macOS の土台をなすものに関する Howard Oakley の説明は何時も興味深いが、彼の Eclectic Light Company ブログの最新の記事 "How to get the Trash working properly (Trash を正常に動作させる術)" はとりわけ私の注意を引いた。その中で、彼は空き容量を増やすためにとても大きなファイルを削除しても望んだ効果が得られるとは限らない、少なくとも直ちには、と指摘している。
彼が言うには、その理由は Time Machine がバックアップ毎にあなたの全ドライブの APFS スナップショットを撮りそれ等を 24 時間保持することにあると言う。それ等のスナップショットの一つはとても大きなファイルを含んでいるので、丸一日経って Time Machine がそれ等のスナップショットを削除して新しいものに道を譲る迄その容量を取り戻せないかもしれない。
けれどもここではその種の不気味の谷現象に踏み込むのではなくて、その谷に橋を架けることを考えたい。そこで登場するのが Center Cam だ。"The World's Middle-Screen Webcam" というキャッチフレーズで登場した Center Cam は、かなり小型のビデオカメラで、細い雁首状の柄が付き、クリップを使ってディスプレイの上部に取り付けるようになっている。
発明者 Ian Foster は、パンデミック中にソーシャルワーカーのカウンセリングで修士号を取るためのインターン期間にこのアイデアを思い付いた。クライアントの子供たちと面と向かって話せる親密さを築いてきた彼だったが、リモートのカウンセリングに移行せざるを得なくなり、その親密さが弱まった。信頼を得るために不可欠のアイコンタクトを維持することができなくなったのがその要因の一つであった。彼が考えた解決法は、ビデオ通話の最中にスクリーンの中央に置いても差し支えないほど小さなウェブカメラを設計することだった。
この Center Cam は毎秒 30 フレームの 1080p カメラを搭載する。(でも期待し過ぎてはいけない。)Zoom やその他のビデオ会議システムは解像度を 720p あるいはそれ以下に落とすことがよくある。) レンズの F 値は 2.1 で、水平実視野 65 度、隠し撮りされないと知って安心したい人のために小さなレンズキャップも付いている。ピントを合わせるために手動でレンズを回すようになっているので、必要ならば手で調整できる。(どうやら出荷の最中にずれることもあるようだ。) 私の場合は箱から取り出した状態で問題はなく、少しだけピントを調整して試してみたものの、結局何もせずにそのまま使っている。
雁首部分の中を通っているケーブルはおよそ 42 インチ (106 cm) の長さで、問題なく USB ポートに接続できるだろう。USB-A プラグで最小要件は USB 2.0 だが、新型の Mac 用に USB-C アダプタも付属する。
いったん接続すれば、この Center Cam はアプリの中で普通のビデオ入力として、"CC HD webcam" という名前で扱われる。独自のマイクロフォンも搭載していて賢明にも "SPCA2281B2 Camera" という名前が付いているが、私はほとんど使ったことがない。ちゃんと動作はするけれども、素晴らしい性能とは思えず、私は AirPods Pro を使う方が好きだ。
未来は明る過ぎる、サングラスをかけないと
本来ならばここで、私はこの Center Cam が大好きになってあらゆるビデオ通話でこれを使うようになったと言いたいところだが、残念ながら現実にはそうならなかった。
Center Cam を使う目的は、他の人から見てあなたがより良く見えること、とりわけアイコンタクトが維持できることだ。その目的にはうまく働いている。ビデオ通話をしている際に相手の人に、アイコンタクトを重視するカメラを使っていることが見て取れるかどうか尋ねてみると、皆がイエスと答えてくれた。
比較のために、同じ状態で iMac の FaceTime HD カメラで撮った画像がこれだ。FaceTime HD カメラの方が Center Cam に比べてずっと視野角が広いので、私の周りで部屋の中のずっと広い範囲が見えている。加えて、光と色のバランスが FaceTime HD の画像ではずっと良くなっている。
Wall Street Journal の報道であるからには多くの注目を浴びるはずなので、私としては Apple が iOS 17 で (あるいはそれより前に) この脆弱性に対処してくれることを期待したい。すぐに思い付く解決策は、Settings > あなたの名前 > Password & Security > Change Password でパスワードを変更する前にユーザーが現在の Apple ID パスワードを入力するよう求めることだ。そのようにしても iCloud Keychain へのアクセスを防ぐことはできないが、少なくともユーザーが iPhone を消去することはできるようになる。
Apple がこれまで現在の Apple ID パスワードの入力を求めてこなかったのは、おそらくパスコードがセキュアな第二因子だと見なされてきたからだろう。iPhone を持っているのはあなたで、あなたがパスコードを知っているからだ。これとは対照的に、アカウントを管理するため Apple ID サイトにログインする際には、まず現在のパスワードを入力して、二要素認証を通り抜け、それからもう一度現在のパスワードを入力しなければパスワードの変更ができない。だから、少なくとも Apple が他のやり方をじっくり考え抜くまでの間は、それが簡単に実行できる対策と言えるのではなかろうか。
追加の手順の候補として私たちが既に持ち合わせているもので目的に最も近いのは Screen Time パスコードだ。Screen Time を有効にすると、別途に 4 桁の Screen Time パスコードを設定して、Content & Privacy Restrictions をオンにし、Account Changes > Don't Allow を選択すれば、パスコードなしには誰も Apple ID パスワードを変更できなくなる。でも残念ながら、それをすると Settings > あなたの名前 に入ろうとする度にまず Settings > Screen Time > Content & Privacy Restrictions > Account Changes > #### > Allow へ行く必要が生じる。たいていの人にとってそれは我慢できない障壁だろう。
盗み見てから引ったくって盗まれたり、バーやデートで薬物を飲まされたり、あるいは暴力的な犯罪の犠牲者となったりといったことは、自分の身には起こらないだろうと思う人も多いかもしれない。でも、パスコードの盗難は他にもいろいろな状況下で起こり得る。それに、Wall Street Journal の記者たちが報告した通りに、もしも被害に遭えばその結果はとんでもなく深刻なものになり得るので、たとえバーになんか行かないという人でも、あるいは暴力的な窃盗の発生率が高い地域に住んでいないという人であっても、やはりすべての人が以下に挙げるいくつかの手法を心に留めて、自分のパスコードが悪用されるのを防ぐ用心をすべきだと思う:
公共の場所では常に Face ID または Touch ID を使う。 この種の攻撃で鍵となるのは盗人がそのユーザーのパスコードを手に入れることだ。そのための最も楽な方法は、ユーザーがパスコードを入力しているところを覗き見たり映像に記録したりすることだ。けれども、もしあなたが必ず Face ID または Touch ID を使うようにすれば、とりわけ公共の場所ではそうするようにすれば、あなたの知らないところでパスコードを盗める者は誰もいない。(警察によれば薬物を飲まされた人が顔や指を使われたことはあるようだが、それでパスコードが盗まれた訳ではない。) 生体認証情報のセキュリティについて誤った考えを吹き込まれたせいで Face ID や Touch ID を使いたくないと思っている人たちにも、ぜひとも使って頂きたいとお願いしたい。あなたの指紋や顔の情報はあなたのデバイス上のSecure Enclave にのみ保存されているのであって、ほとんどあらゆる状況下でそれはパスコード入力よりもずっとセキュアだ。Face ID や Touch ID がうまく働かなくて困るという人たちもごく稀にいるけれども、そういう人はパスコードを入力する際にそれを誰にも見られないように隠すことを心掛けよう。ちょうど、ATM に PIN を入力する際に誰にも見られないようにするのと同じように。
まず第一に、以前から私は可能な限り Face ID を使うようにしているし、もしも Face ID が働かなくて秘密の数字をタップしなければならないならば誰かに見られないか十分注意する習慣が付いている。公共の場にいる場合には、使っていないのに iPhone を取り出していると少し恥ずかしい気持ちになるし、これからはもっと注意して iPhone をポケットにしまうようにしようと思う。
これらの機密を要する写真を削除する代わりに、Photos の Hidden アルバムに入れておいて iOS 16 と Ventura の新しいオプションを使ってそのアルバムを Face ID か Touch ID で保護することもちょっとだけ考えた。でも残念ながら、iPhone 上で何回か Face ID が働かない事態を経験するうちに、パスコードを求めるプロンプトが出て、それを入力すると Hidden アルバムの内容が明かされてしまった。これもまた、パスコードが「王国への鍵」である実例だと判明したのだった。
誰であっても、その人がこの種の攻撃の犠牲になる可能性が限りなくゼロに近いのは事実だし、私自身が犠牲になることを心配している訳ではないのだが、それでも今回の Wall Street Journal の記事は私自身のセキュリティに対するより広範な前提条件と挙動を考え直し整え直すきっかけとなった。その力を与えられたことに感謝したいし、読者の皆さんにもこの際ご自分のセキュリティの状況をじっくり考えてみることをお勧めしたい。
覚えておられるだろうか、Apple は 1984 年 1 月 22 日の Super Bowl XVIII の最中、あの有名なテレビコマーシャル "1984" で Macintosh を世に送り出した。Jobs が初めての Macintosh を包みから取り出したのは 1984 年 1 月 24 日であった。でも、Mac が人々の手に渡るまでにはそれから一か月以上かかったに違いない。その上、写真の中の Jobs は Silicon Valley にさえいない。彼は、ソフトウェアカンファレンスに出席するため New Orleans に来ていて、食事に行こうと友人と街を歩いているところだ。これほどの魔法のような出会いに、魅せられない人がいるだろうか?