Apple の Q3 2022 はパンデミックの最も暗い時期以来の四半期決算としては最悪のものであったが、それでも Apple はいくつかの記録を更新するとともに予想を上回る結果を出した。Adam Engst は Slack が無料アカウントに新たに加えた制約を検討するとともに、この会社がそれに踏み切った動機を推測する。それからもう一つ、今週は読者の皆さんにアンケートを一つ: 皆さんは、iOS 15、iPadOS 15、macOS 12 Monterey で導入されたさまざまの新機能のうちで、どの機能を実際に使っているだろうか? ぜひともこのアンケートに参加して、皆さんの声を届けて頂きたい。今週注目すべき Mac アプリのリリースは SoundSource 5.5.4、BusyContacts 2022.3.1、HoudahGeo 6.3 だ。
Adam と私は、最近 Apple が昨年 iOS 15, iPadOS 15, そして macOS 12 Monterey で導入した色々な新機能について話をしていて、疑問を抱いた:それ等の新機能は出てからほぼ一年になるが、一体全体どれ位の人が実際にそれ等を使っているのであろうか? 我々は、John Gruber の Twitter での意識調査で Apple が昨年追加した Safari Tab Groups を回答者の殆どが使ったことがないと回答していたことに触発された。
我々は、昨年のオペレーティングシステムのアップグレードで Apple が導入したトップ 20 の機能を集めてみたので、皆さんの声を聞かせて欲しい:皆さんはこれらの機能を使いますか? もし使うなら、よく使いますか、それともたまにですか? どうか我々のアンケートに 8 August 2022 迄に回答して欲しい。我々は、直ぐに評価して、結果を報告する積もりである。
トップ 20 OS 機能
去年のアップグレードサイクルの中から我々が取り上げた 20 の新機能の簡単な説明を以下に記す。並べた順序に特別な意味はないが、アンケートの質問の順序には沿っているので、記憶を呼び起こすための説明が必要であれば参考にして欲しい。
- Focus は、仕事や読書と言った異なる場面のためにカスタム Do Not Disturb モードを作らせてくれる。(投票する時、この新しいカスタムオプションだけを対象として欲しい。Apple が Focus に統合した積年の Do Not Disturb, Do Not Disturb While Driving, そして Sleep モードのことではない。)
- SharePlay は、FaceTime を通して他の人達と AV メディアを見させてくれる。
- Safari Tab Groups は、色々な目的のために一群のタブを一緒にする。例えば、家探しのためのものとか、新しいテレビを検討するためのものとかである。
- Safari での音声検索 は、iPhone や iPad 上でタイプすること無しに検索語や URL を話すことで Web をナビゲートさせてくれる。
- Live Text は、写真やその他の画像の中のテキストを判読するので、他のテキストと同様それを選びそしてコピー出来る。
- Visual Lookup は、写真の中の、美術、花、ランドマーク、ペット、そして植物の様なオブジェクトを認識する。
- Hide My Email は、一つの iCloud+ 機能で、スパムを減らすため使い捨てのメールアドレスを作成させてくれる。
- App Privacy Report は、アプリやウェブサイトがどの様にあなたのデータを使っているかの概要を提供する。
- Cloud Private Relay は、もう一つの iCloud+ 機能で、あなたのプライバシーを守るため Safari ブラウジングを二つの暗号化されたプロキシを通してルートする。
- Shared with You は、メッセージを通して送られたリンクを Apple アプリ Music, News, Photos, Podcasts, Safari, そして TV の中に表示する。
- FaceTime リンク は、FaceTime 通話へのリンクを作らせてくれるので、そのリンクを持つ人は誰でも参加出来る。この機能は又通話リンクをカレンダーイベントに埋め込ませてくれる。
- Universal Control は、一つのキーボードとポインティング機器を使って複数の Mac や iPad を制御させてくれる。
- Tags in Notes は、メモに対するもう一つのレベルの組織を提供する。
- QuickNote は iPad や Mac 上にあり、手早いメモやスケッチのために Notes を立ち上げる早道を提供する。
- AirPlay to Mac は、iPhone や iPad から Mac 画面にオーディオやビデオを AirPlay させてくれる。
- Shortcuts は、iOS や iPadOS に対しては前からあって、オートメーションや小プログラムを作れるようにしてくれるが、Mac に登場したのは Monterey が最初だった (これに対しては、Shortcuts 全般に対して投票して欲しい、Mac だけに限定せずに。)
- Legacy Contacts は、死後あなたの Apple アカウントにあるデータへのアクセスを持つべき人達を指名させてくれる。(Legacy Contact を自分のために設定したことがありそして他の人の Legacy Contact であるのであれば "Frequently" と、もし上記の二つの内の一つだけが当て嵌まるのであれば "Occasionally" と、そして全く使ったことがなければ "Never" と投票して欲しい。)
- Memories は Photos では新しくないが、Apple はそれを iOS 15, iPadOS 15, そして Monterey で作り替え、新しいタイプ、ルック、トランジション、そして対話型のインターフェースを付け加えた。(繰り返しになるが、ここでは Memories 全般に投票して欲しい、強化点だけではなく。)
- システム全般に亘る翻訳 は Monterey で初登場したものだが、単語を Control-クリックすることでそれを他の言語に翻訳してくれる。
- 全画面メニューバー: これが Monterey に付け加えれたことで、アプリが全画面モードにある時にメニューバーを常時表示するアプションが与えられた。そうでないと、ポインターを画面のトップに持って行かないとそれは表示されない。
我々のアンケートに回答してくれてありがとう - 皆さんの答えは、誇大広告から現実を切り出す手助けになるはずである。
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インフレ進行の最後の最後、そして米国が 辞書が定義する景気後退に入ったばかりの所での報告として、Apple は 2022 年第三四半期に対する業績を発表した:純利益 $19.44 billion (希薄化後一株当り $1.20) そして売上げ $83.0 billion である。同社の売上げは前年同期比 2% の上昇であったが、利益は 10% 減少した ("Apple の Q3 2021:荒稼ぎ続く" 27 July 2021 参照)。
長いことそうであった様に、iPhone が Apple の売上げチャートを支配したが、Apple の Q3 2022 総売上げの半分をやや下回った。Apple の急速に伸びている Services 部門は今や Apple 事業の四分の一近くを占めている。
全世界の売上げは功罪入り交じっている。Asia/Pacific 地域は卓越していて、売上げは 14% 増えたが、Japan は 15.7% 下落で好調の足を引っ張った。Americas も Europe も売上げは記録を更新したが - それぞれ 4.5% と 1.8% - China の売上げは 1.1% とわずかに減少した。
最後に、2週間の雇用凍結をしている Google とは違い、Apple は未だ雇用を続けているが、CEO Tim Cook 曰く。Apple は "より慎重になっている" と言う。
iPhone
iPhone は Apple の二つの成長製品群の一つで、販売は昨年の June 四半期より 2.77% 伸び、売上げは $40.7 billion に達した。大局的に見ると、iPhone 販売は Q3 2021 に前年比で大幅な跳躍を見せ、そして過去二年間の第三四半期は、我々が 2012 年に iPhone の売上げを追跡し始めて以来最も好調な時期となっている。
iPad
iPad 販売は昨年比で 1.95% 減少したが、売上げはそれでも $7.2 billion に達した。 iPad の Q3 の販売記録は今でも 2012 年の $9.2 billion のままである - 下記の我々のチャートの最初の年。売上げは、翌年急激に落ちて $6.4 billion となり、その後も落ち続けて 2015 年には $4.5 billion となり、その流れはその後数年続いた。しかし、iPad 販売は Q3 2020 に急反転し、それ以来その堅調さを保ってきたので、前年比でのこの小さな落ち込みはあるが、この製品群の短期的な供給問題を考慮しても好調さは続くとみられる。
Mac
Mac 販売は 10.36% 急降下したが、Cook は主として供給上の制約のせいで、新しい機器の入荷待ちは数週間から数ヶ月にまで延びており、また外国為替の問題もこの落ち込みに寄与したとした。しかし、Mac の話は短期的には悲観的に見えるかも知れないが、Mac 販売の半分以上が初めてのユーザーの元に行った。それと共に、新しい M2 Mac の出荷も始まっており、Mac の販売見込みは明るそうに見える。下記に見られる様に、落ち込んではいるが、Mac の Q3 2022 は Q3 2020 の販売とほぼ同じであり、販売額で言えば、ここ3年はこれ迄で Mac の一番強い時期となっている。
Services
Services 部門は - 供給問題には左右されない - 今四半期における Apple の成長頭で、iCloud+, Apple TV+, そして Apple Music のお陰で 12.11% 伸びた。Apple のサービス願望は留まることを知らないようで - 四半期投資家電話会談の中で、CFO Luca Maestri はデジタル広告を "弱さのポケット" と呼び、Apple は利益で満たしたいと願っているとした。批評家からの賞賛は直接的には売上げにつながらないが、Tim Cook は嬉しそうに Apple TV+ 番組が 52 の Emmy ノミネーションを獲得したと言った。我々は、Apple が未だに Services 売上げを iCloud Time Machine サービスで強化しようとしていないことに驚愕している。それは iCloud+ 定期購読の様なものを必要とするであろう ("将来の Apple オペレーティングシステムに対する5つの改善策" 19 May 2022 参照)。
Wearables
wearables 部門は - Apple Watch, AirPods, Beats 製品、そして各種のアクセサリを含む - 7.87% 下落した。Apple Watch はこの部門の中では好調で、購入者の3分の2はこの機器を初めて手にした。Q3 2022 Wearables 業績は、比較的強かった Q3 2020 よりも上回っている。
Cook が言う "世界的な苦境の時" にあって、Apple はアナリストの予測を上回り、株価は時間外取引で上昇した。"今四半期は我々の回復力と楽観主義の反映であった" と彼は言った。同社が Q4 でどんな数字を出すのか楽しみである。
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Slack は大小さまざまの組織で利用されているグループ・コミュニケーション・サービスだが、2022 年 9 月 1 日をもって料金を値上げするとともに、無料アカウントにおける制約を変更すると発表した。
現時点では、Slack の Pro プランの料金は年払いの場合アクティブなユーザー1人当たり月額 $6.67、月ごとの支払いの場合はアクティブなユーザー1人当たり月額 $8 となっているが、9 月以降はそれぞれ $7.25 と $8.75 に、8 から 9% の値上がりとなる。Slack がサプライチェーンの問題や原材料価格の高騰に影響されているとは思いにくいが、従業員の雇用競争、インフレ、そしてまだ宣言は出ていないものの景気後退が、給与やその他のコストを押し上げていることに疑いの余地はない。それは仕方のないことだ。
この記事ではそのことよりも、Slack が無料プランに施そうとしている変更点について注目したい。現時点では、無料チームは時系列順で最近の 10,000 通までのメッセージを読むことができ、最近の 5 GB までのファイルにアクセスできる。(これに対して Pro プランではメッセージに制限がなく、ファイルはユーザーあたり 10 GB までとなっている。) 無料プランでは最大 10 個までのアプリに接続でき (Pro プランでは無制限統合)、1対1のビデオ通話が可能 (Pro プランでは最大 15 名までの人々とグループ通話が可能) となっている。ところがこの 9 月からは、無料プランでは最大たった 90 日間までのメッセージとファイルに個数やサイズに関係なくアクセスできるという制約に変更される。また、無料アカウントのユーザーはオーディオとビデオのクリップを共有することもできる。
この変更を読んで、私は直感的に嫌だなと思った。私は 3 つの無料 Slack チームを管理している。TidBITS 執筆者たちのために 1 つ、公開の SlackBITS 議論のために 1 つ、それから家族のために 1 つだ。(2019 年 2 月 12 日の記事“Facebook にうんざりしたら、家族で Slack に引っ越そう”参照。) 私が受けた印象は、3 つのチームのいずれもトラフィックが少ないので、この変更によって多くの古いメッセージやファイルへのアクセスを失うのだろうという気がした。そう思ったのは私だけでなく、TidBITS Talk にも SlackBITS にも同意見のコメントが寄せられた。それは、Dropbox が無料の Basic アカウントでたった 3 個のデバイスのみにアクセスを制限した際に感じたものと同じ印象であった。4 台以上のデバイスを使っている人にとってこれは問題で、デスクトップ Mac とラップトップ Mac、加えて iPhone と iPad があれば簡単に 4 台になってしまう。(2019 年 3 月 14 日の記事“Dropbox、無料のアカウントを3台までに制限”参照。)
しかしながら、この変更が Slack 使用に影響を与えるだろうし Slack は無料チームを有料チームに転換させようと企んでいるのだという自分の思い込みをよく検討してみたところ、当初感じた苛立たしさは実は的外れのものだったと分かった。Slack の発表を見て私と同じ印象を受けた人にも、ひょっとするとこれから述べる議論が苛立ちを和らげる効果を持つかもしれない。また、そうでなかった人にも別の選択肢は常に存在している。
Slack 内での検索
自らに問うてみるべき最も重要な質問は、「自分は 90 日より古いメッセージやファイルを頻繁に検索しているだろうか」という問いだ。実際のところ、この問いは2つの部分に分けることができる。そもそも Slack で検索をしているのかという問いと、もしそうなら古いメッセージやファイルが対象になることがあるのかという問いだ。
正直言って、私自身は Slack で最後に検索をしたのがいつだったかさえ思い出せない。これは私のチームについても、他のどの公開チームについても言える。それには2つの理由がある:
- Slack は、その場でやり取りする形式張らない議論を推奨する。私は自分の 3 つのチームですべてを読んでいるけれども、その議論はざっくばらんなものであって、グループの履歴を辿ってスクロールして戻ろうなどと思いもしないし、ましてや検索しようとは思わない。Slack は川の流れであり、湖ではない。
- Slack のシンプルな検索は確かに動作するし、かなりパワフルな検索フィルターも備えている。けれども大多数の Slack 投稿はごく短いもので、何かについて誰が発言したかとか、それがいつ発言されたかなど覚えていられない。例えて言えば、特定の木の枝が川を流れて行くのに気付いた時期を覚えていられないようなものだ。私が高度な検索を走らせるとすれば、一番考えられるのは "In" フィルターだ。これは、特定のチャンネルまたは会話に検索対象を絞るためのものだ。
だからと言って Slack の検索が役に立たないということではない。過去のメッセージやファイルを見つけられることが重要であるチームは間違いなく現実に多数あると思う。でも、検索があまり重要でないチームが多いということだけは認めねばなるまい。
仮に、あなたにとって検索が重要だったとしよう。さらに言えば、ごく最近のものでないものを探してメッセージをスクロールして戻ることが重要だっとも仮定してみよう。その場合にさきほど述べた2つ目の問いが生じる。90 日より古いメッセージやファイルを探しているのかどうかという問いだ。私の場合、過去の会話の中から詳細を見つけ出そうとするなら、それはせいぜい最近数週間の範囲内だろうと思う。30 日前、あるいは 60 日前にチームが何を議論していたかなど、私なら思いもしないし、ましてや 90 日前ならなおさらだ。だからと言って現在の状況における検索がずっと古いメッセージやファイルを出してくることが起こらないとは言っていない。ただ、私自身が Slack の中で何が起こっているかを巡って日付に関する内的認知をそれほど持っていないと言っているだけだ。
Slack の中で何が起こっているかで私が曖昧な態度であり続ける理由の一つは、私のチームでは 10,000 通のメッセージと 5 GB のファイルの制約があるという事実を知っているからだ。どのチームでどの程度早くこの制約にかかるかを知る方法がないので、自然と私は Slack を「つかの間の儚い存在」とみなすようになった。その点が、いつでも Gmail アーカイブ全体を検索できると分かっている電子メールとの根本的な違いだ。同様に、チームでファイルを共有する際には、私たちはいつも Slack を単なる転送の手段だとみなしていて、アーカイブ用の媒体とは思っていない。誰かが Slack で私にファイルを送ってくると、私はいつもそのファイルを Finder に保存するか、Photos に読み込むか、あるいは他の手段でローカルなファイルを作成している。
でもそれは私だけのことかもしれない。私は無料 Slack アカウントをアーカイブ用のソリューションとしてお奨めしようとは思わない。メッセージもファイルも、いずれはアクセスできなくなると分かっているからだ。でも、違う考え方をする人もいるかもしれない。そういう人は、きっと今回の発表で心配になったり落胆したりすることだろう。
Slack の側の動機
次に私が思い込んだのは、Slack はできるだけ多くの無料チームを有料レベルへ押し出そうと考えて今回の変更をしたのだろうということであった。Slack は「現在アクティブな無料チームの大多数では、新しい 90 日間の制約に変更されたことによって、従来の制約に比べてメッセージ履歴のより多くの部分にアクセスできるようになります」と述べたが、イライラした気持ちの私にはこの言葉が単なる正当化に聞こえて、改善とは思えなかった。確かに 51% のチームにはそうなのかもしれないが、残りの私たちはどうなるのか、と私は思った。どっちみちこれはお金のためのものじゃないか、そうだろう?
けれどもいろいろな可能性を考えてみた結果、Slack の今回の変更が既存のユーザーからより多くのお金を取り込むことになるとも思えないし、リソース使用が減ってお金の節約になるとも思えないと私は判断するに至った。これに関して、現存するチームは3つの種類のどれかに属している:
- 大規模または小規模で、履歴の必要がない: チームの規模に関係なく (従って無料から有料へ移行する場合のコストにも関係なく)、古いメッセージやファイルへのアクセスが重要でないのならば、料金を支払い始めたいと思う誘因は存在していない。同じ理由で、そのチームが競合製品に乗り換えようと思う理由もない。だから、そのまま Slack が彼らの必要に応えられる。
- 大規模で、履歴アクセスの必要がある: 90 日間の履歴にアクセス可能になればアクティブな無料チームがより多くのメッセージにアクセスできるようになるという Slack の主張を額面通りに受け取るならば、古いメッセージへのアクセスを必要とする大規模な無料チームは実際問題として有料プランに切り替えようとは思わないだろう。同じ理由で、Slack を完全に捨て去りたいと思うこともないだろう。
- 小規模で、履歴アクセスの必要がある: 小規模のチームで検索や非常に古いメッセージやファイルへのアクセスを必要とするところは、変更によって実際に困ることになるだろう。毎年 10,000 通のメッセージを発生しファイルは 5 GB より少ないチームならば、新しい制約でたった 90 日分しかない履歴になるよりも一年分の履歴の方を望むだろう。そのようなチームならば確かに Pro プランへアップグレードしたい動機を持っているかもしれない。ただ、たとえ彼らがアップグレードしたとしても、Slack の財政事情に大きな影響を与えることはないだろう。小規模なチームはあまり多くのユーザーを持っていないからだ。同じ理由で、たとえ彼らが不満を抱いて去ったとしても、Slack はそれらのチームにリソースを割くことはなくなるけれども、そこに関係するデータ量はごくわずかなので Slack にとってそれほど影響はないだろう。
そこで考えを変えた私は、今は Slack の報道発表を信じたい気持ちに傾いている。そこには「無料購読のやり方を更新しようとするのは、できる限りユーザーが手軽に新機能を試せるようにという考え方からです」そして「また、私たちはできる限り購読の制約を単純化しようとしています」と書かれている。今回の変更によって、上で述べた論拠に基づけば、無料レベルは今後も大体において従来と同等のサービスを提供することになる一方で、従来よりも効率的に新規ユーザーを呼び込めるようになるかもしれない。
そして、それこそが重要な点だ。忘れてならないのは、Slack の無料レベルが何よりマーケティングの手段であるという事実だ。Slack は、親会社の Salesforce が出している多種多様なビジネスツールの一部であって、Cisco、Google、Microsoft、またはその他のより専門化した会社を相手に有料ビジネス顧客の獲得を巡って競争を繰り広げている。Slack をより簡単に使用できるものにすることで、マーケティングと売り上げに良い影響があるかもしれない。これから無料の Slack チームを作成しようかと考えている人にとっては、メッセージ 10,000 通、ファイル 5 GB までという条件よりも、一律 90 日までの履歴の方がずっと概念化しやすい。
私はもう何年もの間 Slack を使ってきたが、自分のチームがどれだけの個数のメッセージを運んだかとか、ファイルがどれだけのストレージ容量を占めたかとか、私は全く知らなかった。この記事を書くために調べ物をしていて、好奇心から私はどうすれば自分のチームでそういう数を調べられるのだろうと思って探してみた。第2カラムにある無料チームの名前をクリックすると、開いたメニューの中にメッセージの総数が表示される。
それから Tools > Analytics を選ぶと、ブラウザの中でページが開いて統計情報が表示される。ただ、すべてのチームにそういうアクセスが許されるとは限らないかもしれない。ご覧の通り、私の TidBITS チームは全期間を通算して 208,040 通のメッセージを生成したが、ファイルはたった 5 GB しかなかった。もっと意味のある情報として、私たちは過去 30 日間に 1356 通のメッセージを生成したが、それと同等の率だとすれば 90 日間でせいぜい 4000 通を少し超えた程度にしかならない。
つまり、私たちは新しいやり方では損をすることになる。SlackBITS チームや私の家族チームではさらにもっと数が少ないのでメッセージとファイルの履歴でもっと不利だろう。TidBITS チームで大して過去を振り返らないのは良いことだ。もしそれが必要だったとすれば、Take Control の時代から残っている 20 人のユーザーを除外したとしても、月額 $72.50、つまり年額 $870 を払わなければならない。古いメッセージやファイルを見つけられることの対価としては高過ぎる。
無料プランから有料プランに切り替えた場合、Slack が即座に古いメッセージやファイルを復元してくれることは言っておくべきだろう。Slack は決してそれらを削除した訳ではない。無料プランで上限を超えた分は、単に隠されるだけだ。だから、もし Slack を去ろうと思うならば、自分ですべてを削除することができるはずだ。Slack の1か月の料金として $8 を支払えば自分のコンテンツをすべて書き出せる。そのコンテンツを別のサービスにロードすることができるか否かはまた別の問題だが、Slack から書き出したものを読み込む機能に対応している競合サービスは多い。
Slack に代わる選択肢
Slack にはもう愛想が尽きた、90 日より古いメッセージやファイルを見つけられないのは困ると思う人は、データを書き出して船を乗り換えることができる。代替として使える製品は山のようにあって、その多くが無料プランを提供しており、無制限のメッセージングや履歴検索を提供しているものも多い。聞いたところによれば、無料プランを脱却した Slack ワークグループの多くが Discord に移ったらしい。Discord はもともとゲーマーや "オタク" のために作られたものだが、その後成熟して、より広く使われるようになった。これは完全に無料で、唯一の有料アドオンとして月額 $9.99 の Nitro プランというものはあるけれども Slack から移行してきた人たちの大多数にとっては何の意味もないものだ。
他にも選択肢はたくさんあるし、それらはお互いにあまりにも似通っているので (少なくとも Slack の無料プランと比べられる部分では似ているので)、詳細なリストを作るまでもないと思う。この Brave 検索で見つかる記事のいくつかに目を通せばいくらでも出てくる。例えば Bitrix24、Chanty、Fleep、Flock、Jandi、Microsoft TeamsMissive、RingCentral、Troop Messenger、Twist、Zulip といった具合だ。気に入ったツールがあれば、まずそれが Slack から書き出したデータを読み込めるかどうか調べてみるのがよいだろう。
無料サービスに何を期待するべきか?
最後に、無料サービスのユーザーはどんな権利を持っているのだろうかと私は考えてしまった。そもそも無料ユーザーに権利はあるのだろうか? フリーミアムのビジネスモデルは今やインターネットとアプリの経済における中心的存在だが、無料サービスのユーザーたちがそのサービスに肩入れしている見返りとして何らかの権利を持っていると感じるのは正当なことだろう。私はまさにそのようなユーザーの一人だ。Apple、Dropbox、Google、Slack、その他数多くの会社が重要なサービスを私に無料で提供しているけれども、私としてはそれらの会社に何らかのものを期待している。
それは理に適ったことなのか? たぶんそうだと思うが? 少なくとも、無料サービスにサインアップする際には暗黙の契約がそこに存在しており、誰かに約束を破られればがっかりするのが理に適っているのと同程度には、無料サービスが私たちの気に入らない風に変われば不満に思ってよいだろう。けれどもお金のやり取りがない以上、問題のその会社が有料サービスのユーザーに対するものと同程度の責任を無料サービスのユーザーに対して持っていると論じるのは無理というものだろう。
ならばもう一度問いたい、有料サービスのユーザーの方は、現実にどんな権利を持っているのか? 確かに、彼らは苦情を述べることのできるモラル的優位を持っているし、サービスが提供されなければ訴訟でも優位に立てるだろう。けれども有料サービスのユーザーにしたところで、すべてが約束通りに実行され悪い方には変更されないという保証はどこにもない。現実に存在するのは、こちらがどれだけ支払っているかに関係なく、自らそこを去って別のところへ行く自由だ。そして当然ながら、この現代世界においては、オンラインに苦情を書き立てて否定的な広告効果を狙うやり方もある程度の結果を生む。
Slack が無料プランに変更を加えたのは完全に無害な動機によるものであって、よりアクティブな無料チームを増やすために有効であり、Slack の利用を考慮している人たちにとってシンプルになるものであるのかもしれないが、それでもやはりこれは判断の誤りであった。少なくとも、既存の無料チームには従来の制約のままにするか新しい制約に移行するかの選択の自由を与えることができたはずだ。確かにそのためには多大な作業が必要だろうが、既存のユーザーの気分を害することがないという良い効果があったはずだ。少なくとも、現時点で Slack に対して、今すぐ使うのを止めるほどではないけれども、不満を感じるようになった一部の人たちはいるのだから。
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