またもや Apple のアクティブなオペレーティングシステムを対象に一連のセキュリティアップデートが出た。修正された脆弱性のうち２つは実際に悪用されているとのことなので、早めにインストールしておこう。それから今週号では、Adam Engst がカナダで起こった契約上の紛争を検討する。そこでは親指を立てた絵文字の解釈が争点となったからだ。Adam はまた、小規模企業向けの決済サービス Melio について論じる。このサービスのお陰で TidBITS が執筆者に支払いをする手間が簡素化された。それから、Elon Musk が Twitter を X と改名したことについて簡潔に紹介するとともに、スマートフォンが登場するより前の私たちが隙間時間をどうやって過ごしていたかに思いを馳せる。今週注目すべき Mac アプリのリリースは GrandPerspective 3.4.1、CleanMyMac X 4.14、Lunar 6.2.1、それに Final Cut Pro 10.6.7, Compressor 4.6.5, Motion 5.6.5 だ。
Apple がまたもや同社のすべてのアクティブなオペレーティングシステムをアップデートして、数多くのセキュリティ脆弱性に対処した。修正された脆弱性のうち２つは実際に悪用されているとのことだ。その片方は先週の記事“ 緊急セキュリティ対応による iOS/iPadOS 16.5.1 (c) と macOS Ventura 13.4.1 (c)”(2023 年 7 月 13 日) で議論された WebKit 脆弱性、もう片方は Kernel の脆弱性であって、Apple によればこの Kernel 脆弱性が iOS 15.7.1 より以前のバージョンの iOS に対する攻撃に使われた可能性があるという。iOS 15 にアップデートすることができない iOS デバイスをまだ使っている人は、一度そのことを考えてみよう。
対処された脆弱性の個数は 8 個 (tvOS) から 29 個 (macOS) までさまざまだが、多くはすべてのオペレーティングシステムに共通のものだ。詳しくは以下に示したリンクに書かれているが、その詳細は大して重要でない。私たちとしては、保護を受けるために早めにインストールしておくことをお勧めしたい。
該当するオペレーティングシステムは次の通り：
機能に関する変更点で Apple が公表しているものはただ一つ、tvOS 16.6 でイスラエルにおいて Siri にヘブライ語対応が追加されたことだけだ。
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百聞は一見にしかずという諺の通り、たった一枚の写真を説明するためにも何千語もの言葉が必要となるものだ。絵文字ならば写真よりずっと単純なので、単語十個程度で十分かもしれない。それでもなお、このような絵と文字との関係には解釈の余地が多く残されている。そのことの実例となったのが、最近のカナダでの裁判事件だ。
カナダ中西部のサスカチュワン州に住む穀物バイヤーが農場経営者たちにテキストメッセージを送り、亜麻をブッシェルあたり $17 で買う契約をしたいと申し出た。そして一人の農場経営者が期待に添えると示唆した。そこでバイヤーは契約書の写真をメッセージで送り (それ以前にも何度もそうしてきたが)、「亜麻の契約を確認してください」と書き送った。するとその農場経営者は返事として親指を上げた絵文字 👍 を送り返した。けれどもその後亜麻の価格がブッシェルあたり $41 と急騰して、農場経営者は利益の上がらない契約を果たすことができなくなった。そこでバイヤーは契約違反だと訴訟を起こした。
訴訟の細かな事実はここでは問題でない。問題の核心は、農場経営者が送った 👍 という返事が法律的に「あなたがたった今送ってきた契約を私は受け入れます」という意味なのか、それともただ単に「契約書の受領を確認します」というだけの意味なのかという点にある。裁判官 Timothy Keene は、農場経営者が送った 👍 は契約への署名と見なすことができ、従って農場経営者は契約に違反したと裁定した：
裁判所は 👍 絵文字が書類への“署名”として伝統的な手段と言えないことは認めるものの、それでもなおこのような状況の下でこれは“署名”の持つ２つの目的を伝達する有効な方法であったと見なす。すなわち、署名者の身元の確認 (Chris は自身の携帯電話番号を使った) と、上で論じた通り、Achter 社が亜麻の契約を承諾したことの伝達である。
穀物バイヤー側の弁護士は訴訟に提出した書類の中で、この農場経営者は過去にもこれ以外に少なくとも 4 回にわたって "looks good"、"ok"、あるいは "yup" というテキストを使って契約に同意したことがあると述べた。
より一般的な観点から、農場経営者側の弁護士は次のように論じた：
...単純な 👍 絵文字のみで身元確認と契約の承認を意味するということになれば、堰を切ったようにあらゆる種類の訴訟がさまざまな種類の絵文字の意味することの解釈を求めて押し寄せる事態になることでしょう。例えば 👊 絵文字は何を意味するか、🤝 絵文字は何を意味するか、となるでしょう。
これに対して裁判官は揺らぐことなく、次のように応じた：
これは一種の公共秩序の議論に思われます。今回のことが (少なくともサスカチュワン州では) 新しいものであることは認めますが、それでもなお当裁判所がテクノロジーと一般的慣習の波を食い止めようと試みることはできません。(すべきでもありません。) これは、カナダ社会の新しい現実であると思われ、今後の裁判所は絵文字その他の使用に起因する可能性のある新しい問題に対処できるようにならなければなりません。
この物語は主としてユーモアの意味から世間の話題に上ってきたが、その際に以前からこの農場経営者が簡潔な言葉で契約に同意してきたという事実が抜け落ちたまま語られることが多かった。けれども私はずっと以前から、テキストによるコミュニケーションで解釈の余地が残されている状況の下で絵文字が使われることに懸念を感じている。文章に感情を少しだけ添えるために笑顔やしかめっ面の絵文字を入れるのならば分かるけれども、何か重大なことを伝えるためにたった一つの画像に頼るというのはまた全然話が違う。葉巻は単なる葉巻を意味するだろうが、 🍆 か必ずしも単なる茄子だけの意味とは限らない。
そこのところが気になったのは、2023 年 9 月に新しい絵文字として正式に登場するための候補の段階にある Emoji 15.1 草稿リスト (Unicode 15.1 も同時にリリースされるはず) を見ている時であった。(Apple は 2024 年の早いうちにこれをオペレーティングシステムに組み込むと予想される。) これらの絵文字は非常に特定的であって、その多くが既存の絵文字を組み合わせて新しい並び絵文字としたものだ。118 個ある候補のうち 108 個は単に向きを新しくしただけのものであって、現在は左を向いている顔が新たに右向きでも使えるようになるものが多数ある。それだけでは議論の種にもならないかもしれないが、候補の中にある Head Shaking Horizontally (顔を左右に振る) と Head Shaking Vertically (顔を上下に振る) 絵文字ではそれが何を意味するかが厄介な問題を引き起こすだろう。Emojipedia は次のように述べる：
２つのデザイン 🙂↔️ Head Shaking Horizontally と 🙂↕️ Head Shaking Vertically は絵文字をデザインする者にとって意味論的な困難をもたらす可能性がある。なぜなら国によってその意味するところが違うからだ。例えば、絵文字 🙂↕️ Head Shaking Vertically は首を縦に振ってうなずくことを示すよう意図されているけれども、その動作は米国において“イエス”を意味する一方で、ブルガリアでは“ノー”という否定を意味する。
絵文字を瓶に詰め戻すことなど不可能だが、私の予想では単なるリアクションや感情を少し添えるためだけの目的を超えて、本物のテキストによるコミュニケーションの代わりとして絵文字を日常的に使っている TidBITS 読者は比較的少ないのではないかと思う。たとえあなたが絵文字で何を伝えたいか知っていたとしても、読む方の人がそれをどう解釈するかは全く分からない。それと、今度あなたが亜麻を売ろうとする際には、絵文字でなく実際の言葉を使って意図するところを伝える方が賢明だろう。署名のための絵文字が、お偉方の手で開発されるまでの間は。
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TidBITS は昔から我々の書き手に対して支払いをしてきた。それは言うのは簡単だが、毎月異なる金額を数多くの人々に送金しなければならない時、その支払いがどの様になされるのかの仕組みは大事である。
初めの頃、我々はチェックを書いていた。いや、もっと厳密に言えば、CFO の役職の一部として Tonya が書いていた。TidBITS 稿料から Take Control 著作権料迄、我々は毎月最大で 25 人の人達に支払いをしていた。当時、我々は経理用として MYOB AccountEdge を使っていて、そのアプリの中の全てを Tonya が扱うのは意味をなしており、アプリから我々の用紙上にチェックを印刷することも出来た。私は今でも彼女が封筒の山を前にして封筒の糊を湿らせるための小さなチューブを手にして座っていたのを思い出せる。彼女は 25 枚もの封筒を舐めるのを嫌っていた。
我々が Take Control のビジネスを Joe Kissell に売却した後、我々が支払いをしなければならない人々の数は TidBITS の書き手だけに減少した。Tonya はしばらくの間チェックを書き続けたが、しばらく経って、我々が預金している CFCU クレジットユニオンが Popmoney と呼ばれる無料サービスを使って ACH (Automated Clearing House, 銀行が電子的に送金するのに使うシステム) 経由で振込み支払いさせてくれることを知った。そのインターフェースは古く不格好であったが、それは約束したものをきちんとこなしたし、口座振込みは我々の書き手達の生活を楽にした。と言うのも、物理的なチェックを扱う必要が無くなったからである。加えて、Tonya が振込みに移行する前は、チェックは時折行方不明になったり、しばらくの間放っておかれたりし、その様な問題を解決するには、彼女に余分な負担を強いることとなっていた。
その間、私はこの支払いのやり方について殆ど何も知らずのほほんとしていた。しかしながら、Tonya が Cornell で働き出しそして我々の会計帳簿を Xero に移行して以来 ("AccountEdge から Xero に切り替える" 10 May 2021)、彼女は通常の給与支払いの仕事全てを私に任せることとした。私が Popmoney が 一日 $1000 と言う奇妙な制限を設けていること知ったのはそんな時であった。もし我々が $1000 を超える複数の支払いがあると、そのうちの幾つかを後日に計画する必要があった。それは単純に次の日という訳ではなかった - Popmoney は最初のものが完了する迄、通常３営業日、追加の支払いを計画させてくれなかった。
これでは私がこれを恵まれた社会の不満の様にしていると聞こえるかも知れないが、しばらくの間、Popmoney インターフェースは私に支払いをどの日にすれば良いかの推測を強要した。それはイライラを募らせ、そして支払いを遅らせるのは誰にするかの選択をし、それからそれ等の人にお金は何時到着するのかを別に知らせることを強要した。この制限は全く意味をなさなかった - それ等は我々が我々の口座から既知の人達に向けた ACH 送金であり、CFCU や Popmoney が我々を使いすぎから守る必要はない様に思える。私はこの上限を上げることを試みたが、CFCU のサポートは私を Popmoney に差し向け、そして Popmoney はそれは CFCU の設定だと言った。私は匙を投げた。
私の問題はやがて "解決" された。それは CFCU が Popmoney そのものを止めてしまったからである。そこにはそれに代わるものは間もなく用意されるであろうというはっきりしない説明があった。(それは未だ実現していない。) 我々は、その様なサービスを提供する他の銀行に移ることも検討したが、我々が持っている自動預け入れや自動引き出しの多さを考えれば、言うより行うは難しである。
代わりに、我々は我々の書き手に対して ACH 支払いをさせてくれるサードパーティサービスを探し始めた。それ等は高価な傾向にあり、例えば大文字小文字の使い方が難しい Bill (そのロゴは小文字だが、そのブランドはテキストでは大文字である) だと、月に $45 が課せられる。私はその様なサービスにお金を払うのに反対ではないが、月に四、五枚のチェックを書く手間を省くのに値するとは思えない。
そうこうしているうちに、Melio を見つけた。それは無料の ACH 支払いと送金の上限無しを約束している (銀行は独自のものを持っているかも知れない)。Melio は、速達支払い、クレジットカード支払い、紙のチェック、そして基本的には支払いローンであるものから稼ぎを得ている。これ等の上位機会は常にインターフェースの中で見えているが、それを只単に無料の ACH のためだけに使うことに問題はない。なお、Melio は電信送金は扱わない。
Melio を使って人々に支払いをするのは、一度口座設定と自分の銀行口座を紐付けする構成手順を済ませてしまえば、簡単である。最初に、それぞれの人に対してベンダーを作成する。それには会社名とオプションの連絡先名、メールアドレス、そして電話番号が必要である。メールアドレスはオプションではあるが、もし相手に対して Melio に ACH 接続を設定するための銀行情報を依頼するメールを送って欲しいなら、それは必要である。また、同じ情報を集めた簡単な CSV ファイルを使ってベンダーをインポートする事も出来る。
私が定常的に支払いをする人は全員、支払いを受け取るために必要なルーティング番号と口座番号を入力するのは簡単だったと言っていた、もっとも、彼ら全ては米国在住ではあるが。英国に住む Kirk McElhearn に支払いをすることに関しては、Melio は国際送金は扱うが、受取人の SWIFT か IBAN 番号が必要で、一件当たり $20 かかることが分かった。(Kirk に対する最近の記事の支払いには PayPal に頼った。)
ベンダーの設定が終わったら、支払い書を作成する。私は少数の人に月に一度変動する額を支払うので、手でやるのが最も簡単である。Melio はまた PDF 請求書や画像をアップロードさせてくれ、それを読み解いて支払い書を作成する。それはとても見事である。また QuickBooks と同期することも出来る。少し調べてみたら、Melio Payments と Xero との統合もあることが分かったが、レビューを見ると同期の問題があることが報じられている。私は、CFCU チェッキング口座から出て行く支払いを見る以上の Xero との統合は必要ないので、それに関して更に踏み込んでは見ていない。
手動で支払いを作成するのは簡単で、少々おしゃべり好きかもしれないが、６段階のステップで、それぞれの段階で少量の情報を収集していく。
- ベンダー名、金額、支払い回数、そして納入期限を入力する。私は何時も納入期限として翌日を選んでいる。もっとも、実際にはその日にお金は送金されないであろうことは認識している。
- その支払いにどの資金を当てるかを指定する。繰り返しになるが、自分の銀行口座からの支払いであれば無料である；他の選択肢を選ぶと課金が発生する。
- その支払いが何時引落しされるかを設定する。納入期限を何時に指定したかに拘わらず、Melio は直ちに引落す有料の選択肢も表示する。私は常に無料の３営業日の選択肢を選んでいる。
- オプションのメモを入力する。私はメタデータに目がない人間なのでここに入力するが、そうすることの利益を未だ体感したことはない。
- 誤りがないよう入力内容の詳細を確認する。
- 終了したことを送信する。
Melio のおしゃべり好きはメールにも受け継がれている。支払いを計画した後直ちに、それを確認するメールを受け取り、そして送金が済むと、Melio は更なるメッセージを送り支払いは成功裏に行われたことを告げてくる。様々な種類の通知はオフにする事も出来る。
しかしながら、Melio の通知や他の選択肢は、より大きな企業にとっては歓迎出来るものであるかも知れない。アドミン、経理からの協力者、或いは資金提供者許可を追加出来る。支払い認可ワークフローは、組織に誰が支払いを認可する必要があるかを、そして支払いの大きさでそれ等を分けることさえ決めさせてくれる。例えば、CEO は $1000 を超える支払いを認可し、そしてそれ以下の全ては所属長が決済すると言った具合に出来る。
私は Melio の機能セットの内他の半分は無視している。それ等は支払いを受けるための同様に簡単なやり方を提供している。顧客と請求書を作成出来、そして自分の銀行口座を紐付けすると、顧客からの支払いは直接流れ込んでくる。また、こちら側でも、Melio は 1% の手数料を払えば期日より早く支払いを受け取れる選択肢を提供している。私は長いこと、時折のコンサルタントとしての或いは他の仕事のために請求書を生成する必要がある時、Stripe を使ってきたが、その無料の ACH 取引が機能するのか、或いはクレジットカードを使って支払うことを人々が好むのかを見るために次回は Melio を試してみても良いと思っている。
最後に、私はここ迄 Melio ウェブサイトに焦点を当ててきたが、無料の Melio iPhone アプリも、ベンダーを生成しそして支払いをするための同じ能力を提供しているように見える (しかし、支払いを受けるのはダメ)、利点は iPhone カメラを使って請求書をスキャンさせてくれることである。このアプリはまたあなたが何をしたかも追跡させてくれるので、殆どの支払いをコンピュータ上で設定するつもりでも、ダウンロードする価値はあるのかも知れない。
無料の ACH 支払いを提供する支払いサービスは他にもあるかも知れないが、切り替えようと私に思わせるような Melio に対する苦情はない。私の唯一の小さな心配は、Melio が口座設定時に使っている二段階認証に加えて、ウェブサイトでは二要素認証を提供してくれる方を好むことである。(iPhone アプリは、Face ID や Touch ID を使った生体ログインを許す。) それを除けば、同社のセキュリティに対する姿勢は良さそうに思える。
もし皆さんもコントラクタ、フリーランスの人、或いは他の小企業に対して定常的な支払いをする必要があるのであれば、私は Melio を試してみることをお勧めする。
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