今週は Julio Ojeda-Zapata による特集記事が、Apple の子会社 Beats が新しく出した Studio Pro ヘッドフォンと Studio Buds+ イヤーバッドをレビューする。Michael Cohen も寄稿記事で、Apple の Q3 2023 業績報告を分析する。為替レートとスマートフォンの売れ行き落ち込みにより、収益は前年比で 1% 減少した。Adam Engst は先週始めた最初の Do You Use It? アンケートで Mac と iPad 上の Stage Manager について寄せられた意見とアンケート結果を報告するとともに、新たな Do You Use It? アンケートとして Spotlight の使用について尋ねる。今週注目すべき Mac アプリのリリースは Zoom 5.15.5、Firefox 116、Alfred 5.1.2、Ulysses 31、それに URL Manager Pro 6.3 だ。
どちらのアンケートにも多数のコメントが寄せられたが、最も頻繁に述べられた反応は困惑であった。Apple が Stage Manager で何を成し遂げようとしているのか理解できないとか、全然魅力的に思えないとかいう声が多かった。多く寄せられたもう一つの反応は、小さなスクリーンで Stage Manager は使い物にならないというものだった。ラップトップの Mac や、12.9 インチ iPad Pro 以外の iPad を使っている人は、利用可能なスクリーン面積を最大にするためにも Stage Manager は使いたくないと思いがちだ。
Mac 側のアンケートでは、Mission Control でデスクトップのスペースを管理する方が好みだという意見もあった一方で、Mission Control は分かりにくいのでその代わりに Stage Manager を使うことにしたという意見もあった。代替策として仮想デスクトップマネージャ TotalSpaces を推す人たちも何人かいた。
Stage Manager が役に立つという人たちがいるのは喜ばしいことだと思う一方で、このようなメジャーな機能の採用率がたった 10% 程度しかないという状況は Apple にとって決して成功とは言えないだろう。ひょっとすると初めて Apple のプラットフォームにやって来たという人ならば、Stage Manager をデフォルトの作業方法と見ることができる可能性が高いのかもしれない。あるいは、私たちとしては Stage Manager をあたかもサードパーティのユーティリティであるかのように見なすべきなのかもしれない。サードパーティの開発者なら、自分の製品が Apple ユーザーの 10% を呼び込むことができれば御の字だろうから。
全体として、iPhone 販売は昨年同期に比べ 2% 下落したが、Apple CFO Luca Maestri は "恒常通貨ベース" では iPhone 販売は上がっているので、"下落" は相対的な表現だとした。何れにしろ、CEO Tim Cook は、iPhone 販売を増やすことは、とりわけ Americas では、"難しい" ことを認めた。より前向きだったのは、新興市場における iPhone の第三四半期記録となる販売で、そこには China, India, Latin America, そして Middle East が含まれる。
Mac
Apple は Mac の Apple シリコンへの移行が今や完了したと喜ばしく言及したが ("三つの新型 Mac で Apple シリコンへの移行を完了" 5 June 2023 参照)、それ等のリリースをもってしても、Mac 販売が前年同期比で 7% 下落することを防げなかった。また Apple も、マクロ経済環境の現況を考えると、次の四半期で Mac の販売状況が大幅に好転するとは見ていない。更に、次の四半期の Mac 販売を一年前の同じ四半期と比べるのは難しい。何故ならば、Q4 2022 の数字は Apple が昨年の工場閉鎖から回復して、繰り延べ需要を満たすことで潤ったものだからである。肯定的な面として、Apple は Mac 購入者のほぼ半分はこのプラットフォームに対して初めての人であったと言った。
Wearables 製品部門は前年同期比で 2% を超える増収を計上したが。それは主として Apple Watch のお陰であった。Apple は引き続き新規顧客を強調し、この四半期の Apple Watch 購入者の三分の二はこの製品の新規購入者だと言った。
Services
Apple の四半期売上げのスターはその Services 部門で、"予想以上に良い" 8.2% の増収であった。この部門は、売上げで $20 billion を初めて超えただけでなく、加入者数も 10 億人を超えた。Services 部門での粗利率 (70.5%) は、ハードウェア製品部門で Apple が達成した数字 (35.4%) の倍に達しており、この販売部門での増収は、最終利益にとりわけ貢献する。と言う訳で、もし Apple がサービス購読を引き続き奨励している様に見えるとしたら、皆さんにもその理由は明白ですよね。
地域別
Apple の地域別収入の絵はまだら模様であった。減収だったのは Americas (-5.6%), Asia Pacific (-8.5%), そして Japan (-11.5%) でだが、Apple は増収を Europe (4.8%) と Greater China (7.9%) で計上した。Cook は India の様な新興市場での Apple の成長をとりわけ喜び、それ等の市場での成長が今後も続くと見ている。
将来
Apple は、新製品も準備中で、営業経費を抑え (前の四半期よりも減らしさえしている)、そして全般的に上手く経営されているように見える。しかしながら、会計四半期と必ずしも上手くリンクしない新製品リリース計画とパンデミックから派生した効果との間で、何故 Tim Cook と Luca Maestri が "比べるのは困難" と言い続けるのかは明白である。そして、売上げを増やしても為替相場がその増収分を消し去ってしまう状況は Apple にとっては苛立たしいに違いないが、これ迄の四半期の中には為替相場が逆方向に動いて良い結果となったこともあったに違いない。
何人かが Vision Pro に言及したが、それが近い将来 Apple の売上げに大きく貢献するとは誰も思っていない様に見える。アナリストの Sidney Ho が Tim Cook にそれについて質問した時、Cook は Vision Pro を毎日使っていると言ったが、その売上げを予測することは断った。
Cook は、Apple TV+ がこれ迄 1500 を超える Emmy ノミネーションと 370 の受賞を得たと言う事実に言及したが、Services エンジンへの給油の一助となる新しい Apple TV+ コンテンツを Apple が得ることに対する現在進行中の Writers Guild of America と俳優組合 SAG-AFTRA のストライキによる影響の質問は回避した。更なる情報を求めようするアナリストはいなかったが、そうしたとしても答えは得られなかったであろう。
これ等の質問はさておいて、Cook は次の様に言う前に、アクセシビリティ、プライバシー、環境、そして教育に対する Apple のコミットメントを強調して彼の挨拶を締めくくった:
Apple のワイヤレスイヤーバッドかヘッドフォンを買おうと思っている人たちの大多数は、名前に "AirPods" の付いた製品だけを探すだろう。ただ、この会社のワイヤレスオーディオ製品は値段が高い。なので良い品物を探す作業はより複雑になるのだが、嬉しい結果が見つかることもある。それが望めるのは、Apple の子会社 Beats by Dre の製品を考慮の対象に入れたならばということだ。(2021 年 7 月 19 日の記事“Apple/Beats オーディオ機器を選ぶ究極のガイド”参照。)
最近になってこの方面に2つ、新しい発展があったのでここで報告したい。
5 月に、Beats は $169.99 の Studio Buds+ をリリースした。2021 年 6 月に登場した $149.99 の Studio Buds をアップグレードしたものだ。この Studio Buds+ が魅力的なのは、第3世代 AirPods と同等の価格でありながら、$249 の第2世代 AirPods Pro の持つ先進的な機能も備えているからだ。(2022 年 9 月 7 日の記事“第2世代 AirPods Pro が H2 チップ、タッチコントロール、機能充実のケースを追加”参照。) 見た目の変更点、つまり半透明のカラーオプションが加わったことも、売り上げ向上に寄与するかもしれない。
もっと大ぶりの Beats 方面のニュースとしては、2017 年 10 月からある旗艦製品のヘッドフォン Studio3 Wireless へのアップグレードだ。先月リリースされた新しい Studio Pro ヘッドフォンは、一見したところでは他の Beats ヘッドフォンとよく似ているけれども、USB-C 経由でのワイヤード再生などの機能で新しい分野を切り開くものとなる。価格は $349.99 で、Apple が $549 で出している AirPods Max に比べたならば断然安い。(2021 年 3 月 15 日の記事Apple の AirPods Max ヘッドフォンは高価だが良い”参照。)
この記事では Studio Pro と Studio Buds+ の機能を概観しつつ、AirPods 以外の製品を探している人が検討する際の役に立つような情報にも注目したい。
Studio Pro と Studio Buds+ の両方があるお陰で、AirPods でなく Beats を選びたい人にもかなり良い選択肢が提供されていると言えるだろう。少なくとも、そう思える人たちはかなりいることだろう。
Studio Pro オーバーイヤー・ヘッドフォン
Studio3 Wireless ヘッドフォンを使ったことは一度もないが、私は (2019 年にリリースされ 2021 年に廃止となった) Beats Solo Pro ヘッドフォンを使っていて馴染んでいる。それに比較して Studio Pro になっても Beats の設計言語がほとんど変わっていない点は特筆に値すると思う。2000 年代末頃の Beats デバイスとあまり変わらず、今回の新しいヘッドフォンも折り畳み式の、金属とプラスチックで作られた少し古臭い感じの構造で、左右のイヤーカップ上に特徴的な小文字のロゴ "b" が見える。最先端の工業デザインをヘッドフォンに求めたい人ならば、AirPods Max の方が好みに合うだろう。
Beats はその製品を Apple テクノロジーと緊密に統合されていると宣伝している。(Android とも統合されているが、これは Apple 世界の外にいて AirPods が良い候補とはならない人たちに向けた機能だ。) その点は Studio Pro ヘッドフォンも例外でない。
対応している機能としては、ワンタッチのペアリング、iCloud 同期、ハンズフリーの Siri、Find My 機能対応などがある。ダイナミックヘッドトラッキング付き空間オーディオもある。アクティブノイズキャンセリング (外部の音を電子的に聞こえにくくして音楽やポッドキャストの再生に集中できるようにする) や、外部音取り込みモード (外部の音を取り込んで周囲の音が聞こえることを優先する) もある。
Studio Pro ヘッドフォンに欠落している Apple 機能もあることに注目しておこう。たとえばオーディオ共有、耳装着自動探知、デバイス自動切替 (Beats に言われて知ったのだが、この最後の機能は Android でならば使えるとのことだ) などはない。このヘッドフォンは専用の Beats チップ ("proprietary (2nd gen)" という謎めいた名前がある) で駆動される。Apple の H2 や H1 は搭載しない。そのことが、Apple 専用のいくつかの機能を持たない一方で Android 互換性は持っている理由なのだろう。
Studio Pro ヘッドフォンが新分野を切り開いているところもある。付属する USB-C ケーブルを使ってワイヤード再生する機能に対応しているのは Apple の製品一覧に載っているものの中でこれだけだ。これは、付属の 3.5mm ケーブルを使った通常のワイヤード再生機能 (こちらは AirPods Max が持つ機能だが、AirPods Max にはそのようなケーブルが付属しない) に加えて、それとは別に提供されている。
理由はよく分からないが、USB-C ケーブルを差し込むとアクティブノイズキャンセリングと外部音取り込みモードが動作しなくなる。けれどもその代わりに他のオーディオ機能が利用できるようになって、ロスレスおよびハイレゾのオーディオがワイヤード接続上でサポートされる。Apple Music や Tidal その他のロスレスライブラリを備えたサービスのユーザーにとっては嬉しいニュースだろう。
Find My: あらゆる AirPods および Beats モデルはなくしたデバイスを Find My ネットワークを利用して見つけるオプションと、アクセサリーにビープ音を鳴らさせることで場所を特定できるオプションを提供する。けれども Find My 機能のうち Proximity View や Separation Alerts を使えるのは Apple のイヤーバッドに限られ、しかも第2世代 AirPods では利用できない。(2021 年 11 月 14 日の記事“第3世代 AirPods の第一印象”参照。) また、 Precision Finding 機能は第2世代 AirPods Pro でしか使えない。
ワイヤレス充電: この記事で取り上げたイヤーバッドのうちで、AirPods モデルの方だけが Qi ワイヤレス充電に対応している。(モデルによって標準装備のものと、少し追加料金を出してオプションのケースを購入しなければならないものとがある。) 第2世代 AirPods Pro は、Apple Watch 充電パックと Qi パッドのどちらでも充電できる。Studio Pro も AirPods Max もワイヤレス充電には対応していない。
耐水機能: Studio Buds と Studio Buds+ は IPX4 クラスの耐水性能を持つ。つまり、水しぶきを浴びても大丈夫だ。けれどもバッテリーケースにはこの機能がない。他方、第2世代 AirPods Pro と第3世代 AirPods ではイヤーバッドとケースの両方に IPX4 クラスの耐水性能がある。Studio Pro や AirPods Max にその種の耐水性能はない。ジムやフィットネスセンターでは Beats ヘッドフォンをいたるところに見かけるのだが。
アスリート向け: IPX4 性能があることで、Beats や Apple のイヤーバッドはエクササイズの相棒になり得るけれども、激しい運動をしても耳の中に収まっていてくれるだろうか? 答はその人の外耳道の形に依存するのだが、本格的なアスリートならば $199.99 の Beats Fit Pro (2021 年 11 月 14 日の記事“Beats Fit Pro は第3世代 AirPods の良い代替品”参照) や Beats から $249.95 で出ている Powerbeats Pro イヤーバッドを検討すべきだろう。いずれも物理的に安定させる設計になっていて、よりしっかり安全にフィットする。
結論
Studio Pro ヘッドフォンと Studio Buds+ イヤーバッドのいずれも、私には向かなかった。私は眼鏡をかけているので、Studio Pro のイヤーカップが頭の両側から常に圧力をかけている状態だとすぐに頭が痛くなる。これが理由で私はオンイヤーやオーバーイヤーのヘッドフォンを使わないようにしている。もちろん AirPods Max もそうだ。
その一方で、Studio Buds や Studio Buds+ は私の外耳道の形に合っていないのでうまく使えない。AirPods の方が感触が良いが、すぐに落ちてしまいがちなので、なくさないかと気になってしまう。
Apple の機能を備えた高機能のヘッドフォンを欲しいけれども AirPods Max は値札を見ただけで唖然としてしまうという人もいる。Beats には厚いユーザー層があり、古くなりつつある Studio3 モデルに代わるべき旗艦製品のヘッドフォンを待ち焦がれていた人たちも多いだろう。そして今、Studio Pro ヘッドフォンが登場して、USB-C ワイヤード再生のオプションまで提供できる。
金額に比べてできるだけ多くの機能セットを備えたイヤーバッドが欲しいという人たちもいるだろう。中レベルの価格帯でアクティブノイズキャンセリングや外部音取り込みモードのような機能を装備している製品は Beats 側にしかない。一方で見栄えを気にする人たちもいるだろう。そんな人なら、半透明の Studio Buds+ を手に入れれば退屈なホワイトの AirPods に代わる新鮮な変化を味わえるだろう。
だからこそ、Beats という会社の存在がありがたい。そのお陰で Apple のオーディオデバイスの製品一覧がますます豊かなものとなり、どんな人にもその人に向いた製品が見つかるようになる。そう、Android ユーザーでさえも。