iPhone や iPad 用に iCloud Backup を使っている人は、使われていないバックアップを Apple が 180 日後に自動削除することに注意しよう。もう一つの嫌なニュースとして、Apple は一時は画期的な電子ブック作成ツールであった iBooks Author へのサポート終了を予定しており、その機能を大筋で Apple の Pages ワードプロセッサに既に組み込み済みだ。Apple が Mac を Intel プロセッサから自社独自の ARM ベースのチップセットへ切り替えるだろうという噂が再び猛烈に行き交っているが、Apple での経験豊かな David Shayer が寄稿記事で Apple が切り替えをするかもしれない理由を説明する。今週号はもう一つ、Josh Centers が BitBar と共にシェルスクリプトを使ってほとんどどんなものでも Mac のメニューバーに置けるようにする方法を紹介する。今週注目すべき Mac アプリのリリースは Art Text 4.0、EagleFiler 1.8.14、Typinator 8.4.1、Default Folder X 5.4.6、それに Logic Pro X 10.5.1 だ。
Apple によるこの削除方針の確認通知は、その昔の The Hitchhiker's Guide to the Galaxy での Arthur Dent の家の取り壊し通告ほど極端には隠されていた訳でない。それでも、iCloud バックアップからのリストアをするつもりで見てみたら既に Apple が削除していたと気付かされた人の身になってみれば、一度も見たこともないサポート書類に書いてあるのが唯一の警告だったとしたら、それは Arthur Dent の立場とほとんど同じことではないだろうか。
明らかに Apple はスケジュール化された手順を使ってバックアップの経過期間をチェックし、180 日を過ぎたものを削除しているに違いない。ならば、その手順にちょっと調整を加えて、ユーザー宛に電子メールで警告を送るようにするのも Apple のエンジニアたちにとってはごく簡単なことではないだろうか。例えばこんな風に:
Apple が、現行の Mac に使われている Intel x86 プロセッサを、iOS 機器を動かしている Apple の A シリーズチップの様な ARM プロセッサに切り替えるのではないかとの噂は絶えることがない。Apple は一度もその様な移行を口にしたことはないが、Apple の進路としては間違っていない。しかしながら、最近 Bloomberg の Mark Gurman は、Apple が ARM-based Mac に 2021 年に移行するとの記事を書き ("Bloomberg、Apple が 2021 年に Mac を ARM に移行させると伝える" 27 April 2020)、更に今週になって、彼は 22 June 2020 に Apple の Worldwide Developers Conference で発表があるかも知れないとの記事でフォローアップした。Bloomberg は過去にも問題の記事を出したことがあるが (Apple、Businessweek の中国ハックの報道記事をきっぱりと否定" 8 October 2018 参照)、Gurman は信用出来る情報源で正確な記事を書くことで知られている。
ARM は世界で群を抜いて最も多用されているプロセッサである。世界には、数十億の Intel PC があるが、ARM 機器は一千億台を超える。Apple が Intel-based Mac を設計した時、それは Apple が x86 チップを使って作った初めての主要製品であった。しかし、Apple は ARM チップを使っての多くの経験を有している。ARM プロセッサを使った最初の Apple 機器は 1993 年の Newton であった。それ以来、Apple は ARM プロセッサを iPod, iPhone, iPad, Apple Watch, そして Apple TV に使ってきた。
Apple はこれ迄も、二度に亘って Mac のプロセッサを成功裏に切り替えてきた。1994 年には、Apple は Mac の 初代の Motorola 68000 プロセッサから IBM PowerPC プロセッサに移行した。そして 2006 年には、同社は Intel x86 プロセッサの方が良いとして PowerPC を捨てた。 どちらの移行も何年にも亘るテストのお陰で概ね順調であった - Apple は、最初の Intel Mac が出荷される何年も前から Intel 上で走る Mac OS X のバージョンを維持していた。Apple はまず間違いなく今 ARM 上で走る macOS のバージョンを、秘密のラボに、保持していると思われる。
私は、Apple が ARM-based Mac を開発中かどうかに付いての内部情報は一切持っていないが、Intel から ARM に切り替えることに関する得失を見てみよう。
明白な勝ち:低消費電力
ARM プロセッサに対して最も一般的に言われる長所はより低い消費電力である。ARM プロセッサは Intel の x86 プロセッサよりも少ない電力を消費するというのは本当である。この特長は ARM の比較的すっきりした現代的な設計から来ているが、初代の 8086 プロセッサ以来 Intel が溜めてきた長年のしがらみには縛られていない。恐らく、もっと重要なのは、Intel が汎用の PC 用に設計した標準品の部品に依存することなく、ARM が Apple にそれが必要とする特定のサポートを独自の ARM チップ設計に追加させてくれるやり方であろう。
より少ない消費電力は Mac を幾つかの点でより良くするであろう。一番明白なのは、ラップトップ上の電池がより長持ちすることである。8 時間の代わりに、新しい ARM-based Mac ラップトップは同じフォームファクターの中で一回の充電で 12 時間持つようになるかも知れない。しかし、Apple は常により薄型の、より軽量のラップトップを目指している。そこで Apple は、8 時間の電池寿命は多くのユーザーには十分であり。電池をより小さくして、より薄い、より軽いラップトップデザインを目指すかも知れない。
消費電力の減少はプロセッサによって生起される熱も少なくなることを意味し、ヒートシンクもより小さくなり、そしてファンによる騒音もより小さくなるであろう。これは、ラップトップにもデスクトップにも恩恵をもたらす。iMac Pro の様に、その熱設計の限界に近い所で走るコンピュータは、同じデザインの中でより強力なプロセッサを手にすることも出来るし、同じ処理能力を持ちながらより小型の筐体とすることも可能になる。
しかし、より少ない電力は ARM に切り替える唯一の特典ではないし、主たる特典ですらないかも知れない。
Apple の真の動機:支配と利益
Apple は自らの運命を自分で制御したいと思っており、現時点でそうする最善の方法はプロセッサロードマップ (計画) を支配することである。ロードマップとは将来の開発計画を意味する:何の機能を加えるか、どの様な計画をどの様な順番で、どの生産工場とプロセスを使うか、何個のプロセッサを作るか、そして個々の製造会社に何個割り当てるか、等々である。Apple はこれらの鍵となる決定に対して Intel に依存したくはない。Tim Cook が言ったとして有名なのは "我々が製造する製品の背後にある主要な技術は自分で保有し制御する必要がある。"
Intel から ARM に切り替えるもう一つの理由は利益である。Intel プロセッサは利益率の高い製品であり、Apple もその儲けは Intel に払うのではなく自分のものとしたい。
結論を言えば、Apple が Intel x86 アーキテクチャーから ARM アーキテクチャーに切り替える主な理由はビジネスであり、技術ではない。では次に、それらとそれに関わる経営判断を見てみよう。
ロードマップ
プロセッサロードマップを支配することで Apple はその製品をより制御しやすくなる。Intel がチップセットに組み込む構成要素に縛られてしまうのではなく、Apple は System On a Chip (SOC) を Mac 専用に設計出来る。これは iOS 機器ではもう何年も前からやっていることである。Apple は、コアの数と型、デジタル信号プロセッサメディアコア、データの大きさとインストラクションキャッシュ、メモリコントローラ、USB コントローラ、Thunderbolt コントローラ等々を制御出来る。Apple は単一チップだけではなく、プロセッサラインの全体の方向も支配するであろう。
Windows を Microsoft から、或いは ChromeOS を Google からライセンスする PC メーカーとは異なり、Apple はそのオペレーティングシステムも支配している。これが Apple に競争相手に対して巨大な優位性を与えている。Apple の最新の iPhone SOC は高速と低速コアの両方を有している。同社はこれらを "性能" と "効率" コアと呼んでいる。"3 GHz プロセッサ" の様なコンピュータの宣伝速度はこの高速コアの速度である。プロセッサ依存度の高い仕事をする時、例えば、Final Cut Pro X でのビデオレンダリングや Xcode で iPhone アプリをコンパイルする様な、これらのタスクは高速コア全てを使うであろう。一方で、メールメッセージを書いたり Web ページを読んだりしている時には、Mac は殆ど何もしなくてよい。現在、全ての macOS は主たる Intel プロセッサをより低速で走らせられる。高速と低速のコアを持つカスタムの ARM-based SOC があれば、macOS は、より低速の、よりエネルギー効率の良いコアに切り替えられる。タスクに応じてコアを動的に切り替えることが、エネルギー節約の鍵なのである。
iOS 機器用の A シリーズチップに、Apple はまたカスタム設計のメディアコアを作り込んだ。これは、映画用にビデオをポッドキャスト用にオーディオをデコードする、そして暗号化の様なタスクを司る。Intel チップも同様な機能を持っているが、カスタムチップの場合、Apple は Mac で最も一般的なメディアフォーマットや暗号化アルゴリズム用に最適化出来る。そして Apple はまた macOS を支配しているので、macOS アルゴリズムとプロセッサコアを完全に合致させることが可能になり、どんなタスクに対してもより少ない電力消費が可能になる。Apple 技術者がアルゴリズムを改善した時、彼らは次世代のメディアコアをその改善を完全にサポートするべくアップデート出来る。しかも、それらの改善が競争相手の手に渡ることを避けながら。
近代の Mac アプリのコードの多くは、一つのタスクを成し遂げるために macOS API コールを貼り合わせているだけである。多くのアプリにおいて、プロセッサに負荷のかかる仕事の大多数は macOS の中で起こっている。つまり、Apple はアプリがする仕事の多くを新しい ARM プロセッサで最適化出来ることを意味する、サードパーティ開発者達が新しい ARM プロセッサ自身を活用することに熟練するのを待つ迄もない。例えば、映画の再生の多くは macOS をコールすることに関わっており、macOS は Apple の最適化されたメディアコアを使ってビデオをデコードする処理をこなせる。
Intel の生産問題
ここ数年ほど、Intel は一連の生産問題を経験した。それらの多くは、より細密なプロセス、つまりシリコン上により精細な回路をエッチングする、への移行の結果であった。より細密なプロセスはより小さなチップを可能にし、より少ない電力を消費し、そして発生する熱量もより小さくなる。我々が知ることは決してないであろうが、Apple が長い間新型 Mac をリリース出来なかった一つの理由は、Apple が必要とする新型チップを提供するのに Intel が対応出来なかったことにあるのは考えられる。これが Mac の販売台数に影響しないはずはなく、Apple はこのパートナーについて公に苦情を言ったことはないが、Intel に満足しているはずもない。
Intel チップを買うことは、Apple が Intel のチップ製造に依存することを意味する。 Apple が独自のチップを設計すれば、好きな製造場所を使える。Apple は現在、その A シリーズチップのために TSMC と Samsung に依存しているが、これらの企業が Apple のニーズを満たすのに問題があれば、Apple は他の製造場所を、同等の能力を有しているとして、選べる。Apple は、部品に対して複数の供給源を持つことを好む。
スクリーンに次いで、プロセッサはコンピュータの最も高価な部品の一つである。プロセッサは単に高価なだけではない;それは利益率も高い。生産量が大きい場合、プロセッサは製造にかかるコストよりも遙かに高い値段で売られる。Intel プロセッサに依存することは、これらの豊かな利幅を手にするのは Apple ではなく Intel であることを意味する。独自のプロセッサを設計し製造することで、Apple はこれらの利益を自分のものにすることが可能となる。その場合、Apple はコンピュータを同じ価格で売り続けて利益を追加することも出来るし、同じコンピュータを、同社の有名な高利益率を犠牲にすることなく、値下げして売ることも可能になる。
Intel と ARM はあたかも競争相手と見えるかも知れないが、彼らのビジネスモデルは全く異なっている。Intel はプロセッサのみならずメモリコントローラの様な関連する支援コンポーネントも全て設計する。そしてそれらを System On a Chip に集積する。同社はチップを自らの製造工場で製造する。そしてチップをコンピュータメーカーに直接販売する一方で、そのブランドを一般大衆にも宣伝する ("Intel Inside")。Intel は高級プロセッサを売ることでその利益の大部分を稼ぐ。最高速のプロセッサは最も高い利益率を持つが、更に高速のプロセッサによって直ぐに時代遅れにされてしまうので、Intel は常に限界に挑んでいる。Intel には AMD の様なライバルもいなくはないが、概して、Intel は高級プロセッサにおいては支配的な供給源である。
ARM (以前は Advanced RISC Machines として知られていたが、今では Arm Limited) は全く違う様に働く。ARM はプロセッサを設計し、その設計をライセンスする。ARM は支援コンポーネントを納めないし、自分のチップも作らない。ライセンスを受けた者が、ARM プロセッサと支援コンポーネントを一つの SOC に集積する - これが Apple がその A シリーズチップに対してやっていることである。ARM プロセッサは安価であり利益率も低いので、ARM は量で稼ぐ。世の中には、Intel プロセッサよりも遙かに、遙かに多い ARM プロセッサが存在する - 私は誰かが、一次近似をすれば世界中のプロセッサは全部 ARM プロセッサであると言っていたのを聞いたことがある。
Intel は ARM よりも遙かに多くの利益をあげているが、その理由は Intel CPU は高額の高性能チップであり、Intel はそのプロセッサを設計、製造、そして販売するからである。ARM はその設計をただライセンスするだけであり、それらの多くは安価な低電力設計である。
しかし、Apple は成功裏にその ARM ベースのプロセッサをスケールアップし Intel のプロセッサと競争出来るまでにした。この ARM のビジネスモデルのお陰で、Apple は競争力のある部品を遙かに安く作ることが出来、その利益も自分のものに出来る。
関連する合理化
同じプロセッサを全ての Apple 製品で使えれば、全社的にはより効率的であろう。Apple のハードウェアチームは、唯一つのプロセッサアーキテクチャー、一つのメモリコントローラー、そして一つの I/O システムをサポートするだけで済む。Swift や Objective-C の様な上位レベルの言語で書かれたアプリの殆どは、あまり改修を必要としないであろう。ブートコードやデバイスドライバーの様な低位レベルのソフトウェアは共有することも可能となるであろう。開発ツールや App Store は、単一命令セットアーキテクチャーを目指せば、合理化出来るであろう。
勿論、これらの節約が目に見える様になる迄には数年かかるであろう。その間、Apple は Intel-based Mac をユーザーや開発者のために数年間はサポートするであろう。
移行はどの様なものになるであろうか?
Apple による IBM の PowerPC アーキテクチャーから Intel x86 への移行は比較的短時間で終わった - 全 Mac ラインが1年以内に切り替わった。Apple は ARM への切り替えもその様に短時間でやれるかも知れないが、同社はもっと時間をかけて進めるかも知れない。最も分かり易い顧客利益は MacBook Air の様なより小型のラップトップで実現されるであろう。ARM-powered MacBook Air は、その Intel 前任機よりもより強力で、電池寿命も長く、一方でより薄型で、より軽量となり得る;成功間違いなしの組み合わせである。現在の iPad の ARM SOC はもう既に多くの Apple のラップトップラインの Intel プロセッサよりも強力であり、全ての Apple ラップトップを ARM に変換するのは意味をなす。
Mac mini は MacBook Pro の上級機よりも強力だと言うわけではないので、同じ ARM プロセッサが使える。iMac の、そしてとりわけ iMac Pro のユーザーは、今日出荷されているどんな ARM チップよりも強力かなプロセッサを欲しがるであろう。と言うのも、目標は現在出荷されている製品に追いつくことではなく、それを追い越すことだからである。iMac の用途に見合うだけの力を持つ ARM チップであれば、Apple の直近のロードマップの中で対応出来るのではなかろうか。
問題は Mac Pro で、こちらは高価格帯の Intel Xeon プロセッサに依存している。勿論、Apple が対応可能な ARM プロセッサを開発するのは不可能ではないであろう - 問題は、どれぐらいの時間がかかるかであろう。また、このとても高価な Mac Pro の販売量はかなり低いと思われる。何を言いたいかというと、そのために開発されたカスタム ARM SOC は、その開発コストを担いきれるだけの量をそれ自身で売るのは現実的ではないと言うことである。Apple は、それを ARM への移行の全コストの一部として見做さなければならないであろう。
Apple が、どんな Intel Mac であれ、それを売りそしてサポートする限り、同社は2つのバージョンの macOS、2つのコピーの全てのアプリ、2つのセットの Xcode 開発ツールと App Store 基盤を作成し、テストし、そして維持していかなければならない。これには相応のコストがかかる。一旦移行が始まったら、Apple は Intel 時代を可能な限り速やかに通り過ぎたいと思うであろう。
これまでの移行では (Motorola 68000 から IBM PowerPC, そして PowerPC から Intel)、Apple は以前のプロセッサファミリーにために書かれたアプリを走らせるために、オペレーティングシステムの中にエミュレータを含めた。Apple が新しい ARM Mac 上で Intel アプリを走らせるエミュレータを用意するであろうと想定するのは理に叶うであろう。これ迄のエミュレータはほぼ完璧に動いたし、ARM 上の Intel エミュレータでも事情は同じであろう。
しかし、新しい ARM チップを十分に活用するには、サードパーティ開発者は彼らのアプリを ARM のために再コンパイルし、アップデートを App Store に提出しなければならないであろう。多少の小さな変更は必要になるかも知れないが、手がかかりすぎるということはないであろう。App Store は LLVM 中間言語でエンコードされたアプリを受け入れるので、開発者は彼らのアプリの一つのコンパイルバージョンを提出すればよく、それを App Store は少し違う ARM プロセッサを持つ iPhone モデル用に翻訳する。しかし、LLVM 中間言語は、Intel アプリを ARM アプリに翻訳出来るほど強靱ではない。
Windows はどうなる?
ARM 移行の犠牲者は Microsoft Windows 互換性かも知れない。現行の Mac は Windows PC と同じ Intel プロセッサを使っており、Windows とそのアプリを最大速度で走らせてくれる。Apple は Boot Camp を使うことで Mac を Windows PC としてブートするのを容易にしているし、VMware Fusion や Parallels Desktop の様なサードパーティ仮想化製品は macOS の内部で Windows を走らせる。もし Mac が Intel チップを持たないようになったら、Windows はネイティブには走らせられなくなるであろう、少なくとも Intel プロセッサ用にコンパイルされた主流バージョンは。
他の選択肢も幾つかある。Apple の Intel x86 エミュレータも Windows を走らせるのをサポートするかも知れない。かつて、PowerPC Mac 用の Windows エミュレータがあったが、本物の PC 上で走る Windows にはとてもかなわなかった。その性能は、Windows でなければならない時折のタスクには十分かもしれないが、ゲームや他の本格的な使用には恐らく満足を得られないであろう。
更に、Microsoft は ARM 用の Windows を自社の Surface Pro X 用にリリースしているが、多くのサードパーティ Windows ソフトウェアは ARM 互換バージョンとしては出されていない。声を上げる少数派の Mac Windows ユーザーはいるかも知れないが、Apple の注意を引くほどには多くないであろう。
将来は ARM
ARM Mac の正当性には抗しがたいものがある。長期的に見れば、Apple が二つのプロセッサファミリーをサポートするのは理に合わないので、いずれ Mac 製品群は全て ARM に移行すると思われる。もし ARM への移行が PowerPC や Intel の時の様に円滑に行くのであれば、顧客にとっては、得るものは多く、恐れるものは殆どない。
私ほどにはオタクでない人向けには iTunes Now Playing という素敵なプラグインもあって、メニューバーから音楽の再生をコントロールできる。
極端な例を一つ挙げておくと、私は Linux で使っているスクリプトを使ってメニューバーからsee the weather forecastようにしている。驚いたことに、このスクリプトは事実上何の変更を加える必要もなくそのまま動作した。ただ、私はそこに変更を加えて、Terminal を開いて curl wttr.in を走らせるオプションを追加しておいた。それを使えばコンソールベースの天気予報が開く。
while read line; do
echo "$line|href=$line"
done <$LINKFILE
重要なのは最後の部分 <$LINKFILE だ。これはシェルに対してそのファイルのすべての行を while ループの中へ読み込むように告げる。while read line というのは普通の言葉に翻訳すれば「まだ処理していない行がファイルにある間はずっと、その行を読み込んで変数 line に保存する」という意味だ。その次の do は文字通り「せよ」という意味で、何をするかといえばまずその行つまり $line を echo してから、パイプ記号の後の href= を実行する、つまり BitBar に対してその後に続くテキストがリンクだと告げる。その2番目の $line は単純に BitBar に対してタイトルとして表示した $line が URL の $line であることを告げる。この場合、リンクのタイトルとリンクの URL は同じ文字列になっている。
実際に使ってみると、このように見える:
これで十分使えるけれども、私としては生の URL が表示されるよりも記述的な名前が表示される方が望ましいと思えた。それに、私は多数のブックマークを持っているのにスクリーン上の面積は限られている。そこで私は Markdown ベースのブックマークファイルを作って記述的な名前を指定するとともに階層構造を持つメニューを作れるようにしようと心を決めた。その種のテキスト処理には正規表現を使うことが必要で、シェルスクリプトの中でそれをする最もシンプルなやり方は sed コマンドだが、私はあまり詳しくない。仕方なく私は sed コマンドについてさんざん Google 検索をした挙句、まあまあ使えるスクリプトを書くことができた:
#!/bin/bash
LINKFILE=~/Documents/SyncThing/links.md
echo "Bookmarks"
echo "---"
while read line; do
[ -z "$line" ] && continue
LINKNAME=`echo $line | sed 's/^.*\[//;s/\].*$//'`
LINK=`echo $line | sed 's/^.*(//;s/).*$//'`
echo "$LINKNAME|href=$LINK"
done <$LINKFILE
St. Clair Software が Default Folder X 5.4.6 をリリースして、Apple Mail の Save All Attachments ダイアログが行き詰ったバグを修正した。Open/Save ダイアログを拡張するこのユーティリティはまた、新規ユーザーにこのアプリの主要な機能のいくつかを手早く紹介する Quick Start パネルを新設し、macOS 10.15 Catalina で走る際に /Applications と /System/Applications の内容を統合するようにし、Dock で Finder のアイコンをクリックした際に Default Folder X の Finder ウィンドウドロワを正しく開くようにし、ファイルダイアログの周りの Default Folder X のベゼルが消えてしまうことがあった問題を修正している。Default Folder X は月額 $9.99 の Setapp Mac アプリ購読サービスの一部としても入手できるようになった。(新規購入 $34.95、TidBITS 会員には新規購入で $10、アップグレードで $5 の値引、14.5 MB、 リリースノート、macOS 10.10+)
Apple が Logic Pro X 10.5.1 をリリースした。多数の拡張、例えば安定性の向上や Live Loops の更新などを施した、メンテナンス・アップデートだ。このプロフェッショナル向けオーディオアプリはさまざまのクラッシュを解消し、Live Loops Performance Recording で作成された領域が信頼性をもって同期されるようにし、Copy to Live Loops コマンドがセルの中でコピーされた領域と正しく並ぶようにし、既存のゾーンでサンプルを入れ替えた際に Sampler 波形が更新されるようにし、プラグインが挿入された後に MacBook Pro の Touch Bar に Drum Machine Designer パッドが正しく表示されるようにし、サードパーティのソフトウェア楽器が実際には対応していない複数出力のステレオ構成を表示することがないようにし、短いオーディオ録音でもダウンビートを正しく識別できるようにした。(Mac App Store から新規購入 $199.99、無料アップデート、1.0 GB、リリースノート、macOS 10.14.6+)
Bloomberg の Mark Gurman の記事によれば、Apple は間もなく米国とカナダの Apple Store で Mac の下取りプログラムを開始するという。このプログラムは米国では 2020 年 6 月 15 日に、カナダでは 2020 年 6 月 18 日に開始される予定だ。Bloomberg の記事には問題があることもあるが (2018 年 10 月 8 日の記事“Apple、Businessweek の中国ハックの報道記事をきっぱりと否定”参照)、Gurman は信頼できる情報源と正確な記事を書くことで定評がある。
Apple は以前から下取りプログラムを提供していたが、従来はまずオンラインで手続きを開始してから、その後でコンピュータを Apple に発送するかまたは Apple Store に持ち込むかしなければならなかった。けれども今回の新しいシステムでは、新しい Mac を購入するその場で古い Mac と交換できるようになる。(必ずまずバックアップを取っておこう!) けれども、COVID-19 パンデミックのために今はまだ 200 以上の Apple リテール店が閉店しているので (2020 年 5 月 18 日の記事“Apple、リテール店の再開計画を発表”参照)、このプログラムの出だしはゆっくりになるかもしれない。
その昔の Mac 初期の時代には、ハードウェアは今日のものに比べれば比較的雑なものであった。これは決して批判しているのではなく、単に事実を述べているだけだ。工業デザインと製造技術は、1980 年代半ば以来大きな発展を遂げた。けれども当時のソフトウェアは、まだ機能が少なく、当時のディスクやチップの遅さに足を引っ張られるところがあったとしても、Apple の Human Interface Guidelines (HIG) が全体的な品質を高く保つための力となっていた。HIG に違反したり、インターフェイスの慣習に従わなかったりすれば、バグとして報告され、レビュー記事で指摘されたりしたものだった。それはダイアログの中で働くキーボードショートカットといった細々としたものについてさえもそうであった。細部にまで注意が行き届くことが重要であって、職人技が大切とされた。
Craig Mod のエッセー“Brilliant Hardware in the Valley of the Software Slump”の背景となっているのがそのことだ。この文章で彼は、ソフトウェアの品質と信頼性の欠如が最高級のハードウェアの足枷となっているいくつかの実例を指摘する。現代のソフトウェアではあまりにも多くの細かな点がおかしくなっていて、その昔には決して許容されなかったであろうことが放置されている。執筆の数時間前以後に起こった実例を挙げただけでも、Messages を起動し直すと補助ディスプレイ上のウィンドウ位置が記憶されていなかったり、Apple News の中でスクロールがぎくしゃくしたり、Home キーや End キーに対応していなかったりする。職人技への回帰を呼び掛ける Mod の声が、Cupertino で、また広く Apple 開発者たちの間で、人の心を揺すぶることを願ってやまない。
WWDC のたった一週間前だというのに、TechCrunch の記事によれば Apple は 16 インチ MacBook Pro と 2019 年型 Mac Pro 用にハイエンド向けのアップグレードを出した:
16 インチ MacBook Pro にはハイエンド向けグラフィックスのオプションが追加された。AMD Radeon Pro 5600M で、従来トップエンドであった Radeon Pro 5500M よりも 75% 高速だという。MacBook Pro の発注時に $700 の追加料金を払えば Radeon Pro 5600M を追加できる。
Mac Pro にさらなる高速ストレージを追加したい人は、自分で取り付けられる Mac Pro 用 SSD アップグレードモジュールを購入できる。1 TB ($600)、2 TB ($1000)、4 TB ($1600)、8 TB ($2800) を選択できる。
これらのアップグレードはニッチの中のニッチと言えるようなプロフェッショナルユーザーのみに興味あるものだろうが、そういうものを必要としている人たちにとっては歓迎すべきことだ。たとえモジュラー設計の Mac Pro に対するものであっても、Apple がアップグレード用パーツの個別販売を始めるというのは驚くべきことと言えるだろう。