TidBITS: Apple News for the Rest of Us  TidBITS-J#404/10-Nov-97

Apple 社はスローガンを実行しているのだろうか? 今週号では新しい Apple Store と新しい G3 Mac をチェック。特に G3 チップ技術とバックサイド キャッシュについては突っ込んだ考察を展開。さらに Qualcomm 社の Now Software 社買収の話題、QuarkXPress 4.0、Eudora Internet Mail Server 2.0、Stairways Software 社のゲーム Greebles について掲載。さらに Speed Doubler、BBEdit、QuicKeys のマイナーアップデートにも触れる。

目次:

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MailBITS/10-Nov-97

(翻訳:小川 浄 <tao@peanet.ne.jp>)

Qualcomm、Now Software を買収 -- Mac の世界では Eudora でよく知ら れているワイヤレス通信の会社 Qualcomm 社は Now Utilities や Now Up-to-Date のメーカーである Now Software 社の買収を本日発表した。 Now Software 社はこのところ不振だったようで Now Utilities を Mac OS 8 にアップデートさせるにはエンジニアリング資源が不足だと公言してい た。買収は渡りに船だっただろう。プレスリリースで「Qualcomm 社は Now 社の主な製品をサポートする意志がある」としていることから Now Utilities のサポートが行なわれると期待している。ただし Qualcomm 社 の担当者は詳細について明らかにしなかった。もっと興味深いのはこの取 り引きの結果 Qualcomm 社が何を手にするかである。Now 社の製品は電子 メールに重点を置く Qualcomm 社 Eudora 部門にはどう見てもぴったり収 まらないからだ。Now 社はデータ同期ソフト Now Synchronize につながる 革命的技術に傾注しているという噂も流れている。Qualcomm 社は Mac、 PC、Newton、PalmPilot、同社の携帯電話等の異なるプラットフォーム間で 電子メールとスケジュールを同期させるという考えに惹かれたに違いない。 Qualcomm 社はオレゴン州ポートランドにある Now Software 社のオフィス を継続する意向だが、一方 Eudora 部門は買収の余波で組織改変を受けた。 我々はレイオフ対象者のひとり、テスター Gary Nash 氏の不在を残念に思 う。彼は Mac トレードショーやユーザーグループ発表会での顔なじみであ り、Macintosh Eudora メーリングリストの定着に尽くした人物だ。

<http://www.eudora.com/press/1997/pr97.cgi?f=97.11.10.now>
<http://www.nowutilities.com/os8.html>

QuarkXPress 4.0 リリース -- Quark 社は一つ前のリリースから 2 年以 上を経て人気の高い DTP アプリケーション QuarkXPress バージョン 4.0 をリリースした。QuarkXPress 4.0 はキャラクタレベルでのスタイルシー トのサポート、ポイント・ポイントでのベジェ曲線を使ったオブジェクト 作成機能、画像のクリッピングパス操作オプション等の新しい機能を取り 込んでいる。Quark 社はアメリカ英語版に加えて、QuarkXPress Passport 4.0 もリリースした。これはデンマーク語、オランダ語、フランス語、ド イツ語、国際英語、イタリア語、ノルウェー語、スペイン語、スウェーデ ン語、そしてスイス - ドイツ語を一つの製品に組み入れたもの。アメリカ 英語版の価格は 995ドルで、アップグレードの価格はユーザーの手元の製 品のバージョンによって上下する。Passport 版の推奨小売り価格は 1595 ドル。16 MB のデモが FTP ダウンロードにより入手できる。[JLC]

<http://www.quark.com/qxp001.htm>
<ftp://ftp.quark.com/xpress/demos/pmac/pxd40us.hqx>

BBEdit 4.5.1 と 4.5.1a -- 先週 Bare Bones Software 社は広く使われ ているテキスト・HTML・プログラミングエディタ、BBEdit のアップデート をリリースした。プレスリリースによると新しい BBEdit 4.5.1 はスタイ ルシート、フレーム、スクリプト、アプレットの HTML タグをサポートし、 さらに拡張 HTML アップデートと検証を提供するという。そのほか歓迎し たい TableBuilder の改善、Find Differences コマンドの強化、そして長 い検索文字列のサポートもあげられている。不運にも BBEdit 4.5.1 はこ の世に順調に出てきたのではなかった。元の BBEdit 4.5.1 アップデート には小さなバグがあったので Bare Bones 社は結局新規に 2 つの BBEdit 4.5.1a アップデートをリリースしたのだ。つまり 2.3 MB の完全な“4.5.1 updater”(間違いの種のような名前だがバージョン 4.5 をバージョン 4.5.1a にアップデートするもの)と、容量の小さい“4.5.1a”(バグの あった 4.5.1 をインストールした人向け)である。 [GD]

<http://www.barebones.com/press/451pr.html>
<http://www.barebones.com/support/update.html#4.5>

Eudora Internet Mail Server 2.0 リリース -- Qualcomm 社は現在も 入手可能な無料ソフト Eudora Internet Mail Server 1.2 を大幅に拡張し た最終バージョン、199ドルの Eudora Internet Mail Server 2.0(EIMS) をリリースした。重要な改善は、複数のローカルドメインを扱えるように なり、ジャンクメールが使用者のメールサーバ経由でリレーされるのを防 ぐようになり、遠隔操作でのサーバ管理が可能になり、また断続的接続に 対応、電話線経由でユーザー情報を入手できるようになった点である。299 ドル出せば EIMS と 5 ライセンスの Eudora Pro を入手できる。EIMS 2.0 には 68030 以上の Mac と System 7.1 以降および Open Transport 1.1.2 以降が必要。60 日の使用期限付きデモバージョンが 1.2 MB のダウンロー ドファイルの形で入手可能。EIMS は全般的にテストでよい結果を示した。 しかし Qualcomm 社のオンライン購入方式は現状では Software.net 経由 で合衆国とカナダからしか利用できない。我々の経験では Software.net のアンロックの手法と、そのあとのカスタマーサービスとのやりとりはひ どいものだった。経験者は語る:注文に関連する電子メールはトラブルに 備えて残らず保存しておくこと。[ACE]

<http://www.eudora.com/eims/>
<http://www.eudora.com/freeware/servers.html>

QuicKeys、Mac OS 8 に対応 -- Mac OS 8 をインストールした QuicKeys のユーザーは、インストールしたコンテクストメニューコマンドがメニュー に現われない障害と Close Window と Zoom Window の Mousies の障害に 直面する。CE Software 社は障害の程度を軽減する方法を配布していた。 QuicKeys 3.5.2 に含まれていたこのような障害の修正は、QuicKeys 3.5.2r1 という形で手に入る運びになった。CE 社のダウンロードページは 新しいアップデーターと 3.5 を 3.5.2 にアップデートするソフトウェア にリンクしている。

<http://www.cesoft.com/dlsoftware.html>

Connectix、Speed Doubler をアップデート -- Connectix 社は先日リ リースした Speed Doubler 8.0 を 8.0.1A にする英語版アップデートをポ ストした(Speed Doubler 8 については TidBITS-402 の中の MailBIT を 参照)。先週明けポストされた 8.0.1 アップデートをダウンロードし、ま だ使用していない読者は、それが一番最近のファイルか確かめよう。アッ プデート自体の障害が修正されているからだ。先行のアップデートを使用 して問題がなければ、8.0.1A のことは忘れて結構。8.0.1A ではいくつか のバグと、Aladdin 社の StuffIt Deluxe 4.5 の StuffIt Browser とのコ ンフリクトが修正される。Speed Doubler Updates ページに Speed Doubler と Speed Copy のアップデートが提供されていることを 8.0.1 にアップ デートする読者に申し添えておく。 [JLC]

<http://www.connectix.com/html/speed_doubler_updates.html>
<http://db.tidbits.com/getbits.acgi?tbart=04210>

Stairways Software、Greebles をリリース -- Anarchie、NetPresenz、 Internet Config などの Mac のインターネットツールに別れを告げ、 Peter Lewis 氏の Stairways Software 社は Greebles という名の初めて のゲームをリリースした。アーケードゲーム Pengo のような 2 次元迷路 とブロック崩しから成るゲーム Greebles では、数十種のタイプのブロッ クや、さまざまのタイプの Greegbles(悪いやつら)、そして良いコン ピュータ使いと悪いコンピュータ使い、さらに 100 種の設定されたレベル を相手に戦わねばならない。Peter Lewis 氏は期待を裏切らず Greebles はひとりでプレーすることもできるが一台のコンピュータで 4 人までプ レーできるしインターネット経由で 9 台のコンピュータまで接続できる。 (残念だが 33.6 Kbps モデム接続は充分高いスループットも、充分短い待 ち時間ももたらさない。 TidBITS-367TidBITS-368 の Stuart Cheshire 氏の帯域幅と応答時間の記事を参照。)Greebles Tracker Web ページには Greebles ゲームが表示されているので、進行中のネットワー クゲームに参加できる。Greebles には 68040 または PowerPC ベースの Mac、System 7.0 以降、3 MB の RAM、640*480、256 色のシステムが必要。 ネットワークプレーには Open Transport 1.1 以降と TCP/IP ネットワー クが必要。Greebles は 15 ドルのシェアウェアで、複数コピーを購入の場 合割引きがある。登録ユーザーは自分のレベルを作成できる。

<http://www.stairways.com/greebles/>
<http://db.tidbits.com/getbits.acgi?tbser=1014>


Apple 社のスローガンは実行されているか ?

by Adam C. Engst <ace@tidbits.com>
(翻訳:尾高 里華子 <odaka@iprolink.ch>)

Apple の暫定最高経営責任者である Steve Jobs 氏は、今日の記者会見で Mac の新シリーズと WebObjects を利用した Apple Store の発表を行なっ た。この新設された Apple Store では、Mac をはじめとする Apple 製品 を購入できるほか、新 G3 Mac の機器構成をカスタマイズできる。

今回の記者会見では、もっと関心が集まる話題についての発表はなかった。 Apple は Oracle 社との合併を行わなかったし(Oracle 社が Apple 社の ネットワークコンピュータの開発を援助するために投資をするという噂は 信憑性があるように思えるが)、Apple は Lucent 社との業務提携を発表 しなかった。また Steve Jobs 氏も最高経営責任者に就任しなかった(もっ とも、生涯独裁者のタイトルでも切望していたのかもしれない)。あちら こちらで飛び交っていた噂で本当だと分かったものはどれ一つとしてなかっ たが、噂とは大体においてそういうものだし、そして地球は変わらず回り 続けるのだ。

今回の状況に対する Apple の対処は、ご立派であったが同時に非難される べきでもあった。Oracle 社による買収の噂をそのままにしておきながら (仕組まれた噂だったのではと疑う人がいるだろうが)、Jobs 氏は関心度 ではそこそこの発表を一大広報にと仕立てあげた。こうでもしなければ、 Apple は新しいマシンやオンラインストアの事にこれほどまでの高い関心 を集めることができなかっただろうから、これに関しては Apple はご立派 だったと言えるであろう。だが、Apple の今後の動きに関心を引き付ける だけ引き付けておいてそのままというのは、Macintosh ワールドにとって 良いことだとは私には思えない。それに何も明らかにしないまま関心だけ をあおることで、Apple はユーザーに迷惑をかけた(Jobs 氏は BusinessWeek 誌の結構当っていた先週の記事に対して「はずれ」と言った りしていたのだ)。Apple や Macintosh の一挙一動を胸を躍らせながら見 守っていた人達が、情熱も冷め気にかけることを止ているのを実際に見て いるし、これは今や Apple にとって由々しい事態である。

<http://www.businessweek.com/1997/46/b3553159.htm>

新 Power Mac -- 今回の記者会見の大義名分は、(G3 として知られてい る)新しい PowerPC 750 チップを採用した最新の Mac シリーズの発表で あった。今週号では Tonya がこの G3 搭載マシンのスぺックを詳細に取り 上げ、Geoff が新マシンで使われている G3 チップについて説明している。

この新しいマシンは確かに速いし、機器構成がほぼ同じ Dell 社や Compaq 社の最新 PC と比べても値段もまあ悪くはない(もっともマイナーなとこ ろが作っているもっと安いマシンはあるだろうが)。このことは、TidBITS Updates に書いた Power Computing 社の買収に先立って行われた Mac OS クローン減らしや Macintosh クローン市場からの Motorola 社締め出しの ような(参照: TidBITS-397 )今年なされたことに鑑みると、Apple に とって前向きなことである。

<http://db.tidbits.com/getbits.acgi?tbart=04138>
<http://db.tidbits.com/getbits.acgi?tbart=04119>

お好みの機器構成を 新 G3 Mac のリリースよりも新しく開店した Apple Store のほうが色々な意味でおもしろい。Apple Store は、よくできてい るし見た目も魅力ある。Apple は、NeXT から買い取った WebObjects テク ノロジーをベースにしたこの Apple Store で直販に進出してきた(以前に も Apple Club のような試みはあったのだが、どっちつかずのものであま り便利なものではなかった)。Apple Store は下記の Web サイトからアク セスできるし、800/795-1000 に電話をかけてもよい( Apple Computer 社 を名乗る MicroWarehouse 社に繋がるらしい)。Apple Store は現在のと ころ合衆国内向けにしか販売を行わないようだ。将来的には変更されるだ ろうが、国外向けの出荷、通貨、サポートなどの準備をするまでしばらく かかるだろう。

<http://store.apple.com/>

Apple Store では Mac、周辺機器、Newton、ソフトウェアをはじめとする Apple 製品のほとんどを取り扱っているようだ。価格は、Apple 販売店と 大体が同じぐらいだが、Special Deals のページにはお買得の放出品や改 装済 Mac が出ている。

Apple Store の一番おもしろい点は、新 G3 Power Mac の機器構成をカス タマイズして購入できるようになっていることだ。今までは、Mac を買お うと思ってもあまり構成に選択の幅が無く、カスタマイズは個人(または 販売店)がやることだった。これからは、G3 Power Mac の下記のような仕 様を色々に指定できるようになるのだ。

Apple Store は Power Computing 社の Build Your Own Box Web ページの ような感がある。基本となる G3 Power Mac を選ぶと、自分の欲しいオプ ションを選ぶことのできるポップアップメニューが出る。一番下にあるボ タンを押せば小計を再計算してくれるので、必要以上の RAM を付けたり、 20 インチのモニタを買ったりしたら費用がどれだけ掛かるか見ることがで きる。さらに、Continue ボタンを押すと周辺機器も購入することができ る。そして、会計をする。

直販をすることは Apple にどれだけの違いをもたらしてくれるのか気にな るところだ。直販するためには販売ルートを整えなければならない。特に カスタマイズを受け付けるためには、社内の大規模なインフラの変更を迫 られる。直販ルートを開設するために行なわなければならなかったことの 大変さに見合うほど、ほとんどの個人ユーザーに影響を与える事ができな いというのは皮肉なことだ。個人ユーザーにとって Apple Store は Mac 購入のひとつの選択肢に過ぎないのだから。いままでも、Mac を売ってく れる人を探すのはさほどたいした手間ではなかった。TidBITS のスポンサー でもある Small Dog Electronics 社のようなところから、チェーンのスー パーに至るまでいろいろなところで売っているのだから。直販によって販 売増を見込んでいるのか、販売数は変わらないまま販売ルートだけを変え ようとしているのか。多分 Apple としてはブローカーを介さないことで直 販からより多くの現金を手にしたいのだろうが、そうやって増えたもうけ の一部はマシンを組み立てたりカスタマイズすることで消えてしまうのだ。

彼らのスローガンは? 今日の Apple のプレスリリースの中に「我が社は 本日広告のメッセージである“Think Different”に真剣に取組んでいる態 度を示しました」という一文があった。Apple は自社製マシンのデザイン、 構成、販売方法の部分での劇的な変更を発表した。Apple Store のことと Mac をカスタマイズする機会ができたことは、コンピュータの製造、販売 方法の点で少なくとも Apple にとっては根本的に変っただろう。だが、業 界他社にとってはさほどのことではない。それに、G3 Mac は、飛びきりで はないがまあまあ良いデザインのように思われる。

<http://product.info.apple.com/pr/press.releases/1998/q1/ 971110.pr.rel.direction.html>

だがこのようなことは、エンジニアリングやビジネスに関する些細なこと だ。Apple は今までに何度も革新的なマシンをリリースしてきたし、 TidBITS は 7 年半 Apple を見ている間に幾多のビジネスの変化も見た。 未だにはっきりしないのは、Jobs 氏は Apple が視点を変えて 考える ように采配を振るっているのかどうかということだ。Apple の広告に描か れていた未来を見つめる人やリーダーは販売ルートを変更したり、段階的 に良くなっていく製品をリリースしたりする人達ではなかった。彼らは今 まで思いもよらなかった風に考え行動していたのだ。かつて Apple は “Think Different”を実行していた。少なくとも、Apple のエンジニア達 は人間が共鳴を受けることのできき、一体となることのできるシステムを 作り上げた。昔の Apple は Macintosh を世に送りだし私たちの生活を変 えたが、今の Apple は電子広告の舞台の上で“Think Different”と叫ん でいるだけとしか思えない。疑問は未だに晴れていない。Apple は“違っ た風に考える”ことができるのか巨大企業のもつ限界を超えて再度私たち のハートに触れることができるのだろうか ?


新型 Mac 3 機種と 新型 PowerBook

by Tonya Engst <tonya@tidbits.com>
(翻訳:亀岡 孝仁 <tkameoka@fujikura.co.jp>)

この号での Adam の記事にもあったように、Apple 社は Power Macintosh G3 シリーズと PowerBook G3 を披露した。これら新機種すべてが新しい PowerPC 750 チップ、一般的には G3 として知られている(詳細は次の Geoff の G3 とバックサイドキャッシュを参照)を搭載している。Apple 社は同時に新型の 16 インチモニタ、Multiple Scan Display 720 も発表 した。

3 つの新型 Mac -- 512K のバックサイドキャッシュと 66 MHz のシステムバス を 持った G3 を搭載したこれら新型 Mac は高速であり、公表された性能試験 でも良い成績を残している。どれも、2 MB のビデオ RAM、アドオンボード 用の 3 個の PCI スロット、24 倍速内部 CD-ROM と 10Base-T イーサー ネットが装備されている。さらにこれらは SDRAM (Synchronous Dynamic RAM) を用いた最初の Mac でもある。SDRAM は通常の DRAM とは異なり自 己のタイミングシステムを用いず、代わりに CPU と同期して動作するよう になっている。この様に CPU に同期を取りに行くことで SDRAM は CPU や 他の部品から遅れることなく動作できる、従ってスケジュールの重なりで 生ずる遅れから逃れる事が出来る。

<http://www.apple.com/powermac/g3/>
<http://www.macworld.com/pages/articlelinks/15.01.g3.speed.html>

高級機種としてミニタワー型があり、266 MHz のスピードで 6 GB のハー ドディスク、それに Zip ドライブがついて 3,000 ドルの定価がついてい る。さらにデスクトップ型で 4 GB のハードディスクがついたものだと 2,400 ドルで、さらに低級機種側では、233 MHz のスピードで 4 GB のハー ドディスク、それに Zip ドライブなしで 2,000 ドルである。そして当然 の事ながら、もしこれらを新しい Apple Store から直接購入するならば、 自分のニーズに合わせてカストマイズした構成で注文できる。

個人的に最初は G3 シリーズには不満足であった、と言うのも、あのセク シーな Apple 社のTwentieth Anniversary Mac ( TidBITS-387 の私の記 事参照) と比べれば輝きがない。そして、その比較的遅い 5 MB/sec SCSI との組み合わせはこの様な高速の機種には何ともそぐわないと思える。通 常のユーザーはたぶん気にしないだろうが、例えば高度なビデオなどをや る人には気になるであろう。

<http://db.tidbits.com/getbits.acgi?tbart=02216>

常に Apple 社が真の意味でわくわくする Mac を出してほしいと願ってい るが、私の最初の失望もその妥当な値段と、過去の紛らわしい名前付け方 法から脱却し始めたらしいと言うことで、多少和らいできている。“Power Macintosh G3”が G3 チップを搭載していると言うのは簡単でわかりやす い。

さらに、これらの Mac は Apple 社としては初めて、各モデルが同一のロ ジックボードを使用している;G3 チップとバックサイドキャッシュを含んだカス タ ム部品がドーターカード(別名“パーソナリティカード”) 上に実装され ており、それをマシンが組み立てられる時に差し込めばいいようになって いる。これは別に新しいアイディアではないが、Apple 社にとっては新し いもので個別の組み合わせでくる注文にすばやく対応するのに役立つであ ろう。

そして PowerBook -- 新しい PowerBook G3 は以前は Kanga のコード ネームで呼ばれており、250 MHz で動作し、G3 ベースの他の Power Mac 兄弟のように 512K のバックサイドキャッシュ(システムバスの 2 倍の 100 MHz の速度で動く)と 32 MB EDO ( Extended Data Out) RAM とで構成されて いる。

この機種は PowerBook 3400 と同じ形状をしておりかつ 3400 と次のもの を共用している;4 スピーカーサウンドシステム、33.6 Kbps モデム/イー サーネットカード、12.1 インチ TFT (thin-film transistor), 18-bit, 800 x 600 アクティブマトリックスカラーディスプレイ。2 MB ビデオ RAM 付きで PowerBook は外部モニターを 24 -bit カラーを 832 x 624 ピクセ ルで あるいは 16-bit カラーを 1,024 x 768 ピクセルで駆動できる。そ の他の仕様としては PC カードスロット一個、リチュームイオン電池、互 換性のあるフロッピーディスクと 20x CD-ROM のためのベイ一個を備えて いる。これらすべての機能が 7.7 ポンドに収まっており、価格は 5,699 ドルと非常に高価である。

誰がこの PowerBook を買うべきか?それはスピードとパワーが今すぐ必要 で、とてもこの先の値崩れまで待てない人達であろう。Apple 社はこの PowerBook G3 を高度なイメージやアニメーションを一台のコンピュータで 制作しかつ見せてまわりたいデザインプロフェッショナル向けと考えている。

<http://powerbook.apple.com/web/show.qry?id=prod_g3>

Apple 社の次期製品? -- 噂によれば、1998年はじめには Power Express と呼ばれる 83 MHz のバスをもった高性能 Mac が予定されている。それに G3 搭載で Wall Street のコードネームを持つ PowerBook の話があり、聞 いたところによると、350 MHz G3 とオプショナルの DVD ドライブが選択 できるらしい。


チップとキャッシュ

by Geoff Duncan <geoff@tidbits.com>
(翻訳:尾高 修一 <odaka@iprolink.ch>)
(翻訳:松岡 文昭 <mtokfmak@mxa.meshnet.or.jp>)

TidBITS-334 から、PowerPC Mac の中身を解説し、PowerPC 601 と 603、 604 の違いや、一次キャッシュと二次キャッシュ、システムバスの重要性、 68K エミュレータなどについて述べたシリーズを掲載した。

<http://db.tidbits.com/getbits.acgi?tbser=1001>

その後、PowerPC の世界は変った。PowerPC 750 とは何で、他の Mac に搭 載されている 603e や 604e とはどう違うのだろう? なぜ Apple 社は 750 をこれほど大々的に宣伝しているのだろう? バックサイドキャッシュとは ? この記事ではそんなあなたの疑問にお答えしよう。

PowerPC 750 -- PowerPC プロセッサ群の最新顔、PowerPC 750 は Motorola 社のコードネームでは G3、IBM 社のコードネームで Arthur と 呼ばれていた。601 や 603、604 と同様に、PowerPC 750 は 32 ビット RISC プロセッサで、他の PowerPC シリーズとソフトウェア・コンパチブ ルだ。ということは、PowerPC 750 はあらゆる PowerPC 版の Macintosh 用ソフトウェアとほぼ完全な互換性がある。

PowerPC 750 は今までの PowerPC チップの一段上の性能を持っている。 データキャッシュ、命令キャッシュともに大型化され(いずれも 32K)、 整数演算に最適化されているため、一般的なタスクの動作が軽くなる(一 方、PowerPC 750 は従来の 604e よりも浮動小数点演算では遅いという欠 点もある)。PowerPC 750 はコンピュータのクロックよりも 2 倍から 8 倍のスピードで動作することができるため、発表されたばかりの Apple G3 Mac 用に 528 MHz ものスピードを持ったプロセッサ・アップグレードカー ドを設計することも理論的には可能だ。

その上、PowerPC 750 では分岐予測も改良されており、さらなる全般的な 性能向上に一役買っている。一般的には、分岐予測はプロセッサで利用さ れているローレベルな技術で、返されるデータの値によって異なった処理 を行うような場合に使われる。プロセッサが処理を継続するためにデータ が返されて値がわかるまで待たなければならないような状況でどんな値が 予想されるかを予測し、RAM やもっと遅いサブシステムからのデータを待 たずに処理を続ける。メモリやサブシステムから適切な値が返されたらプ ロセッサはそれを見て判断を下す。もしプロセッサの予測が正しければ、 処理はほとんど完了している(またはとっくに完了している)。もし予測 が外れていてば、そもそもデータが返ってくるのを待っていてもこういう ことになるのだが、プロセッサは判断を下すところまで戻る。従来の PowerPC プロセッサも分岐予測はできたが、PowerPC 750 はパスが解決さ れたら即座にキャッシュしてある命令が利用できるようになり、別途キャッ シングされた命令をロードする必要はない。

最後に、これが一番興味深い点かもしれないが、PowerPC 750 は Mac OS 用に設計された最初の PowerPC チップなのだ。ということは、このチップ は Apple や Metrowerks 社のコンパイラが吐き出すバイトコードを認識し て効率的に処理することができるようになっている。他の条件がすべて同 じだと仮定すると(これまで述べてきたように実際には同じではないのだ が)、PowerPC 750 は典型的な Macintosh アプリケーションの実行におい て、同じクロックスピードの PowerPC 604e よりも優れているのだ。

ワットくらべ 最近の Mac はほとんどが 603e か 604e プロセッサを搭 載している。604e はワークステーション用の高性能チップとして開発さ れ、603e は元祖 PowerPC 601 の低消費電力・高速版として設計された。 604 プロセッサを搭載した PowerBook が現れていないのはこのためだ。発 熱量が多く、電気を消費し過ぎる。

一方、PowerPC 604 シリーズとは異なり、PowerPC 750 は高性能と低消費 電力という長所を兼ね備えており、250 MHz でわずか 5 ワットしか消費し ない。これに対し、PowerPC 604e は 200 MHz で 20 ワット近くを消費す る。750 を搭載したポータブルマシンは(理論的には)デスクトップワー クステーションに匹敵するパワーを持ちえるのだ。PowerPC 750 にはプロ セッサの動作状況に応じて切り替わる 4 つの節電モードがあり、パフォー マンスを落とさずに消費電力と発熱を抑えることができる。PowerPC 750 には温度対応ユニットがあり、温度の上昇に応じて動作を中止させたり処 理を遅くしたりすることができるようになっている。

舞台裏をお見せしよう -- それでは PowerPC 750 システムに関連して常 に言及される「バックサイド」キャッシュとは何だろうか?一言で言うな らば、バックサイドキャッシュとは単に Level 2 キャッシュの高速バー ジョンなのだ。

Level 2 キャッシュは比較的小さな高速メモリーのユニット(256K から 1 MB)で、頻繁に使用される命令やデータ群を PowerPC プロセッサが収納 する場所だ。PowerPC 搭載 プロセッサ自身は、Macintosh 上にある殆ど全 てのものに比べ、非常に高速であることを覚えておいて欲しい。それは、 プロセッサが、RAM、ビデオ、ネットワーク、そしてディスクドライブと いった他のシステムを待つことに、多くの時間を費やしていることを意味 しているのだ。高速の Level 2 キャッシュは、プロセッサが頻繁に必要と されるアイテムに直ぐアクセスできるようにするものであり、結果、遅い システムの反応を待って時間を持て余すことを少なくするのだ。PowerPC 搭載 Mac の Level 2 キャッシュ容量を増やすことは、パフォーマンスを 向上させるための最も安価で効果的な方法の一つなのだ。

初期の PowerPC 搭載 Mac での Level 2 キャッシュの問題は、プロセッサ が、システムバスを横断して Level 2 キャッシュにアクセスすることであ り、そのコンピュータ上のほぼ全てのサブシステムの交通巡査であるかの ように振る舞うことなのだ。PCI 搭載マシンではシステムバスは比較的低 速の 33 MHz から 50 MHz で動作するが、Apple の新しい G3 デスクトッ プ Mac は 66 MHz のシステムバスを採用している。

だが、PowerPC 750 は独立した専用バス上に Level 2 キャッシュ用のコン トローラを組み込んでおり、プロセッサが Level 2 キャッシュを使用する のにシステムバスを経由する必要がなくなっている。この独立したバスは PowerPC 750 の三分の一からフルスピードの間で動作できるので、ほぼ常 にメイン・システムバスより高速となる。サードパーティの PowerPC 750 プロセッサ・アップグレードカードでは PowerPC チップと同じクロックス ピードで動作をするものもあるが、Apple の G3 Power Mac のバックサイ ドキャッシュを扱うバスは PowerPC プロセッサの半分のスピードで動作す る。

Level 2 キャッシュのために独立したバスを用意するよりも、何故メイン ・システムバスを早くしないのだろう?理論的にはそれは素晴らしく、我々 もシステムバスが 250 MHz から 300 MHz で動作すれば多いに満足するだ ろうが、現実的には、単に一つのことをするための高速バスを作るより、 同等の速さで動作するシステムバス(そして RAM、ディスク、ネットワーク や他のシステム)を設計することの方が、ずっと難しくまたかなり高価と なるのだ。しかし、システムバスのスピードを上げることは常にパフォー マンスの改善となるので、将来のモデルには 83 MHz のシステムバスが Apple から出てくるのを期待できるであろう。

追加情報 -- 以下の最初の URL にて PowerPC に関する良質な技術情報 が Motorola より入手可能だ(残念ながら殆どが PDF 形式ではあるが)。 また Apple も PowerPC アーキテクチャ(1999 年に予定されている G4 プ ロセッサも含まれている)の簡潔な概観をポストしており、IBM からも幾 つかの情報が入手可能だ。

<http://www.mot.com/SPS/PowerPC/products/semiconductor/cpu/750.html>
<http://www.apple.com/powermac/technologies/ppcroadmap.html>
<http://www.chips.ibm.com/products/ppc/documents/datasheets/750/604_750.html>


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