Lisa Brennan-Jobs が彼女の有名な父親について書いた回顧録が来週出版されるが、早くも紹介記事が出ているので、読みたいと思うかどうかの判断材料になるだろう。Back to My Mac 機能を使っている人たちは macOS 10.14 Mojave では何か代替手段を見つける必要があるので、Glenn Fleishman が解説する。CrashPlan for Home のサービス閉鎖を目前にして Backblaze を検討中の人たちのために、Josh Centers が Backblaze のバックアップからファイルをリストアする方法を説明する。また、(おそらく Mac mini を買い替える準備のために) NAS (ネットワーク接続ストレージ) デバイスの購入を検討している人たちには、Jeff Carlson が著書 Take Control of Your Digital Storage からの抜粋として購入の際に注意すべき点を述べる。今週注目すべき Mac アプリのリリースは Tweetbot 3.1、Aeon Timeline 2.3.10、EagleFiler 1.8.4、Lightroom Classic CC 7.5、それに Parallels Desktop 14.0 だ。
これは書評ではない。Small Fry は、Steve Jobs の最初の子供でかなり無視された娘の Lisa Brennan-Jobs によって書かれた回顧録であるが、出版されるのは 4 September 2018 迄待たねばならない。しかし、Vanity Fair はもう抜粋版を出したし、そして New York Times も Brennan-Jobs とのインタビューに基づく長文の記事で続いた。それは、始めの部分で次の様に言っている:
出版の前夜に、Ms. Brennan-Jobs が読者に知って欲しいことはこれである:Steve Jobs は彼の娘を何年にもわたって無視したが、その娘は彼を赦した。誇らしくも、彼女は彼を愛しており、そして、一緒にローラースケートをしながら笑っている本の中の場面が、彼が彼女に遺産は何も残さないと告げる場面と同じ様に読者の口の端に乗ってほしいと願っている。
Ms. Brennan-Jobs の許しは分かる。しかし、微妙なのは、彼女が読者も Mr. Jobs を許すことを欲していることである。そして、彼女はそれが問題であり得ることも自覚している。
問題であり得る一つの理由は、Jobs の印象が、最高に良く言っても嫌な奴であり、最大に悪く言えば、真に破損した人間だということである。そのいずれも、Steve Jobs 畏敬と相容れないことはない - 彼のマーケティング洞察力と技術的先見性に対して Apple 信奉者たちが (時には正当な理由をもって、時には不相応に) 捧げる畏敬と。
しかし、彼と彼の娘との関係は、ともすれば焦点では単色である Jobs の全体像に、色と遠近感を付け加える。そして、この本の暴露が、力を持つ人々が過去の恥ずべき行為によって貶められる時代に、なされたという事実を無視することは出来ない。Lisa Brennan-Jobs 側の話を聞いて、我々は Steve Jobs についての考えを変える ("Think Different" する) べきか?
Back to My Mac (日本語では「どこでも My Mac」) 機能は、macOS 10.14 Mojave にはもはや含まれない。2018 年 8 月 9 日に、Apple はサポート書類の中でこの事実を発表し、少数かつ不十分ながらいくつかの代替策を紹介した。二台の Mac が同じネットワーク上になくても画面共有やファイル共有ができるようにするためのこの機能は、2007 年に Mac OS X 10.5 Leopard において初めて登場したものだ。
Back to My Mac は一台の Mac を別の Mac へ、何ら特別のネットワーク設定もルータ構成も必要とせずにインターネットを通じて接続する手段を提供した。例えば旅行中に、あなたのローカルエリアネットワーク (LAN) 上にある Mac へ、まるで同じ LAN 上にいるかのような感覚で接続できるようにした。双方の Mac が同じ iCloud アカウントにログインし、そのアカウントが Finder のサイドバー上の Shared のところに表示された。その後 Apple は AirPort Utility を通じて、AirPort ベースステーションの遠隔設定をする機能もこの Back to My Mac の中に組み込んだ。
Back to My Mac は当初 .Mac を使い、その後 MobileMe を、そして最後に iCloud を、双方の Mac の間に暗号化されたトンネルをセットアップするための中心的調整ポイントとして使った。これは、ある種の非常にプライベートな VPN (仮想プライベートネットワーク) であった。一般的にこれはファイル共有と画面共有にしか対応しておらず、共有される Mac 上でそれらのサービスが有効とされている必要があった。ただ、いくらか手を加えさえすれば、他のタイプの接続、例えば FTP や SSH のようなものも使えることはあった。
その当時、私は Back to My Mac をとてもワクワクするものだと思った。異なるルータやネットワーク設定の下で正しく動作させるには非常に複雑な準備が必要であったので、私は Back to My Mac のみを題材に 100 ページ近くもある Take Control シリーズ本を書いた。(それとは別に画面共有の本も書いた!)
Back to My Mac は、特定のネットワーク構成の下でしか信頼性をもって動作しなかった。いわゆる "Double NAT" つまりローカルな IP アドレスを割り当てるネットワークデバイスのレイヤーが二つある状況では、通り抜けることができなかった。(2007 年 11 月 17 日の記事“Back to My Mac のための風穴を開ける”参照。) このような状況は、例えばあなたが ISP の提供したブロードバンドモデムを持っていてそのモデムが何らかのネットワーキング機能を提供し、それと同時にあなたが独自の設定で自前の Wi-Fi ゲートウェイを取り付けたいと思ったような場合に発生し得る。この困難は、他の遠隔アクセス用ソフトウェアを使うことで克服できることもある。
Back to My Mac 機能の必要度は、今はもう Apple がこれを導入した当時ほどには高くない。当時は、遠隔アクセスをしようと思えば業界標準の VNC プロトコルを使うサーバおよびクライアントのソフトウェアを自分で入手して設定する方法を知っていなければならなかった。(Apple の Screen Sharing サービスは実際には変更を施したバージョンの VNC で、後方互換性のためセキュア度はかなり低いが標準的な VNC にも対応している。)
Apple は Apple Remote Desktop ($80) を推奨するが、これに対するレビュー記事はかなり低評価のものが多いし、Apple はこれが輝きを持つ存在となり最新版の macOS で信頼性をもって働くようにするレベルの開発の努力を注いできていないように見える。もちろん、Back to My Mac が macOS から取り除かれてしまう以上、何らかの改善がこちらになされるのかもしれないが、今のところ私としては Apple Remote Desktop を多くの人に推薦することはできない。
やはり Mac から Mac へのセキュアなトンネルが欲しいという人は、より複雑な解決法を検討する必要がある。例えば VPN サーバソフトウェアを Mac にインストールするといったことだ。これは従来 macOS Server の中のオプションであったのだが、Apple は将来のバージョンで VPN サーバ機能を削除しようとしている。(2018 年 1 月 26 日の記事“Apple、多くの macOS Server サービスを非推奨に”参照。)
Apple が Back to My Mac を終わらせるというニュースを読んで、私はとても残念だと思った。長年にわたってそのユーザーたちのために役立ってきたからだ。でも考えてみると、おそらく日常的な Mac ユーザーたちにはあまり受け入れられなかったこともあるのだろうか、Apple はこのツールをそのまま衰えるにまかせ、結局一度もこれを macOS の中の堅牢な、筋の通った、現代的な部分へと築き上げることをしなかった。そろそろ諦める潮時なのだろう。
ところで、TidBITS では現在2問から成るアンケート調査を実行中で、TidBITS 読者の皆さんが Back to My Mac をどう思うか、どんな目的で使ったことがあるかについて調査中なのでご協力頂きたい。
CrashPlan for Home が停止する日 22 October 2018 が近づいており ("CrashPlan、コンシューマ向けバックアップを廃止" 22 August 2017 参照)、私の所にも、我々が代替として推奨している Internet サービスの Backblaze (TidBITS のスポンサーでもある) からファイルを復元する最善の方法についての質問が届いている。
Backblaze の場合、バックアップは殆ど自動であり、背景で継ぎ目なしに動作するが、ファイルを復元する手順はもう一段の注意を要する。これらの手順は前もって練習しておく価値がある。そうすれば、万が一ファイルを失ったり、壊れたりした場合にも、慌てることなく、自信を持って作業にあたることが出来る。そして、練習をするのに、何も 13 日の金曜日まで待つ必要もない ("国際「バックアップを確かめよう」デー" 13 July 2018 参照)。
スタートラインに進む
まず、Backblaze にログインして、ファイルを選択する所まで到達しなければならない:
メニューバーの Backblaze ボタンをクリックし、Restore Files を選択する。
デフォルトの Web ブラウザーが Backblaze ログインページへと誘う。自分の信任情報を入力し、Sign In をクリックする。もし2要素認証を有効にしてあるのであれば、そのコードを、認証アプリか SMS メッセージから入力する。
3つの選択肢が与えられる:Download Zip, USB Flash Drive, そして USB Hard Drive である。ここでは最初の選択肢しか取り上げない。そして、その呼び方も多少誤称のきらいがあるので注意が必要である。と言うのも、復元するのが数ファイルだけならば、Zip ファイルをダウンロードする必要はないからである。他の二つの選択肢は、データ量が多く、ダウンロードするのに数日必要となる場合などには必須である。ここでは Download Zip を選択する。
(余談だが、USB Hard Drive オプションはドライブ当たり 4 TB に制限されるので、もし 8 TB ドライブを Backblaze にバックアップする場合は、それを二つの 4 TB ボリュームにパーティションしておき、単純に全てのファイルを含むドライブを復元するよう要求出来るようにしておくことを考えたい。)
インターフェースの上部で、コンピュータと復元したいバックアップを指定出来る。Backblaze は、以前のバージョンのファイルも最大 30 日保持するので、もししばらくいじっていないファイルの最新バージョン以外の何かが必要であれば、Files From ポップアップメニューから離れ、Beginning of Backup に行き、そして To メニューを復元したい日付に設定する。完了したら、Go をクリックする。
ファイルブラウザの中で、Select All Files and Folders を選択することも可能だが、とてつもなく速い Internet 接続を持っていない限り、Backblaze に USB ドライブを送って貰う方が利口であろう。
Zip ファイルを依頼し、そしてダウンロードするというこの手順は紛らわしいと感じる方のために、ビデオを作成した。これで紛らわしさは解消されると思う。
手にするのは、復元されたファイルのアーカイブなので、個々のファイルが Finder 上の元々あった場所に復元されることはない。アーカイブをダブルクリックして展開し、それから手動で個々のファイルを元々あった場所に移動させる。
とりわけ大きな Zip アーカイブをダウンロードする時には、Backblaze Downloader アプリを使った方が良い。何故ならば、その方が Web ブラウザよりも、効率的で信頼度が高いからである。復元アーカイブのダウンロードの準備が出来たら、このアプリを起動し、Backblaze 信任情報を入力、ダウンロードを受け入れる手元のフォルダを指定、Sign In to Start をクリック、復元アーカイブを選択、そして再度 Sign In to Start をクリックする。注意すべきは、復元を Backblaze Downloader から始めることは出来ないことである。これは、ただ単に既に作成済みのものをダウンロードするだけである。
長年にわたって、私は古い Mac mini を大サイズの外付けハードディスクに繋いで、これを汎用のネットワークサーバとして使ってきた。私の音楽や映画はすべてこの中に入っていたが、同時にこれはオーバーフロー用ストレージとして働いたし、時々はベータ版ソフトウェアをテストするためにも使った。大体においてちゃんと働いてくれたけれども、いつ見てもどことなく具合の悪い寄せ集めという感じが抜けなかった。ストレージの必要が増すにつれて、また私の著書 Take Control of Your Digital Storage の執筆が進むにつれて、もっとしっかりしたストレージ手段、例えば NAS (ネットワーク接続ストレージ) デバイスのようなものが必要であることを私は強く意識するに至った。
どんなタイプの NAS を購入すべきかについて、技術屋の友人に尋ねて意見を聞いてみたところ、彼の返答は私の状況にぴったり一致していた。(おそらく皆さんの考えとも一致しているだろう。) 彼も一台買おうと思っていたのだが、検討の際に考慮すべき変数があまりにも多過ぎて、決められないまま買わずにいるのだという。
NAS 本体は多くの場合見掛けは単なる大きめの箱で、ドライブ一台だけを含んでいることもあるが、それよりも二台かそれ以上のドライブを収納できるベイを持つことの方が多く、それぞれのベイにハードドライブや SSD を入れて使う。こうすることで、ベイの中のドライブをより大容量のドライブに入れ替えれば、必要に応じて全体のストレージ容量をアップグレードすることも可能となる。けれども NAS が特別なのは、それ自体がコンピュータでもあること、プロセッサと、オペレーティングシステムと、RAM を装備していて、さまざまなタスクを処理できることだ。
この NAS を Ethernet ケーブルを通してあなたのローカルネットワークに接続すれば、同じネットワーク上にいる誰でもその NAS を利用できる。そして多くの場合、ローカルネットワークの外部からその NAS にアクセスすることもできる。あなたがラップトップ機を持ってどこかを訪問した際に重要なファイルを内蔵ディスクに入れ忘れていたと気付いても (あるいは、あなたが居間のソファに座っていて欲しいファイルが二階の仕事部屋の NAS の中だと気付いても)、何の問題もない。まるでそのドライブがラップトップ機に直接接続されているかのように、そのファイルを手にすることができる。
NAS ユニットを販売しているベンダーは数多くある。例えば Synology、QNAP、 Drobo、WD. などだ。しかも、個人使用向け、小規模オフィス向け、さらには産業用など、目的に応じてさまざまのタイプのモデルがある。
ハードドライブのスペック表を見て種類が多過ぎて目がクラクラするとお思いなら、一度 NAS デバイスの技術的詳細を比較検討してみられるとよい。価格が常に重要な検討要因であることは間違いないが、多くのメーカーは目標価格を達成するためにさまざまのコンポーネントをそれぞれ取り合わせ組み合わせしている。例えば、ドライブベイの個数を二つでなく四つにする代わりに、古めのプロセッサと少なめの RAM を搭載したりすることもある。でもそのことはつまり、あなたが必要とするタスクを実行できるモデルを、予算の範囲内で見つけられる可能性があるということでもある。
まずは、NAS と外付けドライブを比較しよう
個々の機能自体を検討する前に、まずは標準的な外付けハードドライブの代わりに NAS を使うことの利点を考えておこう。よく言われる理由は次のようなものだ:
より大量のストレージ: 一台の NAS の方が、一台の外付けドライブよりも大容量のストレージを提供できる。私が長い間 NAS の購入を先延ばしにしてきたのは、ハードドライブの容量がどんどん大きくなってきて、私の必要とする量をカバーし続けてくれたからだ。(この点、ハードドライブのメーカー各社に感謝したい!) もちろん NAS の方が単独ドライブより大容量を提供できることは分かっていたけれども、慣れ親しんだもののまま大容量のものに取り替える方が楽だった。でも、このやり方はだんだん費用が掛かるようになってきた。ストレージ容量の必要が単独のドライブサイズではカバーし切れない勢いで増加するとなれば、数台分のドライブベイを持つ NAS の方が魅力的になってくる。
拡張可能なストレージ: NAS は、データ量の必要が増えればそれに応じて大きくなれるようにデザインされている。NAS 内部のハードドライブが満杯になれば、より大容量のドライブに簡単に置き換えることができる。私は自分の仕事部屋の隅々まで探し回って現在と過去に使った外付けハードドライブと、それぞれの筐体やらケーブルやら電源やらを全部数え上げることもできるだろうが、そんなことは考えただけで気が滅入る。
ストリーミングメディア: 多くの NAS デバイスには、そのドライブに保存されたビデオやオーディオをストリーミングするためのソフトウェアが含まれている。録画したものにせよ、DVD からリッピングしたものにせよ、あるいはダウンロードしたものにせよ、あなたが映画のホームライブラリを作っているなら、NAS が簡単にそれらをあなたのテレビ、タブレット、スマートフォン、あるいはその他のデバイスにストリーミング提供できる。
ビジネスサービス: これはこの記事の守備範囲を超える内容だが、多くの NAS デバイスはウェブサーバ、電子メールサーバ、クラウドサーバ (つまり個人用バージョンの Dropbox を持っているようなもの)、その他として機能するようセットアップできる。Dropbox、Gmail その他に依存することなく自前のサービスを使って自分でフル制御ができるようにしたいと考える団体や個人も多いからだ。
ネットワーク経由のバックアップ: NAS は大量のストレージを提供し、ネットワーク上に常時存在するので、ローカルなコンピュータをバックアップするためのオンサイト保存先としても使える。例えば私の妻の MacBook Pro はたいていリビングルームに置いてあるが、Time Machine バックアップ用にハードドライブがぶら下がっているなんて嫌だと妻は言う。そこで、彼女のデータはネットワーク経由で NAS にバックアップしてある。
NAS (ネットワーク接続ストレージ) の「ネットワーク」部分は Ethernet 経由の接続で実現される。ほとんどのモデルでそれは Gigabit Ethernet (GbE) を意味し、これは理論的転送速度 1 Gbps (毎秒キガビット) に対応する。もっと高価なモデルの中には 10 Gigabit Ethernet (10 Gbps) 接続に対応するものもある。もちろん速ければ速いに越したことはないが、現状で 10 GbE に直接対応する Mac が iMac Pro のみであることに注意しよう。Thunderbolt 3 を搭載した Mac では、アダプタを買って来ればその速度を達成できるようになる。それからまた、10 GbE ネットワークでは Ethernet スイッチもその速度を処理できるものでなければならない。私がお勧めしたいのは、もしもあなたが将来 10 GbE を使いたいと思うのならば、10 GbE を内蔵するか、またはそれをオプションとして提供している NAS を購入することだ。一部の NAS モデルでは PCIe 拡張カードスロットを装備することでその種のアップグレードを可能にしている。
もう一つ、Ethernet に関係して考慮しておくべきことがある。それは、搭載されているポートの個数だ。2 基以上のポートを搭載した NAS モデルは、リンクアグリゲーションと呼ばれる機能を提供する。LACP (Link Aggregation Control Protocol) 対応の Ethernet スイッチに接続されると、その NAS は複数の Ethernet ポートにデータを分散させてボトルネックを回避することができる。複数台のコンピュータが頻繁にその NAS にアクセスする場合には、リンクアグリゲーションを使うことでネットワークのパフォーマンスが良くなることがある。ただしそうでない場合には、一台のコンピュータへ二倍量のデータが送られることになってしまい、速度の向上は得られない。
CPU
NAS は一人前のコンピュータであって、単なる受け身のハードドライブではないので、ソフトウェアを走らせたりストレージを管理したりするためにプロセッサを備えている必要がある。ほとんどの使用目的では、CPU のタイプやブランドに左右されることはない。どんなものでも、きちんとファイルを処理できるからだ。ただし、データを暗号化したり、あるいはビデオをトランスコードして対応する解像度の違うデバイス上でも観られるようにしたりする場合には、CPU の仕様が問題になる。
NAS は常時走らせるためにデザインされているので、通常の運用時と、ドライブが低電力またはハイバーネーションのモードにある時とのそれぞれで、どの程度の電力を消費するかを確かめておこう。例えば Synology DiskStation DS418play (私が購入したモデル) はアクセス中は 29.01 W、ディスクがハイバーネーションモードにあれば 10.59 W を消費することになっている。これに対して現行の Mac mini は、Apple の仕様表によれば「使用可能な最大電力」が 85 W、待機中が 6 W となっているので、Mac が何をしているかにもよるがこちらの方が平均的には DiskStation DS418play より多いようだ。
ハードウェア暗号化
NAS に保存されたデータが暗号化されていることが重要ならば、ハードウェア暗号化を提供するモデルを探すとよい。この機能がなくてもデータの暗号化はできるが、そうするとより大きな CPU パワーが必要となり、専用の暗号化ハードウェアに比べて動作速度が遅くなる。暗号化されたデータの読み書きによって全体的なパフォーマンスは落ちるが、ハードウェアによる支援はないよりある方がずっと良い。また、あなたが検討中の NAS がデータの暗号化をボリュームレベルでするのか、それとも単にフォルダレベルでするだけなのかも確認しておこう。
ハードウェア・トランスコード
オーディオやビデオのライブラリをその NAS 上にホストして、そのネットワーク上にあるコンピュータやデバイスにコンテンツをストリーミングするつもりならば、ハードウェア・トランスコードに対応したモデルを買うことを考えよう。この機能があれば、高解像度のビデオをより素早く送信先のデバイスに最適化したバージョンに変換することができる。例えば、iPhone X を使って撮影した 4K ムービーファイルがあるとしよう。これを 1080p HD テレビで観る場合、NAS はそのデバイスに適するようにトランスコードしたバージョンをストリーミングするので、4K 解像度のデータによるオーバーヘッドの分は送られない。
メディアのストリーミング用に人気のあるソフトウェアシステム Plex は、処理のために NAS 内の CPU のみを使うので、Plex ユーザーにとってはハードウェア・トランスコードの機能は不要だ。Plex サーバとしても使うつもりの場合は、代わりに CPU と RAM の仕様を優先的に検討する方がよい。
通常、ファイルシステムというのはほとんどの人たちが気にする必要のない機能だ。それにもかかわらずここで触れたのは、いくつかのベンダーが Btrfs をマーケティング上の売り文句として宣伝しているからだ。一般的に、ext4 の方が Btrfs よりも少し高速で、歴史も長い。Btrfs (B-tree file system) は現代的な代替方法として開発され、より積極的にデータの保護をしようとする。言ってみれば、ext4 を Mac OS Extended (HFS+) ファイルシステムに近いものとするなら、Btrfs は macOS High Sierra で導入された APFS (Apple File System) ファイルシステムに相当するというところだろうか。(2018 年 7 月 23 日の記事“APFS は何をしてくれるのか、APFS で何ができるのか”参照。) 私には Btrfs がそれほど重要な機能だとも思えないが、おそらくあなたも決断を迫られることになるだろう。
その他の検討事項
他にも注意すべき点はたくさんある。例えば NAS が発する騒音や、暖かい場所に置く場合には稼働中の温度も考える必要がある。また、私としては処理能力のパフォーマンスも検討すべきリストに加えたかった。何と言っても、結局は速い方が良いではないか? しかしながら、メーカーからは必ずしもすべてのモデルについてそのデータが公表されていないし、公表されている数字もおそらくテストの環境に手を加えて最良の数字が出るようにした結果に違いない。だから、もちろんパフォーマンスの数字は考慮に値するけれども、常に疑いの目をもって見るようにしたい。
ドライブのメーカーは数多くあるが、私が調べてみる度に WD の Red シリーズと Seagate の Ironwolf シリーズに対する好評価のレビュー記事が目に付いた。どちらの会社もそれぞれに NAS 用に強化を施した "pro" 版も出しているが、これらはむしろ大規模な企業内で据え付けるためのもののようだ。
NAS 入門をどうぞ
NAS は、あなたの Mac のストレージのために多目的に使える追加装備となり得るけれども、購入の際にはあまりにも多くの選択肢や仕様の違いがあって、手も足も出ない気持ちになってしまうかもしれない。そんな時にこの記事が、皆さんが独自に調査を進めるための参考資料として役立つとすれば嬉しい。
あなたのセットアップに NAS を一台追加した後には、ぜひとも私の著書 Take Control of Your Digital Storage を読んで、NAS 上でファイルを操作したり、ネットワークの外からアクセスしたり、その他のことについて詳しく学んで頂きたい。この本にはまた、デジタルストレージにおけるもっと他の側面、例えば Disk Utility や First Aid を使いこなす、macOS High Sierra の APFS ファイルシステムを理解する、ディスク容量の空きを解放する戦略、といったことも記されている。
ところで、TidBITS では現在3問から成るアンケート調査を実行中で、TidBITS 読者の皆さんが NAS デバイスについてどう思うか調査中なのでご協力頂きたい。
今回のリリースでは Windows と Windows アプリケーション双方に Touch Bar 対応を追加し、Windows やアプリケーションの起動を最大 35% 高速化し、未使用の仮想ビデオメモリが Mac のシステムメモリに返されるようにし、最大 4K 解像度に対応するカメラで共有カメラテクノロジーが使えるようにし、また Full Screen で "Use All Displays" の処理とパフォーマンスを改善した。
Microsoft が Office 365 ユーザーに対して、今後新機能を手にしたいならば macOS 10.12 Sierra またはそれ以降にアップデートする必要があると告げている。2018 年 9 月に、Microsoft は Office 365 ユーザーに対して Office 2016 for Mac から Office 2019 for Mac へのアップデートを配布するが、このアップデートは 10.12 Sierra、10.13 High Sierra、または来たるべき 10.14 Mojave を必要とする。ただし、古いバージョンの macOS を使って Office 2016 for Mac を走らせているユーザーも「メインストリームのサポート」は引き続き受けられるという。私たちの解釈では、これはつまりセキュリティ脆弱性や深刻なバグの修正は受けられるという意味なのだろう。