TidBITS: Apple News for the Rest of Us  TidBITS-J#519/28-Feb-00

仕事から逃れて世界中を旅することを夢見る人は多い。しかし、Gideon Greenspan 氏は、自分の PowerBook を抱えてシェウェア・ビジネスをしな がら、アジアを旅して歩いた。記事の中で、彼は、旅のあれこれを紹介し、 Mac 携帯の旅行者に計り知れないほど貴重なアドバイスを提供している。 その他、アンケートに関するいくつかの変更点のお知らせ、Don Crabb 氏 への追悼、Eudora 4.3.1 と IBM ViaVoice 1.0.2 のアップデート、カラー Palm ハンドヘルド機のリリースについて取り上げた。

目次:

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MailBITS/28-Feb-00

(翻訳:三好 泰子 <yokomo@mio.to>)
(  :尾高 里華子 <rikako@pobox.com>)

Macintosh コラムニスト Don Crabb 氏、死去 -- 数多くの著述で知られ ている Don Crabb 氏は、膵臓病で 12 月より入院中であったが、この度、 逝去。享年 44 才であった。映画評論家の Roger Ebert 氏は、シカゴの Sun-Times の死亡記事の中で「無限のエネルギーを持った偉大な人物」と 最高の言葉を選んで贈った。Don 氏は、すごいエネルギーで多くの仕事を 成し遂げた。シカゴ大学では、コンピュータ・サイエンスの学部と大学院 の副学部長、そして、教育研究所の所長兼主席講師をも務めた。学際的な 活動以外にも Don 氏は、数多くの Macintosh に関する出版物や Web サイ トでの執筆活動を行い、さらに、シカゴのラジオ・ショーのホストを務め たり、その他ラジオやテレビにレギュラー出演していた。我々は、皆、彼 の死を惜しんで止まない。[ACE]

<http://www.suntimes.com/output/obituaries/xcrabb.html>
<http://www.maccentral.com/news/0002/27.doncrabb.shtml>

Eudora 4.3.1 Updater 稼働 -- Qualcomm 社が、やっと、既存の Eudora Pro 4.x を Paid モードでの Eudora 4.3 にアップデートする無料アップ データをリリースした。これは、広告を表示することなしに全ての Eudora の機能を提供する。このアップデータは、ダウンロードサイズが 5.0 MB。 そして、Eudora 4.3 には、Power-PC 搭載の Mac が必要であることを忘れ ないで欲しい。68K の Mac をお使いだったら、ダウンロードしても無駄に なってしまうだろう。このリリースの関して、もっと詳細を知りたいなら、 TidBITS-517 の“InterviewBITS:Steve Dorner 氏を迎えて”と TidBITS-509 の“無料利用モードが加わった Eudora 4.3 パブリックベー タ”を参照のこと。

<http://www.eudora.com/pro_email/updaters.html>
<http://db.tidbits.com/getbits.acgi?tbart=05800>
<http://db.tidbits.com/getbits.acgi?tbart=05711>

TidBITS Talk の中での Alan Forkosh 氏の報告によると、このアップデー タを稼働させたら、まず、名前を聞かれ、この情報を保存しておくように とワーニングを出しながら、新しい登録番号が付与された。そして、次に 起動したときは、Eudora は、まだSponsored モードのままで、Alan 氏は、 Paid モードへ切り替えるために、Help メニューの Payment Registration で選択し、名前と新しい登録番号を入力しなければならな かった、ということである。[ACE]

<http://db.tidbits.com/getbits.acgi?tlkmsg=6099>

カラー化、メモリ増の Palm ハンドヘルド機 -- Palm, Inc. 社から Palm IIIc がリリースされた。この新しいハンドヘルド機の売りは、画面がカ ラーになったことと、8 MB のメモリ、内蔵の充電式リチウムイオン電池で ある。Windows CE プラットフォーム用のカラーのハンドヘルド機は何ヶ月 も前からある(今は Pocket PC と名称が変更になった)が、電池の持ちが 悪いという問題を抱えている。Palm がカラー表示を行うようになったの は、同社がカラーに十分対応できたと考えていることの現れであろう。既 存のグレースケールのものと同じ大きさのディスプレイは液晶アクティブ マトリックスで、256 色まで表示可能である。2 週間は充電せずに使用で きるだろうと Palm 社は推定している。しかし、通常の使用では HotSync のクレードル兼充電器に数分差せば、電池は完全に充電される。Palm IIIc は入手可能になっており、小売り価格 450 ドルある。

<http://www.palm.com/products/palmiiic/>

IIIc ばかりが注目を集めているが、Palm は Palm IIIxe というハンドヘ ルド機もリリースしており、こちらは、黒っぽい色で 8 MB のメモリを載 せ、250 ドルだ。また、Palm Pocket Keyboard というたためばだいたい Palm III サイズになる 100 ドルの折り畳み式キーボードもリリースされ ている。そしてもう一つ、同社は Palm VII ユーザーのために Palm.net ワイヤレスサービスに Unlimited Use Service というオプションを追加し た。これで割高なキロバイトあたりの従量制の課金ではなく、月 45 ドル という固定料金を利用できるようになる。 [JLC]

<http://www.palm.com/products/palmiiixe/>
<http://www.palm.com/products/keyboard/>
<http://www.palm.com/products/palmvii/serviceplans.html>
<http://www.palm.net/>
<http://www.palm.com/products/palmvii/>

IBM 製 ViaVoice のアップデータと破約の Dragon 社 -- IBM 社は連続 音声認識ソフトウェア ViaVoice 用の無償の 1.0.2 アップデータを公開し た。これにより余計なスペース、エラー戻り、特殊文字の入った語の扱い に関する問題など煩わしマイナーバグが修正された。しかし、選択まわり の問題はそのままだし、スペースや句読点、大文字をどうやって同プログ ラムが識別するかに関しては以前として未熟である。TidBITS Talk で ViaVoice が話題になったところを参照するともっと様々な意見を読むこと ができる。ViaVoice は市場価格 80 ドルで、Outpost.com やAladdin Systems といった TidBITS のスポンサーも扱っている。なお、この製品に はノイズ除去マイク付きヘッドフォンが同梱されている)。

<http://www-4.ibm.com/software/speech/support/us_vvmac12.html>
<http://db.tidbits.com/getbits.acgi?tlkthrd=883>
<http://www.outpost.com/entry?sku=99187site=tidbits:newsletter>
<http://www.digitalriver.com/aladdin/viavoice/21917/>

一方で、Dragon Systems 社は 1999 年 5 月に Apple と共同で出した NaturallySpeaking を Mac 対応にするという申し合わせを Mac OS X のリ リースまでは見合わせる旨をベータテスター達に通達した。我々および TidBITS Talk の面々は、同社が現在の Mac OS 用の連続音声認識製品を製 造できるだろうとはあまり思っていなかった。我々の懐疑心が証明された ようだ。(Power Secretary をアップデートした同社の Voice Power Pro は今でも、とりわけ英国市場では、入手可能らしい。)また、MacSpeech 社は Philips 社のスピーチ認証エンジンを利用した新しい iListen と iDictate を“晩春”に出すと約束している。(7 月の Macworld Expo で の登場を祈るとしよう。) [MAN]

<http://macweek.zdnet.com/2000/02/13/dragon.html>
<http://db.tidbits.com/getbits.acgi?tbart=05392>
<http://db.tidbits.com/getbits.acgi?tlkthrd=674>
<http://www.voicepowerpro.com/>
<http://www.macspeech.com/>

アンケート結果:私をかわいく彩って -- 先週のアンケートでは、今後 Apple が Mac に採用して欲しい色は何色か尋ねた。一番人気があったのは つや消しメタルで、回答の 27 % を占めた。次は 18 % を獲得したダーク ブルー、そして 11 % の深緑と漆黒が同率ですべりこんできた。あとは、 次回の色変更があるのを待つばかりだ。Apple の懐ころからどんなものが 出てくるやら。アンケートの最終結果については下記の URL で確認でき る。 [ACE]

<http://db.tidbits.com/getbits.acgi?tbpoll=9>

アンケート予告:旧道に足を伸ばして -- iMac のリリースに伴い、Apple は 1987 年以来保っていたポートやその他 Mac の標準となっていたものを 削り始めた。この動きは業界全体からすると最善の方法であるかもしれな いが、既存の周辺機器でやっていかなければならない個々の人は慌てふた めいた。そこで、最新の Mac を購入したもしくは購入を考えている方へ質 問だ。削られてしまったものの中で、アダプター、ネットワークを張って いる古い Mac、ほかのハードウェアディバイスを利用してでも使えるよう にしたいものはあるだろうか。あるとしたらそれは何だろう。我々のホー ムページを訪れて投票し、来週お届けする予定の GeeThree.com 社製 Stealth Serial Port の記事にこうご期待を。

<http://www.tidbits.com/>
<http://www.geethree.com/>

今回のアンケートから、複数の回答を受け付けることができるチェックボッ クスを導入し、ADB、フロッピー、LocalTalk、SCSI、シリアルの中から回 答を選ぶことができるようになっている。実は「無し」という答えも用意 してある。これは、このアンケートが削られてしまったものの中にぜひ使 いたいもがあるかどうかという質問と、あるならば何を使えるようにした いかという 2 つの質問を行っているということだ。当然“「無し」かつ 「フロッピー」”という答えはあり得ないだろうから、そのように回答し ないというみなさんの常識を信用したい。選択肢の中に「無し」というの を入れることにしたのは、そのほうが面白い結果が出るだろうし、アンケー トに参加する人の数も増えるだろうからだ。[ACE]

<http://db.tidbits.com/getbits.acgi?tlkthrd=952>


TidBITS アンケートに関する変更

by Adam C. Engst <ace@tidbits.com>
(翻訳:亀岡 孝仁 <tkameoka@fujikura.co.jp>)

我々毎週行なっているアンケートやクイズに参加したことのある人は今週 付け加えられたいくつかの新しい機能に気づかれるであろう。これらは答 え方をもっと易しくし結果を見るのももっと簡単にすることを狙ったもの である。それにこのアンケートに関して寄せられた代表的な質問やいくつ かのアンケートの基本的な考え方を集めた FAQ を作った。

<http://db.tidbits.com/poll/AboutPolls.html>

複数選択回答 -- 過去のアンケートでは、もし複数の回答をしたいと思っ たときには複数回回答しなければならなかった。今度は一つ以上の回答を 求めたいときには、ラジオボタンに代えてチェックボックスを使うように したので、もう複数回回答してもらう必要はなくなった。このチェックボッ クスを使ったアンケートでは、その結果も二通りに違った数字として表示 される、一つは回答数についてでもう一つは回答者数についてである。こ れは当然ながら、回答数と回答者数とは一致しないからである。

過去のそして人気のアンケート -- これまで、アンケートやクイズに関 する結果にどうアクセスしてもらうかについて検討を続けてきた。結局そ れは結構複雑な設計上の問題に帰着してしまったので、ほとんどの問題の あるアイディアについてはあきらめてきわめて基本的な過去のアンケート の時系列的なりストに落ち着いた。このリストにはアンケートのタイトル、 質問、回答者数を載せることとした。さらに、最も人気のあったアンケー トに関するページも新設したので、読者はどれが最も読者の興味を引いた かを見ることができる。

<http://db.tidbits.com/poll/>
<http://db.tidbits.com/poll/PopularPolls.html>

アンケート専用 URL -- 最後に、アンケート専用の URL を設定した。こ れでもし何かのアンケートにリンクしたいと思ったときでも、将来そのリ ンクが切れてしまうのではないかを心配せずにすむはずである。たとえば、 数週間前に流した Macintosh Ownership に関するアンケート結果を見るた めには、下記の GetBITS URL を参照すればよい:

<http://db.tidbits.com/getbits.acgi?tbpoll=27>

以上のどれもが大幅な変更ではないが、これらの変更で我々のアンケート がより楽しめてかつ興味を引くものになることを願う。


一風変わった働き方、パート 2

by Gideon Greenspan <gdg@sigsoftware.com>
(翻訳:吉田 節 <benjamin.takashi@nifty.ne.jp>)
(  :尾高 修一 <shu@pobox.com>)
(  :亀岡 孝仁 <tkameoka@fujikura.co.jp>)
(  :石川 篤利 <atsu@omame3.com>)

私はこれを書きながら、バンコクからフランクフルトへの機内に座ってい る。私の PowerBook G3 で運営している自分の会社、Sig Software 社と共 に 2 ヶ月間旅したアジアからの帰路だ。(旅の準備の話については TidBITS-508 の“一風変わった働き方”を参照)。すばらしい旅だった。 次の行き先を決めかねている人には、シンガポールからマレーシアを経て タイへ至るルートを心からお勧めする。そこには未来的な都市、熱帯の 島々、山ほどの文化、青々としたジャングル、世界でも指折りのダイビン グ、おいしい食べ物、非常に安い物価、そして線香をあげ尽くせないほど 数多くの寺院がある。さらに、もしあなたが配偶者や家族にまだ束縛され ていないなら、独自の旅に出ることをお勧めする。山ほどの興味深い人々 (旅行者にも地元民にも)に、会おうとしなくても出会えること、請け合 いだ。

<http://db.tidbits.com/getbits.acgi?tbart=05686>

生き残りと繁栄 -- Sig Software 社と私の PowerBook G3 は共にほとん ど無傷で 2 ヶ月、3,000 マイルの陸路の旅を終えた。はらはらしていた 方々には嬉しいことだろう。少しだけ傷はあるものの、コンピュータは完 璧に動作し、今も新品同様だ。そして例外なく毎日、私は顧客の質問に答 え、Web ログをダウンロードして解析し、ライセンスコードを発送し、数 は少ないが恒例にしている Mac や他のニュースサイトを訪れることができ た。

Sig Software 社の日々の運営とは別に、私は 4 つのマイナーソフトウェ アアップデート(Email Merge 1.8、Analog Helper 1.1.1、NameCleaner 2.0.1、Cross Platform 1.1.1)と Drop Drawers のメジャーアップグレー ド版(これを完成するためだけに一ヶ月分の余暇時間が必要)の製作も進 めた。コンテストを実施し、Drop Drawers 1.1 のリリースに合わせて私へ のインタビューを掲載してくれた、ResExcellence 社の Cletus Waldman 氏の努力に感謝する。

<http://www.sigsoftware.com/>
<http://www.resexcellence.com/archive_software/dropexclusive.shtml>

インターネットカフェがいっぱい -- 最初の記事で、私はダイヤルアッ プよりも、インターネットカフェの Ethernet ネットワーク経由でインター ネットに接続したいと述べた。私はインターネットカフェのインターネッ トへの接続は、アナログ電話回線を使うよりも速いだろうと考えていた。 シンガポールではこれが裏付けられた。ほとんどのインターネットカフェ は ISDN 接続を使っており、私はその速度でネットサーフィンを一時間あ たり 3.5 ドルで行うことができた。

マレーシアやタイの状況はかなり異なっていた。両国のインターネットカ フェは例外なく 一本だけの アナログダイヤルアップ回線(普通は 56 Kbps、たまに 33.6 Kbps)を、ネットワーク全体(10 〜 20 台の PC が接 続されていた)に対して使っていた。そのため、そのどこでも、私自身が ダイヤルアップするより速くはなく、一桁以上遅くなる可能性があった。

幸いなことに、ほとんどのインターネットカフェはネットワークゲームセ ンターのようなもので、Web をサーフィンするより互いに撃ち合うほうを 好む子供たちでいっぱいだった。インターネットを使っていた僅かな地元 民と旅行者は、だいたいが IRC セッションに熱中しているか、Hotmail ア カウントでメールをアクセスしていた。つまり、私はしばしばダイヤルアッ プ帯域幅の 80 % 前後を占有できたという訳だ。それでも、耐えられない ほど遅い接続で仕事をしなければならない場合があった。タイの Lopburi のあるカフェが一番ひどく、そこでは米国へ毎秒 20 バイト以下でしかア クセスできなかった。自分のメールを確認するだけで 45 分もかかったの だ!

料金はそのあたりにいる旅行者の数に比例してまちまちだった。観光地を 別とすればマレーシアでもタイでもアクセス料は一時間あたり 0.5 ドル程 度だったが、観光客向けホテルの近くでは最低でも一時間あたり 1.25 ド ルが相場だった。バンコク都心では一時間あたり 7.5 ドルというところも あったが、たいていはすぐ近くにもっとリーズナブルな料金のところがあっ た。マレーシア東海岸沖にあるティオマン島などの辺鄙な観光地でも一時 間あたり 5 ドルほどまで上がった。

インターネットカフェを見つけるのは思ったより簡単だった。Internet Cafe Guide をダウンロードしてデータベース化したのは完全な時間の無駄 だった。繁華街に行ってあたりを見回せばインターネットカフェは見つかっ たのだ。Guide に登録していたインターネットカフェは全体の 1/20 程度 だったのではないだろうか。バンコクでラップトップに無料アクセスを提 供しているというので Guide を使って探したインターネットカフェでは、 残念なことに無料アクセスはもう止めておりラップトップを接続すること すらさせてくれなかった。

おかげで交渉力は身についたと思う。ほとんどのインターネットカフェで は、従業員はネットワークプロトコルのことなどほとんど知らなかった。 私のラップトップを見せると、たいていは無知と不安の入り交じった表情 になり、首を横に振って「ダメです」とつぶやいた。これを回避するため に私がしたのは、ラップトップを鞄に入れたまま店に入り、「ラップトッ プつないでいい?」ときくことだった。すると私のクイーンズ・イングリッ シュが理解できない従業員は単に私がインターネットを使えるかを尋ねた のだと思って頷く。私は PC でネットワーク設定をチェック(Network Neighborhood をマウスの右ボタンでクリックし、Properties を選択)し て接続できるかを確認し、ここで初めて PowerBook を取り出す。私が何を しているかを店員が気が付いた時には、すでに Ethernet ネットワークに 接続して TCP/IP のセッティングをしているということになる。店員は何 となく不安な面持ちで私の作業を不思議そうに覗き込むのだが、私は何を しているかを説明し、「だいじょうぶ、どこでも同じ、OK」と言って特定 の IP アドレスにあるマシンが私のコンピュータでも店の物でも変わりは ないことを指摘する。

ほとんどの場合、こういったインターネットカフェは固定 IP アドレスの TCP/IP ネットワークを使っていたので、接続を拝借しているマシンの IP アドレス、サブネットマスク、ルータアドレス、DNS アドレスをコピーし てくれば済んだ。DHCP を使っているカフェもあったが、Apple の TCP/IP ソフトウェアは強力な DHCP サポートを組み込んであるのでさらにことは 簡単だった。だが 5 軒 に 1 軒ほどは奇妙な構成で、IP アドレスとサブ ネットマスクは指定してあるもののルータと DNS サーバが指定してないと いうことがあった。こんなネットワークがどうやって動いていたのか今で も謎だが、TCP/IP と Windows プロトコルを混ぜて使っていたのではない かと推測している。いずれにせよこういった設定を見たら長居は無用だっ たので、「ダメです」と言いながら次の店へと移っていった。

TCP/IP コントロールパネルのシンプルなデザインと、複数の設定を保存で きる機能は一貫して強い味方だった。30 ほどまでに増えた設定を楽に切り 替えて使うことができたのだ。今では機能が Anarchie の一部となってい る Mac TCP Watcher も必須アイテムで、送受信しているデータをモニタし てどの程度のパケットロスが生じているかを見ることができた。ネットワー ク接続が切断されるとたいていはシステムがフリーズしたのだが、Command + Option + Esc でいつも切り抜けることができた。Sustainable Softworks 社の OT Advanced Tuner も試してみたがどれだけ効果があったのかはよく わからない。

<http://www.stairways.com/mactcpwatcher/>
<http://www.sustworks.com/products/product_otat.html>

ダイアルアップアクセス -- インターネットカフェからのアクセスと比 べて、Gric グローバルローミングサービスの結果はあまり芳しくなかっ た。この理由は私が旅をしていた国の ISP 側に技術的問題があったことに あるのではないかと推測しているが、実際のところはよくわからない。Gric のリストにあったアクセスポイントはどれも実在していたが、ダイアルアッ プしてもローミング用のログイン ID とパスワードで接続できないという ことが多かった。

<http://www.gric.com/>

シンガポールではアクセスポイントは 2 つしか記載されていなかったが、 シンガポールは都市国家なので、それでも国中どこでも市内通話でアクセ スできた。そのうち一方は私のログイン ID とパスワードを受け付けてく れなかったが、もう一方は問題なく使えた。

マレーシアでは記載されている電話番号がいくつかあったが、私が頻繁に 使ったアクセスポイントは国営 Telecom Malaysia のものだった。インター ネットアクセス専用の番号(1515)が用意されており、国中どこからでも 市内料金(またはそれに近い料金)で使用することができた。私のログイ ン ID とパスワードを受け付けてくれない日も少しだけあったが、ほとん どいつも問題なく使用できた。そういうわけでマレーシアのダイアルアッ プアクセスは高く評価できる。

一方タイではとてもガッカリすることになった。最初の記事で iPass では なく Gric ローミングネットワークを選んだ理由に、タイ国内 50 都市に アクセスポイントがあったことがあった。残念ながらこのほとんどは CS Internet 社(タイ最大の ISP)のもので、このどれ一つとして私にアクセ スを許してくれなかった。CS のテクニカルサポートは CS ユーザー以外が ダイアルアップできない「一時的な技術的問題」だと説明した。この回答 があったメールを Gric に転送したところ、Gric は調査の上 CS Internet をリストから削除すると言ってきた。結局、タイにいる間はインターネッ トカフェ一筋ということになった。CS Internet はインターネットローミ ング落第だ。

<http://www.ipass.com/>

Gric のソフトウェアそのものはまあまあだったが、起動に 25 秒もかかる のにはいらいらした。また、ダイアル中に中断したり別の番号をダイアル したくても、プログラムを強制終了する以外の方法がなかった(するとモ デムポートが使用中の状態になってまた別の問題が起きる)。やむをえず Gric ダイアラーが Remote Access コントロールパネルに接続失敗したと 言われるまで 1 〜 2 分の間待つことになる。こういったいらいらはあっ たが、動作は安定しており市外局番の処理なども無難にこなした。

インターネットアクセス:最高と最低 -- 最高のインターネットアクセ スができたのは、タイ北部の Chiang Mai の近くにある Wat Umong 僧院付 近であった。私は仏教僧院の瞑想道場で一週間ほど過ごしたいと思ったの だが、通常のコースでは最低 10 日間は俗世間からの隔離を要求され、私 には到底できない相談であった。もちろん、私のシェアウェアビジネスを 続けることと、この "vipanassa" 座禅修行を通じて俗世間からの解脱を目 指すのとはあまり相性がよくないことは十分に理解するが、私の精神的な 高揚が顧客への技術サポートをおろそかにした結果として実現されるなら ば、顧客にあまり暖かくは受入れてもらえないだろうと思う。そうこうし ているうちに Wat Umong を見つけることができた - 美しい森に囲まれた 静かな僧院で、英語の図書館、小さな開放動物園、美しい湖があり、そし て私が知り合いとなった英語の話せる僧侶数人がいた。Wat Umong の名前 を出しているのは彼らの親切心を誉めそやすためではなく、徒歩 10 分の 範囲内に 4 軒のインターネットカフェがあり、いずれも時間当たり 0.40 ドル以下のアクセスを提供していたからである。容易に想像できる様に、 この値段でなら僧侶でさえも利用できるほどであろう。

最悪の経験と言えば、中央マレーシアの Taman Negara ジャングルのなか の Kuala Tahan 村でのことであろう。ここにはインターネット接続できる コンピュータはたった一台しかなく、そのオーナーは親しみがなく私自身 でダイアルアップすることも、説明をして欲しいという頼みも頑なに拒絶 するのであった。しかたがないので、一人の店主にどうにか頼み込んで分 当たり 0.10 ドルでそこの電話を使わせてもらった、これは確かに高かっ たがべらぼうと言うほどではなかった。しかしながら、翌日になって電話 を使い始めて一分もしないうちに彼は料金を 5 倍にすると言い出した。私 が抗議すると彼は何も言わずプラグを引き抜いてしまったのである。彼に とっては旅行者から大金をまきあげるチャンスでありながらうまく行かな かったことで腹を立てているように見えた。結局のところ、川を渡った対 岸のホテルスタイルのリゾートに行きダイアルアップするのに毎分 0.30 ドルという結構高額の料金を払わざるをえなかった。従ってこの時の数日 間はインターネットアクセスもメールの送受信だけに絞ったので、大体 3, 4 分で済んでいた。そもそも、世界最古の熱帯雨林の中で、そこそこの値 段でインターネットアクセスができるのではないかと思った私が間違って いたのかもしれない。

Mac の国際的知名度 -- 旅している間、Apple と Macintosh がこれら東 南アジアの経済的に重要な地位を占める 3 ヶ国でどう競争しているかを見 るのも楽しみの一つであった。コンピュータショッピングセンターなどで は Apple はそこそこに目に付く存在であったのは嬉しいことである。多く のデスクトップ出版店では Mac のハードウェアを扱っているようであった が、Bangkok のインターネットカフェでも iMac が設置されているのを見 た!しかしながら、中心から離れるにつれて Mac の目につく度合いも減っ て行くように見えた。Chiang Mai でのあるレストランのオーナーは彼の PowerBook 540 の技術サポートを納得のいく値段で頼むことがいかに難し いか、それで結局は PC を買わざるを得なくなった話をしてくれた。私は 手伝いできるむね申しでたが、時すでに遅しであった。

一つだけは確かであった - iMac と iBook のリリースは Macintosh を望 ましいプラットフォームの一つへとよみがえらせた。私がインターネット カフェのオーナーと話をするたびに、彼らは決まって明らかに噂に聞いた ことのあるのであろう新モデルについて質問してくるのであった。さらに、 誰でも "G3" とは何であるかを知っているようであったし、私の PowerBook のなかにも入っているよと話すと一様に感じ入っていた - そして Web ペー ジがダウンロードされ表示されるスピードについて感嘆の言をしばしば発 していた。

旅への影響度 -- 以上のような話の中では、私の旅の目的は毎日インター ネットに接続することではなく、世界をかいま見ようということであるこ とを忘れてしまう向きもいたかも知れない。それでは私の旅はどの様に影 響を受けたか?もしこれまでにバックパック旅行をしたことのある人であ れば、通常の変動要因についてはご存じであろう:疲れ、空腹、前回シャ ワーしてからの時間、飲料水の残量、手持ちの現金残高、どれ程トイレに 行きたいか、全般的な健康状態、ホステルからの距離、そして最も重要な、 清潔な下着の残数。これにつけ加えたいのは:PowerBook パッテリの残量、 メールを最後チェックしてからの時間、そして回答しなければいけないメー ルの数。

これではまるで自分の楽しめる時間はまったくなかったように聞こえるか もしれないが、事実はそんなことではない。Sig Software 社の通常業務を こなすのには一日 30 分もあれば十分で、これは標準プロセスを自動化し ていたお陰である (AppleScript に感謝 - 間違いなく Apple 社の秘密兵 器の一つである)。もちろん余分の時間があれば、多少のプログラミング もできた - 事実、長距離のバス旅行をしていて誰も話し相手がいないよう な時には、何か生産的ななすべきことがあるというのは救いでもあった。

心配していたとおりに、PowerBook の重量は時にかなりの重荷であった。 ホステルのチェックインを済ませた後、たいてい私はマットレスの下にコ ンピュータを隠しセキュリティケーブルでベッドに繋がないとリラックス した気分になれなかった。だが、幾つかのホテルはちょっとセキュリティ が万全とは思えなかったので、PowerBook を小さなバックパックに入れて 一日中持ち歩くはめになってしまい、お陰で少々肩が痛くなってしまった。 早いとこ Apple がサブノートを改めて導入してくれるといいのだが - そ れはともかくとしても、PowerBook G3 と共に生活するということはどうや ら肉体的な快適さを犠牲にさせられるものであるらしい。

通常のノートブックパソコン用キャリングケースに代わって FedEx のクッ ション付きボックスを使うというのは今回の旅行の準備の段階から用意し た中で最高の決定だったということが分かった。サイズの節約はさておき、 一番の長所は PowerBook を取り出したりバッグの中の箱に放り込んだりす るのに面倒が少なくすむということであった。降りたい停留所にバスが着 いた時、たとえほんの数分前まで作業をしていたとしても直ぐにバスから 飛び下りることができたのだ。Ethernet のクロスケーブルは除いて、その 他の細々とした小物もみんな役に立ってくれた。セキュリティケーブルに ついては実際に泥棒がテストしたものなのかが疑わしかったものの(実際 に試されたかどうかは分らないが)、外出する時にも安心することができ たのだ。

バッテリーの寿命は、Frankfurt から Singapore までの 12 時間に及ぶ長 距離フライトを除いた今回の個々の行程では十分な物だった。両方のスロッ トにリチウムイオンバッテリを挿入した状態で、平均寿命は大体 8 時間程 だった - プロセッサ・スピードを落とす設定を使用しなかったことを考え れば、これは悪くはない(私は 333 MHz のコンピュータを約 1/4 のスピー ドで使うのに挫折したのだ)。プロセッサ・サイクリングの設定(これは 許可する設定にしっぱなしだった)というのは、PowerBook がユーザから のタイピングなどのイベントを待っている時にプロセッサスピードを自動 的に落とす機能のことである。

PowerBook と旅行をする上でのもう一つの利点といえば、お気に入りの音 楽を聴くことができたことで、これは旅行に出る前に MP3 フォーマットに エンコードした物をハードディスクに用意していたのだ。イヤフォンを通 して流れる心休まる音楽によって、多くの長い旅行が癒されてきたのであ る。さらにより快適だったのは、MP3 プレイバックと連動した自動目覚ま し機能を使用して、私の PowerBook は音楽を鳴らす目覚まし時計として働 くことができたことで、これは早朝の接続便に間に合う為には絶対に必要 な物だったのであった。もしあなたがこれと同じことをしたいのなら、 PowerBook のハッチは開けたままにしておき、パスワードセキュリティは オフにしておくことを忘れないように。さもなければ PowerBook は指定し た時間に起きてはくれないだろう(私も使えるようになるのにそれは苦労 したのだ!)。それからこれがベッドサイドの明りにもなるというのを知っ ていただろうか?

バックパッカーの仲間入りをして、なおかつ 3,000 ドルもの価値があるコ ンピュータ機器と旅行することは、奇妙な混合状態を生み出した。他の旅 行者はバスでの旅行中に私がラップトップを取り出すとしばしば驚いてい たが、しかしひとたび私が何をやっているのかを説明すると、軽く受け止 めていたようだった。かなりの時間を 1 〜 2 人の旅行者と過ごして彼ら と仲良くなっていたので、私は Outlook Express 5 をセットアップして彼 等の Hotmail の電子メールアカウントにオフラインでアクセスさせてあげ た。しかし、Outlook Express の Hotmail サポートはせいぜい途切れ途切 れでしか接続できず、その為時々私は彼らのメッセージを自分のアカウン トから送らなければならなかった。

私の旅行で最も楽しかった出来事の一つは、南マレーシアの Melaka にあ る Eastern Heritage Hostel の薄汚い共同寝室で目覚めて、そこで Macintosh の T シャツを着た男を発見したことだろう。彼の名前は Chris Langford といい、Oregon Health Sciences University で Macintosh の ネットワーク管理をしているそうだ。彼との会話を始めた後に分かったの だが、彼は私のプログラムの幾つかを知っていて、しかもその中の一つを 数年前に購入すらしてくれていたのだ! 電子メールのアーカイブを検索 してみると、1996 年 12 月に遡るメールのやりとりさえ発見したのであっ た。こういうことが世間は狭いということを証明しているのでなければ、 私には何がそうなのかが分らない。

<http://www.ohsu.edu/>

元に戻って -- もう一度旅に出たいか? ためらいも無く。Sig Software 社の業務と一緒の旅行では世界中どこへ行ってもほとんど心配の無い旅で はなかったにも関わらず、それでも一日中家の中で座って仕事をするより ははるかにましなことだった。もしあなたのビジネスが主にインターネッ ト上で行われているのなら、私が行ったような場所へ行ったりあなたが興 味のある事柄に対して引き止める物はわずかな物だろう。次回私は中国へ 行きたいと思っているのだが、しかしこれは中国内のインターネットアク セス状況が改善されるまで待たなくてはならないだろう。この旅行につい ては、もしそれが実現すればその時は報告するつもりだが、しかしそれは さておき、もしあなたが今回私が旅行中に撮って来た景色を見てみたいと 思うのなら、下記のページをチェックしてみて欲しい。

<http://www.sigsoftware.com/info/travel.html>


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