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#1670: Arc ウェブブラウザが 1.0 リリースに到達、Apple 機能の“これ使ってますか?”アンケート

革新的なウェブブラウザ Arc が 1.0 リリースに到達して、順番待ちリストに登録する必要もなく無料で使えるようになった。Adam Engst が、5 月にこのアプリについて書いた 7000 語のレビュー記事以後に Arc が装備した新機能について考察する。それから、私たちは Discourse にホストされた一連のアンケート調査を始めることにした。TidBITS 読者たちが特定の Apple 機能をどの程度頻繁に使っているか (それはなぜか) について、大まかな感覚を掴むためのものだ。あともう一つ、今週号の結びに、Amazon S3 のエンジニアが技術的詳細を超越する言葉を語った、興味深いキーノート講演について紹介する。今週注目すべき Mac アプリのリリースは Safari 16.6、BusyCal 2023.3.1、Fantastical 3.7.17、Camo Studio 2.0.5、Pixelmator Pro 3.3.11、Timing 2023.4.4、Agenda 18.0.1、それに Quicken 7.2 だ。

Adam Engst  訳: 亀岡孝仁   

"Do You Use It?" 調査を紹介する

毎年、Apple はその来るべきオペレーティングシステムの新機能について騒ぎ立て、そしてテック出版物はそれ等の多くについて書き、それも Apple の最終リリースの前である事が多い。しかし、最終リリースの興奮がおさまった後、どれ程多くの人がその日常生活の中でそれ等の機能を使う様になっているであろうか? それ等は、ユーザー経験を改善するまともな努力なのであろうか、それとも製品マネジャーのアイディアが壁にくっつくかどうか見るためにただ投げつけられただけのものなのであろうか?

Apple が機能の利用に関する統計を持っているのは間違いないと私は思っている。何故ならば、David Shayer が前に、利用統計を記録する時ユーザープライバシーをどれ程本気に捉えているかを説明していたからである ("元 Apple エンジニアが語る: 私が Apple の COVID-19 通知手法を信用する理由" 11 May 2020 参照)。Apple は間違いなく、開発とテスト資源を配分するためにその情報を使うであろうが、同社はこれ迄その様な詳細を世界と共有したことはない。我々に見える一番それらしいのは、Apple がある機能をそのままに放置するか、或いは完全に取り除いてしまうかする時である - Dashboard や iDVD を覚えていますか?

何故皆さんも気に掛けるべきか? 理屈の上では、その必要はない。理想的な世界では、個別の Apple のオペレーティングシステムの機能の完全なリストを手にして座り、それぞれを試してみて、それが問題を解決するか、或いは自分の生活を改善するかを見れば良い。もし皆さんにそれを全部やる時間があるのであれば、すごいですね! 新機能を探求するのは私の仕事だが、私は Apple が導入する全てのものを調べるための時間を見いだすことすら出来ていない。

それでも、ある機能がどれ程多用されているかを気に掛けても良い三つの理由が考えられる:

以上は、TidBITS Talk や我々の記事討論を動かしている Discourse ソフトウェアの中で私が始めたものを紹介するためのものである:Apple オペレーティングシステム機能に関する "Do You Use It? (あなたはそれを使っていますか?)" 調査である。

これ等の調査は統計学的に意味のあるものではない。何故ならば、回答者は通常の TidBITS 読者のプールの中の自分で選んだ人だからである。しかし、その結果は TidBITS を読む人達が - つまり我々のような - これ等の機能について何を考えているかの感触を提供するはずである。質問の対象機能に対する人々の感覚は異なるので、ある調査は他のものよりもより多くの回答を生み出すだろうと思われる - それはそれで良い話であり、それ自身が答えなのかも知れない。

Discourse 内で調査を作成する利点は、人々が投票した後、何故その様に投じたのか、その機能のどの面がよく出来ている、或いは悪い出来だと思うか、どの様な代替策を使っているか、等々を投稿出来ることである。必要に応じて、枝を独立した幹として発展させることもしてみたいと思っている。

私は、ここ TidBITS でこの結果を使って何をしたいのか未だ明解には考え出せていない。ある場合には、調査結果を記事にすることがその機能自体について書く口実となるのかも知れない。或いはまた、数週間後に単にその結果へのリンクを張ってそれを歴史的記録に残そうとするかも知れない。同様に、どれ程頻繁に新しい調査をしたいと思うのかも現時点では良く分からない - 週に一、二回と言うのが良さそうに思えるが、それが義務となってはならず、楽しみである必要がある。

最後に、私の最初の二つの調査は、Stage Manager を Mac そして iPad 上でどれ位の人が使っているのであろうかと思ったことから始まり、そして三番目は討論の中でのさりげないコメントに由来している - それは余りに多くのコメントを誘発してしまい、会話を整理するためにそれを一つの調査へと変えなければならなかった。しかし、今後の調査では、間違いなく広く使われているであろう機能を取り上げるつもりだ。例えば、Time Machine や Spotlight である。私はまた、この調査を口実にして、多くの人がその存在すら知らないであろう有用な小さな機能を、プロキシアイコンの様な、登場させたいと思っている。その様な調査には現在は暗闇にいる人達を考慮した答えも含まれ、自分の投票を後日変更することも可能となる。例えば、"I didn't know this feature existed (この機能があることすら知らなかった)" から "I use it daily (毎日使っている)" への様にである。これに当て嵌まる人がいるであろうことを望みたい!

我々の最初の三つの "Do You Use It?" 調査は以下である。クリックして Discourse 調査に行き投票して欲しい。TidBITS アカウントでログインすることをお忘れなく!

討論に参加

Adam Engst  訳: Mark Nagata   

革新的なウェブブラウザ Arc が 1.0 リリースに到達

私がベータ版のソフトウェアを記事にすることは滅多にないし、深く掘り下げるとなればなおさらだが、The Browser Company が作っている新しい Chromium ベースのウェブブラウザ Arc は、その有用性と成熟度が素晴らしく、私は例外的に記事“Arc はウェブでの作業のやり方を変える”(2023 年 5 月 1 日) で紹介した。それでも、順番待ちリストに登録しないと使えるようにならないアプリを読者の皆さんに紹介するのは気が引けていた。親切な TidBITS 読者の方々が記事へのコメントとして招待コードを投稿してくださったのだが。

でも、嬉しいことに The Browser Company は今回、バージョン 1.0 の Arc をリリースして、誰でも無料でダウンロードできるようにしてくれた。私があの 7000 語に及ぶ記事を書いて以後も Arc に対する私の主要な意見は何も変わっていない。今でも私はここ何年もの間で自分が Mac で使ってきたアプリのうちでこれこそ最も重要なアプリだと思っている。とりわけ、私の iMac と MacBook Air の間で同期された Arc をなめらかに切り替えられる点がありがたいし、Arc の iPhone 用コンパニオンアプリを私はますます気に入っている。いつも使っているウェブサイトやページのピン留めされたタブが全部含まれているからだ。(そうは言ってもこの iPhone 用アプリは今もまだお気に入りを表示できず、簡単に直りそうだと思えるこの欠落がとても苛立たしい。)

唯一がっかりした点は、The Browser Company の反応の遅さだ。私がバグ報告をしたり提案をしたりしても、返事が来たことは一度もないし (ただし問題点が解消されたことはある)、Arc について書かれた他のどんな記事よりも広範囲にわたっているはずの私のあの記事についてのコミュニケーションが始まったこともない。(確かにこれは著者のプライドの話に過ぎないが、対照的に WebKit ベースのウェブブラウザ Orion の開発者たちからは記事“Mac 用ウェブブラウザにおける垂直タブ対応総まとめ”(2023 年 6 月 5 日) の中で簡潔に触れただけなのにとても素敵なお便りが届いた。) TidBITS 読者たちからも、サポートを求める質問を送っても何も反応がないという声が聞こえていた。このような沈黙は、かつて (悲しいことに) Twitter と呼ばれたサービスでも YouTube でも The Browser Company が非常に饒舌であること、またこの会社がコミュニティーを推し進めようとしていること (例えば同社の Credits ページには 34,000 人以上のベータテスターの名前が列記されている) とも食い違うように見えて違和感がある。ひょっとするとこの会社もベータ期間が終わった今ならば顧客サービスのための人員を増やしてくれるのかもしれない。

[更新情報: たった今 The Browser Company から便りが届いて、沈黙していて申し訳なかったと言ってきた。何万人ものベータテスターがいるという事実を私は正しく意識していなかったのだが、予想していた通り、コミュニケーション不足の原因は問い合わせの量の膨大さ (毎日何千通も届くという) に比べてスタッフの数が少な過ぎたことにあったという。この会社は今、規模拡大のために努力を注いでいるところだ。 -Adam]

Arc の開発者たちは、私がレビュー記事を書いて以後も仕事を怠けていた訳ではなかった。その間もずっと、毎週木曜日ごとに規則正しく、新機能やインターフェイスの磨き上げを盛り込んだ大きなリリースが届き続けていた。その中でも魅力的に思える変更点のいくつかをここに挙げておこう:

私は依然として Easels & Notes 機能をきちんと理解できていないので、どのように役立つのかここで述べることはできない。また、アーカイブしたタブや、Media や、Downloads を調べたりすることもない。だから、 Library サイドバーは私にとって未知の領域のままだ。

でも、それでも私は一向に構わない。Arc は私の仕事生活の中であまりにも重要な存在となったので、今では他のブラウザを使うのが耐えられなくなった。例えば、ただ Command-Shift-C を押すだけで現在のページの URL がコピーされることに私は慣れ切っていて、毎日執筆や編集の作業をしながら何度もこのキー組み合わせを使っている。私は現在 4 つの Space の中に何百ものピン留めされたタブを積み上げてきたし、自分がどこにいるのか忘れたりすることも一切なしに、必要な数多くのサイトの間で素早く行き来できている。そして上でも触れたように、それらすべてを私のどの Mac の上でも、また iPhone でも手軽に使いこなすことができる。それは、Arc のお陰で私の脳裏に、保存してあるすべてのものを網羅した地図が出来上がっているからだ。

一度にほんの数えるほどの個数のタブしか使わないという人にとっては、Arc を使うのは行き過ぎかもしない。でも、仕事のために一日の多くの部分を多くのウェブサイトの中で過ごしているという人には、一度 Arc を使ってみることをお勧めしたい。Arc は無料でダウンロードでき、macOS 12.1 Monterey かそれ以降を要する。ただし忘れないで頂きたいのは、本格的にこれを使いこなして自在に料理できるようになるまでに、数日間かけたウェブ上での 下ごしらえ が必要だろうという点だ。

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TidBITS 監視リスト: Mac アプリのアップデート

訳: Mark Nagata   

Safari 16.6 Adam Engst

Safari 16.6

Apple が macOS 12 Monterey と macOS 11 Big Sur 用に Safari 16.6 をリリースして、最近の他のアップデートで対処された WebKit 脆弱性を修正した。(2023 年 7 月 24 日の記事“Apple、アクティブな全オペレーティングシステムに 24-Jul-2023 セキュリティアップデートをリリース”参照。) 直ちに Software Update 経由でアップデートするようお勧めする。(無料、リリースノート、macOS 11+)

Safari 16.6 の使用体験を話し合おう

BusyCal 2023.3.1 Agen Schmitz

BusyCal 2023.3.1

BusyMac が BusyCal 2023.3.1 をリリースして、Quick Entry で複数個のアラームを設定できるようにした。このカレンダーアプリは Info Panel の Time to Event のところにイベントの継続時間を表示するようになり、Edit メニューで新たな日付挿入オプションを提供し、Calendar 設定でイベントのグラフィック/添付プレビューを隠すオプションを追加し、自然言語解析機能を改良し、また macOS 14 Sonoma 対応を向上させた。(BusyMac からも Mac App Store からも新規購入 $49.99、無料アップデート、Setapp からも利用可、59 MB、リリースノート、macOS 10.15+)

BusyCal 2023.3.1 の使用体験を話し合おう

Fantastical 3.7.17 Agen Schmitz

Fantastical 3.7.17

Flexibits が Fantastical 3.7.17 をリリースして、Fantastical Openings テンプレートに Markdown シンタックスへの対応を追加した。このカレンダーアプリは Create From Input ショートカットのアクションを調整して締切日を設けずにタスクを作成できるようにし、ローカルな Reminders へのアクセスで起こった問題を解消し、プロジェクトをアーカイブまたは削除しようとする際に Todoist 同期が止まってしまったバグを修正し、右矢印キーでスクロールしようとしても週間表示が変わらなかった問題に対処し、Dark モードでイベントが誤った色で表示された問題を解消し、また 2 件のクラッシュを除去した。(Flexibits からも Mac App Store からも購読年額 $56.99、無料アップデート、69.4 MB、 リリースノート、macOS 11+)

Fantastical 3.7.17 の使用体験を話し合おう

Camo Studio 2.0.5 Agen Schmitz

Camo Studio 2.0.5

Reincubate が Camo Studio 2.0.5 をリリースして、この仮想カメラシステムにリクエストの多かった 2 つの機能を追加した。4K 解像度と、クロマキー背景布への対応だ。本物の緑色布がある場合には Camo の ML 分割機能の代わりに Chroma Key を使える。今回のアップデートではまた、環境設定でライトまたはダークのアピアランスから選べるオプションを追加し、オーディオディレイを (100ms 刻みでなく) 自由に設定できるようにし、UVC デバイスを切り替える際に "Connect a device" プロンプトがフィードの中に表示されていたのを修正し、FPS レートとして切り上げ値でなく正確な値を表示するようにした。その後素早くバージョン 2.0.5 が出されて通知に関する問題を修正した。(購読年額 $39.99、無期限有効ライセンスは $79.99、無料アップデート、44.5 MB、リリースノート、macOS 10.13+)

Camo Studio 2.0.5 の使用体験を話し合おう

Pixelmator Pro 3.3.11 Agen Schmitz

Pixelmator Pro 3.3.11

The Pixelmator Team が Pixelmator Pro 3.3.9 をリリースして、Denoise ツールと RAW 画像対応を改良した。アップデートされた Denoise ツールは Denoise Intensity スライダーを使って、あるいは特定の値を入力することによって、画像から好きなだけの量のノイズを調整できる。今回のリリースでは Fujifilm カメラ (X-T4 および X-T5 モデルを含む) から取り込んだ圧縮 RAW を、また macOS 13 Ventura の下で X-S20 モデルから取り込んだ圧縮または非圧縮の RAW を開いたり編集したりできるようになった。圧縮された Fujifilm RAW は Apple の Photos でも Pixelmator Pro 拡張を使えば開いたり編集したりできる。このアップデートではまた、より正確な Straighten スライダーを付けて Crop ツールを改良するとともに、PDF 書き出しへの対応も改良している。

このリリースの後間もなくバージョン 3.3.10 および 3.3.11 が出されて、LUT を色調整プリセットとして、また LUT フォルダ丸ごとでも読み込める機能への対応を追加するとともに、問題を報告できるように Help メニューに Support サブメニューを新設した。(Pixelmator からも Mac App Store からも新規購入 $49.99、無料アップデート、589 MB、 リリースノート、macOS 11+)

Pixelmator Pro 3.3.11 の使用体験を話し合おう

Timing 2023.4.4 Agen Schmitz

Timing 2023.4.4

Daniel Alm が Timing 2023.4 をリリースして、この時間と生産性追跡アプリに iPhone 通話を読み込む機能を追加した。まず Phone Calls 統合を有効にすれば、Mac の通話履歴から通話を読み込めるようになり、通話相手の名前と通話継続時間も読み込まれる。このアップデートではまた、プロジェクトを名前順で並べる際にアーカイブされたプロジェクトを最後に並べるようにし、Discord 用の追跡を改良し、Accessibility API を使ったウィンドウタイトル追跡に対応していないアプリ (例えば Adobe Premiere や After Effects) には Screen Recording API を使う許可を求めるようにし、Chrome や Brave の Private モード探知で偽陽性を減らし、Sidekick ウェブブラウザ用にブラウザ追跡を追加し、FaceTime Audio 通話の追跡で互換性を向上させた。その後のメンテナンス・リリースで Timing はバージョン 2023.4.4 にアップデートされ、Timing 追跡アプリで稀に起こったクラッシュを解消し、Orion Browser への対応を追加し、Office ドメインリストに Asana、Google Docs、Google Drive、および Todoist を追加した。(購読年額 $96/$120/$168、現行の購読者には無料アップデート、Setapp からも入手可、23.9 MB、リリースノート、macOS 10.15+)

Timing 2023.4.4 の使用体験を話し合おう

Agenda 18.0.1 Agen Schmitz

Agenda 18.0.1

Momenta がバージョン 18 の Agenda をリリースして、この日付に集中したノート取りアプリにパスワード対応を追加した。Premium 購読者はアプリ全体、個々のノート、またはプロジェクト全体をロックすることで権限のない者に見られないようにでき、Touch ID、Face ID、Apple Watch、またはプライバシーパスワードを使ってロックを外すことができる。このリリースではノートリストに並べ替えのオプションを追加し、プロジェクトまたはカラーによってノートをグループ分けして、割り当てられた日付、作成日、編集日、またはタイトルで並べ替えられるようにした。また、Agenda 18 ではカラーピッカーを改良し、イベントおよびリマインダーシートで時刻と日付のピッカーが常に拡張されたバグを修正し、インスペクタの更新を引き起こすリマインダーやイベントの更新探知の信頼性を高め、添付ファイルのあるノートを印刷する際のメモリ使用量を大幅に減らし、alt-text が空の場合にテキストバンドルの添付ファイル読み込みを修正した。

このリリースの後バージョン 18.0.1 が出され、新規ノートを追加する際にタイトルが選択されなくなったバグを修正し、並べ替えのメニューの名前が間違っていたのを直し、5 年以上古い日付の処理を修正し、Settings の中で Change Password ボタンが正しく表示されるようにした。(無料、Premium 機能の年間購読 $34.99、一回払いの Premium 機能購入 $119.99、購読者には無料アップデート、72.9 MB、リリースノート、macOS 10.14+)

Agenda 18.0.1 の使用体験を話し合おう

Quicken 7.2 Agen Schmitz

Quicken 7.2

Quicken Inc. が Quicken for Mac のバージョン 7.2 をリリースして、この財務管理用アプリに新機能と改良を加えた。15 以上のアカウントがある金融機関からどのアカウントを追加するかを選ぶ作業が楽になり、Investments Dashboard Holdings カードで証券を Name または Symbol で一覧できるようになり、請求書作成者のウェブサイト URL を Quicken に保存することで支払いが手早くできるようにした。今回のリリースではまた、新規のアカウントを“隠れた”アカウントにリンクできるようになり、ログインのセキュリティを更新した金融機関で eBill を追加したり更新したりする手順を改善し、Tags リストで複数選択を使ってタグの色を変更する機能を追加し、Home Dashboard Net Worth カードでグラフが表示されなくなったバグを修正し、サイズの大きなレポートで展開ボタンを使ってデータを展開したり折り畳んだりする際のパフォーマンスを高めた。(講読年額 $34.99/$51.99/$77.99、購読者は無料アップデート、3.2 MB のインストーラダウンロード、リリースノート、macOS 10.15+)

Quicken 7.2 の使用体験を話し合おう

ExtraBITS

訳: Mark Nagata   

Adam Engst

Amazon S3 を構築し運用して学んだ教訓

Amazon の副社長であり著名なエンジニアでもある Andy Warfield が、USENIX FAST '23 カンファレンスのキーノート講演で語った内容に基づく記事を All Things Distributed ブログに寄稿した。記事の内容を要約して彼はこう語る:

Amazon に来た時、私はとんでもなく大きくて複雑なストレージソフトウェアの仕事をするのだと予想していました。ところが、実際に仕事を始めて知ったのは、私の果たすべき役割のあらゆる側面が、その予想をはるかに超えて信じられないほど大きいものだということだったのです。システムの技術的規模があまりにも巨大で、その作業負荷と構造と運用がいずれもただ単に大きいだけでなくて、私がそれまでに仕事をしてきた小規模なシステムとは根本的に異なるものだと思い知らされました。ソフトウェアのことを考えるだけでは十分でなくて、そのソフトウェアのサービスとしての運用や、それを運営するための組織や、そこで走らせる顧客向けコードのすべてが“システム”であったのです。そのシステムの一部分としての組織自体がその規模に関する独自の難問を抱えており、解決すべき問題と革新すべき機会とを含んでいるのだと知りました。そして最後にもう一つ、私自身の役割を真の成功へと導くためには、解決策を求めるのでなく、問題の明確化に集中して、強力なエンジニアリングチームが本当の意味で解決策を手にできるように支援する方法を見つけることこそが必要だと分かってきたのです。

この長い記事の内容の一部は技術的に理解できないことだろう (私も理解できないところがあった) が、実際的な側面を語ったところは貴重で、とても興味深い。Warfield は大学院を出てすぐスタートアップ企業で働き始め、それから教授として大学に戻ったが、その後 Amazon に入ってその Simple Storage Service (つまり Amazon S3) の仕事を始めた。“シンプル”という名前にもかかわらず、S3 はシンプルとは程遠い。

Amazon S3 の規模は驚異的だ。280 兆個以上のオブジェクトを持ち、平均して毎秒 1 億個以上のリクエストを捌く。文字通り何百万台ものハードドライブの上に構築されており、たった 1 個のデータリクエストが百万台以上の個々のドライブによって処理される可能性が十分にある。S3 はあまりにも巨大なので、そこで生じる問題は (そしてそれに対する解決策も) 単純にドライブの容量を増やすことで済む小規模なシステムとは根本的に異なる。

Warfield は話を少し脇道に逸らせてハードドライブの歴史について語り、ハードドライブは容量が 720 万倍に増える一方で物理的なサイズは 5 千分の1に減ったと述べた。彼はハードドライブに封じ込められたテクノロジーの妙技のたとえ話として、ハードドライブのヘッド部分を拡大すればボーイング 747 旅客機が草原の上を飛行しているようなもので、草の一本一本が情報の1ビットに例えられると述べた。彼によればその旅客機は時速 75 マイル (120 km) の一定速度で飛行するが、旅客機の底と草の先端とはたった紙 2 枚分の厚さしか離れていないという。旅客機は飛行しながら草の一本一本を数えて、読み誤りの確率は地球を 25,000 周する間に1回程度だという。驚くべき話だ。

Warfield は話の結びに、組織の“オーナー”であることの重要性について彼なりの考えを語った。研究室にいる大学院生たちを相手にする場合にも、また Amazon のエンジニアたちを相手にする場合にも、こちらからアイデアを提供するよりも、その人たちが自分で考えて思い付けるように促す方がより効果的だと分かったという。私が一番感銘を受けた彼の文章は次のものだった:

私は、解決策を提案するよりも、問題に切り込んで真の意味で問題を明確化させるために最良の仕事をしようと、意識的に多くの時間を費やしています。

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