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#1703: Take Control 著者が死去、Google の Find My Device がプライバシー水準を向上、Helper Helper によるボランティア管理、ホテルで AirPlay、Apple が中古部品の使用を許容、海底ケーブルの維持管理

Take Control of OS X Server の著者 Charles Edge が死去したことを、深い悲しみをもってお伝えしなければならない。彼は Mac 管理者コミュニティーの著名な一員であった。今週は Glenn Fleishman が寄稿記事で、Google の Find My Device ネットワークがいくつかの重要なプライバシー対策によって Apple の Find My ネットワークの一歩先を行っている様子を検討する。Adam Engst はオンラインのボランティア管理システム Helper Helper を調べる。数多くのイベントボランティアたちを取りまとめる必要がある団体のための、中央化されたシステムを提供するものだ。それから、AirPlay がホテルの客室で使えるようになり始めていること、Apple が公式の修理で中古部品の使用を認める決断をしたこと、海底ケーブルの維持管理をめぐる興味深い物語について、それぞれ簡潔に紹介する。今週注目すべき Mac アプリのリリースは 1Password 8.10.30、Default Folder X 6.0.6、GraphicConverter 12.1.1、Microsoft Office for Mac 16.84、それに Zoom Workplace 6.0.1 だ。

Adam Engst   訳: 亀岡孝仁  

Take Control の著者 Charles Edge 逝去

これは私にはとても生々しすぎる。今朝、MacAdmins Slack 上の Rich Trouton のDer Flounder ブログ、そして Tom Bridge のサイトで、我々の友人で Take Control の著者でもある Charles Edge が 19 April 2024 に突然亡くなったというニュースが広まり始めた。彼は 40 代後半で、そして、はい、下記の彼の典型的なバイオ写真からは彼のユーモアと太々しさの感触が感じられるであろう。

Charles Edge

私が Charles に会ったのは 2012 年に New York で開催された MacTech イベントで あったが、彼がシステム管理の話題に関する何冊もの技術書と何千というKrypted ブログ記事を書いたことはすでに知っていた。私たちは、彼が Take Control の本を書く可能性について何回かの電子メールを交換したが、Take Control of OS X Server の考えに辿り着いたのは 2014 年初頭になってからであった。

Take Control of OS X Server cover

Charles の頭の中の情報量は驚くべきもので、私が彼の下書きを読んでいた時、彼は調べなど必要とせず、頭の中から全体をただ放り出しているという印象を受けた。私はそれが必ずしも正しくはないとは思っているが、Charles は一緒に仕事をしていて楽しい人間で、質問には非常に敏感で、良い編集には何時も感謝していた。彼のコンテンツを一時も早く共有するため、出版の実験の一つとして、TidBITS 会員のために彼の本全体を章毎にストリーミングした (""Take Control of OS X Server" を TidBITS でストリーミング" 12 May 2014 参照)。彼を追悼して、私はこれらの章を誰もが利用できるようにした。

Charles は Winnie-the-Pooh (クマのプーさん) の意味で正真正銘の Tiggerであり、プロジェクトからプロジェクトへと精力的に飛び回っていた。Take Control of OS X Server の執筆の終わりに向けて、彼は全国展開の Apple コンサルト会社 318 の Chief Technology Officer から、Jamf Software での Jamf Nowの開発を管理へと転職し、そこに数年間いた後、より研究開発的な役割へと移った。

彼は 2020 年に Jamf を去り、最近では、Apple の Keychain に量子攻撃耐性機能を追加することを目的としたパスワードマネージャーである Secret Chestに取り組んでいた。今、私は "iMessage の新しい PQ3 暗号化プロトコルがポスト量子攻撃に対する保護を提供" (23 February 2024) に書いた新しい Apple 技術について彼に尋ねることが出来たらいいのにと思っている。Secret Chest のブログには彼の投稿が満載で、彼が亡くなった日のステガノグラフィー (データハイディング技術) に関する投稿や、パスワード管理の過去と未来の優れた記事などが含まれる。Charlesはまた、ベンチャーキャピタル企業 Bootstrappers.mn の CTO、Minnesota に拠点を置くコミュニティ技術組織 Minnestar の取締役、 Mac Admins PodcastThe History of Computing Podcast の活発なポッドキャスターでもあった。

コンピューティングの歴史は、特に Charles の心に近く、大切なものであった。彼は7年間もそれに関する一冊の本に取り組んでいたが、このプロジェクトは4巻と 2000 ページ以上に膨れ上がった。一週間前の彼の最後の Facebook の投稿は、彼がどの様にその契約に署名したばかりかについてであった。私は、彼が一緒に働いていた出版者がその原稿に興味を持ち続けることを願っている。なぜならば、Charles はその編集者が完成させてそれが日の目を見ることが出来る事を願っていると私は確信しているからである。私は間違いなく Charles の思い出の品としても一冊欲しい。

Charles Edge book references

最後に、私は Apple の世界の他の多くの人々ほど Charles と親しくはなかったが、彼は、いつも話す時間を取ってくれ、出来るものはどんな質問でも手伝ってくれ、そして出来ない時にはあなたを他の人に紹介することをとても楽しんだ。以下の Facebook の投稿からも分かるように、彼は親切で、魅力的で、いつも他人のことを考えていた。彼の死は、彼の多くの友人や同僚、そして Apple の世界全体にとって大きな損失である。

Charles Edge Mac floppies

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Glenn Fleishman   訳: 亀岡孝仁  

Google、独自のクラウドソース追跡サービスでプライバシーのレベルを上げる

Google は、May 2024 に待望の Find My Device ネットワークサービスを開始し、プライバシー保護とストーカー防止機能のための取り組みを強化する。Apple のほぼ同じ名前の Find My ネットワークと同様に、Google の Find My Deviceネットワークは、対応する Android 携帯電話やタブレットを介して暗号化された ID信号を中継することで、デバイスの場所をクラウドソース (不特定多数の人に業務を委託) する。この検索大手の Find My Device ネットワークは Android デバイスと、ChipoloPebblebee などの企業の小型追跡機にも対応する。Googleには、Apple の Find My ネットワーク方式にはない - 今の所は - 3つの明確に異なるプライバシー改善がある。

紛失物追跡の背景

簡単におさらいすると、クラウドソース位置追跡は、GPS、セルラー、そして Wi-Fi位置情報からそれ等がどこにいるかを知るネットワークに接続された機器 (Android或いは iOS/iPadOS) を利用する。ネットワーク接続のないアイテムは - AirTagの様な小型追跡機、或いは一時的にオフラインの Mac、Apple Watch、Android スマートフォン等を含む - 登録された所有者で識別された暗号化されたペイロード(データ本体) を含む匿名化された Bluetooth 信号をブロードキャストする。

このネットワークに接続された機器は、信号を発している機器からの Bluetooth信号を、それは暗号化されている、データを検査することなく Apple や Googleが走らせる中央サーバーに中継する。登録された機器やアイテムの所有者のみがソフトウェアを使え - Apple 機器用の Find My と Android ギア用の Find My Device - それがこれらの中央サーバーで位置情報を照会させてくれる。一旦ペイロードが紛失したアイテムの所有者によって取得されると、それはその所有者のデバイス上でローカルに復号化される。

暗号化のため、自らの機器が位置データを中継している Apple ユーザーも Androidユーザーも、紛失したアイテムの所有者や、どのアイテムがブロードキャストしているかすらをも特定することは出来ない;同様に、追跡されている機器を所有する人は誰であっても、信号が中継された機器について知ることは全く出来ない。(アイテムは Bluetooth 識別子を、一日を通してある間隔で新しい繰り返すことのない値に更新して、誰かがその追跡器を追跡するデータベースを構築するのを防ぐ。)

それは全て良さそうに聞こえるし、このやり方は Apple の最初の3年間の AirTagと Find My ネットワークで、実際にびっくりする程うまく機能してきた。危険は小型追跡機が認知や承諾なしに人々を追跡するのに使われ得る方法にあり、窃盗やストーカー行為のために AirTag 追跡を悪用する人達がいる。

AirTag は、当初家庭内暴力被害者の擁護者やプライバシーの専門家が必要だと信じていたよりも少ない保護を提供していた。Apple は徐々に AirTag の警告とアラート音を改訂した ("Apple、AirTag プライバシー問題への対処の方法を説明" 12 February 2022 参照)。変更履歴を無視して言うと、現在のストーカー対策のフィードバックには2つのやり方がある。AirTag があなたと一緒に移動していて、所有者が近くにいない場合は、近くの iPhone や iPad 上に警告がポップアップ表示される。同じ位大事なことだが、AirTag は静止しているが、所有者が 8 から 24時間の間に無作為に選択された期間の間その近くにいなかった場合、それは顕著な音を数秒間発し、そしてその先は無作為な間隔でそれを繰り返す。

これらの警告は、AirTag のような追跡器を作る企業の参加を得て、Apple とGoogle が共同開発した業界標準の基礎を形成した。("AirTag がニュースに: NYPD の推奨と Apple と Google による追跡への業界規格提唱" 8 May 2023 参照。)Find My ネットワークと互換性のある追跡器は全て、すでに一定間隔でビープ音を鳴らす。クロスプラットフォーム機器ベースの警告は、2024 年に Android、iOS、そして iPadOS で展開されるはずである。

Google のプライバシー追加分

Google は、その Find My Device ネットワークをストーカーや他の犯罪者が自らの目的のためにクラウドソースされた位置追跡を妨害する方法を阻止する追加の選択を行うことで特色を出した。

まず、Google の Find My Device ネットワークのアルゴリズムは、近くに複数のAndroid デバイスがない限り、ブロードキャストするアイテムに関する位置情報を中継しない。その考えは、自宅や他の私的な場所にいる誰かは、位置報告を発するのに十分なだけの Android 機器を周りに持っている可能性は低いであろうということである。Google は、"我々の調査によると、Find My Device ネットワークは、近くに多くの機器がある可能性の高いカフェや空港等の公共の場で最も価値があることが分かった" と言っている。追跡データは Bluetooth 経由で送信されるため、Android (そして Apple) のハードウェアは信号強度を使って近さを判断出来る。従って、Android 携帯電話でいっぱいのアパートに居ても、Google が呼ぶ "集約しきい値" を自動的に越えることはないであろう - それ等の機器も十分に近いところにいる必要がある。(Google は - おそらく意図的に - そのしきい値に達するには何台必要かを言っていない。)

第二に、Android 機器は、あなたが家にいて Google アカウントに自宅の住所を指定している場合、検出したブロードキャストからクラウドソースされた位置データを中継しない。これは追跡に関してのプライバシー先行であり、自分のハードウェアがリレーポイントとなる状態で意図せずに位置を明らかにしないようにするが、一方では、自宅の住所を Google に渡し位置追跡を有効にする必要があることを意味する。Google は、広告を配信したり他の儲かるターゲティングを提供するために位置データを必死で望んだあまり、同社はある時点で、ユーザーが表面上は Google アプリからログアウトしていた場合でもユーザーを追跡した。その行為は、昨年 40 の州と $392 million で和解する結果となった。

Apple は Find My に別の在宅保護形態を採用している。Apple は、Contacts の Meカードに自宅の住所を定義させてくれるが、その情報を Apple 自身には送信しない。Apple はまた Significant Locations と呼ぶものを追跡する。それはあなたの旅行から推測し、機器上にのみ保存、そしてあなたの機器間で同期する時にもエンドツーエンドで暗号化する。自宅または重要な場所に未知の AirTag またはFind My アイテムを持って到着すると、以前に警告を発した場合でも、Find Myは警告を発する。しかしながら、私が知る限りそして Apple が開示した限りで言うと、Find My ネットワークのクラウドソースはあなたが自宅にいる時でも引き続き働き続ける。

第三に、Google の Find My Device ネットワークは、誤用を防ぐために2つの異なる絞り弁を採用している:Android デバイスが近くでブロードキャストされたアイテムの場所を中継する頻度と、 加えて そのアイテムの所有者がその場所を照会できる頻度である。Google によれば、殆どの紛失したアイテムは静的な場所にあると言うが、このやり方だと、盗まれたり忘れ物になったりして移動中の車両 (バス、地下鉄、電車など) にあるアイテムを追跡するのが難しくなる可能性があると思われる。しかし、そのような場合、近くの人々は不要な追跡について通知されるべきであり、潜在的にあなたのものを見つけるのに役立つであろう。それはトレードオフで、そして Google はフェンスのこちら側に立つ論理的な論証をしている;Apple は同様の制限があるかどうかを開示していないので、反対側に立っているように見える。

これら3つの要素は示唆に富んでいる。それぞれが等しい重要性や価値を持っているかどうかは私には分からないし、私のプライバシーを保護するために Googleに私の居場所に関する情報をより多く提供することは心配でもある。しかし、特に安全性が懸念される市場でのプライバシーをめぐる競争を見るのは良いことであり、私は Apple が Google の例から学ぶのを期待したい。

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Adam Engst  訳: Mark Nagata   

Helper Helper でボランティア管理を効率化

ここ数年間のうちに私は Finger Lakes Runners Club (FLRC) との関わりが深くなり、競技会の運営もするようになってきたが、私にとって最も厄介な問題の一つはボランティアの求人、調整、およびコミュニケーションの仕事だった。FLRC のイベントのいくつかはかなり大規模なもので、今月初めに私が運営を任された Skunk Cabbage Classic 10K and Half Marathon 競技会もそのようなイベントの一つだった。今年はこの競技会に 725 名のランナーが参加したので、それほど多くの人たちを一つの場所に集めるには、いやむしろ、土地の道路を 6.55 マイル (10 km) 走る前と後のそれぞれに一つの場所に集めるには、77 名ものボランティアたちの助力が必要だった。

ボランティアの力を得て運営されるイベントを誰もが担当する訳ではないが、読者の皆さんの多くもいずれはその種の経験をすることになるのだろうと思う。ほんの数人のボランティアたちしか参加しない小規模なイベントなら、頭の中で覚えていることも可能だろう。でも、十人程度を超えた人数が必要になった途端、きちんとしたコーディネーターはスプレッドシートですべてを追跡する作業を始めることだろう。なぜなら、表形式のスプレッドシートがリストの管理に適しているからだ。数年前の私もそこから出発して、公開の Google Sheets スプレッドシートを作り、誰もが自分の手で情報を適切な場所に書き込めるようにした。(私はセルフサービスシステムの信奉者だ。) それは確かに機能したが... あまり理想的とは言えなかった。スプレッドシートの中に自由な形式でデータ入力をせよと言われても、おじけづいてしまう人たちが多く、代わりに私が手作業で入力することはできたけれども、大成功というには程遠かった。また、公開されたスプレッドシートに連絡先の情報を書き込むのを嫌がる人たちも多かったので、グループ宛に電子メールを送りたい場合には私が手作業で一つ一つコピー&ペーストしなければならなかった。

2022 年の後半になって、私はフル機能のボランティア管理システムを探す作業に乗り出した。調べてみるとそこには驚くほど多種多様な候補があったが、毎年何千ドルもかかるようなものや、無料だけれどもボランティアのコミュニケーションのありとあらゆる所にくだらない広告を撒き散らすもの (ええっと、SignupGenius かな) はすぐに候補から外した。また、インターフェイスの出来が悪いものも多くあった。最終的に、私は CEO と電話で話した後で決断したのだが、Helper Helper という名前のクラウドベースのシステムを選んだ。寄付金管理、身元調査、トレーニングモジュールといった不必要なアドオンを提供したりせず、ボランティアのみに集中している。Helper Helper の年額料金はその団体の種類や具体的な機能によって大きく変わるが、私たちに見積もりとして示された金額はいつも使っているウェブサービスのために用意している予算の範囲内にあった。一年間使ってみて私たちは Helper Helper を気に入っているし、十分費用に見合ったものが得られていると思っている。

Helper Helper のセットアップ

Helper Helper は 4 つの主たるデータタイプを扱う。ボランティア、チーム、団体、そして仕事内容だ。4 つのそれぞれがインターフェイス上でトップレベルのタブとして示される。

Helper Helper nav bar

ボランティア (Volunteers)

Helper Helper では個々のボランティアがそれぞれ自分の項目を持つ。ユーザーはまずサインアップしてから、氏名、電子メールアドレス、および電話番号 (電話番号は自由記入だが、テキストや音声でユーザーに直接連絡できて便利) などのメタデータを管理する。管理者が手作業で、ボランティア項目を作成したり、ボランティアを管理者に格上げしたり、アンケートをセットアップして T-シャツのサイズなど追加情報を集めたり、既存のユーザーのためにあらゆる情報を編集したりすることも可能だ。Helper Helper は個々のユーザーごとに過去と未来の責任分担を追跡する。

Helper Helper volunteer profile

上のスクリーンショットの例でもお分かりのように、自分でサインアップできない人やそうさせるべきでない人、例えばレースの給水所でガールスカウトたちに大人の監督の下でボランティアの働きをしてもらうような場合に使うために、プレースホルダーのボランティアを作成しておくこともできる。そのような場合でもイベントのコーディネーターは十分なボランティアの人手があるかどうかを知り、その人たちが働いた時間を追跡する必要もあるのだが、プレースホルダーを使うことによって個人情報を保存する必要なしにその目的を達成することができる。

チーム (Teams)

ボランティアたちを集めてチームを作ることができ、これは二つの意味で役に立つ。まず、こちらが私たちの状況では最も重要なことだが、管理者がチームのメンバーたちをユニットとしてメッセージを送ることができる。例えば FLRC では、個々のレースごとにチームを作っておけば、去年そのレースにボランティアとなってくれた人に対して今年もしてくれないかと頼むことができて便利だ。(Tonya が強調する通り、それは礼儀正しいやり方でもある。もう一度ボランティアしてくれないかと招待しなければ、去年やったことを評価してもらえなかったのかと受け取られてしまいかねないからだ。) 次に、管理者は特定のチームの中でボランティアの仕事を制限することができる。それにより、例えば特定の仕事を適切なトレーニングを受けた人たちだけに依頼できるようになる。

Helper Helper team list

どうやらこれは普通でない使い方らしいのだが、私たちはボランティアがそれぞれ複数のチームに属することができるようにしている。私たちのボランティアには複数のレースで働いてくれる人たちが多いので、ボランティアの人は皆、それぞれのチームに時間が割り当てられている。でも大多数の Helper Helper サイトでは基本的に排他的なチーム分けが使われていて、そのお陰でチーム活動の正確なレポートやチーム間の比較ができているようだ。

団体 (Organizations)

私が理解するところでは、Helper Helper は一般的に、例えば大学の体育部で外部の団体のために働くボランティアを割り振ったりする活動に使われることが多いようだ。(そのような場合のチームでは、例えば陸上競技チームとフットボールチームのどちらがより多くのボランティア活動をしているかを比較するような目的を想定しているらしい。) けれども FLRC では外部の団体のためにボランティア活動をすることはほとんどない。それでも Helper Helper ではあらゆる仕事がそれぞれ何らかの団体に割り当てられている必要があるので、私たちは個々のレースごとにそれぞれ別々の団体をセットアップしている。

実際的なことを言えば、私たちにとってこの団体設定の主たる使い道はレポート作成にある。Helper Helper は個々の団体ごとにどれだけのボランティア通算時間が割り当てられたかを示してくれるからだ。

仕事内容 (Opportunities)

仕事内容 (Opportunities) こそが Helper Helper の核心だ。ここで、それぞれの人に割り当てられる実際の仕事が示される。仕事内容 (Opportunities) には多くのメタデータが含まれる。仕事のタイトル、説明、日付と時刻、場所、コーディネーター情報、どのチームが見られるかといったメタデータがある。

Helper Helper opportuntities

最も重要なこととして、一つの仕事内容が複数個のタイムスロット(割り当て時間)を持つことができる。個々のタイムスロットごとにそれぞれ独自の日付、時刻、タイトル、説明、およびボランティアの最大人数を指定できるので、タイムスロットは一つの仕事の中で複数の作業を定義できる効率的な方法となる。

(個々の作業ごとに別々の仕事内容を作成することも可能だが、そのやり方ではサインアップしたい人たちに多数の作業を並べた一つの長いリストが示されてしまう。それよりも、そのレースに属する作業を階層的にまとめるやり方の方が扱いやすい。その上、このタイムスロットのやり方を使うことでサインアップしたボランティアたちのみに宛てて一つの場所からコミュニケーションをすることが可能になる。)

Helper Helper time slot editing

ボランティアの最大人数を指定できる点は非常に重要だ。こうすることで、作業のどれかが定員一杯になれば、それ以外の作業にサインアップするよう人々を促すことができる。このレースでは計時係主任を 1 人しか必要としないが、それに加えて計時係助手が 3 人欲しい、といった具合だ。人気が集まると思われる作業には順番待ちリストを作っておくこともできる。そうすれば、やりたい作業の順番待ちに登録しておいて、そこにサインアップしていた人がキャンセルした場合に自動的に自分が受け持てるようになる。

登録とキャンセルの締め切りが設定できたり、タイムスロットの一部分にだけサインアップできたりという柔軟性はありがたいと思うが、メリットより手間の方が大きい気もする。ボランティアの人数が十分でない場合には、人々にそれぞれ好きなものに登録してもらい、間際になって誰かが登録をキャンセルすれば、私としてはただイライラするだけのことだ。それにまた、タイムスロットを細かく分割するのは面倒だ。誰かがタイムスロットの一部分のみにしか参加できないのなら、そもそもその人はサインアップするべきでない。なぜなら、1 人でできることのために 2 人の人の仕事をシフトしなければならず、私の負担がさらに増すだけだからだ。2 人分をシフトするくらいなら、タイムスロットを分割しておいてから人々がそれと知って登録できるようにしたい。

一つの仕事内容が保存されれば、それがすべてのボランティアたちから見えるようになる。人々が自分でそれと気付くと期待すべきではないので、FLRC では公開のサインアップリンクを作成しておいて、個々の仕事内容ごとに私たちのウェブサイト上にそのサインアップリンクを提供するとともに、レースの発表にもそれを含めている。ユーザーがリンクをクリックすれば、作業のリストが開く。

以上が Helper Helper の設定方法の簡単な概観だ。では、実際のユーザー体験はどんなものだろうか?

Helper Helper で仕事内容にサインアップする

Helper Helper は iOS アプリAndroid アプリを無料で提供し、iPhone 上の Safari でそれとほとんど同じに動作する反応性の良いモバイルサイトを提供している。アプリとモバイルサイトのいずれでも、ユーザーが新しい仕事内容を見つけたり、自分の責任分担を一覧したり、自分のボランティアとしての統計情報を見たりできる。

Helper Helper user interface on the iPhone

アプリとモバイルサイトの主な違いは、デバイス上の push 通知に対応しているか否かだ。デフォルトで、Helper Helper はすべてのボランティアに対して責任分担を 2 日前に通知し、2 時間前にもう一度通知する。これらの通知は電子メールと push 通知で送られるが、どちらのチャンネルを使うかを管理者が設定できる。Helper Helper では SMS テキストメッセージングによる通知を送ることも可能だが、そのために追加料金がかかるので、私たちは使っていない。私たちのボランティアの大多数は十分上の年齢なので、電子メールを読んでくれると信頼できる。

Helper Helper notification options

FLRC のレースで幅広い層のユーザーにボランティアとして使ってもらった経験から言えば、わざわざアプリをダウンロードするユーザーは多くなくて、多くの人たちはウェブサイトと電子メールを通じて Helper Helper とやり取りしている。なので、アプリがあるのはありがたいことだけれども、push 通知があることは保証されない。モバイルウェブサイト自体はうまく働いているので、その点は大きな損失となっていない。

作業にサインアップするのは Sign Up ボタンをタップしてからその選択を確認するだけの単純なことだが、新規ユーザーは最初にアカウントに登録しなければならず、しばらく離れていて戻ってきたユーザーはログインしなければならない。これはよくあるインターネット上のアカウントとのやり取りなので、テクノロジーに疎くてログインに困難を感じた人たちはほんの少数だった。

高度なオプションを使えば責任分担の表示をプライベートに設定することができ、そう設定しておけばコーディネーター以外の人から見えなくなる。設定しなければ、例えば 1 of 2 と書かれている横の人のシルエットのように見えるところをタップすれば誰がサインアップしているのかが分かる。また、サインアップの際にコーディネーターにメッセージを送ることもできる。実際、この機能を効果的に使っている人たちも何人かいた。

Helper Helper user signup process

ほとんどのユーザーにとってはそれで全部だ。ここでは意図的にシンプルな手順にしてある。サインアップを済ませた後に、考えが変わって自分の責任分担を削除したければアプリやウェブサイトを使って削除できる。するとそのスポットが即座に解放されて他の人がサインアップできるようになる。実際そういうことは時々起こっているし、もちろん私はボランティアを失いたくはないけれども、しばらくの間自分がイベントから離れていても、その間に私の知らないところで人々が来たり去ったりしても私には別にどうということではない。

Helper Helper でイベントを管理する

ボランティアたちが仕事内容にサインアップするにつれて、Opportunity 画面の一番上にある Opportunity Times セクションがそれぞれの作業がどの程度埋まっているかを示し、Opportunity 画面の一番下にある Commitments セクションが個々のボランティアを示す。

Helper Helper commitment details
この画面にリストされている TidBITS 読者の方はお気付きになるだろうか?

ボランティアたちがログインすることに対して私のサポートを必要とするような問題が起こることはほとんどなかったが、私が Add Users ボタンをクリックして手作業で人を追加したり望みのユーザーを探したりする必要があることも時々あった。例えば、お金を払ってイベントに参加してもらった写真家を追加して、その人もイベント前の情報を全部見られるようにしたこともあった。同じように、特定の人を特定のスポットに置いておきたいと思うことも時々あって、そういう場合には直ちに手作業でその人を追加して、他の人にそのスポットを取られないようにするのが賢明なやり方だ。デフォルトでは、イベント前にそのように手作業で追加された人には電子メールで通知が届くようになっているので、あらかじめその旨をその人に知らせておくのがよい。(サインアップせず直接援助を申し出てくれる人がいれば、イベント後にその人を追加するようにすればその人に通知は送られない。)

Helper Helper adding users manually

手作業で人を追加するのが役に立つもう一つの状況として、コーディネーターが人々の割り当てを変更したい場合がある。例えば、計時係助手のうち 1 人にこのレースに限って計時係主任を務めてもらいたいとしよう。その場合、私が自分で計時係主任のスロットを削除してから追加し直すことができる。Helper Helper は責任分担を拒否することも削除することもできる。その違いは、拒否した事実がアカウントの中でその後も維持されることだ。これまでの経験で、私は何の知らせもなく欠席したボランティアについては責任分担を拒否するようにしてきた。いずれの場合もコーディネーターはそのボランティアに電子メールを送ることが可能だが、私が誰かを削除した場合にはほとんどいつも、その人から別途知らせが届いていたので、そういう状況ではわざわざ新たなメッセージを送らずに既存の会話の中で話を終わらせる方が簡単だ。

Helper Helper deleting a commitment

Helper Helper はすべてのボランティアに対して責任分担を 2 日前に通知し、2 時間前にもう一度通知するけれども、それらは必要最小限のリマインダーに過ぎず、時刻と場所を知らせるだけのものだ。だから、すべてのボランティアに宛ててあらかじめ何か一言添えた電子メールを送っておくのがよく、そうすればその人たちも自分がちゃんと参加している気持ちになれるだろう。Helper Helper はそのために Opportunity 画面の一番下に Message Attendees ボタンを設けている。このボタンで Message Center が開き、そこでコーディネーターはメッセージを書くことができる。送られるのはプレインテキストのみの電子メールであってスタイルを付けたりグラフィックスを添付したりはできないが、ちゃんと役には立つ。

Helper Helper messaging volunteers

Message Center の一番上のところには非常にありがたいポップアップメニューがあって、これを使って特定のタイムスロットのみに宛先を絞ることができる。私たちはたいていの場合これを使っていないが、非常に規模の大きなレースでは目的ごとに、例えばビブスを集めるボランティア、救護所ボランティア、コースマーシャルに分けてそれぞれ別々のメッセージを送る必要がある。残念ながらこれはポップアップメニューなので、いろいろ違った場所を担当するコースマーシャルに分けて同じメッセージを 17 回も送る必要があって手間が大変だ。

Helper Helper は個々のメッセージとそれがいつ送られたかをアーカイブ保存しているので、どのコミュニケーションをしたかが簡単に追跡できる。Message カラムに見える行をどれでもクリックすればそのメッセージ全文が開くので、何を言ったかを見直したり、あとで再利用したりできる。

Helper Helper message archive

Opportunity 画面の一番下にはあと 2 つボタンがあって、これらにも知っておくべき価値がある:

最後にもう一つ、Helper Helper には詳細なレポート機能があって、下に示した Overview 画面にある通りだ。他のタブではそれぞれチーム、個々のボランティア、特定の仕事内容、および団体に関する統計情報に踏み込むことができる。日付の範囲を指定できるほか、団体やカテゴリーでフィルターして統計に含めたり除外したりできる。(下に示したのは Race 対 Non-Race の円グラフだ。他の団体の場合は、もっと具体的な仕事内容にカテゴリー分けして表示させたいと思うかもしれない。)

Helper Helper reports

FLRC にとっては、これらのレポートは単なる統計数字に過ぎない。私が思いつく限り、その利用方法は高レベルの概観を他の人たちと共有して「こんなことを一緒にやり遂げたぞ!」と言い合うことくらいだ。それでも、きっと他の団体ではボランティアの仕事内容の与える影響を数値化して評価することがとても重要になることもあるに違いない。

Helper Helper の良い点と望む点

全体的に、Helper Helper は私たち FLRC にとってとても有益な存在で、年額料金に十分見合う価値があると思う。具体的には:

けれども、だからと言って Helper Helper が完璧だという訳ではない。これはごく小さな会社が作っていて、彼らは技術サポートの質問やバグ報告にも反応が早いけれども、もっとここを変えたり改善したりしてくれれば私たちの使い方に良い結果が生まれるのにと思う点がいくつかある:

これらの問題点が解決されれば私たちが Helper Helper を使う体験がもっと良いものになるだろうとは思うけれども、これらは決して交渉決裂要因ではない。端的に言えば、Helper Helper は私たちがボランティアを集めてコミュニケーションするやり方を根本から変革してくれた。もしあなたがかなりの規模のボランティア管理を必要とする何らかの団体に属しているなら、ぜひ Helper Helper を試してみられるとよい。

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TidBITS 監視リスト: Mac アプリのアップデート

1Password 8.10.30 Agen Schmitz  訳: Mark Nagata   

1Password 8.10.30

AgileBits が 1Password 8.10.30 をリリースして、このパスワードマネージャにさまざまの改良やバグ修正を施した。今回のリリースでは Share シートを使う際に項目リンクをコピーするか共有するかを選ぶオプションを追加し、削除した項目についてバナーを表示してそこに項目を復元したり完全に削除したりするオプションを提供し、新しいポップアップを使って 1Password ブラウザ拡張や Quick Access のロックを外せるようにし (1Password アプリにナビゲートする必要がなくなる)、オフライン状態のアカウントが一つでもあればアカウントの管理ができなかった問題を解消し、ヴォールトを共有している場合に表示されるユーザーのリストがちらつかないようにし、空白の項目リストの上でメッセージングが誤ってバナーとして表示されていた見栄え上の不具合を修正し、サポートされる言語のいくつかでローカリゼーションを改良した。(購読年額 1Password から $35.88、新規にアカウントをセットアップする TidBITS 会員は 6 か月間無料、無料アップデート、4.8 MB のインストーラダウンロード、リリースノート、macOS 10.15+)

1Password 8.10.30 の使用体験を話し合おう

Default Folder X 6.0.6 Agen Schmitz  訳: Mark Nagata   

Default Folder X 6.0.6

St. Clair Software が Default Folder X 6.0.5 をリリースして、Open/Save ダイアログを拡張するこのユーティリティが OneDrive、Google Drive、Dropbox、および Box のフォルダの名前、アイコン、場所を正しく表示するようにした。今回のリリースではまた、Quick Search ウィンドウに完全なパスをペーストまたはタイプ入力してそこにある項目を開けるようにし、Finder ウィンドウの中のタブを閉じた際に最近開いた Finder ウィンドウの履歴を更新するようにし、Alfred 5 への対応を更新し、Finder ウィンドウをリサイズした後でそれが元の位置とサイズに戻ってしまったバグを修正し、Favorite にあるカスタマイズされた名前がそのフォルダ位置を変更しても変わらないようにし、Finder クリック機能が補助ディスプレイ上の QSpace ウィンドウを認識していなかった問題を解消した。

そのリリースの後間もなく、St. Clair はバージョン 6.0.6 を出して、Dropbox、OneDrive、Google Drive、Box Drive などにあるファイルやフォルダに関する情報の収集のパフォーマンスが遅くなることがあった問題を解消するとともに、Microsoft Word の Save ダイアログで OneDrive に保存されたファイルについても "Default to the current document's folder" 機能が働くようにした。(新規購入 $39.95、無料アップデート、TidBITS 会員には新規購入で $10、アップグレードで $5 の値引、Setapp からも利用可、17.4 MB、リリースノート、macOS 10.13+)

Default Folder X 6.0.6 の使用体験を話し合おう

GraphicConverter 12.1.1 Agen Schmitz  訳: Mark Nagata   

GraphicConverter 12.1.1

Lemkesoft が GraphicConverter 12.1.1 をリリースした。このグラフィックスプログラム Swiss Army ナイフのメンテナンス・アップデートで、キャンバスを拡大してすべてのレイヤーを含められるようにし、CVG ファイルを PDF (ベクター) に変換する機能を追加し、ブラウザで削除の後に次の項目へ移動するオプションをオフにできるようにし、PNG を書き出す際の動的メソッドを最適化してファイルサイズを減らし、PICT 対応を改良し、Photos ライブラリコンテンツのフォルダツリーに並べ替え機能を追加し、HEIC 書き出しを改良して Core Graphics の代わりに Core Image を使うオプションを追加し (macOS 14.4 Sonoma での品質のバグによるもの)、macOS 10.15 Catalina で同期スクロールに起こり得た問題を解消し、Sonoma でのクリッピングの表示の問題を解決した。(Lemkesoft からも Mac App Store からも新規購入 $39.95、無料アップデート、261 MB、リリースノート、macOS 10.13+)

GraphicConverter 12.1.1 の使用体験を話し合おう

Microsoft Office for Mac 16.84 Agen Schmitz  訳: Mark Nagata   

Microsoft Office for Mac 16.84

Microsoft がバージョン 16.84 の Office for Mac をリリースした。Outlook での新機能とバグ修正、および Excel のセキュリティアップデートが主な内容だ。今回のアップデートでは Outlook が拡張されて macOS 14 Sonoma 用の新しい Calendar タイムライン・ウィジェットが備わり、ミーティングのシリーズを編集する際にシリーズ全体を編集する代わりに特定のインスタンスでそれ以後のものを編集できるようにし、ナビゲーション枠でアカウントウィジェットを使ってプロファイルとアカウントの切替ができるようにし、レガシー Outlook クライアントの左レールで IMAP アカウントが表示されなくなった問題を解消し、同一の名前の複数の添付ファイルをダウンロードできなかったバグを修正し、初期インストールや最初のアップデートの後に Outlook がハングすることがあったパフォーマンスの問題を改善した。(一回限りの購入は $149.99、年払い講読オプションは $99.99/$69.99、Microsoft AutoUpdate 経由で無料アップデート、リリースノート、macOS 10.15+)

Microsoft Office for Mac 16.84 の使用体験を話し合おう

Zoom Workplace 6.0.1 Agen Schmitz  訳: Mark Nagata   

Zoom Workplace 6.0.1

Zoom がビデオ会議アプリのバージョン 6.0 をリリースして、"Zoom Workplace" という新しいブランド名に変更した。これは「ユーザーたちが共同作業する方法を再考する力となるためにデザインされた広範囲の製品提供」を反映させるためのものだという。今回のリリースでは新しいカラースキームとアイコンでユーザーインターフェイスを一新し、Zoom Meeting の参加者がミーティング内のツールバーをそれぞれアレンジできるようにし、Google Drive や Microsoft OneDrive のファイルを使った共同作業を改善し、あなたが前面にいる間は背景をぼやけさせる新しいポートレイト照明設定を追加し、複数話者用のビデオレイアウトを導入し、Team Chat ユーザーが文章作成の最中に Zoom AI Companion を使って単語の提案を受けられるようにし、Team Chat メッセージのフォーマットとして Markdown シンタックスを使う機能への対応を追加し、サインインで One-Time Password (OTP) コードを使う際の問題点を解消し、Team Chat チャンネルを切り替える際のメモリ使用量急増に対処した。そのリリースの後間もなく、Zoom はバージョン 6.0.1 を出していくつか詳細不明のマイナーなバグを修正した。(無料、123.3 MB、リリースノート、macOS 10.13+)

Zoom Workplace 6.0.1 の使用体験を話し合おう

ExtraBITS

Adam Engst  訳: Mark Nagata   

海底ケーブル維持管理の筆舌に尽くしがたき重要性

The Verge の徹底した分析記事で、Josh Dzieza がこう書いている

世界中の電子メール、TikTok、極秘メモ、銀行送金、衛星監視、FaceTime 通話などが、庭仕事用のホースと同じくらい細いケーブルを通って行き交っている。業界調査会社 TeleGeography によれば、およそ 800,000 マイル (129 万キロメートル) に及ぶこれらの細い管が地球上の大洋の海底に張り巡らされているという。沿岸近くではケーブルが地中に埋められているけれども、沿岸以外の圧倒的大部分では海底の灰色の泥の上で見知らぬ生物たちに囲まれてケーブルはただ横たわっており、ケーブルの芯をなす髪の毛ほどの太さのガラス繊維がレーザーの光によって世界のデータを運んでいる。仮にもしこれらのケーブルが一斉に壊れたなら、近代文明は直ちに機能を止めてしまうことだろう。

そして現実にケーブルは壊れる。一斉にではないけれども、二日に一度程度、年間およそ 200 回ほど、どこかで壊れる。壊れても滅多にニュースに取り上げられないのは、インターネットがダメージ個所を迂回するからだ。いや、海底ケーブルの場合には、システムを管理しているエンジニアたちがダメージ個所を見つけてトラフィックをダメージのないケーブルへ迂回させているからだと言う方が正確だろう。

壊れた個所を修理するのは、世界中のあちこちに配置されている 20 隻ほどの船舶に乗ったクルーたちの仕事だ。写真入りで美しく仕上げられたこの記事の中で Dzieza は、2011 年の東北地方太平洋沖地震 (この地震により日本では 20,000 人近くの人々が亡くなると共に、Fukushima 原子力発電所の事故が起こった) とそれにより引き起こされた大規模な海底の変動によって壊れた重要なケーブルをケーブル保守船 Ocean Link が修理した体験談を織り交ぜつつ、現代のインターネットや他の多くのコミュニケーション・チャンネルの基盤を成す地球規模のこのシステムについて説明する。

それに、これは言っておくべきだが、衛星通信では大して海底ケーブルの代わりにはならない。Dzieza によれば、衛星通信が担えるデータ量は海底の光ファイバーケーブルが運んでいるトラフィックの 0.5 % 以下だという。

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Adam Engst  訳: Mark Nagata   

Apple、年内に一部の iPhone 修理で中古部品の使用を認める予定

Apple が次のように書いている

本日、Apple は既存の修理プロセスに拡張を施す予定を発表しました。これにより、顧客や独立の修理業者が修理の際に中古品の Apple 部品を使用することが可能になります。今年の秋、一部の iPhone モデルを対象としてスタートするこの新しいプロセスは、iPhone ユーザーのプライバシー、セキュリティ、および安全を維持するためにデザインされています...

また、盗まれた iPhone が分解されて部品として使われることを阻止するため、Apple は人気を集めている Activation Lock 機能を iPhone 部品にも拡張します。

Apple のかなり曖昧なこの発表は、どうやら“部品ペアリング”を禁止しようとする国の追加規制に対処するためのもののように思われる。部品ペアリングは、修理業者が他の点で故障したデバイスから機能する部品を取り出して利用することを防止するための対策であった。規制のおそれに迫られて Apple が伝統的な修理方法を許す方向に進むのは、たとえそれがごく一部のデバイスに限られるものであったとしても良いことだ。それと同時に、Apple が腰を上げるのを遅らせた後で自らが施したシステムへの修正を“革新的”と自称するのを見るとフラストレーションが溜まる。Apple の John Ternus は次のように述べた:

“ここ二年間かけて、Apple 社内のいくつものチームが革新的な製品デザインと製造プロセスを生み出し、ユーザーの安全とセキュリティとプライバシーを侵害しない方法で Apple 中古部品を使った修理を可能に致しました。”

Apple も触れている通り、困難の大部分は Activation Lock に関することであり、その結果として盗まれた iPhone を再利用したり分解して部品を取り出したりできなくなることで iPhone を盗む価値を合法的に減らせるようになる。(2015 年 2 月 11 日の記事“Smartphone Kill Switches Are Preventing Thefts”参照。) iPhone を盗ませないようにするには、iPhone の部品にまで Activation Lock を拡張することが必要なようだ。

このことは Right to Repair (修理する権利) 運動の側では不評となるだろう。なぜなら、iPhone を廃棄する前に Activation Lock をオフにすることを忘れる人たちも多いだろうし、Activation Lock を無効化できない状態で壊れてしまうこともあるからだ。部品に対しても Activation Lock を要求することと、正当な使用のために Activation Lock を無効化できるようにすることとの間の綱渡りに Apple が成功しない限り、まだまだ多くの壊れた iPhone がゴミ処理場に捨てられることだろう。

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Adam Engst  訳: Mark Nagata   

北アメリカの 60 以上の IHG ホテルで AirPlay が利用可能に

Apple が次のように述べている

本日より、Kimpton Hotels & Restaurants、Hotel Indigo、Candlewood Suites、および InterContinental Hotels & Resorts を含む厳選された IHG Hotels & Resorts の施設を利用するお客様は客室の大スクリーンで AirPlay を使うことができるようになり、プライベートかつセキュアなストリーミングを通じて Apple TV+ やその他の人気のストリーミングサービスからお好きな番組や映画を視聴したり、Apple Music やその他のプラットフォーム上で個人のプレイリストを再生したり、休暇中の写真を鑑賞したり、プレゼンテーションの練習をしたり、Apple Arcade で楽しいゲームをプレイしたり、あるいは Apple Fitness+ でワークアウトや瞑想のひとときを過ごしたりできるようになります。北アメリカにおける 60 以上の IHG 施設で現在 AirPlay が導入されておりますが、今後数か月のうちにもっと多くの施設が追加される予定です。

接続するには、互換な LG 製ホテル TV のスクリーン上で QR コードをスキャンすればよい。ホテルの部屋ごとに別々の QR コードが提供され、チェックアウトの際に接続が削除されるので他の誰もあなたの活動を知ったりアカウントに便乗したりはできないという点まで Apple はわざわざ明記している。

Apple は 2023 年の WWDC で AirPlay がホテルで利用できるようになると発表していたが、それが日の目を見たのは今年初めになって iOS 17.3 と iPadOS 17.3 が出てからであった。(2024 年 1 月 22 日の記事“iOS 17.3、Stolen Device Protection 故に他の OS アップデートより際立つ”参照。) Mac から AirPlay を使ってメディアを再生したり、あるいは (こちらの方が興味を持つ人が多いだろうと思うが) デスクトップを拡張したりできるようになるか否かについては何も語られなかったが、該当するホテルに泊まった人がそれを試してみて結果を報告して下さるのを心待ちにしている。WWDC で Apple が語ったのは次のことだけであった:

iPhone や iPad でこれほど多くのメディアがいつでもすぐ使えるようになった今、あなたはご自分のコンテンツをどこでも楽しめるようになりました。そのことは旅先でも同じです。だからこそ今回、ホテルの中で AirPlay が使えるようになったことを喜びをもってお知らせしたいと思います。ホテルに AirPlay 対応があれば、部屋にある大スクリーンを利用してお気に入りの番組のエピソードを視聴したり、翌日のプレゼンテーションの練習をしたりすることも簡単にできます。ペアリングの手順はシンプルで、QR コードをスキャンしてから確認ボタンをタップするだけです。それだけで自動的に Wi-Fi に接続され、前に観ていたところから視聴を再開することができます。AirPlay は厳選されたホテルにおいて年内に利用可能となり、それ以後にはもっと多くのホテルでも利用できるようになるでしょう。

Apple は約束した日付から数か月遅れてこれを実現したが、数多くのホテルに互換なテレビとバックエンドのシステムを設置するための IHG との共同作業の複雑さを考えれば無理もないことと言えるだろう。

私自身はこのことだけを理由にわざわざ AirPlay を利用できるホテルを探そうとは思わないが、他の条件がほぼ同じホテルが複数あって特定のホテルに AirPlay 対応があるとなればそれは確かに判断材料となることだろう。

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