WWDC がほんの数週間先に迫っているが、Apple はそのすべてのオペレーティングシステムにアップデートをリリースして、主として新しい Apple TV アプリを世に送り出し、AirPlay 2 対応スマートテレビへの対応を組み込んだ。今週号ではまた、iOS 11 でデビューした Do Not Disturb While Driving (運転中の通知を停止) 機能が実際に人の命を救っているのかどうかを問いつつ、Adam Engst が統計数字に切り込む。Amazon Echo と Google Home スマートスピーカーを混ぜて使っている Josh Centers は、最近になって Spotify から Apple Music に切り替えた。Spotify の住所登録に関する要求が、あまりにもユーザーに非友好的だからだ。それから、RSS リーダーを使ってニュースを読んでいる人のために、Julio Ojeda-Zapata が新しい Reeder 4 (Mac 用、iOS 用) をレビューする。今週注目すべき Mac アプリのリリースは、ScreenFlow 8.2.3、Piezo 1.6.0、Tinderbox 8.0.1、それに Little Snitch 4.3.2 だ。
ここでの主たる呼び物は iOS 12.3 と tvOS 12.3 に加わった新しい Apple TV アプリで、これが従来の TV アプリを置き換える。年内にこのアプリは Apple の新しい Apple TV+ サービスにも対応するが、現時点でのその主たる新機能はチャンネルへの対応だ。これにより、HBO や Showtime などのケーブルサービスを購読できる。Apple TV アプリを通じてサインアップすることの利点は、その購読をあなたの Family Sharing で共有でき、コンテンツをダウンロードしてオフラインでも視聴できることだ。Apple は、グランド・フィナーレに近付こうとしている HBO の人気ドラマ Game of Thrones を HBO 購読者が合法的にダウンロードできる場所は Apple TV アプリだけだと宣伝するのを忘れなかった。(米国以外の視聴者には他の選択肢がある。)
そして Game of Thrones の脚本家 David Benioff と D. B. Weiss さえも思い付けないほど衝撃的な一捻りとして、Apple は第三世代 Apple TV をアップデートして、そこにも新しい Apple TV アプリを据えた。つまり、長年にわたっていったいいつになったら Apple は 2012 年から 2015 年まで販売した第三世代 Apple TV をアップデートしてくれるのかと言い続けてきた読者諸氏にとって、おめでとう、皆さんの忠誠が報いられたのだ! (このアップデートには 3 件のセキュリティ修正も含まれている。)
Samsung TV での AirPlay 2 対応以外にも、iOS 12.3 では Siri Suggestions からコンテンツを AirPlay できるようになった。(ただし私たちはまだ映画やテレビ番組のための Siri Suggestion を見たことがない。) 加えて、リリースノートには「ワンタップで再生すると最後に再生したテレビ番組や映画が時間と場所に応じて自動的に再生」と書いてある。それがどんな風に動作するのか、私たちにはよく分からない。
iOS 12.3 にはサービス関係の改善点が2つある。Apple News+ の雑誌をカタログブラウズ表示からフォローできるようになったことと、Apple Music の For You タブが1日に複数回更新されるようになったことだ。この後者の改善点で、記事“Apple Music を Apple が改善できる四つの方法”(2019 年 3 月 11 日) で私たちが提案した点に応えている訳ではないが、For You の提案がこれまでより役に立つものになるはずだ。
iOS 12.3 ではいくつかのバグも修正された:
Apple TV Remote でビデオの一時停止、ビデオのコントロール、対応レシーバーでの音量調節ができなくなる問題
Wi-Fi 通話を使った通話が切れてしまう問題
接続されている iPhone からの曲情報が車載ディスプレイに表示されない問題
iOS 12.3 は 23 件のセキュリティ修正も提供する。アップデートのサイズは iPhone X で 464.3 MB、10.5 インチ iPad Pro 上で 394 MB、入手は Settings > General > Software Update から、または iTunes 経由でもインストールできる。
今、The Omni Group は喜びに溢れている。macOS 10.14.5 では、特定の非常に大きな OmniOutliner および OmniPlan の書類が適切にレンダリングされないバグが修正された。この種のことが開発者たちをとことん苦しめるのは、自力で多大な時間を費やしてバグの回避策を編み出すか、それとも Apple が修正してくれるまで待つか、どちらかしか方法がないからだ。
Apple はまだ tvOS リリースノートを更新していないが、ここでの大きな変更点は新しい Apple TV アプリだ。また、16 件のセキュリティ修正も含まれている。自動アップデートがオンになっていない場合は、第四世代 Apple TV または Apple TV 4K については Settings > System > Software Updates に行ってインストールできる。第三世代 Apple TV には Settings > General > Software Updates へ行けばよい。
私が心の底から思うに、これは音楽業界を幸せにする一つの仕組みなのであろうが、ユーザーに非友好的であり、そして世帯の間で家族プランを共有するのを防ぐには何の役にも立たない。良い面を上げれば、それは前に考えられたものよりは良いかもしれないことである - Spotify は家族アカウントに厚かましくも GPS 認証を検討していたが、反感に直面することとなった。Apple はレコードレーベルとの交渉でより強い交渉力を持っていたに違いない。何故ならば、場所は Apple Music にとっては問題ではないからである。加えて、Apple Music は今や Alexa でも働く ("Apple Music が Alexa に登場" 17 December 2018 参照)。
もし Spotify を使いたいと思い、かつ家族プランにも是非入りたいというのであれば、何処かで入力する住所を正確に書き留めておくことを強くお勧めする。さもなくば、私がしたのと同じことをして Apple Music に乗換えることも出来る。私はこの様な馬鹿馬鹿しいゲームをするのは断固として拒否する。
不注意運転は致命的な結果となり得る。そして、その最も現代的な形は携帯電話で注意を逸らされることである。入信する Messages 通知や他のデジタル雑音に抗しきれない人のために、Apple は Do Not Disturb While Driving (運転中の通知を停止) 機能を iOS 11 に付け加えた ("iOS 11 で Do Not Disturb While Driving 登場" 21 August 2017 参照)。当時、我々は次の様に書いた:
多くの Apple ユーザーたちにとって、ニュースリーダーの代表格といえば Reeder だ。iOS 用と macOS 用の双方があり、Reeder はエレガントで楽しい体験を通じてニュースを読めるようにする。けれどもバージョン 3 は年月を感じさせるところがだんだん目立ってきていて、例えば最新の iPad Pro モデルのネイティブなスクリーン解像度に対応できないなどの問題があった。
幸いにも、開発者の Silvio Rizzi はつい最近になって Reeder 4 をリリースしてくれた。App Store と Mac App Store で、それぞれ $4.99 と $9.99 で入手できる。ただし、Apple の App Store で販売されている多くのアプリと違ってアップグレード割引はない。iOS 版と Mac 版は見栄えも機能もほとんど同一だが、それは偶然でも何でもなくて、ビルドし直されたこれらのアプリは今回同じコードベースを共有して使うようになっているので、これからはアップデートが楽になりもっと頻繁に出るようになることを願いたい。
Warren Buffett の会社 Berkshire Hathaway は Apple の最大の投資家の一つだが、Apple はその恩に報いるためだろうか、彼を称えてゲームを作った。その名も Warren Buffet’s Paper Wizard だ。これは 2008 年に出てその後長らく使われていない Texas Hold'em 以後に Apple が出した最初のゲームだ。MacRumors 記事によれば、Apple がこのゲームをリリースしたのは Berkshire Hathaway 株主総会の壇上での冗談の一部としてであって、Apple CEO の Tim Cook がサプライズ登場してのことだったという。Buffett がその職歴を新聞配達少年として始めたことは有名で、Berkshire Hathaway では新聞投げコンテストさえ長年開催している。
Warren Buffett's Paper Wizard のプレイは Atari が 1985 年に出したアーケードゲーム Paperboy の 3D 版と思えばよいだろう。動きは自動的に起こる。スクリーンの一番下に新聞が見え、それを指で弾いて家やビルの方へ飛ばし、鳥や自動車にぶつからずに的に命中させることを目指す。このゲームには Apple の新しい「宇宙船」風の本社さえ登場する。
近年 Apple Store が下降気味だと感じている Apple ユーザーは多い。従業員はかつてほどには知識豊富でなく、顧客を無視して店内を歩き回っているだけだ。Angela Ahrendts が Apple リテール部門の責任者から退任することを Apple が発表した際に読者から寄せられたアンケートにも、それを指摘する声があった。(2019 年 2 月 13 日の記事“Ahrendts 時代の Apple Store に対する TidBITS 読者の考え”参照。)
Bloomberg の Mark Gurman と Matthew Townsend が、Apple Store のリテール事業の現状について、現在および過去の従業員たちと語り合いつつ批判的な検討をした。その従業員たちも匿名で同様の気持ちを述べた。要点を言えば、今はブランド戦略こそが店舗の要点であり、顧客の役に立つことは最重要課題でなくなった。Apple Store の規模が拡大するのに伴い、従業員たちの質も落ちた。Ahrendts が Genius Bar を廃止してオンライン購入を促進したことで、店舗内の体験はさらにフラストレーションの溜まるものとなった。彼女は店内に客が行列を作ることはなくしたけれども、その代わりに人々の不満が殺到するようになった。Apple が新しくリテール主任にした Deirdre O'Brien は、Genius Bar を復活させ店舗を元来設計された通りに分割化するために力を尽くすだろうと広く予想されている。
Apple Store を取り巻く数々の問題点を Ahrendts のせいにすることは簡単だけれども、Apple Store を構想した Ron Johnson が Apple を去って JCPenney に移った際に、Tim Cook は後任に John Browett を指名するという誤りを犯した。Browett はたった 10ヶ月間しかその任に留まらず、その辞任後 2 年近くもその地位は空席のまま、それは Ahrendts が招かれるまで続いた。彼女が雇用されたのはちょうど Apple が自らをファッション会社として確立しようと努めていた時期に当たり、それまで高級ファッションブランド Burberry で経験を積んでいた Ahrendts が適任だと考えられたのであった。ここでの救いは O'Brien が Apple Store の初期の成功の時期に舞台裏で重要な役割を果たしたと伝えられていることで、部内の関係者たちは彼女の新しい役割に楽観的な気持ちでいるという。
[2018 年 10 月に、Bloomberg は "The Big Hack" と題した記事を発表して、中国の諜報機関がアメリカのテクノロジー供給チェーンに手を伸ばし、大企業のデータセンターで使われているサーバに悪意あるチップを埋め込んでいるのではないかという疑惑を伝えた。Apple も Amazon もきっぱりとこの疑惑を否定したし、他の報道機関でそこに書かれた内容の一部でも確認できたところは一つもない。Bloomberg は批判に応えたり訂正を出したり記事を取り下げたりといったことをしておらず、そのこともまた今回のように匿名の情報源を使った記事の信憑生に疑問を投げかける。詳しくは 2018 年 10 月 8 日の記事“Apple、Businessweek の中国ハックの報道記事をきっぱりと否定”参照。]
連邦最高裁判所が Apple に不利な裁定をしたというニュース見出しをご覧になった方もおられるかもしれないが、これは思うほど深刻なことではない。The Verge の記事にある通り、最高裁はただ単に Apple に対する独占禁止法訴訟を継続できると表明しただけで、iOS ユーザーは (Apple からでなく) 開発者からアプリを購入するのであるから「間接的購入者」であって独占禁止法の訴訟を起こす資格がないとした Apple の主張を退けたに過ぎない。この独占禁止法訴訟の次の段階の方がずっと興味深く、そこでは Apple が 30% の手数料という形で強制的に料金を課しているので App Store は違法な独占事業であるという主張が議論される。もしも Apple がこの訴訟に敗れれば、「過請求」されたユーザーへの返金、または iOS アプリを購入するための別途の手段を強制されることになるかもしれない。Apple やこれに似たアプリストアを運営している他のテクノロジー会社にとってもっと懸念されるのは、テクノロジー会社はあまりにも大きな力を持ち過ぎたので分割すべきだという考え方が政界の中にあることだ。(2019 年 3 月 12 日の記事“上院議員 Elizabeth Warren、テクノロジー巨大会社に独占禁止法の注文を付ける”参照。)