TidBITS: Apple News for the Rest of Us  TidBITS#1232/21-Jul-2014

"Take Control of Apple TV" の著者として、Josh Centers が Apple TV の Netflix クライアントがテレビ番組シリーズの一つのエピソードが終わった際に自動的に次のエピソードを再生し始められるようになったことを解説する。Apple が新しい iTunes Pass 機能をスタートさせ、Apple Store リテール店内で Passbook を使って iTunes Store クレジットが購入できるようにした。この機能がどんな風に便利か、どのようにセットアップするのかを説明する。私たちは皆、長時間座り過ぎると健康に悪影響が出るが、仕事休憩用タイマー Stand Up がそのダメージを軽減してくれる。Josh はそれをレビューするとともに、Marco Arment の新しいポッドキャスト用アプリ Overcast もレビューする。こちらは万人向けのものとは言えないが、ポッドキャストを聴くための歓迎すべき工夫をもたらしてくれる。Michael Cohen は彼自身が電子ブックの発明にどのように関わったかを説明しつつ、危うく Macbeth の呪いの犠牲になるところだったと語る。今週の FunBITS 記事では、Josh が格闘ゲームに音楽の要素を取り込んだ The Rhythm of Fighters を紹介する。今週注目すべきソフトウェアリリースは、DEVONagent Lite、Express および Pro 3.8.1、Typinator 6.1、PDFpen と PDFpenPro 6.3.1、それに Voila 3.8 だ。

記事:

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Apple TV にようやく Netflix Post-Play が登場

  文: Josh Centers: josh@tidbits.com, @jcenters
  訳: 亀岡孝仁<takkameoka@kif.biglobe.ne.jp>

Netflix は、他のプラットフォームではもう何年も前から提供している機能をその Apple TV アプリに静かに追加した:Post-Play で、これは今見ている TV シリーズのエピソードが終わったら次のエピソードを自動的に再生するというものである。

私がテストした限りでは、この Post-Play は全てのエピソードの終わりに現れた訳ではなかった。ということで、Netflix は未だこの機能を Apple TV 上で完全には展開していないのかもしれない。

その動きは次のようである:一つのエピソードの終わりに達すると、Netflix は特別の Post-Play インターフェースへと切り替え、そこでは現在再生中のエピソードは左上へと縮小され、そして次のエピソードの説明が右側に現れる。デフォルトでは、17 秒後に次のエピソードの再生が始まるが、Play Next Episode を選択することですぐに再生を始めることも出来るし、或いは More Episodes でエピソードのリストに戻ることも出来る。また Apple リモートの Menu ボタンを押すことでも Post-Play から抜け出せる。

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二つのエピソードを自動的に再生した後、Netflix はまだ観ているかと尋ねてくるが、理にかなっていると言えるだろう。

Post-Play はいらないというのであれば、あなたの Netflix アカウントでそれをオフに出来る。Playback Settings スクリーンで、Play Next Episode Automatically の選択を外す。

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Apple TV を使いこなす更なるヒントが欲しければ、私の本 "Take Control of Apple TV" とその無料の付録アンチョコを見て欲しい。

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iTunes Pass: iTunes Store クレジットを Passbook 経由で買う

  文: Josh Centers: josh@tidbits.com, @jcenters
  訳: 亀岡孝仁<takkameoka@kif.biglobe.ne.jp>

前にも報告した様に、Apple は新しい iTunes Pass サービスを日本で試行している ("Apple Testing iTunes Pass in Japan" 15 July 2014 参照)。このサービスは iTunes Store クレジットを Passbook 経由で実店舗の Apple Store で購入させてくれるものだが、これが今度米国でも使える様になった。

このサービスを使えば、一つの iTunes アカウントに一定額を入金しておいて、それを使って iOS や Mac アプリ、iTunes 音楽やビデオ、そして本を iBooks Store から購入出来る。我々から見ると、iTunes Pass には二つの基本的な使い方あると思え、そのどちらもが、クレジットカードが関連づけられていない iTunes Store アカウントを中心に展開する。

iTunes Pass をあなたの Passbook アプリに追加するには、iTunes Store アプリを iPhone 又は iPod touch 上で開いて (これは iPad では働かない、というのもそこには Passbook アプリが無いから)、一番下までスクロールして行き、Apple ID ボタンをタップ、そして View Account をタップする。

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もし要求されたら、iTunes パスワードを入力、そして下方にスクロールし Add iTunes Pass to Passbook をタップする。それが追加されたことを確認する iTunes Pass が現れる。

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ここまで来たら、Apple Store を訪れた時、Passbook の中の iTunes Pass カードを開き、店の係員を呼んで自分のアカウントにクレジットを追加したいと言い、機器上のカードを見せる。きっと、そのクレジットの代金は現金かクレジットカードで支払い出来るであろう。

もし iTunes Pass を削除したければ、Passbook の中のカードを開き、カードの右下隅にある情報ボタンをタップ、そして右上にある Delete をタップする。

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Stand Up! あなたの命を救う休憩タイマー

  文: Josh Centers: josh@tidbits.com, @jcenters
  訳: 亀岡孝仁<takkameoka@kif.biglobe.ne.jp>

座ることで命が縮む。幾つもの研究が、 長時間座っていることが、癌、糖尿病、そして心臓病に関係しているとしており、虫歯や社会の道徳下落も間もなくこのリストに載ると思われる。不幸にして、座ることで生じた害は運動しても帳消しにはならない。

"信頼に足る新研究によると、現代の身体運動指針を満足するのは、結構長い間座ったままでも達成出来るが、座っていることで死や病気のリスクは高まり、それは運動をかなりやっても変わらない" と Travis Saunders は Runner's World に語っている。彼は、博士課程の学生で Children's Hospital of Eastern Ontario の Healthy Active Living and Obesity Research Group に所属する公認運動生理学者でもある。

座っている事の危険性に対する一般的な答えは、立ち机、或いはもっと進んでトレッドミル机であろうが、誰もが出来るわけではない。多くの人が事務所で働いているが、使用する事務机の選択に影響力を持てる人は殆どいない。健康上の理由から、一日中立っていられない人達だっている。他には、私自身も含まれるが、立っていると集中出来ないという人だっている。

幸いにして、研究によると 20-30 分毎に立ち上がりそして動き回ることで、座っている事から受けた損傷を相殺出来るという。タイマーを手動で設定して立ち上がる時間だと教えてくれる様にすることも可能だが、もっと簡単にそれを実現出来る無料の解を見つけた:Raised Square LLC からの Stand Up! アプリである。これは iPhone 上で走るので、家でも職場でも使える。

Stand Up は一つのことしかしないが、とても良くやる。アプリを開き、警告が欲しい曜日を選び、時間帯を設定、警告する間隔を設定、そして望むなら、警告するのはその場所限定という設定も出来るので、職場を離れた時は邪魔しないという様にも出来る。アプリ内購入で 99 セントを支払うと、警告音の選択が可能となるが、無料のデフォルト音でもちゃんと聞こえるし、耳に心地良い。

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デフォルトでは、このアプリは黄色を基調にしているが、望むならば、他の色も選べる。これがさほど重要と言うわけではない;Stand Up の自分用の設定を一度してしまえば、このアプリに時間をとられることはもう殆どない。設定が済めば、何分か毎に (デフォルトでは 45 分)、iPhone 上に立ち上がるように告げる通知を受ける。会議中や、突然立ち上がるのは失礼な状況下にある場合は、Stand Up に後で知らせるように言えるし、またきちんと応答した通知回数を常時示すグラフもある。簡単で効果的である。

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Stand Up は iPhone の加速度計を利用する事も可能と思え、通知を受ける前に自分の意思で立ち上がれば、自動的に通知を確認しタイマーをリセットすることも可能と思える。この辺りに関しては、将来のバージョンで何かしてくれるのではなかろうか。

私が Stand Up を使い始めて数週間になるが、私の背骨や臀部の痛みは和らいだような気がする。世の中にはリマインダーアプリは山程あるが、Stand Up は無料だし、良く出来ており、そして何処にでも連れて行ける。どれに加えて、あなたの寿命を延ばしてくれるかも。

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Overcast が iPhone ポッドキャスト体験に磨きをかける

  文: Josh Centers: josh@tidbits.com, @jcenters
  訳: Mark Nagata <nagata@kurims.kyoto-u.ac.jp>

Marco Arment はマイクロブロギングサービス Tumblr (現在は Yahoo が所有する) の開発を助け、その延長として「あとで読む」サービス Instapaper と隔週刊の電子出版 The Magazine を設立したかもしれないが、最近の数年間はポッドキャストで非常に有名になっている。まず、今は引退している Build and Analyze で Dan Benjamin とともにホストを務め、現在では Accidental Tech Podcast で John Siracusa と Casey Liss と共同でホストを務めている。

だから、彼のポッドキャストのファンたちは(かく言う私も含めて)Arment に独自のポッドキャスト用アプリを作って欲しいとさんざん言ってきたものだ。(私はポッドキャストクライアントに関しては少々うるさいことを自認している。2012 年 12 月 22 日の記事“Apple の Podcasts アプリに代わる五つの製品”と 2013 年 5 月 31 日の記事“Mac 版 Instacast デスクトップポッドキャッチャーの欠陥を埋める”を参照。)けれども私たちが知らなかったのは、Arment が既に、それも 2012 年 10 月以来ずっと、開発を進めていたことだった。Instapaper を Betaworks に(2013 年 4 月 25 日の記事“Betaworks が Instapaper を引き継ぐ”参照)The Magazine を私たちスタッフ仲間の Glenn Fleishman に(2013 年 5 月 29 日の記事“Glenn Fleishman が The Magazine を Marco Arment から買い取る”参照)それぞれ売却した後、Arment は十分な時間を開発に割けるようになり、2013 年 9 月の XOXO Festival において Overcast を発表した。現在、Overcast は iPhone 用に App Store で無料で入手でき、アプリ内購入で $4.99 を支払うオプションもある。

Overcast は史上最も大きな話題となったポッドキャストクライアントかもしれないが、Arment は別にポッドキャストの扱いに革命をもたらそうとしていた訳ではない。むしろ彼は、自分自身がポッドキャストを聴く際の必要を満たすために Overcast を作った。もしもこれがあなたの必要をも満たして働くのならば、それは何よりだ。Arment は、Overcast が万人向けのものでないかもしれないことを率直に認めているし、このアプリの設定の中で他のポッドキャストクライアントへのリンクを含めることさえしている。

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とは言うものの、Overcast にはポッドキャストを聴くことに関する数多くの歓迎すべき改良がもたらされているし、ユーザーインターフェイスは素敵にデザインされていて、視覚的にそれほど注意を必要とせず、手軽にコントロールできるように作られている。

サーバ側の同期 -- ポッドキャストクライアントは、その根幹は RSS クライアントだ。大多数のものは、購読された個々のフィードを、一度に一つずつ、あらかじめ設定された時間間隔をおいてチェックしている。

とても分かりやすいけれども、このやり方はひどく非効率的だ。クライアントは個々のポッドキャストごとに、新しいエピソードを得るために別々のサーバに接続しなければならないからだ。この不要な作業を減らすために、Overcast は Shifty Jelly の Pocket Casts から機能を一つ借用した。一つのサーバに依存して、そのサーバに新しいポッドキャストエピソードを集めキャッシュさせるようにしたのだ。(Arment は Overcast の開発に際して Shifty Jelly の Russell Ivanovic の助けを借りた。)

このやり方のため、あなたが Overcast を使う前にあらかじめ無料のアカウントを作成しておく必要があるが、結果として Overcast によるバッテリ消耗度が減り、他の多くのポッドキャストクライアントより早く新しいエピソードを受け取ることができるようになった。例えば、私のテストでは、Overcast はたいてい Instacast より 30 分も早く新しいポッドキャストを受け取った。

適切なプレイリスト -- ポッドキャストクライアントの機能の中で私がほとんど常に無視してしまうものの一つが、プレイリストだ。理論的には、プレイリストがあれば類似の話題に関するポッドキャストをグループ分けできて、車の中でいちいち iPhone をいじり回したりせずとも次から次へと関連あるエピソードを聴き続けられて便利だろう。けれども残念ながら、実際的にはプレイリストがインターフェイスの奥深くに埋もれてしまっていたり、管理するのが難し過ぎたりして使い物にならない。

Overcast には、初めて私が使ってみる気になったポッドキャストのプレイリストシステムが備わっている。アクセスしやすく、考え抜かれたオプションがあり、手でエピソードを再配置できる機能もあるからだ。

プレイリストは個々の購読項目と並んでメイン画面に現われるので、見つけやすく、作成や管理も簡単だ。

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新規のプレイリストを作成するには、画面の一番上の左から三つ目にある Add Playlist ボタンをタップする。プレイリストに名前を付けてから、どのポッドキャストを追加するか(あるいは省くか)を指定する。また他のエピソードも個々に含めたり除外したりできる。

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また、ポッドキャストの並び順を選んだり、ポッドキャストを選んで再生順序の中で優先的に扱うよう指定したりもできる。けれども Overcast がプレイリストを扱うやり方の中で私が最も気に入っているのは、一つのプレイリストが選択されている状態で、画面の右上にある編集をタップすればエピソードを好きな順序に再配置できるところだ。

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無料版の Overcast では、プレイリストが 1 個だけ、表示されるエピソードが最初の 5 個だけという制限がある。プレイリストの機能をフルに使うには $4.99 のアプリ内購入が必要となる。

もう一つ、ボーナス機能がある。プレイリストや購読項目がメイン画面を占めている間、現在どれが再生中かをどうやって分かるのだろうかと疑問に思うかもしれない。それを分かりやすくするために、Arment は現在再生中のプレイリストまたは番組のところに素敵な波形アニメーションを据えた。このアニメーションは再生画面にも表示される。番組アートの一番下のところだ。

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Smart Speed と Voice Boost -- 私が毎日の通勤に 100 マイルも移動するのを止めて自宅で TidBITS の仕事をするようになったことの、おそらく唯一の不都合な部分は、ポッドキャストを聴く時間が以前ほど多く取れなくなったことだろう。だからこそ、Overcast の Smart Speed 機能がありがたい。

Overcast は、他の多くのポッドキャストクライアントと同様、再生の速度を上げることができる。けれどもそのままでは、お気に入りのポッドキャストのホストの声がチップマンクスのリスの声みたいに聞こえてしまう。そこで、Overcast の Smart Speed 機能は、沈黙の時間を縮めることによってオーディオ品質に目立った違いが出ないまま再生時間を減らすことができる。

私は当初、そんなことをしても大して時間の節約にはならないだろうと思っていたが、やってみると驚くほどの違いが出た。この機能が働いていることが分かるように、Overcast は Settings メニューの中にどれだけの沈黙時間をスキップしたかを表示する。私はこの一週間ほどの間、そんなに多くの番組を聴いていなかったが、一時間ほども節約できたという。驚くべきことだ。

オーディオ品質を犠牲にすることなく少ない時間でより多くのポッドキャストを聴けるというのは、素晴らしい機能だ。でも、それと同じくらい素晴らしいのが、Overcast の Voice Boost オーディオ効果だ。これは、音声のみを際立たせるイコライザーだ。ごくちっぽけな iPhone のスピーカーで聴く場合、この効果はとてつもなく大きな違いを生む。

Smart Speed と Voice Boost は、いずれも $4.99 のアプリ内購入により使えるようになる。ただし、料金を払わずとも五分間だけ双方を試用できる。

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Twitter からの推薦の声 -- 右上隅の Add Podcast ボタンをタップすれば、今どきのポッドキャストアプリのどれにでもある標準的な検索可能ポッドキャストディレクトリが出て、Arment のお気に入りがいくつか呼び物として表示される。でも、もしもあなたの Twitter アカウントをリンクさせておけば、一番上のところに Recommendations from Twitter というカテゴリーが示され、あなたが Twitter でフォローしている人たちが tweet したエピソードや番組が並ぶ。

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これは、新たなポッドキャストを発見できる素晴らしい方法であるのみならず、素晴らしい個々のエピソードを発見できる方法ともなる。将来のアップデートで、ここに人の手が加わったプレイリストも含まれるようになればとも思う。例えば Beats Music のように、個人の寄稿者たちが推薦するエピソードを集めたものが出てくるようになれば嬉しい。

でも万人向けではない -- Overcast を気に入らない理由があるだろうか? ポッドキャストについては人それぞれに違った好みがあり、それだからこそこれほどたくさんのクライアントが App Store に並んでいるのだろう。私にとって残念なことに、Overcast には欠けている機能がいくつかあって、私が一番に選ぶクライアントの地位を Instacast から奪うことができないでいる。

Overcast は一切ストリーミングをしない。一つのエピソードは、最後までダウンロードし終えてからでなければ再生できない。Arment がその決断をした理由は理解できる。ストリーミングは気難しく、正しく処理するのが困難だからだ。外出中にポッドキャストを聴くことが多い人なら、ダウンロードによる方が適している。ストリーミングの場合、セルラー接続の接続性が悪い地域を通った場合に再生が止まってしまう(あるいは奇妙な挙動をする)ことがあるからだ。けれども私のように普段から家にいることが多い人には、ストリーミングの方が望ましい。聴きたいエピソードもそうでないエピソードも自動的にダウンロードしてしまってバンド幅やストレージ容量を無駄に使うことがなくなるからだ。

それで思い出すのが私のもう一つの不満だ。Overcast は、Instacast と違って、使用するストレージ容量を制限できない。Overcast は iPhone の空き容量が 200 MB を切れば警告を出してくれるが、iPhone が一杯になるまで勝手にポッドキャストのダウンロードを続けてしまう。ストレージ容量の管理のため、Overcast はごく少数の手段しか提供しない。番組の購読を止めるか、保存する番組の個数(デフォルトで 2 個)を変更するか、手でエピソードを削除するかだ。

ある意味で、Overcast は実際にその番組を聴くかどうかをあなた自身が選ぶよう強制する。私のように 40 個ものポッドキャストを購読してほんの少ししか聴かないという非効率なやり方は受け入れようとしない。将来のバージョンでは、少ししか聴いていないことに基づいて Overcast が番組を外すよう助言してくれるようになるのだろうか?

あともう一つ、私が Overcast で感じている問題点は、これがほぼ iPhone 用のみに作られていることだ。私は Mac でポッドキャストを聴く方が好きだ。それならばイヤフォンを使っていても他の通知やシステムサウンドを聞き逃すことがないからだ。また、Mac のアプリならばキーボードショートカットが提供されるので iPhone でよりも高速なやり取りができる。Arment は ごく粗削りのウェブアプリを出しているが、これは必要最小限の機能しか提供しない。iPad 用アプリは計画中の段階で、彼はいずれ将来は Mac 用アプリも作りたいと言っている。

Overcast は誰のためのもの? -- Overcast が私の用途に向いていないのはとても残念だ。これは見事にデザインされたポッドキャストクライアントで、考え抜かれた機能が数多く備わっているからだ。でも、自宅を出ることがほとんどないこの私が、普通のポッドキャストリスナーと違っていることは、私も十分に理解しているつもりだ。

たいていの人たちは、外出中にポッドキャストを聴く。通勤中や、犬の散歩をしながら、あるいはランニングをしながら、聴いている人が多いだろう。そういう人たちには、Overcast は素晴らしいクライアントだ。毎日運転しながらポッドキャストを聴いていた頃の私なら、Overcast のとても大きな再生ボタンを特に気に入ったことだろう。最小限のアイコンタクトでエピソードを再生したり再生の一時停止をしたりできて便利だからだ。Voice Boost 機能も、気分屋の Bluetooth FM 送信機の調子が悪くなった場合などに便利だったろう。

もしもあなたが現在たくさんあるポッドキャストクライアントに満足できないなら、ぜひ無料版の Overcast を入手して、あなたに向いているかどうか試してみて頂きたい。向いていないと思えば、Overcast 自身が推薦する他のポッドキャストクライアントのどれかを、いつでも試してみられる。リストされているのは、どれもなかなか良いものばかりだ。

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電子ブックの誕生

  文: Michael E. Cohen: mcohen@tidbits.com, @lymond
  訳: Mark Nagata <nagata@kurims.kyoto-u.ac.jp>

私たちはドアを見つけられないでいた。

それは 1990 年の晩春の、ある日のことだった。UCLA の Richard A. Lanham 教授と私は、太平洋に向いて立っている建物の、崩れ落ちそうなバルコニーと、錆び付いた手すりを見上げていた。私たちの足元には、砂が渦を巻いていた。「たぶんここだと思う」と言いながら、激しい波の音が遠くに聞こえるビーチ沿いの道から、激しい交通騒音が耳をつんざくばかりに響く Pacific Coast Highway へと続く、木陰の多い遊歩道を私は見下ろしていた。建物の側面の真ん中あたりに、どう見ても魅力的とは言えないドアを見つけた。私たちはそこで立ち止まった。私は肩をすくめ、ドアの横にあるブザーを押した。長い長い時間が経って、ドアは開いた。私たちは Voyager Company を見つけることができたのだ。

Voyager 社は、コンピュータとテキストに関する丸一日のミーティングに Lanham を招待し、Lanham は私に同行を頼んだのだった。当時 Lanham はまだ萌芽期にあったコンピュータとテキストという分野で既に有名人となっていた。その数年前、彼は UCLA の作文の授業を根本的に改革して、彼の作った新しいコース Writing Programs は大学生に対する作文教育にコンピュータテクノロジーを導入していた。(その通り、"Writing Programs" は複数形で、Lanham が設立した団体はいくつかの異なる作文プログラムを管理していた。)

私は彼のテクノロジー面での助言者として、公式には producer/director という奇妙な肩書きで任命されていた。彼が私を雇ったきっかけは私の作ったコンピュータプログラム Homer であった。私はまだ大学院生であった頃にその開発を始めたが、その後これは進化して Writing Programs の授業で使われるコンピュータツールの一つとなっていた。その当時には既に彼も私も Writing Programs からはほぼ手を引いていたが、私たちはまだ連絡を取り合っていたので、もう一度彼のテクノロジー助言者の役割を演ずることにも私は違和感を感じなかった。

さて、この Voyager 社はその Criterion Collection レーザーディスクで有名であったが、その頃に Beethoven の第九交響曲への画期的な CD-Companion をリリースして(当時はほんのちっぽけだった)デジタルメディアの世界に大反響を引き起こしていた。この Companion は UCLA 教授の Robert Winter が制作したもので、交響曲を録音したオーディオ CD に、HyperCard スタックが組み合わされていた。CD-ROM ドライブを備えた少数の Mac の上で走るようにデザインされ、この作曲家について、またこの作品について、あらゆる種類のインタラクティブな歴史的、音楽学的、および伝記的情報が提供された。さらには CD に録音されたものに同期して表示されるテキストの注釈まで含まれていた。

Voyager の社長 Bob Stein は、文学についてもこの CD-Companion に相当するものが作れないかどうかを研究するための助成金を得ていて、その助成金を使ってデジタルテキストの著名人たちを Voyager の Santa Monica ビーチ沿いのオフィスに招き、いろいろな可能性を探ってもらおうとしていた。Lanham と私は、中でも費用のかからない招待者に含まれていた。UCLA はそこから内陸へほんの数マイルほど進んだところにあるので、私たちの場合 Stein としてはただ駐車料金を負担し無料の昼食を食べさせるだけで十分だったからだ。

Lanham も私も、この Bloomsday ミーティングの内容の細かいことは覚えていない。彼の印象に一番残っているのは Voyager 社のスタッフたちの(彼の目には)風変わりな服装だ。私が覚えているのは壊れそうなオフィスの中を少なくとも一匹の犬が勝手に歩き回っていたことだ。私たちは歩く時には足元に気を付けるようにと言われた。また、長い時間かけてとりとめのない話をしたあげく、デジタルテキストの未来について二つのはっきりしたビジョンが浮かび上がったことも覚えている。一つのグループの人たちは、徹底したハイパーテキスト性と、長く待ち望まれた線形性の死こそが、テキストの未来だと宣言した。もう一つのグループの人たちは、デジタルテクノロジーのお陰で提供可能となったさまざまの装飾性により新しい命を得た Book Renewed (「新たなる本」) の中に未来を見据えていた。

Stein (と Lanham と私) は、Book Renewed の陣営の側にいた。私たちは皆、ただ単に普通の本をスクリーン上に持ち込んだだけでは見込みがないという点で意見が一致していた。デジタルテキストは 何らかの 意味でインタラクティブでなければならない、それは、当時の最高水準のデスクトップコンピュータのモニタでさえ、読書をする身体的体感が快適にはほど遠かったからだ。

ミーティングの終わりに、Stein は私に仕事を与えてくれた。私は彼が冗談を言っているのかと思った。けれどもその八ヵ月後、私は Jane Wheeler の面接を受けていた。彼女は Voyager 社でプログラマーたち、プロデューサーたち、アーティストたちの人事管理をしていた。

Stein は、デジタルテキストの固い殻を割るのに最適なのは Shakespeare の劇を CD-Companion 風に扱ってみることだと決断していた。そして、その中でも四大作品つまり Hamlet、Othello、King Lear、Macbeth のどれかなら最も盛大に殻が割れるだろうということになった。四つの中から、彼は Macbeth を選んだ。他にもいろいろと利点はあったが、四つのうちでこれが一番短かったからだ。(大多数の版で 2,100 行をほんの少し超える程度だ。それに比べて Hamlet はほぼその二倍ほどの行数がある。)私の仕事は、このデジタル本を制作することであった。

Expanded Books プロジェクト -- 最初の二ヵ月ほどの間、私は UCLA での非常勤の仕事を続けながら、Macbeth Companion のための大まかなアイデアを構想していた。夏までに、何度もスタートの失敗を繰り返した。そしてある日、Voyager に出社した私は、Apple が Voyager に貸し出したまだリリース前の PowerBook 100 のレビュー用ユニットを囲んで皆がいろいろ話しているところを目にした。この格好良い (たった 5.1 ポンドつまり 2.3 kg!)、パワフルな (何と 2 MB の RAM!)、ポータブルな Mac には、驚くべき広々としたスクリーン (640 × 400 ピクセル!) が搭載されていて、皆の手から手へと愛情を込めて渡されていた。

コンピュータサイエンスと映画、それに言語学の経歴を持つおしゃべりなオーストリア人の Florian Brody が小説 "The Sheltering Sky" の中から 2 ページをこの PowerBook に入れ、それを横向きに立てて、「どうだい、これなら本に見えるだろう!」と言い張った。まさにその時だ。まるで漫画の中のように、そこにいた人々の頭の上で電球がピカリと光って見えたのは。

それから数週間も経たないうちに、Macbeth Companion は棚上げにされ、みるみる形となって行く新しいブックプロジェクトのために私は Voyager でフルタイムで働くようになった。Wheeler のオフィスの前の廊下では毎日のようにミーティングが行なわれた。いや、それは数日間続くミーティングの一つだったかもしれない。そこを通りかかる者は誰でも、アーティストも、コード書きも、受付係さえも、そのミーティングに惹き寄せられた。

私たちは、どんな種類のデジタル本を作ることができるか、それをどんな見栄えにするか、どんな機能を付けるべきか、さらにはフォーマットの名前をどうするかまで、とことん細かく論じ合った。一般名称を "e-book" とすることは必然的だったが、その "e" が何の略であるべきかについて私たちは何日もかけて議論し、結局これは "expanded" の頭文字だとすることに落ち着いた。今日ある ebook (電子ブック) の標準機能の多く、例えば、ブックマーク、欄外注釈、ページゲージなどはすべて、この廊下で日の目を見た。

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私たちはこれらの本を Apple の HyperCardを基盤として築いた。Voyager の第一選択肢のプラットフォームが HyperCard だったからだ。話し方の穏やかな、小柄な英国人の Colin Holgate が、HyperCard に驚くべきことをさせる比類なき才能を持っていたので、本のシェル(すなわち空の HyperCard スタックでその中に本のコンテンツを「流し込む」ためのもの)のスクリプティングを引き受けた。Voyager の小規模なアート部門が、クリーンで本のように見えるページのデザインを提供した。私はテキストをレイアウトしたが、その際には本のテキストを連続したページの中へ「流し込む」ために Holgate が作ってくれたユーティリティスクリプトを利用した。スクリプトの数がどんどん増えて行ったので、私は本のシェルの中に隠れた Magic ボタンを作成して、それを押せばますます増え続ける Colin のスクリプトを(私自身が作ったスクリプトもいくつかあったが)リストしたメニューが表示され、いつでも必要に応じてスクリプトが呼び出せるようにした。(その後私が Macbeth に着手する余裕ができた時には、私は独自の、これよりはるかに複雑な Magic ボタンを組み込んだ。初期にリリースされた CD-ROM の中にきっとまだ残っているので、運が良ければ見つかるかもしれない。)

最初の三冊の Expanded Book はその年の秋、Voyager の二階の階段の吹き抜けの横にある小さなオフィスの中で生まれた。進行中の EB のコピーは(私たちは Expanded Book のことを EB と呼んでいた)いつも PowerBook にロードされ、Stein はそれを持って旅行に出るようになった。ある日、ビジネス旅行から戻った彼は、飛行中のジェット機のトイレの中で EB を読んだ史上初めての人物は私だと、いかにも気取った口調で私たち全員に告げた。

1992 年の 1 月に San Francisco Macworld Expo が巡って来た頃までには、最初の三冊の EB はすっかり準備万端となっていた。それらはフロッピーディスクに収められ、Voyager のアーティストたちがデザインしたとても素晴らしいペーパーバック風のパッケージの中に入れられた。Stein はショウが開幕する二日前になってもまだ EB のインターフェイスに大幅な変更を施したがったので、まさにギリギリではあったが、私たちはショウに間に合った。ショウが終われば、私は Macbeth の仕事に戻ることができる。

ツールキットその他気を散らすもの -- EB は Macworld で大ヒットした。私は Voyager のブースに何時間もいて、何百人もの人の目の前で実演をした。その中にはとても背の高い、とても温和な感じの、豊かな BBC 風のアクセントで話す人物もいたが、それが Douglas Adams だと分かった。彼のシリーズ小説 "Hitchhiker's Guide to the Galaxy" も、その EB に掲載されていた。私が Macbeth に取り掛かっていることを話すと、彼はその次には Chaucer の作品のどれかを取り上げることを薦め、彼の友人 Terry Jones が書いた "The Knyghtes Tale" を扱った本を紹介してくれた。(そう、あの 有名な Terry Jones だ。本のタイトルは "Chaucer's Knight: The Portrait of a Medieval Mercenary"、これは読みやすいと同時に学術的でもあり、強くお薦めしたい。)

でも、Expo が終わってもまだ本格的に Macbeth の仕事に戻ることはできなかった。Stein は Voyager 社が EB 用のツールキットを制作して他の出版者たちがそのフォーマットを採用できるようにすると発表していて、ほぼ即座にそのプロジェクトの開発を始めると述べていた。Voyager のプログラマー Brock LaPorte と Steve Riggins がその Toolkit 用の外部 C ルーチンを書く役割を任された。Holgate の巧妙なスクリプトと、私の Magic ボタンがあってさえも HyperCard のみではやり遂げられないさまざまの機能を提供するために外部 C ルーチンが必要となったのだ。

私は、Toolkit のマニュアルと、本をビルドするためのチュートリアルを書いた。その中で私が受動攻撃的気分で選んだサンプルテキストは、"Moby-Dick" (邦題「白鯨」) の Chapter 94、あの "sperm-squeezing" (邦訳題「手をにぎろう」) の章だった。これを見て Stein は大いにおもしろがり、他のほとんどの Voyager 社員たちは困惑した。

それと同時に、私は Adams が絶滅危惧種の動物たちについて書いた本 "Last Chance to See" の CD-ROM 版後編集の作業を任された。そんな訳で Macbeth はその年の春と夏の間ずっと放置され、Birnam Wood (バーナムの森) の中をさまよい続けた。

Highlands に戻って -- [訳者注: Highlands とはマクベスの舞台、スコットランド高地のこと。]私たちは Expanded Book Toolkit をその年の 8 月の Boston Macworld Expo に間に合うように完成させた。そしてついに、私はこのスコットランド人たちの劇に戻ることができた。それまでに、私は Macbeth は CD-Companion にするには向かず、それよりも次世代の Expanded Book にする方が良いと心を決めていた。(実際、Macbeth を完成させつつあった頃でさえ、私は同時にその HyperCard シェルを他のプロジェクトでも使えるように書き換える作業を進めていた。その成果の一つが映画 "Salt of the Earth" の Voyager CD-ROM 版だった。)

Voyager はようやく、このプロジェクトに追加の人材を割り当ててくれた。中でも大きかったのが Brian Speight で、Voyager のグラフィックアーティストであった彼は、このプログラム用に素晴らしくエレガントなケルト風の織り模様のページ背景を作ってくれたばかりでなく、Shakespeare のロンドン地図と、Macbeth のスコットランド地図も描いてくれた。

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Stein はこのとき既に数名の UCLA 教授たちにテキストを執筆してもらう契約を結んでいた。大学の Shakespeare の授業で非常に人気のあった David Rodes 教授は、プレゼンターとしても活力あふれる人物だが、プロの俳優たちを教室に招いて劇のシーンを上演してもらうことでも有名で、俳優たちの何人かは彼の友人でもあった。Rodes は Macbeth についてもっと学術的な深みがそこに伴っていることを望み、やはり有名な教師であり、Macbeth の新 Cambridge 版の編集も担当した Al Braunmuller を推薦した。Braunmuller はこのプロジェクトのためにオリジナルのエッセーを執筆することを引き受け、劇の正式なテキストを提供することにも同意した。

Rodes と Braunmuller と私がディスク用の目次について意見の一致をみると、Braunmuller は劇のテキストとエッセーの提供に取り掛かり、Rodes は序文と、それぞれの幕と場ごとの冒頭の注釈を書き、また私たちは含める予定の画像ギャラリーのために著作権者の同意を取る作業も始めた。

テキストと同期して含めるべき劇の上演映像を、私たちはまだ決めていなかった。私は見つかる限りのビデオ映像をすべて見て確かめた。 最も笑ってしまうほど風変わりだったのは、他では演技に定評のある俳優 Jeremy Brett のものだったが、結局は Rode が最初に選んだ Royal Shakespeare Company の上演、Trevor Nunn 監督、Ian McKellen と Judi Dench 出演のものに決めた。

Voyager のビデオ専門家たちは、私たちが入手したマスタービデオテープを非常に小さいけれども見やすい解像度 160 × 120 の QuickTime ビデオにデジタル化する作業を始めた。それ以上解像度を大きくすると CD-ROM に保存できる以上の容量を占めてしまうからだ。彼らはまた、三つの映画化版からデジタル化したシーンの画像を取り込んでメイン上演を補足させた。Roman Polanski 版の映画と、 Orson Welles 版の映画、それに Akira Kurosawa の "Throne of Blood" (「蜘蛛巣城」) だ。

私たちの計画には "Macbeth Karaoke" ゲームを作ることも含まれていた。読者が自分でプロの俳優たちを相手にいくつかのシーンを演じることができるというものだ。私たちは West Los Angeles の丘を登ったところにある Rodes の自宅で、それらのカラオケ・オーディオトラックを録音した。Rodes の書斎にある長椅子に私が腰掛けて、ひざの上にデジタルオーディオ録音機を置き、Rodes の友人の俳優二人がそれぞれ Macbeth と Macbeth 夫人の役でいくつかのシーンを演じたが、上空を飛行機が通り過ぎる度に録音を一時中断しなければならなかった。

冬が終わるまでに、Macbeth の三つのシーンが完成し、それぞれ二つのレベルの注釈も付き、十分な量の題材も付属させられたので、Voyager が定期的に開いていたオープンハウスの夜会でお披露目できることとなった。その夜のゲストはサイケデリック体験の伝道師 Timothy Leary だった。彼は、何度も繰り返して私たちは以前会ったことがあると言い張った。(いや、会ったことはなかった - 少なくとも この 星の地表の上では。)

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その年の夏に再び Boston での Macworld Expo が巡って来ると、私は究極の実演をした。Expo キーノートに使われる巨大なテントのステージの上で、何千人もの人々を前に、Macbeth Karaoke を実演してみせたのだ。評判はかなり良かった。でも、Broadway からも、Hollywood からも、誰かが来て私の家のドアをノックすることはなかった。

人生は歩く影 -- 俳優たちに言わせれば、Macbeth は悪運を伴った劇なのだそうだ。その名前を口にすることさえ、命懸けですべきことなのだという。

私たちは既に、この呪いに襲われた経験があった。David Rodes がこの劇のために書いた序文の中で、彼は映画 "Ghost" (邦題「ゴースト/ニューヨークの幻」) の主人公が Macbeth を観劇しての帰り道に暴漢に殺されたことに触れている。私たちは、序文のその部分にその映画が新聞に載せた広告の写真を添えれば良い説明になると思ったのだが、写真の権利を獲得するためのコストが私たちにはあまりにも高過ぎた。

でも、呪いがフルに動き出すのはまだその後だった。

まず第一に、Macworld Expo 終了後の晩餐会で、Stein は晩餐後のスピーチで陰鬱な、不吉な言葉だらけの話を語って全員のお祝いムードを台無しにした。私たちの Expo 出展は成功裏に終わったけれど、Voyager 社は苦境を迎えていて、それを切り抜けるために私たち全員が以前よりずっと一生懸命に働かざるを得なくなった。その数週間後、Santa Monica のオフィスが閉鎖されて会社が年末までに New York 市に移転することを私たちは知らされた。表向きは、出版業界の中心に近い場所に移るためとのことだった。

私は思い切って New York に引っ越すようにとの誘いを受けたが、家族も友人も全員が南カリフォルニアにいるので、私は Santa Monica に留まって、自宅のアパートから Voyager 社と遠隔通信しながら CD-ROM を完成させる道を選んだ。1994 年 2 月には Northridge 地震に襲われ、Voyager の古いビーチ沿いの建物は破壊され、私の自宅の仕事部屋もかなりひどく壊れた。仕事が再開できるようになるまでに、ほぼ丸一週間かかった。

けれども最も大きな痛手は、Stein からの連絡で Royal Shakespeare Company との権利交渉が暗礁に乗り上げたと知ったことだった。彼らは、もっと大きな画面にしなければビデオ使用の承諾が出せないのだという。けれども当時の技術ではそれ以上大きな画面にするのは不可能だった。けれどもその代替策として、RSC は私たちに上演のオーディオを使用する権利を認めてくれた。そこで私はテキストを同期させるコードを書き直して、オーディオのみのトラックに対応できるようにした。映像も含めたビデオを収めるためにあまりにも多くの題材を CD-ROM から除外しなければならなかったことを考えれば、制作の最後の最後の段階でこんな風になるとは、胸張り裂けるような思いがした。

それとほぼ同時期に、Stein は私に、今後の Voyager プロジェクトに寄与するにはぜひとも New York に引っ越して来て欲しいと言ってきた。たった一人の従業員のために、西海岸に遠隔オフィスを維持するのは無理だというのだ。

それでふんぎりがついた。Santa Monica での最初のミーティングの四周年の記念日にあとたった二週間しかなく、CD-ROM もあとは最終の品質チェックだけを残して完成しているという状態で、私は Stein に電子メールで辞職願いを書き送った。

今回は、ドアを見つけるのは簡単だった。

(この記事はもともと The Magazine の第 32 号 (2013 年 12 月 19 日) に少しだけ違う形で載ったものだが、許可を得てここに掲載した。)

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FunBITS: The Rhythm of Fighters がビートを打ち負かす

  文: Josh Centers: josh@tidbits.com, @jcenters
  訳: Mark Nagata <nagata@kurims.kyoto-u.ac.jp>

伝統的なジャンルのゲームをタッチスクリーン用に作り直すという難問については以前にも詳しく書いた。(2014 年 6 月 27 日の記事“FunBITS: Leo's Fortune がプラットフォームをタッチで完璧に”参照。)おそらくタッチの時代に適合させるのが最も難しいジャンルは格闘ゲームではなかろうか。つまり、二人のキャラクターがスクリーン上で対決し、ジャンプして回ったり、パンチやキック、その他の攻撃を繰り出して戦う種類のゲームだ。

もちろんそのような試みはあった。Capcom は Street Fighter IV を iPhone 用に作って、オンスクリーンのコントロールで遊べるようにしたが、その結果は滑稽とも言える程度のひどいものだった。格闘ゲームは表面上は単純に見えるけれども、極めるのはおそらく最も難しいジャンルのゲームだろう。ボタンを散々乱打して滅茶苦茶にプレイするなら誰でもできるけれども、特殊な動き、合わせ技、カウンター攻撃など高度な戦法には、極めて精密な正確さが必要となり、たとえゲームパッドを使ったとしてもまだ足りない。熱心な人たちは、わざわざ専用のアーケードゲームクラスの戦闘スティックを買い込んで、必要な正確さをやっと手に入れるほどだ。

けれども、格闘ゲームシリーズ The King of Fighters の開発者 SNK Playmore 社にいる誰かが、突拍子もないアイデアを思い付いた。The King of Fighters タイプの格闘ゲームを、Dance Dance Revolution や Rock Band のようなリズムゲームと組み合わせたらどうだろうか、というのだ。その結果生まれたのが iPhone 用ゲーム The Rhythm of Fighters (42.7 MB、iOS 7) で、App Store で $0.99 で販売されている。ゲームの動作のしかたを説明したビデオもある。

具体的に言えば、The Rhythm of Fighters は格闘ゲームをかの Nintendo DS の古典的ゲーム Elite Beat Agents に組み合わせている。あのゲームをプレイしたことがある人ならば、The Rhythm of Fighters のゲームプレイそのものは事実上同一であることに気付かれるだろう。 Elite Beat Agents のゲームプレイを示したビデオと比べれば、両者がどれほど似ているか分かる。

ゲームに 50 個あるステージの一つ一つが、伝統的な格闘ゲームのように作られている。あなたのキャラクターは競技場の中で一人の相手と戦って、打撃を与えて相手の健康度を下げることを目指す。けれども、攻撃を実行するにはボタンを乱打するのでなく、バックグラウンドに流れる音楽のビートに合わせて Note と呼ばれる円がスクリーン上に出るのでそれをタップするのだ。

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Note にはいくつかの種類があってそれぞれ異なる動作が要求され、その結果異なる格闘動作が生まれる。Tap Note はただスクリーンをタップするだけだが、重要なのはタイミングだ。Tap Note の外側に輪郭線が現われて、それが次第に縮んで行く。スクリーンをタップすべき正しいタイミングはその輪郭線が Tap Note の縁に届く瞬間だ。また、Flick Note というものもある。これは Tap Note に似ているが、タップする代わりに指示された方向にフリックしなければならない。そしてマスターすべき最も重要なものが、Long Note だ。これは、スクリーン上の経路に沿って動く。これはまず正しいタイミングで押さえてから、Long Note が目的地に届いた瞬間に指を放さなければならない。長い動きの Long Note を完璧にこなせば、破壊的な合わせ技が相手に向けて放たれる。Long Note の中には終わりが Flick Note になっているものもあるので、それにも注意しなければならない。

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けれども、実際には相手をノックアウトすることが The Rhythm of Fighters の目的ではない。そうではなくて、流れている音楽が終わるまであなたが相手にノックアウトされずに生き残ることが目的だ。相手への攻撃を成功させれば相手があなたを攻撃できなくなるが、Note を外せば相手の攻撃に対して完全に無防備になる。

私が出くわした最も大きな問題点は、時々私のタップが無視されて、Note を外したと解釈されてしまい、受けるべきでない罰を私のキャラクターが受けてしまうことだ。このイライラするバグは、将来のアップデートで解消して欲しいものだ。

The King of Fighters のファンならばこのゲームにワクワクするのかもしれないが、私の感覚では格闘ゲームの側面は邪魔物にしか思えない。なぜなら、格闘はゲームプレイとほとんど無関係だからだ。構想としては面白いが、もっとずっと良いものにできたはずだ。例えば、格闘ゲームには二人での対戦が必須だが、The Rhythm of Fighters にはマルチプレイヤーのオプションが一切提供されない。そういうものがあればユニークなゲームとなっただろうに。

しかしながら、The Rhythm of Fighters は深みを加えるための独特の側面をいくつか用意している。まず、レベル付けシステムがあり、ステージをプレイするごとにあなたのキャラクターがよりパワフルになる。ステージをクリアすれば、サポートキャラクターのロックが外され、それぞれが再生能力を与えたり敵へのダメージを増したりすることであなたのキャラクターを強化する。

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ゲームをプレイすることでいろいろなもののロックが外れるだけでなく、The Rhythm of Fighters ではアプリ内購入によって追加コンテンツやサポートキャラクター、プレイ可能キャラクターなどが購入できる。音楽の四曲パックの価格が $2.99、サポートキャラクター三人パックの価格が $0.99、新しいプレイ可能キャラクターの価格が $2.99 だ。

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The Rhythm of Fighters は、実験としては興味深い。(イライラするバグはあるけれど)それ自体が楽しいリズムゲームであり、The King of Fighters シリーズが大好きな人ならばぜひとも持っていたいゲームだろう。けれども、格闘ゲームとのハイブリッドとしてどうかと考えれば、単なる Elite Beat Agents のコピー製品というだけでは何とも物足りない気がする。そうは言っても、たった 99 セントで買える楽しい気晴らしであることは間違いない。

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TidBITS 監視リスト: 注目のアップデート、2014 年 7 月 21 日

  文: TidBITS Staff: editors@tidbits.com
  訳: Mark Nagata <nagata@kurims.kyoto-u.ac.jp>

DEVONagent Lite、Express および Pro 3.8.1 -- DEVONtechnologies が、同社のリサーチ用ソフトウェア DEVONagent の三つの版すべて (Lite、Express および Pro) をバージョン 3.8.1 にアップデートした。Pro 版および Express 版では、HTML ページの照合で Open Graph に対応するようになり、クロールの最中に Amazon 検索結果をスキップできるようになり、Twitter Accounts スキャナの信頼性を改善し、DEVONthink 2.7.6 との非互換性により遅延が起きていたのを修正し、バックグラウンドタスクの処理を改良している。Pro 版ではまた多数のスクリプトをバックグラウンドで実行できるようになり、ドイツ語ローカライズ版を追加し、アドレスバーが正しく更新されるようにし、isPermaLink=false を使った RSS フィードへの対応を修正している。さらに、三つの版のいずれも MacUpdate プラグインをアップデートしている。(いずれも無料アップデート。DEVONagent Lite は無料、リリースノート。DEVONagent Express は新規購入 $4.95、 リリースノート。DEVONagent Pro は新規購入 $49.95、TidBITS 会員には 25 パーセント割引、 TidBITS 会員, リリースノート。10.6.8+)

DEVONagent Lite、Express および Pro 3.8.1 へのコメントリンク:

Typinator 6.1 -- バージョン 6.0 へのジャンプ(2014 年 6 月 17 日の記事“Typinator 6.0”参照)に続いて、Ergonis が Typinator 6.1 をリリースし、このテキスト展開ツールに数多くの機能強化を盛り込んだ。今回のアップデートでは一時的に Typinator を停止させて次の展開をさせないようにするマーカーと、現在の置き換えをしないようにする(他のルールの例外を定義するために使う)マーカーを新設した。また、自動的に文頭を大文字にするルールへの例外を定義する新たなセット、テキスト行を並べ替える(例えばクリップボード内容に含まれる行を並べ替えるために使う)関数、それから展開の最中に遅延を挿入できるオプションが追加された。さらに、Typinator 6.1 では内部のみで使われるマーク文字に一部の正規表現がマッチしてしまっていた問題、セットオプションが複数回編集された際のメモリリーク、また場合によって自動文頭大文字化機能が働かなかった問題が修正された。(新規購入 24.99 ユーロ、TidBITS 会員には 25 パーセント割引、7.2 MB、 リリースノート、10.5.8+)

Typinator 6.1 へのコメントリンク:

PDFpen と PDFpenPro 6.3.1 -- Smile が PDFpenPDFpenPro のバージョン 6.3.1 をリリースした。同社の汎用 PDF 編集アプリへの小さなメンテナンスリリースで、イライラさせられたいくつかのバグを修正している。今回のアップデートでは OS X 10.9 Mavericks のバグによって起こっていたパフォーマンスの問題を回避し、スキャナーをホット接続した際に起こったクラッシュを修正し、ウィンドウをスキャンする際に起こる可能性のあったクラッシュを避け、OS X Yosemite の開発者向けプレビュー版を走らせている場合の編集バーの見栄えを改良している。(新規購入 $59.95/$99.95、 TidBITS 会員には 20 パーセント割引、無料アップデート、52.0/52.8 MB、リリースノート、10.7+)

PDFpen と PDFpenPro 6.3.1 へのコメントリンク:

Voila 3.8 -- Global Delight が Voila 3.8 をリリースし、このスクリーンキャプチャ用ユーティリティにいくつかの新機能を追加した。今回のアップデートでは、キャプチャの際に境界線を正確に描けるようにするための拡大器を追加し、キャプチャしたものを直接 Google Drive へアップロードする機能に対応し、Retina ディスプレイ上で録画したビデオをスケールダウンする機能を追加し、ビデオプレイヤーストリップの中にオプションを置くことにより手軽にビデオの切り取り機能にアクセスできるようにしている。期間限定で、Voila の価格は定価の $29.99 の 50 パーセント割引で $14.99 となっている。(Global Delight または Mac App Store から新規購入 $29.99、Global Delight からならば TidBITS 会員に 25 パーセント割引、無料アップデート、23.5 MB、10.8+)

Voila 3.8 へのコメントリンク:


ExtraBITS、2014 年 7 月 21 日

  文: TidBITS Staff: editors@tidbits.com
  訳: Mark Nagata <nagata@kurims.kyoto-u.ac.jp>

編集主幹 Josh Centers が The Tech Night Owl ポッドキャストで Gene Steinberg と対談し、Gmail と Apple TV について議論した。Apple は指紋スキャナ Touch ID の商標権を認められず、Greenpeace が Apple をテクノロジー界の最もグリーンな会社と宣言した。

Josh Centers、The Tech Night Owl で Gmail と Apple TV を議論 -- TidBITS 編集主幹の Josh Centers が The Tech Night Owl でホストの Gene Steinberg と対談し、自分がなぜ Gmail を使っているかについて、また Apple が Apple TV を競争力ある製品にし続けなければならない理由について語った。

コメントリンク: 14929

Apple、Touch ID の商標権を拒否される -- U.S. Patent and Trademark Office (米国特許商標局) が Apple による Touch ID 商標権の申請を却下した。これは iPhone 5s に内蔵されている指紋検出テクノロジーの名前だ。どうやら、Touch ID という名前が既存の商標名 Kronos Touch ID と似過ぎているというのが理由のようで、特許商標局は顧客の混乱を招くおそれがあると判断したらしい。Apple には商標名を変更するか、または Kronos と取引をするための六ヵ月間の猶予が与えられている。Kronos は労務管理が専門の会社で、生体認証機能 Touch ID ターミナルを使って従業員の勤務時間追跡やカジノへのアクセスなどを管理している。

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Apple、テクノロジー界で最もグリーンな会社と宣告される -- Apple はメジャーなテクノロジー会社の中で最もグリーンである、と Greenpeace の新しい報告書が記している。この団体の作った Clean Energy Index はクリーンエネルギーの使用度と、天然ガス、石炭、原子力などその他のエネルギー源の使用度によって会社をランク付けしたものだが、その中で Apple には 100 パーセントというスコアが与えられた。それに比べて、Facebook は 49 パーセント、Google は 48 パーセント、Amazon Web Services は何とたったの 15 パーセントであった。

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TidBITS ISSN 1090-7017©Copyright 2014 TidBITS: 再使用はCreative Commons ライセンスによります。

Valid XHTML 1.0! , Let iCab smile , Another HTML-lint gateway 日本語版最終更新:2014年 7月 25日 金曜日, S. HOSOKAWA