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#1490: iOS 13.2.2、Mojave セキュリティアップデートで警告、iOS 13 でアプリのアップデートのヒント、隠し機能の macOS コントロールパネル、iPhone 11 のナイトモード

Apple が躍起になってオペレーティングシステムのバグを修正しているところを見ずに一週間過ごせたかもしれないと思っていた人たちは、やれやれ、またもや落胆させられた。Apple は iOS 13.2.2 と iPadOS 13.2.2 をリリースして、あまりにも強引にバックグラウンドのアプリを除去していた挙動を修正した。アップデートの話のついでに言えば、何をするにせよ、Mojave のセキュリティアップデート 2019-001 が動作中にアップデートを中断してはいけない。そんなことをすれば、あなたのドライブに悪いことが起こる可能性があるからだ。iOS 13 になって App Store のアップデートを見つけるのが難しくなったが、そこに素早くアクセスできる技があるのでご紹介しよう。また、Mac オートメーションの導師 Sal Soghoian が発見した事実で、macOS のある隠し機能と Luna Display を利用して iPad を Mac 用のカスタマイズ可能なコントロールパネルとして使えることも紹介したい。それからもう一つ、Glenn Fleishman が寄稿記事で iPhone 11 のナイトモードに深く切り込む。今週注目すべき Mac アプリのリリースは BusyCal 3.7.3、Coda 2.7.5、PDFpen と PDFpenPro 11.2、GraphicConverter 11.1.1、Lightroom Classic CC 9.0、Things 3.10.1、Merlin Project 6.0、1Password 7.4、それに HandBrake 1.3 だ。

Josh Centers  訳: Mark Nagata   

iOS 13.2.2、バックグラウンドアプリ強制停止を止める

iOS 13.2 や iPadOS 13.2 へアップデートした後でアプリがバックグラウンドで走っている最中に予期せず終了してしまうようになったという苦情に対処するため、Apple は iOS 13.2.2iPadOS 13.2.2 をリリースした。(混乱してしまうが、iOS 13.2.1 は HomePod 用のみのアップデートであった。2019 年 11 月 4 日の記事“iOS for HomePod 13.2.1、文鎮化の問題を解決">”参照。) 今回のアップデートは、iPhone X 上では 588.2 MB、10.5 インチ iPad Pro 上では 534.3 MB だが、Settings > General > Software Update から、あるいは macOS 10.15 Catalina では Finder を通じて、またそれ以前のバージョンの macOS では iTunes を通じてもインストールできる。

iOS 13.2.2 release notes

今回のアップデートにおける主たる焦点はバックグラウンドで走るアプリの終了に関するものだが、それ以外にもいくつか細かなバグに対処が施されている:

けれども iPhone の側では、セルラーサービスに関係したバグに対する重要な修正が iOS 13.2.2 で施された:

いずれのアップデートも、公開されたセキュリティ修正は含んでいない。

壊れたレコードのように聞こえるリスクを承知で言うが、もしもあなたがまだ iOS 13 にアップグレードしていないのならば、あともう少し待っても害はないだろうと思う。でも、既に iOS 13 に飛び乗っている人は、今回もきちんとアップデートをインストールした上で、しっかり手綱を握っていよう。決して乗り心地の良い旅ではないだろうから。

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Adam Engst  訳: 亀岡孝仁  

Security Update 2019-001 (Mojave) のインスタレーションを中断しないで

MacAdmins Slack 上の #mojave チャネルでは、ユーザーが Security Update 2019-001 (Mojave) をインストールした後、システム管理者が見た問題に関しての長い議論があった。この話題はまた Jamf Nation サイトのスレッドでも議論されている - 最初に教えてくれた読者の Bruce Carter に謝意を表する。

Security Update 2019-001 in Software Update

中身は色々だが、全部がブート時の問題に絡んでいて、完全なロックアップ、アカウントが使えない、現パスワードが働かない、ユーザーがパスワードを入れた後でログインウィンドウが再度現れる、或いはログインの後クラッシュ画面等の現象となっている。現時点では、T1 又は T2 セキュリティチップを持つ Mac だけが影響を受けている様に見える - MacBook Pro with Touch Bar (2016 及びそれ以降), iMac Pro, MacBook Air (2018), そして Mac mini (2018) が含まれる。

私が知る限り、この問題を実際に自分で見た人は誰もいない;ユーザーは常に事が起こってから報告してくる。(そして、システム管理者の世界では、ユーザー報告はかなり割り引いて受け取られる。) しかし少なくとも幾つかの事例では、ユーザーはアップデートの途中で、余りに時間がかかるので、中断したと認めている。それが鍵である。何故ならば、ユーザー James Dean が MacAdmins Slack で言った様に、少なくとも何人かのユーザーにとっては、このアップデートは普通でないやり方でインストールが進んでいる様に見えたという。どうも、Mac をオフにしオンに戻し、そしてある点では、彼が言うには1分とも思える程の間オフになっていたらしい。(Tonya の T1 搭載のMacBook Pro (2016) では、インストールに約 10 分かかったが、特に変な動きには遭遇しなかった。とは言っても、その間、四六時中注意を払って見守っていたわけでもない。)

Speculation about the user interruption theory on MacAdmins Slack

Mac がオフになっている様に見える間、私が思うに、このセキュリティアップデートは BridgeOS をアップグレードしているのであろう。BridgeOS は watchOS の改造版で T1 や T2 チップに埋め込まれており、Touch Bar や FaceTime HD カメラの様なものを走らせる。Mr. Macintosh は、Security Update 2019-001 for Mojave はまた BridgeOS をバージョン 17.16.11081.0.0 にアップデートすると報じている。BridgeOS は T1 及び T2 チップ上で走る事を考えると、それはブートセキュリティにも関係しており ("Mac を使う際に T2 チップは何を意味するか?" 5 April 2019 参照)、BridgeOS アップデートを中断させてしまえば次のブート時に大混乱の原因になるであろうと推論しても行き過ぎではないであろう。

この問題に対する解は、以前のパスワードを使うことから、macOS を Internet 復元を使って再インストールし、時にはブートドライブを初期化してから、バックアップからデータと設定とを復元することまである。これ迄の所、システム管理者やコンサルタントは、影響を受けた Mac を全て生き返らせることが出来ている様に見える。勿論、バックアップの状況によっては、データ損失になる場合もある様である。

結局のところ、私の助言は単純に Security Update 2019-001 (Mojave) をインストールする道を選ぶことである。但し二つの注意点がある。第一に、最悪の事態に備えて、始める前にしっかりしたバックアップがある事を確認しておく。これは、どんな時でも良い考えである。第二に、インストールの最中に中断しない事! 予想より長い時間を要する場合があるかもしれないが、それが必要とするだけ走らせておく。二番目の助言の当然の帰結として、MacBook Pro や MacBook Air では、電源につながった状態でのみインストールを始める事;インストールの途中で電池切れになる事態は避けたいですよね。

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Josh Centers  訳: Mark Nagata   

TipBITS: iOS 13 でアプリのアップデートに素早くアクセス

iOS のアプリのアップデートを常に追跡していたい私たちのような者にとって、iOS 13 や iPadOS 13 でのかなり厄介な変更点の一つは、Apple が App Store アプリの中で Apple Arcade 用の特別なタブを設けるため従来あった Updates タブをなくしてしまったことだ。どのアプリが入手可能でどれがインストール済みかを調べようとすれば、右上隅にあるあなたの顔をタップして、そこから下へスクロールしなければならず、これは簡単に推測できるような方法とは言えない。(私もこのやり方を見つけるためにちょっと探し回った。)

ありがたいことに、Apple は私たちに慈悲を垂れて、もっと素早い方法を用意してくれた。Home 画面で、App Store アイコンをタップしてそのまま押し続け、コンテクストメニューから Updates を選ぶのだ。(この技を教えてくれた Giovanni Mattei に感謝したい。) それでもやはり、下へスクロールしなければアップデートが見えないかもしれない。従来この技は 3D Touch を備えた iPhone でしか使えなかったのだが、Apple は 3D Touch テクノロジーを断念するに際して、その代替となる長押しをすべてのデバイスに拡張し、iPad もそこに含めてくれたのだった。

The long-press shortcut to see App Store updates

あともう一つ、私が発見した技を紹介しておこう。あなたのアプリのアップデートを一覧している最中に、アプリの一つの上で左へスワイプすれば、そのアプリを削除できる。だから、あなたがもう二度と使わないアプリにアップデートが出たのが表示されても、それを削除するために Home 画面上で探し回る必要はない。

Deleting apps from the updates screen

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Adam Engst  訳: 亀岡孝仁  

Sal Soghoian、macOS の隠れたカスタムコントロールパネルを明かす

"TipBITS: 複数モニタ構成で選んだスクリーンをミラーする方法" (22 October 2019) で、私は自動化の賢者 Sal Soghoian が数週間前に MacTech Conference でした話について読者にじれったい思いをさせてしまった。今や Sal は彼がしたことを詳細に説明するビデオを完成させたので - これは是非全部見て欲しい - 彼が MacTech で言った事を共有出来る。

一言で言えば、Sal は macOS の奥深くに隠されたアクセシビリティ機能を発見しその使い方を説明したのである。それは iPad を Mac のための完全にカスタマイズ出来るコントロールパネルにさせてくれる技で、iPad 上のボタンをタップすれば、Mac 上で何かが起こるのである。Sal はこれを macOS 10.15 Catalina でデモをしていたが、これは少なくとも 10.14 Mojave でも働くはずで、もっと前のバージョンの macOS でも働くかもしれない。

Basic shot of a custom control panel on an iPad controlling Keynote on the Mac

Mac と iPad をつなぐには、Luna Display ドングルが必要となる ("Luna Display を使えば iPad が反応の良い Mac スクリーンに" 7 December 2018 参照)。Apple の Sidecar 技術は使えない。何故ならば、それは iPad が Mac の画面として作動している時に iPad 上のタッチ入力を許さないからである ("Catalina の Sidecar 機能で iPad を Mac の第2モニタにする" 21 October 2019)。Luna Display は iOS 9.1 かそれ以降で動くどんな iPad でも使えるので、これは古い iPad 2 かそれ以降に対しての完璧な使い方の一つと言える。勿論、Luna Display でつながった iPad 上のコントロールパネルボタンをタップ出来るのはボーナスに過ぎない - 標準の Mac 画面上でマウスを使ってボタンをクリックすることも出来る。

次の重要な鍵となるのは、Panel Editor と呼ばれる内蔵の macOS アクセシビリティアプリである。Panel Editor は System Preferences > Accessibility > Keyboard > Accessibility Keyboard > Panel Editor から開ける。しかし、Panel Editor を開く前に、Enable Accessibility Keyboard チェックボックスを選んでおくのを忘れないように - これは画面上のキーボードを表示する - そして System Preferences > Keyboard > Keyboard で、"Show keyboard and emoji viewers in menu bar" も選んでおく。

Settings necessary for the accessibility keyboard panels

Actions available for Panel Editor buttons

これらの設定全てを有効にしたら、System Preferences > Accessibility > Keyboard > Accessibility Keyboard で Panel Editor ボタンをクリックしてアプリを開き、そして新しいパネルを作る。これらのパネルは技術的には "キーボード" であるが、Panel Editor は色々な動作をするボタンも作らせてくれる。戻るボタン、ツールバーを表示又は隠す、テキストを入力、キーボード上でキーを押す、アプリを開く、システムイベントを起動する、そしてタイプ入力候補を表示等が作れる。そして - 私がこの技の後ろには Sal がいると言った途端に皆さんは次に何がくるかお気づきであろうが - ボタンで AppleScript を起動出来る。

Panel Editor showing example buttons

上記の例では、私は5つのボタンを作った (それらは Panel Editor ウィンドウの上に浮かんで表示されている)。Open iTunes は Open App アクションを使う、Play/Pause and Mute は System Events アクションを使う、Identify Desktop は AppleScript を走らせる、そして Border Image は Keyboard Maestro マクロを Press Keys アクション経由で呼び出す。その通り、何も AppleScript だけに限定されているわけではない。Keyboard Maestro の他に、Automator ワークフローも Open App アクション経由で統合出来るはずである。ほぼどんなアクションでも Panel Editor のカスタムボタンになり得る。

自分のパネルを開くには、Accessibility Keyboard の右上隅にある Custom ボタンをクリック、そして自分のパネルをクリックする。また、歯車アイコンをクリックしてポップアップメニューから自分のパネルを選択することも出来る。それは他の全てのウィンドウの上にフロートする暗色のパネルで、好きなところ移動出来、例えば iPad と Luna Display によって提供されている第二画面上にも移動出来る。

Switching to a custom panel in Accessibility Keyboard

(助言:もしこれを Mojave でやろうとしているのであれば、自分のパネルを閉じないように。何故ならば、戻るには System Preferences > Accessibility > Keyboard > Accessibility Keyboard > Panel Editor そして Enable Accessibility Keyboard を選択する旅をもう一度繰り返さなければならなくなるからである。Catalina では、メニューバーのキーボードアイコンから Show Keyboard Viewer を選ぶだけで済む。)

私のパネルの例では、数個のボタンしかないが、Sal のビデオを見れば、彼が沢山のボタンを作り出し iPad の画面全てを満たす程大きいカスタムパネルを作成したことが分かる。それらの多くは、アプリを起動する、システム設定を変更する等々の一般化したボタンだが、中間部にある全てのボタンは Keynote を制御するスクリプトを起動する。皆さんは Keynote を自動化することにあまり興味を持たないかもしれないが、もし自動化の愛好者なら、ボタンに付与出来る色々なアクションのことを思い浮かべて見て欲しい。

An iPad showing a full-screen custom accessibility keyboard panel

私は Sal が彼のビデオで取り上げた幾つかの大事な詳細に触れていない。例えば、Assistive Control アプリに対するセキュリティ許可を設定する、自分のスクリプト全てを保持し、個別のボタンから呼び出せる AppleScript Library 使い方等である。

しかしながら、大事な点を二つだけ挙げておく:

* 自分のカスタムパネルを他の人と共有出来る、但し、同じバージョンの macOS 内で (Mojave バージョンの Panel Editor は Catalina バージョンで保存されたパネルを開くことは出来ない)。つまり、会社固有のアクションのためのカスタムパネルを開発し、そしてそれを職場の全員にそれを与えることも出来る。これをするには、Panel Editor で File > Duplicate を、そして .ascconfig ファイルを保存するため File > Move To を選択する。それから、他の Mac 上の Panel Editor にインポートするため、File > Import Panels を選ぶ。

* Sal は、彼のカスタム Keynote パネル (Catalina 用) も、彼のスクリプト全てを含む AppleScript Library も共有しているので、皆さんはそれらをそのまま、或いはカスタムパネルを始める下敷きとして使う事が出来る。

自分のカスタムパネルを作る事を考えているのであれば、その目的と共にコメントを通じて知らせて欲しい!

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Glenn Fleishman  訳: Mark Nagata   

iPhone 11 のナイトモード、良いものを明るみに出す

暗いところで写真を撮ろうとする時、あなたの周りには光の粒子が限られた数しか飛び回っていない! いや、真面目な話、あらゆる写真術は結局光の問題に行き着き、光は光の粒子に行き着き、光の粒子が十分になければ夜間の写真は出来が悪くなる。

Apple は iPhone 11 と iPhone 11 Pro の各モデルにナイトモード (Night mode) を導入することにより、この問題についてかなりの前進を果たした。この機能は iPhone 11 の広角カメラの増大した感度に依存し、計算写真学を活用することによって、カメラの光学的機能では実現できなかった、より良い画像を構築する。

ナイトモード (Night mode) はある種の「ダーク HDR」と言える。ただ単に少しずつ異なる露出の撮影を続けて素早くしてからそれぞれの中で最も表現豊かな階調範囲を組み合わせるのではなく、ナイトモードはもっと長い時間枠にわたる数多くの画像を取り込んだ上で、ずっと複雑な判断の仕組みを駆使してそれぞれの最良の部分を賢く交互配置することにより、大きな画素雑音や不鮮明さを生じることなく夜間写真を作り出すことができる。

以下では、暗いところで写真を撮影するのがなぜ難しいのか、現時点で Apple はどんなことを試みているのか、そして最も重要な点として、ナイトモードがどの程度成功しているのかを見て行こう。

電子的、光子的

カメラにとって暗いところで光を捕らえるのが困難なのは、文字通りに、光の量が十分でないからだ。光がどこかから漲って来ると想像するのは簡単だが、実際には光が膨大な数の個々の光子から成っていて、電子が急速に動くことで励起された原子から放出されていることを私たちは皆知っている。

暗い場面に遭遇していない間は、光が光子であることなど通常は意識する必要などない。フィルムカメラもデジタルカメラも、読み取れる光が十分にありさえすれば、概して良い写真、あるいは素晴らしい写真を撮影してくれるからだ。取り込める光子が十分たくさんあれば、取り込みが不足することもなく、色調すなわち光の彩度も正確に描出されるからだ。

従来型のカメラでは、より多くの光子を取り込む手段が2つある。絞り、すなわちレンズの丸い開口部をより広く開いて明るいところでの撮影よりも多くの光を取り込もうとする方法と、シャッターを開いている時間、すなわち露光時間を長くして、より多くの光子がフィルムに届くようにする方法だ。露光時間を長くすることの欠点は、動くものをうまく捕らえられないので、速く動くものがボケてしまうことだ。高速のカメラならば、極めて短いシャッター時間を使うことで高速でゴールラインを走り抜けるランナーをもくっきりと撮影できるのだが、そのためには大量の光がなければ鮮明な写真にならない。ただし、スマートフォンのカメラではそこのところの計算が少し違ってくる。(フィルムカメラには ISO/ASA 番号もあって、これは受光クリスタルの粒度を表わす。クリスタルが大きければ ISO/ASA の値が大きくて少しの光でも色調を捕らえることができるが、その反面「きめの粗い」写真になる。)

デジタルカメラのセンサー (通常は CCD (charge-coupled device) つまり電荷結合素子) は、基本的に光子を集める装置だ。このセンサーは、ある意味で特別のコンピュータチップとも言える。カメラのセンサーにある個々のピクセルが、まるでバスケットボールのゴールリングのような働きをして、光子たちがそこを通り抜ける。光子がリングに入れば、つまりセンサーに当たれば、そのエネルギーを渡して、光電子効果を通じて電子を発生する。その電子が CCD によって「井戸」の中に取り込まれる。これはある種のバケツのようなもので、露光時間が終わるまで電子がそこに集められる。それから、センサーはそうやって集めた電子を使ってそのピクセルにおける色調の値を決定する。

A night shot showing the emphasis on green

(デジタルカメラのセンサーが捕らえるのは色調のみであって、個々のピクセルを赤・緑・青のフィルターで覆うことによりカラー画像が作成される。通常は、緑のピクセルが赤や青のピクセルの2倍の個数ある。緑の光が、シーンの中間色の色調を最も良く反映するからだ。)

そのシーンに大量の光がある場合には、デジタルカメラはセンサーの井戸を満杯にしないために短い露光時間を使わざるを得ない。満杯になれば、細かな点がすべて飛んでしまうからだ。光の量が少ない場合は、長い露光時間を使うことでバランスの取れた写真が可能となるが、ただしそのシーンの中に動くものがあればボケてしまう。

しかしながら、そこが非常に暗ければ、そもそもセンサーに到達する光子の数がほとんどないことになる。背景には雑音があり、センサーは電荷に依存してシーンを画像化するので、センサーは良い電子とともに誤った電子もすくい取ってしまう。

夜間撮影をするための伝統的な手法は露光時間を長くすることだが、人々がほんのちょっとでも動けばまともな写真は撮れなくなる。かと言って露光時間を短くすれば十分な光を捕らえきれないか、あるいはカメラの ISO をうんと上げて、雑音、つまりそこにありもしないさまざまな色の染みを発生させてしまうかのどちらかになる。

うんと高いところから1兆人の人たちがゴルフボールを投げ下ろして、それらのボールが海に落ち、海面に正方形のバスケットがぎっしりと敷き詰められているところを想像してみよう。投げた人が意図していたバスケットの中にうまく落ちるボールもあるだろうが、バスケットの縁に当たって跳ね返り、違うバスケットに落ちてしまうボールもあるだろう。さらにそこで投げられたボールの数が少なかったり、投げる人の狙い方が悪かったりして、誤ったバスケットに入るボールが多くなったと想像してみよう。そうなればボールの数を計測しても誤った結果が出る。それが、暗い写真の中に現われる染みのようなピクセルだ。

カメラのメーカー各社はさまざまの変数を調整して、この問題を改善しようと試みる。そうした試みはすべて、あらゆる光条件にわたって結果を改善する。開口部の大きなレンズにすれば、より多くの光を取り込める。より深い井戸を持つセンサーは、より多くの電子を貯めることができるし、センサーの感度を上げて、非常に暗いところでもより多くの色調をより正確に識別できるようにすることも可能だ。また、センサーのピクセルを大きくすれば、やはり暗い環境でもより多くの光を捕らえることができる。

最近数年間にわたって、Apple はそうしたカメラのあらゆる変数を調整し続けてきた。iPhone 6s と iPhone 7 のアップデートの間で、絞りの開口は 50 パーセントほども大きくなり、主レンズが f/2.2 から f/1.8 へと開口が増えた。(この f 値は開口部の直径を表わす。) iPhone X やそれ以降のモデルは、より大きなピクセルでより深い井戸を持つセンサーを装備している。

(逆説的なようだが、ピクセルを大きくせずにセンサーの領域を広げてピクセルの個数を増やすと、感度が下がってしまう。その理由は、個々の小さなセンサーに入る光量が少ないからだ。だからこそ、数年前にカメラ業界が完璧に適切な 12-メガピクセルの領域に到達して以来、メガピクセル数で争うことがもはやほとんど意味を成さなくなった。それ以後は、注目されるのは感度と、色調範囲や識別能になった。ここのところはまさに、フィルムの粒度を上げることで ISO/ASA 速度を上げることに相当する。)

iPhone 11 の各モデルに搭載された広角レンズのセンサーはその点をさらにもっと改良している。センサーの大きさとピクセル数は変わらないが、Apple は感度を 33 パーセント上げた。(また、Apple は非常に明るい状況下での感度も劇的に向上させた。現在のカメラは 1 秒の 1/125,000 という短時間で露光撮影できるが、これは iPhone XS に比べて 6 倍も速い。)

iPhone 11 Pro と iPhone 11 Pro Max に搭載された望遠レンズも、ナイトモードで使われることがある。Apple はこちらのレンスの開口を f/2.4 から f/2.0 へと広げておよそ 50 パーセント良くしたが、そのセンサーの感度を 40 パーセント以上良くした。

iPhone X 以来、広角レンズと望遠レンズの双方が光学式手ぶれ補正機能を備えてきた。これは機械的な仕組みによって小さな動きを補正し、実質的 f 値を増やす。なぜなら、同じ光量でも長い露光時間が可能となるからだ。(光学式手ぶれ補正はシーンの中の動きには何の役にも立たない。実際の露光時間が変わらないからだ。)

ナイトモード (Night mode) を実現するよりも前には、Apple はレンズやセンサーを改良することで低光量時の写真が最小限の品質に達することができるようにと努めてきた。これにより、暗いところでもボケたりくすんだりした写真でなくまあまあのレベルの写真を撮影できるようになった。また、Apple はその期間を通じて内蔵フラッシュの挙動の仕方も改良したが、フラッシュの要素は向きを変えられず、また LED ベースであったのでやはり最後の手段として使うしかなかった。iPhone のフラッシュを使うと多くの場合に派手過ぎる、明る過ぎる写真が出来上がったけれども、それでも従来写真にすることができなかったシーンを、曲がりなりにも記録することができた。

ナイトモード (Night mode) は、それら過去の努力に比べれば飛躍的な進歩をもたらす。これは非常に高度な、複数に枝分かれしたやり方を駆使して、最後の手段のような写真ではなく、高品質な写真を作り出すことができる。この道を辿ったのは決して Apple が最初の会社ではない。Google や、他の多くのスマートフォンメーカーも低光量時の写真を合成する道を追求したのだったが、ナイトモードはその中でも最高の解決の一つだと評価されている。

ナイトモードを効果的に利用する

ナイトモード (Night mode) は何も設定の必要がない。実際、Camera アプリは常に、それにふさわしい状況だと判断すればナイトモードを提案するか、あるいは勝手にオンにする。ナイトモードアイコンは Camera アプリ画面の左上 (横長に置いた場合は左下) に表示される。アプリが光量不足の状況を検知すると、このアイコンを白く表示することでナイトモードを使うようにと提案する。それをタップすればナイトモードがオンになる。けれども、Camera アプリの解析によってナイトモードを使わなければ良い写真は撮れないという結果が出れば、自動的にナイトモードがオンになってアイコンが黄色く表示され、継続時間が秒単位で表示される。

The Night mode icon
Camera アプリがその状況を検出すれば Night mode アイコンが現われる。

シャッターボタンを押す際に、ボタンをそのまま押し続けて、画像がフルの明るさで表示されタイマーが動き始めるまで待ってみよう。もっと長い時間の撮影を試してみようと思えば、ナイトモードアイコンをタップしてスライダーを表示させ、そのスライダーを使って写真を取り込むのに使う時間の長さを調整することができる。また、このスライダーの上でずっと右までスワイプすることで Off に切り替え、Camera アプリの設定を覆すこともできる。ただ、全般的なオプションとしてナイトモードを無効にすることはできず、撮影ごとに設定を変えることしかできない。

Shooting with Night mode
Camera アプリの画面に、ハイライトを書き込んでみた。"Hold still" (一番上) と警告し、"night" ラベル (右上) とナイトモードアイコン (右下) を表示している。右側中央にあるスライダーを使って、Off から安定度に応じた推奨時間の数秒またはそれ以上まで調整できる。

ナイトモードは、電子的シャッターを開ける時間を長くする訳ではない。その代わりに、HDR 機能と同様に、Camera アプリがマークされた時間枠の間に続けて一連の画像を収集する。そして、ビデオにおけるデジタル画像安定化技術と似た手法を使ってそれらの複数の画像を組み合わせる。(だからこそ私はナイトモードが撮影している時間のことを「露光時間」と呼ばずに「継続時間」と呼んでいる。)

A Night mode photo of a plane overhead
この印象的な夜間写真は、私の自宅の上を飛行機が通り過ぎるところを撮っている。これを達成するために、私は何ら特別な照明を使わなかった!

また、Camera アプリはあなたがその iPhone を三脚、一脚、あるいはその他の安定な状態に置いて撮影しようとしていることを、内蔵のセンサーを使って検出できる。それを検出した場合は、より長時間の撮影を提案するかもしれない。撮影の継続時間は最長 28 秒にまで調整できるのだ! (この最長値はナイトモードが設定するもので、時にはもっと短い継続時間になることもある。)

非常に長い継続時間で撮影していることによる効果を、私が三脚を使って長い継続時間で撮影した写真から明確に見て取ることができる。私はシアトルで飛行機の航路の下に住んでいるので、私の家の真上を飛行機がまっすぐ南へ向けて飛んでいることがよくある。ナイトモードで飛行機の光を撮影すれば、ちょっと芸術的なぼやけを伴って写る。ある晴れた夜に私はナイトモードをテストしていて、私は衛星が写っていることに気付いた。たぶん International Space Station (ISS、国際宇宙ステーション) だろうと思う。肉眼では見えないが、撮影の長い継続時間全体にわたって点々と続く光の航跡として写っていた。

A long-duration Night mode shot
この長時間露光のナイトモード写真は、星と、飛行機の航跡と、さらには衛星が通過中であるところも (左上隅あたりに見える) 示している。左から3分の2あたりに見えるぼんやりしたもやのようなものは何だろうか? 星を調べるアプリでチェックしてみたところ、どうやらこれは天の川のようだ。

ブリーフィングの席で、Apple は画像が "adaptive bracketing" を使って得られると説明した。これは、同じシーンを異なる設定で複数回撮影するというテクニックだ。動きを捕らえるため短い露光にした撮影もあれば、影の部分から詳細を取り出すため長い露光をした撮影もある。新型 iPhone 11 のセンサーは、最悪の光量下でもこれらの異なる露光を提供できるために必要な品質をナイトモードに提供しているらしい。

その後で Camera アプリがそれらの画像を処理するが、その際には iPhone 11 の A13 Bionic プロセッサに組み込まれた Neural Engine を通じた機械学習が使われる。これらの機械学習のアルゴリズムはトレーニングに依存するが、当初は人間の手によるトレーニングを使って、画像の最も望ましい特性を判定し、その結果を新たな違ったタイプの入力にも適用する。そうしてこのアルゴリズムはトレーニングの結果から人々が好む種類の見栄え、色、詳細の具合がどんなものかを知り、ナイトモードで立て続けに撮影したデータの中からたった一枚の画像を構築する際にその知識を活用する。(Neural Engine は、これと合わせて新しい Deep Fusion 機能も駆動する。これは iOS 13.2 で初めて登場した、ある種のスーパー HDR だ。)

Another Night mode shot of an airplane
写っているのは空にかかるハイウェイではなくて、どうやら Boeing 787 のようだ。ナイトモードは三脚を使った長時間露光撮影から複数の画像を組み合わせてこの写真を作った。

Apple によれば結果として出来上がる画像はそれが夜に撮影されたという感覚がきちんと伝わるものになっているという。つまり、夕闇の中で撮影した写真を真っ昼間のように見えるものにしようとはしないということだ。だからこそ、ナイトモードは明るさを上げながら色は保つという点を重視している。それでもなお、その意図は必ずしも常に成功するとは限らない。時には、特定の狭い部分のみが明るくて全体的にはかなり暗いシーン、例えば室内や、街路灯が光る夜の道路や、明かりの灯る家々が見える夜景などで、出来上がった写真が夜というより明け方に見えたりすることがあるし、色ずれが起こることもある。

けれどもナイトモードが機械学習に依存していることの美点は、Apple のアルゴリズムが良くなり続けることだ。加えて、私たちにもどのような状況が最善の結果を生むかが次第によく分かってくる。また、Photos や Lightroom を使って結果の画像を自分の好みに調整することもできる。

いずれにしても私は、写真を撮りたいという考えが頭に浮かぶ機会そのものが、ナイトモードのお陰で劇的に増えたと思う。これまでは、低光量時には写真の出来が良くないと分かっていたので、そんな状況で写真を撮るのはいざという時か、何かある瞬間を記録するためという場合に限られていた。けれども今では、夜に戸外で、あるいは薄暗いレストランで遅い夕食をとりながら、気軽にスナップ写真を撮るようになった。実際のところ、ナイトモードの目新しさが、私を写真の熱病に感染させたのかもしれない。でも、十分に先進的で最初は魔法のようにしか思えないテクノロジーはすべてそうだが、いずれは私もそれに慣れてしまうに違いない。

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TidBITS 監視リスト: Mac アプリのアップデート

訳: Mark Nagata   

BusyCal 3.7.3

BusyCal 3.7.3

BusyMac が BusyCal 3.7.3 をリリースして、Google Calendar でネットワーク障害が起こった際の回復処理を改善した。このカレンダーユーティリティの今回のアップデートではまた、重複したアラームを無視し (一つのリマインダーのみを表示し)、.ics のミーティング返信や取り消しを手動で読み込む際に Inbox 通知を合成しないようにし、アクセント色が青の場合に Dark アピアランスの色の選択を改良し、BusyCal が Dock で走っている場合にスヌーズされたアラームの放棄を認めるようにし、OmniFocus からタスクをドラッグして持ち込むことに関する問題に対処した。macOS 10.15 Catalina で走らせていてアップデートの最中に "Download Failed" エラーが出る場合は、Downloads フォルダの中にあるダウンロード済みのインストーラパッケージをダブルクリックすればインストールできる。(BusyMac からも Mac App Store からも新規購入 $49.99、無料アップデート、22.7 MB、リリースノート、macOS 10.11+)

BusyCal 3.7.3 の使用体験を話し合おう

Coda 2.7.5

Coda 2.7.5

Panic が Coda 2.7.5 をリリースして、このウェブサイト開発ツールにいくつかの改善とバグ修正を加えた。今回のアップデートでは鍵ベースの認証が働かなくなったバグを修正し、syntax モードをインストールしようとすると起こった例外エラーを解消し、Copy URL が遠隔ファイルの遠隔 URL をフルにコピーしてしまった問題を修正し、ファイルリストが再ロードする際にファイルを改名しようとすると起こり得た問題を解消している。macOS 10.15 Catalina で走る場合に、Coda 2.7.5 は SVN があなたのローカル root にアクセスできない場合の例外エラーを解消し、外部のソースから変更を受けたファイルに期待通りの出版用マークが付くようにし、またアクセシビリティに関係した例外エラーにも対処している。Panic は今後Coda を引退させて新しいコードエディタの Novaに移行する予定だと発表しており、近日中に Nova の非公開ベータテストを開始するつもりだという。(新規購入 $99、無料アップデート、65.3 MB、リリースノート、macOS 10.13+)

Coda 2.7.5 の使用体験を話し合おう

PDFpen and PDFpenPro 11.2

PDFpen と PDFpenPro 11.2

Smile が PDFpenPDFpenPro 各アプリにバージョン 11.2 をリリースして、表のセル内部でテキストや数字を変更・追加・削除できる機能を追加した。これで、財務書類、比較図表、その他の書類の PDF に対していちいち元の書類に戻る必要なしに最終調整を施すことができるようになった。(新規購入 $74.95/$124.95、TidBITS 会員には 20 パーセント割引、アップグレード $30、73.1/119 MB、リリースノート、macOS 10.12+)

PDFpen と PDFpenPro 11.2 の使用体験を話し合おう

GraphicConverter 11.1.1

GraphicConverter 11.1.1

Lemkesoft が GraphicConverter 11.1.1 をリリースした。このグラフィックスプログラム Swiss Army ナイフに改善やバグ修正を盛り込んだ、メンテナンス・リリースだ。今回のアップデートでは Text パレットにフレームテキストサイズのオプションを追加し、グレイスケール・ヒストグラムにパーセント表示を含め、Pages 書類や Numbers スプレッドシートに (もしその書類にプレビューが含まれていれば) プレビュー対応を追加するとともに Pages 書類からプレビューを抽出できるようにし、10.15 Catalina よりも前のバージョンの macOS での選択に関する問題を修正し、保存された HEIC ファイルで GPS が反対を向くことがあった問題を解消している。(Lemkesoft からも Mac App Store からも新規購入 $39.95、無料アップデート、152 MB、リリースノート、macOS 10.9+)

GraphicConverter 11.1.1 の使用体験を話し合おう

Lightroom Classic CC 9.0

Lightroom Classic CC 9.0

Adobe が Lightroom Classic CC 9.0 をリリースして、このデスクトップ中心の写真カタログ・編集アプリケーションに Panorama での Auto Fill Edges や Multiple Presets での Batch Export などいくつかの新機能を追加した。Photo Merge > Panorama を使う際に、新しい Fill Edges オプションを使ってパノラマ写真の端の凸凹した部分を自動的に埋めることができる。今回のアップデートではまた、複数個の Export プリセットを選んでおいて、選択されたファイルのさまざまのバージョンを同時に保存できるようになった。

Lightroom Classic CC 9.0 は Color Label でフィルター付けできるようになり、Develop モジュールの中のプリセットを書き出せるようになり、Develop および Library モジュールのパフォーマンスを改善し、History パネルで選択したステップより前の履歴をクリアするオプションを追加し、Library および Develop モジュールで Loupe 表示にした際に複数個の画像を削除できるようにし、またクロップする際に (GPU 加速が有効であれば) クロップ前のビネット効果をライブでプレビューできるようになった。今回のリリースではまた、25 個の新しいカメラモデルと 30 個の新しいレンズプロファイル (iPhone 11、11 Pro、11 Pro Max を含む) に対応した。Lightroom Classic CC 9.0 は今回から macOS 10.13 High Sierra かそれ以降を要するようになった。(月額 $9.99/19.99/$52.99 の Creative Cloud 購読、無料アップデート、リリースノート、macOS 10.13+)

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Things 3.10.1

Things 3.10.1

Cultured Code が Things 3.10.1 をリリースして、このタスクマネージャに改良や挙動変更を加えた。今回のアップデートではノートが保存されるフォーマットを変更しており、その結果 URL やファイルリンクが表示される方法が変わった。加えて、Open New Window の挙動が変更されて、現在開いているリストではなくてデフォルトのリストを開くようになった。Things 3.10.1 ではまた、親プロジェクトが削除された場合に既に出されたリマインダー通知も削除するようにし、別のデバイスでスケジュールを組み直されたリマインダーの通知を正しくクリアし、サイドバーの可視性の状態を保持するようにしている。(Cultured Code ウェブサイトからも Mac App Store からも新規購入 $49.99、無料アップデート、17.9 MB、リリースノート、macOS 10.13+)

Things 3.10.1 の使用体験を話し合おう

Merlin Project 6.0

Merlin Project 6.0

ProjectWizards が Merlin Project をバージョン 6 にアップデートした。このパワフルなプロジェクト管理アプリへの、大きなアップグレードだ。改善点の大多数は内部的なものだが、Merlin Project 6.0 は使っていて高速に感じられ全体的な安定性が増した印象を受けるだろう。このアプリは今回から macOS 10.14 Mojave かそれ以降の下ではすべての表示で Dark モードに対応するようになり、自分で作成したスタイルルールの色が自動的に現在のアピアランスに適合するようになった。さらに、今回のアップデートでは 10.15 Catalina の新しいアクセント色に対応し、ルールベースのスタイルでライトおよびダークのアピアランスの色が別々に保存される。インスペクタも Catalina の新しい見栄えに適合し、新しい Inspector Appearance 設定を使って一貫して明るいアピアランスの下でインスペクタを明るくできるようになった。新しいスタートダイアログでは、テンプレートからプロジェクトを作成したり、最近使った書類に素早くアクセスしたりできる。

機能削減版の Merlin Project Express は家庭用やセミプロのユーザー向けに最適化されているもので、こちらもバージョン 6.0 にアップデートされてフル版と同じく Dark モードやスタートダイアログに関する変更を受けた。いずれの版の Merlin Project も、今回から 10.12 Sierra かそれ以降を要するようになった。

それらとは別に、ProjectWizards は iOS 用 Merlin Project もアップデートして、すべての表示でダークのアピアランスを追加し、iPadOS 13 では複数個のウィンドウ (つまりシーン) に対応して、一つのプロジェクトを複数個のシーンで同時に開くことができるようになった。

Merlin Project iPad Scenes

Merlin Project の年間購読料金は $149 で、現行の購読者はこの新バージョンを通常のアップデートとして受け取ることができる。30 日間無料の試用版があってすべての機能を試してみることができる。Merlin Project Express は月額 $3.99 または年額 $39.99 で App Store から入手できるし、また月額 $9.99 の Setapp にも含まれている。iOS 用 Merlin Project は年額 $6.99 または年額 $69.99 となっている。(講読年額 $149、29.1 MB、リリースノート、macOS 10.12+)

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1Password 7.4

1Password 7.4

AgileBits が 1Password 7.4 をリリースした。さまざまの改善と、なかなかの量のバグ修正を盛り込んだ、メンテナンス・リリースだ。このパスワードマネージャは macOS 10.15 Catalina の Voice Control への対応を追加し、1Password mini ウィンドウをスクリーン中央近くへドラッグするとスクリーン中央に置く (メニューバーのアイコンに近くへドラッグすればそのアイコンにくっつけ直す) ようにし、起動時のサイドバーであなたが前回見ていたカテゴリーリストまたはヴォールトリストを覚えているようにし、重複したパスワードのポップアップメニューをアルファベット順に並べ替え、項目を他のヴォールトへドラッグした際に項目リストを直ちに更新するようにし、項目を削除した後に 1Password がキャッシュされていたファイルを削除していなかった問題を解消し、メインウィンドウから "Compromised Websites" Watchtower サービスを有効にできなかったバグを修正し、また数多くのクラッシュに対処した。(AgileBits または Mac App Store から独立動作のアプリ購入の場合 $64.99、講読の場合は月額 $2.99 または $4.99 (TidBITS 会員は 6 ヵ月間無料)、無料アップデート、50.8 MB、リリースノート、macOS 10.12.6+)

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HandBrake 1.3.0

HandBrake 1.3.0

HandBrake Team がオープンソースのビデオ変換プログラム HandBrake のバージョン 1.3.0 をリリースして、キューのユーザーインターフェイスを拡張し、コピー防止の付かない Ultra HD Blu-ray ディスクに対応した。今回のリリースではまた、概要タブでプレビュー画像を無効にする環境設定項目を追加し、Gmail プリセットの品質を改善し、Playstation 2160p60 4K Surround プリセット (PS4 Pro) を追加し、外部の SSA/ASS 字幕を読み込む機能を追加し、Xcode の問題点を回避してすべての CPU コアを利用できるようにしている。HandBrake は今回から OS X 10.11 El Capitan かそれ以降を要するようになった。(無料、19.4 MB、リリースノート、macOS 10.11+)

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ExtraBITS

訳: Mark Nagata   

Apple TV をめぐる混乱

今は、あなたはソファにゆったり座って、Apple TV の電源を入れ、Apple TV アプリを開き、Apple TV Channel をスクロールしてから、Apple TV+ の番組を観ることができる。ちょっと混乱したかな? そう思うのはあなただけではない。Dustin Curtis がブログ記事で、Apple のテレビ関係のブランド名付けのやり方があまりにも紛らわしいと Apple を笑い物にする。ただ、Jason Snell が Six Colors 記事で指摘するように、Apple TV 関係の個々の製品がそれぞれバラバラの名前を持っていたとすれば、それもまた混乱を招くことになる。いずれにしても、単純な事実を言えば、今やテレビの視聴はとても複雑なものになっていて、ABC、CBS、NBC、PBS のうちから一つを選べばよかった「古き良き時代」とは違うのだ。

The Elephant Queen on Apple TV

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Apple が改訂したプライバシーページがアプリごとの詳細を提供

Apple が同社のプライバシーページを改訂して、Safari、Maps、Photos、Messages、Siri、News、iCloud、Home、Wallet、Health、App Store、それに新しい Sign in with Apple (Apple でサインイン) 機能のそれぞれに対する Apple のプライバシー方策に焦点を合わせた。最も役に立つのはリンクされたホワイトペーパーで、ここにさまざまなプライバシーのテーマごとに具体的な詳細が記されている。

Apple's new privacy statement.

このページはマーケティングの取り組みとしてはなかなか良いが、いくつか問題点もある。開発者 Michael Tsai が指摘するのは、Apple が (ホワイトペーパーの中で) Safari がブラウザレベルのサインインを使ってデータの同期をすることがないと主張しているけれども、それは事実だが Safari がシステムレベルの iCloud ログインを使ってデータをすべてかゼロかのやり方で同期している以上、今の問題とは無関係だという点だ。また、Safari のホワイトペーパーでさえ Apple が中国のユーザーに Safe Browsing 機能を提供するために中国の会社 Tencent と提携していることについて触れていない。

さらに問題を深刻化させているのが、Apple がこのプライバシーページを改訂して公開したその日に、 Mail の暗号化されたメッセージを macOS が Siri で利用する目的で暗号化のないデータベースの中に保存しており、それは Siri が無効に設定されていてさえも起こる、と IT 専門家の Bob Gendler が暴露したことだった。ずさんなデザインだと言う他はないが、悪用するためにはローカルなアクセスが必要となるので、深刻な脆弱性という訳ではない。その後 Apple は The Verge に対して、この問題を認識しており将来のアップデートで修正すると語った。

Apple がプライバシーへの取り組みについて大体においてオープンであるのは歓迎すべきことだが、このようなヘマが起こっているのを見ればその取り組みがどの程度しっかりしたものなのかと考えざるを得ない。機密である可能性のある情報を不用意に暴露してしまうこのような事態が起こらないようにするために、Apple がそれ相応の開発リソースを充当してくれることを願いたい。

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