TidBITS: Apple News for the Rest of Us  TidBITS#1395/20-Nov-2017

来週号は Thanksgiving (感謝祭) で休刊とするので、今週は特大号をお届けする。Apple は iOS 11.1.2 をリリースして iPhone X の寒冷地での問題とビデオが歪む問題に対処し、また Apple は準備が出来ていない Mac ユーザーも macOS 10.13 High Sierra へのアップグレードがあまりにも簡単にできるようにしてしまっている。私たちは、自分自身のアップデートに向けて開発作業の真っ最中で、TidBITS の基盤構造を完全に作り直し、より魅力的でモバイル・フレンドリーなサイトや、その他多くのことを実現しようとしている。それから今週号には特集記事が二つある。Glenn Fleishman が QR コードの利用法を解説し、Julio Ojeda-Zapata が iOS 11 における iPad の生産性向上について詳述する。今週注目すべきソフトウェアリリースは Microsoft Office 2016 15.40、OmniOutliner Essentials および Pro 5.2、KeyCue 8.6 だ。

記事:

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2017 年 11 月 27 日は TidBITS 休刊

  文: Josh Centers: [email protected], @jcenters
  訳: Mark Nagata <nagata@kurims.kyoto-u.ac.jp>

今週の木曜日 (2017 年 11 月 23 日) は米国では Thanksgiving (感謝祭) の祝日なので、2017 年 11 月 27 日には TidBITS の電子メール号を休刊にして、私たちスタッフや寄稿編集者の面々も家族や友人とともに食卓を囲んで一週間を過ごしたいと思う。私たちの多くは今年も、スタッフの一員 Joe Kissell の書いた "Take Control of Thanksgiving Dinner" から印刷した便利なワークシートを参考にしつつ感謝祭のディナーの準備をしていることだろう。何を用意すべきかを Joe ほどうまく、分かりやすくレイアウトしてまとめられる人は他にいないので、間際の助けが欲しい方はどうぞ彼の本をご一読あれ。

来週の TidBITS 電子メール号は休刊にさせて頂くが、その間も TidBITS ウェブサイトへの出版はいつも通り続ける。私たちのサイトを時々チェックするか、RSS フィードを購読するか (TidBITS 会員になればフルテキストのフィードを受けられることをお忘れなく!)、TwitterFacebook でフォローするかして、私たちの最新の記事を読めるようにして頂ければと思う。次回の電子メール号は 2016 年 12 月 4 日の発行となる。

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iOS 11.1.2、iPhone X の寒さと Live Photo 問題を修正

  文: Josh Centers: [email protected], @jcenters
  訳: 亀岡孝仁<takkameoka@kif.biglobe.ne.jp>

Apple は iOS 11.1.2 をリリースし、2つの iPhone X に関わる問題に対処した:一つは急激な温度低下に晒されると画面が一時的に反応しなくなるもの、そしてもう一つは Live Photo とビデオで歪みの原因となるものである。

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iOS 11.1.2 アップデートは、iPhone X 上では 51.4 MB で、Settings > General > Software Update で、或いは iTunes 経由で入手出来る。

この2つのバグは iPhone X だけに当てはまるものであるにも拘らず、Apple は iOS 11.1.2 を全ての iOS 機器に対して提供している。従って、iPhone X を持っていて、そしてとりわけ寒い気候の所にお住まいならば、数日中にアップデートする価値はあると思われる。

他の iOS 機器の所有者は、これにはセキュリティ修正は全く含まれていないので、次のアップデート迄待っても良いのではなかろうか。

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Apple、High Sierra を無防備な Mac ユーザーにプッシュし始める

  文: Adam C. Engst: [email protected], @adamengst
  訳: 亀岡孝仁<takkameoka@kif.biglobe.ne.jp>

もし macOS 10.12 Sierra かそれ以前を走らせていて、今はまだ 10.13 High Sierra にアップグレード したくない と思っているのであれば、注意が必要である。何故ならば、Apple はより古い Mac に対して High Sierra をプッシュ配信し始めており、無意識のうちにアップグレードしてしまうのは簡単だからである。結論を先に言うと、High Sierra をインストールするかを尋ねる macOS 通知を受け取ったら、そこにある Details ボタンをクリックして App Store アプリを立ち上げ、それから、それを終了する。

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事情は次の様なものである。

私がこのことに気づいたのは、 Watchman Monitoring をテストしている最中だからである。これは、Apple コンサルタント、管理サービス提供者 (managed service provider - MSP), そして Mac 利用の大きな組織によって使われているアプリとサービスである。Watchman Monitoring は背景に隠れていて、Mac 上の注意が必要な事象を探し、そして、コンサルタント、MSP、或いはその Mac を走らせる続ける責任を負う IT 管理者に通知する。私は Watchman に、我々の Mac 全部、私の両親の Mac、そして私の叔母と叔父の Mac を監視させている - 別の言い方をすれば、何か不具合が出た時には私が直さなければならない Mac 達である。

きっかけは Watchman Monitoring からのメールで、私の叔母の Mac が High Sierra インストーラーのダウンロードを始めたと言ってきたことである。私は驚いた。と言うのも、彼女はかなりの Mac の使い手だが、私に相談なしに大きなアップグレードをすることなどしないからである。私はこのメッセージを MacTech Conference に向かう機中で受け取った。そして、Los Angeles に着陸した時、私は父と叔父の Mac も High Sierra をダウンロードしたという別のメッセージを Watchman から受け取った。これは、Apple からの自動的なプッシュ配信以外のものにしては、余りに同時発生的な事象であった。

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幸いにして、私は MacTech に向かって飛んでいたので、ホテルについて数分の内に Watchman Monitoring の Allen Hancock に出会うことになった。彼は Apple が High Sierra アップデートをプッシュ配信しているのではないかと言う私の疑いを裏付けてくれた。また、機器管理会社 Addigy の CEO である Jason Dettbarn と話していたら、別の話をしてくれた。それは、Addigy のコンサルタントや、未承認の macOS アップグレードを阻止するために Addigy を使っている MSP 顧客は、彼らのユーザーに何が起きているのか説明するのに大わらわだというものである。(少なくとも、彼らは多くのユーザーが不適切に High Sierra をインストールしているという事態に対処しようと大わらわだった訳ではない!)

起こっていることは、Apple の Software Update が背景で自動的に High Sierra をダウンロードし、ユーザーに対しこの記事の冒頭で述べた通知を提示してくるのである。しかも選択肢は2つしか与えられない:Install と Details である。

インストールしたくない場合、キャンセルする唯一の道は Details をクリックすることしかない。これを選択すると App Store アプリが起動され、そして High Sierra の説明を表示する。そして次に App Store を終了する。これは紛らわしい - Apple は、その代わりに Cancel ボタンをを提示すべきである。

その通知が現れても、High Sierra に対するあなたの意見に拘らず Install をクリックしようとはまず思わないであろう。インストールには時間がかかるし - 1時間そこら - 始める前にバックアップがあることも確かめるべきである。バックアップについては、"Take Control of Upgrading to High Sierra" の Joe Kissell の助言が参考になる。

この自動アップグレードの振る舞いは気になるが、これは Sierra の時もそうだった可能性は否定出来ない。しかし Apple が Sierra をこの様な形でプッシュしたことを覚えている人は我々が話した中には誰もいなかった。Apple はこれをサポート書類の中で説明している - それは System Preferences > App Store にある "新しいアップデートをバックグラウンドでダウンロード" チェックボックスと関連している。このチェックボックスの選択を外しても何ら実害はない - 実際にインストールすると決めた時に、アップデートがダウンロードされるのを待たなければならないだけである。こちらの方だと、予期しない 5 GB のダウンロードに大切な帯域を使われてしまうことから逃れられる。

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("システムデータファイルとセキュリティアップデートをインストールする" は絶対に _不能_ にしないこと。何故ならば、このオプションはあなたの Mac をパッチされたセキュリティ脆弱性から守るのに不可欠だからである。("OS X のセキュリティデータを必ず入手しよう" 30 March 2016) 参照。)

私は旅行中なので、確認するのが難しいこともある。しかしながら、TidBITS 読者の Curtis Wilcox が 5.21 GB に及ぶ Install macOS High Sierra アプリが Applications フォルダにダウンロードされていることを確認してくれた。もしディスクスペースを取り戻す必要があるならば、これをそこから消去出来るし、或いはまた、後に High Sierra にアップグレードする準備が出来た時に、それを手動で起動することも出来る。

High Sierra が世に出てからまだ2ヶ月に満たないが、既に2つのアップデートが出ている。詳細は "macOS High Sierra 10.13 追加アップデートが初期バグを修正" (5 October 2017) そして "macOS 10.13.1 High Sierra、小さな修正と追加の絵文字を提供" (1 November 2017) を参照のこと。どちらも、狭い狙いに絞られている様に見えるので、次のアップデートでは、更なるバグに対応し、そして、多くの IT 管理者やコンサルタントがアップグレードすることを勧めるレベルに達するのかもしれない。

Apple は明らかに macOS を iOS の方向へと向かわせようとしている。そこでは、アップグレードは避けるのが困難である。しかしながら、macOS は遥かに複雑な環境であり、そして通常は人々の生活により重要な役割を果たしているものなので、我々は、アップグレードに慎重に立ち向かううことをお勧めしている。人々にまず最初にバックアップを取る機会を与えず、かつ何時間にも及ぶ1クリックインストールを提示すると言うのは、ユーザーにとって最善なことをすることよりもやり易さを優先させており、そして、それは危険な妥協でもある。

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次世代の TidBITS 基盤を鋭意開発中

  文: Adam C. Engst: [email protected], @adamengst
  訳: Mark Nagata <nagata@kurims.kyoto-u.ac.jp>

TidBITS ウェブサイトを最後にデザインし直してから、本当にもう十年も経つのか? (2007 年 9 月 10 日の記事“近代的な TidBITS ウェブサイトをデザイン”参照。) 実際、この十年間も何も変わらなかった訳ではない。私たちはサイトを Xserve から Rackspace へ、さらには Linode へと移し、私たちが使うツールや出版実践も継続的に改良してきた。けれどもその中核において、私たちのサイトは長い期間にわたり本質的には同じものであった。

現在、私たちは開発者 Eli Van Zoeren と共に私たちのインターネット存在のほとんどすべてを再構築しようと全力で働いているところだ。2018 年の早いうちにスタートさせることを目標にしている。ウェブサイトも毎週の電子メール号もデザインを新たにし、私たちが記事を書き、コンテンツを管理し、会員のことを調整し、記事へのコメントやコミュニティーの議論、アカウントの処理、電子メールの発送、その他のことを進めるためのシステムも新しいものにするつもりだ。ウェブと電子メールのホストも切り替える。このような移行が可能となったのは、TidBITS 会員の皆さんが寄せて下さっている寄金のお陰だ。これを機会に特に心からの感謝を捧げたい。

なぜこのようなことをしているかの理由は、多くの人たちの目に明らかなことだろうとは思うが、私たちの目から見たものほどに痛いほど明白ではないかもしれない。現在公開している私たちのウェブサイトのデザインは見栄えも使い勝手も十年前のもののようで、皮肉なほどレトロ調の感じはしないにもかかわらず、iPhone の上ではひどく読みにくく、Google の検索ランキングにも載りにくいのが現状だ。

では、なぜサイトのデザインだけを変えて済まさないのか? それは、このサイトが私たちの自家製の Perl ベースのコンテンツ管理システムの中に統合されているからだ。だから、サイトだけをデザインし直すのは、極めて困難だ。すべてが絡み合っているからだ。

電子メールの面についてのデザイン作業は比較的容易なものになるだろうが、発送可能性の問題と長年苦闘してきた私たちは、電子メールシステムを書き直してその部分を SendGrid のような、電子メールの大量発送に特化した会社に外部委託するようにしたい。私は人生のあまりにも多くの時間を電子メールを相手に闘うことに捧げてきてしまった。これからはその部分の処理を専門家に任せたいと思う。

手作りのカスタム Perl コードで書かれているので、私たちのコンテンツ管理システムには脆いところがあり、調整したり、改良したり、また他の開発者に説明したりすることが難しい。もともとこれを書いた Glenn Fleishman 本人でさえ、彼がウェブブログラミングに没頭していた時代からあまりにも長い時が過ぎたために、問題点の修正に困難を抱えてきている。そこで今回私たちは WordPress に目を向けることにした。完璧ではないが、堅固であり、しっかり維持管理されており、高度に拡張可能だからだ。New York Times を扱うのに十分な力を持つ WordPress なら、TidBITS を扱うにも十分に違いない。

WordPress が素晴らしいのは、その拡張性だ。既存のプラグインを使っても、カスタムコードを使っても拡張できる。例えば、私たちは TidBITS 会員の管理を eSellerate から WordPress の Paid Memberships Pro プラグインへ切り替えることを予定している。会費の支払いは Stripe を通じて処理される。(実際、私は既に TidBITS Content Network サイトを WordPress と Paid Memberships Pro を使ってセットアップしたので、ある程度の経験がある。) その上、Watchlist と ExtraBITS の記事を電子メール号に組み入れるなど TidBITS 特有の挙動をするためのカスタム・プラグインは Eli が書ける。

現時点で未知のままである最大の要素は、記事を作成するプロセスがどのようなものになるかだ。もちろんこれは読者には関係ないことだが、Josh と私は最近この問題に多くの時間を費やしている。これまで私たちは、記事の執筆を BBEdit でしてから、新規または更新された記事を Subversion 保存庫に入れ、それを私たちのコンテンツ管理システムが読み込むようにしてきた。このやり方はさまざまの点で素晴らしいが、セットアップと使用法に気難しい面があって、筆者たちとの共同作業の滑らかさへの妨げとなることがあった。私たちは既に共同執筆のために Google Docs を使っているので、WordPress の Chrome アドオンが Google Docs から投稿をうまく読み込めると分かれば、煩わしいコピーとペーストの繰り返し作業から解放されるのではないかと期待している。もしもそれがうまく行かなければ Wordable を試してみて、それでも駄目ならカスタム解決策を探ってみたいと思う。

新しいシステムへの移行のもう一つの利点は、アカウントをクリーンアップする機会が与えられることだ。私たちが Take Control Books を Joe Kissell に売却した時より以前には (2017 年 5 月 1 日の記事“Take Control Books、Joe Kissell が買収”参照)、TidBITS と Take Control が同じデータベースを共有していた。今はもうそうではないので、これを機会に Take Control のみに関係したアカウントを持っている人たちをデータベースから削除するつもりだ。また、TidBITS のみのアカウントは本の所有権を追跡しないので、私たちが管理するデータの量も減らせることになる。

それから、移行によっていくつかの混乱を解消することもできると期待している。私たちのコメント付けシステムが TidBITS アカウントと連動しているにもかかわらずそれを要件とはしていないことによる混乱や、現在 Mailman がホストしている TidBITS Talk メーリングリストが完全に別個の購読アカウントを使っていることによる混乱もある。将来はすべてのサービスが同じアカウント情報を使って働くようにしたい。

コメント付けシステムと Mailman の話が出たが、これら両方とも新しいもので置き換えるつもりであることも言っておこう。現行のコメント付けシステムはきちんと働いているが、フォーマッティングに関する厄介な制約があるとともに、私たちの手では簡単には修正できないいくつかのバグもある。Mailman の方は維持管理にあまりにも手間がかかり過ぎる。現時点での予定では、記事ごとのコメントと一般的な TidBITS Talk の討論には Discourse を使うつもりだ。Discourse はウェブに重点を置く (そしてたくさんの興味深い機能も持つ) ものだが、電子メールベースの討論もできるようになっているので、どの程度うまく使えるか試してみたいと思っている。

WordPress と Discourse の双方を走らせるためにそれぞれ別々のホスティングアカウントが必要となるが、それでもこの組み合わせは私たちが現在使っている CentOS ベースの仮想プライベートサーバに比べれば遥かにシンプルなものになるはずだ。私はたくさんの Unix タスクを何とかいじくることができているけれども、出版用の Unix サーバを管理することが大きなストレスであり多大な時間を必要とするものだと感じている。私たちは現在ステージング版の WordPress を ArcusTech で走らせているが、Discourse は Digital Ocean でインストールするつもりだ。これは、Discourse が必要とする Ruby on Rails 環境に ArcusTech が対応していないからだ。

結びに一言。私たちの願いは今よりもっと見栄えが魅力的な、モバイル・フレンドリーな、現代的なウェブと電子メールの環境を皆さんに提供することだ。それに伴ってものごとがよりシンプルになる。もはや意味を成さない、あるいはあまりにも多大な労力を要する機能は削除したい。例えば、ハード改行を施したテキスト版電子メール号の作成は、執筆の際に多大な手作業コーディングが必要で、電子メール管理インターフェイスが複雑化してしまう上に、今日の電子メールクライアントの大多数で見栄えがひどく悪い。けれどもそれと同時に、新たな機能の追加が私たちにとって今よりも簡単になるはずだ。なぜなら、大量のプラグインに対応するとともに、多くの開発者たちが理解するプラットフォームを使うようになるからだ。

これらの変更は間違いなく皆さんの目にも留まるだろう。また、皆さんがあらためて TidBITS アカウントにログインし直したり、電子メールフィルターを調整し直したり、その他 TidBITS とやり取りする方法にマイナーな変更を施す必要が生じることもあるだろう。けれども私たちは最善を尽くして、重要なことについてはあらかじめ皆さんにお知らせし、皆さんにとって移行が可能な限り易しいものとなるよう努力するつもりでいる。新しいバックエンドに私たちが期待をかけているのと同じくらいに、新しいフロントエンドにおける変更を皆さんが気に入って下さることを心から願っている。

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QR コードを使う実用的方法

  文: Glenn Fleishman: [email protected], @glennf
  訳: Mark Nagata <nagata@kurims.kyoto-u.ac.jp>

白状しよう。私はもう長い間、QR Code と呼ばれる 2D の光学コード・フォーマットに夢中になっている。かつてしばらくの間、すべての記事ページにこのコードを載せるよう TidBITS を説得することに成功したこともあるくらいだ。ポスターや、雑誌や、屋外の広告板などに印刷された、あるいは誰か他の人のモバイルデバイスの画面上に表示された、その「アナログ」な形の中に隠されている情報にデジタルなデバイスでアクセスするというのは、何かそこに心を浮き立たせるものがある。

QR コードは、エラーの起こりにくい黒と白のブロックの集まりとしてデータをエンコードする。このフォーマットは品質の悪い印刷や、暗い照明、不明瞭なスキャンなどでも使えることを念頭にデザインされている。障害回復力があるのだ! 結果として情報密度は比較的低いが、たいていの場合 QR コードは単に一個の URL や、カレンダー上の予定一件や、Wi-Fi ネットワークの接続情報といったものしか含まないので、大して広いスペースを必要としない。小説 "Moby-Dick" のテキストを丸ごとエンコードするために QR コードを使うことはできないが、Project Gutenberg にあるこの小説のダウンロードページを開く URL をエンコードした QR コードを作ることはできる。

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私は、QR コードを「アナログからデジタルへ結び付けるグルー」と考えたい。これは、何らかのデータをモバイルデバイスへ取り込むのが簡単でないような状況で便利に使えるからだ。Google はかなり以前から Google Play でこれを利用してきた。開発者がダウンロードリンクを QR コードとして生成し、ユーザーが Play アプリでそれをスキャンするようにしていたのだ。(奇妙なことに、Android が QR コード認識を組み込んだのはほんの数年前になってからだ。Motorola はもっとずっと以前から自社のスマートフォンのカメラアプリにこれを組み込んでいる。)

Apple が iOS 11 で QR コードの自動認識機能を Camera アプリに組み込むと発表したのを見て私がどれほどワクワクしたか、もうお分かりだろう。主としてそれは、中国市場での必要からであった。あなたがここ 15 年以内に日本を訪れたことがないなら、あるいは 3 年以内に中国を訪れたことがないなら、あるいは日本や中国で人々がこのテクノロジーをどのように使っているかの話を読んだことがないなら、これらの国で QR コードがどんなに広く受け入れられているかを想像することさえできないだろう。

そして今、同じことが全世界でも起こり得るだろうか? 私はそう願いたい。けれどもそれはごく実用的な理由からだ。そのことを説明しよう。

現状で最も QR コードが使われているのは -- もともと QR コードが開発され、ハンドセットメーカーや携帯電話キャリア、広告主や出版者たちによって広められたのは、日本においてであった。既に 2000 年代の初め頃にはかなり多くの採用がみられた。QR Code フォーマットを開発したのは Denso Wave という会社 で、この会社は特許権を行使しないと明言した。

最近になって、中国の商社がタッチレス支払の安価な方式として QR コードを使い始めた。高価な NFC (近距離無線通信) ターミナルや、このテクノロジーを内蔵したスマートフォンを必要とする代わりに、中国で最も大きなインターネットと e-コマース企業の中の二つ、WeChat と Alibaba が、実店舗における支払グルーとして QR コードを追加した。買い物をした顧客は店舗のレジで QR コードをスキャンして支払いをするか、またはスマートフォンの画面上の QR コードを示すことで支払うかする。米国においては Walmart がこの考え方を取り入れている。(2016 年 7 月 18 日の記事“Walmart Pay、想像以上に悪くない”参照。)

けれども、アメリカやヨーロッパにおいてはほとんどの場合 QR コードの潜在能力がフルに生かされることなく、ただ単にアプリが QR コードを表示して搭乗券やポイントカードなどの代わりとするだけの使い方だ。Apple が内蔵している Wallet アプリもまさにこれに当たる。その上、そのためだけに特殊なアプリをダウンロードして QR コードをスキャンするという手間をユーザーに強制するのは、普及の際の妨げとなる。あまりにも障壁が大き過ぎて、広く採用されるには至らない。

でも、自動認識があればその障壁は崩れ落ちる。iOS 11 では、Camera アプリの視野の中に QR コードが見えれば、何がエンコードされているかを説明する通知が出る。その通知をタップすれば、必要なアクションを iPhone が実行してくれる。例えばウェブページを開いたり、カレンダーに予定を追加してよいかのプロンプトを出したり、といったことだ。プレビューを見たければ、その通知の上で下へ引っ張ればよい。(この自動スキャンを無効にしておきたければ Settings > Camera で Scan QR Codes をオフにできるが、時折コードのスキャンが実行されてもただ無視するだけの方が簡単だろう。)

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QR コードで興味深いのは、QR コードがテキストをエンコードするけれども、それで何をするかは定義しないという点だ。何をするかは、すべてスキャンをするアプリが担当する。長年にわたり人々はますます多くの QR コードの利用法を発明してきて、iOS 11 は (また Android やサードパーティの QR コードアプリの大多数も) そのほぼすべてに対応している。情報形式の大多数は URI (Universal Resource Identifier) 流の protocol://addressing というフォーマットに従った形であり、http:// の後にドメイン名とパスと変数が続く URL もその一例だ。

QR Code フォーマットがエンコードできる主たるデータのタイプは次のようなものだ:

これらの QR コードはどのタイプのものも、いろいろなウェブサイトで無料で生成できる。例えば QR Code Generator もそのようなサイトの一つだ。例えば QRCode Monkey など、QR コード認識に悪影響を与えることなくデザインをカスタマイズできるサイトもある。QR コードには非常に多くのエラー訂正機能が組み込まれているので、領域の大きな部分をグラフィックスで置き換えることも可能だからだ。これらのサイトで QR コードを生成させたら、PNG やその他の画像フォーマットでダウンロードできる。ほとんどのサイトはベクターフォーマット (EPS, SVG, PDF など) にも対応していて、プリプレスに使ったり、あるいはブラウザで、またはウェブページ上の JavaScript 拡張可能な要素として使ったりすることもできる。

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プライベートな情報、例えばネットワークパスワードを含んだ Wi-Fi 接続コードなどをエンコードする際には、サーバを通してやり取りする必要のあるウェブサイトではなく、JavaScript ベースの生成ツールを使うことをお勧めする。私は Wi-Fi コードの生成には Pure JS WiFi QR Code Generator を使っている。これはその名前の通りの働きをするので、情報があなたのブラウザの外へ出ることはない。

また、iOS アプリを使うこともできる。私は単純な用途には Benjamin Mayo の Visual Codes を気に入って使っている。これは無料でスクリーン上にコードを生成でき、一回限りの $1.99 のアプリ内購入でそれを共有し印刷できる。秘密の情報を含んだ QR コードを作成するためにも、このアプリを使う方法が適している。

さて、実際問題としてこれらの QR コードをどのように使うのだろうか?

箱の中のビジュアルなショートカット -- 誰かが何かをタイプすると分かっているような状況ならどこでも、そのタイプする面倒を避けるために QR コードを採用することが可能だ。それと合わせて、何かのタスクを完了させたり、あるいは何か追加の情報を取り込んだりすることもできる。具体的な使用法をいくつか挙げよう:

QR コードを撮影する際にはスマートフォンからの距離に注意したい。その距離と、コード内の情報密度との相対比率が重要だ。多くの情報がエンコードしてあれば、その分カメラは細かな部分を識別しなければならない。本や、名刺や、チラシなどでは簡単に近接撮影ができる。けれども遠く離れたところから QR コードを撮影しようとする場合には、例えば屋外の広告板や店の看板などでは、URL 短縮ツールを使うことでできる限り大きな塊から成る低密度の QR コードを作るようにする方が賢明だ。

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広く対応されれば新たな使い道が生まれるだろう -- QR コードの利用方法をいくつか挙げてきたが、きっと他にもいろいろな QR コードの使い方を人々が思い付くに違いないと私は思っている。iOS 11 が登場して、突然何億人もの人たちが QR コードのスキャンを使えるようになった。また、これは私たち Apple ユーザーに限った話でもない。2015 年 10 月リリースの Android 6.0 から、ネイティブな QR コードスキャンが追加されている。

最近数年以内に製造されたスマートフォンを持つほとんどの人たちが特別なアプリを必要とせず QR コードをスキャンできるようになった今、現実世界からデジタルデバイスへと情報を渡す際の摩擦を減らすために必要とされるところならばどこにでも QR コードを使うようにすべき時期が来ているのではないか。

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iPad の生産性、iOS 11 で大いに向上

  文: Julio Ojeda-Zapata: [email protected]
  訳: 清水 史彦 <qff01604@nifty.com>

私は、iPad を生産性向上のためのデバイスとして、長いこと使ってきた。つまり、単に電子ブックを読んだり、Netflix を見たりするためだけではなく、仕事を片づけるために使ってきたということだ。

だが、柔軟性や多用性という点において、iPad と iOS の組み合わせは、Mac と macOS の組み合わせに、これまで決して敵うことがなかった。私は、iPad の優れた可搬性や、タッチスクリーンのようなユニークな機能を享受するために、このタブレットの持つ限界と折り合いを付けなければならなかった。

だが、iOS 11 のリリースで、物事をやり遂げるマシンとして、iPad がどんな風にやって行けるのか、今や見直す時だ。iOS 11 の機能の多くは、iPad 固有のものであり、できるだけ生産的でありたいという志向を持つ人たちのために、iPad が、もっと Mac のように感じられるようにしようと意図されている。

iOS 11 に対する Mac スタイルの強化、その多くは iPad 固有のものであるが、これには、より柔軟な Dock、ファイルを見つけるもっと良いやり方、より強力なドラッグ & ドロップ機能、改良されたマルチタスク、および、マルチタッチ機能、性能が向上した画面分割機能、Apple Pencil の新しい使い方、その他、が含まれる。

要するに、iOS 11 で、iPad は全く新しいマシンのように感じられるようになったのだ。私は、このソフトウェアの新機能をフルに活用しながら、iPad Pro で、この話を執筆することに満喫している。この体験は、まだMac と肩を並べるほどではないが、以前よりもずっと近付いている。

以下、iOS 11 の機能を要約するが、私はこれを 10.5 インチの iPad Proでテストしており、その機能によって、Apple タブレット上での私の仕事のやり方が、いかに改善されたかを示す。

新しい Dock -- iOS 11 において、もっとも目立っていて、かつ、重要な iPad の変更点は、改良された Dock だ。これは、以前よりも、はるかに融通が利く。

まず第一に、新しい Dock は、もっと多くのアプリのアイコンを収納することができる。元々は、iPad は、iPhone (iPhone は、新しい Dock を持っていない) を真似て、たった 4 つのアイコンしか収納しなかった。後に、この数は 6 つにまで増えた。今では、iOS 11 で大幅に増えて、iPad は 13 個のアイコンを収納できるようになり、ドックの一番右側には、最近使ったアプリや Continuity の表示のために、3 つのオプション用スロットがある。この新しい Dock によって、効率が大いに上がった。なぜなら、もっともよく使うアプリが一ヶ所にまとまり、ちょうど Mac のように、常に起動を待つ状態にあるからだ。

Dock は、iOS アプリのフォルダを収納することさえできる。ただし、ドックに収納されたフォルダは、ラベルや他に識別するものも無いので、認識し難くなる可能性がある。

ある種のアプリは、ある種のフォルダとしても機能する。例えば、Dock で、新しい Files アプリを押すと、最近使用した文書と共にポップオーバーが現れ、それをタップして開くことができる。どのアプリがこの機能をサポートしているか知るためには、実験しなければならないだろう。少なくともいくつかのアプリでは、この機能は、アイコンが Home 画面にある場合でも動作する。

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なんと言っても、Dock はいつでも容易にアクセス可能だ。アプリの中にいる時ですらそうだ。デフォルトでは、Dock は隠れているが、画面の一番下から上にスワイプすれば現れる。そして、Dock は、Dock で何かするまで、あるいは、下にスワイプして消すまで、とどまって見えている。

これは大きな変革だ。iOS の以前のバージョンの全てについて、私の大きな不満の一つは、別のアプリのアイコンがタップ可能となるよう、Dock が(Home 画面と共に) 見えるようにするのに、Home ボタンを押す必要があったことだ。これは難しくはないが、そうするのは、精神的に文脈を大きく切り替えることであり、長年にわたってこれを何千回も行うことで、私はずっとイライラしていた。

もちろん、今でも、そうしたスワイプ操作をしなければならないし、それは、macOS の Dock を隠すオプションに似ていて、私は、これを鬱陶しいと思っている。私は、自分のMac のDock は、常に見えるようにしているのだ。iPad のずっと小さな画面上でいつも見えている Dock というのは、ほとんど意味がないが、私がもっともよく使うアプリを容易にアクセス可能にしておくことは、些細な不便さを補って余りある。

改善されたマルチタスキング -- Mac における筋金入りの生産性は、同時に複数のウィンドウが見られるということに依っている。なので、例えば、一つのウィンドウで執筆し、一方、別のウィンドウで参考文献を調べるといったことができる。画面上に複数のウィンドウを開いて配置することは、随分前から可能になっていて、数年前、Apple は、この機能を正式なものとするために、Split View を追加した。だが、これがどのくらいよく使われているか、私は知らない。(あるウィンドウで、緑色のズームボタンをクリックしてホールドすると、Split View が起動する。それから、Mission Control で別のウィンドウを選ぶと、画面の別の側が、選んだウィンドウで占められる。)

しばらくの間、iPad は同様の Split View 機能を持っていたが、それには制限があった。iOS 11 はこれを劇的に改善し、さらなる柔軟性を提供している。

Apple は、まず初めに、Split View の配置をどのように作り出すかについて、根本的な変革を加えた。厄介な縦型のアプリ・ピッカーは姿を消し、今では、Dock からドラッグするのだ。まず、二つのアプリのうち、最初の一つを開く。そして、画面にそのアプリがある状態で、別のアプリのアイコンを Dock から上にドラッグし、画面の右端か左端に向かってドラッグする。画面の端に着く前に、ドラッグしたアプリをドロップすれば、Split View の代わりに、Slide Over のペインが出てくる。

今では、横向きにしていれば、横に並んだアプリの大きさを変えるのに、もっと多くのオプションがある。分割線をドラッグして、25/75、75/25、または、50/50 の比率にすることができる。(縦向きでは、最初の二つだけが機能する。)

加えて、別のアプリをちょっと見るだけでよい場合は、そのアプリをSlide Over ペインに置くことができ、するとそのアプリは、今作業しているアプリの上に、浮かぶことになる。片側もしくは別の側がよく見えなくなるのを避けるため、今では、Slide Over ペインを、ペインの内側の端を指でスワイプすることによって画面の左右どちらかに位置を変えることができる。また、Slide Over ペインは、ペインの左端から右にスワイプして画面から消すことができ、画面の右端から内側にスワイプすることによって、呼び戻すこともできる。

iPad Pro では、一度に 4 つまでのアプリを画面上で開くことが可能だ。これは少々手が込んでいるが、Slide Over ペインを開いてそれを隠しておけば、それから別のアプリを Split View で開いて、Slide Over ペインを呼び戻して、3 つのウィンドウが開く。もし、そうしたアプリの一つがビデオ再生であれば、それをピクチャー・イン・ピクチャーのビデオ・ペインに切り替えることができる。こうして、全部で 4 つのアプリが、画面上に同時に開くことになる。他の iPad では、アプリを一度にいくつ表示できるかについてもっと制限があり、これはモデルによっても異なる。

Split View のペインは、左右の位置を入れ替えることさえ可能だ。一つのSplit View のペインの一番上にあるハンドル上で下にドラッグして、このペインを Slide Over ペインに変え、ペインの端をドラッグして、これを別の側に置き、そして、一番上のハンドルを再度下にドラッグして、ペインを Split View ペインに戻すことによって、これが可能となる。この技は、正しい指の動きができるようになるのに少々練習が必要だ。これが実際に動作するのを見るために、下記のビデオを見ていただきたい。

あなたは、ある特定の Split View のアプリのペアを再三再四使いますか?今では、それを存続させることができる。Dock が見えている状態で、上にスワイプする。(あるいは、見えていない時は、とても長く上にスワイプする。) すると、iOS 11 で再設計されたアプリ・スイッチャーが姿を現す。アプリ・スイッチャーでは、以前に使用したアプリと、最近使ったSplit View の組み合わせの両者が、きれいに配置されたサムネイルとして表示される。とても便利だが、これには制限がある。どんなアプリでも、一度に表示可能なペアは一つだけだ。(アプリ・スイッチャーの画面には、右側に Control Center も表示される。)

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こうした機能のどれも、それ自身では、大きな変革ではない。そして、自分の指に必要なスワイプを教え込むのにある程度時間がかかるかもしれない。だが、総合して、これらの機能のおかげで、私が仕事を片づける必要がある時に、私は、以前よりももっと自分の iPad に手を伸ばす可能性が高くなった。

ドラッグ & ドロップ -- Mac では、例えば、いくつかのファイルをある場所から別の場所にいっせいに移動させるなど、ドラッグ & ドロップ操作が使えるのは当たり前のことだ。

この点については、iPad には、もっとずっと制限があった。だが、iOS 11によって、このギャップは劇的に縮まっている。ただし、指を画面に置く新しい操作は、最初は、とっつきにくいと思われるかもしれない。

以下、ドラッグ & ドロップが使える状況について、いくつか例を示す。

* Safari と Mail の二つのアプリが Split View で互いにならんでいる時に、Safari のアドレス・バーから、Web の URL を、Mail のメッセージのテキスト・フィールドにドラッグする。同様に、Photos アプリから、写真をメールのメッセージにドラッグする、あるいは、メモとワープロ・アプリとの間で、テキストの断片を移動させる。

* 複数のアイテム (Home 画面上で小刻みに動いているアプリのアイコン、Files アプリ内での複数のファイルなど) を同時に移動させる。これを行うためには、一つのアイテムのドラッグを開始する。それから、近くのアイテムを タップする 。タップされたアイテムは、最初のアイテムといっしょに、ドラッグを続ける間、一群となる。これは、複数のファイルをあるフォルダから別のフォルダに移したり、Home 画面のアプリをすばやく整理したり、等を行うためのとても良い方法だ。

* もし、二つのアプリを Split View に入れたいが、どちらも Dock にない場合は、以下のようにすること。指を使ってタップしてホールドし、アプリの一つをドラッグし始める。別の指でもう一つのアプリをタップして開く。これをしながら、最初のアイコンを、Split View (または、Slide Over) のペイン用の場所までドラッグする。今回もまた、これは少々手が込んでいる。これを理解するには、以下のビデオを見ていただきたい。

ドラッグ & ドロップには、作業時間を短縮し、もどかしさを減らす可能性がある。例えば、私は、複数のファイルをメールのメッセージにドロップしたいことがよくある。だが、私は、ドラッグ & ドロップが正しく機能しないと思われる状況を見出している。例えば、私はWordPress で作成したブログの投稿に、複数の写真をドロップできるのではとワクワクしたが、まったくのところ、これが動作するようにはできていない。

新しい Files アプリ -- iPad に対するもう一つの長年の非難は、iPadに Mac スタイルの Finder がないということであった。つまり、見慣れた、フォルダの中にフォルダが配置されているというスタイルで、ファイルにたどり着くことができるというやり方だ。

最初の不完全な試みである iCloud Drive は、iOS 8 の一部としてリリースされ、iCloud Drive 対応のアプリに関連したファイルを収納するフォルダが含まれていた。後に、Apple はこれを拡張し、例えば、Mac の Documentsフォルダや Desktop フォルダのように、Apple のエコシステムの特定の場所にあるファイルが表示されるようにした。個々のファイルも iCloud Drive内で、フォルダには入らずに、束ねられていない状態で収納できるようになった。iCloud Drive のコンテンツは、ユーザーのすべての iOS およびmacOS デバイス間で同期した。

iCloud Drive は、今では、Files と呼ばれる新しいアプリに吸収された。これは、iPad と iPhoneの両者で利用可能である。Files は、Dropbox、Google Drive、そして、Microsoft の OneDrive のような、インストールされた任意のサードパーティーのクラウド・ストレージ・サービスへのアクセスも提供する。これらのサードパーティーのクラウド・ストレージ・サービスは、サイドバーの一番上で、Locations のところに表示される。

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なんらかのアイコンをタップすると、そのアカウントに容易にアクセスできる。ちょうど、あたかもそのサービスのアプリでアクセスしたかのようだが、すべてが一つの場所にあるのだ。

おおむね任意のサービスから、お気に入りとして、フォルダを指定することもできる。だが、個別のファイルは指定できない。フォルダをお気に入りとして指定するためには、フォルダをサイドバーの Favorites エリア(Locations の下にある) にドラッグする。私が理解してない理由のため、これは、OneDrive に関してはうまくいかないようだ。

Files には、タグ付けシステムがあり、これはかなりしっかりしているが、時々、わかりにくいことがある。iCloud から同期された現行のタグは、サイドバーの Tags セクション (Favorites の下にある) で、色つきのドットとして示される。

ファイルもフォルダのどちらも、いろいろなやり方でタグ付けが可能だ。オプションとして、ファイルやフォルダをタグの上にドラッグすること、アイテムのアイコンを長押しし、コンテクストメニュー内で Tags をタップすること、そして、タグをタップして開いて、関連する全てのファイルやフォルダを表示し、それから、フォルダ風のタグ・ビュー内にさらにファイルをドラッグすることが含まれる。

新しいタグの作成は直感的ではなく、私は、理解するのに少々時間がかかった。ファイルやフォルダをタップ & ホールドし、コンテクストメニューを呼び出す。それから、Tags をタップし、次いで、Add New Tagをタップする。新しいタグに、名前と色を与える。

改良された Dock とは異なり、Files は、私にとっては、大幅な様変わりとは言えない。と言うのは、私は、Mac では、ファイルをお気に入りに登録したり、タグ付けしたりすることは決してないからだ。そして、インターネット上の私の全ての「クラウド・ドライブ」のコンテンツが、全て一ヶ所で見られるのは素晴らしいことだが、個別のアプリを使うことは、これまで決して厄介なものではなかった。

とは言え、今では、私は、Files アプリだけを Dock に入れていて、Dropbox と Google Drive のアプリは、フォルダにしまい込んで見えなくなっている。

Notes と Apple Pencil -- iPad Pro 専用の Apple Pencil は、いくつかの生産性向上の技があるため、役に立つ可能性がある。だが、Josh Centers が述べているように、そうした機能を利用するのに、Apple Pencil は必要ない。("iOS 11 について知っているべき 11 のこと"2017 年 9 月 20 日参照)

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実績を評価する -- これまでかなりの期間、iPad は、私の生産性向上のための頼りになるモバイル・デバイスであった。そして、iPad Pro が、最近、その役割をしっかり果たしてくれている。私が仕事に出かけようとする時、iPad は、私が反射的に手を伸ばすデバイスだ。なぜだろう?

iPad は薄くて軽く、そして、(キーボード・カバーと背面カバーで両側を覆っているので) 自転車のパニアバッグに、戸惑うことなく放り込む程度には頑丈だ。他に引きつけられる点として、内蔵カメラが挙げられる。これは、私のジャーナリストとしての一連の仕事で役に立つ。そして、ラップトップのような配置のためのキーボード・カバーや、オプションとして、セルラーでのインターネット・アクセスが挙げられる。最後に、タッチスクリーンで直接操作するという魅力を忘れてはいけない。多くのiPad ユーザーが、自分の MacBook の画面をタップしようとしていることに気づいてきたのだ。

iPad を仕事のデバイスとして使うことには、今もなお不都合な点がある。どんな iPad を持っていようと、画面の広さは、27 インチの iMac に比べれば限られている。そして、もう一つ別の画面を接続することは不可能だ。たとえ、iOS 11 の改良があったとしても、Slide Over、Split View、そして、ドラッグ & ドロップを使うための必要なスワイプには、まさに現実の学習曲線が、いまだに存在する。

さらに悪いことに、iPad のアプリの多くは、それに相当する Mac のアプリに対して、機能性や洗練性の点で遅れを取っている。例えば、iPad が最先端のビデオ編集デバイスだと主張する人は、ほとんどいないであろう。そして、App Store の何百万ものアプリにもかかわらず、いまだにギャップがある。TidBITS は、現在のところ、コンテンツ管理システム用に、バージョン管理システムである Subversion に頼っている。だが、iOS向けには、実用的な Subversion のクライアントは一つもないのだ。アプリのエコシステムのこうした欠点のために、多くの人にとって、iPad は役立たずとなっている。

こうした制限にもかかわらず、iPad 上の iOS 11 は、以前のバージョンのiOS において、生産性向上を妨げていた摩擦の多くを取り除いた。ほとんどテキストと写真で仕事をするジャーナリストとして、iOS 11 と iPad Proの組み合わせは素晴らしい。

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TidBITS 監視リスト: 注目のアップデート、2017 年 11 月 20 日

  文: TidBITS Staff: [email protected]
  訳: Mark Nagata <nagata@kurims.kyoto-u.ac.jp>

Microsoft Office 2016 15.40 -- Microsoft が Office 2016 アプリケーションスイートのバージョン 15.40 をリリースした。今回はセキュリティに特化したメンテナンス・リリースだ。このリリースでは、Word で多層防御の手段としてのセキュリティ拡張を施し、Excel で攻撃者が Excel ワークシートの中に悪意あるコントロールを埋め込むことを可能にしていたセキュリティ機能バイパスの脆弱性をパッチしている。(一回限りの購入ならば $149.99、Microsoft AutoUpdate 経由で無料アップデート、リリース ノート、10.10+)

Microsoft Office 2016 15.40 へのコメントリンク:

OmniOutliner Essentials および Pro 5.2 -- The Omni Group が OmniOutliner EssentialsOmniOutliner Pro のバージョン 5.2 をリリースして、(AppleScript に加えて) JavaScript を通じた自動化を追加できる機能を盛り込むとともに、サイズの大きなファイルを開いたり使ったりする際の全体的なパフォーマンスを改善した。このアウトライン作成および情報整理アプリの双方の版とも、HTML と HTML (Dynamic) の書き出しで展開された PDF 添付ファイルがブラウザ対応があればインラインでレンダリングされるようにし、.docx, .xlsx, .pptx の書き出し変換の効率を上げ、Chrome や Firefox で表示する際の HTML と HTML (Dynamic) エクスポータのレイアウト問題を修正し、Touch Bar 搭載の MacBook Pro モデルで macOS 10.13 High Sierra が走っている場合にいくつかの国際入力メソッドで頻繁に起こったクラッシュを解消している。OmniOutliner 5 は Mac App Store から無料でダウンロードでき (2 週間は無料で試用可能) Essentials と Pro の機能のロックをそれぞれ $9.99 と $59.99 で外すオプションがある。(Essentials の新規購入 $9.99、Pro の新規購入 $59.99、アップグレード $4.99/$29.99、38.7 MB、リリースノート、10.11+)

OmniOutliner Essentials および Pro 5.2 へのコメントリンク:

KeyCue 8.6 -- Ergonis がキーボード参照シートのユーティリティ KeyCue のバージョン 8.6 をリリースして、新しい Tioga テーマ (暗色の背景の上に明色のテキスト) を追加し、Tenaya テーマを (OS X 10.10 Yosemite かそれ以降では Apple の UI フォントを使うように) 更新した。今回のアップデートではまた、テーマ定義のデフォルトエディタを TextWrangler から BBEdit に切り替え、グラディエントのあるテーマの描画を高速化し、フランス語とドイツ語の過去のローカライズ版から残っていた遺物を除去し、メモリリークの可能性を修正している。(新規購入 19.99 ユーロ、TidBITS 会員には 25 パーセント割引、無料アップデート、3.8 MB、リリースノート、10.6+)

KeyCue 8.6 へのコメントリンク:


ExtraBITS、2017 年 11 月 20 日

  文: TidBITS Staff: [email protected]
  訳: Mark Nagata <nagata@kurims.kyoto-u.ac.jp>

今週の ExtraBITS では、Apple が HomePod を来年に延期すると発表し、Gizmodo が Facebook の薄気味悪さの秘密を暴露し、ウェブの創案者がウェブの未来への懸念を表明する。

Apple、HomePod を 2018 年に延期 -- Apple は当初、HomePod スマートスピーカーを 2017 年 12 月に出荷すると約束していたが、今回 Apple はそれを 2017 年初頭まで延期して「完成までにもう少し時間が必要」と説明した。ホリデーのショッピングシーズンに間に合わないことで Amazon や Google の競合製品に優位を与えることになるかもしれないが、Apple にとっては不完全な製品を出荷するより出荷を延期する方が良い選択だ。

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Facebook はなぜあなたの個人ネットワークをあなたよりよく知っているか -- Facebook はいろいろと薄気味悪いことをする。例えば誰かにその人の父親の愛人を友だちにするよう勧めたり、夫婦に何年も前の匿名の精子提供者を繋げたり、といったことだ。けれども、いったいどうやって Facebook はそのような怪しげな関係を見つけ出しているのだろうか。Gizmodo がこの問題を調査し、Facebook の挙動を遡ることで「裏連絡情報」と呼ばれるものに辿り着いた。これは、あなたが知っている可能性のあるすべての人物を追跡するために Facebook が使っている、秘密のデータベースだ。情報の多くはアドレスブックを Facebook と共有している他のユーザーたちから収集しているので、例えば互いに関係のない二人の人が二人ともあなたの電話番号をアドレスブックに保存していれば、Facebook はその二人を結び付ける。残念ながら、このことについてあなたにできることは何もない。

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ウェブの創案者、ウェブの未来への懸念 -- Sir Tim Berners-Lee は World Wide Web を「誰もが情報を共有し、機会にアクセスでき、地理的境界を越えて共同作業できるためのオープンなプラットフォーム」として創案した。けれども今の彼は当時ほどその未来に楽観的でいられないでいる。「私たちは歯を食いしばって柵にしがみつき、ウェブが私たちを素晴らしいところに連れて行ってくれるのが当然だと思わないようにしなければなりません」と彼は言う。とりわけ Berners-Lee が批判するのは、クリックベイトを作りプロパガンダを広めるウェブ広告だ。「このシステムは破綻しかけています。クリックベイトで広告収益が上がるというやり方は、人類が真理と民主主義を促進させる力になるという目標を叶えることになりません。」

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TidBITS ISSN 1090-7017©Copyright 2017 TidBITS: 再使用はCreative Commons ライセンスによります。

日本語版最終更新: 2017年 11月 25日 土曜日 , S. HOSOKAWA