私たち TidBITS スタッフは Macworld/iWorld 2014 から戻り、睡眠不足をものともせずに帰宅してすぐ今週号の執筆に取り組んだ。まずはショウのフロアからとてもクールな製品をいくつか紹介する。Adam Engst は会場のその場で感じたことを記し、Josh Centers は特別版の FunBITS 記事で、会場で展示されていた楽しいアプリや機器について印象を語る。その他の記事では、Julio Ojeda-Zapata が Microsoft による iPad 用 Office のリリースについて当初の詳細情報を伝え、Adam が iOS 用の電子メールアプリ Triage をレビューし、Joe Kissell が新たな FlippedBITS 記事でプライバシー方針が重要である理由(皆さんには意外なものかもしれない)を解説する。今週注目すべきソフトウェアリリースは、DEVONthink と DEVONnote 2.7.4、Skype 6.15、Fluid 1.8.2、Keyboard Maestro 6.4、Retrospect 11.0.1、Downcast 1.0.11、それに PopChar X 6.5 だ。
記事:
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---- 皆さんのスポンサーへのサポートが TidBITS への力となります ----
文: Julio Ojeda-Zapata: [email protected]
訳: Mark Nagata <nagata@kurims.kyoto-u.ac.jp>
Lucifer よ、かまどの修理屋を呼べ! Microsoft がついに、同社の人気の生産性スイート Office に以前から噂されていた iPad 版をお披露目した。iPad 用 Office にはお馴染みの Word、Excel、それに PowerPoint があり、それぞれ個別のダウンロードで入手できる。Microsoft は以前から、これらとは別の Office アプリ OneNote を無料で出しており、OneNote には Mac 版、iPad 版、iPhone 版、Android 版、Windows 版、および Windows Phone 版が出ていた。[訳者注: 現在、新しい iPad 版 Office は日本国内のアカウントでは入手できないようです。日本での発売関連情報や、日本独自での取り組みの詳細については、まだ準備中とのことです。]
これら Office の核心をなす iPad アプリを無制限に使いたいと思う人たちは失望することになる。iPad 用 Office は誰でもダウンロードでき、閲覧およびプレゼンテーション用のツールとして利用することはできるけれども、編集機能へのアクセスを得るためには Office 365 の購読が必要となる。この点は兄弟版の iPhone 版と似ている。現在、Office 365 の購読は最大 5 台までのデバイスへのインストールが月額 $9.99 または年額 $99.99 からとなっているが、近日中に 1 デバイスのみのプランが月額 $6.99 または年額 $69.99 で登場するはずだ。
これと合わせて、Microsoft は iPhone や Android のユーザー向けにも良いニュースを発表した。それらのプラットフォーム向けの Office Mobile アプリを、個人利用に限って無料で使えるようにした のだ。(ビジネス用途の場合は引き続き有料の購読が必要だ。)これで、これらのモバイルアプリがやはり無料の Windows Phone 用 Office Mobile アプリと肩を並べるようになった。
今回の発表はサンフランシスコでのメディアイベントにおけるものであったが、キーノートの壇上に立った Satya Nadella にとって、同社の新しい最高経営責任者に就任してから今回が初めてのメジャーな場への登場となった。
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文: Adam C. Engst: [email protected], @adamengst
訳: 亀岡孝仁<takkameoka@kif.biglobe.ne.jp>
Macworld/iWorld 2014 は終了したが、皆さんもその場におられたらと思わずにはおれない。何年行ったのか想い出せない程長年にわたって Macworld に参加してきた我々の様な者にとっては (私の場合 1992 年以来の全ての San Francisco ショー)、Macworld Expo には心地良い流れがある。私の経験は私独自のものであり、ショーも年々変わってきているのは確かだろうと思うが、毎日が - そして毎日の食事すらも - 概して予測可能な風に進行する。しかし、最も見覚えのあるのは顔で、何十年も毎年一回顔を合わせてきた人達である。
皆さんの中で参加されていた方も多くおられるのかもしれないし、中には会場で声をかけて自己紹介し TidBITS や我々の Take Control 本を楽しんでいると話して下さった方もおられ楽しかったが、ここでは、皆さんは Macworld Expo に参加されなかったという前提でお話しする。しかし、"多くの" というのは相対的であり、そして "多くの" の人が Macworld に参加し、"多くの" 人が TidBITS を読んで下さっているが、この両方に該当する人は圧倒的という程には多くない。
いずれにしても、皆さんが参加されてこの数を増加させ、そして会場を私と一緒に歩き回り、私のストライドではあっという間に通り過ぎてしまうブースもあり (Andersen Windows? American Express? iPhone ケース?)、立ち止まって簡単なデモをお願いするブースもあり (FluxMob Bolt 電池バックアップと壁型充電器のコンボ)、本当に興味深いブースでは一息入れる (iWeb ユーザーであれば、Rage Software の EverWeb) といった事を楽しんで欲しかったと願うものである。私の疲れた目には、生活を一変させる様なものは殆ど見当たらなかったが (尤も BusyMac の BusyContactsには期待している)、一見の価値には値する製品を展示している小さな会社は数多くあった。実際の所、皆さん全部が私と一緒に会場を歩き回るなんて不可能ではあるが、最初の日の午前中、TidBITS の読者が一人が、我々の快活な仲間 - Tonya, Michael Cohen, そして Josh Centers も一緒 - と一緒してくれた。
彼が身近に経験した事が、私が Macworld Expo について一番好きな事である - 過去 25 年の間に会った事のある人にひょっこり会える (私の最初の Macworld は Boston で 1989 年の事であった)。"5 分歩いて 20 分話す" が私の標準的なやり方である。初見の人、或いはあまり良く知らない人とは握手だけだが、挨拶はだんだんハグになってゆく。何故ならば、これらの人は、一緒に飲んだり食事をしたり、音楽を聴いたり、そしてダンスをしたりした人達だからである。IDG World Expo の Paul Kent の様な人とは他人行儀でいるのは困難である。彼は一夜だけ General Manager の肩書きを捨て、Macworld All-Star Band でのリードギターを務めた。他の Apple 業界での有名人 Chris Breen, Bob LeVitus, Dave Hamilton, Chuck La Tournous, Duane Straub, そして Bryan Chaffin 等も名を連ねていた。(皆さんにも MacObserver の年次 Cirque Du Mac パーティに参加し、これを聞いて欲しかった。尤も音楽を純粋に楽しむのでは無く、最前列に陣取ってこのイベントを最初から最後まで iPhone で撮ろうなどと思った人は別かもしれない。)
そして、慣れとは好対照に、Macworld を初めて経験する Josh Centers も見て欲しかった。彼は数多くのブースや人々と接触し、満員の Tech Talk パネルを司会していた。Tech Talk パネルの方は Joe Kissell と Jeff Carlson もやった ("Macworld/iWorld 2014 での TidBITS イベント" 17 March 2014)。Tonya と私は、Joe と共にデジタル出版の過去、現在、未来に関する即席のパネルにしか参加しなかったが、私は TidBITS のスタッフが合わせると Tech Talk セッションの 10% に参加した事を誇りに思う。Macworld と並行して開催された MacIT カンファレンスの方にも足を伸ばせる時間があったらと思うが、こちらでは我々の Rich Mogull が Apple 世界におけるセキュリティに関する総会で最終日をキックオフした。
今年の Macworld をこれまでのものと較べるのは困難である;あまり違いは無いようにも見えるし、出展者の数も多少少なかったかもしれないが (公式の出展者リストはおよそ 200 を数えるが、これらのうち幾つかは BiteMyApple.co の様な複数の会社を纏めた共同ブースであった)、私は三日目の終わりまでにはこれら全部を見て回ろうとしていた。皆さんはもっと早く回れるかもしれないが、興味を引く製品の展示者と話をしているとそうも行かない。参加者の数も今回は少なかったかもしれない。というのも、週日は働いていて、週末なら時間がとれて見に行こうという気にもなるであろう San Francisco の人達に対して、土曜日は土砂降りの雨で、出足が鈍ったというのもあるであろう。しかし、だからといって会場がガラガラだったわけでも無い。例外は、毎日の閉館に近い時間帯で、この時間になると殆どの人が家路につくか夕食へと向かっていた - 会場を今年は 6 PM 迄開けておくというのは、あまり効果が無かったようである。
より成功したものもある。レジストレーションのため、Moscone North に足を踏み入れたとたん、私の iPhone が iBeacon を検知し Passbook パスを表示したのを皆さんにも見て欲しかった;スキャン一発で私のバッジが印刷されそして手渡されたが、これほど簡単なレジストレーションの経験は今までに無い。(残念な事に、Josh や彼の妻に対してこのスキャンは働かず、彼らは手で名前を入力しなければならなかった。) iBeacon と Passbook が将来どの様に使われるかを目にする事が出来たのは嬉しいが、私が Moscone の会場に入る度に私のホーム画面にこのパスが現れるのは少々馬鹿げていると感じた。一方で、片面だけバッジは気に入らなかった;これらは何時も裏側になっている感じで、話している相手が誰なのかを知るのを困難にしていた。
展示会場が公開される前の日にメディアに対して設定された First Looks セッションは特に良かった;より革新的な会社の人達と会場の喧噪に煩わされずに話をする良い機会であった。Lumo Lift, Ring, そして Glowdeck といった、次第に広がりを見せている Kickstarter 資金提供の製品もその一部である。しかし、これも良い事である - インターネットがテック業界を変えた一つの肯定的側面は製品開発過程の極めて早い時期からユーザーを関与させることであり、報道側の我々が皆さんに革新的なアイディアを知って頂くお手伝いが出来るのであれば、素晴らしい事である。
最終的に TidBITS の我々全員が Macworld/iWorld 2014 で良い時間を過ごせた。そして、もし皆さんが我々とご一緒されておられれば、きっとそうお感じになったであろう。このショーが年と共に変化し、そして縮小してきた事は確かである。その原因は、製品情報やサポートが提供されるやり方をインターネットが破壊し、そして Apple が参加を取りやめた事にあるが、Macworld の本質は変わっていない。もっと小さなそしてより焦点を絞ったカンファレンスではよく見られる様な独自のコミュニティを作るには大きすぎるが、Macworld は Apple コミュニティのメンバーが大挙して集まれる場所を提供している。それが基本的な役割である。何故ならば、Macworld は、Apple エコシステムのビジネスの多くを支えている関係が形成され、強化され、そして維持される所だからである。この理由から、そして個人としても楽しみ故、我々は来年の Macworld/iWorld 2015 にも参加する積もりである。会期は March 12th から 14th である。そこで会いましょう!
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文: TidBITS Staff: [email protected]
訳: 亀岡孝仁<takkameoka@kif.biglobe.ne.jp>
今年の Macworld/iWorld への旅程は殊の外きつかった。Josh が家に着いたのは日曜の夜で、Adam の方は月曜の朝に着く夜行便であった。というわけで、我々がショーから持ち帰った皆さんにも紹介したい製品記述はもっと沢山あるが、これは何部かに分け、今すぐ出せるものをまず先に紹介し、残りは睡眠不足を多少補えたところで完成させたい。前置きはこれぐらいにして、我々が Macworld の展示フロアで見た最も紹介したい製品の幾つかを披露する。
BusyContacts -- ようやくのこと! ここ何年もの間我々は BusyMac に BusyCal が Calendar に対してする事を Apple の Contacts に対してやるアプリを出すよう頼んできた - 置き換えるのである。(皆さんは我々が Contacts を好きでない事をお分かりですよね?) Macworld/iWorld で BusyMac は BusyContacts を発表した。これは、住所録を iCloud, Google Contacts, Exchange, そしてその他の CardDAV 対応のサービス経由で同期、共有、そして維持する複数アカウント賄える解を提供すると約束している。BusyContacts はカスタマイズ可能なビュー、タグ付け、スマートフィルタ、ソーシャルネットワーク統合、等々を提供する。これは数ヶ月のうちに公開ベータに入る予定で、2014 年後半に売り出される時には $49.99 の値段となる。従って、もし連絡先管理機能に関して BusyMac に対して進言する事があれば (会場で多かった進言は Now Contact 風のラベル印刷であった)、BusyMac にすぐ知らせよう。[ACE]
Ring -- Macworld の会場で最も話題になった製品と言えば Logbar の $185 の Ring であろう。これは iOS に対するウェアラブル入力機器である - 正確には、となる予定である。その構想は Tony Stark のラボから出たものである:Ring をはめ、iPad を制御するためにアプリの画面状況に応じた色々な仕草で指を動かす、例えば、タイプ入力するのは空中に字を書く (極めてゆっくりと) といった具合である。Ring は Kickstarter での目標である $250,000 を軽く超え 5,000 人近い支援者から $840,000 以上の資金を集め、納入は August 2014 と見込まれているが、同社は大きな電池に接続した試作品しか展示しておらず、しかも誰にも試させてくれなかった。量産に向くのか、そして有用であるためには結構複雑になる語彙を一つの指の動きだけで表現出来るのかは、現時点ではまだ分からない。[JJDC]
K-Tor 人力発電機 -- 電気のない所に行っても iPad が必要? 或いは、子供には iPhone を使いたければそれを自分で稼ぎ出して欲しい? K-Tor はペダル型の Power Box ($195) を展示していた。これは 20W 迄の電力を作り出せ、椅子に座ったままで (或いは、他の機器に組み込んで) 使える。一方、手回し型の Pocket Socket 2 ($64.95) もあり、こちらは 10W 迄の電力を作り出せ、より運びやすい。どちらも標準の電気ソケットを用意しているので、10-20 ワットの出力範囲で使えるものなら何でも走らせる事が出来る。[ACE]
WritePro -- Newton 上で "卵のそばかす" を手書き出来た過ぎし日が懐かしいというのであれば、PhatWare のアプリが良いかもしれない: WritePro と言い $9.99 のワードプロセッサ、メモ書き、そしてスケッチアプリで iOS 用である。このアプリは手書き文字認識機能を持ち、その能力は Newton の手書き文字認識能力に匹敵する様に見え、そして頑健な一連のワードプロセッサ機能を提供している:複数フォントとサイズ、段落インデント、点と番号順の箇条書き、テキストと背景の色づけ、等々である。またアプリ内で内蔵のスケッチパッドを使って絵も描け、そしてこれらのスケッチを書類に埋め込む事も出来る。このアプリは手書き入力を容易にするため幾つかの機能を備えている。ジェスチャーを使って、戻る、改行する、やり直す、そして自分のカスタムテキストショートカットを拡大する事が出来る。書類は数多くのクラウドサービスを使って同期出来る。それには iCloud, Dropbox, Google Drive, Evernote, そして Microsoft OneDrive が含まれる。独自のファイルフォーマットを使わず、WritePro 書類は HTML として保存されるので、自分の作品をこのアプリから他の如何なるワードプロセッサアプリに書き出すのも容易である。[MEC]
Hider 2 -- 通常、機密書類を Mac 上で守秘にする必要がある場合、お薦めは Disk Utility で暗号化ディスクを作成する事である。この方法は無料で簡単であるが、マイナス面は何時もその別ボリューム上で作業しなければならない事である。より扱いやすい代替策を求めるのであれば、MacPaw の Hider 2 ($19.99, 2 April 2014 に出荷開始) を検討されたい。ボタンを一つ押すだけで、ファイルとフォルダを Finder から Hider 2 の安全な保管庫に移動出来る。この保管庫は AES-256 暗号化で守られており、その Ukraina の開発者は我々に Putin でも破れないと保証してくれた。[JJDC]
EverWeb -- Apple が iWeb の iLife を 2011 年に終了させた事にまだ腹を立てている? Sandvox と RapidWeaver の両方とも長い間、独りぼっちの iWeb に対する代替策として存在してきたが、ドラッグ&ドロップで Web サイトを作成出来る新しい Web 開発ツールが Mac に登場した。Rage Software の EverWeb で、独自のサイトも公開させてくれるが、ワンクリックの公開と Web ホスティングも提供している。EverWeb 単体では一年間のアップデートとサポート付きで $79.95 であるが (その後は年額 $49.95)、2 GB の容量と 5 つのメールアカウントを持つ Web ホスティングアカウントはソフトウェア付きで年額 $99.95 にしかならない。含まれるものには、マスターページ、資産組織、Google Fonts に対するサポート、自動ドロップダウンメニュー作成、そして広範囲なウィジェットがある。これは最適化された HTML5 及び CSS3 コードを作成するが、EverWeb は如何なる画面サイズにも対応する応答型のサイトは意図的に作成しない (これはグラフィックスでは問題かもしれない)。代わりに、スマートフォンやタブレットのためのモバイル最適化サイトを作成する手伝いをする方法を選択した。[ACE]
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文: Josh Centers: [email protected], @jcenters
訳: Mark Nagata <nagata@kurims.kyoto-u.ac.jp>
私が Macworld/iWorld 2014 に来たのは、一つには Mac と iOS のゲーミングの世界に何か最新の素晴らしいものが見つかるのではないかと期待してのことであった。これまで聞いたこともないようなアプリが現われて欲しいものだ、と私は秘かに思っていた。けれども奇妙なことに、この会場にゲームは基本的に一つも、iOS 用のものさえ、見つからなかった。世の中でゲームはもの凄く人気を集めているというのに。
幸いにも、FunBITS で扱う題材はゲームに限られず、あらゆる種類の趣味や、娯楽、スポーツなどを支えるアプリや製品も取り上げている。それを念頭に、今回の Macworld のショウフロアで私が見かけた製品で、私たちの生活を少しでも面白いものにしてくれるものたちを、いくつか紹介してみよう。
PencilCase -- 私が今回のショウで見たものすべての中で一番クールだと思ったアプリは、Robots & Pencils の Mac 用アプリ PencilCase だった。これは、Apple の HyperCard が残した穴、長年残り続けていた空白を埋めるべく作られたものだ。あなたは何のコードを書く必要もなく、PencilCase を使ってあなたが iOS 用のゲームやアニメーション、ごくシンプルなアプリなどを開発でき、それを友人たちと共有したり、さらには App Store で販売したりさえできる。その上、PencilCase 自身でできる範囲を踏み出したいと思うなら、JavaScript であなた独自のコードを書くこともできる。私はいくつか出来合いの PencilCase アプリを試してみた。Flappy Bird クローンや、ボールが跳ね返る物理の実演、Mad Magazine (Robots & Pencils はこの 1984 年のクラシックゲームを iOS 用に作り替えたものも出している) のスパイの一人のアニメーションもあった。アニメーションの速度が少し速過ぎる気もしたけれど、PencilCase のリリース予定は 2014 年後半とのことなので、今後いろいろと磨きをかける時間は十分あるだろう。
現在 PencilCase は予約注文受付中だ。価格構成は三段階で、Community 版が $199、Professional 版が $299、Corporate 版が $999 だ。Community 版と Professional 版は機能としては同一だが、前者では App Store 外のアプリの個人店舗 App Drop のスロット数が 10 個までに制限されている。Corporate 版には、PowerPoint、Keynote、および Flash ファイルの読み込み、iBeacon 対応、国際化機能の内蔵、電子メールと電話によるサポートなど、いろいろな追加機能がある。 実演ビデオをご覧あれ。
Chore-inator -- 家事の仕事をゲームにする試みは以前にもあったかもしれないが、iOS 用アプリ Chore-inator ($2.99) が今のところベストのものではないかという気がする。Chore-inator は子供たちがそれぞれ家事をするよう親たちが促す手助けをするために作られている。もちろん、これを使って家族全員を管理することもできる。このアプリが他と違うのは、個々の家事仕事で期待される仕上がり具合を写真で示せる点だ。仕事中のあなたが家事が済んだかどうか確かめたければ、子供に家事の終わった状態を写真に撮らせ、アプリの中であなたに送らせればよい。
あなたが割り当てる個々の家事仕事ごとに、それで星いくつが貰えるかを決めておく。仕事が満足の行く状態に完了すれば、その星が与えられ、あなたが決めておいたご褒美、例えばアイスクリーム、公園への散歩、あるいはお小遣いの増額といったものと交換するために使える。
私たちの子供はまだ生まれて七ヵ月なので食卓の用意をしたり掃除機をかけたりすることはできないが、妻と私のために Chor-inator が便利に使える様子は容易に想像できる。私たち二人は家事をうまく進めて行けず困っているからだ。一定数の星を集めなければレストランでの夕食ができないといった外食のルールを決めたりすることもできるだろう。
Kamino -- 今回サンフランシスコ滞在中に無料の iOS アプリ Kamino を試す時間がもっとあったら良かったのにと思う。今回のショウの会場でデビューした Kamino は "urban discovery app" (都会の発見アプリ) というのが売りだ。基本的に、Kamino ではあなたがカスタマイズした徒歩ツアー (hike と呼ばれる) を作ったり共有したりできる。
例えば、Kamino を使って Louisville の Urban Bourbon Trail、Boston の歴史的名所巡り、West Hollywood の観光地巡りといった hike が楽しめる。あるいは、単に思い立って地元の町の中であなただけの hike を作ってもよい。 実演ビデオを見ればどんなことができるか感じが分かるだろう。残念なことに、私たちのように辺鄙な田舎に住んでいると、こういうアプリはちょっとした思わせぶりにしか見えない。
Contact Patch -- おお、やっと実際のゲーミングプロジェクトが見つかった! iOS デバイス用に物理的な「貼り付け式」のゲーミングパッドを作ってゲームをもっと感触の良いものにしようとする試みは、従来も数限りなくあったけれど、Contact Patch はその多用途性で注目すべきだ。従来の試みでは標準的な十字キーなどのゲームコントロールをエミュレートしようとしていたが、Contact Patch がユニークなのは、どんな構造も強要されない点だ。Contact Patch は縁取りのあるシリコン製のパッドで、これをデバイスのスクリーン上に、ゲーム内のコントロールグラフィックの場所に貼り付けて使う。その場所で、あなたのタップをスクリーンに伝えてくれる。貼り付けるのも剥がすのも簡単で、丸、四角、三角それぞれいくつかのサイズのものが含まれている。
私はまだ Contact Patch のパッドを実際に時間をかけて使ってみてはいないが、大きい丸形のパッドが私の大きな親指用に便利に使えると思う。非常に多くのゲームで使われているオンスクリーンの十字キーに最適だ。三角形のパッドは大人の指には合わないサイズで、親指の先をフィットさせるには小さ過ぎるのに、ずっと指を置いておくには大き過ぎる。でも子供の指にはちょうど良いのかもしれない。四角いパッドは、どんな大きさの指でも使える良い折衷案だと思う。フィットするかどうかはさておき、材質のお陰でとてもありがたい触覚のフィードバックが得られ、ベタベタしたり邪魔になったりもしないし、手探りだけでコントロールの場所が見つけられるところも嬉しい。
欠点を言えば、便利な引き紐式の携帯用袋が付いているにもかかわらずこれらのパッドは無くしてしまいやすい。また、乳幼児の手の触れない場所にいつも置いておかねばならない。飲み込めば窒息の危険があるからだ。残念ながら、メーカーのウェブサイトは構築中で、まだ Contact Patch を注文できない。
Petcube -- 今回の Macworld では、妻 Hannah と赤ん坊の息子 Harris もサンフランシスコへ連れて来たが、私たちの猫 Peanut は家で留守番させた。今の彼女はその仕返しに私たちを(悪い人間たち!)すっかり無視している。でも、もしも私たちがPetcube を持っていたら、ひょっとすると無視されるようなこともなかったかもしれない。
Petcube は頑丈なアルミニウム製の立方体で一辺が 4 インチ (10.1 cm)、内部に HD 対応のビデオカメラとマイクロフォン、それにスピーカーを備えているので、あなたは iOS アプリ経由であなたのペットを見たり、声を聞いたり、話しかけたりできる。さらに面白いことに、低電力のレーザーも内蔵していて部屋の中に赤い点を走らせてペットと遊ぶこともできる。Petcube は 2014 年 5 月に $199 で出荷される予定で、アルミニウム製の立方体では部屋の装飾に合わないと心配な人のために、地金を覆う「スキン」(もちろんアニマル柄だ) も販売される。
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文: Adam C. Engst: [email protected], @adamengst
訳: Mark Nagata <nagata@kurims.kyoto-u.ac.jp>
もしもあなたが、私と同じように、いつも大量の電子メールを処理しているのなら、ほんの短い間でさえ電子メールと離れていると不安になるかもしれない。それが自宅で過ごす一晩であろうと、週末であろうと、あるいは旅行であろうとも。何か重要なことを見逃しているのではないかという気がいつもするし、戻った際に受信箱が溢れるほど一杯になっているのは決して楽しいものではない。さらに悪いことに、ちょっとだけメールをチェックしてみようと思っても、そのまま長時間引き込まれてしまって家族や友人たちの怒りを買うことになる。それからまたビジネス旅行の問題もある。そんな場合は会議の最中にも重要なやり取りをさばく必要に迫られる。
そのような状況で、iPhone が確かに役に立つ。デスクトップ Mac の前に座らずとも、またはラップトップ機を開いたりせずとも、iPhone があれば手早く電子メールのチェックができる。セルラー接続があれば、Mac が絶対にオンラインにならないような場所でさえ iPhone で電子メールのチェックが可能になる。けれども、Mail、Gmail、およびその他の大多数の iPhone 用電子メールクライアントは、手早く電子メールを見る役に立つというより、むしろ充実した電子メール体験ができることを目指して作られている。そこで、手早く見るだけの目的のためには、Southgate Labs の Triage が使える。これは $2.99 の iOS 用電子メールアプリで、ごた混ぜの中から良いものだけをできる限り素早く選り分けるために使える。
最も高位の分類として、電子メールのタイプにはたった二つしかない。あなたが読む必要のあるメッセージと、そうではないメッセージだ。けれどもあなたの腕の長さほどもある長い長いリストとなって並んでいるメッセージに直面すると、気を散らされたりせず素早く全体を一覧することすら難しいことがある。Triage は、新規メッセージ一つずつについて個々に保持・削除の質問を出し、それらの一連の質問の並びとして Inbox を表示することにより、この問題を解決しようとする。
Triage を設定してあなたの電子メールアカウント (Gmail、Yahoo、iCloud、Outlook、その他標準的な IMAP アカウント) に接続するよう指定しておけば、そこから未読メッセージのリストを取り込み、その最初のもののプレビューとして、送信者、件名、およびメッセージ本文の一部を表示し(ただしテキスト形式の付属しない HTML メッセージの本文は表示しない)もしもその会話に複数個のメッセージがあればその個数も示す。ここで、あなたには二つの選択肢がある。あとで(時間ができてゆっくり対処できる時に)読めるようそのメッセージを保持するか、またはそのメッセージを削除するかだ。下へスワイプすればメッセージが保持され、上へスワイプすれば削除される。
メッセージの保持という選択肢には少々説明が必要だ。ここで「保持」というのは、実際には「サーバ上にあるこのメッセージには一切何もしないけれども、Triage の中にはもう二度と表示しないようにする」という意味だ。重要なのは、Triage でそれを「保持」した場合、他の電子メールクライアントの中では、あたかもあなたがまだ見ていないメッセージであるかのように登場するということだ。
メッセージを「削除」した場合は、Triage は設定の中にある三つの「削除」アクションのうちあなたが選択しておいたものを実行する。(あなたは日常的にこの設定を切り替えたりしない。)Triage が、メッセージを既読とマークするか、アーカイブするか、それとも本当の意味で削除するかだ。どの設定を選ぶべきかはあなたが電子メールを管理する方法に依存する。私の場合はいつもほとんど何も削除せず、また Gmail における電子メールのアーカイブ(実はただ Inbox ラベルを外しているのみ)が不必要に仕事を増やすだけのものだと思っているので、既読とマークするように設定している。もしもあなたが Inbox Zero (常に受信箱を空にする) タイプの使い方をする人ならば、あなたがものをどの程度置いておきたい人であるかに応じてメッセージをアーカイブするか削除するか選べばよいだろう。
これが、Triage にできることの核心だ。けれども Triage には他にもいくつか追加機能がある。プレビューだけではどうすべきか判断がつかない場合には、メッセージのプレビューをタップすれば拡張してメッセージ全体が(上の右側のスクリーンショットのように)表示される。会話の中に他のメッセージがあれば、左右の矢印でそれらを見ることができる。そして、どうすべきか心が決まれば矢印二つのボタンをタップして表示を縮小し元のプレビューに戻ることができ、そこで上か下にスワイプすればよい。下にある i と書かれたボタンはヘッダ情報を表示し、上の方にある曲がった矢印のボタンでそのメッセージに返信したりそのメッセージを転送したりできる。これはとても便利だ。なぜなら、時にはほんの数秒で返信して片付けられるメッセージもあって、そういうものについていちいち別の電子メールプログラムに切り替えてから返信しなければならないのは面倒だからだ。
そういうわけで、私の普段の使い方は次のようなものだ。今日は日曜日、私は電子メールを読むのに忙殺されたくないし、どんな風にも Mac を使いたいとは思わない。でも、私は計画中のランニング大会について友人たちから連絡を待っているところだ。そこで私は Triage を走らせ、私が前回使った時以後に Inbox に届いたメッセージを次々とスワイプして、あとで処理する必要のあるメッセージは保持しておき、それ以外は既読とマークして、次に Mac の前に座った際には私の目に触れないようにしておく。これはメールチェックの方法として素晴らしく軽やかで、ほんの数分で私はもう誰がランニング大会に来るか分かるし、前回メールチェックをして以後の新規のメッセージで Inbox が爆発していないと知って安心できる。そして、例えば Tonya と Tristan を待ちつつ数分の時間をつぶすためにその後再び Triage を走らせた際には、私がまだ目にしていないメッセージのみが表示される。つまり、同じメッセージを二度トリアージするということは決して起こらない。
あるいは、Macworld/iWorld の会場にいて、朝と夜以外にゆっくり電子メールをチェックする暇などなければ、昼の間は Triage が電子メールの情報支援の役に立ってくれる。
Triage がそうした手早い電子メールチェックのためにのみ作られているものだということを、よく理解しておくことが重要だ。これは決して、到着するあらゆる種類の電子メールを管理するためのツールとして使うものではない。例えば、見ることができるのは Inbox の中にあるメッセージのみであって、サーバの中で他のフォルダにフィルター分けされたメッセージは対象外だ。また、メッセージを整理またはラベル付けしたり、フラグを立てたり、迷惑メールとマークしたり、といったことは Triage ではできない。
たいていの場合、私はこのような焦点を絞ったやり方をありがたいと思う。ただ、時によって、あともう少し機能があればと思うことはある。例えば、迷惑メールを処理し続けなければならないというのはやはり受け入れ難い。これは、Gmail が私の行動を学習できるようにあとで迷惑メールとマークしたいからだ。また、メッセージを Inbox からアクションベースのフォルダに仕分ける電子メール処理戦略を使っている人たちもいる。そういう人たちには、この保持・削除の二者択一のやり方は限界が多過ぎるだろう。
Triage に左右のスワイプを追加したら、というのは誰でも思い付くアイデアだ。それらをカスタマイズして、例えば左へスワイプすればメッセージを迷惑メールとマークし、右へスワイプすれば特定のメールボックスへ移す、といったことも考えられるだろう。さらには、スワイプすれば特定のメールボックスのリストが出て、そこで選んだものの中へメッセージを移動させるというのも一つのアイデアではなかろうか。
私が Triage に感じる最大の不満は、拡張したメッセージを縮小してプレビューに戻すボタンが気難しいことだ。タップしても働かないことがよくある。理由は分からないが、ただタップするのでなくボタンの上で下向きにスワイプする方が確実に働くようだ。もう一つの苛立たしい点は、私は送信する電子メールをすべて私の [email protected] からのものにしたいと思うのだが、Triage は Gmail アカウント用の代替送信アドレスという概念を持っておらず、私からの返信や転送をすべて私の(通常は隠しておきたいと思っている)Gmail アドレスから送信してしまうことだ。
でも、短期的な改善の余地と長期的な機能発展の余地はどちらもあるけれども、私は今この場で Triage の幸せなユーザーであると断言できる。もしもあなたが新着の電子メールを iPhone で手早くチェックできる手段が欲しいと思うならば、Triage を試してみることをお勧めする。私が前回レビューしたアプリ Recur と同様、この Triage も私のホーム画面にしっかり居残っていることが、自信を持ってお薦めできる理由だ。
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文: Joe Kissell: [email protected], @joekissell
訳: Mark Nagata <nagata@kurims.kyoto-u.ac.jp>
時には、あなたの名前、IP アドレス、買い物の習慣、ブラウズ履歴、誕生日、母親の旧姓、その他の個人情報を誰もが知っているような場所にあなたは行きたくなる。そうでない時は、あなたはインターネットを使わない。
私たちの多くは、私たちが訪れるウェブサイトが膨大な量のデータを舞台裏で収集しているのを当たり前のことだと思っている。もしもこのことをご存じないなら、あるいはその事実には気付いているけれどもできるだけ多くの情報をプライベートに保っておきたいと思っておられるなら、私が書いたささやかな本、"Take Control of Your Online Privacy" をお読み頂ければと思う。
あなたについてのどんなデータを、誰が、なぜ、収集しているのかについてよりよく知っておくことは、有益だ。あなたはブラウザの設定を変えたり、プラグインを追加したり、さまざまのサイトの設定を調整したりして、あなたのアクションがいつ追跡されるかを知り、あなたがウェブを利用するにつれて際限なく送出される個人情報の流れを(なくすことはできなくとも)減らすことができる。私の本には、こうしたことすべてが書かれている。
でも、プライバシー方針についてはどうか? ほとんどすべての商業的ウェブサイトには「プライバシー方針」があって、あなたがアカウントにサインアップする際にはそうしたプライバシー方針に(暗黙のうちにせよ明示的にせよ)同意することが求められる。プライバシー方針はその会社がどのデータ(とりわけ個人情報)を収集するか、それがどのように使用されるか、それを保護するためにどのような防護措置がなされているか、といったことを詳しく説明している。これらの方針がプライバシーに関する何らかの保証あるいは法的保護さえ提供していると誤解している人たちもいる。この FlippedBITS 記事では、そのような誤った考えを変えて頂くことを目指したいと思う。
方針と事実とは違う -- プライバシー方針が存在していて、サイトのホームページからそのページへはっきりしたリンクも示されているのは、言わば食品のラベルに示された「栄養成分表」という言葉のようなものだ。実際はそのサイトは何のプライバシーも提供していないかもしれないし、その食品は良くない成分だらけで栄養面の利点も何もないというのが事実かもしれない。サイトがプライバシー方針を表示しているのは、それが法律で義務付けられているから、またはそうすることでユーザーたちが安心すると考えたからに過ぎない。
残念ながら、率直に言ってしまえば、プライバシー方針それ自体にはこれっぽっちも意味なんてありはしない。
だからと言って、プライバシー方針が無意味だということにはならない。すぐに説明するように、プライバシー方針は注意深く読んでおくことをお勧めする。ただ、方針と保証とを混同してはいけない。
方針は、ただの方針だ。つまり、その人物または会社が一般的原則として従うやり方を述べたものだ。私は、正直でありたいという方針を持ってはいるが、だからと言って私が決して嘘をつかない訳ではない。私がよく行く図書館には貸出期間を超過すれば料金を課すという方針があるが、時には超過してもとがめられないこともある。他店の価格より必ず安くする方針の店も、一個買えば二個が無料というチラシを持って来た客にはそれは駄目だと言うだろう。
ある会社の弁護士がプライバシー方針の下書きを書いた時点で、その会社の他のすべての従業員たちがそのことを知っている訳ではないし、ましてや全員がその方針に同意している訳でもない。たとえ同意したとしても、だからと言って見落としや、間違いや、外部のハッカーによる攻撃や、その他の問題が起こらないとは言えない。
要するに、たとえ最良のプライバシー方針が「人のことを本当に思いやる人たち」の手で心を込めて作り上げられたとしても、かつ従業員全員がそれに同意することに誓いを立てたとしても、実際にそれだけであなたのプライバシーが保護される訳ではない。それができることはせいぜい、そしてこれさえも拡大解釈と言えるのだが、方針が侵害された場合にある程度の頼みの綱を提供することくらいだ。もしもあなたが侵害を証明できれば、ひょっとすると従業員の誰かが解雇されるかもしれないし、ひょっとするとあなたは金銭的な補償か何かを受け取れるかもしれない。けれども、ここアメリカ合衆国においては、会社がプライバシー方針を 持たなければならない と法律に定められていたとしても、必ずしもそのプライバシー方針が法的拘束力を持つことにはならない。そして、たとえそれが法的拘束力を持っていたとしても、それでもやはり実際には他のどんな法律とも同じく、不法行為に対して罰則は与えられるけれども、不法行為を防ぐことはできない。
細かい字の部分には何が書かれているか -- プライバシー方針をあまり当てにし過ぎてはいけないという私の論点を、分かって頂けただろうか? しかしながら、それでもプライバシー方針をしっかり読む 必要 はあるのだ!
プライバシー方針は、多くの場合、退屈で意味の分かりにくい法律用語がぎっしり詰まっているけれども、よく読むと英語に非常に近い文章だと多くの人たちが認めることのできる場合が驚くほど多い。通常、プライバシー方針には、以下のことが含まれている:
そのサイトがどのようなタイプの情報を、どのような状況の下に、どのような使用に対して収集するか。(ここには、あなたがどのブラウザを使っているかというような一般情報と、あなた個人を具体的に特定する情報の双方が含まれることがある。)
その情報が、他者、例えば広告主などとの間で、共有されるか否か、共有する場合はどのような形でするか。
そのサイトがクッキーを使う方法。
そのサイトがあなたのデータを保護するためにどのようなセキュリティ手段を用いるか。
どうすればデータ収集を止められるか。
これらの方針は、時間をかけてしっかり読むべきだ。少なくとも、あなたが頻繁に訪れるサイトではそうすべきだ。それにはいくつか理由がある:
第一に、プライバシー方針は保証ではないけれども、その会社の 意図 を受けて語るものではある。会社が限定されたやり方でデータを収集し配慮をするという点を方針の中でわざわざ強調するのは、少なくともその会社がプライバシーを真剣に考えていることの表われだ。方針が存在しなかったり、いい加減な言い回しの方針しかない会社は、その反対だ。
第二に、方針の中に非常に気掛かりなものを発見してその結果そのサイトを使うのを止めるということもあり得る。いくつかのプライバシー方針にはそのサイトがあなたの個人情報を収集してそれを第三者に販売している事実が極めて率直に述べられている。また、サイトによっては収集した個人的データを保護するためにほとんどあるいは何も措置を講じていないところもある。そういうことが気掛かりなら、別のところを使うようにするのがよい。
第三に、プライバシー方針はあなたが自ら提供したデータ、例えばブログ記事や、写真、ムービーその他、あなたが作成してアップロードしたコンテンツについてサイトがそれらをどのように扱うか明記しているはずだ。サイトがユーザーのコンテンツをマーケティング目的に再利用したり、さらにはユーザーが投稿したコンテンツに対して何らかの形の所有権、著作権、または使用許諾権を主張したりすることも数多くあった。例えば、あなたがアップロードした写真をそのサイトが対価を支払わず広告や商品の中で使って販売することがある、という事実がプライバシー方針の中で警告されているかもしれない。
さらにもっと良い実例として、Microsoft が一人の元従業員に、Windows 8 に関するリリース前の情報を一人のブロガーに漏らした嫌疑を掛けたことがある。同社はそのブロガーの Hotmail アカウントを調べ、漏洩情報の証拠を見つけ、その従業員は逮捕された。あとで分かったことだが、Microsoft の Hotmail に対するプライバシー方針の中には、同社がその権利や財産を保護する目的で(他の目的も多数明示されていた)ユーザーの電子メールにアクセスすることができると明記されていたのだ。(その後、この事件を巡る大騒動を受けて、 Microsoft はその方針を変更し、知的財産窃盗の疑いがある場合は電子メールの内容を Microsoft 自身が調べる代わりに警察当局に委託するようにした。)Gmail や他のいくつかのウェブベースの電子メールサービスも、同様の権利を自らに与えていて、それらはすべてプライバシー方針の中に明記されている。あらかじめそういうことを知っていれば、あなたが通信する際にもっと違った選択ができたかもしれない。
最後にもう一つ、プライバシー方針にはそのサイトがあなたのデータを収集するのを中止し、既に収集済みのデータも削除することをあなたが望んだ場合にどのような選択肢があるかが明記されているはずだ。そこを読めば、あなたのプライバシー設定の選択の役に立つかもしれないし、今後あなたがそのサイトをどのように利用するかについて知識を得られるかもしれない。
もう一歩深くプライバシーを -- プライバシー方針のみでは、大して頼りにならないかもしれない。けれども、その会社あるいはウェブサイトについてあなたが知り得た他のことと組み合わせることにより、相当たくさんのことが見えてくることがある。例えば、他の条件がすべて同じならば、サイトの収益が主としてあるいはすべて広告から得られている場合、購読その他の手段で支えられているサイトに比べてあなたの個人情報が乱用される可能性は高いだろう。
一つのサイトのプライバシー方針や慣行を解釈しようとして助言が欲しいなら、そのサイトの URL を Privacyscore に入力してみるとよい。(Submit (提出) ボタンはない。URL を入力した後にポップアップメニューにそのサイトが現われたら、その名前をクリックすればそのサイトの得点が出る。そうならなければ、そのサイトが Privacyscore のデータベースに登録されていないということだ。)Privacyscore はサイトのプライバシーに得点を付ける際にいくつかの要因を考慮に入れる。例えばプライバシー方針の中にどのようなことが明記されているか(いないか)や、サイト上でサードパーティ追跡機能がいくつ使われているかといったことも評価される。
私は実際にいくつかのサイトを試してみた(検索フィールドに2文字タイプするだけで多数のサイトのリストが出てブラウズできる)が、中にはこんな興味深い結果もあった:
Twitter、 Electronic Frontier Foundation、それに Wikipedia は満点、つまり 100 点中の 100 点だった。だからと言ってこれらのサイトが完璧なプライバシーを持っているという訳ではない。
Apple、Google、 Facebook、それに Microsoft は皆 90 点台の半ばで、最高ランク (「快適」) と言える。
Amazon.com とBing はいずれも 85 点で、中程度ランク (「要注意」) となった。
Yahoo はたったの 74 点で、 WordPress (75 点) とともにプライバシーが最低ランク (「心配」) だった。
Wired の得点はたったの 39 点、私がチェックした中で最低点だった。
どのサイトのプライバシー方針であっても、それを受け入れることができるかどうかはあくまでもあなたが自分で判断すべきことだ。また、望ましくないデータ収集をブロックするソフトウェアなりサービスなりを使うかどうかの判断もあなたがすべきだ。けれども、直面しているものについてあなたがより多くを知れば知るほど、より賢明な判断ができるようになる。これらの話題についてもっと詳しくは、ただ単にウェブサイトやプライバシー方針についてのみならず、あなたの個人データがオンライン上で潜在的な危険に晒されている他の数限りない状況や、それに対してあなたに何ができるかについても、ここでもう一度私の本 "Take Control of Your Online Privacy" をお薦めしておこう。
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文: TidBITS Staff: [email protected]
訳: Mark Nagata <nagata@kurims.kyoto-u.ac.jp>
DEVONthink と DEVONnote 2.7.4 -- DEVONtechnologies が DEVONthink の三つの版 (Personal, Pro, および Pro Office) すべてと DEVONnote をバージョン 2.7.4 にアップデートし、ラベルが表示される方法により多くのコントロール(クラシックな色付け、書類名のまわりに泡を添える、あるいは色付きの点々を付ける)ができるようにした。DEVONthink の三つの版はいずれも、ムービーのフレームの画像をコピーするコンテクストメニュー項目を追加し、Annotation ツールバーに線や矢印を作成する項目を追加し、AirMail 経由での電子メール送信に対応した。また、DEVONthink の三つの版とも Evernote Notebook の読み込みを改善(読み込み済みのノートは読み込まないように)し、PDF に作成日付とユーザ名の注釈を追加し、OS X 10.9 Mavericks の上でウェブから FTP サイトを見る機能に対応し、同期後にウィンドウと表示をリロードし、Mavericks 上で Quick Look の問題点を回避している。Pro Office 版ではモバイルウェブインターフェイスを通して電子メールメッセージを読む機能に対応するとともに、ファイルシステムイベント後の読み込み済み電子メールの再索引付け機能に修正を加えている。(いずれもアップデートは無料; DEVONthink Pro Office は新規購入 $149.95、リリースノート; DEVONthink Professional は新規購入 $79.95、リリースノート; DEVONthink Personal は新規購入 $49.95、 リリースノート; DEVONnote は新規購入 $24.95、 リリースノート; TidBITS 会員には DEVONnote およびすべての版の DEVONthink が 25 パーセント割引)
DEVONthink と DEVONnote 2.7.4 へのコメントリンク:
Skype 6.15 -- Microsoft が Skype 6.15 をリリースし、Skype Community Forum のユーザーたちが見つけた二件のクラッシュ(一つは起動時のもの、もう一つは終了時のもの)を修正した。今回のアップデートではまた、会話単位の通知設定が保持されなかったバグを修正するとともに、アニメーション化された顔文字が CPU サイクルを過度に使用していた問題を解消している。それからもう一つ、今回のリリースでは MacBook Pro 上でスクリーン共有を使用した際のクラッシュも解消した。(それとともに MacBook Pro ユーザーに対して OS X 10.9.2 Mavericks にアップデートするよう推奨している。)(無料、41.5 MB、リリースノート)
Fluid 1.8.2 -- Todd Ditchendorf が Fluid のバージョン 1.8.2 をリリースした。ウェブアプリやウェブサイトを Mac 用アプリに転化する、サイト特定ブラウザだ。今回のアップデートでは複数のディスプレイや userscript への対応を改善し、Web Page Zoom 設定が再起動後も保たれるようにした。また、JavaScript と CSS のシンタックスカラー付けを修正するとともに、Userscript および Userstyle エディタにおけるいくつかのコード補完機能にも修正を加えた。これらの機能は $4.99 を支払ってフルライセンスを購入すれば使えるようになる。Fluid ライセンスがあればクッキーを別途保存できるアプリを作成したり、アプリをメニューバー上に置いたりすることもできるようになる。(無料または新規購入 $4.99、無料アップデート、3.5 MB、リリースノート)
Keyboard Maestro 6.4 -- Stairways Software が Keyboard Maestro 6.4 をリリースし、OS X 10.9 Mavericks においてファイルタグを読んだり編集したりする機能に対応した。この自動化ユーティリティの今回のアップデートには 50 件以上の変更点があるが、主なものを挙げれば、アクセシビリティと VoiceOver 対応の改善、スクリプトやサブマクロを実行する際の非同期オプションの追加、いくつかの新しい AppleScript コマンドの追加、画像検出コードにおけるメモリリーク阻止、数多くのクラッシュの可能性の修正などがある。(新規購入 $36、 TidBITS 会員には 20 パーセント割引、無料アップデート、24.4 MB、 リリースノート)
Keyboard Maestro 6.4 へのコメントリンク:
Retrospect 11.0.1 -- Retrospect Inc. が Retrospect 11.0.1 をリリースし、このバックアップ用ソフトウェアに多数のバグ修正を加えた。今回のアップデートでは、バージョン 11 で新設されたブロックレベルの増分バックアップのオプション(2014 年 3 月 6 日の記事“Retrospect 11”参照)に関係するリストアの際の問題点二件を修正した。その他の修正点としては、かなり古いバックアップに手を入れる際のメモリリークのパッチ、Past Backups 表示で削除済みバックアップを表示しないようにした際に回収したバックアップが表示されるようにしたこと、OS X 10.9 Mavericks 上で日本語ローカライズ版が Dashboard Information に正確な情報を表示するように書き直したことなどがある。(新規購入 $119 から $2,199、アップグレード $69 から $1,299、362 MB、 リリースノート)
Downcast 1.0.11 -- Jamawkinaw Enterprises が Downcast 1.0.11 をリリースし、ビデオポッドキャストをオーディオのみで再生するよう切り替えられるオプションを追加した。ビデオコンテクストメニューでこのオプションを選択すれば、ビデオは閉じるがオーディオの再生は続く。このポッドキャッチャーアプリはまた、読み込んだエピソードでファイル拡張子が脱落することのあったバグを解消し、プレイリストの優先再生を修正し、一部のみが再生されたエピソードが統計情報に正しく反映されるようにし、選択されたポッドキャストやプレイリストが再起動後に選択されなくなっていた問題点を修正し、クラッシュの原因となっていた複数個のバグを修正している。(Mac App Store から新規購入 $9.99、無料アップデート、6.4 MB、リリースノート)
PopChar X 6.5 -- Ergonis Software が PopChar X 6.5 をリリースして新しいカスタム挿入テクニックを使うようにした。これにより、イベントベースの直接文字挿入に信頼性をもって対応していないアプリケーションでも以前より高速に文字が挿入できるようになったはずだ。今回のアップデートではまた、OS X 10.9 Mavericks で検索語を入力している最中に検索フィールドがクリアされてしまった問題に回避策を施し、英語以外のシステムで PopChar が前回選択されたレイアウトを記憶できなくなっていたバグを解消し、多くのアプリケーションでクリップボードを通じた挿入の速度を改善している。(新規購入 29.99 ユーロ、TidBITS 会員には 25 パーセント割引、無料アップデート、3.7 MB、 リリースノート)
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