TidBITS: Apple News for the Rest of Us  TidBITS#652/21-Oct-02

Macworld Expo は Boston に戻る - しかし Apple は?これらの喧騒が将来の Mac トレードショーに何を意味するのか探るため、これまでの大騒ぎに目を向ける。この号では更に Mark Anbinder が Palm の新しい Zire ハンドヘルドを調べ、Adam がトラブルシューティングに関するいかなる問題をも解決するのに必要な手順について分析、そして我々は重要な Microsoft Office アップデートのリリース、Jaguar をただで入手できる Apple の X for Teachers プロモーション、そして Apple の第4 四半期の $45 million の損失についてお伝えする。

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MailBITS/21-Oct-02

Office 98, Office 2001, そして Office X に対するセキュリティパッチ-- Microsoft は Office 98 (1.5 MB), Office 2001 (2 MB), そして Office X(2.8 MB) の Macintosh バージョンに対するセキュリティアップデートを出した。このアップデートでは、二つのセキュリティ問題を修正している。一つは、有効なセキュリティ証明書の所有者が有効に見せかけた証明書を発行でき、それをOffice は有効であると信じてしまう問題で (Microsoft security bulletin MS02-050)、もう一つは、Microsoft Word のフィールドコードを使ってある環境下ではユーザーの文書から個人情報を盗んでしまうことができる問題である (Microsoft security bulletin MS02-059)。このセキュリティ証明書の問題は先月リリースされた Internet Explorer 新バージョンのためのものと同じである。

<http://www.microsoft.com/mac/download/security.asp>
<http://www.microsoft.com/technet/treeview/?url=/technet/security/bulletin/MS02-050.asp>
<http://www.microsoft.com/technet/treeview/?url=/technet/security/bulletin/MS02-059.asp>
<http://db.tidbits.com/getbits.acgi?tbart=06947>(日本語)Internet Explorer、成りすまし対応のアップデート

もう一つ重要なことは、Office X 用のセキュリティアップデートには内容は明らかにされていないが、Jaguar の元でのアプリケーションの安定度を高める改良が含まれている。これは Jaguar にアップグレードして以来不当なプログラムクラッシュに悩まされてきた Word X の憤まんやるかたないユーザーにとっては朗報である。[GD](カメ)

Apple 第4四半期 $45 Million の損失計上 -- Apple Computer は先週その第4会計四半期に対し $45 million の純損失を発表した。会計年度全体では、売上 $5.74 billion で当期利益はプラスの $65 million となっている。この第4四半期の結果にはいくつかの特別項目(投資に対する評価損を含む)を含んでいる;これらの特別項目を除くと、Apple の利益はこの四半期に対して $7 million の純益であった。この四半期では、売上は $1.44 billion で、粗利率は前年同期の 30.1% から下がって 26.4% であった。興味をひくのは、Apple 売上に占めるインターナショナル市場の割合がたったの 35% であったことである:通常はインターナショナル市場向けの売上が Apple 全体の売上の半分にちょっと足りないぐらいの貢献をしている。

<http://www.apple.com/pr/library/2002/oct/16earnings.html>

Apple はコンピュータ業界全体としての景気の回復はすぐには期待できないとしており、従って急激な利益改善も予想していない。しかしながら、Apple は来るホリデーシーズンには、消費者型の商品である iPod, iMac, それにiBook 等は健闘してくれるであろうと望んでおり、さらに、Mac OS X 10.2 も順調に伸びており今年末までには 5 百万のユーザーに達するであろうと言っている。Apple の直営小売店舗はこの四半期に 2.25 百万の来店客を記録し、Apple 全体では、$4.3 billion の手持ち資金を持ち、売上の下落もなく、かつ流通在庫も通常レベルを維持しており、健全な経営状態を示している。[GD](カメ)

米国内教員に Jaguar を無料配布 -- Apple は“X for Teachers”と呼ぶ新プログラムを開始し、非売品の Mac OS X 10.2 Jaguar を米国内(2002 年 10 月 24 日以降はカナダも含む)の K-12(幼稚園から高等学校まで)で対象となる教員に _無料_ で配布することになった。これは教育・研究目的だけでなく私的な使用目的のためにも使える。配布されるパッケージには“Getting Started with Mac OS X”というセルフペースのトレーニング用 CD-ROM も含まれ、これはおそらく Mac OS X の主要な機能を知るための入門編のようなものだろう。また、 Apple のデジタルハブ用アプリケーション、iMovie, iTunes, iPhoto といったものも含まれている。

<http://www.apple.com/education/macosxforteachers/>
<http://www.apple.com/ca/education/macosxforteachers/>
<http://www.apple.com/macosx/>

この特典を受けられるには、公立学校、私立学校またはチャータースクールで現在 K-12 の教員として雇用されていなければならない。教員でない学校職員、学生教員、高等教育の教員、ホームスクール、リセラー、その他は対象にはならない。また、対象となる教員1人について Jaguar は1コピーずつのみに限られる。注文は“X for Teachers”のウェブページによってのみ可能で、パッケージはその教員の勤務先の住所にあてて発送される。“X for Teachers”プログラムは 2002 年 12 月 31 日まで続けられる。 [GD](永田)


Apple と IDG World Expo が Macworld Expo をめぐって対決

文: Jeff Carlson <jeffc@tidbits.com>
訳: Mark Nagata <nagata@kurims.kyoto-u.ac.jp>

Apple の参加しない Macworld Expo って、いったいどうなるの? 今後のこのトレードショウへの Apple 社のかかわりについて Apple 社と Macworld Expo 主催者の IDG World Expo とが対決姿勢をあらわに公の場でやり合うのを見つつ、多くの Mac ユーザーたちやベンダーたちは思わずそうつぶやかざるを得なかった。

この大騒ぎの発端は先週の終わりのことで、IDG World Expo が 2004 年の東海岸での expo の開催を 1998 以来続けてきたニューヨーク市から以前の東海岸開催地であったボストン市へと変更する、と発表したことから始まった。これは IDG World Expo とニューヨーク・ボストン両市側との間の何週間にもわたる交渉の結果として発表されたものであり、国内最大級のハイテクカンフェレンスの一つを開催するにあたってどちらがより良い条件を提供できるかを探り続けた成果であった。(IDG World Expo の CEO である Charlie Greco 氏によれば、前回 1997 年のボストンでのショウは同市に $42 million にのぼる経済効果を生み出したということだ。)

ところが、同日のうちに、Apple から次のような声明が発表された:「本日、IDG World Expo は Macworld を 2004 年 7 月にニューヨークからボストンに移すと発表した。Apple はこの決定に同意できず、従ってボストンでの Macworld には参加しない。IDG World Expo がニューヨークへの投資を中止すると言うのならば、Apple としては 2003 年のニューヨークでの Macworld への参加も再検討せざるを得ない。Apple は 1 月のサンフランシスコでの Macworld には参加を続ける。」

その翌日、IDG World Expo は、Apple の参加・不参加にかかわらずどちらのショウも開催する計画であることを再確認した。その後、週末に放映された公開の記者会見で、Greco 氏は Boston Globe 紙のインタビューに応えて IDG World Expo がこの 1 月のサンフランシスコでのショウや、あるいは東京やパリでのショウからも、Apple を締め出すことを検討しているとほのめかした。

<http://digitalmass.boston.com/news/globe_story.html?uri=/dailyglobe2/292/business/Trade_show_chief_hints_he_ll_squeeze_Apple-.shtml>

Apple は公式にはまだこの Greco 氏の発言に対するコメントを発表していないが、どうやら水面下での交渉が現在進行中のようだ。IDG World Expo は MacCentral に対して(両社とも IDG の子会社だ)今日、Apple が 1 月のサンフランシスコでの Macworld Expo には参加することになったと述べた。けれども東海岸のイベントに関しては依然として何の情報も伝わっておらず、明らかに両社は今まさに組み手争いの最中で、どちらが先に力尽きるかと張り合っている状況のようだ。いったいどうしてこんな騒ぎになったのだろうか? 資金の問題が重要な位置を占めているのははっきりしているが、その他にもいくつか理由が考えられる。

<http://maccentral.macworld.com/news/0210/21.expo.php>

東海岸 Expo にかかる費用 -- Macworld をボストンへ移すことは、IDG World Expo にとっては財政的に大きな意味がある。ボストン市は、ニューヨーク市に比べて圧倒的に数多くの財政的優遇措置を打ち出しており、ホテル料金の割り引き、市立の施設会場の Macworld のための提供、出展者のための各種サービス料金の大幅な割り引き、ボストンのコンベンションセンターの格安の使用料金などが目立つ。このコンベンションセンターは 2004 年に新しく完成予定で expo に適した広さを持っているという。(以前のボストンには十分な広さの会場がなく、ショウが2つの会場に分散されて、その間のバスでの移動も不便という状態だった。)

けれども、単なる出展者たる Apple にしてみれば、そのような財政的優遇の恩恵とは全く無縁だ。Greco 氏によれば、Apple は通常 expo のために $4 million ないし $5 million を装備・備品のために出費しており、これに何百人もの社員の旅費と宿泊費が加算され、それにいつもドラマティックな Steve Jobs の講演のための費用も馬鹿にならない。Apple 社の金庫には $4 billion 以上もの蓄えがあるかも知れないが、それでもテクノロジー市場の先行きが一向に明るくならない今日の情勢では、会社として資金の使い道を最も効果的な目的のみに絞り込もうと望むのは自然の成り行きというものだろう。

どの商店街にも Expo が -- 一方で、現在最も効果的な資金の使い道になろうとしているのが、Apple 直営の小売店だ。(現在 53 店舗の Apple Store が営業中ないし営業開始予定だ。)顧客が商品を注文するのが Apple のオンラインストア経由に限られている Macworld Expo とは異なり、Apple Store では商品の購入プロセスが容易になることを第一に考えてデザインが成されている。その上、いくら Macworld Expo が 50,000 人以上もの人を集めることができるとは言っても、Apple の発表で最近3ヵ月間に 225 万人の人々を呼び込んだとされている Apple Store にかなうはずもない。

もう一つ忘れてならないのが、Macworld Expo の入場者の大部分がすでに Apple の顧客である人々なのに対して、Apple Store を訪れる人々の中にはこのプラットフォームは初めてという人も少なくないという事実だ。ちょっときつい言い方かも知れないが、Apple はたぶん既存の顧客にこれ以上マーケティングをする必要はあまりないと判断しているのかも知れない。Apple が Macintosh 関係の出版物にほとんど広告を出さないのも同じ理由だろう。

それに劣らず重要なのは、Apple Store においては顧客の体験内容をほとんど1対1の形でコントロールできるという事実だ。ショウのブースの前をただポカンと口をあけて通り過ぎる何千人もの群衆を眺めつつ、四方から押し寄せる拡声器の大音響と雑踏の騒音とに負けまいと声を張り上げる、そんな苦労とは決別して、Apple Store では顧客が店に足を踏み入れた瞬間からその人の行動に触れることができるのだ。Steve Jobs が会社に再登場してからというもの、Apple はひたすら顧客の Macintosh 体験を Apple 自身がコントロールすることに躍起になっているように見える。新しいオペレーティングシステムのルック&フィールにサードパーティの開発者が手を加える余地を大幅に減らすように Mac OS X を設計したことも然り、また新製品を発表する際にも、Apple の選んだ時と場所において Apple 自身が公表してもよいと判断するまでは、固く秘密のベールをかけたままにするようになったことも然りだ。

実際のところ、ショウの会場でブースを置いてハードウェアを展示するのは、もはや Apple にとって単なる形式的な習慣と化してしまったような気もする。この会社の立場から見れば、Macworld Expo というのはもはやユーザーやベンダーとの繋がりの場ではなく、むしろ、マスコミの注目を集めるためのもの、特にキーノートのような場で人々の興味を引くことが主な目的になっている。Macworld Expo は素敵なコンピュータを創る人達のためのトレードショウではなくなり、ただ世界中のメディアの注目を引くためのイベントに成り下がってしまったのだ。納得がいかないという方は、最近の iMac のデザイン変更が Time 誌のカバーストーリーになった経緯を見てみるとよい。(その号の発行がキーノートのタイミングとぴったりと合わされ、キーノート終了後に聴衆が会場を出るところで Apple の購入した Time 誌が聴衆に無料で配られたのだった。)

けれども Apple もいつまでもこのペースでやって行けるわけもない。新機種のマシンや新開発のソフトウェアを毎年 1 月と 7 月に発表するということをこれまで何年も続けてきたが、ここに来て Apple もそうそう毎回は「あ、もう1つだけ」と袖の下から新製品を取り出すという期待に応えることが出来なくなってきている。前回のニューヨークのショウでは、Jobs 氏は Jaguar の開発の遅れのために新機種の Power Mac G4 ラインの発表ができないとわかって激怒したとも言われている。その結果ショウの場では、リリース直前のソフトウェア (Jaguar) と、まだリリース段階に至っていないソフトウェア (iCal と、現在もまだベータ版の iSync) とに重点を置かざるを得なかったのだ。

ショウの場で重大発表をする、というパターンはそれ自体が破壊的影響を持つ側面もある。現実に既存製品の売り上げがショウの前の数週間は大きく落ち込むという事実の示す通り、年末に新しいハードウェアを買い込むのは馬鹿げているというのが、現在では常識となっている。(年末のクリスマス商戦は年に一度の重要なチャンスだというのに。)それは、年が開けて 1 月のショウが来ればコンピュータのプロセッサ速度が劇的にアップするか、何か革新的な製品が登場するかする、と皆が知っているからだ。このトレンドにさらに拍車をかけるために、Apple はこれまで Apple 社内で年中開かれている招待記者専用の記者会見の場においていくつかの重要な発表もおこなってきた。例えば iPod の発表や新デザインの iBook の発表などがこれに当たる。

ボストン移行を受けて出された Apple の発表は、Apple がサンフランシスコでの 1 月の expo のみに集中しようと考えていることを示唆している。サンフランシスコならば本社からの旅費もそれほどかからず、それでいてメディアの大きな注目は得ることができる。7 月 8 月の東海岸でのショウを切り捨てることによって、Apple は何百万ドルもの現金を節約しつつ、決まりきったスケジュールに縛られずに新製品のリリースを楽に進めていくことができるのだ。

タイミングがすべて -- 情報によれば、IDG World Expo がニューヨークとボストンの両市と開催地の変更について交渉している間にも両社の間に頻繁に連絡が取られていたにもかかわらず Apple 社がこのような発表をおこなったことは、IDG World Expo にとって晴天の霹靂であったということだ。けれども、この発表がそれほど不意打ちであったとはちょっと信じ難い。殊に、Boston Globe 紙とのインタビューで Greco 氏が、何ヵ月も前から Jobs 氏は Apple のショウへの関与を減らそうとしているように思うと発言しているのだから。実際のところは、おそらく IDG World Expo は expo の開催地がどこになるにせよ Apple が曲がりなりにも参加はしてくれるだろうと、たかをくくっていたのではないだろうか。IDG World Expo としてはこのまま行ってしまえという気でいたのだろう。けれども Apple は、いやもっと現実的に言えば Jobs 氏は、IDG のこのちょっとしたへまを見逃さず、ボストンから手を引くという爆弾を落としたのだ。さらにニューヨークからも手を引くかも知れないと言っているのはこの点が IDG World Expo の一番の弱みだからで、このようにしてすべてが Apple に有利に傾くようにと交渉を進めようとしているのだ。

結果として、IDG World Expo はショウのトップスターの出演者との間で失ってしまった信頼関係を取り戻すために苦闘しなければならず、一方ではボストンとニューヨークの両市をもなだめて行かねばならなくなった。これらの市との間には間違いなく契約上の責任が既に発生しているのだろうから。そして、苦し紛れの手段として、Greco 氏はこのパワー闘争を公開の場に持ち出して、どれほどのコストが掛かろうとも両方とものショウを生き存えさせてみせる、と宣言したのだった。

Greco 氏はこの論争をマスコミの場に持ち出すことによって Apple への圧力を加えようとしているのかも知れないが、一方では Apple を悪者に見せることによって Steve Jobs を怒らせるのがあまり得策であるとは思えない。Apple がゴリ押しの態度を続けて行くのを見るのには失望の念を禁じ得ないが、Apple のいない Macworld Expo がクリープを入れないコーヒーみたいなのも確かだ。Apple が参加しなければ、入場者数は間違いなく激減するだろうし、ショウに見向きもしないマスコミ各社も増えるだろう。どちらも、ベンダーたちが受ける注目度が大きく減ることを意味しており、出展のための莫大な費用に見合うだけのものが無いとなれば、ドミノ効果が発生してすべてが倒れてしまうかも知れない。Apple が消えれば大手のベンダーが続いて消え、中小の開発者たちもマーケティングの予算をショウへの出展に当てることがますます難しくなっていく、というわけだ。

そういう事態になれば、IDG World Expo はショウの性格そのものを変えていくことになるかも知れない。ベンダーの負担する出展費用を減額し、カンフェレンスのセッションにより重点を置き、あるいはフロアの入場パスを無料にする、ということも考えられる。けれどもそういう形での Macworld Expo というものが、果たしてユーザーやベンダーたちがそろって参加したくなるものと言えるだろうか? 我々はやはり、Apple と IDG World Expo とが対決姿勢を改めて、Apple が Macworld Expo に参加し続けられるような妥協点を探り、どちらの会社にとっても、また Macintosh 業界に生きる他のすべての人たちにとっても、受け入れることのできる道を見つけていって欲しいと願うのみである。


Palm が廉価、飾り無しの Zire ハンドヘルドを提供

文: Mark H. Anbinder <mha@tidbits.com>
訳: 倉石毅雄 <takeo.kuraishi@attglobal.net>

最近は、パーソナルデジタルアシスタント(PDA)はなんでもこなす。最近の Palm、Compaq、Sony、Handspring、そして他社からの製品はユーザの生活を整理してくれるだけでなく、写真撮影、電子メールのチェックと送信、Web をサーフィング、カラーの写真アルバム表示、音楽の演奏、もしくは携帯電話などの機能を備えている。しかし、多くのハンドヘルドユーザは基本的な機能しか使用しない。PDA の主要な機能は未だに予定表と電話帳だ。そのようなユーザの為に、今月、Palm Inc. は無駄を省いた $100 の Zire ハンドヘルドを発表した。

<http://www.palm.com/products/handhelds/zire/>

Zire 主要機能 -- Zire (“desire[欲望]”の第二音節と同じ発音)は本当に飾り無しのハンドヘルドだ。オリジナルの Pilot 同様、2 MB のメモリと白黒の画面が付いてくる(バックライトが無いので、暗いところでの使用は諦めよう)。近代的な要素としては内蔵のリチウムイオン充電電池、赤外線ポート、そして Palm OS 4.1 が付いている。

扱いを簡略化するため、Palm は一番頻繁に使用される予定表とアドレスの二つのアプリケーションのボタンしか前面に付けていない。To Do や、メモ帳、そして他の標準的なアプリケーションはメモリに内蔵されているが、それらは Zire のすっきりした外見をゴタゴタさせない。高さ 4.4 インチ(11.2 cm)、幅 2.9 インチ(7.4 cm)の Zire は Palm のハンドヘルドの中では一番小さい。だが厚みが 0.6 インチ(1.5 cm)あるため、厚みが 0.4 インチ(1.0 cm)しかないお洒落な Palm m500 シリーズや Palm Vx、Handspring の Visor Edge などほど薄くはない。

Zire では m500 シリーズから標準装備になった“Universal Connector(万能コネクタ)”を捨て、替わりに USB を装備した Mac や Windows コンピュータとシンクロするためのミニ USB ケーブルが付いてくる。そのため、シンクロや、付随品装着のためのシリアルポートのサポートもなく、また、拡張カードスロットもない。パワーユーザや機能オタクは他のモデルを検討するべきだろう。簡単な充電用ケーブルが他のモデルでのクレードルの替わりになった。だが、Mac に繋げた USB ケーブルにも(もっとゆっくりではあるが)電池を充電する機能があるため、頻繁に旅行するユーザはこれも持ち運ぶ必要はないだろう。

Zire の部品代節約の白黒画面(グレー階調どころではない。本当に黒と白だけだ)は制約となるだろうか?その心配はないだろう。ハンドヘルドは名前や予定を整理するためだけというユーザ層はそれ以外にほとんど使用しないだろうから。もっと高価な Palm に付いてくるグレー階調やカラーの画面が役に立つのは Web グラフィックやゲームぐらいだろうし、カラー画面は電池の寿命を極端に縮める。Palm の調査ではユーザがハンドヘルドのバックライトを使用することはほとんど無いことを発見したものの、やはり時々の夜間使用のために Zire に付けて欲しかった。

Zire 対 m105 -- 一番の疑問は $100 で Zire を購入するべきか、同じ額を払って Palm のこれまでの入門レベルのハンドヘルドの Palm m105 を購入するべきかという点だろう。基本的な機能からすれば、m105 が明らかに勝っている。8 MB のメモリと画面にバックライトが付いている。しかし逆に、m105 は電源に単四電池を必要とし、Palm OS 3.5 で作動し(多くのユーザにとっては気が付くような違いではないが)、そして Zire ほど小さく、軽量で、ほっそりしていない。(以下の Web ページで Palm が現在発売しているモデルの比較表が見られる。)

<http://www.palm.com/products/family.html>

Zire の良い点は Palm のアプローチだろう。誰もがポケットに機能が完全に装備されたコンピュータを持ち運びたいと思っているわけではない。電子手帳を必要とする人達は安っぽい Palm の模造品を避けるだけの知恵がある。Zire は“それ以外の私達”のために登場した、かの古き良きマシンの目指したものと同じ意味合いの多くを具現化している。


TidBITS トラブルシューティング入門、その 1

文: Adam C. Engst <ace@tidbits.com>
訳: 亀岡孝仁 <takkameoka@earthlink.net>
訳: 佐藤浩一 <koichis@anet.ne.jp>

問題なんか全く起きないと装うのは意味がないことである。これは典型的な男の見方かもしれないが、この世の中は - コンピュータの世界そして人生一般 - 問題("挑戦," "可能性")と解以外の何者でもないといえる。我々がいつも驚くのは、あまり技術的経験のない人たちが、ことコンピュータに関する問題について手におえるはずがないと決めつけてしまうそのレベルである。もちろん、専門知識は役に立つが、トラブルシューティングは一般的な技能である。もし、ブレーキはどうして軋むのか、あるいはミシンはどうしてつかえて動かなくなってしまうのか見当がつけられるのなら、コンピュータ関連の問題も見当がつけられる。多くの非コンピュータ人間がどう考えようが、本質的な違いはないのである。

問題を手順を追って追跡し解消していくことなど自分の手が届くものではないとお思いの方のために、私があらゆるタイプの問題をどうトラブルシューティングしていくかを順を追ってお話するので参考にして頂きたい。(この記事は、私の友人の Glenn Fleishman と一緒に書いている、とりあえずのタイトルを The Wireless Networking Starter Kit としている本の、私が担当しているトラブルシューティングの章から借りてきたものである。)

最初にできるアドバイスで最も大事なもの:系統的に取り組むこと。もしどうしてその問題が発生したのか原因を考えることなく、そしてその解を導入したらどんな影響が出るかを考えることなく、いきなりある解を試してみるのは、全体を更にこんがらかせてしまうだけである。系統的に取り組む最善の方法は、まず自分に見えているもの(とりわけエラーメッセージ、どんなものでも)、自分がすること、そして自分がすることの影響についてノートを取ることである。

問題を記述する -- トラブルシューティングの第一歩は、問題を同定しそれについての情報を集めることである。なーんだ、そんな簡単なことと思われるかもしれない、そして大抵はそうなのである。なぜならば、大抵の問題はそれほど複雑ではないからである。例えば、メールが送れないとか、ワイヤでつながれた一台のコンピュータがワイヤレスネットワーク上のコンピュータから見えないとかである。

大切なのは、その問題が再現できるものか或いは間歇的なものかを見定めることである。間歇的問題は作業が継続できている限りは、再現性のある問題よりも煩わしくはないかもしれないが、この問題を追い詰めていくのはずっと難しい。なぜならば、関係している変数の一つは、時間に或いは状態に関係した事に依存しているからである。これに対して、再現性ある問題は解決してくれるよう頭を下げてきているようなものである。なぜならば、その問題を解決するまで作業を続けることができないからである。

その問題について更なる情報を与えてくれる可能性のある目に見える表示に注意を払うこと。例えば、多くの機器にはその状態を示す LED 表示がついていて、電源は入っているか、何らかの動作を行っている最中かどうかなどを表示している。もしこれらの LED があなたの思うような動きをしていなければ、その情報を書き留めること。

システムを分解する -- 問題をきちんと捕らえたと思えたら、次はその問題に関係するシステムを個々のステップに或いは部分に分解する必要がある。そうすれば、全体の中のそれぞれの要素を解析することができる。ここで難しいのは、システムのそれぞれの要素とは何かを分かっていないかもしれないということである。これが定かでないと、ある要素がどのように不具合を起こすのか理解するのが困難になる。しかし現実には、そのシステムを使うのに何が関係しているのか考えていけば、要素の大部分は決定できるはずである。

例えば、ワイヤレスネットワークでそのうち一台のコンピュータだけが Ethernet ケーブルでつながっている例をとってみよう。そしてこの例にとったネットワークでは、このワイヤでつながれたコンピュータは略式のファイルサーバとして使われているとしよう。そしてあなたは、ワイヤレスコンピュータのうちの一台を使っていて、それまでは問題なく使えていた共有フォルダに突然接続できなくなったとしよう。このシステムを構成している部分は何なのか?まず、この状況下で正当に作動するためには何が正しくなければいけないかを定めよう。そうすれば、そのあとで個々の構成要素を解析することができる。

もちろんこれより更に細かく分解することもできるが、手始めとしてはこれで十分である。

この例で示したのは一つの動作システムであることを覚えておいて欲しい。これは重要なことで、例えば、他の動作システム - このファイルサーバが見えている他のワイヤレスコンピュータ - があれば、早く問題を浮き彫りにする助けになる。

システムのすべての構成要素を書き留めること。もしあなたが絵型人間であれば、システムのすべてがどのように係わりあっているのかのダイヤグラムを書いてみるのもいいと思う;これは、もしシステムを接続ケーブルをはずしたり、或いは機器を並べ替えたりして分解しなければならない時には、きわめて重宝なものとなる。

自分自身に質問する -- システムのすべての構成要素を見極めたら、次は個々の部分を注意深く見て、そこでの障害がどのように問題全体に影響を及ぼすか、その理由を考え出すのだ。今回の例で、それぞれの構成要素を取り出して分析し、テストに結びつく質問を投げかけてみよう。

前の方で、再現性のある問題と時々おこる問題の違いについて触れた。もしEthernet 接続のコンピュータにアクセスする問題がいつも起きるとは限らないなら、追加の質問がある。

テストの答えが得られるようになったらすぐ参照できるよう、これらの問題をノートに書き留めて番号を振っておこう。

質問に答える -- 質問のリストができたなら、もう一度それを見て、それぞれの質問の回答を得るためにどのようなテストを行えばよいか考える。質問を、簡単、普通、難しい、にざっと分けよう。(質問番号の隣に、易、普、難、などと書くのも良いだろう)

また、直感を働かせよう。もし妻が 4 才の子供を Ethernet 接続のコンピュータで遊ばせているのではないかと思ったなら、そのマシンから始めてみよう。あるいは、アクセスポイントを工場出荷時の初期設定に戻さなければならない時があったなら、そこから始めると良い。

どこから始めるにしても、まず一番簡単な質問の答えを得るためのテストから始める。例えば、子供が Ethernet ケーブルを蹴って外していないかをチェックするのは簡単に済む。そのマシンでオペレーティングシステムを再インストールするようなことは、他のもっと簡単な方法をすべて試した後でなければ考慮する理由が無いだろう。

系統的に作業をすることはこの時点でとても大事であり、システム全体を大きく変更してしまうようなことは、可能なら後に持っていくほうが問題を分析しているあいだ状況が変わらないので良い。例えば、新しく購入してきたアクセスポイントをインストールすることを考えているなら、トラブルシューティングの最中に行うのはやめることだ。でなければ全てが混乱してしまう危険がある。

それぞれの質問に対する答えをノートにチェックするのを忘れないようにし、テストを実行したとき何か気になることが起こったらそれらを残らず記入しておく。このように勧めるのは、問題解決をしているあいだに何をしたか忘れてしまうからではなく、次にこの問題が発生したときにすっかり忘れてしまっているかもしれないからだ。加えて、誰かに助けを求めようとするときに、いくつかのテストを実際に試したが否定的な結果が出たと整然と言えるだろう。

ほとんどの場合、問題に対する解決法は質問に答えていく過程で明らかになっていくものだ。もしかすると、夏なので付けた網戸が無線信号を妨げていたためとか、子供のために妻が普通でない方法でコンピュータを設定したからかもしれない。アクセスポイントがワイヤレスからケーブルへの Ethernet ブリッジする設定をなくしてしまったからかもしれないし、コンピュータやアクセスポイントの再起動が必要なだけだったのかもしれない。

エキスパートに助けを求める -- 本当に厄介な問題の場合、テストをしても決定的な答えを導き出せないだろう。そんなに気にすることはない。手順を注意深く追っていたのなら、うまくいかなかった理由はたぶんシステムの全ての構成要素を充分に理解していなかっただけなのだから。次にどうするか? もちろん助けを求めるのだが、それは次回TidBITS トラブルシューティング入門、その 2にて。


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Valid XHTML 1.0! , Let iCab smile , Another HTML-lint gateway 日本語版最終更新:2005年 12月 26日 月曜日, S. HOSOKAWA