言えば、良いグラマーチェッカーはまだどこ にも存在していない」としている。

いつもながら、Macintosh Bible は非常に優れた参考資料になるだろう。 特に、以下の 3 つのタイプに当てはまる人には便利だろう:

私は Macintosh Bible 第 6 版がまたまたベストセラーになると予想して いる。これは定評があるからというだけではなく、内容も有益だからだ。 第 6 版の定価は 29.95 ドルである。


Web 忍者の襲撃

by Adam C. Engst <ace@tidbits.com>
(翻訳:村上 浩  <murasan@yk.rim.or.jp>)

間違わないでほしい、これは海賊版のカラテ映画ではない。Web Ninja は Bill Tudor 氏作の小さなユーティリティで、MacUser Exclusive として配 布されている。それはつまり、無料だがダウンロードできるのは MacUser の Web サイトだけということだ。

<http://www.hotfiles.com/swbrowse/MC14/4/2/mac-MC14422.html>

Web から入手できるブックマーク・マネージャのほとんどは、すでにもう 見てきた。( TidBITS-323 以降の 4 回に渡るレビューを参照)。Web Ninja も同様の機能をいくつか備えているが、厳密にはブックマーク・マ ネージャではない。その代わりに、バックグラウンドでユーザーがどの Web を訪れたかを監視し(Netscape Navigator、Microsoft Internet Explorer もしくは Spyglass Mosaicを使っていることを前提とする)、その経路を 記録してくれるのだ。ただし、この機能は全く新しいものではなくて、ほ かのブックマーク・マネージャにも記録モードを備えたものはいくつかあ る。

それでも、Web Ninja の場合多少違っている。まず、ユーザーは何も考え る必要がない。バックグラウンドに隠れて動作するアプリケーションを機 能拡張フォルダに放り込んだら、あとは何も気にする必要はない。何かを オンする必要もないし、魔法を働かせるために特別なアプリケーションを 起動する必要もない。また何を記録させるか決めておく必要もないのだ。 Web ブラウザで訪れた Web サイトや FTP サイトの URLを全部記録し、一 度に複数のブラウザのウィンドウを開いている場合には、それぞれの URL を記録してくれる。私も時々するのだが、複数の Web ブラウザを一斉に動 作させている場合には、同時にその URL を取り込むことはできない。ま た、 2 回以上同じ URL を訪れても、Web Ninja は単にカウンタをインク リメントするだけで再度その URL を記録することはしない。

これが Web Ninja のデータ収集部である。このデータ収集作業はうまく機 能している。そして次に来るのが Web Ninja アプリケーションである。こ れは収集した URL にアクセスするためのものだ。訪問先 URL を一覧表示 して、訪問回数、最終訪問日付、サイトで費やした総時間でソートするこ とができる。URL をダブルクリック(またはブラウザのウィンドウにドラッ グ)すると、その URL はユーザーが選んだブラウザに送られ接続が始ま る。訪問回数でのソートは私も気に入ったが、Alta Vista や私のホーム ページそれに執筆中の記事に関連したサイトに行ったことを(まるで私が そのことを知らなかったかのように)教えてくれるだけで、それほど便利 なものではない。ほとんどの Web ページは一度しか訪問したことがないの だ。同様に、私にとって最終訪問の日付やサイトで費やした時間でのソー トもたいして便利なものではない。特に私の場合、頻繁に Mac の電源を切 るようなことはなくて、Web ブラウザを走らせたまま放っておく傾向があ る。つまり、実際にはモニターをオフにして私も Mac も一息ついているの に、 Web Ninja は私が何時間もかけて Webサイトのページを読んでいると 判断してしまうのだ。

必要があれば、URL のリストを HTML ファイルもしくはタブ区切りのデー タファイルとしてエクスポートすることも可能だ。1.0.4 の Web Ninja で はログファイルを空にするコマンドが新しく加わった。ただ、ログファイ ルは大きくなるほどにその価値がでるものなので、なぜそうする必要があ るのか私にはよくわからない。

さらに興味深い機能がある。URL を Web Ninja のリストから Items to Download ウィンドウにドラッグして、そのウィンドウにある Download ボ タンをクリックすると、Web Ninja は設定しておいた回数までその URL 先 データのダウンロードを試みるのだ。Web Ninja は Web と FTP の両方の URL に対応しているので、混んでいてなかなか繋がらないサイトを突破す るにはうまい方法かもしれない。ただ、Web ページの HTML 部分(グラ フィックデータは無し)しか持ってこないので、Forefront Group 社の WebWhacker のようなユーティリティにはかなわない。WebWhacker はグラ フィックとリンクを含めた Web ページ全体をダウンロードできるのだ。

<http://www.ffg.com/whacker.html>

全体によくできているが、Web Ninja の機能で傑出しているのはそのフィ ルタ・フィールドである。このフィールドにいくつか文字をタイプすると、 Web Ninja は即座に URL のリストをその文字を含んだものに制限する。 Apple Internet Mail Server の URL を忘れてしまった? そんなときは フィルタのフィールドに“aims”と入力するだけでいいのだ。それでも十 分でなければ、フィルタに入力する文字をちょっと発展させればよい。た とえば、訪問したことのある Apple 社の Web ページを全部探したいので あれば、“apple.com”と入力すればいいのである。正確に入力する必要は ない。 URL の一部だけ知っていれば、うまくいけばほかの部分は必要ない のだ。ディレクトリ・サービスについて最近いくらか調査していて、Ph サーバに関するページに行ってみた。再度そのサイトを探したいと思った ので、フィルタに“ph”と入力したら“www.phillynews.com”のように “ph”で始まる単語を含んだ URL のすべてがリスト表示された。それでも まだ件数はそれほど多くなかったので(いくつ見つかったかは Web Ninja が教えてくれる。この“ph”での検索では 26 件だった)、目的の URL を すぐに見つけることはできなかった。

Web Ninja に URL を取り込むだけの目的で、私はいくつかの Web サイト を飛び回るようになった。もちろん、Alta Vista で検索しようと思えばで きるのだが、自分の Mac ですべて処理した方が速いのだ。とりわけ、その ページに行ったことがあるのを覚えていて、単にログファイルを検索すれ ばいいような場合はそうである。当然ながら、ある時点から URL はログ ファイルの後ろから順に消え始める。しかし、3 週間使ってみて収集でき た URL は約 1,100(Web Ninja が一度に保存できる URL の総数は 4,096) に留まったので、後々役に立つかもしれない URL を記録できるこの方法は 十分機能するだろうと思う。

ここでティップをひとつ。私が使っている 660AV では、URL でソートして あると訪問回数などほかのカラムでソートしてある場合に較べてフィルタ ・フィールドの入力に対するレスポンスが鈍くなってしまう。こんなとき は先にフィルタをかけて、それから URL でソートすればよい。

最近は、良いソフトウェアの条件とは何なのかを考えることが多い。その 必要条件 を Web Ninja はかなり満たしているのではないだろうか。第一 に、操作が実に簡単である。ドキュメントも添付されているが、ほとんど の場合、メニューやウィンドウを見ればすべて理解することができる。第 二に、前に行ったことのあるサイトにまた行きたい、といった特定の問題 を巧妙に解決してくれる。しかも、少なくとも私にとって、この問題は現 実のものである。あるサイトのブックマークが今後いつ必要になるかを予 測するのは難しい。しかし、Web Ninja が最近訪問した 4,096 個の URL を保存しているので、必要な URL はおそらくそのリストに含まれているだ ろう。第三に、Web Ninja はほとんどの処理を Web Ninja 自身で行ってい るため、使う側が特に注意を払う必要はない。私にはほかにすべきことが 山ほどある。Web Ninja なら余計なユーティリティを使わなくて済むのだ。

Web Ninja のような便利なユーティリティの数々を委託、無料配布してい る MacUser 誌は賞賛に値する。これまで MacUser Exclusive は CompuServe の ZiffNet/Mac でしか入手できなかったので、その利用者は 非常に限られていた。今では、インターネットに繋がっていれば誰でもそ のユーティリティ(優れものがたくさんあるので、チェックされたし)を MacUser の Web サイトからダウンロードすることができる。これで Macintosh のユーティリティ界もだいぶ充実してきた。

<http://www.zdnet.com/macuser/software/>


使いやすさについて考える

by Wayland Y. Brown <wb@sava.gulfnet.com>
(翻訳:米谷 仁志 <comet@po.iijnet.or.jp>)

私は今、Mac のオーナであることについて、興味深くはあるが当惑した感 じを持っている。それをみなさんと分かち合い、意見をいただきたいと思 う。私は、- Apple II からの転向者だが − 自分のことを幸福で生産的な Mac ユーザであると思っている。というのもコンピューターについての、 また自分の Apple II で仕事するときについても、そして自分にとっては じめての Mac に実質的な、かつ創造的な仕事をさせるについても自分のコ ンピューターの知識を置き去りにした。初期の Apple IIgs オペレーティ ング・システムは、気まぐれなところもあったが、私が求める趣味をあま すところなく与えてくれた。そして、Mac への移行は一度してしまうと一 種の喜びですらあった。私の生産性・創造性、そして気分は、Mac を手に した最初の日からいやがおうにも高まった。何年もの間、より最大限の RAM やハードディスクの容量のより大きい最新の機械が必要というわけではな かったが、Macintosh の技術と歩みをともにしてきた。例えば今日、私は、 カラーモニタではなく 21 インチのグレースケールのモニタを使っている のはさておいて、この文章を 40 メガバイトの RAM をのせ 1 ギガバイト のハードディスクのついた Power Mac 7100/66AV で書いている。

今日まで、コンピュータについての知識についてはずっとわずかなものだっ たにもかかわらず、身近な Mac エキスパートなどという分不相応な賛辞を 私は受けてきた。たいていの地方のプロたちは、Mac に触れることがない。 というのは、もしビジネスで Mac を売ると、サービスやサポートを求める 電話をうけることなどほとんどないからだ。かれらコンサルタントたちは それを受けることで生計を立ているのである。この種の業界の私の友人の 中には、まさにこのようなわけで Mac をインストールしたくないと率直に 語ってくれるものもいる。(小企業だとそのようなサポートの仕事にほと んど頼っている。このことが小企業の開発になる Mac のソフトウエアがほ とんどない理由の一つなのだが、これは別の話だろう。)

私には、2 つのことが起こっているように思える。まず第一には、われわ れが、いまや、コンピュータの専門家になるように、あるいはコンピュー タが人生や仕事にもたらす使いやすさや能力を忘れるように、外部から圧 力をかけられているようなのだ。部分的にはこの圧力は、インターネット への高まりゆく関心に由来する。インターネットに接続するには、そして インターネットに用いるソフトウエアの集まりを管理するには、Mac ユー ザーといえども少なくとも少々の難解な知識が必要になってくる。そのよ うな知識は Apple II の世界では当たり前のものだし、まして DOS ユー ザーにとっては当然のものであった。私が思うに、Macintosh の世界では いまだ 10% 程度しか悪くなってはない。しかしこのことに関して言えば、 単に「まだ」(悪くなっていないだけ)という感じを抱かざるを得ない。

このように複雑さが増していくというのは、一種の傾向なのだろうかと思 えてくる。事実、悲しいことには、Windows を使っている人の 85% から 90% はこの複雑さを問題だとは思っていない。おそらくは Windows の世界 ではたまたまうまく行っているという理由からであろう。コンピュータの 知識のない Windows ユーザー(これが大多数なのだが)は、助けがほしけ れば料金を支払ってだれかに助けてもらう。このようなことは、最新の基 本的な家庭用システムを接続することにまで及ぶ。このようなサービスに 対しても私の地域の販売業者は、50 ドル以上をとっている。もし Mac の ユーザーならば、はじめてシステムをたちあげ、走らせるのに 50 ドル業 者に支払うことなど 想像 できるだろうか。

しかし、だれも、かなりの割合の賢明な人々がここに問題を感じないとす ると、私が恐れるのは、コンピュータ 仕事をさせるというよりはむ しろ、コンピュータ 仕事をすることに集中する能力を失いかけてい ることだ。

次に、内部的な問題についてだが、Apple 社が、ひびのはいったようなや り方であっても広範な知識のないところでは容認される、といった蔓延す る考え方に毒されているのではないか、と懸念している。Mac がもはや 「つなげば動く」機械ではなくなっていることがわかるためには、TidBITS や Ric Ford's MacInTouch といったものを読むまでもない。見た限りで は、常になにかが起こるのだ。例えばこの system update はあのハード ディスクドライバに対応してないとか、あのハードディスクドライバは、 このメニューユーティリティと衝突するとか、この PPP 機能拡張は、あの メモリ拡張ユーティリティと相性が悪いとか、この system update に対す る update には、Open Transport の新版は含まれていない、などなど。

<http://www.macintouch.com/>

この混沌とした状況は、Windows の世界では当たり前のことであるし、こ の状況のおかげで多くの小さなコンサルティング業者−お手持ちのイエロー ページをごらんになればよい。いろいろな地方にあるコンピュータサービ スの数に驚かれることだろう−がなりたっている。この混沌とした状況こ そが、我々に内側から侵入してきているのだ。Apple がオペレーティング ・システムを将来強化するつもりだと、少しあるいは部分的に決定したと いう知らせは、実際、不吉な出来事の前兆でもある。コンピュータを使っ て仕事をしたい(しかもハードに)と思っている平均的なユーザーである 太郎が、どうやってこの変更やアップデートにつきあっていけばよいとい うのだろう?「草の根エキスパート」たる私でさえも、常に補充的な調査 をしていなければ、自分のコンピュータをうまく動かすことはもはや期待 できない状態だ。なぜ、SyQuest カートリッジをいれるだけで、警告もな く、そのアイコンのコピーが 18 個もデスクトップの上に現れたりするの か?たぶん、カートリッジ上のドライバをアップデートしなければならな いか、あるいはシステムを再起動するほかないと、とりあえず私は考えた。 それはそれで正しかったのだが、なぜそんなことを知っている必要がある のだろうか?そして自分が見た現象について知るために、なぜネットに行 きドライバを見つけたり、テクニカルノートを見つけたりしなくてはなら ないのだろうか?

はっきりさせておかなくてはならないのは、Mac は、万能薬ではないまで も現在のコンピュータの中でもっとも役にたつコンピュータであるからこ そ、私は Macintosh のファンの一員なのである。Windows の世界がよりよ くしかもより簡単な選択肢を競争的な価格で提供してくれる日がくれば、 自分はプラットフォームを変更するだろう。今がそのようなときではない のは、少なくとも自分自身にとっては明らかである。私が恐れるのは、す ばらしいものからますます複雑化する平凡なものへと、強制的にコンピュー タを使った仕事の世界が私を押し込むにつれ、自分の満足感がますます低 くなってしまうのではないか、ということだ。それも、コンピューターに 関わる大多数の人々が、よりよいものを知らず、期待せず、要求しないと いうことと、Apple がユーザーの意に反して、ユーザーをコンピュータの エキスパートにしてしまうという理由から、このような状況が起こるかも しれないことがこわいのである。

最後に、世界はその世界のありかたに見合うだけのコンピュータテクノロ ジーを手にするのだろう。これは、気分のよい考えではない。これを読む あなたや私 は、さらによりよいものを受けるに足るのだから。


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