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#1457: 新型 iPad、Dropbox が無料アカウントを制限、CorelDRAW が Mac に復帰、Mojave の Preview に不満、WWDC の開催日発表

Apple が WWDC 2019 の開催日を発表した。6 月 3 日から 7 日まで、カレンダーに印をつけておこう。次世代の Apple の各種オペレーティングシステムについて学べる場となるはずだ。また Apple は2機種の新型 iPad を静かにリリースした。Apple Pencil に対応した第五世代の iPad mini と、10.5 インチ iPad Pro に手を加えて作った第三世代 iPad Air だ。他のニュースとしては、ファイル同期サービス Dropbox が無料ユーザーが使えるデバイス数を一度に 3 台までに制限し、CorelDRAW が 18 年間の不在を経て Mac への復帰を果たした。新しい CorelDRAW はその値段に見合った価値があるだろうか? Adam Engst は、Mac の Preview アプリの最新版での変更点が役にも立たない変更かそれともバグかのどちらかであることを嘆く。最後に、ExtraBITS 記事で注目すべき Apple と Spotify の独占禁止論争を取り上げている。今週注目すべき Mac アプリのリリースは Skype 8.41 と Default Folder X 5.3.5 だ

Josh Centers  訳: Mark Nagata   

WWDC 2019 は 6 月 3 日から 6 月 7 日まで開催

Apple が第 30 回の Worldwide Developers Conference (WWDC) の開催日程を発表した。今年は 6 月 3 日から 6 月 7 日まで、San Jose の McEnery Convention Center にて開催される。

Apple は今回もまた参加チケットを無作為の抽出プロセスによる抽選で発行する。応募するには今から 2019 年 3 月 20 日 5 PM PDT までに WWDC ウェブサイトにて登録する必要がある。チケットの価格は一枚 $1599 で、毎日の昼食、飲み物、スナックが含まれる。最大 350 名分の学生奨学金が用意されており、選ばれた学生は無料で参加できる。学生が奨学金に応募するには、自分の創造力を示す Swift playground で 3 分間で体験できるものを提出しなければならない。小さな子供を持つ開発者のために、Apple は今回も 12 歳またはそれ以下の子供向けに無料の保育を提供する (去年は 8 歳以下が対象であった) が、定員はある。

WWDC に隣接するイベントについて私たちはまだ何も聞いていないが、今回もいくつかのイベントが期待できると思う。情報が入り次第私たちの記事“The Top Conferences for Mac and iOS Professionals in 2019”を継続的に更新するつもりなので、どうぞその記事をチェックし続けて頂きたい。

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Adam Engst  訳: 亀岡孝仁  

Apple、新型 iPad mini と iPad Air を静かにリリース

Apple は私の母の日を良いものにしてくれた。と言うのも、アップデートされ近代的な仕様となった iPad mini をリリースしたからだ。母の iPad mini 2 は、最早彼女の望むアプリ全部を走らせられなくなっているが、だからと言って、September 2015 以降全くアップデートされていない iPad mini 4 を買う気にもなれないでいた。Apple はまた、新しい 10.5-inch iPad Air も発表したが、これはもう廃版となっている 10.5-inch iPad Pro と気味が悪くなるほどよく似ている。違いは、カメラの能力が落とされていることと価格が安いことである。

同社は、これらの発表を報道発表で行なったが、特別イベントに値する程のニュース性はないと見做し、そして噂で持ちきりの Apple のビデオ購読サービスに焦点を当てると予想されている来るべき特別イベントに集中するのを妨げたくなかったのであろう ("Apple Music を Apple が改善できる四つの方法" 11 March 2019 参照)。現実的に言って、これらの発表を最小限に留めたのは正しい判断であった - 新型 iPad mini はとても歓迎出来るものだが、単に遅れを取り戻すだけのものだし、新しい iPad Air は昔の 10.5-inch iPad Pro の仕様を iPad 製品群により適する様に手を入れただけのものである。

ただ一つ小さな欠点がある? iPad mini と iPad Air の名前に何もつけずにそのまま使うことで、昨年の第六世代 iPad の時と同様、Apple は、所持しているものは、或いは話題にしているものはどの iPad モデルなのか把握するのを更に難しくした。そして、Apple Pencil のことも言うまでもない。しかし、これは何も目新しい話ではない - Apple の製品名称付けが意味を成したことなどこれまで殆どない。これらは正式には、第五世代 iPad mini と第三世代 iPad Air となる。

第五世代 iPad mini、A12 Bionic チップと Apple Pencil サポートを得る

iPad mini 4 の上に3年以上座ったままの後、Apple はようやく、iPad mini ファンが何年もの間待ち焦がれてきたことを現実のものとした - 同社は、この小型の iPad を近代的仕様水準にしながら、同じフォームファクターと工業デザインを保ち、Home ボタンと Touch ID は残された。Apple はまた Apple Pencil サポートも追加し、この機能は全ての iPad 製品群に拡張された。

Photo of an iPad mini with Apple Pencil

この第五世代 iPad mini は、その核に最新の A12 Bionic チップを搭載しており、Apple によると、それは iPad mini 4 の A8 チップよりも3倍速く、そして9倍高速のグラフィックスを提供するという。2018 年の第六世代 iPad の様に、この新型 iPad mini はまた $99 の第一世代 Apple Pencil をサポートするが、第二世代のモデルには対応せず、こちらは 2018 年の iPad Pro モデルとしか働かない。

Apple はまた、iPad mini の 7.9-inch Retina ディスプレイの解像度は以前のモデルと同じ 2048 by 1536 だが、25% 明るいと言っている。それは今や広色域ディスプレイ (P3) となり、Apple の True Tone 技術もサポートする。この技術は、周辺の光に対応してディスプレイが色温度を調整することを可能にする。

セルラーモデルの iPad mini は今や、追加の LTE バンドを使ってギガビット級の LTE 接続をサポートする。小さな混乱が一つある:仕様ページには "Nano-SIM (Apple SIM をサポートしている)" と "eSIM" の両方を挙げているが、Apple は、別のチャートでは iPad mini は eSIM しかサポートしないと言っている - 我々は Apple から確認を得ようと試みている。新型 iPad mini はまた Bluetooth 5.0 をサポートする。iPad mini 4 は Bluetooth 4.2 であった。

iPad mini のカメラは以前と同じ基本性能のままだが - 背面カメラは 8 megapixel で、正面の FaceTime HD カメラは 7 megapixel である - どちらもビデオを 1080p、毎秒 30 フレームで撮れる。以前の FaceTime HD カメラは 720p ビデオに限定されていた。

新型 iPad mini は今日から注文出来、色はシルバー、スペースグレイ、そしてゴールドの3色があり、来週には店頭に並ぶ予定である。64 GB Wi-Fi モデルは $399 で、256 GB Wi-Fi モデルは $549 である。Wi-Fi + Cellular モデルは $130 の加算となり、64 GB だと $529 そして 256 GB は $679 となる。

第三世代 iPad Air、10.5-inch iPad Pro の仕様と価格を手直し

第三世代 iPad Air は興味深い獣である。もしこれを以前の iPad Air の製品群と比べるならば、画面の大きさと性能の両面で能力が大幅に増大している。しかしながら、これは Apple が少しだけ近代化し、かつカメラとスピーカーシステムの性能を落として値段を下げた 10.5-inch iPad Pro と考えた方がわかり易い。フォームファクターと工業デザインは 10.5-inch iPad Pro のままで、Home ボタンと Touch ID も残っており、更に $159 の初代 Smart Keyboard が使える Smart Connector までもが残っている。この iPad Air はまた第一世代 Apple Pencil に対するサポートも保持している。

Photo of an iPad Air with Smart Keyboard and Apple Pencil

新型 iPad mini と同様、この新しい iPad Air は、A12 Bionic チップ、ギガビット級 LTE、eSIM、そして Bluetooth 5.0 を搭載している。

しかしながら、Apple は、新しい iPad Air ではカメラの能力を大幅に格下げし、iPad Pro の背面カメラを、6枚構成レンズ、12-megapixel (絞り f/1.8) から、5枚構成レンズ、8-megapixel (絞り f/2.4) に取り替えた。Apple はまた、最高品質のビデオキャプチャーを 1080p に下げ (4K から格下げ)、パノラマを最大 63 megapixel から 43 megapixel へと縮小し、そして iPad Pro の光学式画像安定化、True Tone フラッシュ、Focus Pixels 等々を削除した。正面の FaceTime HD カメラは、全体的には似た様なものに見えるが、Apple はもはや、身体と顔の検出、或いは自動画像安定化を宣伝していない。加えて、新型 iPad Air はステレオスピーカーしか持っていないが、10.5-inch iPad Pro は4つのスピーカーを持っていた。

iPad mini と同様、新型 iPad Air は2つのストレージオプションしか提供しない:64 GB は $499 で、256 GB は $649 である。セルラー接続は通常の $130 の追加を要し、64 GB 価格は $629 に、256 GB は $779 となる。色は同じシルバー、スペースグレイ、そしてゴールドが用意されている。オンラインでは iPad Air を今日注文出来、Apple の小売店には来週から登場する。

意味のある iPad ラインナップ

iPad model lineup

Apple はようやく、その製品群の中の他の品種よりも遥かにそうだと言えるレベルで、ユーザーが欲する価格、大きさ、そして能力を提供するモデルを選ぶことを可能にする意味のある iPad ラインナップを持つこととなった。

モデル 画面サイズ 最小価格
iPad mini (第五世代) 7.9 inch $399
iPad (第六世代) 9.7 inch $329
iPad Air (第三世代) 10.5 inch $499
iPad Pro 11-inch 11 inch $799
iPad Pro 12.9-inch (第三世代) 12.9 inch $999

価格は画面サイズと直接連動してはいないが、実際にそれは理にも適っている、何故ならば、第六世代 iPad は旧式のチップであり (A10 Fusion)、32 GB と 128 GB のストレージオプションしか提供せず、そしてディスプレイも洗練されていない (全面ラミネートでない、反射防止膜もない、広色域ディスプレイもない、True Tone もない)。更に、Apple は iPad mini のスリムサイズに少々のプレミアムを課している - 大きいことが常に良いわけではない。

最後に、これらの iPad 発表を邪魔する気はないが、もし Apple が iPad mini フォームファクターがその報道発表で言っている様に "愛されているデザイン" なのであれば、iPhone のラインナップでも同じことをするのが賢明なのではなかろうか? ユーザー達はより小型のモデルを求めて声を上げている。先週末、我々は今だに iPhone 4S を使っている友人と夕食を共にした。iPhone 4S の四角い角を残した側面と小型のサイズは、手にするのにもポケットに入れるのにも驚くほど心地良い。言うだけ言わせて貰おう - iPhone mini の登場余地は十分にある、Apple は iPhone nano 迄は行かないとしても ("Palm の極小スマートフォンはお粗末だが、iPhone nano ならどうか?" 4 March 2019 参照)。

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Adam Engst  訳: 亀岡孝仁  

Dropbox、無料のアカウントを3台までに制限

モバイル技術サイトである Liliputing は、Dropbox が今や無料のアカウントを最大3台までの機器に制限していることを発見した。Dropbox は、そのサポート記事の中で、有料の Plus, Professional, そして Business ユーザーは、自分の Dropbox アカウントに好きなだけの数の機器から接続出来るが、March 2019 時点で、無料の Basic アカウントのユーザーは一度に3台の機器しか使えないと言っている。幸いなことに、現在 Dropbox Basic アカウントにリンクしている機器が3台以上ある場合、それらはリンクされたままであるが、それ以上増やすことは出来ない。

この変更で、Dropbox は明らかにより多くの Basic ユーザーを Plus プランに移行させようとしている。Plus プランは月額 $9.99 か、年額 $99 を要する。もしアップグレードしたくなければ、機器をリンクしたり解除したりすることで、3台の制限を超えないようにすることは可能である。デスクトップ Mac、ラップトップ Mac, iPhone, そして iPad の間での同期を保ちたい人は、今やこのリンクする/リンクを解除するのダンスを強いられることになる - 或いは、何らかの理由でこれらの機器の一台をリンクから解除するよう強制されるや否や、やらざるを得なくなるであろう。

他の選択肢には、違うファイル同期サービスに切り替える方法もある。Apple の iCloud Drive は 5 GB のストレージを無料で提供しているが、それは iOS バックアップ、iCloud Photos, そして iCloud Mail であっという間に一杯になってしまいがちである。Google Drive は 15 GB を無料で提供するが、こちらも Gmail と Google Photos と共有となる。Microsoft の OneDrive は無料で 5 GB を提供する、そして Office 365 に対して支払いしているのであれば 1 TB の容量が無料で与えられる。

この変更に関して残念なのは、Dropbox は歴史的に、自分の機器間のファイル同期と他の人との合同のファイル共有の最善の組み合わせを提供してきたことである。しかし、無料のサービスに追加の制限がかかったからと言って、あまり苦情は言えない。Dropbox の無料の Basic アカウントは、ユーザーに有料プランにアップグレードするのを勧誘する宣伝ツールの一つに過ぎない。それに、ただで何かを得ている時に、企業がその何かの量をゆくゆくは減らそうと思うのは不合理だとは言えない。

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Agen Schmitz  訳: Mark Nagata   

CorelDRAW が Mac に復帰

18 年間の不在を経て Mac への復帰を果たしつつ、Corel が同社の macOS 用ベクター・グラフィックス・エディタを復活させ、CorelDRAW Graphics Suite 2019 としてリリースした。(前回の Mac 用 CorelDRAW リリースは 2001 年の CorelDRAW 11 であった。) ベクター画像デザインソフトウェア CorelDRAW 2019 に加えて、このスイートには写真編集用の Photo-Paint 2019、raw 写真処理用の AfterShot 3 HDR、Font Manager 2019 (1000 種類以上の TrueType および OpenType フォントも付属)、それから何千ものクリップアートファイル、サンプル・デジタル画像、車両ラッピング・テンプレートも含まれる。

CorelDRAW は macOS 10.14 Mojave の Dark モードに最適化され、MacBook Pro の Touch Bar にも対応し、またニューラル・ネットワークで駆動されるドロー機能 LiveSketch をデビューさせている。これは人工知能を利用して手描きの筆遣いを解釈・調整・結合し、高精度のベクター曲線に転化させるものだ。さらにクラウドベースの CorelDRAW.app を使って外出先でも好きなデバイス上でグラフィックデザインのプロジェクトにアクセスでき、既存ファイルの中のデザイン要素を開いて編集したり、新規にプロジェクトを開始したりもできる。

CorelDRAW's light mode

CorelDRAW Graphics Suite 2019 for Mac の価格は終身ライセンスの購入ならば $499、講読での利用ならば年額 $198 だ。CorelDRAW Graphics Suite 2019 は最低限 10.12 Sierra を必要とし、15 日間有効の無料試用版をダウンロードして利用できる。ただし、フル・インストールで 2 GB 以上もあることに注意しよう。独立動作版の CorelDRAW アプリ (Graphics Suite にある他の追加のものは含まれない) は Mac App Store から入手でき、最初の 2 週間の無料試用期間が過ぎれば月額 $19.99 または年額 $199.99 の講読で使える。

CorelDRAW Graphics Suite 2019 が Adobe の Creative Cloud に対してある程度の競争をはるかに安い価格で提供しているのは素敵なことだ。講読料金が一月あたり $16.50 という計算になり、Creative Cloud の月額は $52.99 だからだ。その上、Corel は講読が嫌いな人のために終身ライセンスも提供している。そうは言ってもやはり安い買い物ではないので、Mac の世界で既に定着している代替製品、例えば Affinity Designer と Affinity Photo (それぞれ $49.99) や Pixelmator Pro ($59.99、2019 年 2 月 13 日の記事“Pixelmator Pro レビュー: Photoshop CC と比較するとどうか?”参照) と比較してみるのも面白いだろう。

カナダの会社である Corel (プライベート・エクイティ・グループの Vector Capital が所有している) は、会社の発足当時以来 (WordPerfect や WinZip を買収したことも含めて) 主として Windows 側でのソフトウェア開発に力を注いできたが、同社は再び Mac にも以前より多くの注意を向けるようになってきたようだ。CorelDRAW の復活に加えて、Corel は 2018 年 12 月に仮想化ソフトウェア会社 Parallels を買収したし、今年に入ってからは作図および 3D モデリング用アプリ CorelCAD のメジャーな macOS 用アップグレードをリリースしている。

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Adam Engst  訳: Mark Nagata   

Preview が Mojave になっても改善されないことにイライラ

2017 年に事業を Joe Kissell に売却して以来私は Take Control ブック関係のことをほとんどしてこなかったが (2017 年 5 月 1 日の記事“Take Control Books、Joe Kissell が買収”参照)、最近になって私は Take Control of Preview をアップデートする作業に取り掛かった。この本は Josh Centers と私が共同で執筆したものだが、2016 年 7 月の執筆当時に対象としたのは macOS 10.11 El Capitan と共に出荷されたバージョンの Preview アプリで、その後も私はこのアプリを毎日使い続けてはいるものの、10.12 Sierra や 10.13 High Sierra においてもこの Preview アプリは大して変わっていないように見えていた。しかしながら 10.14 Mojave がやって来ると、Continuity Camera やスクリーンショットなどの新機能が Preview に直接の影響を与えるようになったので、私はそろそろ本腰を入れて Preview を深く調べ尽くし、他にどんなことが変わったのか見極める時期が来たと決断した。

残念なことに、調べてみた結果はあまり嬉しいものではなかった。Preview の新機能は大して新たな価値を生むものでなく、とりわけ悪い変更点が一つあり、しかも Apple はいくつかのバグを導入しさえしている。

Take Control of Preview cover

誤解しないで頂きたい。今でも私は Preview がとても素敵なアプリであって、多くの人々が気付くよりももっと多くの便利な機能を持ち、その上私はこのアプリを私の Mac の上にある他のどんな Apple 製のアプリよりも多く使っていると思う。(私は Safari より Chrome の方が好きだし、Mail より Mailplane の方が好きだからだ。) Preview は驚くほどパワフルなグラフィックス・エディタであり、非常に有能な PDF 用のビューワー兼ユーティリティだ。もちろん Photoshop や Acrobat には (さらには Pixelmator や PDFpen にも) 及ばないが、大多数の人たちが必要とする大多数の用途には、Preview で十分使える。

Take Control of Preview のバージョン 1.1 は既に出版済みなので、まだお持ちでない方には (バージョン 1.0 を購入した方には無料アップデートだ) ぜひこれを読んで Preview にできることのすべてを知って頂きたいと思う。

善玉

[訳者注: The Good, the Bad and the Ugly (善玉、悪玉、卑劣漢) は 1966 年のマカロニ・ウェスタン映画で、映画の邦題は「続・夕陽のガンマン」です。]

Mojave バージョンの Preview での主要な変更点は、Continuity Camera に関係したものだ。中でも特記すべきは、iPhone で写真を撮影してそれを直接 Mac 上の Preview の中へ読み込んだり、書類を iPhone でスキャンしてそのまま Preview で開いたりできるようになったことだ。本の中では "Importing from an iPhone or iPad" というセクションを新設して Continuity Camera 機能について説明してある。

同じように、Mojave で新しくなったスクリーンショットのインターフェイスには Preview の中へ直接スクリーンショットを送るオプションが提供されているので、まず Desktop 上にファイルを作ってからそれを Preview で開くという手間をかける必要がない。これについても独立のセクションを追加して書いておいたが、方法はごく単純だ。スクリーンショットのコントロールバーにある Options ポップアップメニューで、Preview を選べばよいのだ。でも実際問題として、このオプションがそれほど便利だとは思わない。私にはスクリーンショットを編集したりする必要があまりないからだ。もちろん、人によって見方は異なるだろうが。

Screenshot of Mojave's screenshot UI

Preview への追加機能として注目すべきものがもう一つあるが、これは一つ前のバージョンで追加されたものかもしれない。それは、Apple が写真の舞台裏で使っている HEIF 画像フォーマットに対応するようになったことだ。良いことだとは思うが、まあ普通のことだろう。

残念ながら、これらの新機能によって Preview があまり大きく変わったとは思えない。ご存じでないかもしれないが、Preview は従来から既に、接続されているカメラから (もちろん iPhone や iPad からも) 写真を読み込む機能を備えていたし、スキャナから書類を読み込むことも既に出来ていた。それらの機能は今回何も変わっていないが、ただ iOS デバイスで Import From Camera コマンドがもはや働かなくなった。Continuity Camera 機能を使って iOS デバイスで写真を撮ったり書類をスキャンしたりできる点は真の意味で新しいことだが、それは他の多くのアプリでも同じように働く。それからまた、スクリーンショットを直接 Preview で開いて編集できるのは素敵だけれども、Preview は従来から既に独自にスクリーンショットを撮ることができ、基本的に同等の機能を既に提供していた。ここでも、従来からあるこのスクリーンショット機能については今回何も変わっていない。

最後にもう一つ、Apple は今回一つの機能を削除した。それは、アニメーション GIF を作成する機能だ。だからと言って大して失われたものはない。従来の Preview にあったアニメーション GIF 作成機能も、それを編集する機能も、どちらも機能として弱かった上に使いにくかった。本の前回のバージョンではこの機能を紹介はしたけれども、アニメーション GIF の作業をしたい人には別のツールを使うことをお勧めすると書いた。最新版の本ではそのセクションを完全に取り除いてある。

悪玉

今回の Preview には本当にどうしようもなく酷い変更点が一つあって、これは間違いなく意図的に施された変更だと思われるので、私としてもバグだと書くことができない。Preview の核心的機能の一つに「コンタクトシート」表示がある。(View > Contact Sheet を選んで) 現在開いている画像のすべてを、あるいは PDF の中のすべてのページを、サムネイルで表示させるものだ。これを使って PDF の中のページの順序を入れ替えたり、複数の画像を削除したり回転させたりといったことができるので、かなり便利に使える。

ところが、何らかの不可解な理由により、Apple はコンタクトシート表示の中のサムネイル画像をすべて正方形に変えてしまった。従来はそれぞれの画像の元の縦横比を保ったサムネイルを表示していたのだが。考え得る理由としては、誰か若輩者の浅知恵で Preview が Instagram の真似をしたら“今っぽい”とでも思ったのだろうか。(Instagram はごく最近になってやっと縦向きと横向きの切替を許すようになったばかりだ。) その結果として、PDF のページはすべてぺちゃんこに押し潰され、写真に写った人たちは遊園地のびっくりハウスの鏡に映ったみたいに見える。とてつもなく酷いし、完全に不必要な変更だ。

Squashed PDFs in Contact Sheet view

Squashed people in Contact Sheet view

卑劣漢

Take Control of Preview を新バージョンにアップデートする作業が厄介なのは、Preview アプリにはちょっとした風変わりな機能やインターフェイスの微妙な仕掛けがたくさんあるからだ。いや、少なくとも従来はそういうものがたくさんあった。でも、今回本の隅々まで調べて、以前の私が議論を引き起こしそうにないと思っていた機能をテストしてみると、それが以前と同じやり方では機能しないと気付くことがあった。いやむしろ、テストしてみた結果その機能が全く働かなくなっていると気付く方が多かったかもしれない。

そのような変更点を、私ならばバグに分類する。話は単純明快だ。それらが存在することだけすらも、また以前には完璧に動作していたコードを Apple にいる誰かが壊してしまったことも、酷い話だと思う。私にできる最良の推測は、Apple が Preview の基盤コードを将来の 64-bit 環境や、その他 macOS の内部的変更に備えて調整している最中なのだろうということだ。残念なことに、どうやら Apple はその種の更新の作業を経験の浅いプログラマーたちに割り当てた上に、新しいコードに対して十分なテストを施さなかったのだろう。

幸いにも、これらのバグのいずれも、Preview をまるきり使えなくするほどに深刻なものではない。以下に列挙してみよう:

未来は

Preview が確たる理由もなく新しいバグをたくさん積み上げなかったならば素敵だったのにと思うが、他方 Apple はきっと実際に有用な機能をこのプログラムに追加してくれることもあるだろう。いつも言えることだが、システムに組み込みのアプリを Apple が改良することと、独立の開発者たちがする仕事との間には、緊張関係がある。それでもそこここに少数の新機能を散りばめただけでは一般の人がフル機能のアプリを購入せず Preview を使おうとするための算段を変える力にはならないだろう。Apple がそもそも Preview に本腰を入れる気になるものかどうか、私はあまり期待できないとは思っているが、それでも夢見るだけなら自由だ。私の希望をいくつか書き留めておこう:

もちろん、もっと別の機能を必要としている人も多いだろう。皆さんは Apple に将来どんな風に Preview を強化して欲しいと思っておられるだろうか? ぜひコメントに書き込んで頂きたい。

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TidBITS 監視リスト: Mac アプリのアップデート

訳: Mark Nagata   

Skype 8.41

Skype 8.41

Microsoft が Skype 8.41 をリリースして、かかってきた通話を (保留にせずに) 現在進行中の通話に併合できる機能を追加した。このインターネット電話およびメッセージング用アプリはまた、ビデオプレビューをリサイズできるようにし、通話が繋がらなかった理由をより詳しく表示するようにし、ライブのキャプションやサブタイトルへのコントロール機能を増やし、通話やメッセージの失敗に際して電子メール通知を受け取れる機能を導入し、会話内での検索結果を改良し、caller ID オプションを追加している。(無料、93.4 MB、リリースノート、macOS 10.9+)

Skype 8.41 の使用体験を話し合おう

Default Folder X 5.3.5

Default Folder X 5.3.5

St. Clair Software が Default Folder X 5.3.5 をリリースして、Open/Save ダイアログを拡張するこのユーティリティが macOS 10.14 Mojave で拡張されたスクリーンショットユーティリティ (Command-Shift-5) でも正しく動作するようにした。今回のアップデートではまた、HoudahSpot を使ってフォルダを検索してその HoudahSpot から届いた結果を背景で待っているファイルダイアログへ送る機能を追加し、Recent Files メニューを使った際に間違ったファイルが選ばれてしまうことのあったバグを修正し、Default Folder X のコントロールが LaunchBar の quick entry ウィンドウが開いた際にそれに隠れてしまうことのないようにし、サードパーティのキーボードやマウスドライバを使っている際のフォルダ切替の信頼性を改善し、CopyPaste Pro との互換性の問題を修正している。(新規購入 $34.95、TidBITS 会員には新規購入で $10、アップグレードで $5 の値引、8.9 MB、リリースノート、macOS 10.10+)

Default Folder X 5.3.5 の使用体験を話し合おう

ExtraBITS

訳: Mark Nagata   

Big Tech Attracts Antitrust Attention from Senator Elizabeth Warren

上院議員 Elizabeth Warren、テクノロジー巨大会社に独占禁止法の注文を付ける

民主党の大統領予備選挙に向けた闘いが既に始まっているが、上院議員 Elizabeth Warren は Medium への寄稿記事で政府が Amazon と Facebook と Google を分割すべきだと論じてニュース見出しを飾った。その後 The Verge とのインタビューで彼女はそのリストに Apple も加え、Apple は App Store を運営しつつ同時に自社のアプリも配布することを許されるべきではないと述べた。テクノロジーの巨大会社が今日の社会の中であまりにも大きな力を持ち過ぎているという彼女の論拠そのものは誤っている訳ではないが、Stratechery のアナリスト Ben Thompson が指摘するのは、彼女の提案が:

新たにとてつもなく大きな問題を引き起こし、予想外の重大結果をもたらし、その上何より良くないことに、Warren 上院議員が懸念している問題に対して何の対処にもならないだろう。それに輪を掛けて、司法の独立という概念を踏みにじることにもなり、主観的定義をめぐって果てしない訴訟の連鎖と官僚的干渉を招き、消費者にとっては実質的に自らのために最良の選択をする道を塞がれることにもなるだろう。

現時点では、この提案は大体において政治的なジェスチャーに過ぎない。けれども、テクノロジー巨大会社の挙動に対して不快を感じている (私たちも含めて!) 多くの人たちが、選挙の際にその考えを持ち続けることで米国次期政権に何らかの影響を与えることは十分にあり得る。だから、まずは Warren の論点の誤りを分析した Thompson の記事を今この時点で読んでおくべき価値はある。それと同時に、Thompson はこの問題が「今日の世界にとって重要であるだけでなく、未来に向けて私たちが作りたいと願う世界にとって重要」であり、そのためにもテクノロジー世界の歴史と、根本的諸問題と、本質を理解しておくことが大切だと指摘する。

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Spotify Asks the European Commission to Make Apple Play Fair

Spotify、欧州委員会に対し Apple に公平な挙動 (Play Fair) をさせよと依頼

Apple は長年にわたって音楽ストリーミングサービス Spotify に手荒い扱いをしてきたが、Spotify がとうとう怒りを露にした。Time to Play Fair と名付けた新しいウェブサイトで、Spotify は同社と Apple とのやり取りをタイムライン形式で示し、App Store における Apple の利己的なやり方が Spotify を Apple Music よりも不利な立場へ追い込んだ様子を説明する。Spotify によれば、Apple は Spotify が Apple のアプリ内購入システム (講読料金の 30% を Apple が取り分として徴収するシステム) を使うのを止めて以後、何度も Spotify の iOS アプリのアップデートを拒絶した。そこでスウェーデンの会社である Spotify は、European Commission (欧州委員会) に対して「公平な競争の場」の保障を訴えた。

この Spotify の動きは、上院議員 Elizabeth Warren によるテクノロジー巨大会社分割の提案 (2019 年 3 月 12 日の記事“上院議員 Elizabeth Warren、テクノロジー巨大会社に独占禁止法の注文を付ける”参照) や、英国政府が任命した有識者パネルによるより厳しい独占禁止法への改定の提言に、引き続いて起こったものだ。だから、Amazon、Apple、Facebook、Google の各会社は、大掛かりな規制の反動を生みかねないような自らの挙動を省みて考え直す必要があるのではなかろうか。

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Apple Responds to Spotify

Apple、Spotify に反論

スウェーデンの音楽ストリーミングサービス Spotify が、Apple が App Store において Spotify よりも Apple Music を優遇してきたことについて European Commission に申し立てをしたと公表したことを受けて (2019 年 3 月 13 日の記事“ Spotify、欧州委員会に対し Apple に公平な挙動 (Play Fair) をさせよと依頼”参照)、Apple が公式な反応を公表した。Apple が発表した他の同種の声明とは違って、今回のものは App Store での本物の懸念に触れるものであり、しかも見当外れな美辞麗句で論点をすり替えようとするものでもあったので、 Apple 開発者たちや評論家たちからも数多くの批判を呼び起こすこととなった。今回の Apple の声明は、強い印象を与える宣伝文句ではあったが、結局はかえって Apple にとって有害無益になるかもしれない。

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Flickr Vows to Not Delete Creative Commons Images or Those of Deceased Members

Flickr、Creative Commons 画像と死去した会員の画像を削除しないと約束

SmugMug は写真サービス Flickr を Verizon から買収した後、無料アカウントに保存しておける写真の枚数を制限すると発表した。(2018 年 11 月 5 日の記事“Flickr、無料アカウントの写真を 1000 枚に制限してサービスの維持を狙う”参照。) その後 Flickr は当初 2 月に設定していた削除期限を延長したが (2019 年 2 月 8 日の記事“Flickr、写真削除の期日を 2019 年 3 月 12 日に延期”参照)、今回新たな対策を施して懸念を鎮めようとした。ブログ記事の中で、同社は Creative Commons のライセンスを受けた画像がこれまでウェブ上で厖大な寄与をしてきたことに触れて、現在保存されている Creative Commons ライセンスの画像はすべて削除されず保護されること、ただしライセンス大量変更ツールを無効化して、無料保存のために今から画像に Creative Commons ライセンスを付けることはできないようにしたことを説明した。また、Flickr は死去した会員のアカウントをすべて無料で永久に保持するとも述べた。あなたがもしそのようなアカウントをご存じなら、それを "In Memoriam" アカウントに設定するようリクエストすることができる。自分のデジタル生活を後世に残したいと思う人は、デジタル遺言を作成する際にこのことを心に留めておくとよい。さらなるアドバイスは Joe Kissell の本 Take Control of Your Digital Legacy を参照されるのがよい。

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