TidBITS: Apple News for the Rest of Us  TidBITS#900/15-Oct-07

今週号は私たちの第 900 号となる。これを記念して私たちの電子ブック“The Wireless Networking Starter Kit”を無料配付することにした。Glenn は、4年前に別の電子ブックを無料配付して彼がほとんど破産状態に追い込まれた時のことを思い出し、当時と今とでバンド幅の状況がいかに変わったかを考える。iPhone 関係の話題では、まず私たちは現在に目を向け、何人もの業界人たちから、この機器のどこが気に入ってどこが嫌いか、それぞれの意見を聞いてみた。次に私たちは未来を展望し、次世代の iPhone に 3G セルラーデータのネットワークと、5 メガピクセルのデジタルカメラ、それにビデオ会議のサポートを可能にする、新しいチップがリリースされたことについて検討する。Adam は、マイクロブログのサービスを提供する Twitter について、従来は見下げたような意見を述べていたのを撤回し、Mac からも iPhone からも使えるこのサービスが iPhone と Mac の橋渡しをすると論じる。さて、Mac のソフトウェアに話を移せば、Matt が無料の EasyFind 4.0 を使って彼のハードディスクを隅から隅まで検索し、Robert McNally の Flying Logic を使って彼の思考過程を図式化する。その他のニュースとしては、Seagate のハイブリッド(しかし Mac 非互換な)ハードドライブのリリース、Crazy Apple Rumors Site に偽者の Take Control 本が2冊出現したこと、それから Apple の役員でもある Al Gore がノーベル平和賞を受賞したニュースもお伝えする。

記事:

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Apple 役員の Al Gore がノーベル平和賞を受賞

  文: Mark H. Anbinder <[email protected]>
  訳: 笠原正純<panhead@draconia.jp>

先のアメリカ副大統領の Al Gore は、彼のドキュメンタリー映画 "不都合な真実"がアカデミー賞(オスカー)を受賞し、彼自身も 彼の Current TV でエミー賞を受賞した。そして先週、彼は究極の受賞歴を彼の履歴書に書き加えた。ノルウェーのノーベル賞委員会は、2007 年のノーベル平和賞を、Gore と国連の気候変動に関する政府間パネルに授与すると発表した。このようなアナウンスは通常ならTidBITS で扱わないが、Gore と彼の映画は Apple と Mac 産業に深く関わっているのでここに取り上げた。

実際、私たちが Apple の PR マシンからもっと他のニュース(2007-10-04 の"Leopard、10月26日に向けて準備完了?"参照)を待ち望んでいる間、彼らは Gore の活動についてしつこく宣伝をしていた。Apple のホームページを変更し、Hot News ページから複数のニュースへのリンクを張った。2003 年初頭から役員に加わった元政治家はしばしば Apple の製品にリンクされていた。彼は何年も Apple の Final Cut Pro の熱心なユーザだったし、"不都合な真実" の素材を組み立てるのに Keynote を使った


900 号と無料の Wi-Fi 電子ブック

  文: Adam C. Engst <[email protected]>
  訳: Mark Nagata <nagata@kurims.kyoto-u.ac.jp>

今回 900 号という節目にあたって何か大きな基盤構造の変化をお知らせしたかったのだが、今年は私たちのスケジュールをそうした号数の都合に合わせることはできなかった。その一番の理由は、私たちがこの 8 月に大きな時間枠を設定して、その結果として 9 月の初めに私たちのサイトを大幅にデザインし直したものをスタートさせたことだ。(2007-09-10 の記事“近代的な TidBITS ウェブサイトをデザイン”参照。)私たちが現在作業中の改良点のいくつかを今週号で発表したいと思ってはいたのだが、それも今月末に迫った Leopard の登場に備えて Take Control 電子ブックのコンテンツを準備する必要に追われて間に合わなかった。だから今回は切りの良い数字を記念することは水に流すことにしたのだが、でも何にも無しでは申し訳ないということで、一つだけ皆さんのための企画をすることにした。

そこで、今回ささやかな記念として、私たちは電子ブック版の“The Wireless Networking Starter Kit, Second Edition”を無料で提供することにした。これは Glenn Fleishman と私が 2004 年に書いた本だ。もちろんあちこちで少し時代遅れになってしまった内容はある(それらについては新しい電子ブック“Take Control of Your 802.11n AirPort Extreme Network”と“Take Control of Your Wi-Fi Security”を出版することでカバーしてある)が、それでも本の内容の大部分は今でも正確で、興味深く、便利に使えるもののはずだ。ワイヤレスネットワークのトラブルシューティングの仕方や、基本的な家庭内ネットワーク、広範囲ワイヤレスネットワーク、その他たくさんのことについての情報が読める。ダウンロードサイズは 13.6 MB で、ブックマークや内部リンクも多数組み込んであるので PDF でのナビゲーションが簡単にできる。今回の無料リリースについて別の立場からの展望を、今週号の Glenn の記事“電子ブックの無料配布: 2003 年は大損害、2007 年はかわいいもの”でお読み頂きたい。彼はその中で、彼が無料で電子ブックを配付してあわや破産に追い込まれそうになったあの時以来、バンド幅の風景がどれほど変わったかについて考えている。

Seagate Hybrid Hard Drive は Mac 非互換

  文: Adam C. Engst <[email protected]>
  訳: 笠原正純<panhead@draconia.jp>

Seagate Technology は新しい Momentus 5400 PSD ハードドライブ をリリースした。これは、最初の "ハイブリッドハードドライブ"であり、起動時間や全体のパフォーマンスの改善、電気使用量の低下、信頼性の向上を狙って 256 Mb の不揮発性フラッシュ RAM を 2.5 インチのノートブック用ハードドライブに搭載している。本質的には、フラッシュメモリは頻繁にアクセスされるデータを保存することができる巨大なキャッシュであり、ハードドライブの回転を止める割合を増やしたり、ディスクのプラターから読み取るよりも素早くデータを取り出せるようにするものだ。ドライブが回転する時間を減らすことにより電源の使用量が減り、回転を止めている間はダメージをうけることがほとんどなくなり、同時に信頼性の向上につながる。(言い換えると、ドライブを使わなければさらに効果的にさらに信頼性は上がるだろう。何というコンセプト!)

Seagate のプレスリリースは Mac 報道陣から大きな扱いを受けたが、残念ながらあなたの MacBook Pro にこれを買う意味は今はないと言わなければならない。私が Seagate の Mike Hall に確認したところでは、ハイブリッドハードドライブの全ての利便性を享受するためにはオペレーティングシステムのサポートが必要になる。そして、そのようなサポートを行えるオペレーティングシステムは今のところ Windows Vista しかないということだった。Mike は、Momentus 5400 PSD をサポートするオペレーティングシステムの増加を Seagate は望んでいると言っていた。しかし、彼は Apple からのサポートについては全く知らないとのことだった。もし、これらのドライブを今 Mac にインストールしても他の普通のハードドライブと全く変わらないとも Mike は言っていた。しかも、Momentus 5400 PSD ドライブは通常のドライブより高価なので、現状ではお金を節約すべきだろう。

そうは言っても、来る数ヶ月のうちには Apple のラップトップがリフレッシュされるのを見ることになりそうだし、おそらく Mac mini や Apple TV もそうなるだろう。そして、それらは全ての 2.5 インチハードドライブを使っている。Apple にとって、ハイブリッドハードドライブを Lepard でサポートすることは全くもってそのキャラクターに合っている。ラップトップに Momentus 5400 PSD を付け加えるのはバッテリライフを延ばすだろうし、Mac mini や Apple TV においては電気消費量とノイズの低減させるからだ。

私たちは、これから固体メモリストレージと回転ディスクストレージとを融合するというトレンドをより多く目撃することになると思う。フラッシュ RAM の価格は低下を続けていて、1G コンパクトフラッシュカードは $128、8 GB SDHC カードは $65 になっている。私は、これらの価格が Momentus ドライブの中にあるものとどのように比較すればいいのかは分からない。Seagate が使っている 256 MB フラッシュ RAM はコンシューマレベルのメモリカードより高速で高価だろう。反面、Seagate は大量購入することで大きくコストを押さえているに違いない。もし、オペレーティングシステムによるハイブリッドハードドライブのサポートがより広範に利用可能になれば、ハードドライブにフラッシュ RAM を搭載することはすべての人にとって利益のあることになるだろう。


Take Control、CARS で風刺される

  文: Adam C. Engst <[email protected]>
  訳: Mark Nagata <nagata@kurims.kyoto-u.ac.jp>

おお、何てことだ。こんなタイトル、どうして私たちが思い付かなかったんだろう! Crazy Apple Rumors サイトが、私たちの電子ブックの縄張りに割り込んで、彼らの新シリーズの最初を飾る2冊の本について偽物の発表をしている。いわく、“Take Control of Being A Whiny-Assed Apple Customer: The Missing Manual for Dummies”(「泣き言言いのアホ面 Apple 顧客を Take Control: サルでもわかる裏マニュアル」)と、“Take Control of Suing Apple: The Missing Manual for Dummies”(「Apple 相手の裁判を Take Control: サルでもわかる裏マニュアル」)だ。私の書き込んだコメントへの返答としてその「発表」の著者が書いたコメントも、どうかお見逃しなく。


3G セルラーデータの iPhone が現実的に

  文: Glenn Fleishman <[email protected]>
  訳: 羽鳥公士郎 <hatori@ousaan.com>

Apple CEO の Steve Jobs は、iPhone がいわゆる 2.5G セルラーデータ技術を、つまり極めて低速の第2世代(2G)と比較的高速の第3世代(3G)との仕様のギャップを埋める技術を使用していることについて、この革新的な電話機に必要な、消費電力が少なく大きさも小さい 3G チップが登場するのはおそらく1年先のことだろうとして、正当化してきた。先週、この1年というのが数か月に縮まった。

Broadcom は、その最大のライバル Atheros とともに、長いあいだ Apple にWi-Fi チップを提供しているが、GSM ネットワーク用の高度な統合 3G チップを明らかにした。GSM ネットワークは、Apple の iPhone パートナーであるAT&T や、ヨーロッパやその他世界中の携帯電話会社のほとんどが運用している。

耳に心地よい名前の BCM21551 3G Phone on a Chip は、上りと下りの両方で、現時点で最高データ速度の HSPA(High-Speed Packet Access、下りに焦点を当てるときは HSDPA と呼ばれることもあり、この D は Downlink を表す)を採用している。このチップは単一の 65 ナノメートルダイの上に構築され、現在のチップの大きさとしては最小だ。65ナノメートルというのは回路パスとしては最も小さい。ダイが小さくなれば、消費電力が少なくなり、発生する熱も少なくなるし、回路が占める面積も小さくなり、より小さいチップで同じ仕事をこなせるようになる。90ナノメートルかそれ以上のプロセスを使用した同等の HSPA システムは、同じ機能を実現するのに、大きなチップか2つないし3つのチップを必要とする。Broadcom はこのチップに CMOS(相補型金属酸化膜半導体)技術を使用しているが、これは IC を作るのにもっとも安価な方法だ。

AT&T の 3G ネットワークはたったの 3.6 Mbps で運用されており、米国全土に展開されているわけでもないが、ヨーロッパの携帯電話会社はすでにその次のタイプを使用しており、7.2 Mbps の下り速度とゆくゆくは 5.8 Mbps に到達する上り速度を提供している。これは論理データ速度で、複数のユーザが共有するから、通常の平均速度は論理速度のおよそ 15 から 20 パーセントになる。

Broadcom が同社の新製品を 3G Phone on a Chip と呼んでいるのは、それが3G セルラーデータ技術を含むだけでなく、2つの ARM11 プロセッサも含んでいるからだ。これはハンドヘルド機器やモバイル機器に広く使われている。 ARM プロセッサは iPhone のメインのロジックボードにも載っている

Broadcom のチップには Bluetooth 2.1+EDR も含まれており、1 秒あたり 30フレームのビデオ出力、FM ラジオ受信、FM ラジオ送信(カーステレオ再生用)、最大 5 メガピクセルの解像度のカメラの処理に対応している。ほかにも多数の機能が備わっており、LCD 画面への低電力の出力、5 バンドイコライザを備えたステレオ音楽、フルスピードの USB 2.0、そして私がプレスリリースを読み違えていなければ、ジーンズとチノパンに対応した内蔵ズボンプレスを実現している。

このチップは現在少量だけ出荷されている。「サンプリング」と呼ばれ、Broadcom の最優良顧客向けだ。大量出荷時の価格はチップあたり 23 ドルの予定だが、その時期は発表されていない。しかしチップ業界の通例では、サンプリングの後3か月から6か月のあいだだ。

Broadcom と Atheros に加えて片手に余る企業が、セルラーネットワークと無線ネットワークの機器製造分野で競争をしており、それゆえほかのチップメーカーが似たような発表を今後3か月以内にする可能性も高い。

Broadcom の 3G Phone on a Chip の出荷準備が整ったということは、Appleから 2008 年の第2四半期に iPhone の大幅な改良が発表されるかもしれない。ハードウェアの対応が必要な機能で、この改善で実現できる iPhone の機能を少しだけ挙げるとすれば、3G データと 5 メガピクセルのカメラ、ビデオ会議といったところだ(私は To Do アプリケーションもほしいが、それはただのソフトウェアだ)。

これは、もちろん、純粋な推測だが、3G を実現するにはより良いチップが必要だという Steve Jobs のコメントを前提にすれば、Apple は Broadcom やほかのチップメーカーと、第2世代の iPhone を動かすのに必要なチップについて話を進めていると思わざるを得ない。


EasyFind 4.0: 簡単だ、検索だ、無料だ

  文: Matt Neuburg <[email protected]>
  訳: 羽鳥公士郎 <hatori@ousaan.com>

DEVONtechnologies は価値ある無料のユーティリティ EasyFind をアップデートした。パワーユーザなら、あるいはパワーユーザになりたいと思っているなら、これをぜひ兵器庫に入れておくべきだ。

EasyFind は Spotlight に代わるものだ。つまり、あなたのコンピュータにあるテキストを検索するユーティリティだ。そのテキストは、ファイル名やフォルダ名でもよいし、ファイルの内容の一部でもよい。Spotlight と異なり、EasyFind はインデックスを使わない。そのかわり、古めかしい方法で検索する。つまり、ハードディスクの全体を、直接、ファイルからファイルへと、そしてファイルの内容を探しているならバイトからバイトへと、捜索する。Spotlight と異なり、EasyFind はファイルタイプ、たとえば Word 書類を解釈して、フォーマットの部分を取り除いてテキストだけを調査するといったことは何もできない。生のデータを見るだけだ。Spotlight と異なり、EasyFindは限度というものを知らない。ハードディスクの中で検索しないところはどこにもない。

EasyFind

もちろん、そのことは、EasyFind が少々遅いことを意味する。そして、動いているあいだは CPU を占領して、ほかの作業をすることがほとんど不可能になるかもしれない。だからどうだというのだ。ときには、検索をしたいだけなのに、Spotlight が役に立たないことがある。たとえば、私は最近、/usrディレクトリの中の Ruby ファイルで使われている、ある単語を探したいと思った。しかし、すべての Ruby ファイルが /usr ディレクトリのどこにあるかを把握しているわけではなかった。Spotlight はこの場所をまったく検索してくれない。EasyFind なら、その単語を含むファイルのすべてを二三分で探してくれる。

EasyFind は無料だ。 ダウンロードして使えばよい。(820K のダウンロードで、Mac OS X 10.3.9 以降を必要とする。)新しくアップデートされたバージョン 4.0 では、インターフェースが一部更新され、検索したいフォルダを指定するのが簡単になり、見つかったファイルについての情報コラムに作成日が追加された。また、複数語の検索がより正確に扱われるようになったそうだ。

ダウンロードページを閉じる前に、DEVONtechnologies が提供するほかのフリーウェアもぜひ試してみてほしい。同社の無料のアプリケーションやサービスのいくつかは、私も折りに触れて利用している。私はまた、DEVONtechnologies の旗艦アプリケーション DEVONthink(2004-03-08 の"DEVONthink は考える、あなたのために" 参照)と"Google も踏むを恐れるところ DEVONagent が飛び込む")をレビューしているので、興味があればお読みいただきたい。


Flying Logic:それは論理的でありません、艦長

  文: Matt Neuburg <[email protected]>
  訳: 亀岡孝仁 <takkameoka@bellsouth.net>

数年前になるが "全然いい加減じゃない Consistency" 2002-09-10) の中で、私は Sciral Consistency について激賞したことがある。これは単純だが素晴らしく効果的なアプリケーションで、定期的に行なわねばならないことをやさしくあなたに思い出させてくれる。そして今回は Consistency の作者である Robert McNally が新しいプログラムを携えて戻ってきた:Flying Logic. である。

もう覚えておられる方はいないかもしれないが、私が TidBITS のために初めて書いた記事は論理的議論をチャート化するアプリケーション MacEuclid ("MacEuclid" 1992-11-23 参照) についてであった。それは卒論のプロジェクトで、それ以上開発されることはなかった。Flying Logic は MacEuclid を強力ステロイド漬けしたようなものである。それは議論を単にチャート化するだけではない; Theory of Constraints (制約条件の理論) に従ってそれの演算も行なう (とりわけ Lisa Scheinkopf の本 "Thinking for a Change" に記載されている様に)。Flying Logic は単に論理的議論を記述するだけではない;それは一種の生きた論理データフローダイアグラムを生成する。それは好ましい効果と好ましくない効果を伴った原因 (行動や前提条件) が最終的にはある目的に到達する様に構成される。このダイアグラムを使って実験することで、好まれない効果を減らし目的により成功裏に到達する道を見つけることが出来るかもしれない。

Theory of Constraints を勉強し、ダイアグラムを紙や黒板上に、或いは OmniGraffle ("OmniGraffle で楽々作図" 2006-02-13 参照) のようなダイアグラムツールを使って書くことは可能である;しかし Flying Logic には大きな長所がある。それは適した種類のダイアグラムに _特化_ されていることである。従って、そのツールや自動化されたレイアウトとフォーマットのお陰で、あまり表現上の細部を心配することなく正確なダイアグラムを手早く作成できる。一連の極めて簡単なマウスとキーボードの動きでダイアグラムを作成し、発展させ、そして再配置出来る;例えば、二つの構成要素を因果的に結びつける簡単なドラッグだけで、ダイアグラムはこの関係を反映して魔法のように再配置する。この様にして、Flying Logic に形を作るのは任せて、自分は自分の時間を内容に全面的に費やすことが出来る。そして、前ににも書いたように、このダイアグラムは生きているので、(例えば) "confidence spinners" は、現在の構成と最初の前提条件を考慮して、全ての構成要素の実際の真偽値を表示する。最後に、多くの相互接続された構成要素をグループ化し全てをそのグループを指す一つの小さな代替箱に縮小できる機能があり、これを使えば、一つのダイアグラムを手に負えない程ぐしゃぐしゃさせることなく果てしなく成長させることが出来る。

私が思うには、Flying Logic は購入してすぐに遊び始められるようなものではない。Theory of Constraints には、広範囲なツールボックスからなるテクニック、取り組み方、そして構造が関与する;Flying Logic を使うには、このあたりについてある程度知っておく必要がある。その手助けとして、Robert McNally は広範囲なドキュメンテーションを提供していて、その内容はアプリケーションとそれの意図した問題解決手法に関わる考え方を含んでいる:幾つかの PDF ファイル (どれもわかり易い本である) とオンラインムービーも多少あり、全てが良く出来ている。

一つの例として、昨夜我々の町内会であった大きな議論を示したドキュメントを作ってみた。我々の町内会が持つ私道である Arundale Road に鍵のかかった門が設置されたのである。我々の町内に入るにはもう一つの道があるので、入れなくなったわけではないが意見は分かれた:門に賛成する人は、門を取り去れば見知らぬ人が町内に入り込んでくるのが増えると恐れ、他の人は Arundale を使いたいとしている、権利として (我々が所有している) そして利便性からも (ある方向に出て行きたい時にはより直接的となる)。議論が白熱化するにつれ、どうも解決できない競合問題が一つある様に見えてきた。これは構成要素 Conflict から出てくる黒と赤の矢印で示される、そしてこれは相対する真偽値を発信する;あなたが何をしようが、 "門を開く" か "門を閉じる" のどちらかが偽となり、共通の目的 (一番左端) は偽となるであろう。

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競合問題を解決する鍵は、あなたの前提を疑ってみることである。(残念なことには、前提はここでは小さな黄色のドットで示されている;テキストは Flying Logic プログラムの中では見えているが、ここで私がやった様に PNG にエクスポートすると失われてしまう。勿論前提のテキストを別のドキュメントとしてエクスポートすることは出来るが、内在する推論をはっきりと効果的に示すためには役に立たない。) ここで自分自身に問うてみるべき質問は:門を閉ざしておくことが "招かざる客を遠ざけておく" _唯一の_ 方法なのか?会合の参加者の中にそのニーズを満たす他の方法があるという者がいた:Arundale を一方通行にして、出て行く方向だけにする。そのようにすれば、我々はこの通りを都合よく使えるが、入ってくる交通には役立たない。それで、私はそれをこのニーズを満たす別の方法としてダイアグラムに追加した。今や町内会での意見対立の解消は可能となったこと、そして構成要素の真偽値がどうなったかに注目して欲しい:門を開く _and_ Arundale を一方通行にする。(ダイアグラムの再配置は、私が "Solution" 構成要素を追加して関係付けたとたん全ては自動的になされた。)

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ここから更に先に行くことも可能である。Arundale を一方通行にするのは門を開けない限り出来ない (なぜならば門が閉じられた状態では、Arundale は行き来できない)。つまり私は "門を開ける" から "Arundale 一方通行" への接続を追加すべきなのである、そうすれば前者は後者のための必要条件であることがわかる。これで、両者は共に真か、どちらも真でないかのどちらかになる。

flyingLogic3copy

私は Flying Logic も Theory of Constraints もどちらも本腰を入れて調べ始めたわけではない。しかし、これは間違いなく独創的なアプリケーションであるし、使うのもやさしいしそれに面白い。試してみたい人は、無料の 30日試行版 (8 MB) をダウンロードすべきである。Flying Logic には 4 つのバージョンがある:(1) 無償のドキュメントリーダー;(2) $39 の教育版、エクスポートにはウォーターマークがつきグルーピングにも限定がつく;(3) $79 の標準の個人版、教育版の制限がはずされる;そして (4) $149 のプロフェッショナル版、これには高度のオペレータ (入力をくっつけるのに AND, OR, そして NOT 以上が使える) がつき更なるオプションがつく。Flying Logic は Java アプリケーションで (それに気づくことは殆どないかもしれない)、Mac OS X 10.4 かそれ以降、そして Windows XP か Windows 2000 の上で走る。


電子ブックの無料配布: 2003 年は大損害、2007 年はかわいいもの

  文: Glenn Fleishman <[email protected]>
  訳: 羽鳥公士郎 <hatori@ousaan.com>

2003 年の 3 月、私は本を無料で配布して、ほとんど経済的に破滅するところだった。"Real World Adobe GoLive 6" の売り上げがあまりに芳しくなかったので、Jeff Carlson と私は、 これを無料の電子ブックとしてリリースすることにした。そうすれば世の中にすてきな贈り物ができると思ったのだ。

私が犯した過ちは、帯域幅料金を事前に計算しておかなかったことだ。私がファイルを置いたサーバは、私が利用していたウェブホスティング会社を買収した友人が運用しているもので、彼のコロケーションプロバイダ Level 3は、1月の使用料の持続的な平均に基づいて課金する。つまり、もっとも使用料の多かった時間帯およそ5パーセントを除いて、95 パーセンタイル値を閾値として料金を計算する。私は月々の請求を 2,000 ドルから 15,000 ドルにまで引き上げかけた。

私はすんでのところでプラグを引っこ抜くことができたが、その前に 20 MB近い PDF がおよそ 10,000 回ダウンロードされていた。私の惨状を耳にした人たちがおよそ 2,000 ドルを寄付してくれたが、私が Level 3 の料金体系に食いちぎられることのないことが分かったので、私はそれを(彼らの許可を得て)Project Gutenberg に寄付した。この話の全容は、TidBITS に Adam が書いた記事 "電子出版生き残りゲーム"(2003-03-24)か、 私が New York Timesに書いた記事で読める。

最近、Adam と私が "The Wireless Networking Starter Kit, Second Editionを無料配布"しようと決めたとき、以上のことすべてが私の頭にあった。この本を前回アップデートしたのは 2004 年だ。売り上げは悪くなく、私たちは Peachpit Press から前払いされた印税を相殺できたが、改訂版を印刷する価値があると Peachpit や私たちが考えるまでにはいたらなかった。

私たちはこの本の一部を "Take Control of Your Wi-Fi Security"(これはつい先週大幅にアップデートしてリリースした)の中に組み入れたし、私はもう1冊別の本 "Take Control of Your AirPort Network" を書き、これはその後"Take Control of Your 802.11n AirPort Extreme Network" に進化した(これも先週大きく改定して再リリースした)。

しかし、"The Wireless Networking Starter Kit" の大部分は、ネットワークを計画し、部品を1つにまとめ、ネットワークの問題を解決し、広域無線ネットワークに接続し、などといったことのアドバイスとして今でも役に立つと私たちは考えている。私たちが思うに、世界中の人々が、この主題についての無料の本があれば喜ぶだろうし、彼らがセキュリティなどの話題について最新の情報を必要としているなら、無料の本をリリースすることで私たちの Take Control 本の売り上げが多少増えることになるかもしれない。

今回、私は 14 MB の PDF を作成し、ざっと数字を見積もった。10,000 回、あるいは 100,000 回ダウンロードされるかもしれない本をどこに置けば、遮断されたり破産したりしないですむだろうか。私は .Mac に登録しているが、通常アカウントなので1月当たり 100 GB の転送量制限があり、追加料金は取られないとしても、この制限を超えてしまうだろう。私は自分のウェブサイトを、TidBITS と同じ digital.forestにホストしているから、そこにファイルを置いて、月々の転送割り当てを超過してしまったら digital.forest に料金を支払ってもよかった。しかし、転送量がうなぎのぼりになったときのことを考えると、それはよい手とは思えなかったし、そのようなことが起きてdigital.forest ネットワークのトラフィックにスパイクを作るのはばかげたことのように思えた。

最終的に、私は Amazon.com の S3 (Simple Storage System)サービスを選択した。これを使えば、分かりやすい料金で、任意の大容量ストレージを利用できる。保存は1か月で GB あたり 0.15 ドル、ダウンロードは1か月 10 TBまで(これを超えると単価は下がる)GB あたり 0.18 ドル、アップロードはGB あたり 0.10 ドルだ。(私は Nolobe の Interarchy を使用して S3 ストレージを管理している。S3 は少々分かりにくいが、XML などの抽象的なものの取り扱いを Interarchy に代わりにやってもらえば、基本的には FTP と同じようなものだ。)

この料金体系なら、14 MB のファイルを 10,000 回ダウンロードすると 140 GB で、これがなんと 25 ドルだ。100,000 回ダウンロードされるというのはありそうもないが、それでも 250 ドルで、このコストなら Take Control 本に十分な売り上げがあればまかなえると思う。現在までのところ、私たちはほかにも何冊かの Take Control を販売しており、ダウンロードは 50 GB を超えたこともあるが、料金は 10 ドルにも満たなかった。

無料でコンテンツをホストするサービスや方法もあるが、それらすべてには妥協しなければならない点があり、S3 のコストは、信頼性を提供しながら他人の無料ネットワークを濫用しないものとしては十分に安価だと思う。

4年間のうちに、持続的な水準の高帯域幅が 15,00 ドルだったものが、巨大な帯域幅が 25 ドルになった。4年前にはギガバイトあたり 10 ドルから 40ドルした料金は、Amazon の S3 やそのほかのサービスのおかげで、今や日常的な価格になった。

私にとって、このような変化は、コンピュータの能力が増大し、オンラインメディアが洗練されたことと同じぐらい、あるいはひょっとするとそれらよりもさらに重要だ。コンピュータが速くなり、ビデオが増え、そして帯域幅が安くなれば、個人がどのような形であれ自分のアイディアを広める能力もまた増大するのだ。

本当の問題は、帯域幅が安くなることが、大量生産されたコンテンツが私たちにより速く届けられるようになることを意味するのか、それとも個人の表現が拡大し続けるということを意味するのかということだ。電子ブックを1冊無料配布するというのは、新作オペラを作曲したり、それを映画化したり、ウェブ上で百万人の観衆を集めたりすることとは同じではないが、インフラストラクチャーとしてはほとんど変わりがない。


InterviewBITS: iPhone の好き・嫌い

  文: Adam C. Engst <[email protected]>
  訳: Mark Nagata <nagata@kurims.kyoto-u.ac.jp>

百万台以上の iPhone が市場に出回った今、そろそろ第一印象を語る時期は過ぎて、現実の iPhone ユーザーたちがこの新しい生活の友についてどんなところを気に入ってどんなところが嫌いになったかをしっかりと見極める時期に入ったと言うべきだろう。私は数名の iPhone ユーザーたちをパネルディスカッションに召集し、iPhone のどの機能を最もよく使うようになったか、または少なくともこの iPhone 革命に参加する以前に予想していたよりもずっと頻繁に使うようになった機能は何か、と尋ねた。その一方で、毎日 iPhone を使っていて一番イライラさせられることを一つだけ挙げるとしたらそれは何だろうか、とも尋ねた。

皆さんもぜひ TidBITS Talk の討論に参加して、 あなたが最も好きな iPhone の機能は何かiPhone に関する最も大きな不満は何か、ご意見を寄せて頂きたい。

Ted Landau -- [Ted は Macworld の Senior Contributor であり、他にも MacFixIt ウェブサイトの創設者、現在制作中の電子ブック“Take Control of Troubleshooting Your iPhone”の著者など、多くの顔を持っている。]

私が一番ありがたいと思う機能が何かははっきりしている。Maps だ。誤解しないで頂きたいが、Safari も確かに素晴らしい。でも、それは iPhone を買う前から予想できた。それと対照的に、私の心を驚きで捉えたのが Maps だ。私は車の中に GPS 機器を持っていない。もしもそれがあれば、これほどまでに Maps に熱狂的になることもなかったかもしれないが。でも、今の私はどこへ行くにしてもほとんど毎回 Maps を使っている。モーテルから一番近い Starbucks を探すのにも使った(驚いたことに、どの交差点にも四つの角のうち一つに必ず Starbucks がある訳でない場所もあるのだ)し、レストランへ行く道を調べるのにも使った。(出かける前にあらかじめ MapQuest で調べて地図を印刷しておく、といったことは要らなかった。)その上、交通渋滞状況をチェックするのにも使った。とにかく、Maps は iPhone のウィジェットの中でどれよりも価値ある一つだ。

iPhone で一番イライラさせられるものを挙げよと言われれば、それは車の中で iPod として使う時にやたら不満が溜まることだ。実際、あまりにも具合が悪いので私は使うのを止めて代わりに iPod nano を引っぱり出してきてまた使い始めたくらいだ。それは、こんな理由からだ:

曲を聴いていて、そのプレイリストの中の次の曲にジャンプしたいとしよう。それにはまず、スクリーンがしょっちゅうスリープに入ろうとするという煩わしさを乗り越えなければならない。iPhone にアクセスするだけのために、いちいちまずクリックしてスリープから起こしてから Unlock スライドをする、という手間が必要になる。(それを解決するには Auto-Lock をオフにすればよいのだが、そうすると不必要にバッテリが消耗してしまい、運転中に iPhone を充電しながら使っているのでない限り現実的でない。)その次に、スクリーンの上で Skip「ボタン」を見つけなければならない。運転中にこれをするのは特に難しい。スクリーン上でその位置を示す触感のフィードバックがないからだ。その上、iPhone の画面を横向きモードにしていると、Skip ボタンが見える場所にない。

こうした問題のうちいくつかには回避方法が存在するけれども、それよりもやはり本物の iPod を使う方がずっと簡単だ。こんなことをここで言っても仕方がないが、私は自分のブログの記事でこの問題を議論して、その中で Apple は3ボタンの iPhone を作ってこの問題を解決すべきだと提言している。

Shawn King -- [Shawn は「Macintosh に特化したものでは最も人気あるインターネット放送」Your Mac Life のホスト兼製作責任者だ。Your Mac Life のウェブサイトで、毎週水曜日の西海岸時間 5:30 PM、東海岸時間 8:30 PM に番組がライブで聴ける。過去の番組のアーカイブもある。]

私が好きなところはブラウザだと断言できる。これまで私は Treo 650 と Blackberry 8700c を持っていたことがあるが、その「モバイルウェブ」のサーフィンにあっという間に嫌気がさしてしまった。でもこの iPhone のブラウザでは、RSS フィードを読むことから映画の上映時間をチェックしたり住所を調べたりすることまで、あらゆることに使っている。ある夜など、私がバーの出口の外に立っていると、どこからともなく一人の男が私に近寄ってきて、手にあの Crackberry を持ちながら、私に「イギリスの国コードを知ってますか?」と尋ねてきた。(知らない人からとてつもなく奇妙な質問を受けることもあるものだ。)私は「いや、でもちょっと待って...」と答えて、手早く Google して答を見つけて彼に教えてやると、彼は喜んでイギリスにいる友人に電話をかけていた。

Maps が便利だという意見には同意できない。だって、Google Maps は、私に交通渋滞の場所は教えてくれるくせに、それを避ける道順は教えてくれないのだから! 言っていることがお分かりだろうか? つまり、Google Maps は、私がどこへ行きたいか知っていて、どこが渋滞しているかも知っている。ならば、どうしてこいつは私がそれを突っ切って進みたいなどと思っているのか?

良くない点として、二つのことが気になる。まず、何かシンプルなことをしようとしている時に、あまりにもたくさんの「ボタン」が並んでいて閉口することがよくある。また、インターフェイスが首尾一貫していないところがあちこちにある。例えば、ブラウザでキーボードが使えるのは画面が横向きモードの時だけとか、Edit のようなよくあるボタンが、違ったアプリケーションでは違った場所にある、といった具合だ。

John Baxter -- [John は過去 12 年間、長い伝統ある ISP の OlympusNet でシステム管理者をしてきた。残念ながら、今の彼には Macintosh ソフトウェア開発に向けることのできる時間がない。]

私が iPhone で一番便利かつ予期せぬ機能だと思ったのは、家から離れた場所にいる時、あるいは週末でメインマシンを動かしていない時、そういう時でも IMAP 経由で会社の電子メールが見られることだ。でも、Maps アプリケーションについての意見にも賛成だ。これほどまでに便利に使えるとは私も思っていなかった。

でも、未読の到着 SMS メッセージについて iPhone が繰り返しサウンドを鳴らしてくれないのは、どうにもこうにも困ったものだ。私に届く SMS メッセージというのは、私たちのシステムに起こった問題を知らせる警告だ。この問題の部分的補償として、私はメッセージを SMS ([email protected]) に送る他に新たに Yahoo アカウントを作ってそちらにも同時に転送するようにしている。少なくともこれで、20 秒程度の時間差をもってサウンドが2回、聞けるわけだ。

Arlo Rose -- [Arlo は現在 Yahoo! で Entrepreneur in Residence として働き、次世代オープンプラットフォームの開発を続けている。Mac の世界で彼は Konfabulator をめぐる仕事で最もよく知られており、Konfabulator は Apple の Dashboard よりも以前にウィジェットという概念を持ち込んだものだった。]

私にとっての一番の驚きは、やはり Maps だ。リアルタイムで交通渋滞のオーバーレイが見られるというのは本当に助かるし、ビジネス用の電話番号や住所を調べる方法として使えるのも素晴らしい。ウェブブラウザと電話との統合も本当にうまく仕上がっている。

私にとって最大の厄介ごとは、基本的なテキスト編集機能が無いことだ。テキストを選択してカット・コピー・ペーストしたりもできないし、基本的なスペルチェッカーも無いというのは、私には堪えられない。テキストの大きな範囲を選択してそれを一気に消去したり、別の場所へ移動させたりもしたいが、それができない。

John Massengale -- [John は建築家であり、都市計画およびその教育の仕事もして、最近はノートルダム大学、マイアミ大学、Institute of Classical Architecture & Classical America(彼はここの理事でもある)などで講義をしている。彼はまた、Congress for the New Urbanism のニューヨーク支部の議長でもある。]

私はタッチスクリーンが大好きだ。このお陰でたくさんのことが本当に簡単にできる。コンタクト情報のリストにアクセス(私の古い携帯電話には Bluetooth があったが、それで同期がうまくできたことは一度もなかった)したり、異なった機能の間で切り替えたり、その他いろいろのことができる。タッチスクリーンこそ未来のラップトップ機に革命を起こすものだと私は思う。

第二の質問に答えると、私は iPhone にイライラさせられることなんかない。もちろんバグはいくつかあるが、Apple はちゃんと修正を加えてくれるだろう。もっと磨きをかけなければならないところもあるが、いずれそれは実現される。とにかくこれは、私がこれまで持った中で最高の電話機、PDA、ハンドヘルドのウェブブラウザだ。EDGE の速度でさえ、普通の場合は問題ない。

ただ、iPhone の機器の導入に際して Apple が大げさに騒ぎ立て過ぎたことは、私にはイライラの種だった。私の iPhone の調子が悪くなって Apple Store の店頭に持って行った時、その店員からこの iPhone は修理に出さなければならない、「ジーニアス」に面会の予約を取ってから9時間後に来なさい、と言われたのもひどかった。その時の問題は、Apple に電話をすることで解決した。電話をするとすぐに技術サポートに繋いでくれ、その技術サポートがすぐに問題を解決してくれた。送り返して新しい iPhone と交換する必要もなかった。

Chris Breen -- [Chris は Macworld の Senior Editor で、この雑誌の人気コラム(ヒントとトラブルシューティングの)Mac 911 を執筆している。彼は Macworld のポッドキャストやビデオポッドキャストのホストも務めている。また、MacNotables ポッドキャストにも、Scott Bourne の The iLife Zone と The Apple Phone Show にも参加している。Chris は、 Peachpit Press から出ている3冊の本“Secrets of the iPod”“The iPod and iTunes Pocket Guide”と“The iPhone Pocket Guide”の著者でもある。]

私が最近最もよく使っている機能は、驚くなかれ、Maps だ。私はハワイでの休暇から帰ってきたばかりだが、あちらでは毎日数回は Maps を使っていたと思う。レストランを探したり、ダイビングショップや、フィッシュマーケット、さらには映画館を見つけようと使ったこともあった。(わかってるよ、ハワイに来てまで映画を見に行くなんて完全に馬鹿げた考えだってことくらいはね。)

旅行の途中で、私は Hawaii MacNuts ユーザグループで講演をした。それは Big Island の Hilo 側にあった。ミーティング会場のハワイ大学 Hilo 校への道順は Google Maps で見ておいたのだが、印刷をすることはできなかったし、車を運転中ずっとラップトップ機を隣の座席に広げておく気にもなれなかった。そこで役に立ったのが iPhone だ。

出発地と目的地の住所を入れるだけで、iPhone はそこまでの詳しい道順を、すべての曲り角に至るまで順番に表示してくれた。(ただしここで注意。ハワイの通りの名前は本当に長くて、ほとんどが H か W か P で始まっている。iPhone のテキストの文字は小さくなりがちで、特に Journey 表示を使っていて地図が下の方に道順の説明が上の方に並ぶ時は字が小さい。運転中にこれと格闘していると、すぐに事故であの世行きということになりかねない。)

私が iPhone で一番イライラさせられるのはただ一点、アプリケーションの安定性だ。バージョン 1.0.1 にアップデートされるより前は、Safari が日常的にクラッシュしていた。特にブラウズ中のページにズームインするとクラッシュしがちだった。最新のファームウェアアップデートを施してからも、依然として不意に終了してしまうことがある。

Apple は、サードパーティのアプリケーションを許さない理由としてそれがこの電話機の安定性に悪影響を与えかねないことを挙げている。それは結構なことだ。でも、Apple 製のソフトウェアしか使えないというのならば、その代償として、少なくともそれらのアプリケーションは鉄壁であってほしい。でも現在のところ、そうなってはいない。


Twitter 転向者の告白

  文: Adam C. Engst <[email protected]>
  訳: Mark Nagata <nagata@kurims.kyoto-u.ac.jp>

今日、私はたっぷり心のこもった晩餐としてカラス(ガーリック、ローズマリーと共にローストしたもの)を食べている。ここに私は、さる 8 月の C4 カンファレンスに出席して正しい目線で見るように仕向けられて以来、Twitter というものがどんなに興味深くてすごく便利であるものかに気付くようになったことを、皆さんに告白したい。Twitter に対する私の最初の反応は、なんてくだらないんだ、というものだった。けれども、そういう見下したような私の意見は、すべての Twitter ユーザーからの投稿を表示する公開タイムラインを見てのものであり、また世界地図の上に Twitter ユーザーたちからのメッセージをプロットする Twittervision サービスを使っての印象に基づいたものだった。(2007-06-18 の記事“美しきものの姿と、空虚なるものの幻と”参照。)

正直言って、私は Twitter 自体にも責任の多くが帰せられるべきだと思う。人々に最大 140 文字のメッセージを書くことを促すために“What are you doing?”(今あなたは何してるの?)と問いかけているのだから。以前私が辛辣に指摘したように、大体においてあなたが今何をしているかなど誰も気にする人なんかいない。けれども、完璧にいつでもそうだというわけではない。あの性急で軽蔑的な文章を書いた時に私が見逃していたのは、あなたが今している事柄は、それが興味深く、面白く、あるいは何らかの意味で自分に関係あるものである限り、何人かの人たちは気にしていることもあり得るということだ。そして、私が見落としていたもう一つの重要なことは、それが興味深いか、面白いか、自分に関係あることかは、あなたが決めることではなくて、その人たち自身が決定できることなのだという事実だ。

あなたの巣を築く -- Twitter の使い方はこうだ。まず、Twitter のウェブサイト を訪れて、無料のアカウントにサインアップする。次に、あなたが「フォロー」したい、つまりその人の書いたメッセージ(これを“tweet”と呼ぶ)を読みたいと思うほどに興味深い人が誰であるかを、あなたが決めなければならない。説明のため、仮に私がその人物だったとしよう。そこで、あなたはまず 私の Twitter ページへ行って、ページのトップ近くにある私の写真の下の Follow ボタンをクリックする。これであなたは私をフォローすることになり、今後は、私が自分の生活の中でたまたま出くわした叡智の輝きの一つ一つを、あなたが読むことができるようになるわけだ。

ここで、あなたは私に似た他の人たちにも興味があったとしよう。私の Twitter ページの右側寄りに、私をフォローしている人たちすべての、たくさんの小さなアイコンが並んでいる。それらの上にマウスをかざすと、それぞれの名前がツールチップで表示される。誰かをクリックすると、その人の Twitter ページが開く。でも、Following リンクをクリックして、もっと大きな写真とそれぞれのフルネームが表示されたフルページを使う方がずっと簡単だ。そのページで、あなたは私をフォローしている人を誰でも手軽にフォローすることができる。これで、あっという間にあなたはクールな人々、例えば私の妻の Tonya や、Macworld の Jason Snell、天下無双の Andy Ihnatko、Daring Fireball の John Gruber、Ars Technica の Jacqui Cheng など、たくさんの人たちを追加できるのだ。

Twitter-Web-interface

これは必ずしも絶対というわけではないが、あなたがフォローした人たちの大部分は、あなたがその人をフォローしていることを知らせる電子メールメッセージを受け取ることになる。そして、もしもその人たちが私と同じように考えるならば、きっとその人たちはあなたがどんな人なのかと知りたがり、何回かのクリックであなたの Twitter ページにたどり着き、その結果もしもあなたの言っていることが興味深いと感じてもらえたら、その人たちもあなたをフォローすることだろう。(だから、あなたは他の人たちをフォローし始める前に、あなた自身の Twitter ページに何か鋭いコメントをいくつか書き込んで、人々を迎える用意をしておくのが良いだろう。見知らぬ人たちにフォローされるのが嫌ならば、あなたのアカウント設定でフォローの受け入れにはまずあなたの承認が必要となるよう設定しておくことができる。そうすればあなたの親しい友人や親戚以外の人たちをすべて思いとどまらせる効果があるだろう。)

ぺちゃくちゃ (twitter) 喋ろう -- では、あなたは何を喋る (twitter する) べきだろうか? それは、あるたった1つのシンプルな質問にあなたが答えられる限り、本当に何でもよい。その質問とは、誰かそれを聞いてくれる人がいるのか、ということだ。時には、その答は限定される。あなたの乗った飛行機が遅れたことを気にするのは、見知らぬ土地であなたと会う約束をしている同僚たちだけかもしれない。でも、それはそれでよいのだ。一方あなたが今歯を磨いていることを気にするのはあなたの歯科医くらいのもので、彼はたぶんあなたをフォローなんかしていないだろう。ただ、医療上の問題を抱えている私の友人で、家族が彼のことを心配しないようにと Twitter を使って家族に居所を伝えている人はいる。

本質的には、Twitter はブログの一形態だ。ただ、ブログの記事が 140 文字までに限られていて、読者たちがあなたの投稿を直ちに読むことが多いというだけだ。つまりこれは短時間スパンのマイクロ・ブログであって、伝統的なブログに比べてずっとずっと簡単にアップデートができるものだということだ。(Tonya が指摘していたように、一番注意しなければならないのはタイトルをよく考えて選ぶことだ。)あなたの書いた tweet は保存されるので、あなたも他の人たちも、いつでも前に戻って読むことができる。ただ現実的には、たいていの人はそんなことをしないと思う。Twitter は今この瞬間のものであって、オフラインにしていてその瞬間を見逃したら、それはそれだけのことだ。

何を twitter すべきか考えるためのヒントとして、Twitter の“What are you doing?”(今あなたは何してるの?)に代わるべき質問をいくつかここに提案してみたい:

この最後の質問は特に興味深い。Twitter のアカウントは、人々にだけでなく出版物にもリンクすることができるが、一方出版物はそれ自身の最新のストーリーをそれぞれに語るものだ。実例として、Twitter 上で TidBITSTake Control をフォローしてみて頂きたい。これらはいずれもそれほどお喋りではないが、私たちが新しい TidBITS 記事をポストする度に、あるいは何か重要な Take Control のニュースがある度に、それぞれのリンクの付いた tweet があなたに届く。クールじゃないか? 私が Twitter でフォローしている他の出版物を挙げれば、Ars Technica、TechMeme、それに New York Times の科学ニュースがある。これらはすべて私の Following リストに載っている。また、私たちのウェブサイトの左上隅の Get TidBITS via...(TidBITS の購読)セクションに Twitter アイコンが加わったこともお知らせしておこう。

ついでに言い添えれば、Guy Kawasaki の最新の事業の一つに Truemors というサイトがある。ここでは人々がそれぞれ素晴らしいと思ったことを 350 文字以内の短いコメントで投稿している。Truemors には公式な Twitter フィードはないようだが、Guy をフォローすれば(もちろん彼は私のリストにある)他の tweet と並んで彼が最も面白いと思った Truemors 記事の短いリストが入手できる。Truemors のすべてを欲しい人、あるいは RSS フィードを持つ他のサイトについて使いたい人には、 Twitterfeed というサービスがある。このサービスは RSS ポストを Twitter アカウントに送ってくれる。だから、あなたのフィードをすべて受け入れるための専用の Twitter アカウントを作って、それをフォローするようにしておけばよい。Twitterfeed はセットアップの作業がちょっと厄介だが、動作そのものはちゃんとしているし、実際私たちが TidBITS 記事を Twitter の TidBITS アカウントにポストするのもこの方法によっている。

Twitter の会話 -- たいていの tweet はあなたをフォローする人たち全般に向けたものだが、大きな例外が二つある。まず、tweet を一人の特定の人に向けて書いたり、誰か他の人が書いたことに対して返事を出したりすることができる。それには、その tweet の先頭にその相手のユーザ名と“@”を付ければよい。例えば“@adamengst And you moved from Seattle because Ithaca has better weather?”という tweet を書けば、私だけに送られる。もちろん、その相手があなたをフォローしていてもその tweet を読んでくれる保証はない(あなたをフォローしていない相手には届かないが、これは Twitter の挙動として正しいものではないと思う)のだが、ともあれ Twitter はそのメッセージの後に“in reply to”とユーザ名を追加する。それをクリックすれば、その返事の元となった tweet が読める。Twitter FAQ にはあなたがフォローしている人からの @ メッセージが読めるのはあなたがその相手の人をフォローしている場合に限られると書いてあるが、これは明らかに事実と反している。残念なことだ。だって、あなたがもともと読んでいなかった tweet への返事である @ メッセージは、ほぼ間違いなくあなたには興味ないものだろうから。

もう一つの特別なメッセージタイプは、直接メッセージだ。これは、メッセージの宛先として指定された人のみが読める。直接メッセージを送るには、そのメッセージの先頭に“d username”を付ければよい。例えば、私宛に直接メッセージを送りたければ“d adamengst Great article on Twitter!”のようにすればよい。あなたに宛てて書かれた直接メッセージを誰か他の人が見ることはなく、届いた直接メッセージはあなたのアカウントの Direct Messages ページ で見ることができる。そのページを訪れるのを忘れることもあるだろうから、Notices 環境設定で直接メッセージのテキストを Twitter があなたに電子メールで送ってくれるように設定しておくことをお勧めする。

拡がる Tweet たちの輪 -- ここまで書いてきたことは、すべてウェブで入手できることばかりだ。そして、それが Twitter の良い点の一つとも言える。つまり、どこからでも好きなウェブブラウザを使って利用できるということだ。でも、Twitter を使うベストの方法はウェブブラウザではない。Twitter が他の競合サービス、例えば Jaiku(ちょうど Google に買収されたばかりだ)や Pownce などと一線を画しているのは、独立のサービスが Twitter とともに働くことを可能にする Twitter のオープン API だ。例えば Twitterfeed が作られたのもそれを通じてであり、他にもたくさんのプログラムやサービスが Twitter とともに働いている。 すべてを網羅したリストTwitter Fan Wikiで読める。

たくさんある Macintosh 用の Twitter アプリケーションや Dashboard ウィジェット、その他のユーティリティなどについて悪く言う気など毛頭ないが、ここではそのうち最も人気の高いもの、 Twitterrific について書いておこう。Iconfactory の Craig Hockenberry による無料の Twitterrific は、Twitter で他の人たちをフォローしたり自分自身の tweet をポストしたりするためのエレガントな Macintosh インターフェイスを提供する。格好良くて使い易く、高度に設定可能となっている。けれども Twitterrific で最も重要な特徴は、これが無料の汎システム通知サービス Growl と統合されていることだ。私にとって、Twitterrific と Growl 無しでは、Twitter は役に立つというよりもむしろ面倒な存在になってしまうだろう。

そういうわけで、こうすればよい。まず、上記リンクから Twitterrific と Growl をダウンロードし、両方ともインストールする。最初に Twitterrific を起動させた時、Twitter アカウントにログインするようあなた求めてくる。(なぜかは分からないが、最初にウェブでログアウトするように言ってくる。)ウィンドウの一番下にあるレンチのアイコンをクリックして環境設定にアクセスし、そこで心ゆくまで調整ができる。Twitterrific は、自動的に Growl に自身を登録もしているのだと思う。Growl の設定はシステム環境設定からできる。(私はスクリーンの下の方から競り上がってくる Music Video 風のアラートが大好きだ。)

Twitterrific

いったんすべての設定が終わってすべてが起動すると(それぞれの環境設定で、Twitterrific と Growl の両方ともシステム起動時に自動的に起動させるよう設定しておくのがよい)Twitterrific にやってくる tweet はすべて Growl 経由であなたに通知される。これらの tweet は皆 140 文字以下なので、あなたが何をしている最中であるにせよ、そこから気を逸らされることなくほんの2・3秒で簡単に読める。私は、これが本当に魅力的なことだと思う。なぜなら、今や私はたくさんの RSS フィードを読む時間を確保することに困難を覚えているし、さらに悪いことに、もしもたまたま良いものに巡り会えば、ただでさえ浪費したくない時間をますます費やしてしまうからだ。Twitterrific と Growl の組み合わせが、単に友人たちや同僚たちからだけでなく追跡する必要のある出版物からの tweet もすべて報告してくれるお陰で、私は最小限の時間と努力でもって常に最新の知識を取り入れることができる。

Growl-tweet

SMS メッセージをサポートする携帯電話(iPhone も含む)から Twitter を使うこともできるが、私はそれを試したことがない。その主な理由は、外出中に tweet を読むためにわざわざ余分の費用を払う気にはなれないこと、また Mac の前にいない時には一般的に何かを twitter する必要を感じないことだ。ただ、よりモバイル好きの人たちならばこの統合を歓迎するかもしれない。特に無制限の SMS メッセージを含んだプランを使っている人たちはそうだろう。けれどもそういう人たちに対しては、特にあの「誰かそれを聞いてくれる人がいるのか」という質問を心に留めておくことをお勧めしたい。私の見たところでは、携帯電話から twitter している人たちにはだらだらと話し込んでしまう傾向があるようだ。

もしも iPhone を使っているのなら、SMS 料金を発生させることなく Twitter ストリームの最新のものに付いて行くことができる。Safari で PocketTweets を使えばよいのだ。これは新しい tweet が届く度に警告を発したりはしないが、ページを再描画させることで最新情報に更新できる。もちろん、そこから tweet を送ることもできる。

Twitter、高く飛翔す -- 多くのソーシャルネットワーキングサービスと同様、Twitter もネットワーク効果に依存している。私の場合も、私がフォローしたい人たちがこれを使うようになり、私が読みたいことを書いてくれるようになって初めて、これは私にとって興味深いものとなった。そして私が使い始めたからこそ、Tonya も使ってみる気になったのであり、いったん私と Tonya が Twitter を使ってこれを皆に推薦するようになれば、残りの TidBITS スタッフたちも試してみるようになった。今では、たとえ私が Jaiku や Pownce(どちらも現時点では招待された者しか参加を許されていない)を試してみようと思っても、そこには私がネットワークで結ばれたいと思うような人々がいないという問題が立ちはだかる。(もしも彼らが十分に賢いならば、Twitter とオープン API を用いて統合する方法を見つけることだろう。)

ここ数週間に、私は A-list のブロガーたち、例えば Robert Scoble や Dave Winer のような人たち が Twitter を大規模に使い始めるのを目にしてきた。また、Robert Scoble は彼にとって Twitter が既に「パーソナルブログ」の担い手の役割を引き継いだ形になっていると(Twitter 上で)発言している。彼ら二人を合わせればフォローする人の数は 9,000 人近くにのぼり、これはまさに Twitter がいかに人気を博しつつあるかを示す指標ともなっている。(対照的に、Robert Scoble は Jaiku ではたった 882 人からしかフォローされていないと言っており、私に至ってはこの文章を書いている時点で何とも情けない 289 人にしか Twitter でフォローされていない。)

ニュースの見出しが読めることと、接続しているブロガーたちからの tweet が読めることを組み合わせれば、Twitter こそが最新ニュースを見つけるための場所として最適のものとなったと言えるだろう。

問題は、今後 Twitter がこの勢いを保つことができるかどうか、それとも重みに耐えられず挫けてしまうかどうかだ。既に、サービスがダウンする事例が増えている。時には数分間も止まることがけっこう頻繁にある。私はこの記事を書いている最中に「作業中です!」ページを2度も目撃した。ただし、短時間の遅れは Twitterrific が私の目から隠してしまうことが多い。アップデートが1分に1回しか行なわれないからだ。(その頻度はあなたが設定できる。)Jaiku や Pownce ではもっと信頼性が高いと聞いているが、これらはまだ公開バージョンになっていないので、信頼性が難問題となるようなレベルにまでスケーリングを進める状況にはなっていないはずだ。

現時点では、これら競合相手のサービスは Twitter より機能も多く、Twitter に比べて一歩深く考え抜かれているのだろうと私は想像するが、その理由は単純で、彼らがより後発であって実世界のスケーリングの問題にまだ晒されていないというだけのことだ。Twitter の方もこれからますます意識を高めて、スケーリングの問題の解決と新機能の追加の両面を進めて行く必要がある。例えば Jaiku はスレッドによる会話を提供しているし、Pownce ではメッセージ、ファイル、リンク、さらにはイベントなども送信でき、人々がそれぞれの項目にコメントすることもできる。

Twitter に取り入れて欲しいと思うものの一つが、グループの概念だ。そのグループに宛てて送った tweet は、そのグループに属する他のメンバーたちにだけ見えるようにするのだ。従業員たちが今何をしているのかについてプレッシャーも低くバンド幅も低い方法で管理できる方法があれば喜んで飛びつくと言っている管理職たちを私は知っている。一方従業員たちも、状況レポートをたった 140 文字以内で書かなければいけないことは歓迎するだろう。

Google が Jaiku を買収したばかりだという事実にも触れておくべきだろう。Google は誰よりもスケーリングのやり方を知っているし、これを押し進めるための膨大なサーバとネットワーク容量を持っている。その上、Google は容易に Jaiku を Google の他の諸サービス、例えば Gmail や Google Docs などに、いろいろと興味深いやり方で統合できるだろう。けれども YouTube が Google Video に勝利を収めた(その結果 Google が YouTube を買収した)ように、Twitter には現在追い風となっているネットワーク効果が存在し、間違いさえ犯さなければ、Google が Jaiku で何をしようとも、一歩先を進み続けることができそうな気がする。けれども、もしも Google が Jaiku API を公開することで Twitterrific や Twitterfeed と似たサービスを可能にしたならば、またもしも Twitter がさらなる信頼性の問題に苦しむとか、機能合戦にあまりにも大きく後れを取るとかしたならば、Jaiku が首位の座を勝ち取る可能性もあるだろう。

そうは言うものの、現時点においては、Twitter が頂点に君臨していることは間違いない。そうして毎日私のためにその有用性を実証し続けている。おやおや、ちょうど今私がこの記事を書き終えようとしていた時、Twitterrific と Growl が私に知らせてきたのは、Glenn が TidBITS サイトに記事を出したので私がそれを読んで編集しなければならないということだ。ちょっと明日までそれをする暇がないかもしれないが、確かにそのことは私の頭に入れたので、これで簡単に私のスケジュールの中に時間を取るようにすることができる。


TidBITS Talk/15-Oct-07 のホットな話題

  文: Jeff Carlson <[email protected]>
  訳: Mark Nagata <nagata@kurims.kyoto-u.ac.jp>

ランニングやドライブのログを iPhone で -- これまで使っていた Treo を iPhone に買い替えた読者が、自動車の使用を追跡するために使えるウェブアプリケーションを探している。 (5 メッセージ)

Mac の市場シェア、全般に向上中 -- 大学のキャンパスで Mac の使用率が上がっているのを見てきたが、この傾向は必ずしも学生寮に限ったことではないようだ。ある読者が、技術関係のカンファレンス会場で Mac の数が増えていることを報告する。(1 メッセージ)

Apple Expo Paris 2007 探訪記 -- 最近パリで開かれた Apple Expo での体験談を書いた Joe Kissell の記事を読んで、同じ会場に出席していたある人が、このショウの規模について、出席者の男性と女性の数の不均衡について、彼女自身の印象を語る。 (1_メッセージ)

コンテクストメニューのほんのちょっとした問題 -- Finder のコンテクストメニューの“Open With”項目に、いくつかのアプリケーションの名前が重複して見えることはないか? こうすれば解決できる。 (3 メッセージ)

iPod touch でコンタクト項目にメモを付ける -- iPod touch は、iPhone とよく似ているところも多いが、基本的な機能で欠けているものもいくつかある。その一つが、コンタクト情報に付けるメモを編集できないことだ。 (3_メッセージ)

あなたのレシピを保存する ... 永遠に -- レシピ用プログラムを比較した Andy Affleck の記事は、重要な問題を提起した。これらのプログラムでは、そのデータを何らかの形で手軽に書き出して、50 年後にも読めるものとして保存しておくことができるだろうか? (3-メッセージ)

ソファにいながらにして iTunes を楽しむ -- あなたのコンピュータがどこに置いてあっても、いまや椅子に座ったままで iTunes を走らせることがほぼ可能になった。喜べ、怠け者たちよ! (3=メッセージ)

iSight に代わるもの? -- Apple は去年、単体型の iSight カメラを生産中止にしてしまった。では他にどんな選択肢があるのだろうか? (5_メッセージ)

OS X 10.4.10 上での Retrospect 動作速度 -- Apple の最新版の Mac OS X において Retrospect の動作速度が劇的に低下してしまうのは何が原因か? その答は、オペレーティングシステムのバージョンに問題があるのではなく、スキャンされるファイルの数にあるのかもしれない。(7 メッセージ)

Cornell 大学で (いや至る所で!) Mac の市場シェア上昇 -- Mac の数が増えている場所はいろいろあるが、いくつかの分野ではやはり安価な PC が普及していて Mac の人気はある程度を越えられないでいる。(3+メッセージ)

TidBITS 表示の調整にカスタム CSS を使う -- TidBITS ホームページの表示の変更について Jeff Carlson が書いたブログ記事に、ある CSS の専門家から助言が寄せられる。個人的なスタイルシートが正しいサイトに適用されることを保証するための、うまい方法がある。 (1-メッセージ)

古い PowerBook 667 で使える Wi-Fi カード -- もともと AirPort を内蔵していなかった古い PowerBook で Wi-Fi を使うにはどんな方法があるか? (6 メッセージ)

AT&T の "Pay as you Go" で iPhone を使う -- AT&T の Pay as You Go プランは、iPhone で2年間の独占契約を結ばずに済む回避策を提供する。これをうまく使えば、毎月の料金を一切支払わずに済む可能性もある!(3*メッセージ)

カタログを選んでカタログの山をなくす -- あなたの郵便受けは、いろいろなカタログやダイレクトメールなどで一杯では? あなたに届くこのようなジャンクメールの量を減らし、膨大な量の紙が浪費されるのを防ごう、と活動している団体がいくつかある。 (1=メッセージ)


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Valid XHTML 1.0! , Let iCab smile , Another HTML-lint gateway 日本語版最終更新:2007年 10月 21日 日曜日, S. HOSOKAWA