Thoughtful, detailed coverage of everything Apple for 29 years
前週号 | 日本語版ホーム | 次週号

#1509: TidBITS の 30 周年、Apple が FaceTime のバグを修正、Apple と Google が接触者追跡で提携、Timing 2 で時間追跡

今週 TidBITS は 30 周年の記念日を祝ったが、これからも続けていくために皆さんの力を必要としている。Apple は多数のバグ修正アップデートをリリースした。iOS 13.4.1、iPadOS 13.4.1、macOS 10.15.4 が、FaceTime の旧バージョンの OS との間での互換性バグ、その他いくつかのバグを修正した。特に興味深いニュースとして、Apple と Google が協力してクロスプラットフォームの接触者追跡システムを作り、コロナウイルス感染の危険性があり得る濃厚接触をユーザーに通知しつつ個人のプライバシーは守られるようにしようとしている。Glenn Fleishman が、これがどのように働くのかを説明する。_Take Control of Your Productivity_ の著者 Jeff Porten は、時間の追跡・管理をする非常に有能なアプリ Timing 2 をレビューする。今週注目すべき Mac アプリのリリースは Firefox 75、Mailplane 4.2.2、URL Manager Pro 5.2、それに CleanMyMac X 4.6.2 だ。

Adam Engst  訳: Mark Nagata   

パンデミックの時期に TidBITS が 30 周年を迎える

この SARS-CoV-2 コロナウイルスのパンデミックの中で私が目にした最も洞察深いコメントの一つが、現在の私たちは物語の崩壊する状態にあると指摘する。私たちの社会的物語、世界の意味を理解しその中でいかにしてかじ取りをするかを自分自身に語るストーリーが、今や私たちを裏切った。私たちは皆、以前とは全く違った方法で家族や友人に連絡するようになり、皆がどうやって持ちこたえているか、どんな対策を選んだり余儀なくされたりしているのか、皆は大丈夫かを知ろうとする。出来事があまりにも速く変化し続けるので誰も確固たる足場を見つけることができず、不確実性の地平がゆっくりと膨らみ続ける中で私たちがまだ見通せるのは、来週が今週と同じようであるかどうか程度のことだけだ。来月のことなんて、誰に分かるだろうか?

でも、私がほぼ確実に予想できることが一つある。私たちが今日これから、今週号の TidBITS を皆さんにお届けするということだ。来週も、その次の週も、見通せる限りの将来にわたって、私たちは TidBITS の号を出し続ける。そして、これまでずっとそれを続けてきた私たちは、2020 年 4 月 16 日の木曜日に 30 年目の記念日を迎える。

これは、インターネット上で他にほとんど並ぶもののない記録だ。TidBITS の最初の号を私たちが出した 1990 年 4 月 16 日に、それは決して最初のインターネット出版物ではなかったし、現在インターネット上で入手できる出版物の中で最古のもの (国際的にその栄誉は 1645 年にスウェーデンで設立された Post- och Inrikes Tidningar にあり、米国内では 1764 年に設立された Hartford Courant にある) に比べれば何世紀も後になる。けれども 1987 年以来インターネット上に出版されている学術雑誌 eAIR を除けば、インターネットのみで出版されているものとしては TidBITS が最古だろうと思われる。そういう訳で、私たちは第二位に甘んじるか、それとも少し限定付きで「最古のテクノロジー系出版物」と主張するかのどちらかだ。わが Cornell 大学のその昔の有名な大先輩 Kurt Vonnegut の言葉を借りれば「そういうものだ。」("So it goes.")

いや、そうではない。私たちが第二位であることに Vonnegut の運命論的な言い回しを当てはめるのは彼の言葉を矮小化することになる。「そういうものだ」("So it goes") という言葉は、私たちが共有する物語を再構築し始めようとするために積み重ねる、ストイックなブロックの一つして使う方が良いのではないか。伝えられるところによれば Vonnegut は第二次世界大戦でドレスデンが爆撃されるべきだったか否かという質問を巧みにかわしたという。それに答える代わりに彼は、ドレスデンは爆撃されたのであって、質問すべきはその後に人がどのように行動するべきかということではないのかと言った。COVID-19 は、起こった。それは今も起こりつつある。私たちにできるのは、その事実を受け入れた上でそれに対してどのように行動するかを選択することだ。

私たちの選択は、諦めずにやり遂げることだ。TidBITS の出版を続けて、この「物語の崩壊」と「不確実性の地平」の世界の中で、ささやかな見かけだけであっても常態性を保ち続けることだ。ここで私が言っているのは、風向きの変化に応じて起こる何らかの「新たな常態」の一部としての話ではない。そうではなくて、30 年間の歴史を背後に、毎週毎週続けてきた今のこの常態だ。

私たちが困難に直面していないというふりをするつもりはない。既に何人かの TidBITS 会員の皆さんが、失業したので出費を抑えるために購読をキャンセルしたいと知らせてきている。その人たちを非難するつもりは毛頭ない。誰にだって支出に対処できるようにすることの方が大切だから。でも、TidBITS 会費からの収入が既に去年より 8% 落ちていた状況の下で私に言えるのは、私たちもまた、皆さんからの援助を得ることができたならばとてもありがたいということだけだ。TidBITS 会員プログラムに参加してくださった方には、さまざまの会員特典を用意してある。

既に会員でいらっしゃる皆さんには、心からのお礼を申し上げたい! 定期的な会費とは別に追加の寄付をするにはどうすればよいかという質問をよくいただくので、それにお応えするため、会員レベルのページの一番下のところに Boost TidBITS ボタンを追加して、私たちの PayPal アカウントを経由しての寄付を受けられるようにしておいた。

世界がこの危機から再び立ち上がることを私は確信している。皆さんも共にこの危機を乗り越えて行かれることを心から願いたい。

TidBITS folded from a book
私たちの友人 Lauri Reinhardt が去年手作りしてくれたプレゼント

討論に参加

Josh Centers  訳: Mark Nagata   

iOS 13.4.1 と iPadOS 13.4.1 が FaceTime のバグを修正

Apple が iOS 13.4.1iPadOS 13.4.1 をリリースして、前回の 13.4 リリースで導入されてしまった FaceTime と Bluetooth のバグを修正した:

iPadOS 13.4.1 では上記の修正に加えて、第4世代 12.9 インチ iPad Pro および第2世代 11 インチ iPad Pro の Lock 画面または Control Center でフラッシュライトボタンをタップしても点灯しないことがあった問題に対処が施された。いずれのアップデートにも CVE の公開エントリはない。

iPadOS 13.4.1 リリースノート

iPhone 11 Pro では 95.4 MB、10.5 インチ iPad Pro では 52.2 MB のこれらのアップデートは、Settings > General > Software Update から、または macOS 10.15 Catalina では Finder を使って、それ以前のバージョンの macOS では iTunes を使ってもインストールできる。

間違いなく Apple は、在宅を迫られる stay-at-home の日々に FaceTime の利用が急増していることを受けて急いでこれらのアップデートを出したのだろう。古いデバイスを使っている人との間で FaceTime でのコミュニケーションをしているのでなければ、直ちにこれをインストールすべき理由はない。そういう人たちは、一週間ほど待って何か予期せぬ問題が起こっていないことを確かめてからインストールする方が賢明だろう。

討論に参加

Josh Centers  訳: Mark Nagata   

macOS 10.15.4 Catalina 追加アップデートが FaceTime のバグを修正

Apple が macOS 10.15.4 Catalina (2020 年 3 月 24 日の記事“Apple、macOS 10.15.4 Catalina、watchOS 6.2、tvOS 13.4、HomePod 用 iOS 13.4 をリリース”参照) 用に追加アップデートをリリースした。iOS 13.4.1 と同様に、この macOS 10.15.4 Catalina 追加アップデートでの最も重要な点は前回のアップデートで導入されてしまった FaceTime の問題の修正だ。今回の追加アップデートでは:

この追加アップデートには CVE の公開エントリはない。

The update pane for macOS 10.15.4 Supplemental Update

1.01 GB の macOS 10.15.4 追加アップデートは System Preferences > Software Update からインストールできる。Howard Oakley は Eclectic Light Company ブログで「これは私がこれまで詳細な分析をした中で最も小さな macOS アップデートだが、それはつまりこれらのバグがそれだけ深刻な影響を持っていたということだろう」と述べた。

もしもあなたが既に macOS 10.15.4 をインストール済みで、今回修正されたバグのいずれかに出会う可能性があると思うなら、早めに今回のアップデートをインストールするのがよいだろう。そうでなければ、良い機会と思えるまで待ってもよい。この記事へのコメントでもお分かりの通り、この追加アップデートで問題に遭遇したと言っている人たちも何人かいるようだ。

討論に参加

Glenn Fleishman  訳: 亀岡孝仁  

Apple と Google、プライバシーを守った COVID-19 接触追跡&通知で協業

Apple と Google は、彼らのモバイルオペレーティングシステムに安全でプライバシーに焦点を当てた変更を開発中であると発表した。これは個人が、COVID-19 の原因となる SARS-CoV-2 ウィルスに対して後に陽性の検査結果となった人と濃厚接触したことがあれば、通知を受け取れるようにするものである。この2社は 10 April 2020 暫定的な技術情報と、どの様に進める計画かのロードマップをリリースした。

検査結果が陽性となった感染者と濃厚接触した人全員を追跡し、その人に通知するのは、拡散を抑えるための重要な側面である。国によっては、当局がロックダウンや自宅待機命令を出すために、セルラーキャリアやその他の会社にスマートフォンの位置情報への直接アクセスを提供することを命じている所もある。

米国人はとりわけ政府による追跡に対して、その目的に拘らず、毛嫌いする。Apple と Google の取り組みは、重要な公衆衛生の目的に資しながら、米国や世界中の猜疑心の強い市民の懸念を和らげるに足りるだけのプライバシーの保証を提供出来るかもしれない。

2社は共同プレスリリース で、このサービスは自己選択型で、公衆衛生当局によってリリースされるアプリを使うことが必要になると言った。13 April 2020 の事後説明で、2社の代表者はこの取り組み方法を開発するにあたって研究者に意見を聞き、そして世界中の既存のフレームワークを調べたと言った。

この滅多にない協業は短時間で現実化した。TechCrunch は、これは双方の会社の技術者達からなるグループでたった2週間前に始まったと報じている。この暫定文書は、不明確な部分もあるし、誤字脱字もあるが、これは Apple としては珍しいことで、纏めるあたって速度を優先させたことを伺わせる。

第一段階では、Apple と Google はプライベート API (application programming interface) を mid-May 2020 に保健機関だけに厳格に限定して出す。これらの API は iOS 及び Android の両方で全く同じ様に働き、そして公衆保健機関にこの追跡機能を生かして既存のアプリを変更したり、新しいアプリを作成させてくれる。両社とも簡単なモデルアプリを作成し、政府機関は彼らのロゴをそれに付けたり、或いは大幅に変更したり出来る。

第二段階は "数ヶ月後に" 予定されており、この追跡方式をオペレーティングシステムレベルで Android と iOS に組み込む。追跡と基本的な通知の受領を有効にするのは、アプリをインストールしなくとも出来るようになると、2社代表者達は語った。誰かが COVID-19 の診断結果を登録するにはアプリが必要となる。

FTC の元最高技術責任者であるセキュリティの専門家 Ashkan Soltani はツイートで 、権威ある筋からの話として、Apple と Google はデータの流れへのアクセスを一般にではなく、限定された組織群にしか提供しないと言っている。Apple と Google の代表者は、会見の中で、政府が認めた公衆衛生機関だけがこの追跡 API を使い、そして人々に警告するために必要な診断データの流れにアクセス出来ることを認めた。

まず始めに、この根底となる技法の幾つかは何処からきたのか見てみよう。

Find My がモデル

Find My Coronavirus
画像の一部は CDC / Alissa Eckert, MS; Dan Higgins, MAM / Public domain からのものに基づく

この新しいシステムは、既に広く用いられているクラウドソース (不特定多数の人の参加) による機器追跡システム、例えば、昨年アップデートされた Apple の Find My サービスや RFID 追跡アドオンシステムの会社 Tile からの Community Find 機能の様な、にかなり似ている。これらの機器追跡システムも自己選択が必要である。(Apple の選択肢は Enable Offline Finding と呼ばれる。iOS では、Settings > Your Name > Find My > Find My iPhone にある。macOS 10.15 Catalina では、iCloud 設定の Apple ID 設定ペーンで見つけられる;Find My Mac の隣にある Options をクリックする。)

Find My のクラウドソース機能は、お互いにリンクするために、同じ iCloud アカウントに関連づけられた2つ以上の機器を必要とする。iCloud Keychain 同期に似ている。それは、野外で Apple 機器が Internet 接続がないと検知した時に働く。そうすると、それは一定の間隔で Bluetooth ビーコンを発出する。このビーコンは、その一群の機器によって共有される一つの鍵情報に依存した暗号値を持っている。そのビーコン経由で機器を他の人が追跡するのを防ぐため、その暗号値はその一群の機器間で共有される情報を使って定常的に変化する。

その近傍にいる他の Apple ユーザーで対応可能なだけ新しいオプレーティングシステムを持つ人はこの Bluetooth ビーコンを自動的に検出し、それを位置情報に結合し、そしてそのデータを Apple にアップロードする。Apple はその暗号解読に必要な情報を持っていないので、その詳細は引き出せない。

同じ iCloud アカウントで登録された他の機器から、ユーザーはある機器を紛失したと印をつけると、彼らの機器は Apple と連絡を取り、必要十分な情報を Apple に提供すると、適合するアップロードされた情報セットを返してくる。ユーザーの機器は Apple からの情報セットを解読し、そしてその機器が何処で、何時見られたかを図示する。クラウドソースに参加したユーザーの身元が明かされることはないし、彼らも自分の機器がアップロードしている物の中身を知ることはない。

では、Apple と Google が提唱している新しいシステムを見てみよう。

プライバシーを破ることなく接触者を追跡する

COVID-19 Contact Tracing Bluetooth システムは、Apple が Find My でしたことの大筋に依存している。限定された状況下でのみ Bluetooth から送出するのではなく、新しい API を使うアプリは Bluetooth ビーコンを定期的な間隔で送出する、暫定仕様によれば、少なくとも5分より短い間隔で。

この API は、個々の機器に固有の追跡鍵を生成するが、それはその機器にだけ保存され、明かされることは決してない。プライバシーを保護し追跡を禁じるため、システムはその機器鍵から暗号的に引き出される別の追跡鍵を毎日生成する。そして、それが約 15 分毎に新しい近接 ID を作成する基礎となる。近接 ID は Bluetooth で送出され、他の人達の機器によって受信される。受信する機器はその近接 ID を時間スタンプと共に保存する。電池寿命を節約するため、それは Bluetooth Low Energy 標準に依存するので、この繰り返しの活動が消費する電力はわずかなものである。

しかしながら、Find My とは違い、この仕様は位置情報を要求していない。可能性はあるが、それは任意であり、両社とも位置共有には明示的な同意が必要だと言っている:

Contact Tracing Bluetooth Specification はユーザーの位置を必要としない;位置情報の如何なる利用もこのスキーマに対しては完全に任意である。いずれにしろ、ユーザーは、彼らの位置が選択肢として使われる場合、明示的な同意を提供しなければならない。

人々は、データは如何に自分だけのものでありそしてどの様に使われるかについての保証はあっても、彼らの位置情報が共有されない方が、接触追跡に参加し易いのではなかろうか。

これらすべての詳細は、誰かが SARS-CoV-2 コロナウィルスの検査に陽性となって初めて重要なものとなる。その時点で、感染した人は自らの感染状況を報告する選択をする必要がある。やり方は、政府の保健機関よって開発されたアプリの中で、ボタンをタップするか、或いは QR コードをスキャンする。両社の代表者達は、当局は、人々が検査や他の方法を経ることなく病気を持っていると主張するのを避けるため、陽性診断を確認する独自の方法を彼らのアプリに入れて開発するかもしれないと語った。(多くの国で検査が需要に応え切れない状況下にあるので、公衆衛生当局者の中には、典型的な症状の組み合わせを示している人を感染者数の計測や接触追跡の使用に使っている所もある。)

検査結果がどの様に確認されるかにかかわらず、一人のユーザーが陽性診断だと示すや否や、その人のアプリは過去 14 日間の毎日の追跡鍵を "診断サーバー" にアップロードする。

それからアプリは次の 14 日間毎日立ち上がり、そして前日の追跡鍵を送る。この 28 日間のウィンドウは遡ったり先に進めたりの追跡能力を提供する。この期間は現時点では、症状がはっきりとは見えないこともある潜伏状態や表面上は最早伝染性でなくなった後の - 或いは COVID-19 治療のため入院していた期間迄網羅する。

この診断の出た人の近くにいたかもしれない人々のプライバシーを守るため、それらの人の機器は保持している情報をサーバーにプッシュすることはない。代わりに、診断サーバーは定期的に全ての報告された毎日の追跡鍵を、追跡を有効にしている人全員にプッシュする。(鍵の配信へのアクセスは厳重に管理される。)

それでは膨大な通信量になりそうに見えるかもしれないが、たとえ毎日何十万という人が感染したと報告しても、鍵は比較的小さく、そしてデータは時間をかけて配信される。セキュリティ研究者で Signal アプリの創作者でもある Moxie Marlinspike は Twitter 上で、最大で何十億というスマートフォンがダウンロードする必要が出てくる可能性のあるデータ量を減らすため追跡鍵は位置情報と緩やかにタグ付けされるのではないかと推測している。それは、開発が進むにつれて検討されるであろう詳細の一つの様に思える。

毎日の追跡鍵を調べる作業は人々の個別の機器上でしか起きない。個々の機器は日毎の追跡鍵のリストに対して暗号変換を使用し、それぞれの鍵をそれが Bluetooth 上で掴んだ変化する近接 ID に対比して調べる。もし合致するものがあったら、それら二つの機器はある時点でごく接近していたことを意味し、そしてその二つの機器はその記録が一致した時のタイムスタンプを知っている。

この賢いやり方は、匿名性とプライバシーを両立させる。診断された人だけが毎日の追跡鍵を、それらがアップロードされる時点まで、保持している。その人の近隣にいた機器だけが、これらの日毎の鍵から引き出される変化する近接 ID を受信する。従って、この照合を出来る人は他にはいないはずである。(Marlinspike は、Bluetooth 傍受機器を市販していると宣伝しているテック会社があり、感染したと自らに印をつけた人の身元を暴くことは理屈の上では可能であると言っている。しかしながら、それには日毎の追跡鍵の流れに直接アクセスすることが必要である。)

このやり方はまた、誤りやシステムを失墜させようとする試みを防止するのにも役立つ。何故ならば、個々の機器はその手順と近接 ID を捕らえた時間とを知っているからである。

mid-May にリリースされると予想される第一段階では、人々は近接 ID を送出、受信し照合を処理する、感染した人が出たことの警告を受ける、そして診断を報告するためにはアプリをインストールしておく必要がある。第二段階では、ユーザーはオペレーティングシステムレベルで、陽性の検査結果を報告すること以外の全てに対して自己選択が出来るようになる。

(これが共同暗号化 API 暫定仕様の中に記述されたものだが、2社の代表者達は会見で、毎日の追跡鍵を除外したバージョンの話もした。この記事を出す時点まで、私はその違いについて明らかにする回答を得ることが出来なかった。)

この発表がなされて以来、多くの人が Bluetooth 信号はかなり遠くまで飛び間違った陽性者を捉えてしまうのではないかとの懸念を表明してる。集合住宅や隣が近い家に住む人は、自分の機器をペア付けしようとする時にそちらからの Bluetooth スピーカーやヘッドフォンが表示されるのはよく経験する話である。

しかしながら、Apple と Google の代表者は会見で、近接していることを確実なものとするために複数のマーカーが使われるであろうと語った。信号強度を測定し、そして複数の近接 ID を捕捉することで、この接触追跡のフレームワークは、数フィート以内におよそ 10 分間いた人だけを特定するべく試みる。彼らは、このシステムは、このウィルスが距離と時間軸でどの様に拡散するのかに関して疫学者達が開発する指針に従うであろうと言った。

Alice と Bob が接触追跡を説明する

ここで、Apple/Google 提案が典型的な仮想世界ではどうなるのか、Alice と Bob を例として使って説明しようと思う。

Alice と Bob は同じ時間にスーパーにいた。Alice の iPhone は幾つかの近接鍵 ID を Bob の Android フォンから受け取り、忠実にそれを記録した。二日後、Bob は陽性と診断され、アプリを使って彼の状態をアップデートした。彼の日毎の追跡鍵はアップロードされる。

Alice の iPhone では、それが受信する診断追跡鍵の定常的なアップデートで、Bob の鍵が保存してある近接 ID と一致する、そして、全て一致したものがタイムスタンプと共に列挙される。

仕様の最終バージョンでは更なるチェックもなされるかもしれない:Alice は Bob と 1 メートル以内の距離に近接 ID が2個続けて捕捉される時間いたのか? Alice と Bob はタイムスタンプで計って 5 分以上近くにいたのか? Alice は 1000 の近接 ID を弱い信号で受信したか、そうであれば、彼らは単なる隣人で濃厚接触者ではない? 或いは、信号はとても強くそしてしょっちゅう現れることから、Alice と Bob は一緒に住んでいるか、或いは一緒に働いているのでは?

アプリと国そして分析の詳細によるが、Alice はその合致に関する色々な情報を見ることが出来るかもしれない - 例えば "あなたは陽性と診断された人と 3 April 2020 に接触しました" という簡単なもの - 或いは、これらの詳細を公衆衛生機関に開示する選択肢まで。

今後に向けた正しい動き

一緒になって Apple と Google は、世界中の何十億のスマートフォンユーザーに手を伸ばし、公衆衛生当局者が感染経路を追跡するプロセスを簡素化することが出来る。これは、感染者の数が急激に減少した後、社会が正常性を取り戻すことに向かう手助けをする上で大きな役割を果たすことが可能である。

しかしながら、普及の障害になり得るのは、使用中の機器が多種多様であることである。Apple と Google の代表者は会見の中で、彼らはこの API とシステムアップデートを可能な限り数多くのオペレーティングシステムに配布したいと思っているが、どれ程昔まで遡れるかは現時点では分からないと語った。

政府当局や政治賢者達は、機器による個人の追跡を義務化すべきだと主張してきたし、幾つかの国では既に実施されている所もある。でもそれは良くない、たとえ危機の最中にあっても。何故ならば、監視からの自由を制限しようと政府によって行使される力が簡単に断念されることはまず稀だからである。しかしながら、多くの国は、公衆衛生の危機において、対面面談、通話履歴、クレジットカードや交通消費等々から追跡情報を入手する政治的力を手にしていて、彼らはこれ迄の病の流行でもその目的のためにそれを使ってきた。

勿論、仕様の中に或いは次に来る実行の段階にも欠陥は存在し得る。たとえそれが地球上で最も技術的に秀でた二つの会社から来るものだとしてもである。Apple と Google は彼らのプラットフォームが止むことない攻撃に晒されていることには慣れている。また、いざアップデートを出すとなれば、彼らは特別な能力を持っている。これら全てとこの提案システムは完全に自己選択型であり、余り気持ち良くないという人にはそれ全部を避けることを許すと言う事実とを合わせ見て欲しい。そして、Adam Engst が "技術は人間のためにどの様なことが出来るか?" (6 April 2020) で提起した様に、これはついに、このパンデミックと戦うために情報技術の巨人が固有の技術と資源を持ち寄る一つの例になるのかもしれないという感覚を抱かせてくれる。

我々はしばらくの間 SARS-CoV-2 コロナウィルスと共に生きていくことになるであろう。この Apple と Google からのプライバシーを重視したプロポーザルは、社会的善と個人のプライバシーの間に正当なバランスを提供している様に見える。

討論に参加

Jeff Porten  訳: Mark Nagata   

Timing 2、あなたの就業時間の追跡と管理に役立つ

生産性を高めようと思う人にとっては、時間の追跡と管理こそがたいていの人の存在の骨格となる。時間の追跡作業は面倒で、細かなことに常に注意を払っていることが必要だ。自分はここ 30 分間をあの書類の作業に費やしていたのか、それとも途中の 5 分間で電子メールのチェックをしていたのかと。また、前もって時間の計画をするのも、やはり束縛される気がして煩わしい。でも、そういうことをせずに成功できる人は少ない。自分の to-do リストをちっとも完了できない人や、to-do リストはクリアできるけれども長期的な目標にはさっぱり近づかない人もいる。また、時間あたりの計算でクライアントに仕事の費用を請求している人は、いい加減な記録の結果としていつになっても銀行にお金が振り込まれないことになりがちだ。それに今の時代、足を踏み入れることのできない仕事場のオフィスでの追跡方法ならばうまく行っていても、同じ仕事をラップトップ機や自宅の Mac でこなそうとするとまた新たな必要が出てくることもあるだろう。

私自身、時間の追跡と計画の両面で大きな困難に見舞われている。自らの著書 Take Control of Your Productivity で、私は自分もこの問題に悩んでいると告白した上で、良いアドバイスだけれども自分ではなかなかうまく守れないようなことをも書き連ねている。けれども“常に新しいテクニックを試してみよう”というアドバイスに従って Daniel Alm の素晴らしい Mac 用アプリ Timing を使い始めたところ、追跡と計画の両面でまったく新しいアプローチが軌道に乗るようになった。

この記事ではまず、このアプリの機能を手早く概観するが、もともと Alm は非常に優れた説明書を提供してくれているし、そこには David Sparks による入門ビデオとビデオ研修コースも付いているので、そこはごく簡単に済ませて Timing を使ってさまざまな生産性テクニックを実際に使うところに進みたい。ご自分で使ってみたいと思われれば、Timing には 14 日間友好の無料試用版があるし、Expert 版 (私がここでレビューしているバージョン) には数多くの追加機能もあって、Setapp 購読者ならばこちらを使える。

スピードとタイミングの達人

Timing は簡単に説明できる。あなたの Mac でどのウィンドウが最前面にあるか、あなたがそのウィンドウで何か作業をしているかを監視して、あなたが別のウィンドウに切り替えたりしばらくの間 Mac を使っていなかったりすれば通知で知らせる。始める前にあなたのタスクやプロジェクトでどんなことをするのかを割り当てておくこともできるが、それは別に必要ではない。なぜなら、このアプリを使っていて、後からそういったアクションのグループ分けについてさまざまなことを設定し直すことも、さらには自動的にそういう挙動をルールに定めてそれに従わせることも可能だからだ。

例えば、私は現在 TidBITS 執筆に割り当てた 15 分間のブロックの 2 つ目を追跡しているところだが、一時間後にビデオ会議がスケジュールされているのでその間はこのプロジェクトをあらかじめ設定することができない。このイベントは私のカレンダーの中にあって、追跡された時間とは違う方法で Timing に追加されている。

メインの Timing アプリには 4 つのセクションがあってタブで区分されているが、実際このアプリには 6 つの主要なコンポーネントがある。Timing アプリを起動すると、まず Overview 画面が開く。ここにはあなたのデータをさまざまの有用なフォーマットで表示する注意喚起のダッシュボードが並ぶ。ここに表示されるデータがどれだけの日付範囲のものかを選ぶことができ、好きなようにデータをスクロールして見ることもできる。

The main Timing app

次の Review 画面には追跡したデータがタイムライン上に示され、さまざまのグループ分けがなされる。下のスクリーンショットで分かる通り、タイムライン上のアイコンがその時刻にあなたがどのアプリケーションを使っていたかを示す。そのブロックの上にマウスポインタをかざすと、ポップアップウィンドウがその時にあなたが指したものの名前を表示する。多数のウィンドウが開いていてそれらの間を頻繁に行き来していたようなブロックを見直す際にはとても便利だ。とりわけ、ウィンドウによって別々のタスクを扱っていた場合にありがたい。もう一つ便利なものとして、見直している時間帯に何かカレンダーで予約してあったものがある場合に、そのことがタイムライン上に線で示される。(この機能は Expert 版のソフトウェアにしかないものなので図では省いてある。)

Adding a new task

タイムライン上でその下にある Project 行と Task 行では、色の付いたバー表示でその時間帯がタスクまたはプロジェクトに既に割り当てられていることが示される。左のサイドバーで分かる通り、個々のプロジェクトにはそれぞれ独自の色が割り当てられており、色を賢く割り当ててさえおけばどんなことがその日の大半を占めているかが一目で分かる。Task タイムラインに + 印の付いたグレイのバーが示されれば、あなたのアプリ使用の傾向とカレンダー上の予約を勘案してここにタスクを割り当てればよいと Timing が提案していることが分かる。その + をクリックすれば、そのブロックに新規のタスクを割り当てられる。下のスクリーンショットは、Office プロジェクトの Create Presentation タスクをそのブロックに割り当てているところだ。もしも提案された時間帯が正しくなければ、開始時刻か終了時刻のどちらかを編集することでより正確な時間帯の最もきちんとした割り当てができる。それからまだ残っている時間帯は (より幅の狭い) グレイの部分としてタイムライン上に残る。

この画面のそれ以外の部分は、他の方法でタスクの設定をするための場所だ。すべての Keynote 時間がある特定のタスクのためだと分かっていれば、そのアプリの名前をクリックすることでそのアプリで使うすべての時間が一度に選択される。同じことが書類やウェブサイト (スクリーンショットでは New Task ポップアップの下に隠れている)、それからあなたが見直ししている間に扱われたさまざまのウィンドウ名に基づいて Timing が自動的に追加するキーワードに対しても言える。

他のアプリで作業している間、自分がその時点でしているタスクをメモしておきたいと思っても、いちいちそのために Timing アプリに移るのは煩わしいだろう。Timing はそのためにメニューバーアプリを用意している。

Timing in the menu bar

このメニューバーアプリは、特定のタスクで費やした時間か、またはその日のうちにタスクを追跡していた時間の合計とタスクが記録されていなかった時間とを表示する。メニューバー上の Timing アイコンはタスクを追跡中にはそのタスクの属するプロジェクトに割り当てられている色を示し (ただし色を見分けるのが難しいことも多いが)、大サイズのモニタを使っている場合には現在のタスクの名前をメニューバー上に表示させることもできるが、ラップトップの画面には収まらないだろう。メニューバーアプリを使って新たなタスクを開始すれば、ダイアログが開いてそのタスクとプロジェクトを設定するようにと求め、それから自動的に過去のタスクに基づく提案を賢く提示することで、タスク名を再利用して同じ作業を追跡しやすくする。最近に使った 5 個までのタスクの名前がメニューに新設された Quick Start セクションに並ぶ。

私が「意識した仕事」と思うもの、つまり自分が成し遂げたいと最も強く思う仕事を追跡する際に、このメニューバーアプリを最も頻繁に使っていることに気付いた。私はすぐ気が散ってしまうタイプの人間なので、自分がしようと決めたことをビジュアルなリマインダーで示してもらえるのがありがたい。そうでない「何気ない仕事」例えば電子メールに返事を書いたり Desktop に散らばったファイルを見直したりといったものは私を順調なペースに乗せるありふれた作業だが、そういったものについては事後に割り当てていることが多い。

さて、メインの Timing アプリに戻って、Details 画面にはあなたのプロジェクトやタスクについて集計したデータが示される。Review 画面と同様、割り当てられていない時間帯をこの画面のタイムラインで割り当てることもできる。

Timing's Details screen

最後の Reports タブには同様のデータが示されるが、ここでは他の人たちと共有したり他のアプリに移したりするために適したフォーマットを使って表示される。ここから PDF または HTML ページを作成して、あなたの時間の使い方を同僚やクライアントに見せたり、あるいはスプレッドシートにデータを書き出してさらなる分析に使ったりできる。

Timing reports

Mac から離れていても時間を追跡

残念ながら、たいていの人は Mac から離れた場所でもある程度時間を過ごす必要がある。それは費用を請求する対象の仕事であるかもしれないし、またそれと同時に何らかの気晴らしが紛れ込んでいるかもしれない。コンピュータから離れたところで何か先延ばしの口実を楽しんでいたとすれば、コンピュータ上で時間を追跡しただけでは生産性が上がるとも思えない。それに、Mac はまだ部屋の向こうであなたが何をしているかを把握する HAL 9000 の能力を獲得するには至っていない。(おそらくそれは良いことなのだ。) 複数の Mac を使っている人には、複数の Mac の活動を同期して一つのタイムラインにまとめるサービスを Timing が提供している。

どの Mac からも離れている状況のために、Daniel Alm は Timing に 6 番目のコンポーネントを追加した。これはシンプルなウェブインターフェイスで、新規のタスクを開始してその時間を追跡したり、手動で時刻を入力したりできるようにする。このウェブインターフェイスには機能が少なく、Timing のアプリどころかメニューバーアプリのみさえよりも少ないので、このウェブアプリを使うためだけに Timing の Mac 用アプリを購入することなど思いもよらないが、いざという時に iPhone や iPad、あるいは誰か他の人のコンピュータを使って、あなたの追跡情報を最新のものにするためには十分に役立つ。

Timing's Web interface

時間を追跡するもう一つの方法として、誰もが既に持っている Calendar アプリを使うこともできる。私は自分の Mac の前にいない間、自分がセットアップした Time Tracking カレンダーの中に時間を入力している。こうして入力したものは自動的に Timing の中にイベントとして登場し、私が見直しをした時点でタイムラインのグレイのバーの中にタスク提案として出る。そのイベントのタイトルを見ることで、その時間帯がどのプロジェクトのためのものだったかが分かり、そのプロジェクトをクリックして割り当てるだけで素早くその日に欠けていた時間帯が埋まる。

このシナリオに潜む問題点ははっきりしているが、これは決して Alm が悪いのではない。Mac から離れた場所でしたタスクの多くは iPhone か iPad でしているので、なぜそれを追跡する目的で iOS 用のアプリを作らないのか? その答は Apple に尋ねるしかない。なぜなら、あなたがどのアプリを使っているかを監視できるのは Apple 製のアプリのみだからだ。そして、そのデータを求めても Apple が返してくれるのは Screen Time で利用できるデータのみ、それ以外のデータは決して手に入らない。もちろん Facebook や Angry Birds で過ごす時間を削減したいというだけの目的ならばそれで十分かもしれないが、最近の自分が iOS デバイス上でどんな作業をしていたかの再構築をしたい人にとってはそれだけのデータでは何の役にも立たない。

実際 Android フォンにはそういうアプリが存在しているので、状況は私が持っている機器の半分だけが私の時間を素敵に監視してくれているということだ。私の iPhone と iPad はこの意味でブラックボックスに近く、このことで私は激しいフラストレーションを感じている。(私の知る限り最良の回避策は、タイマーを 10 分か 15 分ごとにセットしておき、タイマーが鳴る度にスクリーンショットを撮ることだ、それらをさっと見直せば、タイムスタンプとなるリマインダーをもとに一日の時間の使い方を再構築できるかもしれない。)

この記事では生産性のための提案に集中するため、Timing の数多くの有用な機能に触れないまま概観してきた。なので、もっと詳しく知りたい方にはその説明書を読むことをお勧めしたい。たった 13 分間の入門ビデオが、素早くこのアプリを概観してくれる。

何を追跡するかを決断

あなたのタスクを示した Overview タブの中にはタスクとアプリ使用の統計情報を集めたものが見えるが、この表示の中で何に注目するかを決めるのはあなた次第だ。このウィンドウに表示されたものはすべて、一番上に表示されている日付範囲によって決まる。そこに Today なり他の日付範囲なりが示されているところをクリックすれば、さまざまの範囲から選ぶこともできるし、カスタマイズした日付範囲を設定することもできる。

Timing's Overview tab

右上にある棒グラフは時間を全部積み重ねて表示するので、別々の種類の仕事 (あるいは遊び) ごとにプロジェクトを割り当てておけば、色分けを見ることでどんなことに多く時間を使っていたのかが一目で分かる。下の方の二つの円グラフは、個々のアプリやプロジェクトが追跡された時間全体の中でどんな割合を占めていたかを示す。これは役に立つ場合もあるが、そうでないこともある。私は自分がワードプロセッサの中でどの程度の時間を使っているかを知りたいと思ったけれど、Safari で使った時間の中には Google Doc で執筆をした時間も Facebook で過ごした時間も共に含まれてしまうかもしれない。

ウェブで使った時間をもっとより良く知りたければ、頻繁に訪れるサイトにはそのサイト特定のブラウザでアクセスする習慣を付けるとよい。つまり、特定のウェブサイトのためだけに独立して使うアプリを作っておくのだ。例えば Fluid 2 のようなユーティリティを使えばその種のものを作れる。私は Fluid を使って "Facebook SSB" というアプリを作っているので実際には Safari で Facebook を訪れることはない。このアプリにカスタマイズした Facebook アイコンを付けて、Dock にも Command-Tab ブラウザにも Facebook という名前で出るように設定している。Timing は自動的に facebook.com の URL を識別して切り分けてくれるのでこれは必ずしも必要な手間ではないが、Timing の内外にあるこのような良い点の組み合わせには手間を掛けるだけの価値はある。

Frequently visited sites in Timing

でも、あなたの手に最大の柔軟性が任されるのは左上の部分だ。ここで、トータルな生産性スコアがはじき出されるからだ。このスコアは、あなたが個々のプロジェクトごとに設定しておく生産性スライダーの設定値に基づいて計算される。

Timing's productivity score

例えば、私のようなコンサルタントが支払い請求する業務時間は当然ながら 100% の生産性を持たなければならないが、電子メールに返事を書いている時間についてはその半分程度が大して有用でない、あるいは楽しみのためのメッセージに費やされていると判断すれば 50% の生産性しか割り当てないこともある。電子メールに 2 時間を費やして支払い請求可能な (おお、幸せな日々よ!) 仕事の時間が 6 時間だったとすれば、その日の生産性スコアの計算は (50% × 2 ÷ 8) + (100% × 6 ÷ 8) つまり 87.5% で、このアプリは切り上げて 88% と表示する。積み上がった棒グラフよりもこのスコアの方が重要だと思えば、こちらの方に注目するようにすればよい。Timing はこちらの方に狙いを定めているようで、その日のスコアがメニューバーにも表示されるようにしている。さきほどのメニューバーのスクリーンショットをご覧頂きたい。

Timing アプリを使い始めたころ、私の気持ちは前から OmniFocus で使っていたプロジェクトを再現しようという考えに傾いていた。(2019 年 1 月 17 日の記事“OmniFocus 3: タスク管理で新しくなった機能、まだ青いままの機能”参照。) OmniFocus プロジェクトのデータを読み込むための AppleScript が Timing ウェブサイトに用意されていたからだ。でも、その作業にはわざわざ手間を掛けるほどの価値はなかった。私はあまりにも多数の OmniFocus プロジェクトを追跡していたからだ。そこで、この報告記事のために必要な程度に細かい追跡をしているいくつかのプロジェクトだけを選んで、Timing に読み込むことにした。つまり、比較的詳細なリストを含んだ請求書の要約が必要なクライアントだけを選んでそれぞれのクライアント一人に一つずつプロジェクトを選んだ。それ以外の時間を追跡するために、私はそれぞれに割り当てられた生産性に応じていくつか別のプロジェクトを作った。数時間かけて本気でクリーンアップを施した結果、100% 生産性を持つ "Home 100" プロジェクトと、映画を観ながら洗濯をするといったことのための "Home 25" プロジェクトができた。

ご覧の通り、私は Timing を使って余暇の時間と仕事の時間の 両方 を追跡している。皆さんもそのようにするかどうかは皆さん次第だ。とりわけ、自営業者の皆さんや、在宅勤務をしている皆さんは (もともとそうしていた方々も、世の多くの人たちと同様に一時的にそうしている方々も) そこのところをよく考えておく必要がある。生産性スコアはあくまでも追跡された時間に基づいたパーセンテージなので、追跡されなかった時間は無視される。つまり、15 分間しっかり仕事をしているところを追跡して、その日のそれ以外の時間はすべてオフにすれば、文句なしに 100% の生産性スコアが記録される。棒グラフの「追跡された総時間」のところには小さな数しか表示されないけれど、とにかくメニューバーに堂々と 100% と出れば素晴らしく見えるだろう。

個人的意見を言えば、私はそんなことよりできるだけ多くの情報が欲しい。その上何より、私は自分がどんな風に時間を使っているかの実態にもっと注目したいと思っている。Timing のようなタイプのアプリを使う重要な利点の一つは、自分が普段どんな風に過ごしているかに否応無しに注意を向けられることだ。そうすることで責任感も生まれる。少なくとも自分に対する責任感が生まれる。私が時々している自分の起床時間 (と就寝時間) を毎日記録することまではしたくないと思うかもしれないが、良い習慣を身に付けたいと思うならば、悪い習慣に直結することの時間追跡が必要なのではないだろうか。

分別ある目標と追跡手法を設定

Timing の生産性測定をどのように利用するかは、あなたが何を追跡するか、あなたがどんな目標を測定したいと思っているかに依存する。仕事時間のみを追跡する場合には 90% の生産性を目標にすればよいかもしれない。ただし、その場合にミーティングや電子メールのための時間が週あたり 4 時間しか残らないのだとすれば、そういう時間は普通 100% の生産性とは考えられないことが多いので、おそらく現実的とは言えないだろう。自分の生活時間のほとんど全部を追跡するために使う場合には、高い生産性スコアを目指そうとすること自体が馬鹿げている。Rudyard Kipling は容赦なき1分を満たそうとしたかもしれないが、普通の人たちは夕食を囲んで家族や友人と過ごした一時間が測定され提出書類に載るべきだとは思わないものだ。

私が選んだやり方は、これが結構うまく行っているのだが、自分が最も無駄遣いしがちな時間を追跡することだ。たいていの朝、私は目覚めてから何か有用なことを始めるまでに 2 時間ほどもかかっているので、そこを削減したいと思っている。私は朝型の人間ではないけれども、自分の脳が低い RPM で回転していても 50% の生産性は確保できるだろうと思うので、現状の 0% をその程度までは上げたい。そのためには、朝食を追跡しなければならない。

同時にそれは、自分の生産性測定に人間味のある目標を設定する必要があるということでもある。どんな場合にももし自分が追跡された時間に 50% の努力を注いでいるのなら、100% の生産性を目標に設定することはできない。それは数学的に不可能だからだ。そこで皆さんには、少なくとも Timing を使い始めた最初の数週間のうちは、それぞれのプロジェクトについて実際に何度か使ってみてから、実情を反映していると思われる生産性レベルに合わせて少しずつ目標を調整し続けるために最良の努力を注ぐことをお勧めしたい。そうして自分のための基本線がいったん確立すれば、その後は「あと 4 週間で 5% 上げるのを目標にしよう」という風に考えられる。ここで「25% 高くしよう」などと考えるのは意味がない。たった一か月で完璧の四分の一も近付けるなんて、本気で思えるだろうか? 長年かけて確立された習慣との戦いを始めようとしているのだから、ゆっくりと着実に進む者が勝利を収めるのだ。

また、高過ぎるスコアにも注意を払うべきだ。一週間が 90% を超えるスコアで終わったなら、それは時間を費やし過ぎというものだ。これでは持続可能なペースで働いているとは言えない。そのような場合、体が勝手にペースを落とすようになるまで待つのでなく、意図的にペースを緩める方が賢明だ。

生活のタイミングを持とう

長年にわたって私は数多くの時間追跡アプリを試して (そして放り捨てて) きた。Mac でも、他のいろいろの機器でも使ってきた。今回試した Timing アプリは、他のどれよりも頭一つ抜きん出ている。このアプリが収集するデータは、そしてもっと重要なことにこれがあなたに手動での追跡を強要しないデータは、このアプリを私が試したもののうちで最小の衝撃力を持つ追跡アプリとしている。自分が過ごした一日を再構築するために十分な詳細情報が揃っていないことは稀で、そのことは私があまりにも忙しくて定期的な見直しをする暇がなかった日についても言える。

でも、これは決して習慣を変えるための大きな努力をそのまま丸ごと引き受けるものではない。Timing が自分を見張っていると知っていることである程度の有益な効果はあるけれども、1日の終わりにより良い数字を出すためにはあなた自身がいつもよりもう少し集中してその目標に向かう必要があるだろう。でも、あなたがそのデータを生かさなければ、データ自体には何の価値もない。あなたが現在何らかの非生産的な行動をしているなら、それは理由があってそうしているのだ。アプリにできるのはあなたがどの程度頻繁にそれをしているかを告げることだけであって、あなたがなぜそうしているのか、どうすればそうしなくなるのかを教えることなどできない。

あなたがご自分の習慣のどの部分を変えたいと思っているにしても、それを実現する最良の方法は、そこにもっと注意を払い、副作用のない追跡をし、建設的なフィードバックのループを築くことだ。Timing (と良いカレンダーアプリとの組み合わせ) は決して完璧ではないけれども、私がこの目的で使ったことのあるソフトウェアの中では文句なしにベストだと言える。

Timing はそのウェブサイトから直接に入手することも、Setapp を通じて入手することもできる。アプリ自体は無料だが、Setapp を通じていないバージョンは月額払いの購読を必要とし、3 つのレベルごとに料金が決まっている。Productivity 版は月額 $3.50 (一年ごとに課金される)、Professional 版は月額 $5.50、Expert 版は月額 $8 だ。Productivity 版は 2 台までの Mac で利用でき、手動の時間追跡ができず、ウェブアプリへのアクセスもできない。Professional 版ではそれらの機能が使えて、同時に 3 台までの Mac で使える。Expert 版には Calendar 統合と AppleScript、Web API、および Zapier 統合機能があってサードパーティのアプリと共に働くことができ、レポートをフルにカスタマイズでき、インターネットのイベントに基づいたスクリプトが使える。Setapp 購読者は Expert 版を使える。

最後にもう一言。こうして私が推薦をすることで Timing の開発者 Daniel Alm に利益がもたらされるようにと願いたい。彼のソフトウェアは高品質であるだけでなく、彼の説明書が驚くほどに素晴らしく (私がこのレビュー記事を書いている間にも説明書にさらなる改善が施されていた)、レビュー筆者たちに向けて彼が書いたプレス用キットの文章も平均をはるかに超えている。このソフトウェアを開発しつつ、それでもなおあんなに素早くサポートの電子メールに反応できるなんて、いったいどうやっているのだろうかと思う。新しく知ったソフトウェアを私が信頼するか否かは、そのプログラミングの品質と、その会社がどう運営されているかについて私が受けた印象とによってたいてい決まる。Alm は、その両方の意味で場外ホームランをかっ飛ばしている。

討論に参加

TidBITS 監視リスト: Mac アプリのアップデート

訳: Mark Nagata   

Firefox 75

Firefox 75

Mozilla が Firefox 75 をリリースして、検索を拡張するためにアドレスバーに改善を加えた。あなたがタイプし始めると、新しくなったアドレスバーが拡大して読みやすさを改善し人気ある検索エンジンをショートカットを並べたシンプル表示を示す。アドレスバーをクリックすると、あなたがよく訪れるサイトのリスト (Firefox のスタートページに表示されるリストからエミュレートされるもの) も示され、素早いアクセスができる。そのお気に入りサイトのどれかが既にタブとして開いていれば、ティール色にハイライトされてそのタブに切り替えるオプションが呈示される。検索語句をあなたがタイプしている最中に、追加のキーワードがボールド体で示されるので検索を絞る役に立つ。あともう一つ、今回のアップデートではいくつかのセキュリティ脆弱性にも対処が施されている。(無料、67.6 MB、リリースノート、macOS 10.9+)

Firefox 75 Search

Firefox 75 の使用体験を話し合おう

Mailplane 4.2.2

Mailplane 4.2.2

Uncomplex が Mailplane 4.2.2 をリリースした。この Gmail 専用電子メールクライアントのメンテナンス・リリースだ。今回のアップデートでは一部のユーザーがサインインする際に Google から「ブラウザが非互換」というエラーが出た問題に対処し、Gmail が導入した Multiple Inboxes オプションによって未読メッセージの件数と新規メールの通知が表示されなくなった問題を修正し、別ウィンドウについてもウィンドウの位置とサイズを正しく記憶するようにし、インライン画像のダウンロードボタンを更新して Dark Mode でも見えるようにし、Timing アプリとの統合の問題点を修正した。(新規購入 $29.95、無料アップデート、68.9 MB、リリースノート、macOS 10.12+)

Mailplane 4.2.2 の使用体験を話し合おう

URL Manager Pro 5.2

URL Manager Pro 5.2

Alco Blom が最近 URL Manager Pro のアップデートを何度か出した。この古参のブックマークマネージャのバージョン 5.1 は新たに Search Drawer を追加し、メインの URL Manager ウィンドウからポップアップさせることもそれをドラッグして独立のウィンドウにすることもできるようにした。そのアップデートではまた、Fonts パネルを追加し、Grab All 機能を改良して BBEdit や TextEdit の開いたウィンドウから URL を収集できるようにし、オランダ語、ドイツ語、フランス語、スペイン語のローカライズ版を追加した。今回の新バージョン 5.2 では、重複したブックマークを見つけ出して削除するパワフルな機能を追加した。URL Manager Pro は無料でダウンロードできるが、全機能のロックを外すには $35 かかる。具体的にはツールバーのカスタマイズ、ブックマークの読み込みなどだ。旧バージョンから完全機能の URL Manager Pro 5 へのアップグレードは $25 でできる。(新規購入 $35、バージョン 5 からは無料アップデート、それより前のバージョンからのアップグレード $25、10.3 MB、リリースノート、macOS 10.13+)

URL Manager Pro 5.2 の使用体験を話し合おう

CleanMyMac X 4.6.2

CleanMyMac X 4.6.2

MacPaw が CleanMyMac X 4.6.2 をリリースして、Malware Removal モジュールにウイルスやマルウェアを探知するための新しい方法を採用して改善した。この汎用クリーニング・メンテナンスアプリはまた、CleanMyMac X Assistant に機械学習モデルに基づく個別提案を加えて拡張し、CleanMyMac がメモリ使用量過多を報告する通知から RAM の解放ができるようにし、Steam アプリリソースの探知と削除を改善し、Full Disk Access を認める際に以前よりも直感的なガイドを提供し、ステータスバー上で CleanMyMac X Menu アイコンが見えなくなるバグを修正している。(新規購入は $89.95 の一回払いまたは $34.95 の年間講読、月額 $9.99 の Setapp Mac アプリ購読サービスの一部としても入手可、無料アップデート、53.9 MB、リリースノート、macOS 10.10+)

CleanMyMac X 4.6.2 の使用体験を話し合おう

ExtraBITS

訳: Mark Nagata   

2020 年型 MacBook Air の FaceTime HD カメラはまだ貧弱なまま

Apple は絶え間なく iPhone の前面カメラを改良し続けているが、Apple のラップトップ機のウェブカメラではもう十年近く前から時間が凍結しているかのように見える。Wall Street Journal の Joanna Stern が、発売されたばかりの MacBook Air に搭載されたウェブカメラを Dell XPS 13、Google Pixelbook Go、Microsoft Surface Laptop 3、それに十年前の 2010 年型 MacBook Pro のウェブカメラと比較するビデオを作った。Surface Laptop 3 と、とりわけ Pixelbook Go は明らかに MacBook Air を大きく引き離していて、XPS 13 が最下位についた。古い 2010 年型 MacBook Pro の 1280×1024 の iSight カメラでさえ、状況によっては 2020 年型 MacBook Air の 720p FaceTime HD カメラ (解像度 1280×720) より良い結果を出した。でも、これらのラップトップ機のいずれも、iPhone 11 前面の TrueDepth カメラにはとうてい及びもつかなかった。このカメラはとてつもない 12 メガピクセルの解像度を提供し、毎秒 60 フレームの 4K ビデオを撮影できるのだから。

いったいなぜラップトップのウェブカメラはこんなに悪いままなのだろうか? ラップトップ機のリッドがほとんどのスマートフォンやタブレットに比べてずっと薄いこと、ラップトップ機を使って自撮り写真を撮る人などほとんどいないこと、ハードウェアの設計者としては真剣にビデオ撮影をしたい人なら外付けのウェブカメラを使うだろうと想定するのが自然だということもある。でも、今やあまりにも多くの人たちが COVID-19 の予防のため、あるいは在宅せよという命令により、ビデオ会議を使った在宅勤務や社交をするようになったのだから、ぜひとも Apple には将来のラップトップモデルでもっと良いウェブカメラを搭載して欲しいものだと思う。それに、TrueDepth カメラが搭載されていなければ、どうやってラップトップ機に Face ID が実現するというのか?

元記事を読む | 討論に参加

No comments

低速インターネットのみの家庭のため田舎のコミュニティーがメッシュネットワークに注目

何千万人ものアメリカ人が在宅を余儀なくされ、遠隔通信を使った仕事、コミュニケーション、ショッピングをせざるを得なくなっている。残念なことに、多くの田舎のコミュニティーでは並以下の接続性しか利用できない。このため、オレゴン州 Clatskanie の住民たちAlthea という会社を利用しようとしている。この会社は、ワイヤレスのメッシュネットワークハードウェアを使ってコミュニティー全体にワイヤレスのインターネットアクセスを提供する。

A diagram showing how Althea works

Althea のコミュニティー組織者が「バックホール」つまりインターネットの基幹回線への接続をセットアップする。参加する住民たちはそれぞれ自宅にアンテナを設置して、信号を受信するとともに、オプションとして信号を他の住宅へリレーするようにもできる。一工夫あるのはここだ。リレーをする人たちは、暗号通貨 (Ethereum または Dai) で報酬を受ける。

コミュニティー規模のメッシュネットワーキングは別に新しいアイデアではないが、COVID-19 のパンデミックがきっかけとなって、世界中の田舎のコミュニティーのためにこれが現実的な可能性となるのかもしれない。

元記事を読む | 討論に参加