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1672: Google Sheets の隠れたパワー、Launchpad の利用度、衛星通信による緊急 SOS とマウイ島の山火事、あなたはプロキシアイコンを使ってますか?

スプレッドシートというものは軽く見られがちだが、今週 Adam Engst が解説するように、現代のスプレッドシートにはただ単に計算を実行するよりも一段優れたことができる。その実例として、Adam は複雑な会計報告からデータを抽出してそれをもっと読みやすく理解しやすいものにする予算編成ツールをGoogle Sheets で作った体験を物語る。Apple の衛星通信による緊急 SOS 機能を iPhone 14 で使うことで、マウイ島の山火事で人命を救う役に立ったというニュースが届いた。今週の Do You Use It? アンケートでは、Adam が長年 Mac を使ってきた人たちの間での Launchpad の利用度について報告するとともに、新たにプロキシアイコンの使用について尋ねる。また、SanDisk ポータブル SSD の不具合と、CNET が SEO の目的で記事を削除していることについても少し考察する。今週注目すべき Mac アプリのリリースは Mactracker 7.12.7 と Cyberduck 8.6.3 だ。

Adam Engst  訳: 亀岡孝仁  

衛星経由の Emergency SOS がマウイの山火事で命を救った

以前は Twitter として知られていたサービス上に、Michael J. Miraflor が投稿した

私の兄弟の女友達の従兄弟とその家族は、Maui で山火事が突然発生した時、火に囲まれ車の中に閉じ込められた。

携帯電話サービスは使えなかった。救急対応者と連絡を取れる唯一の方法はApple Emergency SOS しかなかった。文字通り彼らの命を救った。

私は、その 34 分間の地獄がどんなものであったか想像することすら出来ない。Emergency SOS は魔法であるが ("衛星通信による緊急 SOS と Find My 機能をテストする" 21 November 2022 参照)、そして iPhone はその使い方を順を追って説明してくれはするが、周り全部を火に囲まれたバンの中に閉じ込められた状態でそれをその通りにすると言うのは気が狂いそうになるぐらい大変であったろう。感想二つ:

何れにせよ、衛星経由の Emergency SOS サービスを開発したことに対して Appleに、 追い詰められた状況下で冷静さを保ち続けたこの iPhone 14 ユーザーに、この緊急サービス対応者に、そして実際に救い出してくれた消防署に対して賞賛を送りたい。

この様な話を通して、Apple がこの衛星経由の Emergency SOS 機能を、初期の2年間の無料期間の後にも、何らかの方法で利用ベースの課金にすると言った事を考える事を望みたい。ハワイの歴史的な町で山火事に囲まれてしまうかもしれない事態を予想して、事前に加入申し込みする人など誰もいないであろう。

Emergency SOS via satellite conversation during Maui fires

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Adam Engst  訳: 亀岡孝仁  

Do You Use It? Launchpad は昔からの Mac ユーザーには受けが悪い

我々の最初の記事 ""Do You Use It?" 調査を紹介する" (28 July 2023) で、皆さんはどれ位 Launchpad をお使いになるかを問うた。Launchpad は iOS の Home 画面経験を Mac にもたらそうとするグリッド型のランチャーである (元を辿れば 1990 年代初期の Apple の At Ease に影響を受けていたのかも知れない)。Apple はLaunchpad アプリを macOS に内蔵させていて、デフォルトの Dock 上には二つ目の場所に置き、更にキーボードショートカットやトラックパッドジェスチャを使っての呼び出しをし易くしている。

Launchpad は Mac に新たに来たわけではなく、2011 年に OS X 10.7 Lion で導入された。Apple の意図は、iPhone や iPad から Mac に来た人達に馴染みのあるユーザー経験を提供しようというものであったのであろう。我々の調査の結果は、多くの TidBITS 読者は - 殆どは昔からの Mac ユーザー - Launchpad を基本的に無視していることを示していて、800 人を超える我々の調査に対する回答者の 70% が一度も使ったことがないと言っている。しかしながら、Apple が定常的に言っているように、Mac 購入者のほぼ半分はこのプラットフォームに新しい人達だと言うことからすると、TidBITS の読者は典型的な代表とは言えないのかもしれない。

Do You Use It? Launchpad poll results

残りの 30% の内、毎日 (Daily) 使うと言ったのはたったの 7% で、残りの 23% はしょっちゅう (Frequently) か、たまに (Occasionally) に属する。私はこれ等の頻度に対してラベル付けをする時に意図的に曖昧にしたが、私の全般的な考え方は以下のようなものである:

もし Launchpad を試してみたい、或いはデフォルトのキーボードショートカットやトラックパッドジェスチャが邪魔をするというのであれば、macOS 13 Ventura の System Settings > Keyboard > Keyboard Shortcuts > Launchpad & Dock か System Settings > Trackpad > More Gestures でそれを制御することも出来る。(macOS 12 Monterey かそれ以前での System Preferences のネスト化された場所でも同様である。)

Launchpad controls and Dock icon

Launchpad が立ち上がった後の使い方は簡単である。アイコンをクリックすればそのアプリが起動される。幾つか文字をタイプすれば - 最初に Search フィールドをクリックする必要もない - 示されているアイコンをフィルター出来る。アイコンを再配置するにはドラッグする。一つのアイコンを別のアイコンの上にドラッグすればその両方を含むフォルダが作られ、そこに他のアイコンを入れたり出したり出来る。フォルダをクリックすればそれが開く。Option キーを押すか、一つのアイコンを長押しすれば揺れモードになり、複数のアイコンを並び替えたり、X バッジをクリックする事で Mac App Store アプリをアンインストール出来る。必要なら、背景をクリックすれば揺れモードから離れられる。

Launchpad screen

Launchpad の 存在理由 は起動アプリなので、何故それを使わないかを説明した人の多くはアプリを手早く起動する他の方法を挙げた。代表例を挙げると:

Launchpad に関する問題の一つは、iOS Home 画面のように、デフォルトでは 35 の項目、5 行 x 7 列で、しか表示しないことである。もし Applications フォルダに 35 以上のアプリを持っていれば、Launchpad は追加の画面を生成する。Apple はこの格子サイズをアイコンと名前をより小さな MacBook 画面上でも読めることを考慮して決めたのかもしれないが、エンジニア達が格子状項目の構文解析の認知的負荷についての人的要因研究に基づいてこの格子サイズを決めたと思えるなら素晴らしいのだが。

何れにしろ、Applications フォルダにあるアプリの数に応じて (それ等全てが現れる)、Launchpad が有用性が高いのか低いのかに関して意見は分かれる。Launchpad は iOS と iPadOS にある App Library 機能を持たないので、画面数を減らすには二つの方法がある ("iOS 14 の App Library についてよくある質問" 9 September 2020 参照):

私は iPhone から Mac に来たユーザーのどのぐらいの割合の人がアプリを開くデフォルトのやり方として Launchpad を見ているか知りたいと思うが、その数を決めるやり方を全く思い付けない。

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Adam Engst  訳: Mark Nagata   

Google Sheets の隠れたパワーを発見する

私にはスプレッドシートを本格的に使った経験は一度もない。ライターとしての私の日常はワードプロセッサとテキストエディタの中で費やされてきた。もちろん私はスプレッドシートの使い方を知っているし、あとで調整したり更新したりする必要のある計算をするためにならば喜んでスプレッドシートを使いたいと思う。最近になるまでは、何か月もスプレッドシートを使わないまま過ごすことがよくあった。使わなかった理由の一部は、身近にいた人々がスプレッドシートをレイアウトプログラムとして使っていたからだ。その人たちはその書類をページレイアウトアプリで作成するツールもスキルも持ち合わせていなかった。これはある意味誘惑的だ。テキストをセルの中に入力するだけで。その“ページ”のどこへでも置けてしまうからだ。けれどもその作業が一回限りのものでない場合、Excel でそのページレイアウトの中にネジを一本打ち込んだだけで悲惨な結果に結び付いてしまう。

でもここ一・二年の間に、私は考え方を変えた。結局のところ、自分の内に潜むスプレッドシートの達人を解き放つには、それに相応しいプロジェクトこそが必要だったということなのだろう。せいぜい SUMAVERAGE くらいしか使う機会がなかった私がマルチシートの検索の妙技を発見するまでの、この非常に個人的な進化の物語をここにお届けすることによって、驚くべきツールへと発展しつつある現代のスプレッドシートを、読者の皆さんご自身ももっと使いこなせるのではないかという気持ちになって頂けるならば嬉しい。

ツールの話が出たのでここで一つ断っておきたいが、私がしたことは Apple の Numbers や Microsoft Excel でも可能だろうとは思うけれども、私は Google Sheets を使って作業する道を選んだ。それは必ずしもこれが最もパワフルなスプレッドシートだからという訳ではなくて (比べたらどうなのか私は何も知らない)、私たちの場合は自分のスプレッドシートが複数の人たちから常に見えるようになっていることが必要で、そのための手間が最小限に抑えられていることが重要だったからだ。近頃の私が執筆仕事の大半を Google Docs でしているのも全く同じ理由からだ。それに、オンライン上にある私の書類を私のどのデバイスからでも開けるのがとてもありがたい。

予算編成ツールを設計する

2020 年に私は Finger Lakes Runners Club (FLRC) の代表者になったが、パンデミックのせいで 2 月より後の競技会がすべてキャンセルになってしまい、その結果クラブの財政運用が混乱に陥った。2020 年末に当時の会計担当者が 2021 年の予算を組む際には完全に推測によるしかなく、一年を通じて更新せざるを得ない状況となった。復活できる競技会もあれば、できないものもあったからだ。年度の途中で会計担当者が離任したので、私は友人の Charlie に頼んでその役割を引き継いでもらった。最初の仕事は 2022 年の予算を組むことだった。調べてみると、前任の会計担当者のやり方はごく単純なスプレッドシートで、手で入力した数を足し合わせる以外のことをほとんどしていなかった。私は数字を手でタイプし直すなんて嫌だ。そのためにコンピュータがあるのだから! そこで私はより良い方法を考え始めた。

最初に問うべきはは予算の目的であった。FLRC は毎年 20 回程度競技会をしていて、私たちとしてはその多くが少しずつは収益を上げ、最低でも収支トントンになって欲しいと思っていた。そのうち 2 つは大規模な競技会で、これがクラブの収入の大きな部分を提供し、運用と活動、そして貯金に使われる。クラブ全体として継続可能な結果に結び付く限り、個々の競技会の監督が具体的にどれだけの額を支出しても私たちは気にしていなかった。過去には時として競技会の監督が思慮に欠ける計画を立てたために、大きな損失が出て問題になったこともあった。なので私は競技会の監督が普通でない出費をしようとする場合にそれを一定の範囲内に抑えられるようなガードレールを作りたかった。

最初に検討したのは QuickBooks Online だ。クラブはこれを帳簿に使っているので、予算編成にも使えないかと考えたのだ。確かにその機能はあるのだが、二つの理由で現実的でなかった。第一に、そのインターフェイスには過去の重要な情報が提供されないので、過去を材料に次の年の予算を見積もることができない。第二に、予算をさまざまな方法で書き出すことはできるけれども、私たちの場合は収入と支出を記録すると同時にその競技会の財務状況がどうなのかを監督に逐一報告するため、書き出しを頻繁にする必要があった。そこで、私は Google Sheets に目を向けた。これなら、競技会の監督がリンクを一つクリックするだけでその競技会の財務状況がどうなのかを最新の数字で見ることができるからだ。

競技会の現場の数字を見るための鍵となる報告書は QuickBooks Online にある活動明細書だ。個々の競技会がクラスとなり、書き出されればそれが一つのカラムとなる。個々の行はアカウント (登録者、賞品、掲示、その他) で、これはアカウントのチャートから取り込まれる。きちんとした表形式のデータだが、競技会もアカウントも数が多いのでどのフォーマットにしても上下や左右に何度もスクロールしなければならず、とても読みにくい。また、私としては個々の競技会を他と切り離して表示できるようにしたかった。巨大な PDF やスプレッドシートの中から自分の競技会を探し出して見て欲しいと監督に依頼するようでは、どうにもやって行けない。

Example of a statement of activity

こうして私に次のひらめきが舞い降りた。私はスプレッドシートのベテランでもなければプログラマーでもないかもしれないが、抽象化を理解することはできる。プログラミングをする際には、データをハードコード化するのを避けるために変数を使う。myVariable という変数は、そこに何を入れるかに応じて持つ値が変わる。スプレッドシートではセルの参照を使う。これで、例えばセル C32やカラム M の現在の内容に対して何らかの操作をすることができる。さらに素晴らしいことに、一つのスプレッドシートは複数個のシートを持つことができ、一つのシートの中のセルを別のシートから参照できる。

そして突然、私は自分が構築すべきスプレッドシートのアーキテクチャを心に描くことができた。一つのシートに、活動明細書が記される。これは、直接 QuickBooks Online から書き出されたものだ。それから個々の競技会ごとに別々のシートがあって、活動明細書から取り込んだデータを表示する。もっと素晴らしいことに、毎年の活動明細書を 2016 年まで遡って読み込むことができ、年ごとの履歴データもカラムに表示できる。この履歴データを利用することで実際に予算を組む際の参考になり、Charlie と私は過去のデータを (またそれら全体の平均も) 参照することで、次の年の収入と支出を予想しやすくなる。

Example of a budget sheet

魔法の公式を構築する

難しいのは私の構想を実装するところだった。一つのシートでデータを検索してそれを別のシート上に表示することが可能だと知ってはいたものの、実際にどうすればよいかは知らなかった。データをハードコード化した概念実証はすぐに作れて、それは前進だったけれども、どうすればそれを抽象化できるかを見極めるまでにはかなり時間が掛かった。最終的に、たくさんのウェブ検索と、多くの実例の研究、さらには Help > Function List を何度も開いて Google Sheets に何ができるか調べた結果として、私は次のような処方に行き着いた。

=IFERROR(HLOOKUP($A$2,INDIRECT("'"&E$4&" Overall'!$A$5:$X$250"), Utility!$A5, FALSE))

これを説明するのはなかなか大変だが、魔法の秘密はここにある:

この公式が見事なのは、私が必要とするデータをすべて一挙に取り込めるからだ。最初にシートを作成して、競技の名前を A2 に入れ、2016 から 2023 まで毎年のカラムを作っておく。それから 2023 の下の最初のセルにこの公式を入れ、右の方へそれをコピーすることで毎年の最初の行を埋め、そして最後にそれを下の方へコピーして残りの行を埋める。

(スプレッドシートの経験があまりない人たちのために言い添えると、公式をコピーする技は必ずある。Google Sheets と Excel では、セル右下のハンドルをドラッグすればよい。Numbers では、セルの望みの側にある黄色のハンドルをドラッグする。そうすれば公式が行き先のセルにコピーされ、行やカラムへの相対的な参照情報も適切にインクリメントされる。セル参照にインクリメントを加えずセルからセルへ公式を入れたい場合には、行とカラム双方の参照の前に $ を付けるか、または (公式を含むセルでなく) その公式のテキストそのものをコピーしてペーストするかすればよい。)

データをフィルターしてフォーマットする

この記事の初めの方に載せた活動明細書のスクリーンショットをよくご覧になれば、アカウント名の後に (deleted) とか、さらには (deleting)(deleted) とさえ書いてあるものがあることにお気付きかもしれない。実はこれらは QuickBooks Online の変な挙動の副産物であって、そのためいろいろと厄介な作業が必要になった。なぜかを説明しよう。

私たちのアカウントの様相は時と共に変化してきたし、何人もの会計担当者や経理係が入れ替わり立ち替わりしてアカウントを追加したり削除したりしてきた。この Budget Tool に私がデータを入れた最も古い年である 2016 年以後には一度も使われていないアカウントさえある。でも、上記の私の魔法の公式をご覧になれば、これがセル参照のみによって働くことがお分かりだろう。私としては、Food アカウントが毎年決まって Overall シートの行 87 に置かれている必要がある。標準の QuickBooks Online 活動明細書には活動のあった行のみが表示されるので、そこから報告書を作ると年ごとに Food がどの行に来るか全く予想がつかない。

幸いにも、QuickBooks Online には報告書にすべてのアカウントを含めるオプションがある。そのオプションを使えば、活動明細の報告書はすべてのカテゴリーを毎年同じ行にしてくれる。それが可能となる理由は、QuickBooks Online が決してアカウントを削除しないからだ。削除とマークされたものはただ表示から隠されるだけだ。

けれども、こうして不要な行まで全部含め散らかすことで別の問題も起こる。私たちの競技会のほとんどはそれぞれせいぜい 10 個から 20 個ほどのアカウントしか持たないのに、この活動明細書には何と 204 個もの行がある。提示方法としてこれは深刻な問題だ。

いったいなぜそんなにたくさんのアカウントがあるのか? 今年の初め頃、私は通常の QuickBooks Online アカウントから TechSoup を通じたアカウントに切り替えれば料金が一年あたり $800 以上節約できると知った。TechSoup が、非営利団体を対象にテクノロジーの値引き提供をしているからだ。かなり前に Jeff Porten が TechSoup についての記事を TidBITS に書いてくれた (2018 年 10 月 18 日の記事“TechSoup: あなたの非営利団体に大幅な割引価格でテクノロジー導入を”参照) のでその名前は私の記憶に残っていたのだが、年額で $75 値引きの QuickBooks Online 購読を提供しているとは知らなかった。ただ、既存の QuickBooks Online 購読を TechSoup アカウントに切り替えるために新しい“会社”をセットアップしなければならず、データをそこへ転送してから、従来の購読をキャンセルした。それは複雑で、ストレスの多い作業であった上に、約束された返金を受けるために Intuit のサポート担当者の援助を受ける必要まであった。それでも、最後にはすべてうまく行った。

残念なことに、QuickBooks Online で新しい会社をセットアップするためには、直ちにバックアップからデータを読み込む場合でさえも、まず定型のアカウントチャートを使わなければならない。これらの定型アカウントはその後すべて削除したけれども、活動明細報告書の中には大量の削除済みアカウントが残って散らかる結果となった。一度も活動に加わっていないアカウントは消えて欲しいと思うのだけれども、消すための唯一の手段はそれらを統合することのようだ。理論的には、不要なアカウントを全部一つのアカウントに統合してからそのアカウントを削除すればよいのだろうが、現実的にそんな作業はやりにくく、誤りを起こしやすく、うまく行かないことも多い。なので私は諦めて活動明細書の見苦しさを我慢することにした。

私たちの Budget Tool の初期のバージョンでは、個々の競技会を手で開いてチェックし、関係するデータを含まない行を手で隠していた。でもこの作業はとても面倒な上に、私が隠しておいた未使用のアカウントをその競技会が後になって使い始めた場合に厄介な混乱を引き起こした。QuickBooks Online の削除済み定型アカウントが大量に生じた結果 Budget Tool のリファクタリングを余儀なくされた際に、私はもっと良い方法があるはずだと考えた。

Google Sheets にはフィルタリングの機能があって、この機能が行を隠したり表示したりできる。私は Total カラムを作って、そこに 2016 年から 2023 年までを合計した数字を入れた。その合計額そのものに興味はなかったけれども、そのカラムにフィルター (Data > Create Filter を選ぶ) を作って、ゼロでないものを表示している行のみを表示するようにした。するとたちまち、不要なデータがすべて消え失せた。

Filter interface in Google Sheets

でも一つだけ難点があった。私のシートにはすべて Revenues (収入) と Expenditures (支出) の行がある。Revenues の見出しはすべてのデータより上に表示されるのでこのフィルターからは安全だが、Expenditures はシートの真ん中あたりに表示されていて付属するデータを持たないのでフィルターが隠してしまう。Expenditures が隠れないようにするため、私はそのカラムの一つに 1 を入力するようにした。これにはもっと他に良い解決策があるのかもしれない。

また、青く表示される Revenues と Expenditures の見出し行の他に、グレイに表示される Total Revenues と Total Expenditures の行と、黒く表示される Net Revenue の行もある。シートを読みやすくするため、これらは他と違うフォーマットで表示させたいと思う。当初はシートごとに手作業でフォーマットを付けていた。確かに面倒だけれども、思ったほど手数は掛からなかった。Google Sheets には Edit > Paste Special > Format Only コマンドがあるからだ。望ましいフォーマットの付いたセルをコピーしておき、行を選択して Command-Option-V を押せば、コピーしておいたセルのフォーマッティングのみがペーストされる。

それでもなお、さらなる抽象化を目指す私の探求の先にはもっと良いやり方があるはずだと分かっていた。Google Sheets には conditional formatting (条件フォーマット) という機能があって、範囲内にあるセルを公式に基づいてフォーマットすることができる。私はずっと以前から負の数を赤く表示させるためにこれを使ってきたけれども、特別の行をフォーマットするルールを作ればよいと気付いた。一つヒントがある: Format > Conditional Formatting を選ぶと、現在選択されているセルに適用可能なルールのみが表示される。だから、このコマンドを選んで何も表示されなければ、まず影響を受ける範囲内にあるセルを一つ選んでおくのがよい。

Conditional formatting interface in Google Sheets

それが機能するためのヒントはこの公式にある:=REGEXMATCH($A2:$A210,"Net Revenue") だ。REGEXMATCH は正規表現 (grep) 関数で、範囲内にあるテキストを検索する。このプロジェクトのあらゆるところで言えることだが、ここでも私はいろいろな実験を通じて機能させる方法を見つけた。ルールによっては範囲が変になることもあったが理由はよく分からない。上記の中の範囲をよりシンプルな A4:N211 に変えてみたけれども何の問題もなかった。

ここまでのことが済めば、あとは追加のカラムをいくつか作成して Charlie と私が予算作成のために計算できるようにした。さきほどのスクリーンショットでオレンジ色の背景で示されているものだ。これらは収入と支出を合計するための簡単な計算をして、純収入を計算する。Notes カラムは特定の数字をどのように予想したかの覚え書きだ。時には、Scratchpad カラムを作って見積額の変更が競技会の総損益にどう影響するかプレビューできるようにすることもある。これもやはりオレンジ色の背景のカラムで、予算と同じ計算式を使う。

行を隠したりフォーマッティングしたりしてきたのは、すべての競技会、GeneralTotal を合わせて全部で 22 枚ものシートがあるからだ。ここに何か一つ変更を施そうと思えば、それを 22 回施さなければならないので面倒だ。そこで最後の改訂として、行を隠したりフォーマットしたりする抽象化を施す度に、個々のシートを再作成しなければならなかった。それは別に難しいことではなく、シートを複製して、A2, に記入されている表示名と競技会名を変更し、フィルターを更新するだけのことだ。けれどもそれを終えても、その後の変更についてはまた 22 回繰り返さなければならない。例えば、来年のためにいずれ個々のシートに 2024 というカラムを追加しなければならなくなる。理想的な世界においては、抽象化した機能を一つのスプレッドシートの中の複数のシートに手軽に適用できるはずだ。ひょっとするとそういうものも既に可能であって、ただ私が気付いていないだけなのかもしれない!

いつもの使い方

最後に、私たちが普段 Budget Tool をどのように使っているかについて、いくつかコメントを書いておこう。

まず第一に、経理係がその月のすべてのデータを QuickBooks Online に入力し終えた時点で、私たちはすべての行を含む活動明細報告書を走らせて、それを Excel フォーマットに書き出す。それをそのまま Google Sheets に読み込ませて一つのシートの内容を上書きするのも可能だけれども、私は書き出したものを一旦 Excel で開いて、データをコピーし、Google Sheets に切り替えて、対応する年のシートの上にペーストする方が楽だと気付いた。

(QuickBooks Online と Google Sheets の間で自動的にデータを動かせるようなオンライン統合はあるのだろうか? 私が知る限りそれに最も近いのは Skyvia だが、Intuit はそのために必要な報告書への API アクセスを提供していない。)

新しいデータが Google Sheets に取り込まれたら、すべてが (本当にあらゆるものが) 即座に更新されるので、私たちはシートに目を通して個々の競技会の状況を調べることができる。予算で想定された金額と大きくかけ離れた数字があれば、何が原因かを調べようと試みる。(たいていの場合、それは単なる分類の誤りによるものだ。)

私たちが遭遇した唯一の障害は、これまで使われていないアカウントにデータを持っている競技会があった場合だ。その場合、私はフィルターを更新するために、すべてを選択してからもう一度ゼロの選択を外さなければならない。でもそういう事態は今のところまだ一度しか起こっていない。

競技会の監督との間でデータを共有することに関しては、ここで紹介したい最後の Google Sheets の技がある。Google Sheets の右上隅にある青い Share (共有) ボタンをクリックすると、そこで提供されるリンクは最初のシートへ行く。私たちの場合は Total シートだ。別に悪いことではないけれども、できればその競技会のシートが直接開く方が望ましい。そのためには、特定のシートのセル A1 を Control-クリックして、一番下の View More Cell Actions > Get Link To This Cell を選ぶ。これで、そのシートへのカスタムリンクがクリップボードにコピーされるので、それを共有することができる。

共有することによってせっかく作ったシートや公式が誰かに (うっかりと、あるいは悪意を持って) 削除されたり編集されたりするのではないかと思う人もいるだろう。私の体験上はほとんどの人が共同作業の書類を十分それと意識して何にも触らないようにしてくれるので問題は起こらないようだが、この種の共有されたスプレッドシートを保護する方法は三つある:

この記事で取り上げたものが私のプロジェクトのみに適用される極めて個別のケースであることは承知しているけれども、現代のスプレッドシートが単なる計算の実行を超えてずっと多くのことができるという考え方だけはお伝えできたと願いたい。読者の皆さんご自身の仕事の中でも、これに似たテクニックを使うやり方について少しはヒントとなれたかもしれない。スプレッドシートは、本格的なプログラミング環境と比べてもそう大きくかけ離れたものではない。実際、マクロやスクリプトに対応していることも多く、行やカラムの制約を超えたことも可能になる。でも、それはまた別の機会の話にしよう。

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TidBITS 監視リスト: Mac アプリのアップデート

訳: Mark Nagata   

Mactracker 7.12.7 Agen Schmitz

Mactracker 7.12.7

この夏、Ian Page が数回にわたって、人気ある彼の Apple 製品百科事典 Mactracker にアップデートをリリースした。バージョン 7.12.7 では過去を辿る旅路に踏み出して、Apple の 400K External Drive、Macintosh 800K External Drive、Apple FDHD / SuperDrive などの項目を追加した。このリリースではまた、iOS デバイスのプロセッサ製造過程や、Studio Display (2022) のファームウェアアップデート情報も追加した。6 月以後に Page がリリースしたものを振り返ると、バージョン 7.12.6 では PowerPC G3 とそれ以後の Mac モデルにプロセッサ製造過程の情報を追加するとともに最新の OS リリースの詳細情報を追加し、バージョン 7.12.5 では最新の Mac Pro、Mac Studio、および MacBook Air (15-inch, M2) リリースの情報を追加した。(Mactracker ウェブサイトからもMac App Store,からも無料、185 MB、リリースノート、macOS 10.12+)

Mactracker 7.12.7 の使用体験を話し合おう

Cyberduck 8.6.3 Agen Schmitz

Cyberduck 8.6.3

Cyberduckチームが最近になってオープンソースのファイル転送アプリのバージョン 8.6.2 をリリースして、Microsoft OneDrive や SharePoint にログインした後に認証コードをコピーしたりせず接続を開くことができるようにした。このリリースではまた、ファイルごとに複数の接続を使ってセグメント化したダウンロードが失敗するバグを修正し、Backblaze B2 との互換性を高め、デフォルトパスの冒頭に付くチルダ文字が SFTP のホームディレクトリに割り当てられるようにした。その後出されたバージョン 8.6.3 では、壊れたパイプのエラーを解消するとともに、AWS から届いた認証情報を設定できなかった問題も解決した。Cyberduck は無料だが、寄付を通じて、また Mac App Store から $23.99 で購入することを通じて支援できる。(無料、152.6 MB、リリースノート、macOS 10.12+)

Cyberduck 8.6.3 の使用体験を話し合おう

ExtraBITS

訳: Mark Nagata   

Adam Engst

Do You Use It? プロキシアイコン

今週の Do You Use It? アンケートでは Apple が宣伝する看板機能を離れて、長年 Mac 体験の一部であり続けてきた小さな機能を取り上げる。プロキシアイコンだ。現在 Apple はこれを“ウィンドウタイトルアイコン”と呼んでいる。Mac のウィンドウの多くで (主として Finderや、書類中心のアプリのウィンドウで)、ウィンドウのタイトルの隣にごく小さなアイコンが表示される。これがプロキシアイコンで、これを他のアプリや場所へドラッグすることが標準的な Finder アイコンをドラッグするのと同じ効果を持つ。(最近のバージョンの macOS ではウィンドウタイトル上にポインタをかざした場合にのみプロキシアイコンが見えるようになるのがデフォルト設定になっているが、この設定は簡単に変更できる。)

Mac proxy icon

皆さんはどの程度頻繁にプロキシアイコンを使っているだろうか? 率直に言っておこう。私がアンケートにこの質問を取り上げるのは、Mac でファイルやフォルダを扱う際にこれを使えば大いに時間と手間の節約になり得ることを広めたいからだ。プロキシアイコンなんて聞いたこともないので使ったこともないという方は、どうぞそう答えて頂きたい。このアンケートの結果を読まれた方が作業習慣に取り入れてみようかと思って下さるならば嬉しい。

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Adam Engst

SanDisk ポータブル SSD の不具合が急増

PetaPixel の記事で Jeremy Gray が、SanDisk ポータブル SSD の不具合が急増していることについてまとめて伝える:

現時点では、SanDisk または WD のポータブル SSD を使っている人は皆、細心の注意を払い、データを必ず適切にバックアップしておくようにするべきだ。そうでない人は、大幅な値引きで売られていても手を出すべきでない。PetaPixel としては、この状況に対処が施されたと判断できるまでの間は SanDisk ポータブル SSD を推奨することはできない。

私自身はこれらの製品を使ったことがないが、この件についてはいくつもの別々の情報源から報告が届いているので、SanDisk ポータブル SSD を使っている人たちには特に注意してバックアップを作っておくこと、別の製品への交換を検討することをお勧めしたい。

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Adam Engst

CNET、検索エンジン最適化のため古い記事を大量に削除

Gizmodo の記事で、Thomas Germain が次のように書いている

Gizmodo が知ったところによれば、テクノロジー関係ニュースのウェブサイト CNET が、Google Search 検索結果を良くすることを目的に、ここ数か月間にわたって何千もの古い記事を削除してきた。

CNET の著者ページのアーカイブされたコピーを見ると、CNET が 7 月半ばより以前に少数の記事を削除していたことが分かるが、その後削除のペースが上がったようだ。最近の数週間で、何千もの記事が消えた。CNET の担当者によれば、記事を処分していることは認めるけれども具体的に何個を削除したかは明かせないとのことだ。

CNET によれば記事を削除するのは検索エンジン最適化 (SEO) のためであるというが、Google はコンテンツの削除を推奨していない。どちらが正しいのか? Google の目的は“最良”の検索結果を作り出すことであり、他方 SEO の専門家はあらゆる手段を駆使して自分たちのコンテンツを検索結果の上位に表示させようとする。私自身何十年にもわたって TidBITS や Take Control のサイトを管理してきた経験からして SEO 側の主張の大部分に首を傾げざるを得ないが、SEO の専門家たちがうまく働くハックを発見したということは十分考えられる。ただ、それも Google がそれに応じて自らのアルゴリズムに調整を加えるまでの話だ。いずれにしても、正当なコンテンツを削除することを私は良しとしない。将来それがどのような役に立つかは誰にも予測できないからだ。少なくとも CNET は削除した記事を Internet Archive に送っているという。CNET に記事を書いている人たちは、Authory にアカウントを作成しておくのが賢明かもしれない。(2023 年 3 月 24 日の記事“Authory、著作者に記事の恒久記録を提供”参照。)

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