Apple の全体としての業績はとても良かったが - 事実、記録更新 - 個別の製品分野を見てみると微妙に異なる姿が見えてくる。前年同期比で、収入が上がったのは iPhone, Wearables, そして Services で、iPad と Mac は両方とも下がった。
売上げを地域別に見ると、Americas と Europe は2桁の伸びだが、Asia Pacific は 6.5%、Greater China は 3.1% と小幅な伸びに留まり、そして Japan は 9.9% の減となった。しかしながら、China の売上げ上昇は、率は低いが、先行きに対する楽観理由の一つとなっている。と言うのも、この地域市場での最近の四半期での売上げ減の傾向を反転させるものだからである。Apple は Europe で $23.3 billion を稼ぎ、Americas での販売は $41.4 billion に達した。
Apple は現四半期で類いまれなウィルスの脅威に直面している。コンピュータウィルスではない、コロナウィルスで、これはこの四半期投資家電話会見でも話題の一つであった。CEO Tim Cook は、この感染の発生地である Wuhan 地区に Apple は数社のサプライヤーを持ち、それらの施設は中国政府の要請により少なくとも 10 February 2020 迄は閉鎖されるであろうことを認めた。Apple はまた、従業員の中国への不要不急の旅行を現時点では取りやめており、そして同社は店の清掃の様な手の届く予防措置は講じているが、それは究極的には Apple の制御出来ない要素の一つである。
iPhone
Q1 2019 に下落した後、iPhone 販売は Q1 2020 に 7.6% 上昇し、前年同期の $51.9 billion から $55.9 billion へと回復した。Cook は、この四半期で iPhone 11 が毎週 Apple の最も売れた機種であったと言った。Cook は、iPhone 11 の成功の一因を Apple Card 所有者に対する新しい支払いプランのお陰だとし、このクレジットカードが、利子と手数料以外にも Apple にもたらす価値があることを誇示した。
Mac 販売もまた少々失望もので、前年比で 3.5% の減少となった。Apple は Q1 2020 に $7.16 billion の Mac を売ったが、Q1 2019 では $7.46 billion であった。この四半期に Mac には新しいモデルも出たが、16-inch MacBook Pro と長いこと待たされたMac Pro だが、昨年リリースされた最新の MacBook Air や更新された Mac mini の様な効果をもたらすには、出るのが遅すぎた (或いは、高級機過ぎた)。
MacBook Pro (16-inch, 2019) で、HEVC および H.264 でエンコードされた 4K ビデオをマルチストリームビデオ編集する際のパフォーマンスを改善
Apple は、我々が聞き及んでいる Mail データ消失バグについては一言も触れていないが ("Catalina でのメールデータ消失に注意 11 October 2019 参照)、我々の仲間の Michael Cohen はこのアップデートをインストールした後、macOS は彼に彼の Mail データベースをアップデートしていると言ってきたと報じている。もし 10.15.3 で何らかのデータ消失問題を経験したら、知らせて欲しい。
これについて Apple のリリースノートには何もないが、私が聞いたことからすると、macOS 10.15.3 は、"On My Mac" に保存された大量のメッセージが Catalina にアップデートする時か、或いは Mail のデータベースを再構築する時に消去される場合があるバグを修正している。しかし、メールボックス間でメッセージを移動する時に (ドラッグ&ドロップ、ルール、或いは AppleScript 経由で)、それらを消去したり、複製したり、或いは単に移動させないというバグは修正していない。
macOS 10.15.3 アップデートは System Preferences > Software Update からアップデート出来る。もしビデオを 16-inch MacBook Pro 上で編集していたり、Pro Display XDR を使っているのであれば、これを余り時間をおかないでインストールすべきであろう。さもなければ、もう既に Catalina を走らせているとして、数日待って新しい問題が聞こえてこないことを確かめてからでも遅くはない。未だ Mojave からアップグレードしていない人達にとっては、そしてとりわけ Mail の中でしょっちゅうメッセージを移動させる人にとっては、今行動を起こさなくとも何ら害はない。
watchOS 6.1.2
watchOS 6.1.2 アップデートは "重要なセキュリティアップデートを提供しており、全てのユーザーに推奨される。" このアップデートは Apple Watch Series 4 に対しては 98.8 MB の大きさで、iPhone の Watch アプリからインストール出来る:Watch > General > Software Update に行く。
何時ものことだが、tvOS 13.3 アップデートノートは閑散としており、ただ "一般的な性能と安定性の改善" を約束しているだけである。このアップデートには 13 のセキュリティアップデートが、多くは他のオペレーティングシステムと共通しているものだが、含まれる。もし自動アップデートがオンになっていないのであれば、Settings > System > Software Updates に行くことで Apple TV HD 又は Apple TV 4K をアップデート出来る。我々は放っておいて自動的にアップデートされるのを待つ積もりだ。もし何らかの変更に気づいたら、知らせて欲しい。
パートナーの Caroline Green と私は共同で、Manhattan で Mac コンサルティング会社を経営している。今年になって私たちは 2 件のスピアフィッシングを扱ったし、他にも何件かのスピアフィッシングを耳にしている。私たちが扱った件ではいくつかの重要なアカウント、例えば電子メール、ドメインホスティング、ソーシャルメディアのサイトなどのアカウントが盗まれた。私たちは結局その大多数を正常な状態に戻すことに成功したが、他の状況でも同じように成功できる保証は何もない。その上、それらのアカウントはすべて何日もアクセスできない状態が続いたので、アカウントが不正使用されることを通じてその人の評判がダメージを受けるという事態も簡単に起こり得る。
私たちが思い付いたテクニックは、認証アプリの代わりとして Google Voice のテキストメッセージを使うやり方だ。セットアップに多少手間が掛かるけれども、使いやすく理解しやすい上に、人によっては自分のアカウントに信頼できる助手やコンサルタントがアクセスするのを許すことに意味があると納得してもらえる。このテクニックをここでお披露目したいと思う理由は二つある。まず第一に、似たような解決法を探している人たちのお役に立てるのではないかと願っているからだ。そして第二に、外部の人たちに調べてもらうことで、何らかの弱点や脆弱な点が見つかるかもしれないと思うからだ。
強力で、他とは違うパスワードを使う: 誰もがこのアドバイスを聞いたことがあるだろうが、やはりここで繰り返して強調しておくべきだ。すべてのパスワードを覚えようとしてはいけない。それをすると同じパスワード、あるいはよく似たパスワードの変形を再利用することになってしまう。そこから生まれるリスクは、もしも一つのサイトでセキュリティ漏洩が起これば (悲しいことにそれはよくあることだが)、盗人があなたのすべてのアカウントにアクセスできてしまうということだ。個々のオンラインアカウントにはそれぞれ別々の、コンピュータが生成したパスワードが必要で、それらを 1Password、Dashlane、LastPass のようなパスワードマネージャに記憶させておくべきだ。あるいは少なくとも、現行バージョンのウェブブラウザになら内蔵されているシンプルなパスワードマネージャに記憶させるべきだ。私は自分のパスワードのうちたった 3 つしか記憶していない。私の Mac にログインするための管理者パスワードと、私の 1Password マスターパスワード、それに Apple ID のためのパスワードだ。それ以外はすべて 1Password が覚えている。
二要素認証を使う: 二要素認証 (2FA、Two-factor authentication) とは、あなたがパスワードを入力した際に、テキストメッセージまたはスクリーン上のダイアログまたは認証アプリなどを使って別のコードまたはプロンプトが届き、それによってパスワードを入力したのが本当にあなたであってあなたのパスワードを知っている第三者でないことが確認されるというものだ。ほとんどの Apple ユーザーは新しいデバイス上で Apple ID でサインインする際にこの手続きを経験している。重要なサイトで 2FA に対応しているところでは、必ず 2FA を有効にするべきだ。2FA にはいくつかの種類があるが、これについては下で議論する。
新規のアカウントをセットアップする手順は私たちのクライアントにとっても簡単だ。認証アプリや QR コードをあれこれいじる必要がなく、代替用の電話番号を入力するだけで済む。
私たちのやり方は、まず新規に Gmail アカウントを作成する。これは Google Voice の電話番号をホストするためだけの目的で作るものなので、電子メールアドレス、ファーストネーム、ラストネーム、生年月日の各フィールドに入力する情報は本物の身元証明情報とは違うものを入れておく。それが済めば、ユーザーの iPhone に (必要ならば iPad にも) Google Voice アプリを入れて、サインインする。アカウントに登録された電子メールアドレスはそれ自身身元識別の役に立たず、Google Voice 電話番号をホストする以外の目的には一切使われないので、盗人がそこに辿り着く可能性はない。その上、たとえ辿り着いたとしても、それが誰のものか知られることはあり得ない。(もしもあなたがこれからこの Google Voice のやり方を試してみるのならば、必ずその前にアカウントからあなたの本物の携帯電話番号を削除しておくべきだ。Google Voice のセットアップの際に、登録済みの電話番号がデフォルトで追加されるからだ。もしもそれを削除せず放置すれば、あなたの電話番号を盗もうとする攻撃者があなたの Google Voice テキストメッセージからコードを入手できてしまう。また、デフォルトでテキストメッセージをあなたの電子メールアドレスに自動転送する設定も必ず無効にしておくべきだ。)
強力なパスワードを使えば、この Google Voice アカウントはセキュアだ。では、もしもその認証情報が失われたらどうなるか? これはやり過ぎの対策かもしれないが、万一その Google Voice アカウントのアカウント復旧が必要になった場合には、私たちはそのユーザーの iCloud アドレスに付随した身元を特定できない電子メールエイリアスを使う。そのエイリアスの背後にある実際の、身元を特定できない iCloud アカウントは、直接チェックされるようにするか、またはそのクライアントの実際の電子メールに転送されるかするようにしておく。こうしておけば、もしも盗人がその Google Voice アカウントの復旧用アドレスを発見したとしても、盗人がそれに関係した何かにログインできるようになる心配がない。また、私たちはアカウントの作成日と偽の生年月日を記録している。これは、アカウント復旧の際に Google にその情報を尋ねられるかもしれないからだ。
こうやって Google Voice の電話番号を使うことで、私たちのクライアントたちは皆、ただ単に代替用の電話番号を入力するというだけの手間が要るだけで簡単に二要素認証をセットアップできる。コードが必要になった際には、テキストメッセージ通知として通知が出る。助手、同僚、あるいはコンサルタントも問題なくそのコードにアクセスできる。その上、その Google Voice アカウントへのログインアクセスを持たない者は誰も、その代替用電話番号を盗人の SIM カードに移すことができない。
二要素認証に Google Voice を使うことの不都合な点
私たちの知る限り、この Google Voice のやり方の最も重大な欠点は、半年程度に一度ずつテキストメッセージを送信するかまたは電話をかけるかしないと自動的にその電話番号が失効してしまうことだ。もちろん Google はこのことを警告してくれるが、クライアントたちのために働いている私たちとしてはやはり先を見越して行動を起こすのが最善の対策だ。その Google Voice アカウントの Gmail アドレスに届いたメールをすべて普段使っているアカウントに転送しておくのも良いだろう。そうしておけば Google から届いた警告を見落とす心配がなくなる。それからまた、カレンダーに年2回のリマインダーを設定しておくと良いだろう。
Adam Engst が、もう一つ別の難点の可能性を指摘してくれた。それは、Google Voice の電話番号には迷惑通話がかかって来ることが多いという点だ。私たちはクライアントたちに、Google Voice アプリの中ですべての通話と留守番電話を無視するように勧める必要があるだろう。さらに良い方法として、このアプリの Settings 画面で、電話の着信をすべて無効にしておくことも、スパムとしてフィルター分けすることもできる。ただしこの方法を使うと、Google が識別を誤って重要なコードが届かないリスクも生じる。
最後にもう一言。Google Voice は Google にとってかなり末梢的な存在である製品なので、ある日突然 Google がこのサービスを廃止するということもあるかもしれない。とはいえ、そういう事態になれば Google はきっとユーザーが別のやり方を見つけられるように十分な警告を提供してくれることだろうが。
Apple が macOS 10.14 Mojave 用と 10.13 High Sierra 用にセキュリティアップデート 2020-001 をリリースして、これらの古いオペレーティングシステムにあったさまざまのセキュリティ脆弱性をパッチした。今回のアップデートはいくつかのカーネル関係の問題により悪意のあるアプリケーションがシステム権限を取得して任意のコードを実行したり制限されたメモリを読み取ったりできてしまった状況に対処し、悪意を持って作成された JPEG ファイルから任意のコードを実行される可能性があった画像処理に関係するメモリ破壊の問題を解消し、CoreBluetooth フレームワークのメモリ漏洩をパッチし、アクセス制限を改善して悪意のあるアプリケーションにより任意のファイルに上書きされる可能性のあった問題に対処した。(無料、10.14 Mojave 用は 1.62 GB、10.13 High Sierra 用 は 1.92 GB、セキュリティコンテンツリリースノート)
Apple はまた、Look Around 機能への対応も拡張されたと述べた。この機能は、Apple による Google Street View に対する答だ。今回 Look Around 機能が New York City、San Francisco Bay Area、Los Angeles、Las Vegas、Houston、それにハワイの Oahu 島に対応しており、今後もさらなる都市がこれに加わる予定だ。
iPhone 売上の成長率が鈍るに従い、利ざやを保つために供給コストを下げることが Apple にとってますます重要になりつつある。そこで登場するのが Apple の調達管理担当副社長 Tony Blevins だ。Wall Street Journal の Tripp Mickle が、Blevins の人物像と、Apple が最良の取引をするための彼の強硬な戦略を概観する。(Wall Street Journal の有料コンテンツの壁を越えられなければ、AppleInsider が良い要約記事を出している。)
Apple はモデムチップを巡って騒動の絶えない関係を Qualcomm との間に作ってきたが、そのすべての只中に Blevins がいた:
Blevins が Apple のために何億ドルもの節約を達成してきたのは、例えば Apple の新しい工場のために複数のガラス供給業者を同時に香港のホテルに招いて、彼らをそれぞれ別々の会議室に入れ、Blevins が部屋から部屋へと行きつ戻りつして、多くの場合ハッタリを交えた数字をちらつかせる、といった彼の戦術によるものであった。彼はまた Apple の厳格な機密保持方針を執行する責任者でもあり、供給業者がそれに違反すれば 5 千万ドルあるいはそれ以上の違約金を取られることもある。
このような強引な戦術については Blevins あるいは Apple を批判したい気持ちにもなるだろうが、ビジネスの世界が往々にして残酷であることも事実で、成功を収めている大会社には必ず Blevins のような上級管理職がいるものであり、それは必要なことなのだ。
Apple を最も鋭く観察し続けている人たちの目から見て 2019 年の Apple の成績はどうだったか? Six Colors の Jason Snell が、毎年恒例の Apple 成績表を公開した。この成績表は、何人もの TidBITS スタッフや寄稿者たちも含む 65 人の Apple 観察者たちによるランク付けやコメントに基づいて作られたものだ。最も良い成績が付いたのは Apple Watch と Wearables で (その点は Apple 自身による業績報告でも同じであった、2020 年 1 月 28 日の記事“Appleの Q1 2020 業績、iPhone は回復 Wearables は天井知らず”参照)、低い成績が付いたのは Apple TV、HomeKit、それと全体的なソフトウェア品質であった。それほど驚きの結果とは言えない。
Snell はわざわざ手間を掛けて 2018 年の成績との比較もした。下の表から、明らかな傾向が見て取れるだろう。最も多くの非難を集めた二つのカテゴリーはソフトウェア品質 (iOS 13 と Catalina でのお粗末な仕事のせいだ) と環境的/社会的支援 (香港での抗議活動に対する Apple の活動のせいでもある) で、反対に大きく伸びたのが Services、これは 2019 年に Apple がサービス部門に大きく投資したことを反映している。
いつもと同じく、この Snell の報告記事は読む価値が十分にある。とりわけ、皆さんお気に入りの Apple 評論家たちが述べた明快な言葉にご注目頂きたい。